生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_カプリン酸定量方法
出願番号:2013224897
年次:2015
IPC分類:G01N 30/88,G01N 33/50,G01N 30/06


特許情報キャッシュ

惠 淑萍 平野 賢一 JP 2015087199 公開特許公報(A) 20150507 2013224897 20131030 カプリン酸定量方法 国立大学法人北海道大学 504173471 興和株式会社 000163006 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 東海 裕作 100096482 松田 一弘 100188352 堀内 真 100131093 山内 正子 100150902 藤本 昌平 100177714 園元 修一 100141391 惠 淑萍 平野 賢一 G01N 30/88 20060101AFI20150410BHJP G01N 33/50 20060101ALI20150410BHJP G01N 30/06 20060101ALI20150410BHJP JPG01N30/88 EG01N33/50 DG01N30/06 E 2 OL 16 2G045 2G045AA25 2G045DA02 2G045FB06 本発明は、高精度かつ高感度に生体試料中のカプリン酸を定量する方法に関する。 中性脂肪蓄積心筋血管症(Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy、以下TGCVともいう。)は、2008年に初めて報告された新規疾患単位であり、心筋細胞や冠状動脈硬化巣に中性脂肪が蓄積する結果、重症心不全、不整脈を来す難病である(非特許文献1)。TGCVの原因として、これまでのところ、細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるATGL(Adipose triglyceride lipase)の欠損が知られている。正常では心臓においてエネルギー源となる長鎖脂肪酸を、TGCVでは細胞内で代謝できず、中性脂肪として心血管に蓄積してしまう結果、心臓がいわば肥満状態に陥る(非特許文献2)。 TGCVの治療法は研究段階にあるが、最近、中鎖脂肪酸であるカプリン酸が、強力な細胞内TG含量低下活性を持ち、心筋又は血管の組織又は細胞において中性脂肪が蓄積している糖尿病性心血管合併症の予防又は治療に有用であることが報告されている(特許文献1)。 一般に、生体に投与された薬物の有効性及び安全性を調べるため、主に血液等の生体試料中の薬物濃度を測定する必要がある。従来、カプリン酸などの脂肪酸分析には脂肪酸をメチルエステルに転換してからガスクロマトグラフィー(GC)で測定する方法が汎用されている(非特許文献3)。しかし、脂肪酸をメチルエステルに転換する前の抽出操作(前処理)の過程で、脂肪酸のロスが生じる問題が知られていた。さらに、本発明者らは、生体試料中のカプリン酸量をメチルエステル化GC法で定量すべく検討したところ、驚くべきことに、メチルエステル化されたカプリン酸は揮発性が高まり、室温でも蒸発してしまうという、これまで知られていなかったさらなる問題点を見出し、メチルエステル化GC法によるカプリン酸の定量が適切にできないことを明らかにした。 一方、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定に関しては、脂肪酸は通常、可視あるいは紫外光に吸収帯を持たないために化学修飾等の標識化を必要とするが、脂肪酸を2−ニトロフェニルヒドラジン(2-NPH)誘導体に転換した後、逆相HPLCで分析する方法が報告されている(非特許文献4、5)。この方法では、カプリン酸の2-NPH誘導体が室温で蒸発しないこと、及び、2-NPH誘導体に転換する前の脂肪酸の抽出操作が不要のため、抽出操作による脂肪酸ロスが生じないという利点がある。 なお、非特許文献5の図3、図4及び表1において、上記方法によるヒト血清中の各種脂肪酸の測定結果が開示されているが、カプリン酸については同定されていない。 一般に、高速液体クロマトグラフィーを用いた生体物質の分析では、内部標準を用い対象化合物の濃度を測定する必要がある。このような内部標準物質は、対象化合物と同様の化学的性質をもち、且つ生体内に存在せず、分析条件でそれぞれの検出ピークが明確に分離されなければならないという条件に合致するものでなければならない。