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タイトル:公開特許公報(A)_リポソーム結合ペプチド及びその作製方法
出願番号:2013203708
年次:2015
IPC分類:C07K 14/00,C12N 15/09,A61K 9/127,A61K 47/42


特許情報キャッシュ

根本 直人 小林 省太 吉川 祐紀 JP 2015067578 公開特許公報(A) 20150413 2013203708 20130930 リポソーム結合ペプチド及びその作製方法 国立大学法人埼玉大学 504190548 柴田 富士子 100134153 柴田 五雄 100112760 根本 直人 小林 省太 吉川 祐紀 C07K 14/00 20060101AFI20150317BHJP C12N 15/09 20060101ALI20150317BHJP A61K 9/127 20060101ALI20150317BHJP A61K 47/42 20060101ALI20150317BHJP JPC07K14/00C12N15/00 AA61K9/127A61K47/42 12 OL 20 4B024 4C076 4H045 4B024AA01 4B024BA80 4B024CA01 4B024CA04 4B024CA11 4B024CA20 4B024EA04 4B024FA02 4B024HA01 4C076AA19 4C076AA95 4C076BB11 4C076BB13 4C076DD15 4C076DD63F 4C076FF27 4C076FF31 4C076FF43 4C076FF63 4C076FF68 4H045AA10 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA10 4H045DA50 4H045EA20 4H045FA10 本発明は、リポソーム結合ペプチド及びその作製方法に関する。より詳細には、リポソームに安定的に結合し膜に入り込むペプチドと、該ペプチドをインビトロ進化法によって作製する方法に関する。 脂質二重膜からなるリポソームは,1960年代に発見されて以来、広く注目を集めてきたが、生体成分の1つであるリン脂質を主成分としており生体適合性に優れること、毒性や抗原性が低いこと、調製が容易であること、脂溶性又は水溶性の種々の薬物を内包させられること等から、薬物送達系(以下、「DDS」ということがある。)の主要な技術の1つとなった。 リン脂質のみで構成される単純な組成のリポソームを静脈内投与すると、異物を貪食することにより生体防御に関与する細網内皮系(RES)に捕捉され、破壊されて速やかに排除される。このため、内包された薬物等が血中に漏れ出す等、血中での安定性や滞留性に乏しいという問題があった。 この問題を解決するために、リポソーム表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾する方法が開発され、そうした技術を使用したPEG表面修飾リポソームが、長期血中滞留型リポソームとして開発されている(非特許文献1参照)。 こうしたPEG表面修飾リポソームは、薬物輸送のキャリアとして使用することができるため、そのPEGを抗体等のリンカーと結合させ、分子識別能を付与することが試みられてきた。 また、リポソーム表面を抗体で修飾する技術が開発され、利用されている(特表2004-512345号公報参照)。この方法では、リポソーム表面を抗体で修飾するために、あらかじめ抗体と反応性のある特殊なリン脂質を混ぜておき、このような混合物を用いてリポソームを調製し、抗体を結合させる方法が記載されている。 また、Protein Aをリポソームに共有結合させることによって、リポソームに抗体結合能を付与する方法も提案されている(例えば、非特許文献2参照)。特表2004-512345号公報T. M. Allen, et al., Biophys. Acta, 1066 29-36(1991)Lee D. Leserman, et al., Nature 288 (1980) pp. 602 リポソームの血中での安定性や滞留性を改善するために、PEGでリポソームの表面を修飾してリンカーを結合させるには、高度な有機合成の技術が必要であり、かつ、実験操作も非常に高度かつ煩雑であった。そして、抗体のような生体分子を有機化学的に結合させると、こうした生体分子の機能を維持することが難しく、使用した生体分子の機能に影響が出ることもあった。すなわち、期待通りの機能を保ったまま抗体等の分子識別機能を有する分子をリポソームと結合させることは非常に難しいという問題があった。 