タイトル: | 公開特許公報(A)_(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオール(1S,2S,4R−limonene−trans−1,2−diol)を有効成分とするサーチュイン活性化促進剤 |
出願番号: | 2013221585 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/047,A61P 1/16,A61P 3/06,A61P 43/00,A23L 1/30 |
玉置 俊晃 土屋 浩一郎 宮本 理人 JP 2015074653 公開特許公報(A) 20150420 2013221585 20131008 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオール(1S,2S,4R−limonene−trans−1,2−diol)を有効成分とするサーチュイン活性化促進剤 ケイティーティー貿易株式会社 505312372 玉置 俊晃 513269088 土屋 浩一郎 513269099 宮本 理人 513269103 玉置 俊晃 土屋 浩一郎 宮本 理人 A61K 31/047 20060101AFI20150324BHJP A61P 1/16 20060101ALI20150324BHJP A61P 3/06 20060101ALI20150324BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150324BHJP A23L 1/30 20060101ALI20150324BHJP JPA61K31/047A61P1/16A61P3/06A61P43/00 105A23L1/30 BA23L1/30 Z 9 書面 14 4B018 4C206 4B018LB10 4B018MD08 4B018MD52 4B018ME14 4B018MF01 4C206AA01 4C206AA02 4C206CA09 4C206KA17 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA75 4C206ZB21 4C206ZC33 本発明は(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオール(1S,2S,4R−limonene−trans−1,2−diol)を有効成分とするサーチュイン1(Sirt1)の活性促進剤に関する。本発明は食品、医薬製剤、飼料等に好適に適用される。 サーチュイン(sirtuin)は、NAD+依存型の脱アセチルか酵素群の総称であり、酵母(Sir2など5種類)、線虫(4種類)、ショウジョウバエ(5種類)及びヒト(SIRT1〜SIRT7)など、多様なサーチュインが同定されている。ヒト・サーチュインは、いずれも、約275アミノ酸残基から構成されており、進化的な保存性の高い、触媒反応を担う領域を一次構造内に含んでいる。Sirt1、Sirt2、Sirt3、Sirt5は、タンパク質基質中の−アミノ基がアセチル化されたリジン残基から、NAD+依存的に脱アセチル化を触媒する。Sirt4とSirt6は、NAD+を供与体として、タンパク質基質中のADP−リボシル化を触媒する。 サーチュイン(Sirtuin)(サープロテイン(Sirprotein)ともいう)を活性化することにより、細胞死の予防、老化の予防、細胞死の治療、延命、寿命延長、癌発生の予防ができると報告されている(特許文献1)。このようなサーチュイン活性化試剤としては、植物の感染抵抗性に関与する成分であるレスベラトロールが知られており、動物実験によってコレステロールの減少、心臓病のリスク予防、早期ガンの予防及び進行抑制、血小板凝集予防などの効果が報告されている(非特許文献1,2)。また、近年、サーチュイン活性が上昇すると、アディポネクチンの産生が促進されることが明らかとなっている(特許文献2)。 上記の知見に刺激を受け、生体のサーチュイン活性を促進させる物質の探索が盛んに行われており、前述のレスベラートルより、更に強いサーチュイン活性促進物質が探索されている(特許文献3)。 植物には多くの成分(例えばポリフェノール類等)が存在し、多くの機能を担っている。レスベラトロールも、その一つであり、レスベラトロール以外にも、生体のサーチュイン活性を促進させる物質が存在することが想像された。そこで、植物成分(例えばポリフェノール類等)が検討され、報告される中で、スダチ果皮粉末を経口投与されたマウスに関して、生存率が向上していることが報告されている。このことから、スダチの成分には、サーチュイン活性を促進する物質があると考えられ、これまで35種類の化合物がスダチ果皮から単離され、その活性が評価されてきた(特許文献4)。 しかしながら、これらスダチ成分の35種の化合物は、非常に微量であり、サーチュイン活性の評価も充分実施できず、どのような作用メカニズムでのサーチュイン活性の発現であるのかも全く解明されていなかった。 