生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_PCRクランピング法
出願番号:2013243985
年次:2015
IPC分類:C12N 15/09,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

瀧屋 俊幸 佐藤 恵美 JP 2015100322 公開特許公報(A) 20150604 2013243985 20131126 PCRクランピング法 日本製粉株式会社 000231637 辻居 幸一 100092093 熊倉 禎男 100082005 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 市川 さつき 100123777 秋澤 慈 100156982 瀧屋 俊幸 佐藤 恵美 C12N 15/09 20060101AFI20150508BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20150508BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A 12 OL 23 4B024 4B063 4B024AA11 4B024BA79 4B024CA01 4B024CA11 4B024HA08 4B024HA12 4B063QA01 4B063QA18 4B063QQ04 4B063QQ06 4B063QQ09 4B063QQ42 4B063QQ54 4B063QR08 4B063QR32 4B063QR35 4B063QR42 4B063QR50 4B063QR55 4B063QR62 4B063QR73 4B063QR78 4B063QS25 4B063QS28 4B063QS34 4B063QS36 4B063QS39 4B063QX02 4B063QX10 本発明はPNAを用いたPCRクランピング法に関するものである。 従来、検体中の菌叢解析方法として、検体を一般生菌用寒天培地上で生育したコロニーからDNAを抽出して、菌種を同定する方法が採用されてきた。そのため、培地で培養されない菌は検出できなかった。そこで近年、検体中から直接DNAを抽出し、次世代シーケンサーなどを用いて解析する手法も行なわれている。 微生物の種類(菌叢)を解析する方法としては、16SrRNAをターゲットとしてPCR法で増幅し、得られたDNAの塩基配列を相同性検索プログラムを用いて、公共の塩基配列データベースに登録されているデータと比較することで同定する手法が広く用いられている。この方法においては、多種多様な細菌群を同時に増幅するための、ユニバーサルプライマーが複数報告されている。 しかし、この方法を植物検体中の菌叢解析に適用する場合には、植物由来のDNAの混入が障害となる。すなわち、植物由来のDNA中には細菌のDNAと非常に相同性の高い領域があり、細菌由来のDNAをPCR増幅する場合、同時に植物由来のDNAも増幅され、その解析が妨げられる。そのため、植物由来のDNAが増幅しないような特殊なプライマーを設計する必要があったが、このような特殊なプライマーを用いた場合、特定の細菌由来のDNAを増幅することができない可能性もある。 そこで、植物検体中の菌叢解析をより容易に行うためにPNA(ペプチド核酸:Peptide Nucleic Acid)によるPCRクランピング法を用いて植物由来のDNA(ミトコンドリア、及び葉緑体)の増幅を抑制し、微生物由来のDNAのみをPCR増幅する方法が提案されている(非特許文献1)。 PCRクランピング法は、PNAをPCR法に組み合わせた方法である。PNA骨格構造は、一般的に N−(2−アミノエチル)−グリシン分子によってらせん構造を有し、塩基と骨格構造との立体的距離及び結合している各塩基間の距離がDNAにおけるものと同じになるように設計されている。このことによりDNAが相補的なDNA及びRNAに対し、DNA/DNA及びDNA/RNA二重鎖を形成するように、PNAも相補的なDNA及びRNAに対し二重鎖を作ることができる。PNAはDNAよりも高い融解温度(Tm)を有し、PNA/DNAの結合はDNA/DNAの結合よりも強い。またPNAのTmは数個の塩基配列の変異によって大きく影響を受けるため、これらの性質を利用し点変異の検出プローブとして用いられている。例えば非特許文献2及び非特許文献3には、野生型の塩基配列に相補的なPNAの存在下、PCR反応を行うことにより、野生型塩基配列の増幅を抑制し、変異型塩基型配列の増幅を促進することによる塩基配列の変異の検出方法が開示されている。 