タイトル: | 公開特許公報(A)_ニキビ治療用医薬組成物 |
出願番号: | 2013220014 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/195,A61P 17/10,A61K 31/192 |
飯塚 泰貴 森本 佳伸 JP 2015081244 公開特許公報(A) 20150427 2013220014 20131023 ニキビ治療用医薬組成物 第一三共ヘルスケア株式会社 306014736 竹元 利泰 100161160 石橋 公樹 100146581 児玉 博宣 100164460 飯塚 泰貴 森本 佳伸 A61K 31/195 20060101AFI20150331BHJP A61P 17/10 20060101ALI20150331BHJP A61K 31/192 20060101ALI20150331BHJP JPA61K31/195A61P17/10A61K31/192 4 OL 8 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA17 4C206FA44 4C206KA09 4C206MA02 4C206MA04 4C206MA83 4C206NA05 4C206ZA89 4C206ZC75 本発明は、ニキビ(尋常性ざ瘡)を治療するための新規な医薬組成物に関する。 ニキビ(尋常性ざ瘡)は、毛包に皮脂が詰まり、炎症をおこすことによって発症する皮膚の炎症性疾患である。主に思春期に発症し、顔面胸背部などに毛孔に一致して皮疹が認められる。ニキビの発症メカニズムは、面皰形成と炎症惹起の2つの段階があり、面皰形成には皮脂分泌の亢進、毛包漏斗部の角化異常、及び毛包内細菌[特にニキビ桿菌による。ニキビ桿菌はアクネ桿菌(プロピオニバクテリウム・アクネス;P.acnes)若しくはアクネ菌とも称される。]の増加が関与するといわれており、炎症惹起過程では、ニキビ桿菌由来の細胞外炎症誘発物質の関与が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。これらのニキビの予防や治療には、洗顔や生活習慣の改善のほか、イオウ含有製剤、レチノイド様作用を有するナフトエ酸誘導体を有効成分とする外用薬のアダパレン(商品名:ディフェリン(登録商標)ゲル0.1%)(例えば、非特許文献2参照)、抗菌剤等が用いられている。 アダパレンは総皮疹(非炎症性皮疹及び炎症性皮疹)数を減少させる尋常性ざ瘡を治療する薬剤として知られている。その主な作用機序はレチノイド様作用による毛包漏斗部の表皮角化細胞の分化抑制で、ライノマウスでの用量依存的な面皰減少作用が知られている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、アダパレンが炎症惹起過程に関与するニキビ桿菌の引き起こす炎症反応に対する抑制作用は知られていない。また、アダパレンは、ニキビに対して用量依存的な治療効果を有するが、皮膚乾燥、皮膚不快感、皮膚剥脱、紅斑等の副作用を高頻度で引き起こすことも、同時に知られている(例えば、非特許文献2参照)。 トラネキサム酸は抗プラスミン剤として抗炎症作用等を示すことが知られている(例えば、非特許文献3参照)。 尋常性ざ瘡治療ガイドラインでは、炎症性皮疹に対しアダパレン外用のみではなく抗菌剤や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)との併用を推奨しており、アダパレンのみでは効果が不十分な場合があることも知られている(例えば、非特許文献4参照)。 アダパレンと併用される薬物として、タウリン、グルチルリチン酸二カリウム、酢酸トコフェロール、カンフル、メントール、イブプロフェンピコノール、乳酸メンチル、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等が知られているが(例えば、特許文献1〜5参照)、トラネキサム酸との併用、及び併用した場合の効果については知られていない。特許第5061984号公報特許第5233149号公報特許第5109383号公報特許第5109382号公報特許第4835411号公報MB Derma.,No.170, 6-7,2010ディフェリン(登録商標)ゲル0.1%,医薬品インタビューフォーム[2009年10月(改訂第3 版)]ファルマシア,Vol.44(No.5),437,2008日本皮膚科学会誌,No.118,Vol.10,1893-1923,2008 本発明は、ニキビに対して、副作用が少なく有効性が高い医薬組成物を見出すことを課題とする。 