また、上記のように、抗体と反応性のある特殊なリン脂質を使用する方法では、精製された抗体を準備しておくことが必須であり、リン脂質が結合する抗体分子の部位が予測できないという問題があった。このため、リポソームの結合部位によっては、抗体の活性が維持できないという場合も生じた。 さらにまた、プロテインAを利用する方法では、リポソームを構成するリン脂質に対して、Protein Aとの反応性をもたせる処理を施す必要があるため、そうした性質を持つリン脂質を使用せざるを得ないという問題があり、Protein Aの分子量は約57kDaと比較的大きいため、取り扱いが難しいという問題もあった。 このため、特殊なリン脂質を使用することなく、サイズを制御しながらリポソームを簡便な手法で作製する技術に対する強い社会的要請があった。また、リポソームを用いたスクリーニングを行うことにより、こうした手法で作製されたリポソームの表面修飾に使用できるペプチドを製造する技術を開発する技術についても、強い社会的要請があった。 一方で、リポソームをスクリーニング手段として使用するには、非常に多くの被験物質が必要となること、また、感度良く検出できる方法を確立することが難しいため、リポソームをスクリーニング手段とすることは、これまで行われてきていない。 本発明の発明者は、上記のような状況の下で鋭意研究を進め、本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、脂質二重層で形成されるリポソームを用いてリポソームと相互作用をするペプチドの作製方法、及びその方法によって得られたリポソーム結合ペプチドを提供することを目的とする。 C末端に4個以上の塩基性アミノ酸配列を有し、中央部にリポソームの膜と結合するアミノ酸配列を有することを特徴とする、10〜100アミノ酸から構成される、リポソーム結合ペプチドである。ここで、前記ペプチドを構成するアミノ酸数は、25〜40であることが好ましい。本明細書中において、リポソームの膜に「結合する」とは、リポソーム膜の表面に単純に結合するのではなく、上記の特定のアミノ酸配列の部分が、リポソームの膜に入り込むことをいう。 また、前記ペプチドは、下記の配列番号1〜3のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するものであることが好ましい。 配列表の配列番号1 Arg His Ser Lys Ser Leu Xaa Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Xaa Arg Lys Arg Thr Leu 配列表の配列番号2 Arg Ile Ser Lys Ile Thr Arg Pro Pro Thr Arg Thr Xaa Arg Glu Arg Glu Arg Thr Leu Thr Pro Arg Pro Arg Arg Arg Arg Glu Ile 配列表の配列番号3 Gly Ser Lys Lys Glu Pro Arg Pro Ser GlyIle Arg Thr Arg Arg Ile Asn Arg Arg Leu Arg Arg Leu Arg Pro Leu Lys Lys His Leu また、前記配列番号1のペプチドは、下記の配列番号4〜6からなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸配列を有するものであることが好ましい。 配列表の配列番号4 Arg His Ser Lys Ser Leu Pro Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Arg Arg Lys Arg Thr Leu 配列表の配列番号5 Arg His Ser Lys Ser Leu Ser Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Arg Arg Lys Arg Thr Leu 配列表の配列番号6 Arg His Ser Lys Ser Leu Pro Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Gly Arg Lys Arg Thr Leu さらに、前記配列番号2のペプチドが、下記の配列番号7又は8に記載のアミノ酸配列を有するものであることが好ましい。 