非特許文献1の方法は、微生物SSUrDNA(=16SrDNA)用プライマーと植物由来のDNAのアニーリングを、プライマーとほぼ同じ領域において植物由来のDNAに特異的に結合する、つまりはプライマーと競合するPNAにより阻害することで微生物由来のDNAのみをPCR増幅する方法である。原理の概略を図1に示す。 非特許文献1において使用するPNAはプライマーとほぼ同じ領域で、かつプライマーよりも数塩基だけ下流に設計される。そのため使用するプライマーごとにPNAを設計する必要がある。そしてPNAは植物由来のDNAと相補的であり、かつ微生物のDNAとは配列が異なる必要があるため、逆にプライマーをどこに設計するかについても制限を受けることになる。 また非特許文献1の方法ではプライマーとPNAの結合位置がほぼ同じ領域であるため、配列特異性が低いプライマーがPNAよりも先に植物DNAに結合してしまった場合に、PCR反応が進んでしまいPCR反応を阻害できないだけでなく、PCR産物にエラーが入り以降のサイクルでPNAが結合できなくなってしまう。そこでプライマーより先にPNAを植物由来のDNAに確実にアニーリングする必要があり、PCRの反応条件においてPNAのみをアニーリングする工程を、プライマーをアニーリングする工程とは別により高温側に設定する必要がある。 また、プライマーをアニーリングする工程はPNAのみをアニーリングする工程よりも温度が低いため、PNAが非特異的に微生物DNAにアニーリングするリスクが高まる。その為プライマーの細菌DNAへの結合がPNAよりも強くなければならない。PNAやプライマーの非特異結合を避けるために、それぞれの工程の温度は厳密に設定される必要がある。 以上のように非特許文献1の方法においては、PNA及びプライマーの設計に制限が多く、PCR反応条件の設定の最適化も煩雑であった。「PNA−PCRクランピング技術を用いた植物根圏の糸状菌フロラ解析法の確率」平成17年度〜平成18年度科研費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書 平成19年5月 研究代表者 境 雅夫 鹿児島大学農学部准教授T. TAKIYA et al. Journal of Bioscience and Bioengineering, Vol. 96, No.6, p588-590, 2003「ラミブジン耐性B型肝炎ウィルス:peptide nucleic acid mediated PCR clamping(PMPC)法によるポリメラーゼYMDDモチーフ塩基配列の高感度検出」 本発明は、PCRクランピング法において、公知のユニバーサルプライマーを含む多種のプライマーを使用することが出来る、より汎用性が高い方法であって、PCR反応の条件についてもより簡略化した方法を提供することを目的とする。好ましくは植物検体中の細菌解析のためのPCRクランピング法において、公知の細菌検出用ユニバーサルプライマーを含む多種のプライマーを使用することが出来る、より汎用性が高い方法であって、PCR反応の条件についてもより簡略化した方法を提供することを目的とする。 すなわち本発明は以下の通りである。(1)PCRクランピング法であって、植物由来のDNAのPCR反応を阻害し、かつ微生物由来のDNAのPCR反応を阻害しない1種以上のPNAプローブを使用し、前記PNAプローブが、植物由来のDNAにおいて、フォワードプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3’末端側より30塩基以上下流の位置およびリバースプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3’末端側より30塩基以上下流の位置で挟まれる領域に含まれるセンス鎖又はアンチセンス鎖の配列と相補的な配列を有する前記方法。(2)植物検体中の細菌叢解析のための前記(1)に記載の方法。(3)PCR反応がDNAの変性工程、前記DNAに対するPNAのアニーリング工程、前記DNAに対するプライマーのアニーリング工程及びプライマーの伸長反応工程を含む前記(1)又は(2)に記載の方法。(4)PNAのアニーリング工程とプライマーのアニーリング工程が同一工程である、前記(3)に記載の方法。(5)PNAのTm値が伸長反応温度よりも5℃以上高い、前記(1)〜(4)いずれか1項に記載の方法。(6)前記PNAプローブの塩基長が13〜25merである、前記(1)〜(5)いずれか1項に記載の方法。(7)前記PNAプローブが細菌由来のDNAに対して両端以外に合計2塩基以上の変異がある、前記(1)〜(6)いずれか1項に記載の方法。(8)PNA濃度がプライマー濃度に対して0.1〜50倍量である、前記(1)〜(7)いずれか1項に記載の方法。