タイトル: | 公開特許公報(A)_電気化学測定による抗酸化力測定法 |
出願番号: | 2013214835 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 27/416 |
永谷 尚紀 民谷 栄一 服部 玄 JP 2015078853 公開特許公報(A) 20150423 2013214835 20131015 電気化学測定による抗酸化力測定法 永谷 尚紀 505437860 デザイナーフーズ株式会社 393005141 国立大学法人大阪大学 504176911 永谷 尚紀 民谷 栄一 服部 玄 G01N 27/416 20060101AFI20150327BHJP JPG01N27/46 301M 8 OL 12 (出願人による申告)平成24年度、独立行政法人 科学技術振興機構、研究成果展開事業/研究成果最適展開支援プログラム フィージビリティスタディステージ/シーズ顕在化タイプ「電気化学デバイスを用いた簡便、携帯可能な食品抗酸化センサーの開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願本発明は、抗酸化力の評価に関する。さらに詳しくは、青果、食品などの抗酸化力を簡便に測定しうる抗酸化力の評価方法に関する。抗酸化力とは、活性酸素の働きを阻止する力であり、活性酸素によって発生したフリーラジカルを消去する活性、活性酸素の酸化力を抑える活性、スーパーオキシドラジカルを不均化する酵素およびその活性に大別できる。抗酸化力の評価として広く用いられている手法は、ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)法、DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)法、FRAP (Ferric Reducing Ability of Plasma)法などであるが、これらの手法は、蛍光、吸光度を測定し抗酸化力を評価するため、光学系を精度良く小型化することは容易ではない。さらに、これらの蛍光・吸光度測定を基礎とする方法は、着色した果実や野菜などの食品由来試料などについてはバックグランドの影響が大きく、測定に大きな支障を与える。その他にも、ESR(電子スピン共鳴)スピントラッピング法 、SOD(Superoxide dismutase)様活性などがあるが、測定方法が煩雑で高価な装置を必要とする。食品中には、様々な抗酸化物質が含まれており、活性酸素種も様々な形で存在するため、野菜、果物等の食品の抗酸化力の測定法は、様々な手法が開発されている。そのため世界的な標準化が遅れている測定対象である。活性酸素によって発生したフリーラジカルを消去する活性を測定する手法としては、ORAC法があり、水溶性、脂溶性のどちらのサンプルも測定可能な手法であり、蛍光物質であるFluoresceinを蛍光プローブとして使用し、AAPH(2,2’-Azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)をラジカル開始剤として用いて活性酸素を発生させ、これにより分解されるFluoresceinの蛍光強度を経時的に測定し、その変化を指標として抗酸化力を測定する方法である。β-カロテンや不飽和脂肪酸はその反応の機序が異なるため測定できない。同様にフリーラジカルを消去する活性を測定する手法として、DPPH法がある。DPPHラジカルの消去活性を吸光度にて抗酸化力を測定、評価する手法である。一部の抗酸化物質はDPPHと反応しない。DPPHはヒトの生体内に存在しないラジカルであるという問題点がある。ORAC法、DPPH法は、蛍光、吸光度を測定する抗酸化力の評価方法であるが、フリーラジカルを消去する活性を測定する手法としてESRスピントラッピング法も用いられている。フリーラジカルをスピントラップ剤にてスピントラッピングし、観測する方法。スーパーオキシドラジカル(O2・-)やヒドロキシルラジカル(・OH)をスピントラップ剤にて捕捉し、評価する方法である。活性酸素の酸化力を抑える活性を評価する方法としては、FRAP法 がある。抗酸化物質によってferric-tripyridyltriazine(Fe(III)-TPTZ)が還元され、生成されたferrous-tripyridyltriazine(Fe(II)-TPTZ)の吸光度(593nm)を一定の時間測定し抗酸化力を評価する手法である。