本発明者らは、鋭意研究の結果、ニキビ治療薬として知られているアダパレンに、抗プラスミン剤であるトラネキサム酸を併用することにより、ニキビの原因となるアクネ菌(プロピオニバクテリウム・アクネス)の感染による皮膚の腫脹に対し、極めて優れた効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)に関する。(1)アダパレン及びトラネキサム酸又はその塩を含有する、医薬組成物。(2)トラネキサム酸又はその塩がトラネキサム酸である、上記(1)に記載の医薬組成物。(3)ニキビ治療用である、上記(1)又は(2)に記載の医薬組成物。(4)剤形が外用剤である、上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の医薬組成物。 本発明により、優れたニキビの予防又は治療のための医薬組成物を得ることができる。 本発明に係るアダパレンの化学名は、6-[-3-(tricycle[3.3.1.13.7]dec-1-yl)-4-Methoxyphenyl]naphthalene-2-carboxylic acid(IUPAC)であり、特公平8−30015号公報や特表2008−534643号に記載されている方法で合成することができる。また、アダパレンを配合した製剤(ディフェリン(登録商標)0.1%ゲル)が市販されている。 本発明の医薬組成物におけるアダパレンの配合量は、製剤全体の重量に対し、通常0.001〜5重量%であり、好ましくは、0.002〜1重量%、さらに好ましくは、0.005〜0.3重量%である。 本発明におけるトラネキサム酸又はその塩は、公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造することもできる。また、本発明におけるトラネキサム酸は、第16改正日本薬局方に収載され、市販されており、容易に入手することができる。 本発明におけるトラネキサム酸の塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。本発明においては、トラネキサム酸又はその塩としては、トラネキサム酸が好ましい。 本発明の医薬組成物におけるトラネキサム酸又はその塩の配合量は、製剤全体の重量に対し、通常0.01〜10重量%、好ましくは、0.05〜5重量%であり、さらに好ましくは、0.1〜3重量%である。 本発明の医薬組成物は、医薬品として、ニキビ(アクネ)の予防及び/ 又は治療を目的としている患者に投与するものである。 本発明の組成物には、さらに公知の抗ニキビ効果を示す成分や、抗ニキビ効果を増強する成分、及びニキビに伴う症状を緩和する成分を加えてもよい。これらの成分としては、例えば、グリンダマイシン、ナジフロキサシン、イオウ、イソプロピルメチルフェノール、ピオニン(感光素201号)、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、ピリドキシン塩酸塩、カラミン、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルレチン酸ステアリル、オウバクエキス等の殺菌、抗菌、抗炎症成分;イブプロフェンピコノール等の非ステロイド性抗炎症薬;ハマメリスエキス、エゾウコギエキス、クエン酸、シラカバエキス、緑茶エキス、ホップエキス等の収斂成分;グリコール酸、乳酸、サリチル酸、サリチル酸マクロゴール、サリチル酸エタノール、トリクロロ酢酸等のケミカルピーリング効果のある成分、アスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシド、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル等の抗酸化剤等を挙げることができる。 本発明の医薬組成物の剤形は、皮膚に適用される外用剤である。本発明の組成物の具体的な剤形としては、例えば、液剤、軟膏剤、クリーム等を挙げることができ、また、液剤を含浸させたマスクやテープ剤等を使用することができる。また、これら製剤を製造する際に、所望の添加物を配合することができる。本発明に配合できる添加剤としては、基剤、賦形剤、乳化剤、増粘剤、保湿剤、pH調節剤、香料等を挙げることができる。 本発明の医薬組成物をニキビの患者に投与する際の用法用量としては、患者の病態等に応じて適宜調節することは可能だが、本発明の医薬組成物の剤形が外用剤の場合、患部に1日1回〜数回、患部に塗布すればよい。 実施例を以下に記載するが、本発明はこれらに実施例のみに限定されるものではない。(試験例)マウスを用いたアクネ菌感染試験1−1.試験方法 9週齢のBALB/cAnNCrlCrlj系雄性マウス[日本チャールス・リバー(株)]を1週間馴化させた後、10週齢のマウスにアクネ菌[プロピオニバクテリウム・アクネス,JCM No.6425(独立法人理化学研究所)]2.5×107cfuを腹側正中部に皮内接種した。