生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ベタインの合成方法
出願番号:2013233085
年次:2015
IPC分類:C07C 227/18,C07C 229/12,C07C 227/08


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末 隆志 津国 肇 JP 2015093843 公開特許公報(A) 20150518 2013233085 20131111 ベタインの合成方法 株式会社タピック 597095474 特許業務法人 津国 110001508 末 隆志 津国 肇 C07C 227/18 20060101AFI20150421BHJP C07C 229/12 20060101ALI20150421BHJP C07C 227/08 20060101ALN20150421BHJP JPC07C227/18C07C229/12C07C227/08 6 OL 9 4H006 4H006AA01 4H006AA02 4H006AB10 4H006AB12 4H006AB68 4H006AC47 4H006AC52 4H006BA72 4H006BB14 4H006BD70 4H006BS10 4H006BU50 本発明は、新規で工業的規模に適用可能なベタインの製造方法、特にトリアルキルグリシンの新規製造方法に関する。 ベタインと呼ばれる分子は、同一分子内の隣接しない位置に陽イオン部位及び陰イオン部位を有する、両性イオン型の分子である。ベタインの一種であるトリアルキルグリシン、特に、トリメチルグリシンは、自然界においては植物や甲殻類をはじめ海産物中に広く存在し、生体内で様々な機能を発揮する。またその利用においては、食品としてはその旨味成分として、さらに界面活性剤として利用可能な構造を有しうることから、化粧品等の分野では保湿剤としての用途や、洗髪料に添加する等の用途がある。 ベタイン分子の定義は広く両性イオン型の構造を取る分子ということができるが、その中でも産業上有用な化合物として、トリアルキルグリシン、特にトリメチルグリシンが挙げられる。トリメチルグリシンは、陽イオン部位としての四級アンモニウム基と陰イオン部位としてのカルボキシル基が、メチレン基を介して結合している構造を有する、最も簡単な構造のベタインの一種である。トリメチルグリシンは植物中では耐凍性、耐塩性のある植物に多く存在し、保水作用により塩害への耐性を高める等の作用が見出されている。また生体内ではタンパク質の構造安定化、メチル基の供与体としても作用する。トリメチルグリシンは、旨味調味料等の食品添加剤、化粧品の保湿剤等に利用されるほか、その塩酸塩は消化促進剤として用いられる。 ベタインには非常に広範な用途があり、特にトリメチルグリシンは自然界において容易に見出される分子であり、生体に無害であるため、その需要は添加物として用いる食品分野、飼料として用いる畜産分野、化粧品素材としての薬品分野等、非常に幅広い。産業的にはトリメチルグリシンは、主にビートから抽出することによって得ている。しかしながら、天然物から抽出する方法によっては、製造量が原料であるビートの生産量に依存することになり、得られる量に限界が生じるほか、生産量も安定しない。 一方、ベタインを合成によって得る方法についての試みは、必ずしも成功しているとは言えない。トリメチルグリシンの合成に関しては、トリメチルグリシン合成酵素を抽出して用いることが考えられるが、これは本質的に自然界に存在する方法を利用するため、酵素の製造に量的制約が生じる。 ベタイン分子を設計する手法として種々の方法が考えられるものの、トリメチルグリシンに代表されるベタインを安価で、かつ工業的規模で製造できる簡便な合成方法はこれまで知られておらず、その開発が望まれていた。 以上の課題を解決すべく本出願人は鋭意検討した結果、以下の製造方法により、容易に、工業的規模でベタインを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、(1)式I:[式中、 R1は、各々独立して、C1−7アルキル基を示し、 R2及びR3は、各々独立して、水素、C1−7アルキル又はベンジル基であるか、あるいはR2及びR3は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3〜7員シクロアルキル環又はN、SもしくはOから選択されるヘテロ原子を1〜3個有するヘテロシクロアルキル環を形成する]で示されるベタインの製造方法であって、(a)式II:[式中、R4は、カルボン酸のエステルを形成するC1−7アルキルもしくはベンジル、又は、カルボン酸の塩を形成する1価もしくは2価のカチオン(M+もしくはM2+/2)であり、Xは、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素から選択されるハロゲンである]で示される化合物を、式III: N(R1)3 (III)で示される第三級アミンと反応させ、R4がC1−7アルキル又はベンジルである場合には、次いで(b)アルカリ又は陰イオン交換樹脂を作用させることにより、式Iのベタインを得る工程を含む、方法を提供する。 