特表2007−530417号公報特開2008−255040号公報特開2011−57580号公報特開2009−126799号公報 中畑泰和、「時間生物学」Vol.17,No.2,69−74(2011)山盛徹、「北獣会誌」Vol.55,45−49(2011) 本発明の目的は、スダチ抽出成分の35種の中で、Sirt1タンパク質の産生を促進し、生体のサーチュイン活性を促進させる物質を特定し、それを有効成分とするサプリメントや医薬組成物を作製することにより、各種疾患の予防を行うことである。特に、アディポネクチンの血中濃度の低下、及びインスリン抵抗性の亢進等に起因する種々の疾患の予防、更にはメタボリックシンドローム、糖尿病やその合併症、動脈硬化、消化器疾患等の種々の病態の予防を行うことを課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するためにスダチ成分から35種の化合物を単離し、その内、7種にサーチュイン(Sirt1/Sir2)活性を認め、特にその内の2種にはレスベラトロールと同等の活性があることを見出している(特許文献4)。本発明者らは、更に検討を進め、サーチュイン活性が認められなかったスダチ成分の中で、以下の構造式の(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオール(1S,2S,4R−limonene−trans−1,2−diol)(1)が、図1(化合物番号30)に示されるように、標準物質であるレスベラトロールと同程度以上のSirt1活性化作用があることを見出した。また、上記化合物(1)を用いて検討したところ、肝細胞の中性脂肪(トリグリセリド)濃度の低下を起こすことが分かり、本発明の化合物が、これまでスダチ果皮粉末の効果として報告されていた血中トリグリセリド濃度を低下させる有効成分の一つであることが明らかとなった。本発明者らは、以上の知見により本発明を完成した。 本発明の要旨は以下の通りである。(1)(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを有効成分とする、Sirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤。(2)(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを含有することを特徴とする、メタボリック・シンドロームの治療・予防用の健康食品またはサプリメント。(3)(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを含有することを特徴とする、Sirt1活性化とPGC1a活性化の2つの作用を有することを特徴とする、上記(1)に記載のSirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤。(4)上記Sirt1活性化とPGC1α活性化が、(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの添加量50μMより高い濃度で顕在化することを特徴とする、上記(3)に記載のSirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤。(5)(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを有効成分とする、中性脂肪濃度の低下促進剤。(6)上記中性脂肪濃度が、肝細胞の中性脂肪濃度である、上記(5)に記載の中性脂肪濃度の低下促進剤。(7)(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの添加量50μMより高い濃度で顕在化することを特徴とする、上記(5)に記載の中性脂肪濃度の低下促進剤。(8)(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを有効成分とする、脂質異常症の予防又は治療剤。(9)上記脂質異常症が脂肪肝である、上記(8)に記載の脂質異常症の予防又は治療剤。 本発明の(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオール(1)は、Sirt1活性がレスベラトロールと同程度以上であり、更に、肝細胞のトリグリセリドの濃度を有意に低下させることができるため、(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオール(1)を利用した脂質異常症の予防又は治療剤や健康食品を提供することができる。更に、本発明の1,2‐ジオール(1)を含有する健康食品またはサプリメントを摂食することによって、サーチュイン活性の低下が関与するメタボリックメタボリックシンドローム、糖尿病やその合併症、消化器疾患等の種々の病態の治療・予防に有効である。 すだち果皮由来化合物31種のSirt1活性を、レスベラトロールと対比して表わした図である。(+)‐リモネン‐trans‐1,2‐ジオールによる、Sirt1活性化の濃度依存(用量相関)を表わした図である。500μMの投与量で顕著な有意差が見られる。(+)‐リモネン‐trans‐1,2‐ジオールによる、Sirt1活性化の時間依存(経時変化)を表わした図である。化合粒の添加、8時間後に有意な活性が見られ、24時間後になると顕著な有意差が示された。このように、化合物の投与から効果発現までは、8時間以上のタイムラグがあることが見出された。