タイトル: | 公開特許公報(A)_イオン選択電極 |
出願番号: | 2013205646 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 27/333,G01N 27/416 |
石毛 悠 釜堀 政男 小野 哲義 後藤 佑介 JP 2015068796 公開特許公報(A) 20150413 2013205646 20130930 イオン選択電極 株式会社日立ハイテクノロジーズ 501387839 平木 祐輔 100091096 関谷 三男 100105463 渡辺 敏章 100102576 石毛 悠 釜堀 政男 小野 哲義 後藤 佑介 G01N 27/333 20060101AFI20150317BHJP G01N 27/416 20060101ALI20150317BHJP JPG01N27/30 331GG01N27/30 331CG01N27/46 351BG01N27/46 351K 9 1 OL 14 本発明は,溶液中の電解質濃度を測定するために用いるイオン選択電極に関する。 イオン選択電極(ISE;Ion Selective Electrode)は参照電極と共に試料液に浸して電極間の電位差を計測し,試料中の測定対象イオンを定量する。この簡便さゆえ分析分野で広く利用されている。医療分野では臨床検査に用いられており,電解質測定の専用機だけでなく生化学自動分析装置,緊急検体検査装置,その場検査(Point Of Care Testing)装置で電解質測定のために用いられている。 イオン選択電極では複数のイオンから測定対象のイオンを選択的に測定するため,イオン感応膜を用いている。一般的にはポリ塩化ビニルなどの高分子の基材に,可塑剤とともにリガンドや場合によっては塩を混ぜ合わせたものをイオン感応膜として用いる。イオン感応膜は測定対象イオン濃度に応じてネルンストの式に従う電位を発生させるため,一方の面を一定濃度の水溶液に接した状態でもう一方の面を試料液に接触させることで,試料液中の測定対象イオン濃度に応じた起電力を得ることができる。得られた起電力から測定対象イオン濃度を算出する。このような,感応膜の試料液の反対側が水溶液やゲルで満たされたものは内部液型イオン選択電極と呼ばれている。 内部液型イオン選択電極に対して,感応膜の試料液の反対側の面を導電性の電極に直接接触させたものは Coated Wire - Ion Selective Electrode (CW-ISE) や Solid Contact - Ion Selective Electrode (SC-ISE) と言われている。ここでは,これらを固体電極と呼ぶ。固体電極は内部液が不要となるため小型化がし易く,その場検査向けの装置に適用されている。感応膜に接触させる電極(下地電極)としては,白金,導電性高分子で被覆した塩化銀,単分子膜で修飾した金,多孔質カーボン,カーボンブラック,グラファイトと高分子の混合体が用いられてきた。特表2007−534949号公報 発明者は電位安定性が高く個体差が小さい固体電極型イオン選択電極を考案すべく,研究開発を行った。その結果,従来の方法では十分な電位安定性と個体差を両立するものが得られないことが分かった。 原因を考察したところ,下地電極と感応膜,感応膜と試料液の間の電位を支配するイオンが異なるもしくは不明であることが分かった。例えば,下地電極に単分子膜被覆の金を用いた場合,感応膜と下地電極の間では酸化還元に伴う電子授受が電位を支配するのに対して,感応膜と試料液の間では測定対象イオン,例えばカリウムイオンが電位を支配する。 本発明のイオン選択電極は,グラファイトと液体オイルの混合体を下地電極に有する。 すなわち,本発明のイオン選択電極は,測定溶液中の測定対象イオンを選択的に検出する電極であって,測定溶液と接するイオン感応膜と,イオン感応膜と接するグラファイトと液体オイルの混合体と,グラファイトと液体オイルの混合体に接する導電体と,を備える。 一例として,イオン感応膜は可塑剤を含み,液体オイルはそれと同じ可塑剤を含む。 一例として,イオン感応膜に含まれる可塑剤の重量比と,グラファイトと液体オイルの混合体に含まれる可塑剤の重量比の相対差は30%以内である。 一例として,イオン感応膜は疎水性陰イオンを含み,グラファイトと液体オイルの混合体はそれと同じ疎水性陰イオンを含む。 一例として,イオン感応膜は測定対象イオンと選択的に結合する物質を含み,グラファイトと液体オイルの混合体はそれと同じ物質を含む。 一例として,液体オイルはフッ素系高分子またはフッ素系オイルである。 一例として,グラファイトは合成グラファイトである。 