菌接種時の体重測定結果を用いて群分けを行い、菌接種4時間後の1回、翌日から1日1回投与物質を0.2mL(クリンダマイシン ゲル1%は0.2g)塗布した。なお、トラネキサム酸とディフェリン(登録商標)ゲルの併用群についてはトラネキサム酸を塗布し、約10分後、皮膚が乾いたのを確認した後ディフェリン(登録商標)ゲルを塗布した。菌接種後4日目に菌接種部位の腫脹部位の長径と短径を、電子ノギスを用いて測定した。下記式(1)により、面積を算出した。1−2.被験物質 ディフェリン(登録商標)ゲル0.01%は、ディフェリン(登録商標)ゲル0.1%[入手先:塩野義製薬(株)]に注射用水を加え調製し、塗布した。トラネキサム酸0.5%はトラネキサム酸[入手先:第一ファインケミカル(株)]をエタノール、1,3−ブタンジオール、注射用水(1:1:8)混液で溶解し調製し、塗布した。また、陽性対照薬として、アクネ菌を適応菌種に持つリンコマイシン系抗生物質のクリンダマイシン ゲル1%(外用抗生物質製剤)[入手先:クラシエ薬品(株)]を用い、薬剤をそのまま塗布した。1−3.試験結果 各群10匹の平均値を表2に示す。薬剤の単独投与群である2群(アダパレン0.01%投与群)及び3群(トラネキサム酸0.5%投与群)では、非投与群である1群と比べて腫脹面積の縮小傾向は見られたが、有意なものではなかった。一方、1群(非投与群)と比べて、4群(アダパレン0.01%+トラネキサム酸0.5%の併用投与群)及び5群(陽性対照群)は有意な腫脹面積の縮小が認められた。また、併用投与群である4群は、それぞれ単独投与群である2群(アダパレン0.01%投与群)及び3群(トラネキサム酸0.5%投与群)と比べ、有意な腫脹面積の縮小が認められた。さらに、4群の併用投与群は5群(陽性対照群)よりも優れた効果が認められた。また、全ての投与群において、皮膚の痂皮や皮膚の発赤等の副作用は認められなかった。以上のことからアダパレンとトラネキサム酸を併用することにより、アクネ菌に対する抗腫脹作用はより強まり、しかも副作用等が認められず、優れた効果を奏することが分かった。(参考例)マウスを用いたアクネ菌感染試験2 2−1.試験方法 9週齢のBALB/cAnNCrlCrlj系雄性マウス[日本チャールス・リバー(株)]を1週間馴化させた後、10週齢のマウスにアクネ菌[プロピオニバクテリウム・アクネス,JCM No.6425(独立法人理化学研究所)]2.5×107cfuを腹側正中部に皮内接種した。菌接種時の体重測定結果を用いて群分けを行い、菌接種4時間後の1回、翌日から1日1回投与物質を0.2mL塗布した。菌接種後4日目 に菌接種部位の腫脹部位の長径と短径を、電子ノギスを用いて測定した。下記式(2)に従って面積を算出した。2−2.被験物質 ディフェリン(登録商標)ゲル0.1%はディフェリン(登録商標)ゲル0.1%[入手先:塩野義製薬(株)]をそのまま塗布した。陽性対照薬のクリンダマイシン ゲル1%[入手先:クラシエ薬品(株)]はそのまま塗布した。2−3.試験結果 各群10匹の平均値を表4に示す。6群(非投与群)と比べて、7群(アダパレン 0.1%投与群)及び陽性対照群の8群(クリンダマイシン ゲル1%投与群) は腫脹面積の有意な縮小が認められ、8群に比べ7群(アダパレン 0.1%投与群)の腫脹面積の縮小効果が、より大きい傾向が認められた。一方、7群(アダパレン 0.1%投与群)において、上記2群(アダパレン0.01%投与群)では見られなかった軽度の皮膚の痂皮や皮膚の発赤の副作用が認められた。以上の結果より、アダパレン 0.1%の投与は、単独でもアクネ菌感染時の皮膚の腫脹面積を縮小する効果に優れるが、軽度の皮膚の痂皮や発赤といった副作用が認められた。(製剤例) 以下の表5の成分を用いて、常法(例えば、日本薬局方第16改正 「11.6.ゲル剤」の製法を参照)によりゲル製剤を製造する。 本発明の、アダパレン及びトラネキサム酸を含有する医薬組成物は、アクネ菌によるニキビの患者に対して、副作用が少なく、有効性の優れた医薬組成物を提供できるので、有用である。 アダパレン及びトラネキサム酸又はその塩を含有する、医薬組成物。 トラネキサム酸又はその塩がトラネキサム酸である、請求項1に記載の医薬組成物。 ニキビ治療用である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。 剤形が外用剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。 【課題】ニキビに対して、副作用が少なく有効性が高い医薬組成物を提供することが課題である。【解決手段】アダパレン及びトラネキサム酸又はその塩を含有する、医薬組成物。【選択図】なし