(+)‐リモネン‐trans‐1,2‐ジオールによる、PGC1α活性化の時間依存(経時変化)を表わした図である。上記図3に示されたSirt1活性化の挙動と同様に、きれいに相関していることが示された。(+)‐リモネン‐trans‐1,2‐ジオールを投与することにより、肝細胞の中性脂肪(TG)含量が低下したことを表わした図である。上記図3に示されたSirt1活性化の挙動と同様にきれいに相関していることが示された。即ち、化合物を5μM投与することにより、TG含量が低下し始め、50μMになると有意差が付き始めることが示された。 本発明の「(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオール」とは、上記構造式(1)の化合物であり、R(+)−リモネン(limonene)の酸化代謝体と考えられる。なお、(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの有効投与量としては、Sirt1を活性化するに充分な量であれば特に問題はない。例えば、50μMの濃度が担保できれば、筋肉細胞や肝細胞で効果が発揮できることが示されている。 本発明の「Sirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤」とは、Sirt1遺伝子の発現増強を通じて、Sirt1タンパク質の産生促進効果を示す化合物のことであり、更には、Sirt1タンパク質の阻害物質を排除する効果を示す化合物のことを言う。 本発明のSirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤は、メタボリックシンドロームの予防や治療用の医薬品やサプリメントの有効成分としてヒトおよび動物に投与することができる。更には、各種飲食品、飼料(ペットフード等)に配合しても摂取させることができる。本発明のSirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤を医薬品として使用する場合には、経口的にあるいは非経口的(静脈投与、腹腔内投与、等)に適宜に使用される。剤型も任意で、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、または、注射剤などの非経口用液体製剤など、いずれの形態にも公知の方法により適宜調製することができる。これらの製剤や各種飲食品には、通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜使用してもよい。 本発明の飲食品やサプリメントの中に含まれる有効成分である(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの含有量は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができ、例えば、1〜10質量%程度とすることができる。特に、保健用飲食品やサプリメント等として利用する場合には、本発明の有効成分を所定の効果が十分発揮されるような量で含有させることが好ましい。 本発明の医薬品において、有効成分である(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの投与量は、その種類、その剤型、また患者の年令、体重、状況などによって異なるが、例えば経口的に服用される場合には、成人1日1回〜数回投与され、1日あたり1回約1mg〜200mg、好ましくは3mg〜20mg/人程度投与するのがよい。 本発明の「PGC1α活性化」とは、Sirt1の作用により、PGC−1αが脱アセチル化して活性化することをいう。なお、PGC−1α(peroxisome proliferator−activated receptor γ coactivator− 1α)とは、ミトコンドリアを構成する分子、あるいはその機能発揮に重要な分子の発現の制御を行う主調節因子である。そのため、PGC−1αは、ミトコンドリア合成やエネルギー産生を促進している。即ち、PGC−1は筋機能とインスリン感受性に影響を与えている。従って、PGC1α活性化により、インスリン感受性が改善されることになる。 本発明の「中性脂肪」とは、トリグリセリド(TG)のことであり、砂糖などの糖質、炭水化物、動物性脂肪などを主な原料として、肝臓で作製される。糖質、炭水化物、動物性脂肪を多く取りすぎると、皮下脂肪の主成分として蓄積される。中性脂肪が血液中に増加してくると、動脈硬化を進める一因になる。そのため、中性脂肪の血中濃度の測定は、動脈硬化性疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中など)を予防するために重要な数値となっている。例えば、中性脂肪の値が高い場合には動脈硬化の危険度が高く、低い場合には栄養障害やそれを引き起こす病気の可能性が考えられる。中性脂肪濃度は、血中の基準値では30〜149mg/dlである。中性脂肪値は食後30分ぐらいから上昇し始め、4〜6時間後に最も高くなる。測定する時間によっても変動が大きいため、検査は早朝空腹時に行なうこととされている。メタボリックシンドロームなどの患者の場合、中性脂肪の濃度が、血中の基準値を大きく超えているため、動脈硬化が加速されることになる。