生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_新規微生物
出願番号:2013261679
年次:2015
IPC分類:C12N 1/20,B09B 3/00,C02F 11/02


特許情報キャッシュ

岡村 好倫 山村 正一 JP 2015116158 公開特許公報(A) 20150625 2013261679 20131218 新規微生物 株式会社 山有 598052089 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 岡村 好倫 山村 正一 C12N 1/20 20060101AFI20150529BHJP B09B 3/00 20060101ALI20150529BHJP C02F 11/02 20060101ALI20150529BHJP JPC12N1/20 AC12N1/20 DB09B3/00 AC02F11/02 5 OL 14 4B065 4D004 4D059 4B065AA01X 4B065AC20 4B065BA22 4B065BC01 4B065CA55 4D004AA02 4D004AA04 4D004AC04 4D004CA18 4D004CC07 4D059AA01 4D059AA03 4D059AA07 4D059BA22 本発明は、プラニフィラム属(Planifilum属)の新種となる新規微生物に関する。さらに詳しくは、次の1)〜3)の特性を有するプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)に関する。1)主要な構成脂肪酸としてiso C15:0、iso C16:0、C16:0、及びiso C17:0を含む。2)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸、及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む。3)主要メナキノンがMK7である。 従来、たい肥の製造において、し尿、汚泥などの有機廃棄物に、サーモアクチノミセス属、サーモモノスポラ属、バチルス属、ゲオバチルス属、又は好気性枯草菌等の好熱性微生物を作用させることが行われてきた。しかし、これらの微生物は発酵温度が十分ではなく、肥効作用の低いものしか得られないことから、より効率的に有用なたい肥を製造できる方法の提供が望まれていた。 そこで、本発明者らは、霧島火山地帯の土壌から得られた85℃以上の温度で生育する細菌培養物に着目し、これを汚泥に加えて通気発酵することで、有用な菌体を多数含み、たい肥として使用できる汚泥発酵物を得た(特許文献1)。さらに本発明者らは、この汚泥発酵物から新規な属に属する超好熱菌を見出している(特許文献2)。特許第3064221号公報特開2005−13063号公報 本発明は、し尿、汚泥等の有機廃棄物の処理等に有用な新規微生物の提供を課題とする。 本発明者らは、し尿、汚泥等の有機廃棄物の処理等に有用な新規微生物を見出し、これを単離、同定することにより、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下の通りのものである。〔1〕プラニフィラム属(Planifilum属)の新種であり、次の1)〜3)の特性を有するプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)。1)主要な構成脂肪酸としてiso C15:0、iso C16:0、C16:0、及びiso C17:0を含む2)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸、及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む3)主要メナキノンがMK7である〔2〕有機廃棄物の処理に使用する上記〔1〕に記載のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)。〔3〕有機廃棄物がし尿、有機性汚泥、食品残渣物、又は動物糞尿である上記〔2〕に記載のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)。〔4〕YM16株(NITE P−01763)である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)。〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)を使用する有機廃棄物の処理方法。 本発明によって得られた新規微生物は、プラニフィラム属(Planifilum属)の新種として、し尿、汚泥等の有機廃棄物の処理等に有用であり、また、様々な用途に使用し得る。YM16株の細胞写真を示した図である(実施例)。YM16株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を示した図である(実施例)。近隣結合法により作成された系統樹を示した図である(実施例)。 本発明のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)とは、次の1)〜3)の特性を有するプラニフィラム属(Planifilum属)の新種のことをいう。1)主要な構成脂肪酸としてiso C15:0、iso C16:0、C16:0、及びiso C17:0を含む2)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成がとしてアラニン、グルタミン酸、メソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む3)主要メナキノンがMK7である 本発明のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)は、「主要な構成脂肪酸」として、iso C15:0を25.0%以上45.