(9)植物由来のDNAがミトコンドリアDNA、葉緑体DNAからなる群から選択される、前記(1)〜(8)いずれか1項に記載の方法。(10)植物が小麦である、前記(9)に記載の方法。(11)前記PNAプローブが配列番号1〜179から選択される配列を有することを特徴とする前記(10)に記載の方法。(12)配列番号1〜179から選択される配列を有するPNAプローブ。 植物由来のDNAにおいて、フォワードプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3’末端側より30塩基以上下流の位置およびリバースプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3’末端側より30塩基以上下流の位置で挟まれる領域に含まれるセンス鎖又はアンチセンス鎖の配列と相補的な配列を有するように設計されたPNAを使用する本発明の方法により、プライマーのアニーリングに影響を及ぼすこと無く、植物由来のDNA(植物検体中に含まれるミトコンドリアや葉緑体を含むプラスチドなどの各種植物小器官のDNA)の増幅を抑制し、微生物由来のDNAのみをPCR増幅することができる。本発明の方法において、プライマーは公知のユニバーサルプライマーを含む多種のプライマーを用いることができ、PNAの配列を変更することで任意の植物由来のDNA配列のPCR反応を抑制できる。またPNAをアニールさせる領域は、細菌DNAと植物DNA間で少なくとも合計2塩基以上の違い(特異性)があればよく、比較的設計が容易で汎用性がある。 また、本発明はPCR反応において特にPNAのみをアニーリングする工程を導入することなしに、植物由来のDNAの増幅を抑制し、微生物由来のDNAのみをPCR増幅することができる。非特許文献1の方法の原理である。本発明の方法の原理である。細菌のリボソームRNAの構成と、プライマーの位置の例である。小麦葉緑体と主要な細菌とのアライメントの結果である。小麦ミトコンドリアと主要な細菌とのアライメントの結果である。16SrRNA遺伝子領域の増幅結果である。PNAを用いたPCRクランピングの結果である。第3のPNAを用いたPCRクランピングの結果である。 図2を参照して本発明の原理を説明する。(1)葉緑体遺伝子に対し、特異的なPNA(葉緑体PNA)を加えることにより、PNAが同遺伝子上にハイブリダイズ(結合)するため、プライマーの伸長反応が停止し、葉緑体遺伝子は増幅しない。(2)ミトコンドリア遺伝子に対し、特異的なPNA(ミトコンドリアPNA)を加えることにより、PNAが同遺伝子上にハイブリダイズするため、プライマーの伸長反応が停止し、ミトコンドリア遺伝子が増幅しない。(3)細菌遺伝子に対し、葉緑体遺伝子又はミトコンドリア遺伝子に特異的なPNAを加えても、細菌遺伝子とはハイブリダイズしない。そのため、プライマーの伸長反応が行われ、細菌遺伝子のみを増幅することができる。(植物由来のDNA) 本発明において、植物由来のDNAとは、植物検体中に含まれるミトコンドリアや葉緑体を含むプラスチドなどの各種植物小器官のDNAである。(PNAの設計) PNAは、4種の各塩基が結合しているPNAモノマーのオリゴマー又はポリマーである。すなわち、PNAモノマーは塩基とN−(2−アミノエチル)−グリシンという二つの部分からなり、これが一つのユニットとして繰り返されてPNAとなる。そしてPNAにおけるモノマーは塩基(A:アデニン、T:チミン、G:グアニン及びC:シトシン)に応じて4種類となる。 本発明において使用するPNAは常法によって製造することができる。PNAの塩基長は13〜25塩基が適当であり、好ましくは16〜22塩基、より好ましくは18〜20塩基である。 PNAの向き(orientetion)は、植物由来のDNAのセンス側、アンチセンス側どちらでも構わない。 本発明において使用するPNAは、植物由来のDNAにおいて、フォワードプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3’末端側より約30塩基以上、好ましくは約50塩基以上下流の位置およびリバースプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3'末端側より約30塩基以上、好ましくは約50塩基以上下流の位置で挟まれる領域に含まれるセンス鎖又はアンチセンス鎖の配列と相補的な配列を有するように設計する。 