また本発明は、(2)陰イオン交換樹脂が、OH型の陰イオン交換樹脂である、上記(1)記載の方法、(3)式IIのハロゲン化カルボン酸エステルと第三級アミンとの反応が、エタノール中で行われる、上記(1)又は(2)記載の方法、(4)R2及びR3が、ともに水素である、上記(1)〜(3)のいずれか一に記載の方法、(5)式(I)のベタインが、トリメチルグリシンである、上記(1)〜(4)のいずれか一に記載の方法、ならびに(6)上記(1)〜(5)のいずれか一に記載の方法によって得られる、トリメチルグリシンを除くトリアルキルベタインを提供する。 本発明の方法により、天然の産物に頼ることなく化学的方法によって、工業的規模にて容易にベタインを製造することができる。 本発明において、用語「アルキル」は、直鎖状又は分岐鎖状の、1価の炭化水素基を意味し、C1−7アルキルというときは、炭素数が1〜7個のアルキル基を意味する。C1−7アルキルの非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル(i−プロピル)、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。 本発明において、用語「シクロアルキル」は、環状の1価の炭化水素基を意味し、C3−8シクロアルキルというときは、炭素数が3〜8個のシクロアルキル基を意味する。C3−8シクロアルキルの非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。 本発明において、用語「ヘテロシクロアルキル」は、その環構造中にN、S又はOから選択されるヘテロ原子を1〜3個有する、前記シクロアルキル基を意味する。ヘテロシクロアルキルの非限定的例としては、テトラヒドロフラニル、オキセタニル、モルホリニル等が挙げられる。 本発明において用語「1価のカチオン(M+)」は、Na+、K+、Li+等のアルカリ金属イオン、Ag+、Cu+等の遷移金属イオン、アンモニウムカチオン等を意味し、用語「2価のカチオン(M2+)」は、Mg2+、Cu2+、Sr2+等のカチオンを意味する。 ベタインを得るための本発明の方法をまとめたスキームを、以下に示す。[式中、R1〜R4、Xは、先に定義した通りである] 本発明の方法により得られるベタインは、上記式(I)のように、四級アンモニウム基とカルボキシル基がメチレン炭素を介して結合している構造を有する。本発明の方法により得られるベタインは、トリアルキルグリシンであり、好ましくは、トリメチルグリシンである。 本発明の方法の一つの態様において、用いられるアミンは、式N(R1)3(式中、R1は、先に定義したとおりである)で示される第三級アミンである。各R1は、同じであってもよく、異なっていてもよい。R1は、C1−4アルキルであることが好ましく、メチルが特に好ましい。各々のアミンは市販されているか、又は当業者に公知の方法、例えば第二級アミンにハロゲン化アルキルを作用させることによって得ることができる。 本発明の方法の一つの態様において、用いられる式(II)のエステル又はカルボン酸塩は、α位にハロゲン原子を一つ有するエステル又はカルボン酸塩である。ハロゲンは、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素から選択される。好ましいハロゲンは、塩素又は臭素であり、特に好ましくは、臭素である。基R2及びR3は、好ましくは、水素である。式(II)のエステルにおいて基R4は、第三級アミンとの反応において保護基としても働く。好ましい基R4は、C1−7アルキルであり、エチル基が特に好ましい。本発明の方法に用いられる式(II)のエステルとして特に好ましいものは、2−ブロモ酢酸エチルである。 式(II)のエステルは、市販であるか、又は当業者に公知の方法によって得ることができる。例えば2−ブロモ酢酸エチルの場合、酢酸エチルを臭素化してもよいし、酢酸をHell-Volhard-Zelinsky反応で臭素化したのち、エステル化してもよい。式(II)で示されるエステルを得るための一般的方法は、以下のスキームで示される。 本発明の方法において、式(II)のエステルと第三級アミンとの反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。式(II)のエステル及び第三級アミンがともに常温、常圧で液体である場合、又は一方に他方が溶解する場合には、無溶媒にて反応を行うこともできるが、第三級アミンを安定して取り扱うため、溶媒を用いて行うことが好ましい。