%以下、iso C16:0を10.0%以上20.0%以下、C16:0を5.0%以上15.0%以下、iso C17:0を5.0%以上25.0%以下含むものが挙げられる。これらの脂肪酸を合計して60.0%以上、さらには65.0%以上含むものが好ましい。また、「主要メナキノン」としてMK7を80.0%以上含むもの、さらには85.0%以上含むものが挙げられる。 さらに、本発明のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)は、次の4)〜6)のような特性を有するものであってもよい。4)生育温度が40℃より高く、65℃未満である。5)DNAの塩基組成が57.0%〜59.0%(58.0±1.0%)である。6)16SrRNAの塩基配列は配列表配列番号1に記載の塩基配列と98.7%以上の同一性を有する。 本発明のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)は、有機性汚泥、食品残渣物、又は動物糞尿等の有機廃棄物の処理に使用することができる。これらの有機廃棄物に、プラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)を加えることにより、たい肥等を製造することも可能である。 本発明のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)を使用する有機廃棄物の処理方法では、有機廃棄物にプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)を加えるのみならず、有機廃棄物の処理において有用なその他の工程を含んでいても良い。 本発明のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)として、例えばプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)YM16株が挙げられる。この菌株は、上記1)〜6)の特性を有するとともに、16S rRNAの塩基配列が配列表配列番号1に記載の塩基配列と100%同一である。 本菌株は本出願人の申請により、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センターに寄託されている。以下に、寄託を特定する内容を記載する。(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE P−01763(4)識別のための表示:YM16(5)原寄託日:2013年11月29日 本発明のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)には、このプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)YM16株の変異株も含まれる。本発明におけるこの変異株とは化学的変異導入、自然突然変異、形態変異、トランスフェクション等の遺伝子工学的手法により、その物理的特性や化学的特性が改変されたものであり、上記1)〜3)の全ての特性を有するもののことをいう。 以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。プラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)の単離・同定1.菌株の単離 鹿児島県曽於市の堆肥化場の堆肥からYM16株を単離した。 即ち、50μg/mL Novobiocinを含む4mLのCYC液体培地(スクロース:3%、カザミノ酸:0.6%、硝酸ナトリウム:0.3%、酵母エキス:0.2%、リン酸水素二カリウム:0.1%、硫酸マグネシウム七水和物:0.05%、塩化カリウム:0.05%、硫酸鉄七水和物:0.001%)に該堆肥400mgを加え、55℃で2日間培養した後、この液体培養液を50μg/mL Novobiocinを含むCYC寒天培地に塗布して4日間培養しYM16菌株のコロニーを単離した。2.分類学的性質<試験方法> 菌株の分類学的性質は「新生化学実験講座第17巻微生物実験法(東京化学同人発行)」、「改訂版微生物の分類と同定<下>(学会出版センター発行)」、「微生物の分類・同定実験法(シュプリンガー・ジャパン発行)」、BERGEY’S MANUAL OF Syetematic Bacteriologyに記載の方法に従って分析した。単離菌株の分類と同定はInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology誌に記載されている種との比較により行った。 この解析により得られた形態的性質、培養的性質、生理学的性質、生育範囲及び化学分類学的性質を表2に示した。また、YM16株を55℃で培養した細胞写真を図1に示した。図1において、YM16株は糸状性の細胞形態を示し、菌糸上に単一の胞子を形成することが確認できた。図1のバーは10μmを表す。<試験培地> 各培地のpHは表2中に記載したとおりである。リトマスミルクを除く各培地は121℃で15分間オートクレーブ滅菌をした。リトマスミルクは110℃で10分間オートクレーブ滅菌をした。クリステンセン尿素培地の尿素、OFテスト培地の糖、糖からの酸生成を調べた糖類はフィルター滅菌を行い、記載した終濃度になるように各培地に加えた。