タイトル: | 公開特許公報(A)_リチウム試薬組成物、それを用いたリチウムイオン測定方法及び測定装置 |
出願番号: | 2013254196 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 31/22,G01N 31/00,G01N 33/84,G01N 21/78,C07D 487/22 |
鈴木 裕子 岩渕 拓也 小出 和弘 小田嶋 次勝 JP 2015114125 公開特許公報(A) 20150622 2013254196 20131209 リチウム試薬組成物、それを用いたリチウムイオン測定方法及び測定装置 メタロジェニクス 株式会社 512091648 小原 英一 100111442 鈴木 裕子 岩渕 拓也 小出 和弘 小田嶋 次勝 G01N 31/22 20060101AFI20150526BHJP G01N 31/00 20060101ALI20150526BHJP G01N 33/84 20060101ALI20150526BHJP G01N 21/78 20060101ALI20150526BHJP C07D 487/22 20060101ALN20150526BHJP JPG01N31/22 124G01N31/00 SG01N33/84 ZG01N21/78 ZC07D487/22 20 OL 18 2G042 2G045 2G054 4C050 2G042AA01 2G042BC01 2G042CA10 2G042CB03 2G042DA06 2G042FA06 2G042FB02 2G042GA05 2G045AA25 2G045CA26 2G045CB03 2G045DB30 2G045FB13 2G045GC15 2G054AA06 2G054AB07 2G054CE02 2G054EA06 2G054GA03 2G054GB01 2G054GB04 2G054GB05 2G054JA06 4C050PA02 本発明は、生体試料や環境試料等の水溶液中のリチウムの定量測定に用いるリチウム試薬組成物、それを用いたリチウムイオン測定方法及び測定装置に関する。 従来よりリチウム含有の気分安定薬・抗うつ薬が有効であるため多用されているが、投与に際しては血清中のリチウム濃度を適正な範囲にコントロールする必要がある。 液体中のリチウムの定量測定に用いるリチウム試薬組成物として、一般的には、双極性障害(躁うつ病)の治療薬、或いは抗うつ薬とともに気分安定薬として炭酸リチウム錠(経口投与)が広く処方されている。炭酸リチウム(Li2CO3)はリチウム中毒となる血中濃度近辺まで処方しないと投与効果が現れないという特徴を有しており、治療域と中毒域とが極めて近いため、薬物血中濃度モニタリングが必要項目(TDM)に指定されている。 さらに詳しくは、常時、投薬患者の試料血漿内のリチウム濃度が0.6〜1.2 mEq/Lとなるように調節しなければ成らないが、これは血清中のリチウム濃度が0.6mEq/L以下で余り少なすぎると抗うつ効果がなく、逆に、一般的に血漿濃度が1.5 mEq/Lを超え、過剰に投与され濃度が大きくなってリチウム中毒を引き起こし過量服用が致命的となることがあり、振戦、構語障害、眼振、腎障害、痙攣を含む中毒症状が現れる。もし潜在的に危険なこれらの兆候が見られた際には、治療を中止し、血漿濃度を再測定し、リチウムの中毒を緩和する措置を行わなければならない。 このように、リチウム塩の抗うつ薬は鬱病患者の治療等に効果があるものの、過剰投与の場合には重大な障害が生じるので、リチウム含有の抗うつ薬を投与する場合は、常に血清中のリチウム濃度を0.6〜1.2 mEq/Lになるように監視することが必須事項である。 このことから、従来、血清中のリチウムの定量測定が必要とされ、リチウムの比色測定を可能にさせる臨床検査用の液状試薬組成物の開発が進められている。 この先行技術として、特許文献1には原色体クリプタンドイノフォアを用いた生物学的検体中のリチウムの濃度を測定する試薬組成物が開示されている。 また、特許文献2には、ピロール環を持つ大環状化合物であって、ピロール環のβ位に8個の臭素(Br)原子を結合させ、リチウムイオンと反応する分析試薬である。 なお、非特許文献1として、テトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子を全部フッ素原子に置き換えた化合物で、リチウムイオンの検出・分離できることが開示されている。 従来のリチウム試薬組成物がいくつか知られているが、その組成が毒劇物であったり、原薬が供給不安定で高価であり、ほとんどの原薬が水に溶解しないか、或いは水に溶解すると失活し発色せず、発色反応が遅い。 これらを克服したとされる特許文献2に開示された技術は、発色法を可能としているが、発色感度が大きすぎるため検体の希釈処理が必要であり、試薬組成物の仕様がpH11以上であるため空気中のCO2により変質しやすく、測定データが不安定で、更に、pH11以上となると、もはや水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような濃厚な水酸化物溶液しか使えないのでpHを一定に維持していくことができず、また、これらは劇物であるので使用者にとっても忌避的なもので取り扱いが厄介であることや、実際の保存には汎用ではなく専用容器が必要であり、これらの欠陥を補うため機械的設備が大型かつ専用機器が必要で汎用性に欠くといった問題点があった。このため、オンサイトモニタリング、POCT(Point Of Care Testing)に適用させることが困難であるといった問題点もあった。 ところで、前述の特許文献1のリチウムの定量を目的とする試薬組成物は、本発明とは全く異なった化合物を使用しているが、pH12でしか使用できず、前述したように、pH11以上となると、もはや水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような濃厚な水酸化物溶液しか使えず、これらは劇物であるので使用者にとっても取り扱いが厄介であり、更に、これらを補うために大型の専用機器が必要で、汎用性に欠くといった問題点があった。 