植物由来のDNAにおいて、フォワードプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3’末端側より30塩基未満又はリバースプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3’末端側より30塩基未満の領域に含まれるセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列と相補的な配列を有するように設計すると、PNAが植物由来のDNAにアニーリングする前にPNAがアニーリングする領域までPCR反応が進む可能性があり、PNAによりPCR反応を十分阻害できない為不適である。 PCRにおけるプライマーの伸長反応において、植物由来のDNAに一旦アニーリングしたPNAが乖離することを防ぐため、PNAのTmは伸張反応温度よりも約5℃以上高いことが好ましい。これはPCR反応において伸張反応工程とアニーリング工程が同一の工程で行われる場合も同様である。ここで伸張反応温度とはDNAポリメラーゼによりプライマーを伸長させる反応時の温度をいう。 なお、PNAのTmは以下の式に従って計算することができる。 Tm=0.94×(Aの数)+2.47×(Cの数)+5.53×(Gの数)−0.08×(Tの数)+35 PNAの塩基配列は、阻害対象DNAである植物由来のDNAに対し特異的に結合させるために、植物由来のDNAに対し少なくとも9〜21merの(両末端の2塩基を除く)連続した配列が相補的であり、かつ細菌由来のDNAに対して、両末端以外に2塩基以上の挿入、欠損を含む変異が存在することが好ましい。 PNAの濃度はプライマー濃度に対して、好ましくは0.1〜50倍量、より好ましくは0.5〜10倍量、さらに好ましくは1〜4倍量である。(プライマーについて) 本発明で用いるプライマーは、細菌由来のDNAと結合し、かつ植物由来のDNAとも結合し増幅させるものであれば特に限定されない。好ましくは16SrRNA遺伝子領域内の配列を増幅するものである。 細菌のリボソームRNAは16SrRNA、23SrRNA、5SrRNAから構成され、細菌の菌叢解析には、16SrRNA遺伝子(約1500bp)が一般的に用いられている。16SrRNA遺伝子には、V1〜V9の可変領域が存在し、可変領域の塩基配列は細菌の種毎に異なるため、その塩基配列を調べることによって菌種を同定することができる。 また、16SrRNA遺伝子配列は近縁の菌種間での配列保存領域が多いため、近縁種や亜種の識別が困難である場合など、16SrRNA遺伝子よりも配列多型が多いDNAジャイレースサブユニットB遺伝子(gyrB)の配列を使用することもできる。 16SrRNA遺伝子領域内の配列を増幅するプライマーの例を以下に示すが、これに限定されるものではない。*Fはフォワードプライマー、Rはリバースプライマー、数字は16SrRNA遺伝子上の位置を示す文献:Turner, S., Pryer, K.M., Miao, V.P.W., and Palmer, J.D. 1999. Investigating deep phylogenetic relationships among cyanobacteria and plastids by small subunit rRNA sequence analysis. Journal of Eukaryotic Microbiology 46: 327-338. Lane, D.J. 1991. 16S/23S rRNA sequencing. In: Nucleic acid techniques in bacterial systematics. Stackebrandt, E., and Goodfellow, M., eds., John Wiley and Sons, New York, NY, pp. 115-175. Weisburg, W.G., Barns, S.M., Pelletier, D.A., and Lane, D.J. 1991. 16S ribosomal DNA amplification for phylogenetic study. Journal of Bacteriology 173: 697-703. Hodkinson, B.P., and Lutzoni, F. 2009. A microbiotic survey of lichen-associated bacteria reveals a new lineage from the Rhizobiales. Symbiosis 49: 163-180. 例えば、16SrRNA遺伝子の上流500bp:V1〜V3領域を増幅するプライマーセット(5Fおよび535R:株式会社ファスマック製)を使用して16SrRNA遺伝子上の一部を増幅することができる。 gyrB領域内の配列を増幅するプライマーの例としては以下のようなものがあるが、これに限定されるものではない。 