国際公開第WO2013/031729号パンフレットHirano K., et al., N. Engl. J. Med., 359(22), 2396-2398, 2008Hirano K., J. Atheroscler. Thromb., 16(5), 702-705, 2009日本生化学会編:新生化学実験講座4 脂質II リン脂質,東京化学同人、1991Miwa H., et al., J. Chromatogr., 321, 165-174, 1985Miwa H., et al., J. Chromatogr., 416(2), 237-245, 1987 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、生体試料中のカプリン酸含量を高精度かつ高感度に測定する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、内部標準(IS:Internal Standard)物質として、カプリン酸とわずか1炭素長の違いしかないウンデカン酸(FFA11:0)を用い、前記ウンデカン酸を生体試料の脂肪酸と共に脂肪酸-NPH誘導体に転換後、高速液体クロマトグラフィー法にて分析することにより、高精度かつ高感度に生体試料中カプリン酸を定量する方法を見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、以下のとおりである。(1)以下の工程を含む、生体試料に含まれるカプリン酸の定量方法。(工程1)分析の対象とする生体試料及び既知量のウンデカン酸を、置換フェニルヒドラジンと反応させる工程;(工程2)工程1で得られた反応物の全部又は一部を高速液体クロマトグラフィーにて分析し、ウンデカン酸由来の検出シグナルとカプリン酸由来の検出シグナルとを対比することにより、当該生体試料中のカプリン酸量を算出する工程。(2)置換フェニルヒドラジンが2−ニトロフェニルヒドラジンであることを特徴とする(1)に記載の方法。 本発明によれば、高精度かつ高感度に生体試料中のカプリン酸含量を定量することができる。図1は、カプリン酸(FFA10:0)の2-NPH誘導体の質量分析の結果を示す図である。図2は、ウンデカン酸(FFA11:0)の2-NPH誘導体の質量分析の結果を示す図である。図3は、各脂肪酸の2-NPH誘導体の検量線を示す図である。図4は、標準品並びに、生体試料(中鎖脂肪酸含有油(MCT)摂取後のTGCV患者血清)のHPLCクロマトグラムである。図5は、TGCV患者血中totalカプリン酸濃度の時間変化を示す図である。図6は、TGCV患者血中遊離型脂肪酸濃度の時間変化を示す図である。図7は、イヌ血中totalカプリン酸濃度の測定結果を示す図である。図8は、イヌ血中遊離型カプリン酸濃度の測定結果を示す図である。 本発明の生体試料に含まれるカプリン酸の定量方法は、以下の工程を有する。(工程1)分析の対象とする生体試料及び既知量のウンデカン酸を、置換フェニルヒドラジンと反応させる。(工程2)工程1で得られた反応物の全部又は一部を高速液体クロマトグラフィーにて分析し、ウンデカン酸由来の検出シグナルとカプリン酸由来の検出シグナルとを対比することにより、当該生体試料中のカプリン酸量を算出する。 本発明における「生体試料」とは、主としてその成分を分析する目的でヒトや動物から採取されたものをいい、例えば、血液、リンパ液、尿、糞便、組織、細胞等が挙げられるが、このうち血液が好ましい。 本発明における「カプリン酸」とは、化学式では「CH3(CH2)8C(=O)OH」、IUPAC名では「デカン酸」、また、炭素数と二重結合の数の組合せにより「C10:0」や「FFA10:0」等で表現される脂肪酸のことをいい、標品として市販のものを入手することができる。カプリン酸としては、生体中で許容される塩を含む。 カプリン酸の生体中で許容される塩としては、生体試料中に含まれるカプリン酸の塩であればいかなるものも含むものであり、例えば、カプリン酸ナトリウム、カプリン酸カリウム、カプリン酸カルシウム、カプリン酸マグネシウム、カプリン酸アンモニウム塩等を挙げることができる。 本発明における「ウンデカン酸」とは、化学式では「CH3(CH2)9C(=O)OH」、また、炭素数と二重結合の数の組合せにより「C11:0」や「FFA11:0」等で表現される脂肪酸のことをいい、標品として市販のものを入手することができる。ウンデカン酸としては、生体中で許容される塩を含む。 ウンデカン酸の生体中で許容される塩としては、カプリン酸と同様の塩を挙げることができる。 ウンデカン酸又はその塩は、溶液として用いることもできる。前記溶液の溶媒としては、ウンデカン酸又はその塩を溶解し、試料中のカプリン酸及びウンデカン酸と置換フェニルヒドラジンとの反応を阻害しない限り、いかなる溶媒を用いることができるが、好ましくはエタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、最も好ましくはエタノールである。 