また、非特許文献1である小柳らの論文は、F28テトラフェニルポルフィリンを用いてリチウムイオンの分離・検出ができることが開示されているが、油性、且つ毒劇物であるクロロホルムを用いた溶媒抽出を行わなければ、リチウムの検出・分離はできなかった。何よりも、水溶液中のリチウムを煩雑な前処理なしに直接定量することはできず、特に、血清中のリチウムイオンを迅速、且つ定量的に測定することはできないといった問題点があった。このように、F28テトラフェニルポルフィリンを用いて水溶液中のリチウムイオンの検出は難しく、定量的に濃度を測定することは困難で今までに実現されていなかった。 そこで、本発明者らは、特許文献3の特許第5222432号明細書に示すように、テトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子を全部フッ素原子に置き換えた構造式 で表される化合物をキレート剤として、これに水に混合し得る有機溶剤と、pH調節剤と、安定剤とを包含するリチウム試薬組成物、それを用いたリチウムイオン測定方法及び測定装置を開発し、生体試料や環境試料等の水溶液中のリチウムを簡便な比色計や紫外-可視分光光度計により即座に定量測定でき、かつ目視判定を可能にさせるリチウム濃度定量のためのリチウム試薬組成物、それを用いたリチウムイオン測定方法及び測定装置を提供している。特開平7−113807号公報欧州特許1283986号公報(B1)特許第5222432号明細書分析化学 Vol.51,No.9,PP.803-807(2002)[F28テトラフェニルポルフィリンの合成とリチウムイオンの分離・検出への応用]小柳健治・田端正明 ところで、上述した特許文献3の発明は、生体試料や環境試料等の水溶液中のリチウムを簡便な比色計や紫外-可視分光光度計により即座に定量測定でき、かつ目視判定を可能にさせるリチウム濃度定量のためのリチウム試薬組成物や、それを用いたリチウムイオン測定方法及び測定装置であるが、前述したように、テトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子を全部フッ素原子に置き換えた構造式の化合物をキレート剤として、これに水に混合し得るジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の有機溶剤を用いていたが、有機溶剤は皮膚、粘膜、肺から吸収され中毒や障害を引き起こす等、健康に及ぼす影響が大きいので、これらを使用はできるだけ扱いを避けたいといった問題点があり、また、有機溶剤は廃棄の際の環境負荷が問題となるので、使用をなるべく避けたいといった問題があった。 本発明の課題は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の有機溶媒を使用せずに、テトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子の全部をフッ素原子に置き換えた構造式の化合物をキレート剤として、生体試料や環境試料等の水溶液中のリチウムを簡便な比色計や紫外-可視分光光度計により即座に定量測定でき、かつ目視判定を可能にさせるリチウム濃度定量のためのリチウム試薬組成物や、それを用いたリチウムイオン測定方法及び測定装置を提供しようとするものである。 上記課題を解決するために、本発明は、テトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子を全部フッ素原子に置き換えた構造式 で表される化合物と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンより選択される塩基性有機化合物とを混合し、pHをpH5以上の範囲に調節するpH調節剤とを包含した水溶液とすることを特徴とするリチウム試薬組成物である。 生体試料や環境試料等の水溶液中のリチウムが前記リチウム試薬組成物、特にテトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子を全部フッ素原子に置き換えた化合物がキレート剤(発色剤)となって発色する。 F28テトラフェニルポルフィリン化合物とリチウムイオンとの発色反応である黄色から赤色への呈色変化を得るのは難しいが、血清のリチウム濃度が0.6mg/dL〜2.0mg/dL(0.9mM〜3mM)の範囲において定量値の正確さが求められているので、本発明の実施例では、上記のリチウムの濃度範囲においては、F28テトラフェニルポルフィリンの化合物の濃度を0.05〜1.0g/Lとし、好ましくは、0.5g/Lとすれば正確に測定できることも見出した。 本発明のpH調節剤について、それが、pH5.0未満の酸性側では、本発明の発色剤(キレート剤)であるF28テトラフェニルポルフィリン化合物とリチウムイオンは結合しないため、呈色変化が起こらず、リチウムの定量は困難である。また、pHが5〜7の間では前記発色剤とリチウムイオンは特異的に反応するが、発色速度が緩やかである。一方、pH8〜11では前記発色剤とリチウムイオンは速やかに反応し、且つ安定な発色錯体を得られる。pH11を越えるアルカリ性側では、前記キレート剤、生成した発色錯体の色調の経時的な安定性が悪い。これは、空気中の二酸化炭素を吸収することによるpHの変動が生じやすいことに起因する。したがって、リチウム試薬組成物のpH調節剤としてはpHを7から12の範囲とするpH調節剤、或いはpH調節剤としてのpH緩衝剤が必要であり、より好ましくは、pH8〜11なるようなpH調節剤、pH緩衝剤の使用が必要である。 前記pH調節剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアを含むアルカリ剤、酢酸、リン酸、くえん酸、炭酸、重炭酸、しゅう酸、塩酸、硝酸を含む酸剤、及び、これらの塩類から選択されるものを使用し、前記pH調節剤はpH緩衝剤でもよく、クエン酸、炭酸、重炭酸、りん酸、コハク酸、フタル酸、塩化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、Goodの緩衝剤としてMES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、CAPSO、CAPS、及び、これらの塩類から選択されるものを使用する。 