プライマーUP-1 (5´-GAAGTCATCATGACCGTTCTGCAYGCNGGNGGNAARTTYGA-3´) プライマーUP-2r (5´-AGCAGGGTACGGATGTGCGAGCCRTCNACRTCNGCRTCNGTCAT-3´)文献:Yamamoto, S., S. Harayama (1995) PCR amplification and direct sequencing of gyrB genes with universal and their application to the detection and taxonomic analysis of Pseudomonas putida strains. Appl.Environ. Microbiol., 61, 1104-1109 本発明の他の実施態様は、植物検体中の菌叢解析方法である。具体的には、(1)植物検体から試料中に存在する細菌類のゲノムDNAもしくはRNAを抽出し、RNAの場合は逆転写反応によりcDNAに変換した後、ゲノムDNAもしくはcDNA鋳型とし、(2)所定のプライマー及びPNAを使用する本発明のPCRクランピング法に付し、(3)得られたPCR産物を公知の手法を用いて解析すること、例えばPCR産物をクローニング及びシークエンスし、既知の細菌DNAと相同性検索することで構成される。 なお(2)におけるPCRクランピング法は、上述のように予め植物検体に混入することが予測される所定の植物由来DNAについて設計したもの使用しても良い。またさらにその結果から予期せず増幅されたさらなる植物由来DNAについてPNAを設計して用いても良い。(植物検体) 本発明に使用することができる植物検体は、1種以上の細菌のゲノムDNAもしくはRNAを含有する植物由来のものであれば、植物の種類や部位等特に制限はない。例えば、小麦の場合、粒状もしくはそれを粉砕した粉状の試料にPBS溶液を加え、ホモジナイザーにて懸濁し、その懸濁液(小麦洗液)からゲノムDNAもしくはRNAを抽出したものを使用する。 本発明によれば、試料中に存在する細菌類のゲノムDNAやRNAを抽出する方法としては、公知のゲノムDNAもしくはRNA抽出法がそれぞれ使用され得る。例えばプロテアーゼKなどの細胞壁分解酵素で処理する方法やガラスビーズによる物理的破壊方法などにより抽出する方法があるがこれに限定されない。また抽出用の試薬として市販されているものを適宜使用することができる。抽出されたゲノムDNAもしくはRNAは公知の方法により精製してもよい。 上記の抽出方法によって抽出されたゲノムDNAやRNAは、次いで、本発明のPCRクランピング法に付される。(PCR条件) PCR反応の条件は特に限定されず、通常用いられる範囲内で適宜選択することができる。PCR反応はDNAの変性工程、DNAへのPNAのアニーリング工程、DNAへのプライマーのアニーリング工程、伸長反応工程を含む。例えば、TaKaRa EX TaqTM(宝酒造)を用いて、チューブあたり鋳型DNA20ng、添付の10×Ex Taq バッファー2μl、dNTPs各5nmol、各プライマー20pmol、各PNA40pmol、Taq DNAポリメラーゼ1.0Uを滅菌蒸留水で全量20μlとし、例えば、変性:96℃、1分;アニーリング:50℃、0.5分;伸長:72℃、1分の反応を40サイクル行う、等が挙げられるが、これらに限定されない。 従来のPCRクランピング法と異なり、本発明の方法はPCR反応においてPNAのアニーリング工程及びプライマーのアニーリング工程を同一の工程とすることが出来る。PNAはプライマーよりもTm値が高く設定されているため、プライマーがアニールする時点ではすでにPNAが十分にアニールしており、植物由来DNAのPCR反応の阻害が可能である。 なお、上記「PNAの設計」の項でも述べたようにPCRの伸長反応において、植物由来のDNAに一旦アニーリングしたPNAが乖離することを防ぐ観点から、PNAのTmは伸長反応温度よりも約5℃以上高いことが好ましい。同じ観点から伸長反応工程とアニーリング工程を同一の工程としても良く、この場合においてもPNAのTmは伸長反応温度(=アニーリング温度)よりも約5℃以上高いことが好ましい。(クローニングとシークエンス) PCR増幅によって得られたPCR産物は、必要に応じてスピンカラムなどを用いて精製した後、好ましくは、適当なベクター中にクローニングされる。クローニング方法についても特に限定されず、公知の方法で行われる。増幅断片を挿入されたベクターで大腸菌を形質転換し、LB寒天などの固形培地上にプレートし、得られたコロニーから抽出したDNAを鋳型として、常法に従ってシークエンシング反応を行い、各クローンの塩基配列を決定する。また、PCR産物を直接次世代シーケンサーで解析することもできる。