本発明における「置換フェニルヒドラジン」とは、以下の式(I)で表される化合物、又はその塩であり、市販のものを用いることができる。 Rは、ベンゼン環のUV吸収を高める助色団であり、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリール基、ニトロ基、ニトリル基等を挙げることができ、ニトロ基が好ましい。本発明における「置換フェニルヒドラジン」のベンゼン環には1〜5の同一又は異なったRが置換できるが、好ましくはオルト一置換、オルト二置換、パラ一置換、オルト一置換−パラ一置換、オルト二置換−パラ一置換であり、さらに好ましくはオルト一置換である。本発明における「置換フェニルヒドラジン」としては2−ニトロフェニルヒドラジン及びその塩が好ましい。 2−ニトロフェニルヒドラジン(2-NPH)は、その1塩酸塩である2−ニトロフェニルヒドラジン・HCl(2-NPH・HCl)を用いることもでき、いずれも市販のものを入手することができる。また、2−ニトロフェニルヒドラジン又はその塩酸塩は、溶液として用いることもできる。前記溶液の溶媒としては、2−ニトロフェニルヒドラジン又はその塩酸塩を溶解し、試料中のカプリン酸及びウンデカン酸との反応を阻害しない限り、いかなる溶媒の溶液を用いることができるが、好ましくは水、メタノール、エタノール、プロパノール溶液であり、最も好ましくは2−ニトロフェニルヒドラジン一塩酸塩の水溶液である。 本発明における「高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography)」(本明細書では、「HPLC」ともいう。)とは、当業者において通常知られている分離分析技術のことをいう。HPLCとしては、順相(normal phase)クロマトグラフィーや、逆相(reversed phase)クロマトグラフィーの各クロマトグラフィーがある他、分子篩(size exclusion)クロマトグラフィー、イオン交換(ion exchange)クロマトグラフィー等を用いることができるが、このうち逆相HPLCが好ましい。逆相HPLCの固定相としては、シリカゲルに炭素数4〜28のアルキル基が修飾された固定相が好ましく、より好ましくはシリカゲルに炭素数4〜18のアルキル基が修飾された固定相であり、最も好ましくはシリカゲルに炭素数4のアルキル基が修飾された固定相(RP-4)である。 前記、逆相HPLCの移動相としては、各種溶媒を用いることができるが、好ましくは、水、緩衝液、メタノール、アセトニトリル、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。前記溶媒にトリフルオロ酢酸等の酸や、トリエチルアミン等の塩基を加えることもできる。逆相HPLCの移動相としては、より好ましくは、水−メタノールの混合溶媒であり、さらに好ましくは、濃度勾配を有する水−メタノールの混合溶媒である。 本発明における「検出シグナル」とは、HPLCにおいて、系に導入された試料がカラムにて分離された後検出器にて検出された目的物又はそれ以外の各成分データを、電子データとして又は紙やディスプレイ等の媒体上に出力された一連のスペクトラムのうち、目的とする成分の検出データのことをいい、「検出ピーク」又は単に「ピーク」とも表現される。検出器並びに当該検出器によって得られるデータとしては、目的物又はそれ以外の各成分データが検出できるかぎり特に制限はないが、例えば、目的物の光学的性質を利用するものとして、吸光度検出器による目的物の紫外光又は可視光の吸光度、屈折率検出器による目的物の屈折率、蛍光検出器による目的物の特定励起光に対する蛍光強度、等が挙げられる他、電気化学的検出器による酸化還元電位等目的物の電気化学的性質を利用するもの、質量分析器を用いるもの等が挙げられるが、このうち吸光度検出器による目的物の吸光度が好ましく、特に吸光度検出器による目的物の可視光の吸光度が好ましい。 本発明における「ウンデカン酸由来の検出シグナルとカプリン酸由来の検出シグナルとを対比する」とは、例えば、カプリン酸の検量線を作成する際にウンデカン酸を一定量添加し、カプリン酸濃度対カプリン酸とウンデカン酸のピーク面積比(縦軸)で検量線を予め作成したうえ、実試料と一定量のウンデカン酸を処理、分析して得られたクロマトグラムからピーク面積比を求める操作が挙げられる。 本発明における脂肪酸と置換フェニルヒドラジンとの反応は、非特許文献5に開示された方法又は必要に応じて反応条件を変更した改変法を用いることができる。反応方法としては、例えば、まず、生体試料50μLと規定濃度のウンデカン酸を含有するエタノール溶液とを混合し、次いで、置換フェニルヒドラジンと縮合剤を加える方法が挙げられる。