本発明によると,グラファイトと液体オイルの混合体を下地電極に用いることで,下地電極が測定対象イオンである一価の陽イオン例えばリチウム,カリウム,ナトリウムに応答するため,一価の陽イオンに対する感応膜を用いた場合,感応膜の両側で電位を支配するイオンが共通になり,十分な電位安定性と十分小さな個体差を得ることができる。 グラファイトと液体オイルの混合体であるため,均一な混合体を一度に作製し,複数の同一成分の下地電極を作製することができる。そのため,個体差を低減することができる。 液体オイルとしてイオン感応膜に含まれる可塑剤を用いることで,イオン感応膜からの下地電極への可塑剤の拡散による電位変動を抑制し,電位安定性を向上させることができる。さらに,下地電極にイオン感応膜に含まれる化合物である塩やリガンドを加えることで,時間経過後も良好な個体差を維持することができる。 グラファイトとフッ素系高分子の混合体を下地電極に用いることで,一価の陽イオンに対する応答を維持したまま,イオン感応膜に含まれる可塑剤などの成分の下地電極への拡散を防ぐことができる。 グラファイトに合成グラファイトを用いることで,天然グラファイトに含まれる様々な感応基を表面に有する炭素を含まないため,これら炭素による副反応を抑制し,電位安定性を得ることができる。 上記した以外の,課題,構成及び効果は,以下の実施形態の説明により明らかにされる。固体電極型イオン選択電極の一例を示す概略図。内部液型イオン選択電極の一例を示す概略図。電解質測定装置の一例を示す概略図。電解質測定装置の一例を示す概略図。電解質濃度測定の結果の一例を示す図。グラファイトと液体オイルの混合体の一価の陽イオンに対する応答性を示す測定結果の図。グラファイトと液体オイルの混合体の二価の陽イオンに対する応答性を示す測定結果の図。固体電極の電位の経日変化を示す図。固体電極の電位の経日変化を示す図。固体電極の電位の経日変化を示す図。固体電極の電位の個体差を示す図。電解質濃度測定の結果の一例を示す図。グラファイトと液体オイルの混合体の一価の陽イオンに対する応答性を示す測定結果の図。固体電極型イオン選択電極の一例を示す概略図。電解質濃度測定装置を用いたシステムの例を示す図。 以下,図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。 図1は,固体電極型イオン選択電極の一例を示す概略図である。イオン選択電極のカートリッジ101には流路102が通っており,(a)は流路に垂直な面を,(b)は流路に平行な面を示した図である。(c)は(a)の鎖線での断面を表した図であり,流路に感応膜105が接しており,流路と反対側にはグラファイトと液体オイルの混合体104が充填され,混合体104には白金線103が接触している。白金線103は端子も兼ねている。感応膜105には,Pure Appl. Chem., Vol. 72, No. 10, pp. 1851-2082, 2000 に記載されているようなリチウム,ナトリウム,カリウムなどのイオン選択膜を用いることができる。 図1のイオン選択電極の作製法の一例を記す。ポリ塩化ビニル,ポリスチレン,ポリプロピレンなどの樹脂でできたカートリッジ101に,感応膜105を貼り付ける。貼り付けにはテトラヒドロフランなどの溶剤を用いてもよいし,機械的に押し付けても良い。次に,グラファイトと液体オイルの混合体104を感応膜105上に配置した。グラファイトと液体オイルの混合体104は,グラファイトと液体オイルを重量比1:2程度で混合し,乳鉢で良く混ぜ合わせておいた。フタ106をし,フタ106に開いた穴から白金線103を挿入し,グラファイトと液体オイルの混合体104に接触させ,電気的に接続した。 液体オイルは想定される使用環境である0〜50℃において,液体の状態であることが好ましい。液体の状態であることで,以下で説明する一価の陽イオンに対する応答が期待できるばかりでなく,感応膜との密着性が保たれたり,液体中をイオンが動く場合はその動きが速くなり応答性が向上したりするためである。また,使用される条件下で液体であれば,これらの温度範囲すべてにおいて液体である必要はない。液体オイルには,水と混和しない物質,例として,パラフィンなどのアルカン,Pure Appl. Chem., Vol. 72, No. 10, pp. 1851-2082, 2000に記載されているDOA,DOP,DOS,oNPOEなどの可塑剤,フッ素系高分子,フッ素系オイルを用いることができる。 図2は,比較のために用いた内部液型イオン選択電極の一例を示す概略図である。イオン選択電極のカートリッジ201には流路202が通っており,(a)は流路に垂直な面を,(b)は流路に平行な面を示した図である。