(相同性検索) 決定された塩基配列は、適当な遺伝子配列データベースおよび相同性検索プログラムを用いて、既知の細菌DNA配列、例えば既知の細菌16SrDNA配列とのホモロジー検索を行うことにより、最も高い相同性を示す既知配列を抽出することができる。例えば、得られた塩基配列をNCBI(National Center for Biotechnology Information)の公共の塩基配列データベース(GenBank)に登録されているリボソームRNAの塩基配列と、相同性検索プログラムとしてBlast (Basic Local Alignment Search Tool)を用いて相同性検索を行い、その検索結果より菌種を同定する。また、上記以外の遺伝子配列データベース、公知の相同性検索プログラムを用いることもできる。(検出可能な菌の種類) 本発明の細菌叢解析方法において、検出可能な菌の種類は、その菌の細菌叢解析方法において利用する遺伝子配列が既知のものであれば特に制限されない。本発明においては、例えば、最初に阻害対象の植物由来DNAと代表的な数種の細菌DNA配列のアライメントの結果をもとにPNAの候補配列を選抜し、適当な遺伝子配列データベースおよび相同性検索プログラムを用いて、その選抜されたPNAの候補配列と既知の細菌DNA配列のアライメントを検討し、最初の選抜に用いた数種の細菌以外の細菌と相同性の高い候補配列を排除することにより検出可能な菌の種類を増やすことが出来る。 例えば小麦由来の検体について細菌叢解析を行う場合には、阻害対象の小麦由来DNAとして代表的な小麦ミトコンドリアDNA又は小麦葉緑体DNAと従来の方法によって小麦検体から検出されることが知られている代表的な細菌(パエニバチルス属(Paenibacillus、パンテア属(Pantoea)、エンテロバクター属(Enterobacter)、クルトバクテリウム属(Curtobacterium)、シュードモナス属(Pseudomonas))とのアライメントを検討し、その結果をもとにPNAの候補配列を選抜し、遺伝子配列データベースおよび相同性検索プログラムを用いて、その選抜されたPNAの候補配列と既知の細菌DNA配列のアライメントを検討し、最初の選抜に用いた数種の細菌以外の細菌と相同性の高い候補配列を排除することにより検出可能な菌の種類を増やすことが出来る。 以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。1.方法(1)PNAの設計 小麦の葉緑体(chloroplast)およびミトコンドリア(mitochondrion)の16SrRNA遺伝子配列と5種類の細菌、パエニバチルス属(Paenibacillus)、パンテア属(Pantoea)、エンテロバクター属 (Enterobacter)、クルトバクテリウム属(Curtobacterium)及び シュードモナス属(Pseudomonas)の16SrRNA遺伝子配列のアライメントの結果を図4及び図5に示す。 この結果を基に、以下の(a)〜(c)の条件によりPNAの候補配列を決定した。(a)PNAの連続した配列が植物由来のDNAに対して相補的であり、かつ細菌由来のDNAに対して、両末端以外に合計2塩基以上の挿入、欠損を含む変異が存在すること。(b)PNAの配列が、植物由来のDNAにおいて、フォワードプライマー又はリバースプライマーがアニーリングする領域の各プライマーの3'末端側よりそれぞれ約30塩基以上下流の位置で挟まれる領域に含まれるセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列と相補的な配列を有すること。(c)PNAのTmが後述するPCRの伸長反応温度(72℃)よりも約5℃以上高いこと。 PNAの候補配列の例を以下の表に列挙する。 上記候補配列のなから、以下のものを選択し、PNAを合成した。葉緑体用配列番号1 (chl217R20) N'-CTAGCTAATCAGACGCGAGC (Tm 82.9℃)ミトコンドリア用配列番号46 (mit161F18) N'-GGCCTCCGTTTGCTGGAA (Tm 82.0℃)(2)DNA抽出 小麦粒(1CWおよびDNS)25gに10倍量のPBS溶液を加え、回転式ホモジナイザーで懸濁し、その懸濁液(小麦粒洗液)からDNeasy Plant kits(QIAGEN社製)を用いてDNAを抽出した。(3)PCR増幅反応(16SrRNA遺伝子領域の増幅) 下記の16SrRNA遺伝子領域の細菌検出用共通プライマー(5F、535R:株式会社ファスマック製)を用いて、下記のPCR反応組成、PCR温度条件でPCR増幅反応を行なった。得られた増幅産物は3%アガロースゲルにて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色した。