これらの含有によって前記リチウム試薬組成物は、pH5からpH12の範囲でリチウムに対して、特異的な発色反応が可能である。 本発明の溶剤は、水に混合し得ることが必須であるが、被検体である血清、血漿、溶出液等の水溶液と均一に混合できれば、有機溶媒を主とした溶液であっても、或いは、その他の溶媒が添加された水溶液であってもよい。これは、汎用型の自動分析装置、紫外可視分光光度計により検体中のリチウム濃度を測定する場合はその被検体が水溶液であるため、その試薬組成物も同様に水溶液であることが望ましいからである。本発明はF28テトラフェニルポルフィリンを水に溶解させるために、有機溶剤以外では、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンから選択される塩基性有機化合物が存在することに想到し、これを基礎とするものである。 本発明の試薬組成物において、実際の製品では安定剤を混入させるが、本発明では安定剤として界面活性剤を使用している。この界面活性剤はF28テトラフェニルポルフィリンの分散性を高め、さらに、発色反応時における試料由来の懸濁を防止させる作用があるので、これらの作用を得るために安定剤を混入することが必要である。 これらの安定剤は、非イオン性界面活性剤又は陰イオン性界面活性剤であり、非イオン性界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(商標登録:TritonX-100 ) 、p−ノニルフェノキシポリグリシドール及び、これらの塩類から選択されるものを使用する。 好ましい非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(Triton X-100(登録商標)等) 、p-ノニルフェノキシポリグリシドールなどである。 また、安定剤としての陰イオン性界面活性剤は、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩等がある。代表的なものとして、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム及び、これらの塩類から選択されるものを使用する。 本発明のリチウム試薬組成物は、試料中に共存するリチウム以外のイオンによりリチウム濃度の測定が妨害されるのを回避し、或いは試薬組成物の酸化を抑制し、その保存安定性を付与するためにマスキング剤を1種類、あるいは複数の種類を含有させてもよい。もっとも、リチウム以外のイオンが少ないのであれば、必ずしも包含する必要がない。 これらリチウム試薬組成物に加えるマスキング剤としては、エチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン(TPEN)、ピリジン、2,2-ビピリジン、プロピレンジアミン、 ジエチレントリアミン、ジエチレントリアミン−N,N,N',N",N"-五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン、トリエチレンテトラミン-N,N,N',N",N"',N"'-六酢酸(TTHA)、1,10-フェナントロリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、O,O'-ビス(2-アミノフェニル)エチレングリコール-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、N,N-ビス(2-ハイドロキシエチル)グリシン(Bicine)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N',N'-四酢酸(CyDTA)、O,O'-ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、N-(2-ハイドロキシル)イミノ二酢酸(HIDA)、 イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、 ニトリロトリスメチルりん酸(NTPO)及び、これらの塩類から選択されるものを使用する。 本発明のリチウム試薬組成物は、微生物による劣化を防ぐために防腐剤を包含しても良い。防腐剤は特に限定されず、例えばアジ化ナトリウム、Procline(登録商標)等を使用することができる。防腐剤の濃度も特に限定されず、アジ化ナトリウムを使用する場合、一般的に防腐剤として用いられる濃度、例えば反応溶液に対し0.1質量%程度でよい。もっとも、長期保存を目的とした製品とする場合は、防腐剤が処方されるのが普通である。 本発明のリチウム試薬組成物の使用に際しては、血清及び血漿試験試料を前述したリチウム試薬組成物と接解し、リチウム錯体の発色、吸光度、及びそのスペクトルを測定し、同様に濃度既知のリチウム標準試料のそれを基準濃度として未知試料の定量値を算出することを特徴するものである。 リチウム錯体の発色、及びそのスペクトルにおいて、波長550nm、或いはその近傍の波長530nmから560nmの波長帯を測定波長としてその感度を測定し、又は、波長570nm、或いはその近傍の波長565nmから650nmの波長帯の感度を測定し、又は、波長340nm、或いはその近傍の波長310nmから350nmの波長帯の感度を測定し、又は、波長380nm、或いはその近傍の波長350nmから400nmの波長帯の感度を測定し、波長476nm、或いはその近傍の波長460nmから510nmの波長帯を測定波長としてリチウムの定量値を算出手段で算出することが好ましい。この場合の感度とは紫外可視分光光度計における吸光度、あるいは吸光度差として相違ない。 また、前述した波長550nmで測定方法では、感度は下記の式 550nmの感度 = リチウム・F28テトラフェニルポルフィリン錯体の550nm感度 + ヘモグロビンの550nm感度 − ヘモグロビンの600nm感度で補正すれば、ヘモグロビンの影響を相殺ことができる。 なお、前記の相殺する補正値はヘモグロビン600nmでの感度を用いることが望ましいが、550nmを中心波長とする感度と同等の感度比となる600nmを中心とする周辺の波長を用いてもよい。 