血清や植物の抗酸化力分析に適しているが、チオール基(-SH)を有する化合物(グルタチオン、タンパク質)の測定に不向きである。鉄イオンではなく、同様に銅イオン還元による方法も用いられている。銅イオンの還元を、発色試薬にて発色させ、吸光度(480〜490nm)を測定することによって評価する方法である。スーパーオキシドラジカルを不均化する酵素およびその活性の測定方法としては、SOD様活性の測定がある。高水溶性ホルマザンを生成するテトラゾリウム塩WST-1を用いた発色による評価方法、スーパーオキシドラジカルとスピントラップ剤の反応物であるスピンアダクトの生成をESRにて評価する方法がある。他にも化学発光、電気化学発光を用いて抗酸化力を評価する方法も開発されているが、それぞれの抗酸化力の評価方法は、ラジカル種が異なる、抗酸化力として評価する対象が異なるため、それぞれの抗酸化力の評価方法で得られた値は比較できない。たとえば、DPPH法での抗酸化力が高くともFRAP法での抗酸化力は低い場合もある。電気化学的な抗酸化力の測定方法としては、血液の抗酸化力を測定するために白金を使用した印刷電極にてグルタチオン、尿酸、アスコルビン酸、Troloxの測定を行い、抗酸化物質の測定が可能であることを示す報告(非特許文献1)があるが、総合的な抗酸化力の評価ではない。酸化還元電位を測定することによって抗酸化力を評価する方法もあるが、単に電位を測定するだけの評価であり、抗酸化力の評価には十分といえない。活性酸素を電気化学的に電極上で発生させることで、食品の抗酸化活性を効率よく測定することを提案し、抗酸化力の測定には、過酸化水素やスーパーオキシドラジカルを電極で測定する方法も報告(特許文献1)されている。最終濃度29〜116mMとなるメディエーターの存在下で、電圧を電極間に印加して試料中の抗酸化物質の酸化還元電流を測定する方法も報告(特許文献2)されている。特許公開2007−170912号特許公開2007−185156号Miroslav Pohanka et.al., J.Applied Biomedicine, 9,103-109, 2011広く抗酸化力の評価方法として用いられているORAC法、DPPH法、FRAP法は、いずれも蛍光または吸光度を測定する光学的手法である。光学的な手法は、色の付いたサンプルの評価が困難であると言う問題点がある。また、光学的な手法では装置の小型化も容易ではなく現場での測定には不向きである。電子スピン共鳴装置、化学発光、電気化学発光を用いる方法も装置が高価になり、幅広く利用できる装置とはなりえない。電気化学測定を用いた方法は、安価で小型の装置が開発可能であり、電気化学測定を用いた手法も開発されているが、電極上で活性酸素を発生させ過酸化水素によって評価する、測定にメディエーターを用いるなど複雑な抗酸化力の評価方法となっている。そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、食品、青果の抗酸化力を迅速、簡便且つ安価に評価可能な、抗酸化力評価方法を提供することを目的とする。発明者らは、前述の目的を達成するために検討を重ねてきた。その結果、抗酸化力を迅速、簡便且つ安価に評価するためには、測定試料を電気化学的に酸化させ、酸化電流を測定し、抗酸化力を評価する方法が有効であるとの知見を得るに至った。ここで、理解のために、電気化学測定での抗酸化力の評価方法の原理を説明する。図1は電気化学測定での抗酸化力の評価方法の原理の説明図である。作用極、対極、参照極の3つの電極を組み合わせて行う、電気化学測定の一般的な方法では、ポテンショスタットを用いて作用電極の電位を参照電極に対して一定にするように電流を流す。作用電極上では、電極上で酸化還元される物質がある場合、酸化還元が行われる。作用電極上で酸化還元に必要となる電流は、対極から流れる。つまり、電子が対極から作用極に流れる。この時、ポテンショスタットは、作用極と対極間の電流を正確に測定する。酸化還元される物質が多ければ、多くの電流が流れる仕組みである。矩形波ボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリーなどの電位を変えながら電流値を測定する電気化学測定では、酸化還元される物質の固有の電位で酸化還元されるため、図1のようなピークをもった結果が得られる。