配列表の配列番号7 Arg Ile Ser Lys Ile Thr Arg Pro Pro Thr Arg Thr Xaa Arg Glu Arg Glu Arg Thr Leu Thr Pro Arg Pro Arg Arg Arg Arg Glu Ile 配列表の配列番号8 Arg Ile Ser Lys Ile Thr Arg Pro Pro Thr Arg Thr Arg Arg Glu Arg Glu Arg Thr Leu Thr Pro Arg Pro Arg Arg Arg Arg Glu Ile 本発明の別の実施態様は、5’側から3’側に向かって、プライマー領域1と、プロモーター領域と、非翻訳領域と、ランダム領域と、タグ領域と、プライマー領域2とを含む、リポソーム結合ペプチドの作製用コンストラクトである。 ここで、前記ランダム領域は、10〜100アミノ酸残基で構成され、C末端に4個以上の塩基性アミノ酸配列を有し、中央部にリポソームの膜と結合するアミノ酸配列を有することが好ましい。また、前記ランダム領域は、配列表の配列番号9に記載のアミノ酸配列を有することが好ましい。 本発明の更に別の実施態様は、リポソーム結合ペプチドの作製方法であって、前記コンストラクトを作製するコンストラクト作製工程と;前記コンストラクト作製工程で作製されたコンストラクトを使用したcDNAディスプレイ法を用いてペプチド−リンカー−mRNA/cDNAをインビトロで作製するcDNAディスプレイ作製工程と;所望の直径を有するリポソームを作製するリポソーム作製工程と;前記cDNAディスプレイ作製工程で得られたcDNAディスプレイを前記リポソームと混合させ、リポソームと結合したcDNAディスプレイを回収し、リポソーム結合cDNAディスプレイをスクリーニングする選択工程と;を備えるリポソーム結合ペプチドの作製方法である。 ここで、前記cDNAディスプレイ法は、IVV(mRNAディスプレイ)法のmRNAを逆転写したcDNA及びmRNAハイブリッドと新生タンパクとの結合体による、遺伝子型表現型対応付け技術をいう。具体的には、(a1)前記コンストラクトから転写によってmRNAを調製するmRNA調製工程と;(a2)得られたmRNAをピューロマイシンを結合させたリンカーに結合させて、第1複合体である、リンカー−mRNA複合体を形成させる第1複合体形成工程と;(a3)翻訳によって合成された前記mRNA配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドをピューロマイシンに結合させて、第2複合体である、ペプチド−リンカー−mRNA複合体を形成させる第2複合体形成工程と;(a4)前記第2複合体を磁性粒子に結合させる粒子結合工程と;(a5)前記磁性粒子に結合した第2複合体のmRNAを逆転写してcDNAを形成させ、第3複合体である、前記ペプチド−リンカー−mRNA/cDNAを形成させる第3複合体形成工程と;(a6)前記第3複合体形成工程で得られた第3複合体である、cDNAディスプレイを前記磁性粒子から遊離させる第3複合体遊離工程と;(a7)前記遊離された第3複合体を、リポソームを結合させて選択する選択工程と、を備えることが好ましい。 さらに、前記リポソーム作製工程は、(b1)脂質の有機溶媒溶液を調製する脂質溶液調製工程と;(b2)前記脂質溶液調製工程で調製した脂質溶液を固相上で乾燥させて脂質膜を形成させる脂質膜形成工程と;(b3)前記脂質膜にグッド緩衝剤を加えてリポソーム溶液を作製するリポソーム溶液作製工程と;(b4)前記リポソーム溶液に糖を含有するグッド緩衝剤を加えてリポソームを回収するリポソーム回収工程と;を備えることが好ましい。 前記リポソーム結合cDNAディスプレイ回収工程は、(c1)前記リポソームを含有するリポソーム溶液に、cDNAディスプレイ含有溶液を添加する添加工程と;(c2)前記リポソームと前記cDNAディスプレイ溶液との混合液を遠心分離する遠心工程と;(c3)前記リポソームに結合したcDNAディスプレイをリポソームごと回収する回収工程と、を備えることが好ましい。 本発明によれば、リポソームと結合するリポソーム結合ペプチドが提供される。また、上記リポソーム結合ペプチドを、効率よく製造する方法を提供することができる。さらに、これらのリポソーム結合ペプチドを高い内包率で内包するリポソームを提供することができる。図1は、生体膜のモデルとなるリポソームの構造を示す模式図である。図2は、本発明のリポソーム結合ペプチドのスクリーニング方法を示す模式図である。図3は、本発明のリポソーム結合ペプチド作製用コンストラクトの構造を示す模式図である。図4は、後述する方法で、37℃にて12時間インキュベートして形成したリポソーム溶液を顕微鏡観察像である。図5は、ゼータサイザーによって形成されたリポソームのサイズを測定した結果を示すグラフである。図6は、リポソームによる選択法の実験手順を示す模式図である。図7は、リポソームとcDNAディスプレイとを混合した後の遠心管の中の状態を示す模式図、及びその溶液を観察した顕微鏡観察像である。