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タイトル:公開特許公報(A)_印刷に適した錠剤の製造法
出願番号:2013234840
年次:2014
IPC分類:A61K 9/44,A61P 25/28,A61K 47/26,A61K 47/10,A61K 47/32,A61K 47/38,A61K 47/36,A61K 47/02,A61K 47/04,A61K 47/44,A61K 31/445


特許情報キャッシュ

坂本 浩 谷口 俊哉 寺井 孝夫 JP 2014114280 公開特許公報(A) 20140626 2013234840 20131113 印刷に適した錠剤の製造法 大原薬品工業株式会社 593030071 谷 良隆 100071973 坂本 浩 谷口 俊哉 寺井 孝夫 JP 2012249886 20121114 A61K 9/44 20060101AFI20140530BHJP A61P 25/28 20060101ALI20140530BHJP A61K 47/26 20060101ALI20140530BHJP A61K 47/10 20060101ALI20140530BHJP A61K 47/32 20060101ALI20140530BHJP A61K 47/38 20060101ALI20140530BHJP A61K 47/36 20060101ALI20140530BHJP A61K 47/02 20060101ALI20140530BHJP A61K 47/04 20060101ALI20140530BHJP A61K 47/44 20060101ALI20140530BHJP A61K 31/445 20060101ALN20140530BHJP JPA61K9/44A61P25/28A61K47/26A61K47/10A61K47/32A61K47/38A61K47/36A61K47/02A61K47/04A61K47/44A61K31/445 16 OL 13 4C076 4C086 4C076AA46 4C076BB01 4C076DD24A 4C076DD28A 4C076DD29A 4C076DD38A 4C076DD41A 4C076DD47A 4C076DD67A 4C076EE06A 4C076EE09A 4C076EE11A 4C076EE12A 4C076EE31A 4C076EE32A 4C076EE38A 4C076EE49A 4C076EE52A 4C076FF01 4C076FF06 4C076FF52 4C076GG01 4C076GG14 4C076GG16 4C076GG50 4C086AA10 4C086BC21 4C086MA35 4C086MA52 4C086NA09 4C086ZA15 本発明は、医療現場における調剤、投薬過誤を防止するため、錠剤の表面に鮮明な識別用文字等の印刷に適した錠剤の製造法に関する。また、本発明は、高い物理的強度を有し、しかも服用時の消化器管内、特に口腔内での崩壊性に優れる錠剤の製造法に関する。 医療現場で取り扱われる錠剤の調剤過誤や服薬ミスを防止するため、視覚的識別性に優れたものが求められている。 その識別性を高める代表的な方法として、打錠用金型に刻印用加工を施し、錠剤表面に刻印する方法があるが、刻印部が欠損し易いなどの問題がある。さらに、刻印された英数字は、刻印部とそれ以外の表面部が同一色であるため刻印の判読が困難であるといったことも医療過誤の要因の一つに挙げられている。 そこで、錠剤表面にインクを用いて印刷する方法(版式の転写印刷、グラビアオフセット印刷する方法やインクジェット印刷)が開発され、実際に英数字やカタカナ文字等が印刷されているが、裸錠では印刷の濃淡やインクの滲み、インク未乾燥に伴う他錠の汚れ、文字かすれ等の不良が生じ易く、また、溶剤系インクを使用するため、環境等の課題もある。 この様な背景から、最近になって、特定の変色誘起酸化物(酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄)を分散させた錠剤表面に一定のレーザー光を照射することにより、鮮明な文字や記号を印刷することができるUVレーザー印刷技術が開発され、その詳細が開示されている(特許文献1)。 一方、近年の高齢化社会において錠剤の嚥下が困難な高齢者にも服用し易い口腔内崩壊錠が種々市販されている。それらの何れの錠剤も、口腔内での速崩壊性を保持するため、フィルムコーティングが施されていない、いわゆる素錠(裸錠)であるが、裸錠は機械的強度が不充分で、輸送時ないし調剤時に磨損や欠けやすいなどの問題があった。