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タイトル:公開特許公報(A)_ゼータ電位分布の測定方法
出願番号:2013242088
年次:2015
IPC分類:G01N 15/10,G01N 27/447,G01N 15/14


特許情報キャッシュ

福田 輝幸 浜田 大輔 田中 聡 芦沢 健 JP 2015102386 公開特許公報(A) 20150604 2013242088 20131122 ゼータ電位分布の測定方法 花王株式会社 000000918 大谷 保 100078732 片岡 誠 100089185 福田 輝幸 浜田 大輔 田中 聡 芦沢 健 G01N 15/10 20060101AFI20150508BHJP G01N 27/447 20060101ALI20150508BHJP G01N 15/14 20060101ALI20150508BHJP JPG01N15/10 AG01N27/26 331AG01N15/14 P 13 OL 30 本発明は、ゼータ電位分布の測定方法、該方法を用いた水分散体中の粒子及びインクジェット記録用顔料水分散体の品質管理方法、該方法により得られる値を用いたインクの吐出耐久性の予測方法、インクジェット記録用顔料水分散体の組成及び製造条件の決定方法、並びにインクジェット記録用顔料水分散体に関する。 ゼータ電位は粒子の表面特性を示す重要なパラメータであり、近年測定手法や測定セル等が新たに開発され、工業的にも利用できるパラメータとして注目されている。しかしながら、ゼータ電位はその測定条件によって得られる結果は大きく変わり、工業的な利用に供するには、その役割を果たす正確な値であることが重要となる。 一方、近年、ゼータ電位の異なる粒子同士が引き起こす、ヘテロ凝集等が分散体の安定性を損なう問題として注目を集めている。ゼータ電位の異なる粒子は、異粒子間ばかりでなく、同種の粒子であってもその表面特性のばらつきによって生じる。 したがって、例えば、顔料粒子間の凝集が品質に影響するインク、塗料等の製造分野では、分散体中の粒子のゼータ電位分布を正確に把握することが、品質管理上で重要となる。 上記の問題を解決する手法として、特許文献1には、流体媒体中の浮遊粒子に第1の電界を作用させ、ヘテロダイン信号の第1のスペクトル組成を測定し、次いで第2の電界を作用させ、ヘテロダイン信号の第2のスペクトル組成を測定し、得られた第1及び第2のスペクトル組成の差をとる、浮遊粒子の電気泳動移動度の測定方法が開示されている。 特許文献2には、より粒子の実状に近いゼータ電位分布を取得するために、電気浸透流れを抑制する分散液中の粒子の電荷誘導パラメータの算定方法が開示されている。 また、特許文献3には、分散性色材とその製造方法及びそれを用いた水性インクジェット記録用インクが開示されており、特許文献4には、混色トナーの製造方法が開示されているが、その中で、電位をかけた際の粒子の電気泳動移動度を視覚的に観察することで、ゼータ電位の分布を測定しようとする試みがなされている。特開昭52−145291号公報特開2002−5888号公報特開2006−8794号公報特開2008−176294号公報 しかしながら、従来のゼータ電位の測定では同じ値の粒子であっても分散安定性等の物性が良いものと悪いものが混在する場合があり、粒子に対する品質管理や商品設計に用いることに難があった。例えば、特許文献1及び2の技術では、高分子コロイドに代表される粒子の一部ないし全部が柔軟な粒子の場合は、電荷が付与された際に粒子の形状が変形又は一部破損等を起こし、ゼータ電位分布を正確に測定できないという問題があった。また、剛性の高い粒子の表面を表面処理し、電荷を持たせた粒子であっても、電荷が付与された際に、付与した表面修飾基が脱離し、本来のゼータ電位分布が正確に測定できないという問題があった。 一方、特許文献3及び4では、見かけゼータ電位の分布が表現されているように見えるが、粒子自体が持つブラウン運動による影響が無視されている。このため粒子表面が本来持っているゼータ電位、ひいては表面電位を正確に表現しているとは言い難い。 本発明は、電界の印加による粒子の変形を抑制し、ブラウン運動の影響を排除した、粒子表面の電気的な状態をより正確に表現することができ、かつ簡便に行うことができるゼータ電位分布の測定方法、該方法を用いた水分散体中の粒子及びインクジェット記録用顔料水分散体の品質管理方法、該方法により得られる値を用いたインクの吐出耐久性の予測方法、インクジェット記録用顔料水分散体の組成及び製造条件の決定方法、並びにインクジェット記録用顔料水分散体を提供することを課題とする。 本発明者等は、上記の問題を解決するための方法として、粒子に付与する電界強度を制御し、その条件下で得た2つのゼータ電位分布の差分を評価することで、測定時間内における粒子の変形量を小さくでき、ブラウン運動の影響を排除したゼータ電位分布を測定できると考え、検討を行った。 その結果、電界強度を特定範囲に制限しながら、2つのゼータ電位分布を取得し、特定の処理を施し差分を得ることによって、ゼータ電位分布がブラウン運動の影響を排除しつつ、粒子の種類、ひいては高分子コロイド等の変形のし易さや剛性の高い粒子の表面の表面処理基の脱離のし易さに影響されず、測定することが可能となることを見出した。 すなわち、本発明は、次の[1]〜[7]を提供する。[1]下記ゼータ電位測定工程(i)〜(iii)を有するゼータ電位分布の測定方法。 工程(i):測定セル中の粒子に第1の電界を印加して、ゼータ電位分布1を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得る工程 工程(ii):測定セル中の粒子に第1の電界強度より高い第2の電界を400〜4000V/mの範囲で印加して、ゼータ電位分布2を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布2を得る工程 工程(iii):規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を得る工程[2]前記[1]の測定方法を用いた、水分散体中の粒子の品質管理方法。[3]前記[1]の測定方法を用いたインクジェット記録用顔料水分散体の品質管理方法。[4]前記[1]の測定方法により得られる値を用いたインクジェット記録用顔料水分散体を含有するインクの吐出耐久性の予測方法。[5]前記[1]の測定方法により得られる値を用いたインクジェット記録用顔料水分散体の組成の決定方法。[6]前記[1]の測定方法により得られる値を用いたインクジェット記録用顔料水分散体の製造条件の決定方法。[7]前記[5]又は[6]の決定方法により決定した方法で得られたインクジェット記録用顔料水分散体。 本発明によれば、粒子、特に高分子コロイドに代表される粒子の一部ないし全部が柔軟な粒子や、剛性の高い粒子の表面を表面処理し電荷を持たせた粒子等において、電界の印加による粒子の変形を抑制し、ブラウン運動の影響を排除した、粒子表面の電気的な状態をより正確に表現することができかつ簡便に行うことができるゼータ電位分布の測定方法、該方法を用いた水分散体中の粒子及びインクジェット記録用顔料水分散体の品質管理方法、該方法により得られる値を用いたインクの吐出耐久性の予測方法、インクジェット記録用顔料水分散体の組成及び製造条件の決定方法、並びにインクジェット記録用顔料水分散体を提供することができる。規格化ゼータ電位分布1を得る工程(i)の模式図である。規格化ゼータ電位分布2を得る工程(ii)の模式図である。規格化ゼータ電位分布3を得る工程(iii)の模式図である。規格化ゼータ電位分布4を得る工程(iv)の模式図である。[ゼータ電位分布の測定方法] 本発明のゼータ電位分布の測定方法は、下記ゼータ電位測定工程(i)〜(iii)を有する方法である。 工程(i):測定セル中の粒子に第1の電界を印加して、ゼータ電位分布1を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得る工程 工程(ii):測定セル中の粒子に第1の電界強度より高い第2の電界を400〜4000V/mの範囲で印加して、ゼータ電位分布2を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布2を得る工程 工程(iii):規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を得る工程 本発明のゼータ電位分布の測定方法は、更に下記工程(iv)及び(v)を有することが好ましい。 工程(iv):工程(iii)で得られた規格化ゼータ電位分布3をヒストグラム化する工程 工程(v):工程(iv)で得られたヒストグラムの面積を測定する工程 図1に規格化ゼータ電位分布1を得る工程(i)の模式図を示し、図2に規格化ゼータ電位分布2を得る工程(ii)の模式図を示し、図3に規格化ゼータ電位分布3を得る工程(iii)の模式図を示し、図4に規格化ゼータ電位分布4を得る工程(iv)の模式図を示す。 本発明のゼータ電位分布の測定方法が、その測定時間内における高分子コロイドに代表される粒子の一部ないし全部が柔軟な粒子の変形量を少なくし、ゼータ電位分布への影響を抑制できる理由は定かではないが、以下のように考えられる。 ゼータ電位分布の測定時に電界強度を低くすると、粒子に付与される外力が小さくなり、粒子の加速度は抑制される。このため、粒子中の帯電している箇所は緩やかに外力を受ける。一方、粒子中の帯電していない箇所は、帯電している箇所に加えられた外力からの力の伝播を緩やかに受け、粒子の中の帯電している箇所と帯電していない箇所は一様に移動する。このため、電界強度が低いと、粒子の形状を変化させずにゼータ電位分布を測定することができると考えられる。 一方、電界強度を高くすると、粒子に付与される外力が大きくなり、粒子の加速度は高められる。このため、粒子の中の帯電している箇所は急激に外力を受ける。一方、粒子中の帯電していない箇所は、慣性でその場に止まろうとするため、粒子中の帯電している箇所と帯電していない箇所は引き剥がされるように外力を受ける。このため、電界強度が高いと、粒子の形状が変化したり、又は粒子の帯電している箇所と帯電していない箇所が分裂することがあると考えられる。 