生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アミノ酸の製造方法
出願番号:2013210719
年次:2015
IPC分類:C07C 277/06,C07C 279/14


特許情報キャッシュ

志水 豪 長野 宏 吉浦 弘 JP 2015074618 公開特許公報(A) 20150420 2013210719 20131008 アミノ酸の製造方法 協和発酵バイオ株式会社 308032666 志水 豪 長野 宏 吉浦 弘 C07C 277/06 20060101AFI20150324BHJP C07C 279/14 20060101ALI20150324BHJP JPC07C277/06C07C279/14 2 OL 7 4H006 4H006AA02 4H006AD15 4H006BB31 本発明は、L−アルギニン塩酸塩の無水物結晶を安定に、かつ高収率で製造する方法に関する。 結晶の分子内配列は多くの物質において、その物質のバイオアベイラビリティ、形態及び純度等にあげられる機能や性質を特徴付けることは多い。よって、多型及び擬似多型を厳密に制御することは、高機能を有する結晶を工業的に取得するためには重要である。 アミノ酸は、数種の多型や擬似多型を有する有用なバイオマテリアルとして、広く利用されている。特にグルタミン酸は、多型の制御についてよく研究されているアミノ酸の1つであり、pH、温度、過飽和領域などで多型の制御ができることは知られている。 また、アミノ酸結晶の多型は、他のアミノ酸の存在に大きく影響を受けることも知られており、そのメカニズムも含めて多くの研究がなされている。一方で、他のアミノ酸による擬似結晶多型の制御に関する報告はほんのわずかしかない。 L-アルギニン塩酸塩は、擬似結晶多型を有するアミノ酸の1つであり(非特許文献1)、その結晶型は水溶液から濃縮晶析する際の温度でほとんど決まってしまう。42℃以上で晶析した場合は、L-アルギニン塩酸塩の無水物結晶が安定な結晶形であるが、42℃以下で晶析した場合は、L-アルギニン塩酸塩の一水和物結晶が安定な結晶型となる。工業的規模でアミノ酸の結晶を製造する場合は、エネルギーと結晶化の効率の観点からすれば結晶析出工程の温度はできるだけ低い方が好ましいが、低温晶析で得られるL-アルギニン塩酸塩の一水和物結晶はその無水物結晶に比べ結晶が非常に小さいので(図1)、結晶分離工程やハンドリング等の面からみた場合は、L-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の方が好ましい。したがって、低温下でも安定に無水物結晶を製造する方法が望まれているが、そのような製造法はこれまで知られていない。Journal of Crystal Growth., vol. 263, p510(2004) 本発明の目的は、例えば健康食品、医薬品、化粧品等の製品、原料もしくは中間体等として有用なアミノ酸であるL-アルギニン塩酸塩の無水物の結晶を安定に、かつ効率よく製造する方法を提供することにある。 本発明は、以下の(1)及び(2)に関する。(1)L-アルギニン塩酸塩水溶液を、42℃より高い温度での晶析に供してL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を析出させた後、得られたL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を含む溶液をL-アラニン、L-α-アミノブチル酸及びL-ノルバリンからなる群より選ばれるアミノ酸の共存下で冷却することを特徴とするL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の製造方法。(2)L-アラニン、L-α-アミノブチル酸及びL-ノルバリンからなる群より選ばれるアミノ酸を共存させる際、L-アルギニン塩酸塩に対して0.5重量%以上の該アミノ酸を共存させることを特徴とする上記(1)のL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の製造方法。 本発明により、例えば健康食品、医薬品、化粧品等の製品、原料もしくは中間体等として有用であるL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を安定に、かつ効率よく製造する方法が提供される。図1は、L-アルギニン塩酸塩結晶の大きさを比較した図である。(a)はL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶、(b)はL-アルギニン塩酸塩の一水和物結晶の顕微鏡写真である。矢印は500μmの大きさを示す。図2は、本発明の製造方法に用いられた各種アミノ酸の構造を示す図である。L-αAbaはL-アミノブチル酸、L-AlaはL-アラニン、D-AlaはD-アラニン、LAHCLはL-アルギニン塩酸塩、Glyはグリシン、L-LysはL-リジン、L-NvaはL-ノルバリン、L-OrnはL-オルニチン、L-ValはL-バリンを表す。 