それ故、血中のTG濃度を低下させることにより、動脈硬化が予防又は治療できることになる。また、肝臓の細胞中での中性脂肪濃度が高くなると、肝細胞への中性脂肪の蓄積が進み、肝臓が脂肪肝になり、これが重症化すると、肝硬変、肝臓ガンへと移行して行くことになる。それ故、血中や肝細胞内での中性脂肪濃度の低下はメタボリックシンドロームの予防又は治療に欠かせないものであり、脂質異常症や脂肪肝の予防や治療に有効な方法である。 以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 31種のスダチ成分のSirt1活性の評価(1)試剤 1)使用細胞:C2C12(未分化) 2)使用培地:10%FBS D−MEM 3)サンプル:生薬研究室提供の紅花抽出物およびスダチ抽出物 4)キット:Cyclex社製品「Cyclex SIRT1/Sir2 Deacetylase Fluorometric Assay Kit」 5)サイトゾル回収用緩衝液(Lysis Buffer):10mM Tris−Hcl(pH7.5)、10mM NaCl、15mM MgCL2、250mM Sucrose、0.5% NP−40、0.1mM EGTA(2)方法 1)細胞培養: 細胞培養用の35mmディッシュあるいは6穴プレートに細胞を播種し、10%FBSD−MEMでコンフルエントになるまで培養する。 2)細胞刺激: 上記培地を吸引し、コントロールのグループは通常培地と、サンプルのグループは任意の濃度でサンプルを溶解した培地と交換する。本実験ではサンプルの最終濃度は50uMとした。N数は1グループにつき最低でも3,5〜6用意するとより望ましい。37℃インキュベーターで24時間刺激を行う。 3)細胞収穫(Cell harvesting): 以下の手順で細胞を刺激を終了し、サイトゾルを回収する。 サイトゾルの回収は以下の通りである。 ます、培地を吸引I、氷冷したPBSで2回洗った。次に、Lysis Bufferを150μl/wellを加えて(コンフルの場合は250〜300μl程度に増やしても良く、一見して細胞密度が低い場合は50〜100μl程度に減量しても良い。)、氷上で15分放置する。顕微鏡で、細胞質が溶解していることを確認し、セルスクレーパーで掻きとり、エッペンチューブに移した。その後、5秒×3回超音波破砕を行った。次に、12000rpm、4℃で20分間遠心し、上清を他のエッペンチューブに移し、使用するまで−80℃で保存した。 (3)評価 1)Sirt1活性評価: Cyclex社製品「Cyclex SIRT1/Sir2 Deacetylase Fluorometric Assay Kit」を用い、マイクロプレートリーダーで蛍光強度測定する。 以下の手順で白色96穴プレートに試薬を供給し、測定する。a)水: 任意の量を各ウェルに添加する。b)NAD溶液: 各ウェルに5μLずつ添加する。c)評価サンプル: タンパク15μg相当のLysateを各ウェルに添加する。d)反応緩衝液(Reaction Buffer): 各ウェルに30μLずつ添加する。e)試薬類を注入後、プレートシェイカーでサンプルと試薬をよく混合する。その後、蛍光強度を測定する。測定時間は本実験では通常「Readings:10」「Interval:1min」に設定している。[注記] 通常、白色96穴マイクロプレートの1穴に15μgのタンパクを供給して測定しているので、タンパク量15μgに相当するLysateの量を秤量する。さらにウェル内の液量を一律にするため添加する水の量も秤量する。 反応緩衝液(Reaction buffer)の組成(1穴)50穴分を作製する場合には、次の表1の組成を採取し、単純に50倍して調製した。 NAD溶液は、▲5▼のNAD原液を▲1▼assay bufferで10倍希釈して作製する。得られたNAD溶液と反応緩衝液は−20℃で保存した。 なお、表1の▲1▼とか▲2▼の番号は、Kitに附属の試薬チューブに記載されている番号である。また、▲1▼assay bufferとは、▲1▼Sirt1 assay Bufferを蒸留水で10倍希釈したもの。 (4)評価結果 各ウェルでの経時的な蛍光強度推移(測定開始時〜測定終了時まで)を求め、「散布図」でグラフにする。さらに近似直線を出し、その傾きを「K」とする。それぞれN=6での測定を行い、K1〜K6を平均した値を「K Average」とする。「K Average」はSirt1活性と相似できる。コントロール(無添加)の「K Average」を100%として、各グループの「K Average」と比較する。その結果を、図1に示す。 コントロール(無添加)と比較して「K Average」の割合が100%を上回り、統計的に有意であるグループは、Sirt1の活性化促進剤と考えられる。図1に示されるように、スダチ成分の中で、これまで有効でないと考えられて来たスダチ・サンプル番号30の(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールに、レスベラトロールと同等以上の明確なSirt1の活性化促進効果が認められた。 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールによるSirt1活性化の評価検討 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールがSirt1活性化に及ぼす影響を、以下の点について検討した。 