また、ゼータ電位測定の簡便な方法として知られているレーザードップラー法では、周波数5×1012Hz程度の入射光が、測定セル中の粒子に当たることで周波数が100Hz程度変化する度合いを検出し、ゼータ電位を近似計算している。 ゼータ電位の測定においてセル中の分散体は、(a)印加された電界と分散体の表面電位から発生するクーロン力による運動、(b)分散体自体のブラウン運動、(c)電気浸透流(密閉したセル内でセル壁面に生じる電荷が誘起するセル内の液体流動)による媒体ごとの運動によって移動しており、市販されているレーザードップラー法による測定装置では(c)の影響を排除した上で、(a)と(b)の影響を混合した信号としてゼータ電位を測定し、その平均値を結果として表示することが一般的である。このため、ゼータ電位の測定結果グラフは粒子本来が持つゼータ電位に比べ分布がブロードになった状態で描かれる。 これに対し、粒子のブラウン運動の影響を相殺することができれば、粒子自体が本来持っているゼータ電位の分布を測定できると考えられる。本発明は、前記ゼータ電位測定工程(i)〜(iii)を順次行い、規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を求めることにより、粒子のブラウン運動の影響を相殺し、粒子本来のゼータ電位分布を測定することができると考えられる。 以下、電界強度、及びゼータ電位測定工程(i)〜(iii)について順次説明する。<工程(i)> 工程(i)は、測定セル中の粒子に第1の電界を印加して、ゼータ電位分布1を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得る工程である。(ゼータ電位分布の測定) 工程(i)におけるゼータ電位分布の測定方法は、特に限定されず公知の方法により行うことができる。例えば、レーザードップラー法、顕微鏡電気泳動法、回転回折格子法等を用いることができる。これらの中でも、迅速性、簡便性の観点から、レーザードップラー法が好ましい。〔レーザードップラー法〕 レーザードップラー法とは、外部電界によって泳動する粒子にレーザー光を照射し、該粒子から散乱する光の周波数変化(ドップラーシフト量△ν)を測定することにより、ゼータ電位を算出する方法である。 まず、得られたドップラーシフト量△νから、下記式(2)により電気泳動速度(V)を求める。(n:溶媒の屈折率、θ:散乱角、λ:レーザー光の波長) 次いで、電気泳動速度(V)と電界強度(E)から、下記式(3)により、電気移動度(U)を求める。 電気移動度(U)=V/E (3) ゼータ電位(ζ)は、電気移動度(U)、溶媒の粘度(η)、溶媒の誘電率(ε)から、下記のSmoluchowskiの式(4)により求めることができる。 レーザードップラー法によるゼータ電位の測定装置としては、大塚電子株式会社製のゼータ電位測定機「ELSZ−2」及び「ELSZ−1000」、株式会社堀場製作所製の「SZ−100−Z」等が挙げられる。(規格化ゼータ電位分布1) 規格化ゼータ電位分布1は、例えば、測定セル中の粒子に第1の電界を印加してゼータ電位分布1を得た後、ピークトップの周波数をゼロとして、ピーク強度が1になるよう規格化して得ることができる。 第1の電界強度は、好ましくは、第2の電界強度の80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である。 ここで、電界強度とは、ゼータ電位を測定する際に設定可能なパラメータであり、電極間にかかる電圧と電極間距離を用いて、下記式(1)で表すことができる。 電界強度(E)(V/m)=V/d (1) 式(1)中、Vは電圧(V)、dは電極間距離(m)である。<工程(ii)> 工程(ii)は、測定セル中の粒子に第1の電界強度より高い第2の電界を400〜4000V/mの範囲で印加して、ゼータ電位分布2を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布2を得る工程である。 ゼータ電位分布の測定方法は、工程(i)におけるゼータ電位分布の測定方法と同じである。 規格化ゼータ電位分布2は、例えば、測定セル中の粒子に第2の電界を印加してゼータ電位分布2得た後、ピークトップの周波数をゼロとして、ピーク強度が1になるよう規格化して得ることができる。 第2の電界強度は、ゼータ電位測定に必要な粒子の電気泳動を生じさせる観点、及び、電界による粒子の変形を抑制する観点から、400V/m以上であり、好ましくは450V/m以上、より好ましくは500V/m以上、更に好ましくは550V/m以上、より更に好ましくは600V/m以上であり、そして、4000V/m以下、好ましくは3600V/m以下、より好ましくは3200V/m以下、更に好ましくは2400V/m以下、より更に好ましくは1800V/m以下である。<工程(iii)> 工程(iii)は、上記で得られた規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を得る工程である。 規格化ゼータ電位分布3は、例えば、正及び負の周波数領域において、各強度毎に規格化ゼータ電位分布1と規格化ゼータ電位分布2の差分を求め、得られた正側と負側の周波数の差分をX軸に、強度をY軸に再プロットして得ることができる。 前記第1の電界強度は、実質的にゼロにすることもできる。電界強度を実質的にゼロにとすることで、粒子に電荷を与えない際の光子相関関数から電界を印加しない場合の移動度分布をあらかじめ求めることができ、これと電界を付与した際の移動度分布との差を求めることで、粒子のブラウン運動の影響を相殺した、電界によって生じる粒子の運動のみを抽出でき、誤差を最小限としたゼータ電位分布を測定することが可能となる。<工程(iv)> 工程(iv)は、前記工程(iii)で得られた規格化ゼータ電位分布3をヒストグラム化する工程である。 ヒストグラムは、特定のゼータ電位を有する粒子の出現頻度を示すものであり、このヒストグラムの形状、絶対値、平均値、標準偏差、面積等を解析することにより、粒子の表面電子状態を詳細に把握することが可能となり、特に粒子の品質管理の有用な指標となる。前記ヒストグラムは実施例記載の方法により得ることができる。<工程(v)> 工程(v)は、前記工程(iv)で得られたヒストグラムの面積を測定する工程である。 前記面積はヒストグラムと散乱強度がゼロの線に挟まれた領域を計算することにより得ることができる。面積を用いた具体的な解析方法としては、例えば、ゼータ電位の絶対値が低い側から面積を累積し、累積面積がヒストグラム全面積に対して所定の閾値に到達したときのゼータ電位を読み取る方法が挙げられる。このような解析方法で得られた特定のゼータ電位は、特に粒子の品質管理の有用な指標となる。<測定対象> 本発明のゼータ電位分布の測定方法により測定される粒子は、特に限定されないが、例えば、金属、セラミックス、カーボン、有機・無機ゾル、有機・無機顔料、高分子ポリマー、高分子コロイド等が挙げられる。これらの粒子の形態としては、例えば、溶剤分散体、水分散体、又はポリマーを含む水分散体等の形態が挙げられる。本発明では液滴であるエマルジョンの粒子として含まれる。これらの中でも、電界の印加によって粒子表面の電子状態が変動し易い、ポリマー、特に水不溶性ポリマーを含む水分散体に本発明のゼータ電位分布の測定方法は好適に適用することができる。 前記ポリマーを含む水分散体は、少なくとも測定対象となる粒子、分散媒である水、ポリマーを含有し、有機溶剤や界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。 このようなポリマーを含む水分散体の具体例としては、インクジェット記録用顔料水分散体又は水系インク、塗料、接着剤、電極塗工用水系スラリー等が挙げられる。これらの中でも、特に電界の印加によって粒子表面の電子状態が変化し易い、インクジェット記録用顔料水分散体に好適に適用することができる。[水分散体中の粒子の品質管理方法] 本発明の品質管理方法は、本発明のゼータ電位分布の測定方法を利用して粒子の品質を管理する方法であればよい。例えば、測定対象である原料、中間体、及び最終製品について、本発明のゼータ電位分布の測定方法を適用し、得られた前記規格化ゼータ電位分布3の形状、標準偏差の解析や、前記ヒストグラムの絶対値、平均値、標準偏差、面積等を解析することによって粒子の品質管理を行うことができる。 上記解析により得られた解析値を測定対象の品質管理に好適に用いることができるかどうかは、例えば、数値化した製品の性能評価結果との相関係数を求めることにより調査することができる。 特に、本発明の品質管理方法は、水分散体中の粒子の品質管理方法に好適に用いることができる。前記水分散体としては、例えば、インクジェット記録用顔料水分散体又は水系インク、塗料、電極塗工用スラリー、半導体封止材、化粧品、医薬品、食品、及びこれらの工業原料として用いられる高分子ラテックス分散液、高分子エマルジョン分散液、カーボンナノチューブ分散液、金属コロイド分散液等が挙げられる。これらの中でも、本発明が有用に利用される工業的分野として、インクジェット記録用顔料水分散体又は水系インクの品質管理が挙げられる。 以下に、インクジェット記録用水分散体の品質管理方法について説明するが、インクジェット記録用水分散体は水系インクを包含する概念として説明する。[インクジェット記録用顔料水分散体の品質管理方法] インクジェット記録ヘッドは半導体製造プロセス等の微細加工技術を用いて製造されており、微小な管内をインクが滞りなく流動することが求められる。インク流路中でインクの堆積等が発生し易いインクでは、インク流路に抵抗が生じ易くなるため、吐出ノズルにおけるインク液滴のメニスカス形状が不安定となり易く、吐出不安定、ひいては吐出不能となるおそれがある。 特にポリマー分散剤を含む水系インクは、吐出ノズル開口部で乾燥し易く、ノズル開口部でのインク増粘により、目詰まりや吐出曲がりが発生し易い。この目詰まり、吐出曲がりは、ゼータ電位の異なる顔料粒子が同一の系内に存在することにより生じる、ヘテロ凝集が関係すると考えられる。 また、インクジェット記録用サーマル記録ヘッドは、ヒータの加熱によってインク中の水に膜沸騰を起こさせ、その際に生じる衝撃波によってインクを吐出させる。