プライマー配列:(フォワード) 5F 5'-TGGAGAGTTTGATCCTGGCT-3' (リバース) 535R 5'-TATTACCGCGGCTGCTG-3'PCR反応組成:試薬 液量滅菌水 X*μLTaKaRa Ex Taq[ 5U/μL] 0.2μL10×Ex Taq Buffer 2.0μLdNTPs[2.5mM each] 2.0μLプライマーミックス(5Fと535Rの混合液)[ 各10 μM] 2.0μLPNA溶液 [10μM] 4.0μL(コントロールには添加しない)DNA溶液 [10ng/μL] 2.0μL合計 20μL*反応液の合計量が20μLになるように滅菌水は調整。PCR温度条件: 温度 時間 サイクル数 96℃ 2分 1サイクル ↓ 変性:96℃ 0.5分 40サイクルアニーリング:50℃ 0.5分 伸長:72℃ 1分 ↓ 72℃ 5分 1サイクル(4)クローニングおよびコロニー形成 定法に従い、得られた増幅産物をPCR2.1-TOPOプラスミドベクターに挿入(クローニング)し、そのプラスミドをXL10-Goldコンピテントセル(大腸菌)に導入した。コンピテントセルをLB寒天培地に播種し、一晩培養してコロニーを形成させた。(5)塩基配列分析 得られたコロニーのうち各々約50個について、以下のプライマーを用いてプラスミドDNAを増幅させ、カラム精製した後、片側のプライマー(M13 Rev)を用いてシークエンス反応を行なった。プラスミド増幅用プライマー(フォワード) M13 Fw:GTAAAACGACGGCCAGT (リバース) M13 Rev:CAGGAAACAGCTATGACPCR温度条件:(プラスミドの増幅)温度 時間 サイクル数96℃ 2分 1サイクル ↓96℃ 0.5分 40サイクル52℃ 0.5分72℃ 1分 ↓72℃ 5分 1サイクル(6)相同性検索 得られた塩基配列とNCBI(National Center for Biotechnology Information)の塩基配列データベース(GenBank)に登録されているリボソームRNAの塩基配列とをBlast (Basic Local Alignment Search Tool)を用いて相同性検索を行い、その検索結果より細菌の菌種を同定した。(7)菌叢解析 相同性検索の結果より、菌種を目レベルで分類し、上位9菌種とそれ以外の計10種に整理し、各々の菌種の割合を求めた。2.結果(1)16SrRNA遺伝子領域の増幅 PNAを添加せずに、16SrRNA遺伝子領域の増幅を行った結果、3本の増幅バンド(約550bp、約500bp、約450bp)が得られた(図6)。それぞれの増幅バンドの塩基配列についてBlastを用いて相同性検索をおこなった結果、約550bpのバンドは小麦ミトコンドリア、約500bpのバンドは細菌、約450bpのバンドは小麦葉緑体由来のものだった。 なお、細菌由来のバンドは極めて増幅が悪く、試験によっては全く検出できなかった。また、ミトコンドリアのバンドに隠れて、細菌由来のバンドのみを得ることは困難だった。(2)PNAを用いたPCRクランピング法 葉緑体特異的PNAおよびミトコンドリア特異的PNAの両方を添加して16SrRNA遺伝子領域の増幅を行った。PNAを加えたことで葉緑体およびミトコンドリア由来の増幅産物は得られず、代りに2本の増幅バンド(約500bp、約410bp)が得られた(図7)。それぞれの増幅バンドの塩基配列をBlastを用いて相同性検索した結果、約500bpは細菌由来、約410bpは小麦由来の新たなバンドであった。このバンドは、葉緑体やミトコンドリア以外の領域から増幅したDNAであって、16SrRNAとは全く相同性のない塩基配列だった。(以後これを第三の小麦バンドと呼ぶ)。(3)第三の小麦用PNAを加えたPCRクランピング法 さらに第三の小麦バンドについても、その塩基配列から特異的なPNAを設計し、それを葉緑体特異的PNAおよびミトコンドリア特異的PNAと同時に加えてPCRした結果、第三の小麦バンドも消失し、細菌(約500bp)のみの遺伝子増幅産物を得ることができた。(図8)。 なお第三の小麦バンドのDNA配列から以下の(a)〜(c)の条件によりPNAの候補配列を決定した。(a)PNAの連続した配列が第三の小麦バンドDNAに相補的であること。なお第三の小麦バンドDNAの塩基配列は各細菌由来のDNAに対してホモロジーが50%以下であるため、小麦バンドDNAに相補的な配列を有するPNAは細菌由来のDNAには結合しない。(b)PNAの配列が、第三の小麦バンドのDNAにおいて、フォワードプライマー又はリバースプライマーがアニーリングする領域の各プライマーの3'末端側よりそれぞれ約30塩基以上下流の位置で挟まれる領域に含まれるセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列と相補的な配列を有すること。