左側は遠心前、右側は遠心後の状態を示す。図8には、インビトロ選択によってスクリーニングされたペプチド(クローン)のうち、収束が見られたアミノ酸配列を示す図である。図9は、脂質膜とペプチドとの相互作用モデルを示す模式図である。図10は、スクリーニングによって得られたペプチドA-1のアミノ酸配列と膜内侵入モデルとの関係を示す図である。図11には、リポソームのみを共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した蛍光観察像、微分干渉像、およびそれらの重ね合わせ像を示す。図12には、リポソームとスクリーニングによって得られたペプチド(100nM)とをインキュベートした後の状態を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した、蛍光観察像、微分干渉像、およびそれらの重ね合わせた像を示す。図13は、リポソームとスクリーニングによって得られたペプチド(6nM)とをインキュベートした後の状態を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した、蛍光観察像及び微分干渉像を示す。 以下に、本発明をさらに詳細に説明する。 本発明の第1の態様は、特定の配列を有するリポソーム結合ペプチドである。リポソームの一般的な構造を図1に示す。これらの中でも、C末端に4個以上の塩基性アミノ酸配列を有し、中央部にリポソームの膜と結合するアミノ酸配列を有するものであることが好ましい。このリポソーム結合ペプチドを構成するアミノ酸配列の数は、10〜100であることが好ましく、25〜40であることが、操作性の点からさらに好ましい。 また、前記ペプチドが、配列番号1〜3のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するものであることが、リポソームとの結合活性の高さの点で好ましい。 配列表の配列番号1 Arg His Ser Lys Ser Leu Xaa Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Xaa Arg Lys Arg Thr Leu 配列表の配列番号2 Arg Ile Ser Lys Ile Thr Arg Pro Pro Thr Arg Thr Xaa Arg Glu Arg Glu Arg Thr Leu Thr Pro Arg Pro Arg Arg Arg Arg Glu Ile 配列表の配列番号3 Gly Ser Lys Lys Glu Pro Arg Pro Ser GlyIle Arg Thr Arg Arg Ile Asn Arg Arg Leu Arg Arg Leu Arg Pro Leu Lys Lys His Leu また、前記配列番号1のペプチドが、配列番号4〜6からなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸配列を有するものであることが、リポソームとの結合活性の高さの点で好ましい。 配列表の配列番号4 Arg His Ser Lys Ser Leu Pro Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Arg Arg Lys Arg Thr Leu 配列表の配列番号5 Arg His Ser Lys Ser Leu Ser Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Arg Arg Lys Arg Thr Leu 配列表の配列番号6 Arg His Ser Lys Ser Leu Pro Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Gly Arg Lys Arg Thr Leu さらにまた、前記配列番号2のペプチドが、下記の配列番号7又は8に記載のアミノ酸配列を有するものであることが、リポソームとの結合活性の高さの点で好ましい。 配列表の配列番号7 Arg Ile Ser Lys Ile Thr Arg Pro Pro Thr Arg Thr Xaa Arg Glu Arg Glu Arg Thr Leu Thr Pro Arg Pro Arg Arg Arg Arg Glu Ile 配列表の配列番号8 Arg Ile Ser Lys Ile Thr Arg Pro Pro Thr Arg Thr Arg Arg Glu Arg Glu Arg Thr Leu Thr Pro Arg Pro Arg Arg Arg Arg Glu Ile 本発明の第2の態様は、5’側から3’側に向かって、プライマー領域1と、プロモーター領域と、非翻訳領域と、ランダム領域と、タグ領域と、プライマー領域2とを含む、リポソーム結合ペプチドの作製用コンストラクトである。