1)CYC寒天培地(スクロース:3%、カザミノ酸:0.6%、硝酸ナトリウム:0.3%、酵母エキス:0.2%、リン酸水素二カリウム:0.1%、硫酸マグネシウム七水和物:0.05%、塩化カリウム:0.05%、硫酸鉄七水和物:0.001%、寒天:1.5%)2)CYC液体培地(スクロース:3%、カザミノ酸:0.6%、硝酸ナトリウム:0.3%、酵母エキス:0.2%、リン酸水素二カリウム:0.1%、硫酸マグネシウム七水和物:0.05%、塩化カリウム:0.05%、硫酸鉄七水和物:0.001%)3)肉汁寒天培地(肉エキス:1%、ペプトン:1%、塩化ナトリウム:0.5%、寒天:1.5%)4)肉汁液体培地(肉エキス:1%、ペプトン:1%、塩化ナトリウム:0.5%)5)リトマスミルク(スキムミルク:10%、1%リトマス液:数滴)6)VP培地(酵母エキス:0.1%、トリプトン:0.7%、ソイトン:0.5%、グルコース:1%、塩化ナトリウム:0.5%、寒天:0.3%)7)SIM培地(肉エキス:0.3%、ペプトン:3%、チオ硫酸ナトリウム:0.005%、塩酸システイン:0.02%、クエン酸鉄アンモニウム:0.05g、寒天:0.5%)8)LB寒天培地(トリプトン:1%、塩化ナトリウム:0.5%、酵母エキス:0.5%、寒天:1.5%)9)SY寒天培地(硫酸アンモニウム:0.2%、リン酸水素二ナトリウム:0.14%、リン酸二水素カリウム:0.07%、硫酸マグネシウム七水和物:0.02%、硫酸鉄七水和物:0.0005%、硫酸マンガン五水和物:0.0005%、グルコース:1%)10)Nutrient寒天培地(肉エキス:0.3%、ペプトン:0.5%、寒天:1.5%)11)Simmons培地(リン酸二水素アンモニウム:0.1%、リン酸水素二カリウム:0.1%、塩化ナトリウム:0.5%、クエン酸ナトリウム:0.2%、硫酸マグネシウム七水和物:0.02%、寒天:1.5%、BTB:0.008%)12)Christensen培地(酵母エキス:0.05%、システイン塩酸塩:0.01%、塩化ナトリウム:0.5%、クエン酸ナトリウム:0.3%、グルコース:0.02%、リン酸二水素カリウム:0.1%、寒天:1.5%、フェノールレッド:0.0012%)13)硝酸塩培地(グルコース:1.0%、リン酸二水素カリウム:0.1%、硫酸マグネシウム七水和物:0.05%、塩化カリウム:0.02%、硝酸ナトリウム:0.1%)14)アンモニウム塩培地(グルコース:1.0%、リン酸二水素カリウム:0.1%、硫酸マグネシウム七水和物:0.05%、塩化カリウム:0.02%、硫酸アンモニウム:0.078%)15)クリステンセン尿素培地(ペプトン:0.1%、塩化ナトリウム:0.5%、グルコース:0.1g、KH2PO4:0.2%、フェノールレッド:0.0008%、寒天:1.5%、尿素:2%)16)OFテスト培地(ペプトン:0.2%、塩化ナトリウム:0.5%、リン酸水素二カリウム:0.03%、寒天:0.2%、BTB:0.008%、糖:1%)<脂肪酸の分析>試料調整とガスクロマトグラフィーによる分析 CYC液体培地を用いて、菌を55℃で対数増殖期後期から定常期初期まで培養し、遠心により菌体を回収した。回収した菌体は生理食塩水にて2回洗浄した。約500gから700gの湿菌体をスクリューキャップ付遠心管に入れた。1mLのアルカリけん化液を加え、密栓し100℃で5分間保った。5分後、10秒間よく振り、さらに100℃で30分間保った。遠心管を冷却した後、2mLの塩酸メタノール試薬を加え、密栓し、80℃で10分間保った。遠心管を冷却した後、1.25mLの抽出用溶媒を加え、10分間ゆっくり撹拌した。遠心管を1000rpmで5分間遠心した後、上層を別のスクリューキャップ付遠心管に移し、3mLの洗浄液を加えた。再び密栓して5分間撹拌した。この遠心管を1000rpmで5分間遠心した後、溶媒層をガラスアンプルに取り、窒素ガスで乾燥させた。各試薬の組成は下記に示した。得られた乾燥試料を脂肪酸分析試料として、株式会社テクノスルガ・ラボでガスクロマトグラフィーにより分析した。この分析を複数回行い、得られた結果を表1に示した。試薬1)アルカリけん化液(水酸化ナトリウム:7.5g、メタノール:25mL、超純水:25mL)2)塩酸メタノール試薬(6N塩酸:21.7 mL、メタノール:18.3mL)3)抽出用溶媒(ヘキサン:10mL、t−ブチルメチルエーテル:10mL)4)洗浄液(水酸化ナトリウム:0.586g、超純水:48.8mL)<細胞壁ペプチドグリカン>試料調整 2gの湿菌体を6mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)に懸濁し、超音波破砕機(TAITEC社製VP−30S)により30分間処理して細胞を破砕した。破砕液を温度4℃にて3000rpmで10分間遠心をして、上清を回収した。上清を温度4℃にて9000rpmで60分間遠心をして、上清を取り除き、沈殿物を新しい遠心管に移した。沈殿物に6mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)を加えて洗浄した後、温度4℃にて9000rpmで60分間遠心をして、上清を取り除いた。沈殿物に2mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)と400μLの25%SDSを加え、100℃で40分間保った。65℃に温めておいた10mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)をさらに加え、撹拌した後、温度30℃にて9000rpmで60分間遠心した。 上清を取り除き、沈殿物に65℃に温めておいた5mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)を加えて洗浄した後、温度30℃にて9000rpmで30分間遠心をして上清を取り除いた。この洗浄作業を2回行った。洗浄後、沈殿物に2mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.6)と100μLの1mg/mL Pronase液を加え、37℃で2時間保った。