図1は作用極上で酸化される場合の結果であるが、酸化される物質が多い場合は、ピークも大きくなる。また、酸化される物質が異なる場合は、ピークの電位も異なる場合もある。本発明は、上記原理に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に係る抗酸化力の評価方法は、測定試料中に抗酸化物質が含まれている場合、電気化学測定によって酸化電流が流れる。その酸化電流は、抗酸化物質が含まれている量に応じて、酸化電流は変化する。この測定試料中の抗酸化物質を電気化学的に酸化させることによる酸化電流を指標として抗酸化力を評価することを特徴とする。測定試料としては、青果、食品を主な対象とするが、抗酸化物質を抽出する必要がある。抗酸化物質の抽出方法としては、破砕し、純水で希釈しろ過する方法、破砕しメタノールで希釈し過する方法がある。前者は、水溶性の抗酸化物質の抽出が可能であり、後者は、脂溶性の抗酸化物質の抽出が可能である。測定試料を破砕後、純水で抽出した場合には、塩化カリウム溶液、リン酸緩衝液などの電解質溶液で希釈し、電気が流れやすい状態にするのが好ましい。測定試料を破砕後、メタノールで抽出した場合には、メタノール濃度が50%以下になるように塩化カリウム溶液などの電解質溶液で希釈するのが好ましい。破砕し、純水で希釈する場合には、純水を塩化カリウム溶液、リン酸緩衝液などの電解質溶液に変え希釈し、ろ過することも可能である。測定試料を破砕後、希釈、ろ過し、電解質溶液で希釈された溶液は、電気化学測定によって、酸化電流が測定され抗酸化力の評価が行われる。電気化学測定の方法は、酸化電流が測定可能な方法であれば、抗酸化力の評価が可能であるが、矩形波ボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリーで測定することが好ましい。本発明によれば、電気化学測定が可能な装置と塩化カリウム溶液、リン酸緩衝液などの電解質溶液、メタノール、純水などがあれば、青果や食品を破砕した後に抗酸化力の評価が可能となる。また、以上のような抗酸化力の評価方法においては、測定機として光学系が不要であるため、小型かつ安価な測定機で評価可能であり、評価コストを低減することができる。さらに、本発明によれば、従来の光学系を利用した分析法等に比べて迅速に評価が可能である。本発明の原理の説明図抗酸化物質であるアスコルビン酸の測定結果図2の結果より得られたアスコルビン酸の検量線ミニトマトと大玉トマトの本発明での抗酸化力の評価結果キャベツの外側の葉と芯の部分での本発明での抗酸化力の評価結果抗酸化力の異なる大玉トマトの本発明での抗酸化力の評価結果以下、本発明を適用した抗酸化力の評価方法について詳細に説明する。本発明は、電気化学的に酸化される抗酸化物質を含んだ測定試料、青果、食品の抗酸化力の評価に有用である。本発明では、抗酸化物質が有する電子を受け取り酸化されることを電気化学測定によって行うため、電子の受け渡しを増強するメディエーターは不要である。すなわち、本発明では、抗酸化力を評価するにあたって、簡便で迅速な分析が可能である。本発明は、抗酸化物質を含む試料を電気化学測定法により抗酸化物質を酸化し、酸化電流によって抗酸化力を評価するものである。電気化学測定法としては、酸化電流が測定可能な方法であれば抗酸化力の評価が可能であるが、好ましくは、電極電位を変化させながら電流値を測定する、矩形波ボルタンメトリー、サイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー等の各種のボルタンメトリー法等を利用することが好ましい。さらには、ボルタンメトリー法の中でも矩形波ボルタンメトリー法は高感度であるため好ましい。以下、電気化学測定法として矩形波ボルタンメトリー法を利用する場合について具体的に説明する。矩形波ボルタンメトリー法においては、ポテンショスタットや、作用極、参照極、対極等を備える電気化学計測用セル等、通常の電気化学測定機を用いることができる。また、電気化学計測用セルの代わりに、作用極、参照極、対極が印刷技術によって作られた、印刷電極を用いることもできる。抗酸化物質を含む試料を矩形波ボルタンメトリー法にて0.1Vから1Vまで電極電位を変化させながら電流値の測定を行う。