そこで、口腔内崩壊錠の特徴を保持しつつ、高い機械的強度を有するフィルムコーティング錠が提案された(特許文献2)。特許文献1 国際公開2006/126561号公報特許文献2 特開2010−248106号公報 本発明の課題は、錠剤の表面に文字等を鮮明に版式転写印刷、オフセット印刷、または、インクジェット印刷、もしくは、UVレーザー印刷することが可能で且つ高い機械的強度及び口腔内での速崩壊性を有する錠剤の製造方法を提供することにある。 本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、薬物又は薬物含有粒子の表面に水溶性添加剤と水に難溶又は不溶性添加剤の混合物からなる被覆層を設け、得られた被覆粒子を打錠することにより得られる錠剤が、機械的強度が高く、消化管内での崩壊性に優れ、かつ錠剤表面の印刷適性にも優れていることを見出した。この錠剤は、たとえば薬物含有粒子の表面に、D−マンニトールなどの水溶性添加剤とタルクや酸化チタン等の水に難溶又は不溶性の添加剤を分散させた水性分散液を噴霧して被覆粒子を調製し、この被覆粒子を必要により他の助剤と共に打錠することにより得ることができる。これらの知見を基礎にさらに検討を加え、本発明を完成することができた。 薬物または薬物含有造粒粒子の表面に、少なくとも一種の変色誘起酸化物や遮光剤粒子及び結合剤もしくは膜剤液を配合した分散液をスプレー添加して、被覆することにより遮光性の高い被覆粒子を得ることができる。遮光剤の量は、核粒子のサイズ、表面形状(フラクタル次元)、薬物の光に対する過敏性の程度により、5〜500重量%程度が良い。 流動化状態にある薬物または薬物含有粒子に、水溶性添加剤と水に難溶又は不溶性添加剤を、必要により結合剤を含有する分散液を噴霧添加することは、均一な被覆層を有する微細粒子の製造、粉末の飛散、装置壁面への付着が低減、製造収率の向上など、錠剤の工業的製造にとっては極めて有利、且つ重要である。 このようにして得られた粒子を他の添加剤粉末と配合して打錠することで、錠剤表面に鮮明な印刷を施すことができる錠剤が得られる。 すなわち、本発明は、次に示す錠剤の製造方法に関する。(1)薬物又は薬物含有粒子(A)の表面に、水溶性添加剤(B)及び水に難溶又は不溶性添加剤(C)を含む水性分散液(D)を噴霧して得られた被覆粒子(E)を打錠する錠剤の製造方法、(2)水性分散液(D)が、水性結合剤を含有する(1)に記載の錠剤の製造方法、(3)水溶性添加剤(B)が糖類、糖アルコール類又は水溶性高分子化合物である(1)又は(2)に記載の錠剤の製造方法、(4)水に難溶又は不溶性添加剤(C)がセルロース誘導体、デンプ又は酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄類及び硬化油から選ばれる少なくとも一種である(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(5)水溶性添加剤(B)と水に難溶または不溶性添加剤(C)の合計量が薬物又は薬物含有粒子(A)に対し1〜70重量%である(1)〜(4)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(6)水に難溶または不溶性添加剤(C)に対する水溶性添加剤(B)の重量比が0.3〜30である(1)〜(5)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(7)水性分散液(D)における水に難溶又は不溶性添加剤(C)の占める割合が1〜80重量%である(1)〜(6)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(8)水性分散液(D)中の水に難溶または不溶性添加剤(C)の平均粒子径が10μm以下である(1)〜(7)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(9)水性分散液(D)中の溶質及び分散質の合計濃度が0.1〜50重量%である(1)〜(8)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(10)水性分散液(D)中の水に難溶又は不溶性添加剤(C)の平均粒子径が10nm〜5μmである(1)〜(9)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(11)被覆粒子(E)の平均粒子径が30〜200μmである(1)〜(10)