a)Sirt1活性化に及ぼす上記ジオールの添加濃度の影響 b)Sirt1活性化に及ぼす上記ジオールの添加後の時間の影響 c)Sirt1活性化とPGC1α活性化の相関性 PGC1α活性化に及ぼす上記ジオールの添加後の時間の影響 (1)試剤 1)使用細胞:C2C12細胞(筋管細胞) 2)使用培地:10%FBS D−MEM(2)方法 1)細胞培養: 細胞培養用の35mmディッシュあるいは6穴プレートに上記細胞を播種し、10%FBS D−MEMでコンフルエントになるまで培養する。 2)細胞刺激: 上記培地を吸引し、コントロールのグループは通常培地と、サンプルのグループは任意の濃度でサンプルを溶解した培地と交換する。本実験ではサンプルの最終濃度は50μMとした。N数は1グループにつき最低でも3,5〜6を用意するとより望ましい。37℃インキュベーターで24時間刺激を行う。 3)細胞収穫(Cell harvesting): 以下の手順で細胞の刺激を終了し、サイトゾルを回収する。サイトゾルの回収は以下の通りである。まず、培地を吸引I、氷冷したPBSで2回洗った。次に、Lysis Bufferを150μl/wellを加えて(コンフルの場合は250〜300μl程度に増やしても良く、一見して細胞密度が低い場合は50〜100μl程度に減量しても良い。)、氷上で15分放置する。顕微鏡で、細胞質が溶解していることを確認し、セルスクレーパーで掻きとり、エッペンチューブに移した。その後、5秒×3回超音波破砕を行った。次に、12000rpm、4℃で20分間遠心し、上清を他のエッペンチューブに移し、使用するまで−80℃で保存した。 (3)評価 サイトゾルを融解し、レムリのサンプルバッファーを添加して98℃で5分間加熱処理後、常法に従いSDS−PAGEにて電気泳動による展開を行った。展開したゲルは常法に従い、ウエスタンブロットによるPVDF膜へ転写し、市販の抗Sirt1抗体、抗PGC1α抗体による検出を行った。また、2次抗体として、抗β−actin抗体、抗c2c12抗体による検出を行った。 その結果を、図2〜4に示した。図2に示されるように、本発明の(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールは、添加量が500μMになれば、有意にSirt1活性化が認められた。また、図3に示されるように、本発明の1,2‐ジオールは、添加しても直ぐにはSirt1活性化の反応が起きることはなく、添加後8時間経つと、Sirt1の活性化が現れ始め、24時間後にはSirt1の活性化が顕著になってくる。 更に、図4に示されるように、Sirt1の活性化と相関して、PGC1aの活性化が経時的に顕著になってくることが明らかになった。 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの薬効確認について (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールがSirt1の活性化を促進することから、アディポネクチンの産生を増大させる等のメタボリックシンドロームに対する予防又は治療効果のあることが期待される。そこで、Fao細胞を用いて、細胞内の中性脂肪(TG)含量に対する影響を検討評価した。(1)試剤 1)使用細胞:Fao細胞(ラット肝癌由来細胞株) 2)使用培地:10%FBS D−MEM(2)方法 1)細胞培養: 細胞培養用の35mmディッシュあるいは6穴プレートにFao細胞を播種し、10%FBS D−MEMでコンフルエントになるまで培養した。 2)細胞刺激: 上記培地を吸引し、コントロールのグループは通常培地と、サンプルのグループは任意の濃度でサンプルを溶解した培地と交換した。本実験ではサンプルの最終濃度は50uMとした。N数は1グループにつき最低でも3,5〜6を用意するとより望ましい。37℃インキュベーターで24時間刺激を行った。 3)細胞収穫(Cell harvesting): 以下の手順で細胞を刺激を終了し、サイトゾルを回収する。サイトゾルの回収は以下の通りである。まず、培地を吸引し、氷冷したPBSで2回洗った。次に、Lysis Bufferを150μl/wellを加えて(コンフルの場合は250〜300μl程度に増やしても良く、一見して細胞密度が低い場合は50〜100μl程度に減量しても良い。)、氷上で15分放置する。顕微鏡で、細胞質が溶解していることを確認し、セルスクレーパーで掻きとり、エッペンチューブに移した。その後、5秒×3回超音波破砕を行った。次に、12000rpm、4℃で20分間遠心し、上清を他のエッペンチューブに移し、使用するまで−80℃で保存した。 (3)評価 上記細胞内の中性脂肪の測定には、刺激後の細胞を氷冷PBSにて洗浄したのち、10%メタノール、90%クロロホルム中にて超音波破砕を行うことにより脂質を抽出した。抽出した脂質は減圧遠心により乾固し、少量の2−プロパノールにて再懸濁した。その2−プロパノール中に溶解している中性脂肪をTGワコー(和光純薬)試薬を用いて定量した。 その結果を、図5に示す。