本発明のL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の製造方法は、L-アルギニン塩酸塩水溶液を、42℃より高い温度での晶析に供してL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を析出させた後、得られたL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を含む溶液をL-アラニン(L-Ala)、L-α-アミノブチル酸(L-α-ABa)及びL-ノルバリン(L-Nva)からなる群より選ばれるアミノ酸の共存下で冷却することを特徴とするL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の製造方法である。 さらに詳しくは、本発明の方法は、(1)L-アルギニン塩酸塩水溶液をL-Ala、L-α-ABa及びL-Nvaからなる群より選ばれるアミノ酸の共存下、42℃より高い温度での晶析に供することによりL-アルギニン塩酸塩無水物結晶を析出させた後、得られたスラリーを冷却することによりL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を晶析させることを特徴とする安定にL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の製造する方法であり、また(2)L-アルギニン塩酸塩水溶液を42℃より高い温度で晶析することによりL-アルギニン塩酸塩無水物結晶を析出させた後、得られたスラリーをL-Ala、L-α-ABa及びL-Nvaからなる群より選ばれるアミノ酸の共存下、冷却することによりL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を晶析させることを特徴とする安定にL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の製造する方法である。 本発明に用いられるL−アルギニン塩酸塩水溶液は、L-アルギニンを生産する微生物(日本特許第4881739号、米国特許第7,741,081 号、Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology, vol.79, (2003)など)を用いて発酵生産したL−アルギニンに塩酸を加えてL-アルギニン塩酸塩一水和物の水溶液を取得する方法、協和発酵バイオ株式会社等が販売しているL−アルギニン塩酸塩一水和物の結晶を水溶液に溶解するなどにより作製することができる。 水溶液は、本発明の方法が実施できる限り、メタノール、エタノール等の水溶性アルコールの他、水溶性有機溶媒を含む水溶液であってもよく、水からなる水溶液が好ましい。 本発明に用いられるL-アルギニン塩酸塩水溶液のpHは、本発明の方法が実施できる限り特に限定されないが、好ましくは3.0〜9.0、より好ましくは4.0〜8.0をあげることができる。pHの調整は塩酸、及び水酸化ナトリウム溶液等を用いて行うことができる。 本発明に用いられるL−アルギニン塩酸塩水溶液の濃度は、100g/L以上、好ましくは200g/L以上、より好ましくは250g/L、さらに好ましくは300g/L以上である。 本発明に用いるL-Ala、L-α-ABa及びL-Nvaは、L-アルギニンと同様に発酵生産で製造されるものであってもよいし、市販のものであってもよい。 本発明の方法においては、L-Ala、L-α-ABa及びL-Nvaから選ばれるアミノ酸(以下、媒晶アミノ酸という)は、L-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を含有するスラリーを冷却する際にそこに共存していればよく、L-アルギニン塩酸塩水溶液を42℃より高い温度で晶析する前に、当該水溶液に添加することで共存させてもよく、またL-アルギニン塩酸塩水溶液を42℃より高い温度での晶析に供して得られるL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を含むスラリーに添加することでそこに共存させてもよい。 媒晶アミノ酸は、固体であっても溶液であってもよい。媒晶アミノ酸が固体である場合は、添加後に溶解させることが好ましい。 媒晶アミノ酸の添加量は、本発明の方法が実施できる限り特に限定されないが、L-アルギニン塩酸塩に対0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは2.0重量%以上、さらに好ましくは3.0重量%以上である。 L-アルギニン塩酸塩水溶液を42℃より高い温度での晶析に供するとは、L-アルギニン塩酸塩水溶液を42℃より高い温度にすることによりL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を晶析させることであり、42℃より高い温度でL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を晶析させることができる方法であれば特に限定されないが、L-アルギニン塩酸塩水溶液を42℃より高い温度で減圧濃縮する濃縮晶析法をあげることができる。 濃縮晶析を行う温度は42℃より高ければ特に制限されないが、好ましくは43〜80℃、より好ましくは50〜70℃、さらに好ましくは50〜60℃、特に好ましくは55℃である。 濃縮晶析は、L-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を含むスラリー中のL-アルギニン塩酸塩濃度が濃縮前より高くなるまで行われ、好ましくは濃縮後のL-アルギニン塩酸塩の濃度が350g/L以上、好ましくは500g/L以上、より好ましくは600g/L以上、さらに好ましくは700g/L以上になるように行う。 