塩基により反応を停止した後、得られた反応液に(1/30Mリン酸緩衝液(pH6.4)-0.5M塩酸(3.8:0.4 v/v))等の酸性緩衝液とn‐ヘキサン等の低極性溶媒を加え、撹拌、遠心分離の後低極性溶媒(n-ヘキサン等)層を分取し、室温、窒素雰囲気下に溶媒を留去する。得られた残渣を200μLのメタノールに溶解し、HPLC用検体を得ることができる。 前記縮合剤としては、カプリン酸及びウンデカン酸と2-ニトロフェニルヒドラジンとの縮合物が効果的に合成される限り、いかなる縮合剤を用いることができるが、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジイミド系の縮合剤が好ましい。なかでも、取り扱い及び後処理の簡便さから、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩が最も好ましい。これら縮合剤は、溶液として用いることもでき、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶液、最も好ましくはエタノール溶液として用いることができる。 また、反応停止の際に用いる塩基としては、反応停止できるのであればいかなる塩基を用いることができるが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の水溶液を挙げることができる。また、酸性緩衝液としては、反応液を中和することができれば、いかなる緩衝液を用いることができるが、好ましくはリン酸緩衝液である。前記リン酸緩衝液に、塩酸などの強酸を少量添加し、中和を効率的に行うこともできる。この場合、強酸の水溶液を、緩衝液の5〜15%程度加えることができる。 なお、カプリン酸の定量と同時に長鎖脂肪酸の含量を測定することはカプリン酸を摂取すべき量や期間及び体内動態解明の一助になるため、同時に長鎖脂肪酸の定量も行ってもよい。 その場合は、内標準物質としてウンデカン酸(FFA11:0) 及びマルガリン酸(FFA17:0)を使用することができる。これらの内標準物質と置換フェニルヒドラジンとの縮合物の調製は、上記ウンデカン酸(FFA11:0)のみを内標準物質として使用する場合の調製法と同様である。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。 以下に、カプリン酸の定量法について記載するが、カプリン酸の定量と同時に長鎖脂肪酸の含量を測定することはカプリン酸を摂取すべき量や期間及び体内動態解明の一助になるため、同時に長鎖脂肪酸の定量も行った。(標準物質の調製)カプリン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物の調製 カプリン酸を2−ニトロフェニルヒドラジン(2-NPH)と反応させ、カプリン酸2-ニトロフェニルヒドラジド (FFA10:0-NPH) を標準物質として化学合成した。5%ピリジン‐エタノール溶液 (V/V)中にカプリン酸 (5 mmol)および 2-ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩水溶液(5.5 mmol)を加え、縮合剤として1−エチル−3−(3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド(1-EDC) (5.5 mmol)を加え、60℃で1時間反応を行った。その後、クロロホルムによって抽出しクロマトグラフィーにて精製した後、カプリン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物(FFA10:0-NPH)を得た。長鎖脂肪酸の2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物の調製 カプリン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物と同様に、パルミチン酸(FFA16:0)及びステアリン酸(FFA18:0)を長鎖脂肪酸の分析用の標準物質としてパルミチン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物(FFA16:0-NPH)及び ステアリン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物(FFA18:0-NPH)を合成した。