試料中の抗酸化物質が、ある電位で酸化されると電流値が大きくなる。横軸を電位の変化、縦軸を電流値とした測定の結果を表すボルタモグラフでは、酸化電流が大きくなった電位でピークが現れる。抗酸化物質の量によってピークの大きさは、変化し、抗酸化物質が多い場合、多くの電子移動が必要となり、大きなピークとして現れる。このピークを指標として試料中の抗酸化力の評価が可能となる。青果物や食品など多くの抗酸化物質が含まれる測定試料の場合は、ピークが多数になる場合、ピークとピークが重なる場合もある。電気化学測定によって得られたピークの解析を行い、抗酸化力の評価を行う。ピークの解析方法は、解析結果が大きなピークが一つになった場合、ピーク電流値の比較を行うことで抗酸化力の評価が可能である。2つ以上のピークとなった場合には、ピークの面積を算出し、比較することで抗酸化力の評価が可能となる。以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。<実験1>抗酸化物質であるアスコルビン酸の測定 本実験では、抗酸化物質の一つであるアスコルビン酸の入った溶液を試料として抗酸化力の評価を行った。アスコルビン酸溶液を0から100mg/100g(純水)で調製し、そのアスコルビン酸溶液に対して等量の0.1 M 塩化カリウム溶液を加えて、測定溶液を調製した。測定溶液の電気化学測定には、作用極面積が2.64mm^2であり、カーボンペーストで印刷された作用極、対極を持ち、銀塩化銀ペーストで印刷されて参照極を備えた印刷電極を用いた。作用電極、参照極及び対極の全面が完全に覆われるように測定溶液を印刷電極上に滴下し、抗酸化力の評価を行った。矩形波ボルタンメトリー法により、作用電極の電位を−1.0 Vから1.0 Vへ変化させていき、電位変化に対する電流変化を測定した。ボルタンメトリーの条件はstep amplitude 0.001V、pulse amplitude 0.05 V、pulse frequency 10 Hz、pulse width 50 ms とした。電位に対する電流変化のボルタモグラフを、図2に示す。図2に示すように、アスコルビン酸の濃度に伴い、電流のピークが大きくなっている。図2のControlは、アスコルビン酸を含まない純水と0.1 M塩化カリウム溶液を等量加えた測定試料である。図2の結果では、高い電位では溶液中の溶存酸素の影響でピークが下がり切っていないため、ピークの補正を行い、ピーク値を算出し、横軸をアスコルビン酸の濃度、縦軸をピーク値でプロットすると、図3の結果が得られる。抗酸化物質であるアスコルビン酸濃度に応じて、ピークが大きくなっていることが分かる。<実験2>ミニトマトと大玉トマトでの抗酸化力の評価 本実験では、ミニトマトと大玉トマトを用いて、抗酸化力の評価を行った。ミニトマト、大玉トマトの重量を測定し、同じ重量の純水を加え、ミキサーに掛けて、ミニトマト、大玉トマトを破砕した後、ろ過して、ミニトマトろ過液、大玉トマトろ過液を得た。それぞれのトマトろ過液に対して等量の0.1 M 塩化カリウム溶液を加えて、測定溶液を調製し、上記と同様の印刷電極にて抗酸化力の評価を行った。矩形波ボルタンメトリー法により、作用電極の電位を−1.0 Vから1.0 Vへ変化させていき、電位変化に対する電流変化を測定した。ボルタンメトリーの条件は、上記と同じである。ミニトマトと大玉トマトの抗酸化力の評価を電気化学測定にて行い得られた、ピークの違いの見られる電位、−0.2 Vから0.6 Vの電位に対する電流変化のボルタモグラフを図4に示す。ミニトマト、大玉トマト共に大きな一つのピークが得られ、ミニトマトの方が、抗酸化物質が多く含まれていることが分かる。一般に、ミニトマトの方が、大玉トマトより2から3倍程度抗酸化力が高いと言われている。測定方法が異なるため、単純な比較はできないが、DPPH法で得られた抗酸化力は、大玉トマトで21.38 mgTrorox/100g、ミニトマトで34.04 mgTrorox/100g であった。上記で得たDPPH法での抗酸化力は、40mM酢酸バッファー(pH5.5)、100 μM DPPH、52%(V/V)エタノール、40%(V/V)トマト過液を加え、最終的な容量を5mLとした。常温下暗室にて静置し、30分後に分光光度計を用いて517nmの吸光度を測定した。