上記のように、L-アルギニン塩酸塩水性溶液を42℃より高い温度での晶析に供することにより得られるL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を含むスラリーに、L-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を種晶として添加することにより結晶の成長を促進させてもよい。種晶として添加するL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の量は、該スラリー中のL-アルギニン塩酸塩に対して0.01重量%以上、好ましくは0.02重量%以上、より好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.04重量%以上、特に好ましくは0.05重量%以上である。種晶として添加するL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶は、公知の方法、すなわちL-アルギニン塩酸塩水溶液を42℃より高い温度に保ち続けるL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の晶析方法で得られた結晶を使用してもよいし、本発明の方法で取得した結晶を、次回の本発明の方法を実施する際の種晶として使用することもできる。 濃縮後は、種晶を添加するしないに関わらず10分間以上、好ましくは20分間以上、より好ましくは30分間以上、さらに好ましくは1時間以上、結晶を熟成させるための時間をとることが好ましい。熟成は、濃縮時と同じ温度で行うことが好ましい。 次の冷却工程を実施する前に、上記で得られたスラリーを濃縮し、さらに高濃度のスラリーを調整してもよい。この際の濃縮方法も特に制限されないが、上記したL-アルギニン塩酸塩水溶液の濃縮と同様の方法、条件をあげることができる。濃縮後のスラリーの濃度は、濃縮前のL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を含むスラリー中のL-アルギニン塩酸塩の濃度より高い濃度のスラリーが得られれば、その濃度は限定されないが、好ましくは750g/L以上、より好ましくは800g/L以上、さらに好ましくは850g/L以上の濃度である。上記で得られたL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶のスラリーを冷却することにより、安定なL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を析出させることができる。 本発明における冷却とは、スラリーの濃縮を実施した温度から室温以下にまで下げることであるが、徐々に室温以下にまで下げることが好ましく、1〜10℃/時間、より好ましくは2〜8℃/時間、さらに好ましくは3〜6℃/時間、特に好ましくは5℃/時間の割合で冷却することができる。 冷却温度は、室温以下であれば特に限定されないが、0〜28℃、好ましくは5〜25℃、より好ましくは10℃〜23℃、さらに好ましくは15〜20℃、特に好ましくは20℃である。 徐々に室温以下にまで冷却し、目標冷却温度に到達した後は、その温度で1時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは8時間以上保持することにより、結晶を熟成させることができる。 十分に結晶が成長した後、固液分離することによりL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を安定に取得することができる。固液分離は、遠心分離機等を用いて行うことができる。L-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の製造及び結晶の分析 L-アルギニン塩酸塩の結晶化の試験は、恒温液槽中に1Lビーカーを入れて温度制御することで行った。攪拌速度は200rpm、プロペラタイプの攪拌翼をビーカー底部近くで回すことで結晶含有溶液を攪拌しながら結晶化を行った。 200gのL-アルギニン塩酸塩一水和物(協和発酵バイオ社製)及び水を上記のビーカーに入れ、総容量を600mLとし常温にて攪拌した。当該L-アルギニン含有水溶液の温度を55℃まで上げて、L-アルギニンが完全に溶解するまで攪拌を続けた。L-アルギニンが完全に溶解していることを確認した後、55℃、130hPaにて減圧濃縮することで315gの水を除去した。 次に、種晶として0.1gのL-アルギニン塩酸塩無水物の結晶を上記で取得した濃縮溶液に入れ、55℃で1時間保持することで結晶を成長させ、その後、水の総除去量が365gになるまでスラリーを濃縮した(以下、一次濃縮という)。 次に、恒温槽の温度を5℃/時間の割合で除々に下げることで20℃まで冷却し、そのまま8時間保持した。得られた溶液を1000×gにて20分間遠心分離することで液体を除去し、結晶を取得した。 得られた結晶の性質は、示差熱熱重量同時測定(DTA)装置TG-DTA6200(セイコーインスツルメンツ社製)、不純物含量はHPLCにて分析した。