このPronase反応後の液に5mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.6)を加え、細胞壁成分を洗浄した後、温度4℃にて9000rpmで30分間遠心をして上清を取り除いた。この洗浄作業を2回行った。 洗浄後の沈殿物に2mLの5%トリクロロ酢酸水溶液を加え、100℃で20分間保った。この懸濁液をガラス製のスクリューキャップ付遠心管に移し、5mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)を加えて洗浄した後、室温にて9000rpmで30分間遠心をして、上清を取り除いた。この洗浄作業を2回行った。洗浄後の沈殿物に3mLのエタノールを加え、室温にて9000rpmで30分間遠心をして、上清を取り除いた。沈殿物に3mLのジエチルエーテルを加え、室温にて9000rpmで30分間遠心をして、上清を取り除き、沈殿物を乾燥させて細胞壁試料とした。TLCによる分析 5mgの細胞壁試料に250μLの4N塩酸を加え、100℃で16時間加水分解反応を行った。加水分解反応後、水酸化カリウムを置いたデシケーター内で塩酸を取り除き、得られた処理液をTLCに供試した。 TLCプレートはMerck社製TLCセルロースプレートNo.1.05716.0001を用いた。構成アミノ酸の検出では一次元目をイソプロパノール:酢酸:超純水=75:10:15の展開溶媒で展開し、二次元目をメタノール:ピリジン:10N塩酸:超純水=64:8:2:14で展開した。展開後TLCプレートにニンヒドリン試薬をスプレーし、細胞壁ペプチドグリカンに含まれるアミノ酸を検出した。また、ジアミノピメリン酸の異性型の検出は同じTLCプレートを用いて、メタノール:ピリジン:10N塩酸:超純水=64:8:2:14で展開し、標準品との移動度の比較により特定した。その結果、細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含むことが確認された。<メナキノン>試料調整 約500mgの乾燥菌体に20mLのクロロホルム:メタノール=2:1液を加え、冷暗所で一晩、緩やかに撹拌した。この懸濁液を濾過し、濾液を湯浴温度30℃のロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。乾固物を3mLのアセトンに溶かし、窒素ガスで約200μLに濃縮した。Merck社製HPTLCシリカゲル60 F254プレートNo.1.05628.0001にこの濃縮液を供試し、トルエンを展開溶媒として展開した。展開後にTLCプレートを乾燥して、メナキノンのバンドをUVランプ(254nm)の下で確認し、その部分のシリカゲルをスパーテルでかき取り、試験管に入れた。かき取ったシリカゲルに4mLのアセトンを加えて緩やかに撹拌し、フィルター濾過してシリカゲル粒子を除去した。得られた上清を窒素ガスによって約200μLまで濃縮し、HPLCの試料とした。HPLCによる分析 試料25μLをHPLCに注入した。カラムはODSカラム(SHISEIDO社製 CAPCELL PAK C18 UG120 S−5)を用い、展開溶媒にはメタノール:イソプロパノール=2:1液を用いた。移動速度1.5mL/分、カラム温度40℃で展開し、UV(270nm)で検出した。HPLCの機械はHEWLETT PACKART社製SERIES 1100を用いた。この分析を複数回行ったところ、MK7の含有量が1回目は89.9%であり、2回目は91.9%であったことから、主要なメナキノンがMK7であることが確認された。3.16S rRNA遺伝子の塩基配列の解析PCR反応 YM16株の16S rRNA遺伝子をコロニーダイレクトPCR法により増幅した。PCR反応にはTks Gflex DNA Polymerase(タカラバイオ社)とEU10F プライマー(配列表配列番号2)EU1500R プライマー(配列表配列番号3)を用いた。PCR反応液の組成はTks Gflex DNA Polymeraseの説明書に記載されている混合割合に従った。PCR反応は94℃で1分の熱処理を1サイクル行った後、98℃で10秒、55℃で15秒、68℃で1分30秒の反応を30サイクル行った。シークエンス反応 得られたPCR反応物はWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega社)により精製した。精製産物とEU10Fプライマー、EU520Fプライマー(配列表配列番号4)、EU907Rプライマー(配列表配列番号5)、又はEU1500R プライマーを用いてシークエンス反応を行い、単離菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定した。 YM16株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を図2および配列表配列番号1に示した。 YM16株の16S rRNA遺伝子塩基配列について、遺伝子データベースであるThe National Center for Biotechnology Information のBLASTホモロジー検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を行った結果、YM16株の16S rRNA遺伝子と最も高い相同性を示す種はプラニフィラム フィメティコラ(Planifilum fimeticola)であり、相同性は97%であった。 続いてYM16株に近縁種の16S rRNA遺伝子をThe National Center for Biotechnology Informationの遺伝子データベースより収集し、系統解析を行った。 収集した16S rRNA遺伝子塩基配列をClustal X 2.0.12プログラムによりアライメントし、近隣結合法により系統樹を作成した。