リファレンスは40mM酢酸バッファー、52%(V/V)エタノール、40%(V/V) トマトろ過液を加え、常温下暗室にて静置し、30分後に分光光度計を用いて517nmの吸光度を測定した。サンプルは適切な濃度に希釈し測定した。標準物質としてTroloxを用いた。得られた吸光度よりID50値を算出し、得られたID50値からTrolox換算値を算出した。<実験3>キャベツの外側と芯の抗酸化力の評価本実験では、ミニトマトと大玉トマトを用いて、抗酸化力の評価を行った。キャベツの外側の葉、キャベツの芯の重量を測定し、同じ重量の純水を加え、ミキサーに掛けて、破砕した後、ろ過して、それぞれのろ過液を得た。それぞれのろ過液に対して等量の0.1 M 塩化カリウム溶液を加えて、測定溶液を調製し、上記と同様の印刷電極にて抗酸化力の評価を行った。矩形波ボルタンメトリー法により、作用電極の電位を−0.6 Vから0.6 Vへ変化させていき、電位変化に対する電流変化を測定した。ボルタンメトリーの条件は、上記と同じである。キャベツの外側の葉とキャベツの芯の抗酸化力の評価を電気化学測定にて行い、得られた電位に対する電流変化のボルタモグラフを、図5に示す。キャベツの外側では、0から200mV付近の大きなピーク200mVから500mV付近にピークが見られた。キャベツの芯では、−200mVから50mV付近のごく小さなピークと50mVから300mV付近のピークが見られる。キャベツの芯で見られる−200mVから50mV付近のごく小さなピークは、キャベツの外側にもあるが、0から200mV付近の大きなピークで確認しづらくなっている。キャベツの外側の葉での200mVから500mV付近にピークは、キャベツの外側の葉では、存在量が多く、芯では少ない抗酸化物質と考えられる。一般に、日光の照射による酸化を防ぐため外側の方が、抗酸化物質が多いと言われている。測定方法が異なるため、単純な比較はできないが、上記で得た、ろ過液をDPPH法で測定したところ、キャベツの外側の葉で21.6 mgTrorox/100g、キャベツの芯で5.93 mgTrorox/100gあった。なお、DPPH法での抗酸化力の評価は、上記同様に行った。<実験4>大玉トマトを用いた他の抗酸化力評価方法との比較 産地、収穫時期の異なる12個の大玉トマトの抗酸化力をSOD様活性、ヒドロキシルラジカル(OH・)消去能、一重項酸素(1O2)消去能、DPPH法で測定し、本発明の抗酸化力評価方法との比較を行った。大玉トマトのSOD様活性は、次のようにして得た。8.55M DMPO(5,5-Dimethyl-1-pyrroline N-oxide)、1.25mMヒポキサンチン、4.37mM DMSO、25%(V/V)サンプルに対し、0.1U/g XOD(キサンチンオキダーゼ)を添加後、1分後にESR(FA-100,日本電子)にて測定を行った。XODは0.1M リン酸緩衝液(pH7.8)(17mM NaH2PO4・2H2O, 183mM Na2HPO4)を用いて希釈した。測定に用いる混合液の最終的な容量は200 μLとした。測定条件はField : 335±5mT, Power : 3mM, Modulation Width : 0.079mT, Sweep Time : 1min, Time Constant. : 0.1sec, Amplify : 250とした。標準物質としてSODを用いて、40U/ml〜0.625U/mlの範囲にて検量線を作成した。得られた測定値(測定値/Mnマーカー)から、SOD換算値を算出した。大玉トマトのヒドロキシルラジカル(OH・)消去能は、次のようにして得た。5.7M DMPO、2.5mM 過酸化水素、25%(V/V)サンプルに対し、水銀灯(SX-UI501HQ, ウシオ電機)を用いて30秒間照射し、ESR(FA-100,日本電子)にて測定を行った。測定に用いる混合液の最終的な容量は200 μLとした。測定条件はField : 335±5mT, Power : 3mW, Modulation Width : 0.1mT, Sweep Time : 1min, Time Constant : 0.1sec, Amplify : 50とした。標準物質としてDMSO(Dimethyl sulfoxide )を用いて、1000mM〜62.4mMの範囲にて検量線を作成した。