各種アミノ酸を媒晶に用いたL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の生成試験 図2には、実施例2以降で媒晶として用いたアミノ酸及びL-アルギニン塩酸塩の構造を示した。 実施例1の一次濃縮を行う前に、L-アルギニン塩酸塩の総量に対して3.0重量%になるようにグリシン(Gly)、L-Ala、L-リジン(L-Lys)又はL-オルニチン(L-Orn)をL-アルギニン塩酸塩水溶液に添加した後、実施例1の一次濃縮以下の操作を行うことによりL-アルギニン塩酸塩の結晶を生成させ、当該結晶を分析した。 表1に示すDTA分析の結果のとおり、L-Alaの添加試験区のサンプルでのみ脱水ピークが見られなかったことから、L-Alaのみが冷却晶析の際にL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を安定化させることがわかった。L-Alaの光学異性体D-Alaを媒晶に用いたL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の生成試験 実施例2で用いたL-Alaの代わりに、D-Alaを媒晶に用いて同様のL-アルギニン塩酸塩の結晶を生成させた。 その結果、L-アルギニン塩酸塩結晶へのAlaのかみ込み割合はL-Ala又はD-Alaを添加した場合で違いはなかったが、D-Alaを媒晶に用いた場合にはL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶は得られなかった。L-Alaの共存量を変えた場合のL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の生成試験 実施例1において、一次濃縮後の冷却前のスラリーに種々の量のL-Alaを添加し、その後は実施例1と同様の結晶化操作を行い分析した。 表2に示すとおり、0.5重量%のL-AlaでもL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶から一水和物結晶への転移を防ぐことができることがわかった。このことは、共存させたアミノ酸はL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の内部に入り込んでではなく、結晶表面に吸着することで無水物結晶を安定化させていることを示している。L-Alaの構造類似アミノ酸を媒晶に用いたL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の生成試験 L-Alaとは、そのアルキル側鎖長が異なるアミノ酸を媒晶に用いた場合のL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の安定化について検討した。 L-Ala をコントロールとし、L-α‐Aba、L-Nva又はL-バリン(L-Val)を実施例2のL-Alaの代わりに用いて実施例1と同様の方法でL-アルギニン塩酸塩の結晶化試験を行った。 表3に示すとおり、アルキル側鎖がプロピル基より短いアミノ酸を添加した場合、当該アミノ酸の側鎖が直鎖状アルキル基であれば、L-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を安定化させる作用があることがわかった。一方でL-Valのように側鎖が分岐鎖を有するアルキル基であるアミノ酸の場合はL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の安定化作用がないこともわかった。L-アルギニン塩酸塩水溶液を、42℃より高い温度での晶析に供してL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を析出させた後、得られたL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を含む溶液をL-アラニン、L-α-アミノブチル酸及びL-ノルバリンからなる群より選ばれるアミノ酸の共存下で冷却することを特徴とするL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の製造方法。L-アラニン、L-α-アミノブチル酸及びL-ノルバリンからなる群より選ばれるアミノ酸を共存させる際、L-アルギニン塩酸塩に対して0.5重量%以上の該アミノ酸を共存させることを特徴とする請求項1記載のL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶の製造方法。 【課題】L-アルギニン塩酸塩の無水物の結晶を安定に、かつ効率よく製造する方法を提供する。【解決手段】L-アルギニン塩酸塩水溶液を、42℃より高い温度での晶析に供してL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を析出させた後、得られたL-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を含む溶液をL-アラニン、L-α-アミノブチル酸及びL-ノルバリンからなる群より選ばれるアミノ酸の共存下で冷却することにより、L-アルギニン塩酸塩の無水物結晶を析出させる方法。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る