用いられる溶媒の種類は、反応を阻害せず、反応物を溶解するものであれば制限されないが、当該反応はSN2反応により進行すると考えられているため、反応速度を向上させるために極性溶媒を用いることが好ましく、アルコール、その中でも利用の容易さから、エタノールが特に好ましい。また、式(II)のエステルの加水分解を起こさない範囲であれば、水を溶媒として用いることもできる。 本発明の方法において、式(II)のエステルと第三級アミンとの反応は、室温から溶媒又は反応物の沸点までの温度範囲にて行うことができる。反応温度を高くする場合には、反応速度が向上する一方、圧力が上昇する問題が生じることから、耐圧容器等を用いて反応させることが好ましい。工業規模で行う場合、また使用する第三級アミンの沸点が低い場合、例えばトリメチルアミンを用いる場合等には、取り扱いの点から、反応は室温で行うことが好ましい。反応容器は反応条件によって適宜選択することができるが、マイクロリアクターを通して反応を行うことも可能である。 式(II)のエステルと第三級アミンとの反応によって得られたアンモニウム塩は、以下の構造:[式中、R1〜R4、Xは、先に定義した通りである]を有し、その好適な例として、以下の化合物が挙げられる。 ベタイン合成の中間体としての上記化合物もまた、新規化合物である。 これらのアンモニウム塩は、次いでアルカリ(例えば、NaOH、KOH、NH4OH、Ca(OH)2等)を用いるか、陰イオン交換樹脂を通してイオン交換される。アンモニウム塩は、単離してもよいが、反応液をそのままアルカリと反応させるか、イオン交換樹脂と接触させることもできる。 アルカリと反応させるか陰イオン交換樹脂に接触させることにより、アンモニウム塩中のハロゲン化物イオンが除去される。OH型のイオン交換樹脂を用いる場合、イオン交換反応は、次のような式により進行する。 P−N+R3OH− + X− → P−N+R3X− +OH−[式中、Pは、イオン交換樹脂の固相を表し、Rは、アルキル基を表し、Xは、ハロゲンを表す] 生じたアンモニウム塩中のハロゲン化物イオンを除去する能力を備えたものであれば、陰イオン交換樹脂に種類の制限はない。イオン交換反応によりハロゲン化物イオンを除去したのち、塩基と作用させることにより、エステルを加水分解して、目的のベタインが得られる。本発明の意図するところを制限するものではないが、OH型イオン交換樹脂を用いることにより、イオン交換反応の際に系中にOH−イオンが生じるため、効率的にエステルの加水分解が進行してベタインが得られるものと考えられる。このため、効率よくイオン交換反応を達成するために、陰イオン交換樹脂は、強塩基型の陰イオン交換樹脂が好ましい。OH型の強塩基型陰イオン交換樹脂を用いることが特に好ましい。本発明の方法に用いられる陰イオン交換樹脂は市販されており、例えば、ダウエックス(登録商標)(Dow Chemical社製)、ダイヤイオン(登録商標)シリーズ(三菱化学社製)、アンバーライト(登録商標)シリーズ、Ambersep(登録商標)、Diaion(登録商標)、Lavatit(登録商標)等を用いることができる。 本発明の方法は陰イオン交換樹脂により原料のエステルに由来するハロゲンを除去するものであるが、ハロゲンの除去方法として、アルカリ金属等のカチオン源を有するカルボン酸塩から調製を開始することで、ハロゲンの金属塩として除去するとともにベタインを得ることも可能である。この方法を用いてベタインを合成する方法の概略を以下のスキームに示す。[式中、R1〜R3、Xは先に定義した通りであり、Mは、Na、K等のカチオンである] 上記スキームの方法では、α−ハロゲン化カルボン酸の塩を第三級アミンと反応させることによりアンモニウム塩を形成させるとともに、生じたハロゲン化物イオンを塩のカチオンで捕捉することにより、塩として分離する。塩のカチオン源としてのMは、Na、K、Li等のアルカリ金属、Ag、Cu等の1価の遷移金属、アンモニウムカチオン等の有機カチオンの他、Mg、Ca、Sr等の2価カチオン(この場合は、上記式中M/2となる)を用いてもよい。副生する塩が無害であり、カルボン酸塩を調製する際に用いる原料が安価であることから、Naを用いることが好ましい。 上記スキームに記載の方法によって得られたベタインは、当業者に公知の方法によって副生した塩を除去することによって単離される。塩とベタインを分離する方法の一例として、ベタインと塩の溶解度差を利用して、エタノールにより塩を沈殿させて分離することができる。 本発明の方法により得られたベタインは、さらに溶媒の留去、再結晶等の当業者に公知の方法によって精製することができる。本発明の方法では、考えられる残留物が原料のアミン等のみであり、ハロゲンに由来する副生する塩はイオン交換樹脂により除去されるため、結果的に精製が容易であるという利点を有する。