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(12)被覆粒子(E)の打錠前に、滑沢剤と、酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄類及び硬化油から選ばれる少なくとも一種を配合して打錠する(1)〜(11)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(13)錠剤が裸錠である(1)〜(12)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(14)錠剤が口腔内崩壊錠である(1)〜(13)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(15)打錠後、錠剤表面に印刷を施す(1)〜(14)のいずれかに記載の錠剤の製造方法、(16)錠剤表面に施す印刷が、インクジェット印刷又はUVレーザー印刷である(15)に記載の錠剤の製造方法、である。 本発明に使用される薬物は、他の製剤上添加剤とともに錠剤とすることができる薬物であれば、何れのものでもよい。 例えば、アムロジピンベシル酸塩、イルベサルタン、オルメサルタンメドキソミル、カンデサルタンシレキセチル、テルミサルタン、バルサルタン等の血圧降下剤、エゼチミブ、ロスバスタチンカルシウム等の高脂血症用剤、アリピプラゾール、オランザピン等の抗精神病薬、エチゾラム等の精神安定剤、パロキセチン等の抗うつ剤、ドネペジル塩酸塩等のアルツハイマー型認知症治療剤、オロパタジン塩酸塩等の抗アレルギー剤、ミグリトール、グルメピリド等の糖尿病用剤、イマチニブメシル酸塩等の抗悪性腫瘍剤、クロピドグレル塩酸塩等の抗血小板剤、プラムペキソール塩酸塩水和物等の抗パーキンソン剤、オセルタミビルリン酸塩等の抗ウイルス剤、モンテルカストナトリウム等の抗喘息剤、ラロキシフェン塩酸塩等の骨粗鬆症用剤、シロドシン等の排尿障害治療薬、セレコキシブ等の消炎鎮痛剤、イミダフェナシン、ソリフェナシンコハク酸塩等の過活動膀胱治療剤など何れも好適に使用され、なかでもドネペジル塩酸塩などがさらに好適である。 これらの薬物は単独でもよいが、苦味マスキング剤、崩壊剤、安定化剤等を用いて被覆、混合し、結合剤と共に粒子化した薬物含有粒子であってもよい。 特に、薬物が苦味を有するものであり、かつその薬物を口内崩壊錠とするためには、先ず微細化した薬物に苦味マスキングを施し、これを崩壊剤で被覆して顆粒とすることができる。口腔内崩壊錠は、錠剤1錠を口腔内崩壊試験器機(ODT−100/富山産業製)で測定して60秒以内に崩壊するものを目安とすることができる。 薬物又は薬物含有粒子の平均粒子径は、通常1〜50μm、好ましくは5〜30μmである。 本発明において、用いられる水溶性添加物とは、製剤に用いられる添加剤であって、第16改正日本薬局方の通則による「溶けやすい」及び「極めて溶けやすい」に属する物質であり、例えば糖類、糖アルコールあるいは水溶性高分子が挙げられる。具体的には、乳糖、ぶどう糖、白糖、D−マンニトール、トレハロース、スクロース、キシリトール、ソルビトール、イソマルト、粉末還元麦芽糖水アメ、エリスリトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸・メチル共重合体(PVAコポリマー・POVAcoat)、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー(コリコートIR)等が挙げられる。 また、本発明において用いられる「水に難溶又は不溶性添加剤物」とは、製剤に用いられる添加剤であって、第16改正日本薬局方の通則による「溶けにくい」、「極めて溶けにくい」及び「殆ど溶けない」に属する物質であり、例えば、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のセルロース又はその誘導体、デンプン、また酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄類、タルク、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等の金属化合物、特に金属酸化物や硬化油等が挙げられる。 これらの水に難溶又は不溶性添加剤は、なるべく微細化したものが好ましく、通常平均粒子径10〜1,000nm、好ましくは30〜500nmの超微粒子が好ましい。 水溶性添加剤の添加量としては、その種類により異なるが、通常薬物含有粒子(A)に対し0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、より好ましくは1〜5重量%である。