(c)は(a)の鎖線での断面を表した図であり,流路に感応膜205が接しており,流路と反対側には内部液204が充填され,内部液204には銀塩化銀電極203が接触している。銀塩化銀電極203は端子も兼ねている。感応膜205には,ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウムなどの陽イオン選択電極の場合は Pure Appl. Chem., Vol. 72, No. 10, pp. 1851-2082, 2000 に記載されているようなものを,塩素,炭酸,チオシアン,硝酸,水酸,リン酸,硫酸,ヨウ素などの陰イオン選択電極の場合は Pure Appl. Chem., Vol. 74, No. 6, pp. 923-994, 2002 に記載されているようなものの他に,塩化銀,臭化銀などのハロゲン化銀やイオン交換膜(特開平10−318973号公報,特開平11−132991号公報,特開2003−207476号公報)を,参照電極の場合は多孔質ガラス,セラミックなどを用いることができる。 図3は,図1や図2のイオン選択電極を用いた電解質測定装置の一例を示す概略図である。測定ユニット301には,制御部302,演算記録部303,出力部304が接続されている。測定ユニット301は希釈槽311,検体分注ノズル312,希釈液分注ノズル313,内部標準液分注ノズル314,吸引ノズル315,配管316,ナトリウムイオン選択電極317,カリウムイオン選択電極318,塩素イオン選択電極319,参照電極320,配管321,ポンプ322,電位計測部323を有する。検体分注ノズル312,希釈液分注ノズル313,内部標準液分注ノズル314はそれぞれ血液や尿などの検体,希釈液,内部標準液を希釈槽311に分注吐出する。希釈液は測定対象のイオンを含まないもしくは既知かつ低濃度であり,検体の希釈に用いることができる。内部標準液はイオン濃度が既知の試料であり,電位の校正に用いることができる。試料液吸引ノズル315は上下動でき,希釈槽311内の溶液をポンプ322の駆動力により吸引する。吸引された溶液は,配管316を通じて電極317〜320の流路に導入され,さらに,配管321を通じて廃液される。電極の端子は電位計測部323に接続されている。 図4は,図1や図2のイオン選択電極を用いた電解質測定装置の他の一例を示す概略図である。測定ユニット401には,制御部402,演算記録部403,出力部404が接続されている。測定ユニット401は希釈槽411,検体分注ノズル412,希釈液分注ノズル413,内部標準液分注ノズル414,吸引ノズル415,配管416,塩素イオン選択電極417,カリウムイオン選択電極418,ナトリウムイオン選択電極419,配管420,弁421,ジャンクション422,配管423,参照電極424,弁425,配管426,参照液427,配管428,ポンプ429,電位計測部430を有する。検体分注ノズル412,希釈液分注ノズル413,内部標準液分注ノズル414はそれぞれ血液や尿などの検体,希釈液,内部標準液を希釈槽411に分注吐出する。試料液吸引ノズル415は上下動でき,希釈槽411内の溶液をポンプ429の駆動力により吸引する。 弁421が開いていて,弁425が閉じている場合,吸引された溶液は配管416を通じて電極417〜419の流路に導入され,さらに,配管420,ジャンクション422,配管428を通じて廃液される。また,弁421が閉じていて,弁425が開いているときにポンプ429を駆動させると,参照液427が配管426を通じて吸引され参照電極424の流路に導入され,さらに,配管423,ジャンクション422,配管428を通じて廃液される。電極417〜419及び424の端子は電位計測部430に接続されている。電位計測部430は図3と同様のものを用いることができる。参照電極424に図2を用いて説明した多孔質ガラスやセラミックを用いた参照電極を用いる以外にも,参照電極424にイオン選択電極を用いてそれに対応する参照液427中の電解質濃度を一定としても良い。 図5は,本発明の固体電極型イオン選択電極もしくは従来の内部液型イオン選択電極を用いた電解質濃度測定の結果の一例を示す図である。カリウムイオン選択膜は,基材としてポリ塩化ビニル(PVC)を30%w/w含み,可塑剤としてoNPOEを66%w/w含み,リガンド(測定対象イオンと選択的に結合する物質)としてBis(benzo-15-crown-5)を含み,アニオン排除剤として疎水性陰イオンの塩であるテトラフェニルホウ酸カリウム(KTpClPB)を含む。