その際、ヒータの表面が300℃以上に昇温されるため、ヒータ表面にインク成分が焦げ付く、いわゆるコゲーション現象が見られ、吐出耐久性が問題となる。 前記ヒータは主として金属酸化物で形成されており、アニオン性インクが安定化するpH7〜11の環境では、ヒータ表面がわずかに負に帯電し、インク中のナトリウムイオンを引き寄せている。一方、インク中の顔料粒子も負に帯電しているため、顔料表面にもナトリウムイオンが引き寄せられている。 この顔料粒子が、ヒータ表面に近づくと、ヒータと顔料粒子間に存在するナトリウムイオン濃度が上昇するため、インクバルク中のナトリウム濃度との差から浸透圧が発生し、顔料粒子はヒータから離れる方向に浸透圧による斥力を受ける。 このため、顔料粒子の表面電位が高い場合、顔料粒子自体がヒータに近づきにくく、加熱されたヒータ表層での顔料粒子の焦げ付きが抑制される。 したがって、顔料粒子のゼータ電位はコゲーション現象を評価する上での指標となり得る。 上記インクジェット記録用顔料水分散体の製造においては、インクが所望の性能を満たしているか実際にインクジェット記録用プリンターによる吐出を経て品質保証を試みる例も多い。しかしながら、プリンターによる吐出評価は、破壊的評価であり、評価に長時間を要する上にインクジェット記録用ヘッドのロットによる性能ばらつきも混在し、定量的な評価が難しかった。これに対し、本方式を採用することで吐出評価の省略が見込めるようになった。 本発明のゼータ電位分布の測定方法及び品質管理方法を、インクジェット記録用顔料水分散体(以下、「顔料水分散体」ともいうが、特記しない限り水系インクを包含する)に応用した場合を中心に説明する。[インクジェット記録用顔料水分散体] インクジェット記録用顔料水分散体は、例えば、以下の製造工程により製造することができる。 製造工程(1):水、顔料、ポリマー、及び有機溶媒を含有する混合物を、分散処理して、分散処理物を得る製造工程。 製造工程(2):製造工程(1)で得られた分散処理物の有機溶媒を除去して、顔料水分散体を得る製造工程。<製造工程(1)>(顔料) 前記顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。 無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。 有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。 色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、赤色、青色、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。 好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。〔自己分散顔料〕 前記顔料は、自己分散型顔料を用いることもできる。自己分散型顔料とは、親水性官能基(カルボキシ基やスルホン酸基等のアニオン性親水基、又は第4級アンモニウム基等のカチオン性親水基)の1種以上を直接又は他の原子団を介して顔料の表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能である無機顔料や有機顔料を意味する。ここで、他の原子団としては、炭素数1〜12のアルカンジイル基、フェニレン基又はナフチレン基等が挙げられる。 親水性官能基の量は特に限定されないが、自己分散型顔料1g当たり100〜3,000μmolが好ましく、親水性官能基がカルボキシ基の場合は、自己分散型顔料1g当たり200〜700μmolが好ましい。 自己分散型顔料の市販品としては、CAB−O−JET 200、同300、同352K、同250C、同260M、同270Y、同450C、同465M、同470Y、同480V(キャボット社製)やBONJET CW−1、同CW−2(オリヱント化学工業株式会社製)、Aqua−Black 162(東海カーボン株式会社製)等が挙げられる。 上記の顔料は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。(ポリマー) ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマーが好ましく、ビニル単量体の付加重合により得られる水不溶性ビニル系ポリマーがより好ましい。〔水不溶性ポリマー〕 また、水不溶性ポリマーとしては、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、疎水性モノマー(a)(以下、「(a)成分」ともいう)と、イオン性モノマー(b)(以下、「(b)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下、「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるポリマーが好ましい。このポリマーは、(a)成分由来の構成単位と(b)成分由来の構成単位を有する。 また、前記ポリマーには、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、更に(c)ノニオン性モノマー(以下、「(c)成分」ともいう)をモノマー成分として用いるのが好ましい。 ビニル系ポリマーとしては、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、(a)成分と、(b)成分と、更に必要に応じて(c)成分を含むモノマー混合物を共重合させてなるビニル系ポリマーが好ましい。このビニル系ポリマーは、(a)成分由来の構成単位及び(b)成分由来の構成単位を有し、必要に応じて更に(c)成分由来の構成単位を有する。〔疎水性モノマー(a)〕 疎水性モノマー(a)としては、芳香族基含有モノマー、アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。 芳香族基含有モノマーとしては、炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマーや芳香族基含有(メタ)アクリレート等がより好ましい。 スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。 また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。 顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーを併用することも好ましい。 なお、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートとアクリレートの双方を意味する。 アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。 なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。 疎水性モノマー(a)として、マクロマーを用いてもよい。 マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500〜100,000の化合物であり、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、1,000〜10,000が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質として分子量が既知の単分散のポリスチレンを用いて測定される値である。 片末端に存在する重合性官能基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。 マクロマーとしては、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、芳香族基含有モノマー系マクロマー及びシリコーン系マクロマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロマーがより好ましい。 芳香族基含有モノマー系マクロマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記疎水性モノマー(a)で記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。 商業的に入手しうるスチレン系マクロマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社製の商品名)等が挙げられる。 シリコーン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。〔イオン性モノマー(b)〕 イオン性モノマー(b)は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、染料含有ポリマーのモノマー成分として用いられる。 イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられ、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点、吐出耐久性を向上させる観点から、アニオン性モノマーが好ましい。 アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。 カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。 スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。 リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。 上記アニオン性モノマーの中では、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上がより好ましく、メタクリル酸が更に好ましい。〔ノニオン性モノマー(c)〕 ノニオン性モノマー(c)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等のアラルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。中でもアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。 商業的に入手しうる(c)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社製のNKエステルM−20G、同40G、同90G、EH−4E等、日油株式会社製のブレンマーPE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400等、PP−500、同800等、AP−150、同400、同550等、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等が挙げられる。これらの中では、特に印字濃度の観点から、新中村化学工業株式会社製のNKエステルEH−4E(ポリエチレングリコール[n=4]メタクリレート2−エチルヘキシルエーテル)が好ましい。 上記(a)成分〜(c)成分の各成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 水不溶性ポリマー製造時における、上記(a)成分〜(c)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)、すなわち水不溶性ポリマー中における(a)成分〜(c)成分に由来の構成単位の含有量は、次のとおりである。 (a)成分の含有量は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは48質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。 (b)成分の含有量は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは23質量%以下、更に好ましくは21質量%以下である。 (c)成分の含有量は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは32質量%以下である。 水不溶性ポリマーは、上記の疎水性モノマー(a)、イオン性モノマー(b)、更に必要に応じてノニオン性モノマー(c)、及びその他のモノマーの混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造される。重合法としては溶液重合法が好ましい。 溶液重合法で用いる有機溶媒に制限はないが、モノマーの共重合性の観点から、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン等が好ましい。 重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。中でもアゾ化合物が好ましく、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。 重合連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤が挙げられるが、メルカプタン類が好ましく、2−メルカプトエタノールがより好ましい。 好ましい重合条件は、重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。重合時間は、好ましく1時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは6時間以上であり、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下、更に好ましく10時間以下である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。 重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。<ポリマーの重量平均分子量> ポリマーの重量平均分子量は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点及び印字濃度が高く、耐擦性に優れ、裏抜けが抑制された印刷物を得る観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは4万以上、より更に好ましくは5万以上であり、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは30万以下、更に好ましくは20万以下、より更に好ましくは15万以下、より更に好ましくは10万以下である。なお、重量平均分子量は、実施例に記載の方法により求めることができる。(有機溶媒) 有機溶媒はポリマーとの親和性が高く、一方で、製造工程(1)において主媒体である水に対する溶解度が小さいことが望ましい。その観点から、20℃における水に対する溶解度が40質量%未満であることが好ましい。 有機溶媒としては、炭素数2〜8の脂肪族アルコール、ケトン、エーテル、エステル類等が好ましく、脂肪族アルコールとしては、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトンとしては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテルとしては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。顔料への濡れ性及び顔料へのポリマーの吸着性を向上させる観点から、ケトンが好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。 製造工程(1)における、有機溶媒に対するポリマーの質量比(ポリマー/有機溶媒)は、顔料の濡れ性及び顔料へのポリマーの吸着性を向上させる観点から、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.45以下である。(中和剤) 顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、水不溶性ポリマーのイオン性基、好ましくはアニオン性基、を中和するために、中和剤を用いることが好ましい。中和剤を用いる場合、顔料水分散体のpHが7〜11になるように中和することが好ましい。 用いられる中和剤としては、イオン性基がアニオン性基である場合、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア等の揮発性塩基、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の有機アミンが挙げられ、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、アルカリ金属の水酸化物、揮発性塩基が好ましく、アルカリ金属の水酸化物がより好ましい。 アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。 中和剤は、十分に中和を促進させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましく10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。 中和剤及び中和剤水溶液は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。 顔料の含有量は、顔料水分散体の分散安定性及び得られる水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点、顔料水分散体の生産性を向上させる観点から、製造工程(1)における水、顔料、水不溶性ポリマー、有機溶媒、及び必要に応じて添加する中和剤等を含有する全混合物(以下、「製造工程(1)における全混合物」ともいう)中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。 ポリマーの含有量は、顔料水分散体の分散安定性、及び得られる水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、製造工程(1)における全混合物中、好ましくは1.5質量%以上、より好ましく2.0質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7.0質量%以下である。 製造工程(1)における有機溶媒の含有量は、顔料の濡れ性及び顔料へのポリマーの吸着性を向上させる観点から、製造工程(1)における全混合物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは13質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。なお、有機溶媒を2種以上含む場合は、それらの合計量を有機溶媒量として算出する。以下においても同様である。 製造工程(1)における、水の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点及び顔料水分散体の生産性を向上させる観点から、分散処理物中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましく75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。 顔料水分散体における、ポリマーの量に対する顔料の量の質量比(顔料/ポリマー)は、耐擦性に優れ、裏抜けが抑制された印刷物を得る観点、顔料水分散体の分散安定性及び得られる水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは80/20以下、より好ましくは75/25以下、更に好ましくは70/30以下であり、そして、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは65/35以上である。(分散処理) 製造工程(1)において、さらに前記混合物を分散して分散処理物を得る。分散処理物を得る分散方法に特に制限はない。本分散一回だけで顔料粒子の体積平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の体積平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。 