得られた系統樹を図3に示した。図3中の括弧内の数字はGenBankのアクセッション番号を示し、YM17とは本発明者らが本発明と同様の方法で単離した菌株を示す。4.YM16の同定と分類YM16株 図3の系統解析の結果からYM16株はサーモアクチノマイセタジー科(Thermoactinomycetaceae科)のプラニフィラム属(Planifilum属)に属すると判定した。プラニフィラム属(Planifilum属)であるプラニフィラム ユンナネンセ(Planifilum yunnanense)、プラニフィラム フルジダム(Planifilum fulgidum)、プラニフィラム フィメティコラ(Planifilum fimeticola)、及びサーモアクチノマイセタジー科(Thermoactinomycetaceae科)に属するマカラカリマイセス属(Mechercharimyces属)、デスモスポラ属(Desmospora属)とYM16株の分類学的性質を比較した。結果を表3に示した。 表3のうちYM16株以外のデータはInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2005),55,2101−2104、International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2007),57,1851−1854、International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2006),56,2837−2842、及びInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2009),59,454−459から得た。 寒天培地上で気菌糸が確認されないことはサーモアクチノマイセタジー科(Thermoactinomycetaceae科)内において、他属とは異なるプラニフィラム属(Planifilum属)に特徴的な性質である。YM16株も気菌糸が確認されず、YM16株はプラニフィラム属(Planifilum属)に属すると判定した。また、主要なメナキノンがMK7であること、細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含むこともプラニフィラム属(Planifilum属)とYM16株に共通する性質である。 生育温度が45℃から55℃であること、主要な脂肪酸がiso C15:0、iso C16:0、C16:0、iso C17:0であること、DNAの塩基組成が58.0%であることからYM16株はプラニフィラム属(Planifilum属)の他種と明確に異なっている。また、16S rRNA遺伝子の系統解析でもYM16はプラニフィラム属(Planifilum属)の他種から離れた枝分かれをする。 以上より、YM16株をプラニフィラム属(Planifilum属)の新種と判定し、プラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)と命名した。 本発明によって得られた新規微生物は、プラニフィラム属(Planifilum属)の新種として、し尿、汚泥等の有機廃棄物の処理等に有用であり、また、様々な用途に使用し得る。[寄託生物材料への言及](1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE P−01763(4)識別のための表示:YM16(5)原寄託日:2013年11月29日プラニフィラム属(Planifilum属)の新種であり、次の1)〜3)の特性を有するプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)。1)主要な構成脂肪酸としてiso C15:0、iso C16:0、C16:0、及びiso C17:0を含む2)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸、及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む3)主要メナキノンがMK7である有機廃棄物の処理に使用する請求項1に記載のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)。有機廃棄物がし尿、有機性汚泥、食品残渣物又は動物糞尿である請求項2に記載のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)。YM16株(NITE P−01763)である請求項1〜3のいずれかに記載のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)。請求項1〜4のいずれかに記載のプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)を使用する有機廃棄物の処理方法。 【課題】し尿、汚泥等の有機廃棄物の処理等に有用な新規微生物の提供を課題とする。【解決手段】プラニフィラム属(Planifilum属)の新種であり、次の1)〜3)の特性を有するプラニフィラム フィスチュロサム(Planifilum fistulosum)を提供する。1)主要な構成脂肪酸としてiso C15:0、iso C16:0、C16:0、及びiso C17:0を含む2)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸、及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む3)主要メナキノンがMK7である【選択図】なし配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る