測定装置としては、血清及び血漿試験試料を前述したリチウム試薬組成物と接解し、リチウム錯体の発色、及びその吸光度、或いはそのスペクトルを測定して、そのスペクトルにおいて波長550nm、或いはその近傍の波長530nmから560nmの波長帯を測定波長としてその感度を測定し、又は、波長570nm、或いはその近傍の波長565nmから650nmの波長帯の感度を測定し、又は、波長340nm、或いはその近傍の波長310nmから350nmの波長帯の感度を測定し、又は、波長380nm、或いはその近傍の波長350nmから400nmの波長帯の感度を測定し、又は、波長476nm、或いはその近傍の波長460nmから510nmの波長帯を測定波長としてリチウムの定量値を算出手段で算出することが好ましい。 この場合も、波長550nmで測定する場合、感度は下記の式 550nmの感度 = リチウム・F28テトラフェニルポルフィリン錯体の550nm感度 + ヘモグロビンの550nm感度 − ヘモグロビンの600nm感度 で補正すれば、ヘモグロビンの影響を相殺ことができる。 本発明のリチウム試薬組成物、それを用いたリチウムイオン測定方法及び測定装置によれば、生体試料や環境試料等の水溶液中のリチウムの濃度を測定でき、請求項1乃至11のリチウム試薬組成物による検量線は、リチウム濃度が0.0〜2.0 mEq/Lの実用領域において直線的であり、比色計や紫外可視分光光度計の数値を用いて簡単な演算で濃度を求めることができる。そのため、普及型の分光光度計で生体試料である血清検体のリチウム濃度を迅速に定量でき、その情報を例えばTDM治療の管理指標とすることもできる。また、臨床化学自動分析装置への応用で多検体を短時間で定量分析することもできる。 また、リチウム試薬組成物のpHをpH5からpH12の範囲に調節することによって、分光測定を可能としているが、pH5未満の酸性側では本発明のキレート剤(F28テトラフェニルポルフィリン)とリチウムイオンは結合せず、そのリチウム濃度に依存的な呈色変化は起こらない。pH12を越えるアルカリ性側では、前記キレート剤、生成した発色錯体の色調の安定性が悪い。また、空気中の二酸化炭素を吸収することによるpHの変動が生じやすく、これも色調の安定性に悪影響となる。pHが5〜7の間では前記キレート剤とリチウムイオンは結合し、リチウム錯体として特異的に発色するが、発色速度が緩やかであり、pH8〜11では前記キレート剤とリチウムイオンは速やかに結合し、特異的、且つ安定に発色する。したがって、より好ましくは、pH8〜11である。 更に、テトラフェニルポルフィリン金属錯体はソーレー帯と呼ばれる最大感度が得られる380nmから460nm近傍の典型的なスペクトル領域があり、これを測光波長とすることもできるが、臨床的意義のある血清検体中リチウム濃度範囲に対して感度が大きすぎるため、試料の希釈操作が必要であり、それに伴う操作の煩雑化、希釈装置等の増設による測定装置の大型化を伴う。 一方、本発明は前記ソーレー帯波長よりも数倍感度が低い波長である550nm、或いは、その近傍の530nmから560nmの波長帯を測光波長とすることにより、検体に含まれる濃度に対して最適な感度が得られることにより、希釈操作、或いは希釈装置等の煩雑な操作、それに伴う付帯設備が不必要となる。さらに、本発明である当該波長帯はソーレー帯を測光波長とした場合よりも検量線の直線性が良好であるので、簡単な比色計、紫外可視分光光度計による測定値からの濃度の演算が容易であり、色調が鮮やかに変化するので、目視による濃度レベル判定も可能である。 また、ソーレー帯を測光波長とした場合はその波長帯の色調と重なる他の有機物や着色成分、例えば硝酸イオン、クレアチニン、ビリルビン、ビリベルジン、溶血ヘモグロビン等に起因するリチウム定量値への影響が懸念されるが、本発明にかかる波長帯を測光波長とした場合はその影響が少なく、より正確なリチウム濃度を求めることが可能である。 また、波長550nmで測定方法では、感度は下記の式の 550nmの感度 = リチウム・F28テトラフェニルポルフィリン錯体の550nm感度 + ヘモグロビンの550nm感度 − ヘモグロビンの600nm感度で補正すれば、ヘモグロビンの影響を相殺してより正確に測定することができる。 従って、従来のリチウム濃度の測定には大型の専用機器を必要としていたが、本発明により携帯型比色計でリチウム濃度を計測することができ、POCTキットとして構成することもできる。本発明に実施例1の波長550nmで検出したリチウム濃度−吸光度での実験結果のグラフの図、原子吸光法により求めたリチウム濃度(D)に対して、(C)実施例1のトリエタノールアミンを含んだ試薬、(A)実施例1のトリエタノールアミンの代わりにDMSO5%を含む試薬、(B)実施例1でトリエタノールアミンもDMSOを含まない試薬を比較した[表1]の図、本発明に実施例1の波長340nmで検出したリチウム濃度−吸光度での実験結果のグラフの図、本発明に実施例1の波長384nmで検出したリチウム濃度−吸光度での実験結果のグラフの図、本発明に実施例1の波長412nmで検出したリチウム濃度−吸光度での実験結果のグラフの図、本発明に実施例1の波長492nmで検出したリチウム濃度−吸光度での実験結果のグラフの図、本発明のF28テトラフェニルポルフィリン-リチウム錯体生成におけるの波長300〜450nmでのスペクトルの変化のグラフの図(濃度:0.9mM〜3.5mM毎の横軸が波長(wavelength)、縦軸が吸光度(Absorbance))、本発明のF28テトラフェニルポルフィリン-リチウム錯体生成におけるの波長450〜600nmでのスペクトルの変化のグラフの図、本発明に実施例1のリチウム濃度の測定値と、リチウム濃度が値付けされた管理血清との比較した[表2]の図、本発明に実施例2の波長476nmで検出したリチウム濃度−吸光度での実験結果のグラフの図、本発明に実施例3の波長550nmで検出したリチウム濃度−吸光度での実験結果のグラフの図である。 