このコンストラクトは、上記ペプチドを後述するインビトロ進化法によって得るために使用するものである。 ここで、プライマー領域1及び2として使用するアミノ酸配列は、市販されている一般的なものを使用することができる。また、プロモーター領域としては、T7、SP6当業者を使用することができる。非翻訳領域としては、Ω配列等を使用することができる(図2参照)。 ここで、前記ランダム領域は、10〜100アミノ酸残基で構成される。リポソームの厚みは、リポソームを構成する脂肪酸中の炭素鎖数で定まるため、このアミノ酸残基の数を、リポソームを構成する脂質二重層の厚み(図1参照)によって、適宜増減させることが好ましい。ペプチドの長さを脂質二重層の厚みとマッチする長さとすることで、リポソームとの結合をより安定したものとすることができるからである。 そのアミノ酸組成は、極性かつ塩基性のアミノ酸がペプチドを構成するアミノ酸数の50〜70%、極性かつ無電荷のアミノ酸が15〜29%、疎水性アミノ酸が10〜20%、及び極性かつ酸性アミノ酸が1〜5%であることが、リポソーム結合活性の高いペプチドを、後述するインビトロスクリーニングによって取得する上で好ましい。前記ランダム領域が、30〜40アミノ酸残基で構成され、そのアミノ酸組成が、極性かつ塩基性のアミノ酸が60%、極性かつ無電荷のアミノ酸が23.2%、疎水性アミノ酸が15%、及び極性かつ酸性アミノ酸が1.8%であることが好ましい(図2参照)。 また、前記極性かつ無電荷のアミノ酸はグリシン、セリン、トレオニン、アスパラギン(Asn)及びグルタミン(Gln)であり、グリシン、セリン及びトレオニンが15%以上かつ、グリシンとセリンとが同量であることが、リポソーム結合活性の高いペプチドを、後述するインビトロスクリーニングによって取得する上でさらに好ましい。 また、前記疎水性ペプチドは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン及びプロリンであり、プロリンとロイシン、及びアラニンとバリンとがそれぞれ、等量で含まれることが、リポソーム結合活性の高いペプチドを、後述するインビトロスクリーニングによって取得する上で好ましい。 本発明の第3の実施態様は、リポソーム結合ペプチドの作製方法であって、前記のコンストラクトを作製するコンストラクト作製工程と;前記コンストラクト作製工程で作製されたコンストラクトを使用したcDNAディスプレイ法を用いてペプチド−リンカー−mRNA/cDNAをインビトロで作製するcDNAディスプレイ作製工程と;所望の直径を有するリポソームを作製するリポソーム作製工程と;前記cDNAディスプレイ作製工程で得られたcDNAディスプレイを前記リポソームと混合させ、リポソームと結合したcDNAディスプレイを回収し、リポソーム結合cDNAディスプレイをスクリーニングする選択工程と;を備えるリポソーム結合ペプチドの作製方法である。 このリポソーム結合ペプチドの作製方法を簡単に述べると、上記のコンストラクト作製工程で作製したコンストラクトを用いて106オーダーのcDNAを包含するcDNAライブラリ(ペプチド−リンカー−mRNA/cDNA複合体のライブラリ)を作製し、これをcDNAディスプレイ法を用いて、インビトロで選択する、というものである。 ここで、前記cDNAディスプレイ法は、図2に示すように、(a1)mRNA調製工程と;(a2)第1複合体形成工程と;(a3)第2複合体形成工程と;(a4)粒子結合工程と;(a5)第3複合体形成工程と;(a6)第3複合体遊離工程と;(a7)選択工程と、を備えている。 まず、(a1)mRNA調製工程では、前記のコンストラクトから転写によってmRNAを調製する。そして、(a2)第1複合体形成工程において、前記mRNA調製工程で得られたmRNAを、ピューロマイシンを結合させたリンカーに結合させて、第1複合体を形成させる。ここで形成される第1複合体は、上記の通り、リンカー−mRNA複合体である。次に、(a3)第2複合体形成工程において、翻訳によって合成された前記mRNA配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドをピューロマイシンに結合させる。すなわち、この工程で形成される第2複合体は、ペプチド−リンカー−mRNA複合体である。 次いで、(a4)粒子結合工程において、上記のようにして得られた第2複合体を、磁性粒子に結合させる。