製造工程(1)の予備分散における温度は、好ましくは0℃以上、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは10℃以下である。予備分散における分散時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、そして、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。 前記混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー〔プライミクス株式会社、商品名〕等の高速撹拌混合装置が好ましい。 本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社、商品名)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。 高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力や分散処理のパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。 処理圧力は、好ましくは60MPa以上、より好ましく100MPa以上、更に好ましくは150MPa以上であり、そして、好ましくは250MPa以下、より好ましくは200MPa以下、更に好ましくは180MPa以下である。 また、分散処理のパス回数は、好ましくは3パス以上、より好ましくは10パス以上、更に好ましくは15パス以上であり、そして、好ましくは30パス以下、より好ましくは25パス以下、更に好ましくは20パス以下である。<製造工程(2)> 前記製造工程(2)は、製造工程(1)で得られた分散処理物から前記有機溶媒を除去して、顔料水分散体を得る製造工程である。有機溶媒を除去する方法に特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。 有機溶媒を除去する過程で凝集物が発生することを抑制し、顔料水分散体の分散安定性及びインクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、有機溶媒を除去する前に、分散処理物に水を添加して、水に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/水)を、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.30以下、そして、好ましくは0.15以上、より好ましくは、0.20以上に調整することがより好ましい。 また、質量比(有機溶媒/水)を調整した後の顔料水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、有機溶媒を除去する過程で凝集物の発生を抑制する観点、及び顔料水分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下である。 本製造工程において用いられる有機溶媒を除去するための装置としては、回分単蒸留装置、減圧蒸留装置、フラッシュエバポレーター等の薄膜式蒸留装置、回転式蒸留装置、攪拌式蒸発装置等が挙げられる。効率よく有機溶媒を除去する観点から、回転式蒸留装置及び攪拌式蒸発装置が好ましく、回転式蒸留装置がより好ましく、ロータリーエバポレーターが更に好ましい。 有機溶媒を除去する際の分散処理物の温度は、用いる有機溶媒の種類によって適宜選択できるが、減圧下、好ましくは40℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。 このときの圧力は、好ましくは1kPa以上、より好ましくは2kPa、更に好ましくは5kPa以上であり、そして、好ましくは50kPa以下、より好ましくは20kPa以下、更に好ましくは10kPa以下である。有機溶媒の除去時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは5時間以上であり、そして、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下、更に好ましくは10時間以下である。 得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は0.1質量%以下が好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。 得られた顔料水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点及び水系インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは18質量%以上であり、そして、30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは22質量%以下である。 得られたインクジェット記録用顔料水分散体は、水不溶性ポリマーが吸着した顔料粒子又は顔料を含有するポリマー粒子(固体分)が水を主媒体とする中に分散しているものである。顔料粒子は、例えば、ポリマーに顔料が内包された粒子形態、ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、ポリマー粒子表面に顔料が露出された粒子形態等を包含する。 顔料水分散体中の顔料粒子の体積平均粒径は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点、及び印字濃度が高く、耐擦性に優れ、裏抜けが抑制された印刷物を得る観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上であり、そして、200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは130nm以下である。 なお、顔料粒子の体積平均粒径は、実施例に記載の方法により測定することができる。[インクジェット記録用水系インク] インクジェット記録用水系インクは前記インクジェット記録用顔料水分散体を含有するものであり、水分散体をそのまま水系インクとして用いることもできる。水系インクは、必要に応じて、さらに通常用いられる溶媒、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を添加して調製することができる。 顔料の含有量は、インクの保存安定性及び吐出耐久性を向上させる観点、印字濃度が高い印刷物を得る観点から、水系インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である。 ポリマーの含有量は、水系インクの保存安定性及び吐出耐久性を向上させる観点、印字濃度が高い印刷物を得る観点から、水系インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、より更に好ましくは1.8質量以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2.5質量以下である。 水の含有量は、水系インクの保存安定性及び吐出耐久性を向上させる観点から、水系インク中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。 水系インクの20℃における静的表面張力は、水系インクの吐出耐久性を向上させる観点及び耐擦性に優れ、裏抜けが抑制された印刷物を得る観点から、好ましくは25mN/m以上、より好ましくは30mN/m以上、更に好ましくは32mN/m以上であり、そして、好ましくは45mN/m以下、より好ましくは40mN/m以下、更に好ましくは38mN/m以下である。 また、水系インクの35℃における粘度は、水系インクの吐出耐久性を向上させる観点及び耐擦性に優れ、裏抜けが抑制された印刷物を得る観点から、好ましくは1mPa・s以上であり、より好ましくは1.5mPa・s以上であり、更に好ましくは2mPa・s以上であり、そして、好ましくは10mPa・s以下であり、より好ましくは7mPa・s以下であり、更に好ましくは4mPa・s以下である。[インクジェット記録用顔料水分散体の組成、製造条件の決定方法、及びインクの吐出耐久性の予測方法] 前記インクジェット記録用顔料水分散体において、本発明のゼータ電位分布の測定方法により得られる値を用いて、この値が特定範囲となるように、インクジェット記録用顔料水分散体の組成や、製造条件を決定することができる。 また、例えば、インクの吐出耐久性等の目的とする物性を満たすための範囲を、本発明のゼータ電位分布の測定方法により得られる値の範囲を予め実験を行い確定し、判断したいサンプルの測定値がその範囲内かどうかにより、目的とする吐出耐久性等の物性が得られるかどうかを予測する方法に用いることができる。さらに、この予測方法によりインクジェット記録用顔料水分散体の組成や、製造条件を決定することができる。 本発明においては、上記の組成や、製造条件の決定方法により決定した方法で得られたインクジェット記録用顔料水分散体を提供することができる。 上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のゼータ電位分布の測定方法等を開示する。<1> 下記ゼータ電位測定工程(i)〜(iii)を有するゼータ電位分布の測定方法。 工程(i):測定セル中の粒子に第1の電界を印加して、ゼータ電位分布1を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得る工程 工程(ii):測定セル中の粒子に第1の電界強度より高い第2の電界を400〜4000V/mの範囲で印加して、ゼータ電位分布2を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布2を得る工程 工程(iii):規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を得る工程<2> ゼータ電位分布1及び2が、レーザードップラー法によって測定されたものである、前記<1>に記載のゼータ電位分布の測定方法。