本発明者らは、血清及び血漿中のリチウム濃度をより簡単に定量測定できるリチウム試薬組成物を鋭意研究し、前掲の非特許文献1で製法が開示された、ピロール環を持つ大環状化合物を用い、テトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子の全部をフッ素原子に置き換えてフッ素原子を28個とした下記の構造式(以下、F28テトラフェニルポルフィリンと称す)に着目して、有機溶媒を用いて前掲特許文献3の特許第5222432号明細書に想到し、更に、F28テトラフェニルポルフィリンを、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の有機溶媒を用いずに水溶液にするための化合物として、 モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンから選択される塩基性有機化合物が存在することを見出し、本発明は、これを基礎とするものである ピロール環を持つ大環状化合物を利用したリチウム試薬組成物として前掲特許文献2,3に、ピロール環を持つ大環状化合物であってピロール環のβ位に8個の臭素(Br)原子を結合させ、リチウムイオンと反応する分析試薬が開発されているが、pH11以上のアルカリ性でなければリチウムイオンと反応しづらいが、F28テトラフェニルポルフィリンであれば、pH5からpH12でも反応するので、本発明は、このF28テトラフェニルポルフィリンをキレート剤として、有機溶媒以外のモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンから選択される塩基性有機化合物を混合した水溶液系でのリチウムイオンの定量測定に使用できるようにしたものであり、リチウム定量測定試薬として、以下に、本発明のリチウム試薬組成物の実施例について説明する。 実施例1(試料1) 実施例1(試薬1)のリチウム試薬としての組成は次の通りである。 キレート剤 :F28テトラフェニルポルフィリン 0.01重量% 多機能調整剤:トリエタノールアミン 1重量% 安定剤(非イオン性界面活性剤): Triton X-100(登録商標) (ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル) 1重量% 安定剤(陰イオン性界面活性剤): ドデシル硫酸ナトリウム 1重量% マスキング剤:EDTA-2K 0.04重量%以上のように、本試薬には、有機溶剤は含まれていない。また、多機能調整剤と記載したのは、実施例1でのトリエタノールアミンが分散剤、緩衝剤、乳化剤、錯化剤等の作用があり、実施例1でもこれらのいずれかとして作用するものと考えられるからである。 以上の試薬に水酸化ナトリウムを加え、pH10.8になるよう調節し、精製水で1Lとし有機溶媒を含まないリチウム測定試薬組成物を構成した。 なお、pH8の測定条件では若干、反応速度が遅くなり、定量的には10分〜20分ほどで安定化する。一方、pH10とした場合には10分以内に反応が完結する。よって、本発明のリチウム試薬組成物の緩衝系のpHを5〜10の範囲とすれば、pH11以上の場合のように水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような濃厚な水酸化物溶液を主とした緩衝系を使う必要はなく、扱いも簡便である。pHの設定は、使用者のニーズによるが、pH10であれば反応速度も速く、緩衝力が十分に維持できるGood緩衝剤、塩化アンモニウム系、炭酸系を使うことができる。 このリチウム試薬組成物240uLに既知濃度の炭酸リチウムを含む試料2uLを加え、十分に混合し、常温で10分間反応させた後、コロナ社 マイクロプレートリーダーSH-1000形を用いて550nmの吸光度を測定した。このときの各試料中のリチウム濃度に対して応答した吸光度を図1に示すようなものである。なお、図1は横軸が血清中のLi濃度(mM)で、縦軸が吸光度 (Absorbance)である((図1、図3、図4、図5、図6、及び、後述の図10、図11のスケールは同じ)。 図1のグラフから判るように、この結果、試料中のリチウム濃度に依存的に吸光度が増大し、且つ良好な近似直線を掃引することができた(直線性r=0.992)。したがって、本実施例1により得られた試薬組成物を用いてリチウム標準試料を使って、検量線を作成することができることが判る。 また、その回帰線は直線性が良好であるため、標準物質とブランクの2点で正確に濃度校正ができることができる。 ところで、前掲の特許文献3の特許第5222432号明細書での発明のジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の有機溶媒を含まない上記実施例でも、F28テトラフェニルポルフィリンがキレート剤として有効であることを、次の実験によって実証した。 [実証1] まず、血清中のリチウム濃度を正確に定量できることを明らかにするために、(A)実施例1のトリエタノールアミンの代わりにDMSO5%を含む試薬、(B)実施例1でトリエタノールアミンもDMSOを含まない試薬、(C)DMSOを含まずトリエタノールアミンを含む実施例1と同様の組成の試薬を、実施例1の操作によりリチウム測定試薬組成物を調製した。 この試薬組成物を用いて実施例1と同様の測定条件で検量線を作成し、リチウム濃度が異なる幾つかの血清を試料として、これに含まれるリチウムの濃度を求めた。このときの各々の試薬組成物により得られた測定値と、あらかじめ原子吸光法により求めた測定値を(D)として比較した結果を図2の[表1]に示す。 この結果、この[表1]から明瞭のように、(A)、(C)は (D)と良好な相関が得られた。つまり、DMSOもトリエタノールアミンも含まない(B)は、F28テトラフェニルポルフィリンをキレート剤をふくんでも全く発色せず、本発明の実施例1である(C)の有機溶媒であるDMSOを含まない試薬でも、も正確にリチウムを定量できることが実証できた。 [測定方法] 前記のリチウムの濃度の測定方法、及び測定装置を説明すると、実施例1の試薬240μLに試料2μLを加えたpH10.8の試験液を、常温で10分間反応後、コロナ社 マイクロプレートリーダーSH-1000形を用いて試薬ブランクを対照として、(イ)波長340nmの吸光度(図3)、(ロ)波長384nmの吸光度(図4)、(ハ)波長412nmの吸光度(図5)、(ニ)波長492nmの吸光度(図6)、先に説明したように(ホ)波長550nmの吸光度(図1:横軸が血清中のLi濃度(mM)、縦軸が吸光度Absorbance)を測定した。