また、薬物又は薬物含有粒子(A)に対する水溶性添加剤と水に難溶又は不溶性添加剤の混合物による被覆量は、通常1〜70重量%、好ましくは2〜60重量%、更に好ましくは、3〜40重量%である。 噴霧添加する分散液の液濃度、即ち溶質と分散質の合計の濃度は、通常0.1〜50重量%であり、好ましくは0.2〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%である。 噴霧する水性分散液(D)中の水に難溶又は不溶性添加剤(C)に対する水溶性添加剤(B)の重量割合は、0.3〜30、好ましくは0.5〜25である。また、水性分散液(D)全体に対する水に難溶又は不溶性添加剤(C)の配合割合は、通常1〜80重量%であり、好ましくは3〜70重量%、より好ましくは5〜60重量%である。 必要により用いられる水溶性結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールなどのセルロース誘導体、ポビドン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸・メチル共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコールグラフトコポリマー等水性のポリビニール誘導体が挙げられる。結合剤の使用量は、水性分散液(D)に対して1〜20重量%、好ましくは5〜15%であるが、水性分散液(D)に含まれる他の成分の種類、使用量により、適宜増減すればよい。 また、崩壊剤として、カルメロース、カルメロースカルシウム、部分アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が使用できる。崩壊剤の使用量は、錠剤中1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。 その他、必要に応じて矯味剤、可塑剤、可溶化剤、安定化剤、界面活性剤、流動化剤等を使用することもできる。さらに、打錠前に滑沢剤と酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄類及び硬化油から選ばれる少なくとも一種を配合して打錠してもよい。これらの添加剤はその平均粒子径が10nm〜5μm、好ましくは50nm〜1μmに微粉砕したものがよい。 本発明の水性分散液(D)を用いて被覆粒子(E)を製造するには、従来被覆剤を製造するために用いられているどのような装置でも使用できるが、特に流動層造粒機が小粒で均質な被覆層を有する顆粒を製造できるので好ましい。被覆粒子(E)の平均粒子径は、50〜300μm、好ましくは80〜200μmである。 得られた顆粒は、必要により他の矯味剤、可塑剤、可溶化剤、安定化剤、界面活性剤、流動化剤、滑沢剤等と共に、通常の打錠機により圧縮打錠して錠剤とする事ができる。この錠剤は、裸錠のままでも鮮明な印刷を施すことができる。 水性分散液(D)中にタルクや酸化チタン等の水に難溶又は不溶性添加剤を分散させる際、分散に用いる攪拌機として、液中においても強力な剪断力を発揮するホモジナイザーを採用し、30分以上撹拌することにより平均粒子径10μm以下、好ましくは10nm〜5μm、さらに好ましくは50nm〜1μmの超微粒子とすることができる。 本発明によって得られた錠剤は、裸錠のままでも表面に鮮明な印刷を施すことができる。 本発明者らの研究において、UVレーザー光による印刷は、例えば200メガパスカル程度の高圧で微小流路(70ミクロン)から高速噴射、噴出させるナノ粒子生成用の湿式粉砕法(Microfluidizer)を用い、コーティング剤、結合剤(例えば、PVAコポリマーやヒプロメロース、HPC等)水溶液に、酸化チタンや酸化鉄を分散、縣濁させた後に湿式粉砕法や超音波分散装置(湿式)を用いることにより錠剤表面の色むらが解消できることを見出した、これは酸化チタン等の二次凝集粒子が粉砕により一次粒子となり、均質分散したことによると思われる。さらに、平均粒子径が10nm〜5μm、好ましくは50nm〜1μmに微粉砕した酸化チタン等を、均一分散した低粘度のヒプロメロース液を薄層コーティングすることで、緻密な酸化チタン層が形成され、鮮明な印字が得られる。さらに、緻密な酸化チタン層内では、照射されたUVレーザー光のエネルギー減衰が大きく、これに伴い浸透深さは浅くなる。このことは、光に過敏な薬物に対する光安定性も改善できる。さらに錠剤中の薬物粒子がUVレーザー光の照射によって変質するのを低減できる。 