<3> 第1の電界強度が、好ましくは、第2の電界強度の80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である、前記<1>又は<2>に記載のゼータ電位分布の測定方法。<4> 第2の電界強度が、400V/m以上であり、好ましくは450V/m以上、より好ましくは500V/m以上、更に好ましくは550V/m以上、より更に好ましくは600V/m以上であり、そして、4000V/m以下、好ましくは3600V/m以下、より好ましくは3200V/m以下、更に好ましくは2400V/m以下、より更に好ましくは1800V/m以下である、前記<1>〜<3>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<5> 第1の電界強度が実質的にゼロである、前記<1>〜<4>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<6> 更に、下記ゼータ電位測定工程(iv)を有する、前記<1>〜<5>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。 工程(iv):前記工程(iii)で得られた規格化ゼータ電位分布3をヒストグラム化する工程<7> 更に、下記ゼータ電位測定工程(v)を有する、前記<6>に記載のゼータ電位分布の測定方法。 工程(v):前記工程(iv)で得られたヒストグラムの面積を測定する工程<8> ポリマーを含む水分散体中の粒子のゼータ電位分布を測定する、前記<1>〜<7>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<9> インクジェット記録用顔料水分散体又は水系インク中の粒子のゼータ電位分布を測定する、前記<1>〜<8>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<10> インクジェット記録用顔料水分散体又は水系インクが、以下の製造工程により製造される、前記<9>に記載のゼータ電位分布の測定方法。 製造工程(1):水、顔料、ポリマー、及び有機溶媒を含有する混合物を、分散処理して、分散処理物を得る製造工程。 製造工程(2):製造工程(1)で得られた分散処理物の有機溶媒を除去して、顔料水分散体を得る製造工程。<11> 有機溶媒の20℃における水に対する溶解度が、40質量%未満である、前記<10>に記載のゼータ電位分布の測定方法。<12> 有機溶媒がメチルエチルケトンである、前記<10>又は<11>に記載のゼータ電位分布の測定方法。<13> ポリマーが、好ましくは水不溶性ポリマーであり、好ましくはビニル単量体の付加重合により得られる水不溶性ビニル系ポリマーである、前記<10>〜<12>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<14> 水不溶性ポリマーが、疎水性モノマー(a)と、イオン性モノマー(b)とを含むモノマー混合物を共重合させてなるポリマーである、前記<13>に記載のゼータ電位分布の測定方法。<15> 水不溶性ポリマーが、更に(c)ノニオン性モノマーをモノマー成分として用いる、前記<14>に記載のゼータ電位分布の測定方法。<16> 水不溶性ポリマー中の疎水性モノマー(a)由来の構成単位の含有量が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは48質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である、前記<13>〜<15>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<17> 水不溶性ポリマー中のイオン性基を含むモノマー(b)由来の構成単位の含有量が、好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは23質量%以下、更に好ましくは21質量%以下である、前記<13>〜<16>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<18> 水不溶性ポリマー中のノニオン性モノマー(c)由来の構成単位の含有量が、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは32質量%以下である、前記<13>〜<17>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<19> ポリマーの重量平均分子量が、好ましくは5,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは4万以上、より更に好ましくは5万以上であり、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは30万以下、更に好ましくは20万以下、より更に好ましくは15万以下、より更に好ましくは10万以下である、前記<10>〜<18>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<20> 顔料粒子が、水不溶性ポリマーが吸着した顔料粒子又は顔料を含有するポリマー粒子である、前記<10>〜<19>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<21> 動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上であり、そして、200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは130nm以下である、前記<10>〜<20>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<22> 顔料の含有量が、水系インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である、前記<10>〜<21>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<23> ポリマーの含有量が、水系インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、より更に好ましくは1.8質量以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2.5質量以下である、前記<10>〜<22>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<24> 水の含有量が、水系インク中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である、前記<10>〜<23>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<25> 水系インクの20℃における静的表面張力が、好ましくは25mN/m以上、より好ましくは30mN/m以上、更に好ましくは32mN/m以上であり、そして、好ましくは45mN/m以下、より好ましくは40mN/m以下、更に好ましくは38mN/m以下である、前記<9>〜<24>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<26> 水系インクの35℃における粘度が、好ましくは1mPa・s以上であり、より好ましくは1.5mPa・s以上であり、更に好ましくは2mPa・s以上であり、そして、好ましくは10mPa・s以下であり、より好ましくは7mPa・s以下であり、更に好ましくは4mPa・s以下である、前記<9>〜<25>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。<27> 前記<1>〜<26>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法を用いた、水分散体中の粒子の品質管理方法。<28> 前記<1>〜<26>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法を用いた、インクジェット記録用顔料水分散体の品質管理方法。<29> 前記<1>〜<26>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法により得られる値を用いたインクジェット記録用顔料水分散体を含有するインクの吐出耐久性の予測方法。<30> 前記<1>〜<26>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法により得られる値を用いたインクジェット記録用顔料水分散体の組成の決定方法。<31> 前記<1>〜<26>のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法により得られる値を用いたインクジェット記録用顔料水分散体の製造条件の決定方法。<32> <30>又は<31>の決定方法により決定した方法で得られたインクジェット記録用顔料水分散体。 以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。 なお、ポリマーの重量平均分子量、ポリマー溶液及び顔料水分散体の固形分濃度、顔料水分散体の顔料粒子の体積平均粒径、水系インクの表面張力、ゼータ電位、吐出耐久性評価の測定は、以下の方法により行った。(1)ポリマーの重量平均分子量の測定 N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として予め重量平均分子量が単分散で特定されているポリスチレンを用いて測定した。(2)ポリマー溶液、顔料水分散体の固形分濃度の測定 30mlのポリプレピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。(3)顔料水分散体の顔料粒子の体積平均粒径 顔料水分散体を、あらかじめ0.2μmのフィルターでろ過したイオン交換水を用いて希釈し、大塚電子株式会社製、レーザー粒径解析システム「ELS−6100」を用いて、25℃にて、粒径測定を行った。