図5に示されるように、本発明の(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールが、50μMの濃度の添加量の場合に、TGの低下効果が出始め、500μMになれば、有意差が明確に出る結果であった。本発明の(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの効果は、図1に示されるSirt1の活性化に対する上記ジオールの添加効果と相関していることが示された。 即ち、Sirt1活性化が強くなればなるほど、TGの低下効果が有意に顕著な差として現れてくることが示され、本発明のジオールの添加量が50μMになれば肝細胞の中性脂肪(TG)が減少し始め、500μMになれば、肝細胞のTGは顕著に減少、低下することが明らかになった。 この結果、本発明のジオールは、脂肪肝の治療に有効であることが示された。また、スダチ果皮粉末には、血中のTG濃度を低下させる効果が知られているが、上記結果から、本願発明のジオールが、血中のTG濃度を低下させる有効成分の一つであることが明確になった。 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの調製 スダチの凍結乾燥果皮より抽出したメタノールエキスを、酢酸エチル−水で分配し、酢酸エチル抽出物をさらにシリカゲルカラム(ヘキサン−酢酸エチル)で分離した。この取得された画分についてHPLC(クロロホルム−メタノール)、そしてGPCカラム(メタノール)にて分分離することにより、本発明の(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを得ることができる。なお、本発明の上記ジオールは市販もされている。 本発明の(+)‐リモネン‐trans‐1,2‐ジオールを有効成分とするSirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤は、(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの効果によってSirt1のタンパク産生増強と活性化の促進を図ることができた。更に、本発明の(+)‐リモネン‐trans‐1,2‐ジオールの薬理学的な効果として、細胞内のトリグリセリドの効果を低下させることが見出された。 これらの結果から、本発明の(+)‐リモネン‐trans‐1,2‐ジオールは、メタボリックメタボリックシンドロームに関連する疾患の予防と治療、例えば糖尿病や脂質異常症の治療・予防、またSirt1活性調節により大腸癌などの腫瘍性疾患にも効果が期待でき、これらの病態の治療・予防に有効である。 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを有効成分とする、Sirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤。 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを含有することを特徴とする、メタボリックシンドロームの治療・予防用の健康食品またはサプリメント。 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを含有することを特徴とする、Sirt1活性化とPGC1a活性化の2つの作用を有することを特徴とする、請求項1に記載のSirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤。 上記Sirt1活性化とPGC1α活性化が、(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの添加量50μMより高い濃度で顕在化することを特徴とする、請求項3に記載のSirt1タンパクの産生促進剤及び/又はSirt1活性化促進剤。 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを有効成分とする、中性脂肪濃度の低下促進剤。 上記中性脂肪濃度が、肝細胞の中性脂肪濃度である、請求項5に記載の中性脂肪濃度の低下促進剤。 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールの添加量50μMより高い濃度で顕在化することを特徴とする、請求項5に記載の中性脂肪濃度の低下促進剤。 (+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールを有効成分とする、脂質異常症の予防又は治療剤。 上記脂質異常症が脂肪肝である、請求項8に記載の脂質異常症の予防又は治療剤。 【課題】スダチ成分として、生体細胞のサーチュイン活性をより強く促進し得る物質を解明し、各種疾患の予防や、アディポネクチンの血中濃度の低下、インスリン抵抗性の亢進等に起因する種々の疾患の予防又は治療用の医薬製剤や食品、飼料を提供すること。【解決手段】スダチ成分の一つである(+)‐リモネン‐トランス‐1,2‐ジオールにSirt1活性が顕著であることを見出した。これにより、上記(+)‐リモネン‐trans‐1,2‐ジオールを含有する組成物が、サーチュイン活性化促進剤として、メタボリックシンドローム、例えば糖尿病や脂質異常症等の種々の疾患の予防・治療に活用できることが明らかとなった。【選択図】なし