インクを用いて錠剤表面に印刷する方法(版式転写印刷、グラビアオフセット印刷する方法やインクジェット印刷)は従来素錠(裸錠)には不向きであると思われていたが、本発明により得られた錠剤においては、裸錠表面に鮮明な印刷を施すことができる。 錠剤やカプセル等の印字に用いられるインクは、経口投与される錠剤等の表面に印字されるので可食インクでなければならない。インクジェット印刷に用いられるインクの種類としては顔料タイプと染料タイプがある。顔料タイプのインクは、微細な無機粒子を分散、懸濁させたタイプで、染料タイプと異なり微細な粒子であるため錠剤表面に噴射された時に錠剤内部への浸透力が染料タイプよりも小さく、従って滲み等は少ない。しかし、インク液中に顔料粒子を分散させても、粒子の質量が大きいとボトルやライン中で沈降、分離しやすく、印字ノズルヘット部では濃縮されるので、結果として目詰まり等のトラブルにつながる。このため錠剤のような小さい対象物に印字するには、対象物とノズルヘッドの距離は0.5〜数ミリと小さくし、且つ高圧噴出式湿式粉砕装置等を用いて10nm〜1μmに微細化して用いていることが望ましい。 版式転写印刷、グラビアオフセット印刷やインクジェット印刷における印字不良(にじみ、かすれ、色斑、他錠の汚れ等)の発生要因は、錠剤表面の物性に最も依存すると考えられるが、本発明においては、微細な薬物又は薬物含有粒子の表面を、水溶性添加剤を溶解し、更に微細な水に難溶又は不溶性の添加剤を含む分散液により被覆し、得られた粉末を打錠することにより鮮明な印刷ができる錠剤を製造することができる。 本発明によれば、機械的強度が高く、消化管内での崩壊性に優れ、かつ錠剤表面の印刷適性にも優れた錠剤が得られる。本発明の方法により得られた錠剤に印刷を施した印刷錠剤は、医療現場での薬剤の識別性を高め、投薬過誤を防止できるので薬剤師、看護師の負担は軽減でき、さらに患者は、製品名や薬物含量等が判読し易くなり、処方箋通りの服薬が容易となる。 以下、参考例と実施例を挙げて本発明を説明する。〔参考例1〕苦味マスキング薬物含有粒子の製造 部分アルファー化デンプン(PCS/旭化成ケミカルズ製)792.5gを流動層造粒乾燥コーティング機(パウレック社製、MP−01SPC型)に投入し、これに、予めドネペジル塩酸塩250g(TEVA製)及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(POVACOAT/大同化成工業製)7.5gを精製水750gに溶解・分散させた液を噴霧し、レイヤリング造粒した。次いで、ポリビニルアルコール共重合体20g及びタルク(クラウンタルク/松村産業製)180gを精製水1,300gに溶解・分散させた液を噴霧してコーティングし、乾燥した。この乾燥造粒物に、さらにメタクリル酸コポリマーLD(オイドラギッドL30D55/エボニック・テグサ・ジャパン製)450g、D−マンニトール(マンニットP/三菱フードテック製)295g、タルク125g及びクエン酸トリエチル(シトロフレックス2SC−60/森村商事製)50gを精製水1,875gに溶解・分散した液でコーティングし、乾燥して、苦味マスキング顆粒を得た。 このコーティング顆粒とD−マンニトール3,890.5g、結晶セルロース(セオラスKG−802/旭化成ケミカルズ製)2,250g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(NBD−022/信越化学製)1,000gを流動層造粒乾燥コーティング機(パウレック社製、FD−GPCG−5SPC型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L/日本曹達製)90gを精製水2,910gに溶解した液を噴霧しながら造粒し、乾燥して下記組成の苦味マスキングを施した平均粒子径94.8μmの薬物含有粒子を得た。[成 分] [造粒粒子188mg当たりの重量(mg)] ドネペジル塩酸塩 5.00mg 部分アルファー化デンプン 15.85mg ポリビニルアルコール・アクリル酸 ・メタクリル酸メチル共重合体 0.55mg タルク 6.10mg メタクリル酸コポリマーLD 9.00mg D−マンニトール 83.70mg クエン酸トリエチル 1.00mg 結晶セルロース 45.00mg 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 20.00mg ヒドロキシプロピルセルロース 1.80mg 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子(平均粒子径94.8μm)940.0gを流動層造粒乾燥コーティング機(パウレック社製、MP−01型)に投入し、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体10.0g及びD−マンニトール15.0gを精製水3,960.0gに溶解し、さらに、タルク2.0g及び酸化チタン(アナターゼ型/フロイント産業製)2.5gを均一に分散させた懸濁液を噴霧して、被覆粒子(平均粒子径106.5μm)を得た。