(4)水系インクの表面張力 表面張力計(協和界面科学株式会社製、商品名:CBVP−Z)を用いて、白金プレートを5gの水系インクの入った円柱ポリエチレン製容器(直径3.6cm×深さ1.2cm)に浸漬させ、20℃にて水系インクの静的表面張力を測定した。(5)ゼータ電位の測定方法 ゼータ電位測定機(大塚電子株式会社製、商品名:ELSZ−1000)を用いて、以下の条件下で測定した。測定セル及びユニットは希釈測定用ガラスセル及びユニットを用いた。測定液の調製は、固形分濃度20%の顔料水分散体を用い、予め1×10-2〜1×10-4Nの濃度に調整した水酸化ナトリウム水溶液によって顔料水分散体の固形分濃度が0.01wt%、希釈液のpHが9.5になるように希釈した後、ろ過孔径0.45μmのザルトリウス社製フィルターを用いてろ過することで行った。測定は以下の条件下で行った。(i)装置測定条件 ・ベース測定における光量調整:有り、泳動方向テストによる光量調整:無し ・電気泳動測定の測定繰り返し回数:6、電気泳動測定における光量調整:有り ・測定前待ち時間:0、測定後待ち時間:0、ピンホール:50μm ・光量最適値:80000、光量最大値:100000、光量最小値:40000(ii)セル条件 ・測定シーケンス:Type2 ・セル選択:Flow Cell、セル種:Flow Cell、セル定数:70 ・センター位置Z軸:6、センター位置X軸:7.11 ・相関計:Linear(iii)ベース測定条件 ・積算回数:100回、相関方法:TD:タイムドメイン法、サンプリング時間:800マイクロ秒 ・相関チャンネル数:512回 ・モジュレータディレイ:0.15、モジュレータ時間:1.024秒(iv)電気泳動方向テスト条件 ・積算回数:2回、相関方法:TD:タイムドメイン法、泳動サンプリング時間:800マイクロ秒 ・相関チャンネル数:512回 ・モジュレータディレイ:0.15、モジュレータ時間:1.024秒 ・印加電圧波形タイプ:Negative ・印加電圧:60V、電極間距離:50mm ・Voltage delay:0.2秒、Voltage applytime:1.024秒 ・泳動切り替えwait比:0.1024、定電流:51(v)電気泳動測定1の条件 ・積算回数:100回 ・セル測定位置:0.65/0.35/0/−0.35/−0.65、相関方法:TD:タイムドメイン法 ・サンプリング時間:800マイクロ秒、相関チャンネル数:512回 ・モジュレータディレイ:0.15秒、モジュレータ時間:1.024秒 ・印加電圧:Fixed、印加電圧:表4及び表5に示す ・電極間距離:50mm、印加電圧波形タイプ:Auto、定電流:51 ・Voltage delay:0.2秒、Voltage applytime:1.024秒 ・泳動切り替えwait比:0.1024(vi)電気泳動測定2の条件 ・積算回数:100回 ・セル測定位置:0.65/0.35/0/−0.35/−0.65、相関方法:TD ・サンプリング時間:800マイクロ秒、相関チャンネル数:512回 ・モジュレータディレイ:0.15秒、モジュレータ時間:1.024秒 ・印加電圧:Fixed、印加電圧:表4及び表5に示す ・電極間距離:50mm、印加電圧波形タイプ:Auto、定電流:51 ・Voltage delay:0.2秒、Voltage applytime:1.024秒 ・泳動切り替えwait比:0.1024(vii)溶媒条件 ・溶媒選択:WATER、屈折率:1.33、粘度:0.89、誘電率:78.3(viii)解析条件 ・FFTフィルタ:BLACKMAN、データ量:1024、スムージング:LOW ・ローレンツフィット:1peak、ゼータ電位換算式:Smoluchowski ・FFTフィルタ(ベース):BLACKMAN、データ量(ベース):1024 ・スムージング(ベース):LOW、ローレンツフィット(ベース):1peak ・FFTフィルタ(泳動方向):BLACKMAN、データ量(泳動方向):1024 ・スムージング(泳動方向):LOW、ローレンツフィット(泳動方向):1peak(6)吐出耐久性評価 LGエレクトロニクス社製のサーマルインクジェットプリンター「LPP−6010N」のイエローの中間タンクのインクを詰め替え、温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、Xerox社製の普通紙「Xerox4024」を用いて、ベストモードで印字を行った。得られた印字物の印字濃度(黒の光学濃度として出力される値)をマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:スペクトロアイ、測定条件 観測視野角:2度、観測光源:D65、白色基準:紙基準、偏光フィルター:なし、濃度基準:DIN)で計5点測定し、その平均値を求め印字濃度とした。同じ印字条件で、前記普通紙に、幅200mm×長さ254mmのベタ画像を印字した。印刷を繰り返し、印刷によって印字濃度が当初から10%低下するまでの印字枚数を計測し吐出耐久性とした。 結果を表4及び5に示す。なお、上記評価はインク毎に新品の記録ヘッドに交換して行った。また、印字濃度が10%低下した記録ヘッドのヒータを光学顕微鏡で観察すると、ヒータ上に黒い焦げが確認された。製造例1(ポリマー溶液1の製造) 2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、表1の「初期仕込みモノマー溶液」欄に示す組成のモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。 一方、表1の「滴下モノマー溶液1」欄及び「滴下モノマー溶液2」欄に示す組成のモノマー、有機溶媒(メチルエチルケトン(MEK))、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65)、及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)を混合して、滴下モノマー溶液1と滴下モノマー溶液2を調製し、それぞれ滴下ロート1及び2中に入れて、窒素ガス置換を行った。 窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を攪拌しながら75℃に維持し、滴下モノマー溶液1を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下し、次いで滴下モノマー溶液2を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。 滴下終了後、反応容器内の混合溶液を75℃で2時間攪拌した。次いで前記の重合開始剤(V−65)1.5部を有機溶媒(MEK)10部に溶解した重合開始剤溶液を調製し、該混合溶液に加え、75℃で1時間攪拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成を更に2回行った。次いで反応容器内の反応溶液を85℃に2時間維持し、ポリマー溶液1を得た。得られたポリマーの一部を減圧して溶媒を除去し、重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は80,000であった。 得られたポリマーの固形分を測定し、MEKを添加して固形分濃度50%まで希釈した。製造例2〜3(ポリマー溶液2及び3の製造) ポリマー1の製造において、各モノマーの組成を表1に記載のモノマー種及びモノマー量に変えたこと以外は同様にして、ポリマー溶液2及び3の製造を行った。製造例4〜6(顔料水分散体1〜3の製造)(1)製造工程(1) 容器2Lのディスパー(プライミクス株式会社製、T.K.ロボミックス、撹拌部ホモディスパー2.5型、羽直径40mm)に、表2に示す量のポリマー溶液を投入し、1400rpmの条件で撹拌しながら、表2に示す量の有機溶媒(MEK:20℃における水に対する溶解度は22%)を加え、さらにイオン交換水、5N(16.9質量%)水酸化ナトリウム水溶液、及び25%アンモニア水溶液を添加し、0℃の水浴で冷却しながら、1400rpmで15分間撹拌した。撹拌後、表2に示す量の顔料(大日精化工業株式会社製、銅フタロシアニン「CFB6338JC」)を加え、6000rpmの条件にて3時間撹拌した。 得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名:型式M−140K)を用いて、180MPaの圧力にて、20パス分散処理した。(2)製造工程(2) 減圧蒸留装置〔ロータリーエバポレーター、東京理化器械株式会社製、商品名:N−1000S〕を用いて、製造工程(1)で得られた分散処理物を、40℃に調整した温浴中、10kPaの圧力で2時間保持して、有機溶媒を除去した。更に、温浴を62℃に調整し、圧力を15kPaに上げて4時間保持し、有機溶媒及び一部の水を除去し、顔料とポリマーの合計濃度を23〜25%とした。次いで顔料とポリマーの合計濃度を測定し、イオン交換水で顔料とポリマーの合計濃度が20%となるように調整した。 次いで5μmと1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕を用いて順に濾過し、顔料水分散体1〜3を得た。製造例7(顔料水分散体4の製造) 自己分散顔料(SENCIENT社製、SDP−2000)を用い、減圧蒸留装置(東京理化器械株式会社製、N−1000S)を用いて、62℃に調整した温浴中、圧力を15kPaに下げて4時間保持し、一部の水を除去し、顔料の濃度を23〜25%とした。次いで顔料の濃度を測定し、イオン交換水で顔料の濃度が20%となるように調整し、顔料水分散体4を得た。製造例8(顔料水分散体5製造) 顔料水分散体4の製造において、自己分散顔料(SENCIENT社製、SDP−2000)を、顔料(Cabot社製、Cab−O−Jet300)を用いた以外は同様にして、顔料水分散体5を得た。製造例9(顔料水分散体6製造) 顔料水分散体4の製造において、自己分散顔料(SENCIENT社製、SDP−2000)を、顔料(SENSIENT社製、SDP−1000)を用いた以外は同様にして、顔料水分散体6を得た。