ナトリウムイオン選択膜は,基材としてポリ塩化ビニル(PVC)を30%w/w含み,可塑剤としてoNPOEを66%w/w含み,リガンド(測定対象イオンと選択的に結合する物質)としてBis(12-crown-4)を含み,アニオン排除剤として疎水性陰イオンの塩であるTetrakis [3,5-bis(trifluoromethyl)phenyl] borate, sodium salt (NaTFPB)を含む。下地電極には,天然グラファイト(CAS. No. 7782-42-5)とパラフィンオイル(CAS. No. 8042-47-5)の重量比1:2の混合物を用いた。 図5(a)はカリウムイオン選択電極を感応膜に用いて塩化カリウム水溶液を,図5(b)はナトリウムイオン選択電極を感応膜に用いて塩化ナトリウム水溶液を測定した結果である。いずれの結果も61.6mV/decadeと理論値と等しい結果が得られた。このように,本発明の固体電極型イオン選択電極では内部液型イオン選択電極と同等の電位応答が得られた。 同様にして,固体電極型カリウムイオン選択電極を5個作製し,10mmol/l塩化カリウム水溶液を測定した場合の電位を比較した。その結果,電位の標準偏差は3.6mVと実用上許容される小ささ程度であり,本発明の固体電極型イオン選択電極では電位の個体差を抑制できることが分かった。個体差を抑制できる理由として,下地電極であるグラファイトと液体オイルの混合体が測定対象イオンである一価の陽イオンに対して応答性を有することが考えられる。 図6は,グラファイトと液体オイルの混合体が一価の陽イオンに対して応答性を有することを示す測定結果である。ポテンショスタットを用いて,グラファイトと液体オイルの混合体(感応膜を有さない)を作用電極に,飽和塩化カリウムを内部液に用いた銀塩化銀参照電極を参照電極に,白金電極を対向電極にして,(a)100mmol/l塩化リチウム水溶液,(b)100mmol/l塩化ナトリウム水溶液,(c)100mmol/l塩化カリウム水溶液中で測定を行った。測定条件は,掃引速度100mV/sとした。その結果,(a)〜(c)のいずれの条件においても,−0.5V付近と0V付近にそれぞれ電流ピークが観測された。これらのピークは,グラファイトと液体オイルの混合体への陽イオンの取り込みと放出によるものと考えられる。 一方,測定溶液を図7(a)100mmol/l塩化マグネシウム水溶液,(b)100mmol/l塩化カルシウム水溶液とした場合には,イオンの取り込みと放出に対応する電流ピークは観測されなかった。また,グラッシーカーボン電極を用いて100mmol/l塩化カリウム水溶液中で測定を行った場合(c)も,イオンの取り込みと放出に対応する電流ピークは観測されなかった。 すなわち,グラファイトと液体オイルの混合体は,一価の陽イオンに対して応答性を有し,二価の陽イオンに対する応答性は低い。 図8は,同様にして作製した下地電極に天然グラファイトとパラフィンオイルの混合体を用いた固体電極型カリウムイオン選択電極の100mmol/l塩化カリウム水溶液に対する起電力の経日変化の一例を示す図である。日が経つにつれ起電力が徐々に低下しているのが分かる。原因として,天然グラファイト中の不純物,下地電極中のパラフィンオイルのイオン感応膜中への拡散を推定した。 グラファイト中の不純物への対策として,天然グラファイトの替わりに合成グラファイト(CAS. No. 1333-86-4)を用いた。図9はその結果を示し,合成グラファイトを用いることで電位の低下が半減した。天然グラファイトは様々な感応基を表面に有する炭素が含まれているため,それらの影響と推定される。 パラフィンオイルのイオン感応膜中への拡散への対策として,パラフィンオイルに替えてイオン感応膜の主成分である可塑剤(この場合,oNPOE)を用いた。図10はその結果を示し,電位の低下が1/4に抑制された。下地電極とイオン感応膜に含まれるオイルを共通にしたことで,オイルの拡散が抑制されたためと推定される。イオン感応膜に用いられている可塑剤がPure Appl. Chem., Vol. 72, No. 10, pp. 1851-2082, 2000に記載されているDOA,DOP,DOSなどの別の可塑剤である場合は,下地電極にイオン感応膜で用いているのと同じ可塑剤を用いて同様の効果が得られる。 図11は,下地電極に合成グラファイトと可塑剤(この場合,oNPOE)の混合体もしくは合成グラファイトと可塑剤と疎水性陰イオンの塩(この場合,NaTFPB)とリガンド(この場合,Bis(12-crown-4))の混合物を用いて,感応膜に上記と同様のナトリウム選択膜を用いた固体電極型イオン選択電極の100mmol/l塩化ナトリウム水溶液に対する起電力の経日変化の一例を示す図である。