得られた被覆粒子193.9g、平均粒子径1μm以下に粉砕した酸化チタン2.0g、三二酸化鉄(癸巳化成製)0.1g及びステアリン酸マグネシウム2.0gをタンブラー混合機(昭和技研工業株式会社製、TM−2S型)に投入し、毎分30回転にて10分間混合した。得られた混合品を、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製、クリンプレス19型)を用いて打錠し、直径8mm、1錠198mgの下記組成の錠剤を得た。[成 分] [1錠当たりの重量(mg)] 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子 188.0mg ポリビニルアルコール・アクリル酸 ・メタクリル酸メチル共重合体 2.0mg D−マンニトール 3.0mg タルク 0.4mg 酸化チタン 2.5mg 三二酸化鉄 0.1mg ステアリン酸マグネシウム 2.0mg 参考例1で得た苦味マスキングした薬物含有粒子940.0gを流動層造粒乾燥コーティング機に投入し、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体20.0g及びD−マンニトール79.0gを精製水775.0gに溶解し、さらに、タルク60.0g及び酸化チタン80.0gを均一に分散した懸濁液を噴霧し、被覆粒子(平均粒子径154.3μm)を得た。得られた被覆粒子235.8g、微粉砕された酸化チタン2.0g、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製)0.2g及びステアリン酸マグネシウム2.0gをタンブラー混合機に投入し、以下、実施例1と同様に操作し、直径8mm、1錠240mgの下記組成の錠剤を得た。[成 分] [1錠当たりの重量(mg)] 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子 188.0mg ポリビニルアルコール・アクリル酸 ・メタクリル酸メチル共重合体 4.0mg D−マンニトール 15.8mg タルク 12.0mg 酸化チタン 18.0mg 黄色三二酸化鉄 0.2mg ステアリン酸マグネシウム 2.0mg 参考例1で得た苦味マスキングした薬物含有粒子940.0gを流動層造粒乾燥コーティング機に投入し、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体30.0g及びD−マンニトール110.0gを精製水1,162.5gに溶解し、さらに、タルク75.0g及び酸化チタン125.0gを均一に分散した液を噴霧し、コーティング粒子(平均粒子径176.7μm)を得た。得られた被覆粒子256.0g、微粉砕された酸化チタン1.0g、硬化油(フロイント産業製)1.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gをタンブラー混合機に投入し、以下、実施例1と同様に操作し、直径8mm、1錠260mgの下記組成の錠剤を得た。[成 分] [1錠当たりの重量(mg)] 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子 188.0mg ポリビニルアルコール・アクリル酸 ・メタクリル酸メチル共重合体 6.0mg D−マンニトール 22.0mg タルク 15.0mg 酸化チタン 26.0mg 硬化油 1.0mg ステアリン酸マグネシウム 2.0mg 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子940.0gを流動層造粒乾燥コーティング機に投入し、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体40.0gを精製水375.0gに溶解し、さらに、タルク2.0g、酸化チタン2.5g及び三二酸化鉄0.5gを均一に分散した液を噴霧し、被覆粒子(平均粒子径108.2μm)を得た。得られたコーティング粒子197.0g、微粉砕された酸化チタン1.