本発明の方法により得られたベタインもまた、トリメチルグリシンを除き本発明の範囲内である。 以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本実施例は、本発明の思想、態様を限定するものではない。[実施例1]トリメチルグリシンの合成工程1 臭化(2−トリメチルアンモニウム)酢酸エチルの合成 100mLフラスコ中にブロモ酢酸エチル(500mg、2.99mmol)をエタノール30mLに溶解させ、トリメチルアミンの25%メタノール溶液(3.2M、1.00mL、3.2mmol)を室温で加えた。滴下の終了後、室温で、撹拌を12時間続けた。反応の終了はTLCを用いてのブロモ酢酸エチルの消失により確認した。反応の完了を確認したのち、溶媒を濃縮し、得られた溶液を次の工程にそのまま用いた。工程2 陰イオン交換樹脂による処理 予め水で膨潤させたOH型陰イオン交換樹脂(ダイヤイオン(登録商標)SA10A、三菱化学社製)をカラムに充填した。次に工程1で得られた試料溶液をカラムに通し、さらに蒸留水を流して試料をカラムに通すことにより、イオン交換処理を行った。得られた水溶液を濃縮し、無色の個体としてトリメチルグリシンを得た。 得られた生成物は、NMR、IR、元素分析により天然から得られたトリメチルグリシンと比較し、純度を確認した。[実施例2] トリメチルグリシンの合成 ブロモ酢酸ナトリウムは、α−ブロモ酢酸(市販されているか、酢酸から当業者に公知の方法によって調製することができる)と水酸化ナトリウムを反応させることにより調製した。100mLフラスコ中にブロモ酢酸ナトリウム(483mg、3.00mmol)を水30mLに溶解させ、トリメチルアミンの25%メタノール溶液(3.2M、1.00mL、3.2mmol)を室温で加えた。滴下の終了後、室温で、撹拌を12時間続けた。反応溶液をろ過したのち、ろ液を濃縮した。得られた濃縮液にエタノールを添加し、生じた結晶をろ別した。さらにろ液を濃縮乾固させることにより、無色の固体としてトリメチルグリシンを得た。 本発明の方法により、ベタイン、特にトリメチルグリシンを工業的規模にて、天然の産物に頼ることなく製造することができる。本発明の方法により得られるベタインは、食品添加剤、保湿剤などに用いられるため、食品製造、化粧品製造の分野等で利用することができる。 式I:[式中、 R1は、各々独立して、C1−7アルキルを示し、 R2及びR3は、各々独立して、水素、C1−7アルキル又はベンジル基であるか、あるいはR2及びR3は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3〜7員シクロアルキル環又はN、SもしくはOから選択されるヘテロ原子を1〜3個有するヘテロシクロアルキル環を形成する]で示されるベタインの製造方法であって、(a)式II:[式中、R4は、エステルを形成するC1−7アルキルもしくはベンジル、又は、カルボン酸の塩を形成する1価もしくは2価のカチオンであり、Xは、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素から選択されるハロゲンである]で示される化合物を、式III: N(R1)3 (III)で示される第三級アミンと反応させ、R4がC1−7アルキル又はベンジルである場合には、次いで(b)アルカリ又は陰イオン交換樹脂を作用させることにより、式Iのベタインを得る工程を含む、方法。 陰イオン交換樹脂が、OH型の陰イオン交換樹脂である、請求項1記載の方法。 式IIのハロゲン化カルボン酸エステルと第三級アミンとの反応が、エタノール中で行われる、請求項1又は2記載の方法。 R2及びR3が、ともに水素である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。 式(I)のベタインが、トリメチルグリシンである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。 請求項1〜5記載の方法によって得られる、トリメチルグリシンを除く、トリアルキルベタイン。 【課題】ベタインの製造方法を提供する。【解決手段】(a)式:XC(R2)(R3)C(=O)OR4[式中、R2〜R4及びXは、明細書にて定義したとおりである]で示されるα−ハロゲン化カルボン酸エステルを、式:N(R1)3[式中、R1は、明細書にて定義したとおりである]で示される第三級アミンと反応させ、R4がC1−7アルキル又はベンジルである場合には、次いで(b)アルカリ又は陰イオン交換樹脂を作用させることにより、ベタインを得る工程を含む、方法である。【選択図】なし


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