下地電極に合成グラファイトと可塑剤の混合体を用いた場合,作成直後は7.3mVと小さかった標準偏差が,30日後には28mVと増大している。それに対し,下地電極に合成グラファイトと可塑剤と塩とリガンドの混合物を用いた場合,作成直後の2.3mVと小さな標準偏差が30日経過しても3.9mVと小さいまま維持されている。これは,感応膜に含まれている塩及びリガンドと同じ物質が同じ濃度で下地電極にも含まれているため,塩及びリガンドの拡散が抑制されたためと推定される。下地電極と感応膜の両方に含有させる塩としては,Pure Appl. Chem., Vol. 72, No. 10, pp. 1851-2082, 2000に記載されているKTFPB,KTmClPB,KTPB,KTpClPB,NaTFPB,NaTpClPBなどの疎水性陰イオンの塩を用いることができる。下地電極と感応膜の両方に含有させるリガンド(測定対象物質と選択的に結合する物質)としては,Pure Appl. Chem., Vol. 72, No. 10, pp. 1851-2082, 2000に記載されているValinomycin,クラウンエーテル化合物などや,これらと同等のものを用いることができる。 液体オイルとして可塑剤を用いる場合,感応膜中の可塑剤濃度は重量%において,抵抗値が小さくなりすぎないため33%以上,機械的強度が低くなりすぎないため70%以下であり,場合によって抵抗値を減少させるために,40〜70%,50〜70%,もしくは60〜70%の間であり,好ましくは66%である。その場合,下地電極中の可塑剤濃度は感応膜中の可塑剤濃度に合わせて,重量%において33〜80%,40〜80%,50〜80%,もしくは60〜80%の間であり,好ましくは66%である。好ましくは,感応膜中の可塑剤濃度と下地電極中の可塑剤濃度は,重量%の比が±30%,±20%,±10%,±5%,±3%,±1%以内であり,好ましくは±1%以内である。 図12は,本発明の固体電極型イオン選択電極を用いた電解質濃度測定の結果の一例を示す図である。下地電極に天然グラファイト(CAS. No. 7782-42-5)とフッ素系高分子(FOMBLIN(R))の混合物を用いて,感応膜に上記のカリウム選択膜を用いた。塩化カリウム水溶液を25℃の条件下で測定したところ,理論値とほぼ等しい58.4mV/decadeの電位応答が得られた。下地電極にフッ素系高分子を用いることで,電位変動をもたらす可能性のある感応膜中の成分の下地電極への拡散を防ぐことができる。一方で,図6で観測されていた一価の陽イオンに対する応答は維持されていることが,図13から分かる。図13は,ポテンショスタットを用いて,グラファイトとフッ素系高分子の混合体を作用電極に,飽和塩化カリウムを内部液に用いた銀塩化銀参照電極を参照電極に,白金電極を対向電極にして,100mmol/l塩化カリウム水溶液中で測定を行った結果である。−0.4V付近と−0.2V付近にそれぞれ電流ピークが観測された。 液体オイルとしてフッ素系高分子を用いる場合,下地電極中のフッ素系高分子濃度は感応膜中の可塑剤濃度に合わせて,重量%において33〜80%,40〜80%,50〜80%,もしくは60〜80%の間であり,好ましくは66%である。 図14は,本発明の固体電極型イオン選択電極の他の一例を示す概略図である。電極基板1401は電極1405と端子1406を有しており,電極1405と端子1406は配線1407で電気的に接続されている。電極基板1401はウェル1402を有しており,ウェル1402の中には下地電極1403が満たされており,下地電極1403の上にはイオン感応膜1404が配置されている。参照電極とともに測定したい溶液に接触させ,本電極と参照電極との間の電位差を測定することで,イオン感応膜1404の対象とするイオンの濃度を得ることができる。電極基板1401としては,シリコン基板やポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリカーボネート(PC),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂基板を用いることができる。電極1405,端子1406,配線1407は,電極基板1401がシリコン基板であれば,導電性の金属や導電性のポリシリコンを,電極基板1401が樹脂であれば,導電性の金属や金属ペースト,カーボンペーストを用いることができる。ウェル1402は樹脂を用いることが好ましく,イオン感応膜1404がPVCを含んでいる場合はウェル1402もPVCとすることで,ウェル1402とイオン感応膜1404の密着度を高めることができる。 