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gをタンブラー混合機に投入し、以下、実施例1と同様に操作し、直径8mm、1錠200mgの下記組成の錠剤を得た。[成 分] [1錠当たりの重量(mg)] 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子 188.0mg ポリビニルアルコール・アクリル酸・ メタクリル酸メチル共重合体 8.0mg タルク 0.4mg 酸化チタン 1.5mg 三二酸化鉄 0.1mg ステアリン酸マグネシウム 2.0mg 参考例得た苦味マスキング顆粒含有造粒粒子940.0gを流動層造粒乾燥コーティング機に投入し、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体15.0g及びトレハロース(旭化成ケミカルズ社製)70.0gを精製水900.0gに溶解し、さらに、タルク3.5g、酸化チタン5.0g及び黄色三二酸化鉄1.5gを均一に分散した液を噴霧し、コーティング粒子(平均粒子径126.3μm)を得た。得られたコーティング粒子207.0g、微粉砕された酸化チタン1.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gをタンブラー混合機に投入し、以下、実施例1と同様に操作し、直径8mm、1錠210mgの下記組成の錠剤を得た。[成 分] [1錠当たりの重量(mg)] 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子 188.0mg ポリビニルアルコール・アクリル酸 ・メタクリル酸メチル共重合体 3.0mg トレハロース 14.0mg タルク 0.7mg 酸化チタン 2.0mg 黄色三二酸化鉄 0.3mg ステアリン酸マグネシウム 2.0mg 参考例1で得た苦味マスキング顆粒含有造粒粒子940.0gを流動層造粒乾燥コーティング機に投入し、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体40.0g及びキシリトール(三菱商事フードテック社製)102.5gを精製水1,300.0gに溶解し、さらに、タルク50.0g及び黄色三二酸化鉄2.5gを均一に分散した液を噴霧し、コーティング粒子(平均粒子径162.4μm)を得た。得られたコーティング粒子227.0g、微粉砕された酸化チタン1.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gをタンブラー混合機に投入し、以下、実施例1と同様に操作し、直径8mm、1錠230mgの下記組成の錠剤を得た。[成 分] [1錠当たりの重量(mg)] 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子 188.0mg ポリビニルアルコール・アクリル酸 ・メタクリル酸メチル共重合体 8.0mg キシリトール 20.5mg タルク 10.0mg 酸化チタン 1.0mg 黄色三二酸化鉄 0.5mg ステアリン酸マグネシウム 2.0mg 参考例1で得た苦味マスキング顆粒含有造粒粒子940.0gを流動層造粒乾燥コーティング機に投入し、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体42.5g及び乳糖(200M、DFEファーマ社製)95.0gを精製水1,300.0gに溶解し、さらに、タルク1.5g及び酸化チタン5.0gを均一に分散した液を噴霧し、被覆粒子(平均粒子径132.4μm)を得た。得られたコーティング粒子207.0g、微粉砕された酸化チタン1.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gをタンブラー混合機に投入し、以下、実施例1と同様に操作し、直径8mm、1錠220mgの下記組成の錠剤を得た。[成 分] [1錠当たりの重量(mg)] 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子 188.0mg ポリビニルアルコール・アクリル酸 ・メタクリル酸メチル共重合体 8.5mg 乳糖 19.0mg タルク 0.3mg 酸化チタン 2.0mg ステアリン酸マグネシウム 2.0mg〔比較例1〕 参考例で得た苦味マスキング顆粒含有造粒粒子940.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gをタンブラー混合機に投入し、以下、実施例1と同様に操作し、直径8mm、1錠190mgの下記組成の錠剤を得た。