その結果が図1、図3、図4、図5、図6に示すグラフである。また、図7、図8にF28テトラフェニルポルフィリン-リチウム錯体生成の濃度(0.9mM〜3.5mM)毎におけるスペクトルの変化のグラフを示すが、測定対象波長の(イ:図3)主波長340nm、(ロ:図4)主波長384nm、(ハ:図5)主波長412nm、(ニ:図6)主波長492nm、(ホ:図1)主波長550nmを図7、図8で矢印で示している。なお、図7、図8で横軸が波長(wavelength)、縦軸が吸光度 (Absorbance)である。 テトラフェニルポルフィリン金属錯体に典型的なソーレー帯(380nmから460nm近傍)と呼ばれる最大感度が得られる波長ではなく、血清検体中リチウム濃度範囲に対して最適な感度が得られる波長550nm、或いは、その近傍の波長530nmから560nmの波長帯を測光波長とすることにより、希釈操作、或いは希釈装置等の煩雑な操作、それに伴う付帯設備が不必要となる。 さらに、上述した波長550nm、或いは、その近傍の波長530nmから560nmの波長帯はソーレー帯を測光波長とした場合よりも検量線の直線性が良好であるので、簡単な比色計や分光光度計での濃度の演算が容易であり、色調が鮮やかに変化するので、目視による濃度レベル判定も可能である。従って、従来のリチウム濃度の測定には大型の専用機器を必要としていたが、本発明により携帯型比色計や汎用されている紫外可視分光光度計でリチウム濃度を計測することができ、POCTキットとして構成することもできる。 また、上記のリチウム濃度測定方法による誤差の補正、及び修正方法の1つを説明する。 溶血している血清等の検体においては妨害因子としてヘモグロビン由来の540nm付近、560nmから650nm付近の二つの吸収ピーク(各々、βバンド、αバンド)が生じることが一般的に知られているが、このようなヘモグロビンを高濃度に含む検体と本発明の試薬組成物とを接解させた場合、本発明の測光波長である550nmとヘモグロビンのβ、αバンド由来の540nmの吸収が重複するため、実際の測定値に対して正の誤差が生じることが判った。 すなわち、(リチウム・F28テトラフェニルポルフィリン錯体由来の550nmの感度)+(ヘモグロビン由来550nmの感度)= 550nmの測定感度(∴ヘモグロビン由来の正の誤差が生じる。) ここで、本発明では、ヘモグロビンの550nmと600nmの二つの感度比がほぼ同一であることに注目した。即ち、ヘモグロビンの550nmの感度=ヘモグロビンの600nmの感度であることに注目し、ヘモグロビンの550nmの感度を600nmの感度で相殺することができることを見出した。 したがって、550nmの感度 = リチウム・F28テトラフェニルポルフィリン錯体の550nm感度 + ヘモグロビンの550nm感度 − ヘモグロビンの600nm感度 とすれば、ヘモグロビン由来の550nmの感度を相殺して、より正しい550nmの感度を得ることができる。もっとも、前記の相殺する補正値はヘモグロビン600nmでの感度を用いることが望ましいが、550nmを中心波長とする感度と同等の感度比となる600nmを中心とする周辺の波長を用いてもよい。 なお、上記の測定波長は550nmを主体としたが、図7、図8のスペクトルがから判るように、550nm以外でも、波長570nm、或いはその近傍の波長565nmから650nmの波長帯の感度を測定し、又は、波長340nm、或いはその近傍の波長310nmから350nmの波長帯の感度を測し、又は、波長380nm、或いはその近傍の波長350nmから400nmの波長帯の感度を測定し、又は、波長476nm、或いはその近傍の波長460nmから510nmの波長帯を測定波長としてリチウムの定量値を算出手段で算出するようにしてもよい。 [実証2][管理血清を試料としたプレートリーダーによる測定値の比較] リチウム濃度が値付けされた管理血清としてパソノルムL(PathonormL)(SERO AS製)、パソノルムH(PathonormH)(SERO AS製)、セロノルム ヒューマン(Seronorm Human)(SERO AS製)を試料として 実施例1と同一の試薬240μLに試料2μLを加えたpH10.8の試験液を、常温で10分間反応後、コロナ社 マイクロプレートリーダーSH-1000形にて550nmを測光波長として測定し、0.86mMのリチウムイオン(炭酸リチウムとして)を含む標準試料を用いてキャリブレーションした際の測定結果を図8の[表2]に示す。 この[表2]の結果から、本実施例1の試薬を用いた測定値が、認証値に極めて近いことが実証された。 実施例2(試料2) 次に、実施例2を説明すれば、実施例2は、実施例1とは組成が異なるのは、主にトリエタノールアミンを増量し、マスキング剤を多少変え、下記の組成の実施例2(試薬2)のリチウム試薬であり、この実施例2の組成を検証した。 実施例2(試薬2)のリチウム試薬としての組成は次の通りである。 キレート剤 :F28テトラフェニルポルフィリン 0.01重量% 多機能調整剤:トリエタノールアミン 3.7重量% 安定剤(非イオン性界面活性剤):Triton X-100(登録商標) (ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル) 1.5重量% 安定剤(陰イオン性界面活性剤): ドデシル硫酸ナトリウム 1重量% マスキング剤:EDTA-2K 0.045重量% 以上のように、本試薬には、有機溶剤は含まれていない。 以上の試薬に水酸化ナトリウムを加え、pH10.8になるよう調節し、精製水で1Lとし有機溶媒を含まないリチウム測定試薬組成物を構成した。 このリチウム試薬組成物240uLに既知濃度の炭酸リチウムを含む試料2uLを加え、十分に混合し、常温で10分間反応させた後、コロナ社 マイクロプレートリーダーSH-1000形にて476nmの吸光度を測定した。 このときの各試料中のリチウム濃度に対して応答した吸光度を図9に示す。 