製造例10〜15(水系インク1〜6の製造) 表3に示す所定量の顔料水分散体、グリセリン(和光純薬工業株式会社製、試薬)、トリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、試薬)、トリメチロールプロパン(和光純薬工業株式会社製、試薬)、プロキセルLVS(アーチケミカルズジャパン株式会社製、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、有効分20%、防黴剤)、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製、アセチレジオールのエチレンオキシド(10モル)付加物、界面活性剤)及びイオン交換水を添加、混合し、得られた混合液を0.45μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、水系インク1〜6を得た。得られたインクの20℃における表面張力は36mN/mであった。実施例1〜7、比較例1〜2 上記製造例で得られた顔料水分散体1〜6のゼータ電位分布の測定を下記の手順で行った。(1)ゼータ電位測定工程(i):規格化ゼータ電位分布1の取得 電気泳動測定1の測定結果のセルの測定位置のうち、セル測定位置ゼロのデータのみを用いて、ゼータ電位分布1を得た。得られた測定結果において、散乱強度のピークトップの周波数をゼロとして、ピーク強度が1になるよう規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得た。(2)ゼータ電位測定工程(ii):規格化ゼータ電位分布2の取得 上記工程(i)と同様の方法により、電気泳動測定2から規格化ゼータ電位分布2を得た。(3)ゼータ電位測定工程(iii):規格化ゼータ電位分布3の取得(a)規格化ゼータ電位分布1及び2にて、規格化した強度の0.02〜1.0の範囲における周波数の正側の値を0.01刻みで読み取った。(b)強度毎に、規格化ゼータ電位分布1と2の周波数の正側の値の差分を求める。次いで((電気泳動測定2における印加電圧)/((電気泳動測定2における印加電圧)−(電気泳動測定1における印加電圧))で得られる補正値と規格化ゼータ電位分布1と2の周波数の正側の差分値の積をそれぞれ求めた。(c)同様に、規格化ゼータ電位分布1及び2にて、規格化した強度の0.02〜1.0の範囲における周波数の負側の値を0.01刻みで読み取った。(d)強度毎に、規格化ゼータ電位分布1と2の周波数の負側の値の差分を求める。次いで((電気泳動測定2における印加電圧)/((電気泳動測定2における印加電圧)−(電気泳動測定1における印加電圧))で得られる補正値と規格化ゼータ電位分布1と2の周波数の負側の差分値の積をそれぞれ求めた。(e)得られた正側と負側における周波数の差分と補正値の積をX軸に、強度をY軸に再プロットし、規格化ゼータ電位分布3を得た。(4)ゼータ電位測定工程(iv):規格化ゼータ電位分布3のヒストグラム化(a)電気泳動測定2で得られたゼータ電位平均値を規格化ゼータ電位分布3のピークとして換算し、ゼータ電位分布3を得た。(b)得られたゼータ電位分布3を、X軸をゼータ電位値、Y軸を規格化された出現頻度のヒストグラムとして再プロットし、各ゼータ電位値毎の出現頻度を積算した上で再度規格化した。これを顔料水分散体中の粒子が持つゼータ電位分布4とした。(5)ゼータ電位測定工程(v):ヒストグラムの面積計算 ゼータ電位分布4において、ゼータ電位の絶対値が低い側から、ゼータ電位分布4と散乱強度ゼロの線で挟まれた面積の累積で1%を超えたときのゼータ電位の値を小数点一位を四捨五入して読み取り、ゼータ電位下限値とした。結果を表4に示す。 表4は、異なるインクを、印加電圧及び電解強度が同じ条件でゼータ電位測定を行った結果を示した。吐出耐久性の異なるインクの間で、ゼータ電位の平均値の差よりも、ゼータ電位の下限値の差がより大きいことがわかる。 上記で得られたゼータ電位下限値と、各インク毎の吐出耐久印刷枚数の対数値について、相関性を評価した。得られた相関係数を表5に示す。相関係数は0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましく、0.95以上が更に好ましい。0.95以上の相関係数が得られた場合、本発明により水系インクの吐出耐久性の評価が可能と判断した。 また、実施例4〜7及び比較例1〜2において、解析の途中で得られた各電界強度のゼータ電位分布4を、実施例3(電気泳動測定2における電界強度1200v/m)において得られたゼータ電位分布4とピークトップを重ねて描画した際に、重ね合わさる面積を画像処理ソフトにて求め、ヒストグラム一致度とした。結果を表5に示す。 実施例3〜7のヒストグラム一致度はいずれも高い数値を示し、この条件下では粒子が受ける電界強度の影響は小さく、正確なゼータ電位の取得が可能であることが示唆された。 ヒストグラム一致度は、内包色材では電界強度による影響を受けにくいが、自己分散型顔料水分散体の一部や高分子分散剤により分散された顔料水分散体の一部では電界強度の影響を受けやすく、特に比較例2の電気泳動測定2における界強度5000V/mではヒストグラムの分布形状の変化は大きく、粒子が電界による影響を受けて、正確なゼータ電位の取得が困難であることが示唆された。 表5から実施例3〜7の第2の電界強度が400〜4000V/mのときは相関係数が0.98以上であり、高い相関が得られた。これにより、インクの吐出耐久性を顔料水分散体のゼータ電位下限値から正確に予想することができる。 一方、比較例2の電気泳動測定2における電界強度が5000V/mのときは、相関係数が0.7以下となり、相関は低かった。これにより、電気泳動測定2における電界強度が5000V/mまで高くなると、インクの吐出耐久性を顔料水分散体のゼータ電位下限値から正確に予想することは難しいといえる。 また、比較例1の電気泳動測定2における電界強度が100V/mのときは、ヘテロダイン信号において、ドップラー効果による周波数の変化が小さくなり、ゼータ電位分布の計測が不可能となった。これにより、電界強度が100V/mまで低くなると、インクの吐出耐久性を顔料水分散体のゼータ電位下限値から正確かつ迅速に予想することは難しいといえる。 下記ゼータ電位測定工程(i)〜(iii)を有するゼータ電位分布の測定方法。 工程(i):測定セル中の粒子に第1の電界を印加して、ゼータ電位分布1を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得る工程 工程(ii):測定セル中の粒子に第1の電界強度より高い第2の電界を400〜4000V/mの範囲で印加して、ゼータ電位分布2を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布2を得る工程 工程(iii):規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を得る工程 ゼータ電位分布1及び2が、レーザードップラー法によって測定されたものである、請求項1に記載のゼータ電位分布の測定方法。 ポリマーを含む水分散体中の粒子のゼータ電位分布を測定する、請求項1又は2に記載のゼータ電位分布の測定方法。 インクジェット記録用顔料水分散体中の粒子のゼータ電位分布を測定する、請求項1又は2に記載のゼータ電位分布の測定方法。 第1の電界強度が実質的にゼロである、請求項1〜4のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。 更に、下記工程(iv)を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法。 工程(iv):前記工程(iii)で得られた規格化ゼータ電位分布3をヒストグラム化する工程 更に、下記工程(v)を有する、請求項6に記載のゼータ電位分布の測定方法。 工程(v):前記工程(iv)で得られたヒストグラムの面積を測定する工程 請求項1〜7のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法を用いた、水分散体中の粒子の品質管理方法。 請求項1〜7のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法を用いた、インクジェット記録用顔料水分散体の品質管理方法。 請求項1〜7のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法により得られる値を用いたインクジェット記録用顔料水分散体を含有するインクの吐出耐久性の予測方法。 請求項1〜7のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法により得られる値を用いたインクジェット記録用顔料水分散体の組成の決定方法。 請求項1〜7のいずれかに記載のゼータ電位分布の測定方法により得られる値を用いたインクジェット記録用顔料水分散体の製造条件の決定方法。 請求項11又は12の決定方法により決定した方法で得られたインクジェット記録用顔料水分散体。 【課題】電界の印加による粒子の変形を抑制し、ブラウン運動の影響を排除した、粒子のゼータ電位分布の測定をより正確かつ簡便に行うことができるゼータ電位分布の測定方法を提供する。【解決手段】下記ゼータ電位測定工程(i)〜(iii)を有するゼータ電位分布の測定方法、並びに該方法を用いた粒子及び水分散体の品質管理方法である。工程i):測定セル中の粒子に第1の電界を印加して、ゼータ電位分布1を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得る工程。工程(ii):測定セル中の粒子に第1の電界強度より高い第2の電界を400〜4000V/mの範囲で印加して、ゼータ電位分布2を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布2を得る工程。工程(iii):規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を得る工程。【選択図】なし


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