得られた測定値(測定値/Mnマーカー)から、DMSO換算値を算出した。大玉トマトの一重項酸素(1O2)消去能は、次のようにして得た。44.4mM TMPD(N,N,N'N'-tetramethyl-p-phenylenediamine)、6.25M DMSO、55.5μM Riboflavine、11.1%(V/V)サンプルに対し、カットフィルター(Y-48, ウシオ電子)を使用した水銀灯(SX-UI501HQ, ウシオ電機)を用いて20秒間照射し、ESR(FA-100,日本電子)にて測定を行った。測定に用いる混合液の最終的な容量は225μlとした。測定条件はField : 336.4±5mT, Power : 3mW, Modulation Width : 0.1mT, Sweep Time : 1min, Time Constant : 0.1sec, Amplify : 250とした。標準物質としてL-Histidine(Wako, Japan)を用いて、50mM〜3.125mMの範囲にて検量線を作成した。得られた測定値(測定値/Mnマーカー)から、L-Histidine換算値を算出した。大玉トマトのDPPH法での抗酸化能は、上記同様に行った。大玉トマトの電気化学測定による抗酸化力評価は、上記に記載の方法と同様にして行った。代表的なサンプルの電位に対する電流変化のボルタモグラフを図6に示す。図6に示すように、0から200 mV付近の小さなピークと200mVから500mV付近の大きなピークが見られる結果を得た。12種類の大玉トマトサンプルで、図6のように大きさの異なるピークが見られた。大きなピークの起点と終点を結び、図6の様にピークの大きさを算出し、他の抗酸化力評価方法との比較を行った。他の抗酸化力評価方法、SOD様活性、ヒドロキシルラジカル(OH・)消去能、一重項酸素(1O2)消去能、DPPH法と電気化学測定によるピークの大きさを表1に示す。抗酸化力の評価方法が異なるため、単純な比較はできないが、No.5、No.6のように、それぞれの抗酸化力評価方法で高い抗酸化力を示すサンプルは、電気化学測定による抗酸化力評価でも高い抗酸化力を持つ結果となった。No.10のように、それぞれの抗酸化力評価方法で低い抗酸化力を示す場合は、電気化学測定でも低い抗酸化力となっている。ビタミンC含有量が低い場合でも、電気化学測定では、高い抗酸化力を示し、総合的な抗酸化力の評価を行っている。電気化学的に試料中の電気的に酸化される物質量を測定するとともに、ラジカル消去活性に関しても電気化学的に評価を行い、総合的な抗酸化力を評価する。既に抗酸化力評価法として用いられている手法は、光学的な手法、装置が高価な手法であり、生産、流通現場での抗酸化力評価は困難となっている。現場で簡便な手法で一次スクリーニングとして、抗酸化力の低い農作物を見分ける事が出来る。測定試料を破砕し、ろ過した液を、少なくとも作用極および対極を有する測定用電極に滴下し、電気化学的に酸化させる。酸化する過程で得られる酸化電流を測定することにより抗酸化力を評価することを特徴とする抗酸化力の評価法。試料として、測定試料を破砕し、ろ過した液に0.1M KCl溶液あるいはリン酸緩衝液で希釈した溶液が用いられる請求項1の抗酸化力の評価方法。電気化学的な酸化の方法が、矩形波ボルタンメトリーによる請求項1記載の抗酸化力の評価方法。電気化学的な酸化の方法が、微分パルスボルタンメトリーによる請求項1記載の抗酸化力の評価方法。請求項3記載の電気化学測定法で得られた、酸化電流のピークあるいはピーク面積で抗酸化能を評価する抗酸化力の評価方法。請求項4記載の電気化学測定法で得られた、酸化電流のピークあるいはピーク面積で抗酸化力を評価する抗酸化力の評価方法。ボルタンメトリーによって抗酸化力を評価する請求項1の抗酸化力の評価方法。電極が、印刷電極である請求項1記載の抗酸化力の評価方法。 【課題】測定試料中の電気化学的に酸化し、測定試料中の酸化されやすい成分を測定することによって、特殊な試薬を使用せず、簡便で迅速な抗酸化力の評価法を提供する。【解決手段】測定試料を破砕し、ろ過した液を、少なくとも作用極および対極を有する測定用電極に滴下し、電気化学的に酸化させる。酸化する過程で、得られる酸化電流を測定することで、抗酸化力を評価する。【選択図】なし20131023A16331図13A16331図23