図9から判るように、この結果、試料中のリチウム濃度に依存的に吸光度が減少し、且つ良好な近似直線を掃引することができた。したがって、実施例2により得られた試薬組成物を用いてリチウム標準試料を使って、検量線を作成することができることが判る。 また、その回帰線は直線性が良好であるため、標準物質とブランクの2点で正確に濃度校正ができることができる。 実施例3(試料3) 次に、実施例3を説明すれば、実施例3は、実施例1とは組成が異なるのは、トリエタノールアミンに代えてジエタノールアミンを使用したもので、下記の組成の実施例3(試薬3)のリチウム試薬であり、この実施例2の組成を検証した。 実施例3(試薬3)のリチウム試薬としての組成は次の通りである。 キレート剤 :F28テトラフェニルポルフィリン 0.01重量% 多機能調整剤:ジエタノールアミン 3.7重量% 安定剤(非イオン性界面活性剤): Triton X-100(登録商標) (ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル) 1重量% 安定剤(陰イオン性界面活性剤): ドデシル硫酸ナトリウム 1重量% マスキング剤:EDTA-2K 0.04重量% 以上のように、本試薬には、有機溶剤は含まれていない。また、実施例3もジエタノールアミンを多機能調整剤と記載したのは、実施例1と同様に、分散剤、緩衝剤、乳化剤、錯化剤等の作用があり、実施例3もこれらのいずれかとして作用するものと考えられるからである。 以上の試薬に水酸化ナトリウムを加え、pH10.8になるよう調節し、精製水で1Lとし有機溶媒を含まないリチウム測定試薬組成物を構成した。 このリチウム試薬組成物240uLに既知濃度の炭酸リチウムを含む試料2uLを加え、十分に混合し、常温で10分間反応させた後、コロナ社 マイクロプレートリーダーSH-1000型にて550nmの吸光度を測定した。 このときの各試料中のリチウム濃度に対して応答した吸光度を図10に示す。 図10から判るように、この結果、試料中のリチウム濃度に依存的に吸光度が減少し、且つ良好な近似直線を掃引することができた。したがって、本実施例により得られた試薬組成物を用いてリチウム標準試料を使って、検量線を作成することができることが判る。 また、その回帰線は直線性が良好であるため、標準物質とブランクの2点で正確に濃度校正ができることができる。 以上説明したように、本発明の各実施例によれば、F28テトラフェニルポルフィリンにジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の有機溶媒を使用しないで、生体試料や環境試料等の水溶液中のリチウムの定量を、簡便な比色計により即座にリチウム濃度を測定でき、かつ、目視により判定が可能である。また、実施例1,2ではF28テトラフェニルポルフィリンを水溶液にするためにトリエタノールアミンを採用し、実施例3ではジエタノールアミンを採用したが、モノエタノールアミンを使用してもよく、この場合も、モノエタノールアミンが、トリエタノールアミンやジエタノールアミンと同様に分散剤、緩衝剤、乳化剤、錯化剤等であり、これらのどれかとして作用する多機能調整剤であるからである。 本発明は、上記の実施例の試薬を基本とし、実施例1乃至3の試薬を用いた測定方法、及びその測定装置である。 なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の各実施例に限定されるものでないことは勿論である。 テトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子を全部フッ素原子に置き換えた構造式 で表される化合物と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンより選択される塩基性有機化合物とを混合し、pHをpH5以上に調節するpH調節剤とを包含した水溶液とすることを特徴とするリチウム試薬組成物。 前記pH調節剤は、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアを含むアルカリ剤、酢酸、リン酸、くえん酸、炭酸、重炭酸、しゅう酸、塩酸を含む酸剤、及び、これらの塩類から選択されることを特徴とする請求項1に記載のリチウム試薬組成物。 前記pH調節剤は、pH緩衝剤であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム試薬組成物。 前記pH緩衝剤は、クエン酸、炭酸、重炭酸、りん酸、コハク酸、フタル酸、塩化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、Goodの緩衝剤としてMES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、CAPSO、CAPS、及び、これらの塩類から選択されることを特徴とする請求項3に記載のリチウム試薬組成物。 前記リチウム試薬組成物は、pH5からpH12の範囲でのリチウムに対して、発色可能であることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4に記載のリチウム試薬組成物。 前記リチウム試薬組成物に安定剤を包含したことを特徴とする請求項1に記載のリチウム試薬組成物。 前記安定剤は、非イオン性界面活性剤及び/又は陰イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項6に記載のリチウム試薬組成物。 前記非イオン性界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(商標登録:TritonX-100 ) 、p−ノニルフェノキシポリグリシドール及び、これらの塩類から選択されることを特徴とする請求項7に記載のリチウム試薬組成物。 前記陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムを含むアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムを含むポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩から選択されることを特徴とする請求項7に記載のリチウム試薬組成物。 