(内標準物質の調製) 次に、ウンデカン酸(FFA11:0)、マルガリン酸(FFA17:0)と2-NPHとを、上記カプリン酸の場合と同様に、反応させ、内標準物質(IS)としてウンデカン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物(FFA11:0-NPH (IS1 for FFA10:0-NPH )、及び、マルガリン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物( FFA17:0-NPH (IS2 for FFA16:0-NPH and FFA18:0-NPH))を合成した。(カプリン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物(FFA10:0-NPH)及びウンデカン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物の同定) 得られたカプリン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物(FFA10:0-NPH)及びウンデカン酸2-ニトロフェニルヒドラジド縮合物(FFA11:0-NPH)の質量分析(Thermo Fisher Scientific Inc. Waltham,MA, USA)結果を図1及び図2に示す。(検量線の作成) 上記で得たFFA10:0-NPH及びFFA11:0-NPH (IS1)、FFA16:0-NPH、 FFA17:0-NPH (IS2)及びFFA18:0-NPHを使用し、以下のHPLC条件で検量線を作成した。カラム:Mightysil-RP-4 GP (150×4.6 mm ID , Kanto Chemical Co.)移動相A: H2O (pH 4.0)移動相B: メタノールカラム温度:35℃流速:1.0mL/min検出波長:400 nmHPLCの溶離液の条件を表1に示す。 図3は、検量線、検出限界、定量限界を示す。図3に示すように合成したFFA10:0-NPH、FFA16:0-NPH及びFFA18:0-NPHはいずれも1.0〜200.0 pmolの範囲で良好な直線性を示した (R2>0.9983)。なお、FFA10:0-2-NPH、FFA16:0-NPH及びFFA18:0-NPHの検出限界(S/N=3:1)は0.6pmol、定量限界(S/N=3:1)は1.0pmolであった。 表2に本法の精確さ、日間及び日内の繰り返し測定における精度を示す。各脂肪酸の回収率を示す表である。精確さは90-108%、精度は8.0%以下と良好であった。(生体試料中のカプリン酸の定量例) カプリン酸、ウンデカン酸、パルミチン酸、は東京化成より購入したものを用いた。2-NPH誘導体合成試薬は、YMC社より購入したキット(製品番号:XSREFAR01)を使用した。即ち、当該キット中の試薬Aとして2-NPH溶液、試薬Bとしての縮合剤(EDC溶液(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)と試薬Cとしての反応停止剤(アルカリ溶液)、試薬Dとして酸性緩衝液、試薬Sとしてケン化用試薬のそれぞれを、以下の実験に供した。 図4は、合成した標準品と、中鎖脂肪酸含有油(MCT)摂取後のTGCV患者血清のHPLCクロマトグラムである。上段に5つのピークが観察され、それぞれ合成品のFFA10:0-NPH、FFA11:0-NPH(IS1)、FFA16:0-NPH 、FFA17:0-NPH (IS2)及び FFA18:0-NPHである。下段がTGCV患者MCT摂取後の血清のクロマトである。MCT摂取後の各脂肪酸のピークは標準品と同じ保持時間で溶出された。実施例1 TGCV患者の血清中totalカプリン酸の経時的定量 TGCVと診断された患者1名(男性、60歳)の同意を得て、中鎖脂肪酸含有油(MCT)(商品名O.D.O、日清オイリオ製)を1日20g、30日間連続で経口摂取してもらい、定期的に採血の後、血清中に含まれるFFA10:0を定量した。 即ち、TGCV患者血清50μLに2種類の内標準物質ウンデカン酸(FFA11:0, for FFA10:0)、マルガリン酸(FFA17:0, for FFA16:0 and FFA 18:0)及び試薬Sを加え、80℃で20分間ケン化した。次いで試薬A100μL、試薬B200μLを順次加え、60℃で20分間加熱した。試薬C50μLの添加により反応を停止した後、さらに60℃で15分加熱し、その後室温まで冷却した。上記反応液に試薬D 4mL 及びヘキサン3mLを加え、3000 rpmで25分間遠心分離を行ったうえで、上層のヘキサンを回収し、蒸発させた。残渣を200 mLのメタノールに溶解して10 mLをHPLCに導入し、totalカプリン酸の含量を測定した。経時的に測定した結果を図5に示す。 