図15は電解質濃度測定装置を用いたシステムの例を示す図である。(a)は生化学自動分析装置1501に主に光学計測を行う生化学測定装置と電解質濃度測定装置が搭載されている。生化学自動分析装置1501は操作部から操作を行うことができる。(b)は電解質濃度測定装置と生化学測定装置と免疫測定装置などの各装置が独立しており,検体搬送装置との間で検体のやり取りが行われる。各装置は操作部から操作を行うことができる。例えば,操作部からある検体中のイオン濃度測定を指示すると,(a),(b)どちらにおいても指定した検体が電解質濃度測定装置に運ばれ,イオン濃度が測定され,結果が出力される。 なお,本発明は上記した実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば,上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また,ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり,また,ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また,各実施例の構成の一部について,他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。101 イオン選択電極のカートリッジ102 流路103 白金線104 グラファイトと液体オイルの混合体105 感応膜106 フタ201 イオン選択電極のカートリッジ202 流路203 銀塩化銀電極204 内部液205 感応膜301,401 測定ユニット302,402 制御部303,403 演算記録部304,404 出力部311,411 希釈槽312,412 検体分注ノズル313,413 希釈液分注ノズル314,414 内部標準液分注ノズル315,415 吸引ノズル316,321,416,420,423,426,428 配管317,419 ナトリウムイオン選択電極318,418 カリウムイオン選択電極319,417 塩素イオン選択電極320,424 参照電極322,429 ポンプ323,430 電位計測部1401 電極基板1402 ウェル1403 下地電極1404 イオン感応膜1405 電極1406 端子1407 配線1501 生化学自動分析装置 測定溶液中の測定対象イオンを選択的に検出する電極であって, 測定溶液と接するイオン感応膜と, 前記イオン感応膜と接するグラファイトと液体オイルの混合体と, 前記グラファイトと液体オイルの混合体に接する導電体と,を備えることを特徴とする電極。 請求項1記載の電極において, 前記イオン感応膜は可塑剤を含み, 前記液体オイルは前記可塑剤を含むことを特徴とする電極。 請求項2記載の電極において, 前記イオン感応膜に含まれる前記可塑剤の重量比と,前記グラファイトと液体オイルの混合体に含まれる前記可塑剤の重量比の相対差が30%以内であることを特徴とする電極。 請求項2記載の電極において, 前記イオン感応膜は疎水性陰イオンを含み, 前記グラファイトと液体オイルの混合体は前記疎水性陰イオンを含むことを特徴とする電極。 請求項2記載の電極において, 前記イオン感応膜は測定対象イオンと選択的に結合する物質を含み, 前記グラファイトと液体オイルの混合体は測定対象イオンと選択的に結合する前記物質を含むことを特徴とする電極。 請求項1記載の電極において, 前記液体オイルはフッ素系高分子またはフッ素系オイルであることを特徴とする電極。 請求項1記載の電極において, 前記グラファイトは合成グラファイトであることを特徴とする電極。 測定溶液中の測定対象イオンを選択的に検出する電極であって, シリコンもしくは樹脂製の電極基板と, 前記電極基板の上に形成された導電性電極と, 前記導電性電極と接するグラファイトと液体オイルの混合体と, 前記グラファイトと液体オイルの混合体と接するイオン感応膜と,を備えることを特徴とする電極。 測定溶液中のイオン濃度を計測する装置であって, 測定溶液中の測定対象イオンを選択的に検出する電極を複数備え, 前記電極の一部または全部は測定溶液と接するイオン感応膜と, 前記イオン感応膜と接するグラファイトと液体オイルの混合体と, 前記グラファイトと液体オイルの混合体に接する導電体とを備えることを特徴とする測定装置。 【課題】固体電極型イオン選択電極の電位安定性を向上させ個体差を小さくする。【解決手段】測定溶液と接するイオン感応膜105と,イオン感応膜105と接するグラファイトと液体オイルの混合体104と,グラファイトと液体オイルの混合体104に接する導電体103とを備える。【選択図】図1