前記リチウム試薬組成物にマスキング剤を包含したことを特徴とする請求項1に記載のリチウム試薬組成物。 前記マスキング剤は、エチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン(TPEN)、ピリジン、2,2-ビピリジン、プロピレンジアミン、 ジエチレントリアミン、ジエチレントリアミン−N,N,N',N",N"-五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン、トリエチレンテトラミン-N,N,N',N",N"',N"'-六酢酸(TTHA)、1,10-フェナントロリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、O,O'-ビス(2-アミノフェニル)エチレングリコール-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、N,N-ビス(2-ハイドロキシエチル)グリシン(Bicine)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N',N'-四酢酸(CyDTA)、O,O'-ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、N-(2-ハイドロキシル)イミノ二酢酸(HIDA)、 イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、 ニトリロトリスメチルりん酸(NTPO)及び、これらの塩類から選択されることを特徴とする請求項10に記載のリチウム試薬組成物。 血清及び血漿試験試料をテトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子を全部フッ素原子に置き換えた構造式 で表される化合物と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンより選択される塩基性有機化合物とを混合し、pHをpH5以上に調節するpH調節剤とを包含した水溶液とするリチウム試薬組成物と接解し、該水溶液中のリチウム錯体の発色、及びそのスペクトルを測定して、リチウムの定量値を算出することを特徴する血清、血漿、および尿試験試料中のリチウムイオンを測定することを特徴とするリチウムイオン測定方法。 前記リチウム錯体の発色、及びそのスペクトルにおいて、波長550nm、或いはその近傍の波長530nmから570nmの波長帯を測定波長として、その感度を測定することを特徴とする請求項12に記載のリチウムイオン測定方法。 前記波長550nmの感度は下記の式 550nmの感度 = リチウム・F28テトラフェニルポルフィリン錯体の550nm感度 + ヘモグロビンの550nm感度 − ヘモグロビンの600nm感度 で補正することを特徴とする請求項13に記載のリチウムイオン測定方法。 前記リチウム錯体の発色、及びそのスペクトルにおいて、波長570nm、或いはその近傍の波長565nmから650nmの波長帯を測定波長として、その感度を測定することを特徴とする請求項12に記載のリチウムイオン測定方法。 前記リチウム錯体の発色、及びそのスペクトルにおいて、波長340nm、或いはその近傍の波長310nmから350nmの波長帯を測定波長として、その感度を測定することを特徴とする請求項12に記載のリチウムイオン測定方法。 前記リチウム錯体の発色、及びそのスペクトルにおいて、波長380nm、或いはその近傍の波長350nmから400nmの波長帯を測定波長として、その感度を測定することを特徴とする請求項12に記載のリチウムイオン測定方法。 前記リチウム錯体の発色、及びそのスペクトルにおいて、波長476nm、或いはその近傍の波長470nmから510nmの波長帯を測定波長として、その感度を測定することを特徴とする請求項12に記載のリチウムイオン測定方法。 血清及び血漿試験試料をテトラフェニルポルフィリンの炭素に結合している水素原子を全部フッ素原子に置き換えた構造式 で表される化合物と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンより選択される塩基性有機化合物とを混合し、pHをpH5以上の範囲に調節するpH調節剤とを包含した水溶液とするリチウム試薬組成物と接解する接解手段を有し、該水溶液中のリチウム錯体の発色、及びそのスペクトルを測定して、リチウム錯体の発色、及びそのスペクトルを測定して、そのスペクトルにおいて、波長550nm、或いはその近傍の波長530nmから560nmの波長帯を測定波長してその感度を測定手段で測定し、又は、波長570nm、或いはその近傍の波長565nmから650nmの波長帯の感度を測定手段で測定し、又は、波長340nm、或いはその近傍の波長310nmから350nmの波長帯を測定波長とし、又は、波長380nm、或いはその近傍の波長350nmから400nmの波長帯を測定波長とし、又は、波長476nm、或いはその近傍の波長460nmから510nmの波長帯を測定波長としてリチウムの定量値を算出手段で算出することを特徴する血清及び血漿試験試料中のリチウムイオンを測定することを特徴とするリチウムイオン測定装置。 前記波長550nmの感度は下記の式 550nmの感度 = リチウム・F28テトラフェニルポルフィリン錯体の550nm感度 + ヘモグロビンの550nm感度 − ヘモグロビンの600nm感度 で補正することを特徴とする請求項16に記載のリチウムイオン測定装置。 【課題】水溶液中のリチウム濃度を即座に測定でき、かつ目視判定を可能にさせるリチウム濃度定量のためのリチウム試薬組成物、測定方法及び測定装置を提供する。【解決手段】構造式で表される化合物と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンより選択される塩基性有機化合物とを混合し、pHをpH5以上に調節する水溶液とするリチウム試薬組成物、それを用いたリチウムイオン測定方法及び測定装置。【選択図】なし