(c)PNAのTmが後述するPCRの伸長反応温度(72℃)よりも約5℃以上高いこと。PNAの候補配列の例を以下の表に列挙する。 上記候補配列のなから、以下のものを選択し、PNAを合成した。第三の小麦バンド用配列番号122(3rd-PNA 297F16) N'- GTGATCCTGGCATGGT (Tm 77.1℃)PCR反応条件は、以下の条件を除き、上記「PCR増幅反応(16SrRNA遺伝子領域の増幅)」における条件と同じである。PCR反応組成:試薬 液量滅菌水 X*μLTaKaRa Ex Taq[ 5U/μL] 0.2μL10×Ex Taq Buffer 2.0μLdNTPs[2.5mM each] 2.0μLプライマーミックス(5Fと535Rの混合液)[ 各10 μM] 2.0μLPNA溶液 [10μM] 4.0μLDNA溶液 [10ng/μL] 2.0μL合計 20μL*反応液の合計量が20μLになるように滅菌水は調整。*コントロールには第三の小麦バンド用PNAは添加しない。ただし、上記の葉緑体用とミトコンドリア用PNAはすべてに添加した。(4)菌叢解析結果 従来法(一般生菌用の寒天培地にて2日間培養して得られたコロニーの菌叢結果)とほぼ同一の結果を得ることが出来た。エンテロバクター目(Enterobacteriales)、スフィンゴモナス目(Sphingomonobadales)、キサントモナス目(Xanthomonadales)、シュードモナス目(Pseudomonadales)等が検出され、特に検体中の主要な細菌は両方の方法共にエンテロバクター目(Enterobacteriales)であり一致していた。 PCRクランピング法であって、植物由来のDNAのPCR反応を阻害し、かつ微生物由来のDNAのPCR反応を阻害しない1種以上のPNAプローブを使用し、前記PNAプローブが、植物由来のDNAにおいて、フォワードプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3’末端側より30塩基以上下流の位置およびリバースプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3’末端側より30塩基以上下流の位置で挟まれる領域に含まれるセンス鎖又はアンチセンス鎖の配列と相補的な配列を有する前記方法。 植物検体中の細菌叢解析のための請求項1に記載の方法。 PCR反応がDNAの変性工程、前記DNAに対するPNAのアニーリング工程、前記DNAに対するプライマーのアニーリング工程及びプライマーの伸長反応工程を含む請求項1又は2に記載の方法。 PNAのアニーリング工程とプライマーのアニーリング工程が同一工程である、請求項3に記載の方法。 PNAのTm値が伸長反応温度よりも5℃以上高い、請求項1〜4いずれか1項に記載の方法。 前記PNAプローブの塩基長が13〜25merである、請求項1〜5いずれか1項に記載の方法。 前記PNAプローブが細菌由来のDNAに対して両端以外に合計2塩基以上の変異がある、請求項1〜6いずれか1項に記載の方法。 PNA濃度がプライマー濃度に対して0.1〜50倍量である、請求項1〜7いずれか1項に記載の方法。 植物由来のDNAがミトコンドリアDNA、葉緑体DNAからなる群から選択される、請求項1〜8いずれか1項に記載の方法。 植物が小麦である、請求項9に記載の方法。 前記PNAプローブが配列番号1〜179から選択される配列を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。 配列番号1〜179から選択される配列を有するPNAプローブ。 【課題】PCRクランピング法、具体的には植物検体中の細菌叢解析のためのPCRクランピング法において、より汎用性の高い方法を提供する。【解決手段】植物由来のDNAのPCR反応を阻害し、かつ微生物由来のPCR反応を阻害しない1種以上のPNAプローブであって、前記PNAプローブが、植物由来のDNAにおいて、フォワードプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3'末端側より30塩基以上下流の位置およびリバースプライマーがアニーリングする領域のプライマーの3'末端側より30塩基以上下流の位置で挟まれる領域に含まれるセンス鎖又はアンチセンス鎖の配列と相補的な配列を有するものを使用すると上記課題が解決される。【選択図】なし配列表


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