図5に示すように、MCT摂取前の血清中FFA10:0濃度は6.5 μM (n=1)であったのに対し、摂取1日目から22日目までの平均では30.6±4.5μM (n=4,mean±SD)であり、MCTの摂取によりTGCV患者の血中total FFA10:0(エステル型+遊離型)の上昇が観察された。実施例2 TGCV患者の血清中遊離型カプリン酸の経時的定量 実施例1と同じTGCV患者血清50μLに2種類の内標準物質ウンデカン酸(FFA11:0, for FFA10:0)及びマルガリン酸(FFA17:0, for FFA16:0 and FFA 18:0)をそれぞれ1 nmol及び 4 nmol添加し、試薬A100μL、試薬B200μLを順次加えた後、60℃で20分加熱した。試薬C50μLの添加により反応を停止した後、さらに60℃で15分加熱し、その後室温まで冷却した。上記反応液に試薬D 4mL 及びヘキサン3mLを加え、3000 rpmで25分間遠心分離を行ったうえで、上層のヘキサンを回収し、蒸発させた。残渣を200 mLのメタノールに溶解して10 mLをHPLCに導入した。このようにして、血清中の遊離型FFA10:0、FFA16:0、 FFA18:0及び内標準のFFA11:0、 FFA17:0の2-NPH誘導体を得た。 これら遊離型脂肪酸(FFA10:0、FFA16:0及びFFA18:0)の含量を経時的に測定した結果を図6に示す。 図6に示すように、中鎖脂肪酸油摂取前の血清中遊離型FFA10:0濃度は1.0μM (n=1)であったのに対し、摂取1日目から摂取22日目までの平均濃度は4.4±1.3μM (n=4,mean±SD)であり、中鎖脂肪酸油の摂取によりTGCV患者の血中遊離型脂肪酸 FFA10:0の上昇も観察された。また、MCT摂取前と比べて摂取後はFFA10:0濃度(破線)が上昇し、摂取15日に最大となった。一方、血清FFA16:0及びFFA18:0の濃度(実線)はFFA10:0 の増加に伴って徐々に減少した。以上より、FFA10:0の経口摂取は、遊離型中鎖脂肪酸濃度の上昇に加えて、遊離型長鎖脂肪酸濃度を減少させることが示された。実施例3 イヌ血中totalカプリン酸の経時的定量 ビーグルイヌ3匹に対し、中鎖脂肪酸油(商品名O.D.O、日清オイリオ製)をそれぞれ0 mg/kg、150 mg/kg、1500 mg/kg7日間連続経口投与した。7日目投与前、投与後0.5、1、2、4、8、24時間に採血を行い、血清を実施例1と同様に処理し、HPLC分析を行った。結果を図7に示す。図7に示すように、血中FFA10:0濃度はいずれも投与後0.5時間から上昇が見られ、150 mg/kg投与例では投与後1時間に、1500 mg/kg投与例では同2時間に極大値を示し、その後時間と共に減衰した。実施例4 イヌ血中遊離型カプリン酸の経時的定量 実施例3と同じビーグルイヌ3匹の血清50μLに2種類の内標準物質ウンデカン酸(FFA11:0, for FFA10:0)及びマルガリン酸(FFA17:0, for FFA16:0 and FFA 18:0)をそれぞれ1 nmol及び 4 nmol添加し、実施例2と同様に処理し、HPLC分析を行った。結果を図8に示す。図8に示すように、血中遊離型FFA10:0濃度は血中total FFA 10:0の変化傾向と同じく、いずれも投与後0.5時間から上昇が見られ、150 mg/kg投与例では投与後1時間に、1500 mg/kg投与例では同2時間に極大値を示し、その後時間と共に減衰した。 以上の実施例から、本発明にて、生体試料中のカプリン酸を定量できることが判明した。 本発明は、生体試料中のカプリン酸の定量法を提供するものであり、産業上の利用可能性を有している。 以下の工程を含む、生体試料に含まれるカプリン酸の定量方法。(工程1)分析の対象とする生体試料及び既知量のウンデカン酸を、置換フェニルヒドラジンと反応させる工程;(工程2)工程1で得られた反応物の全部又は一部を高速液体クロマトグラフィーにて分析し、ウンデカン酸由来の検出シグナルとカプリン酸由来の検出シグナルとを対比することにより、当該生体試料中のカプリン酸量を算出する工程。 置換フェニルヒドラジンが2−ニトロフェニルヒドラジンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【課題】 本発明は、生体試料中のカプリン酸含量を高精度かつ高感度に測定する方法を提供する。【解決手段】 本発明は、内部標準物質としてウンデカン酸を用い、生体試料の脂肪酸と共に2−ニトロフェニルヒドラジン等の置換フェニルヒドラジン誘導体に転換後、高速液体クロマトグラフィー法、好ましくは逆相高速液体クロマトグラフィー法にて分析することにより、より高精度かつ高感度に生体試料中カプリン酸を定量する。【選択図】なし


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