[成 分] [1錠当たりの重量(mg)] 参考例1で得た苦味マスキング薬物含有粒子 188.0mg ステアリン酸マグネシウム 2.0mg〔試験例1〕 実施例1〜7及び比較例1で得た錠剤について、インクジェット印刷装置(IIM−400101型/松岡機械工作所製)を用いて印刷を施した。得られた印刷錠の印刷の評価を行い表1の結果を得た。 また、UVレーザー印刷装置(LIS−250型/クオリカプス製)にてPE=44%、40,000Hzの条件で印刷を施し、その印刷の評価を表2に示した。 さらに、得られた印刷錠について、錠剤硬度計(PC−30型/岡田精工製)及び崩壊試験器(NT−2HSF型/富山産業製)を用いて錠剤硬度及び崩壊時間を測定し表3の結果を得た。 各実施例で得た錠剤は、比較例で得た錠剤に比べ、インクジェット印刷及びレーザー印刷ともに印刷性は良好であった。また、実施例及び比較例で得た錠剤はいずれも錠剤硬度が且つ高く崩壊性も良好な結果であった。 本発明によれば、錠剤等の固形製剤表面に識別用文字等をより鮮明に印刷することができるので、医療現場において、錠剤等固形製剤の調剤ミスや服薬ミスを未然に防止することができる。薬物又は薬物含有粒子(A)の表面に、水溶性添加剤(B)及び水に難溶又は不溶性添加剤(C)を含む水性分散液(D)を噴霧して得られた被覆粒子(E)を打錠する錠剤の製造方法。水性分散液(D)が、水性結合剤を含有する請求項1に記載の錠剤の製造方法。水溶性添加剤(B)が糖類、糖アルコール類又は水溶性高分子化合物である請求項1又は2に記載の錠剤の製造方法。水に難溶又は不溶性添加剤(C)がセルロース誘導体、デンプ又は酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄類及び硬化油から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤の製造方法。水溶性添加剤(B)と水に難溶または不溶性添加剤(C)の合計量が薬物又は薬物含有粒子(A)に対し1〜70重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の錠剤の製造方法。水に難溶または不溶性添加剤(C)に対する水溶性添加剤(B)の重量比が0.3〜30である請求項1〜5のいずれかに記載の錠剤の製造方法。水性分散液(D)における水に難溶又は不溶性添加剤(C)の占める割合が1〜80重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の錠剤の製造方法。水性分散液(D)中の水に難溶または不溶性添加剤(C)の平均粒子径が10μm以下である請求項1〜7のいずれかに記載の錠剤の製造方法。水性分散液(D)中の溶質及び分散質の合計濃度が0.1〜50重量%である請求項1〜8のいずれかに記載の錠剤の製造方法。水性分散液(D)中の水に難溶又は不溶性添加剤(C)の平均粒子径が10nm〜5μmである請求項1〜9のいずれかに記載の錠剤の製造方法。被覆粒子(E)の平均粒子径が50〜200μmである請求項1〜10のいずれかに記載の錠剤の製造方法。被覆粒子(E)の打錠前に、滑沢剤と、酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄類及び硬化油から選ばれる少なくとも一種を配合して打錠する請求項1〜11のいずれかに記載の錠剤の製造方法。錠剤が裸錠である請求項1〜12のいずれかに記載の錠剤の製造方法。錠剤が口腔内崩壊錠である請求項1〜13のいずれかに記載の錠剤の製造方法。打錠後、錠剤表面に印刷を施す請求項1〜14のいずれかに記載の錠剤の製造方法。錠剤表面に施す印刷が、インクジェット印刷又はUVレーザー印刷である請求項15に記載の錠剤の製造方法。 【課題】医療現場における医療過誤のリスクを低減するための、識別性に優れた印字ができ、且つ機械的強度が高く、口腔内崩壊性に優れる錠剤の製造方法を提供すること。【解決手段】 薬物含有粒子の表面に水溶性添加剤、水に難溶又は不溶性添加剤を含む水性分散液を噴霧して被覆した粒子を打錠する錠剤の製造方法を提供する。好ましい実施態様としては、水溶性添加剤が糖類又は糖アルコール類であり、水に難溶又は不溶性添加剤がセルロース誘導体、デンプン、酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、酸化鉄類及び硬化油のものである。【選択図】なし


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