引き続き、(a5)第3複合体形成工程において、前記磁性粒子と結合した第2複合体のmRNAを逆転写し、cDNAを形成させる。このため、ここで形成される第3複合体は、前記ペプチド−リンカー−mRNA/cDNAとなる(以下、「cDNAディスプレイ」ということがある)。次に、(a6)複合体遊離工程において、前記第3複合体形成工程で得られたcDNAディスプレイを前記磁性粒子から遊離させ、引き続き、(a7)選択工程において、前記遊離された第3複合体をリポソームと結合させて選択する。 無細胞翻訳系として、市販のキット、例えば、Retic Lysate IVT Kit(Ambion社製)を利用してもよい。このキットのプロトコルに従って、無細胞翻訳反応に使用される全ての試薬を穏やかに撹拌して遠心し、氷上に置く。反応液は、20〜50μLスケールとし、次のような順番で混合して調製し、反応させることができる。 上記のキットを使用する場合には、0.5〜1μLの20X Translation Mix minus-Met、0.5〜1μLの20X Translation Mix minus-Leu、及び15〜20μLのRetic lysateを泡立たないよう注意深くピペッティングして混合する。 この混合液を25〜50μLのサンプル溶液中に添加し、反応液が所望の量、例えば、20〜30μLになるようにDEPC水を加える。そして、泡が立たないように再度丁寧に混合し、30℃にて20分間、翻訳反応をさせる。 上記翻訳反応後に、連結体Aと合成タンパク質の連結を促進するため、上記反応液に15〜25μLの2〜4Mの塩化カリウム、及び4〜8μLの0.5〜2Mの塩化マグネシウムを加え37℃にて30〜50分間反応させる。 上記の溶液中に80〜100pmol相当のcDNAディスプレイ分子がある場合、50〜70μLの量の磁性ビーズ、例えば、ダイナル社製のDynabead MyOne C1を加え、室温で、15〜30分間インキュベートし、リンカーのピューロマイシンに合成されたペプチドが付加された連結体(リンカー−mRNA−ペプチド連結体)を磁性ビーズの表面にリンカー部分で結合させる。なお、蛍光分子が結合されているリンカーを使用すると、蛍光のリポソーム表面での局在を確認することができる。 次いで、例えば、ReverTra Ace(東洋紡製)を用いて、40〜44℃にて、30分間反応させ、この連結体に結合しているmRNAの逆転写を行い、cDNAが連結された連結体(リンカー−mRNA−ペプチド−cDNA連結体)を得る。 引き続き、適当な酵素、例えば、RNase T1、を用いて、約35〜38℃にて、10分間反応させ、cDNAが連結された連結体(cDNAディスプレイ)を磁性ビーズから遊離させる。 ここで使用する蛍光分子としては、フルオレセイン、GFP等を挙げることができる。 前記リポソーム作製工程は、(b1)脂質溶液調製工程と;(b2)脂質膜形成工程と;(b3)リポソーム溶液作製工程と;(b4)リポソーム回収工程と;を備えている。 ここで、上記の(b1)脂質溶液調製工程では、脂質の有機溶媒溶液を調製する。また、上記の(b2)脂質膜形成工程では、前記脂質溶液調製工程で調製した脂質溶液を固相上で乾燥させて脂質膜を形成させる。上記の(b3)リポソーム溶液作製工程では、前記脂質膜にグッド緩衝剤を加えてリポソーム溶液を作製する。上記の(b4)リポソーム回収工程では、前記リポソーム溶液に糖を含有するグッド緩衝剤を加えてリポソームを回収する。 すなわち、上記の(b1)脂質溶液調製工程で使用する脂質としては、例えば、1,2-ジドデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(以下、「DOPC」ということがある。)等を挙げることができる。光学顕微鏡でも観察することがきる、一枚の脂質二重層からなる巨大なリポソーム(以下、「ベシクル」ということがある。)を作製することができるため、DOPCを使用することが好ましい。 また、有機溶媒としては、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素等の有機溶媒を挙げることができるが、クロロホルムを使用することが、作業の簡便さの点から好ましい。 リポソームに包含された溶液と、リポソームの外液との比重の違いを利用してリポソームを精製するために、異なる種類の糖を同じ濃度で含有するグッドの緩衝液を調製した。こうしたバッファーとしては、例えば、0.05〜0.2Mのスクロースを含有する10〜30mのMOPSバッファーと、0.05〜0.2Mのグルコースを含有する10〜30mMのMOPSバッファーとを調製してもよい。 30〜50μLのDOPC(AVT)を900〜1,000μLの有機溶媒、例えば、クロロホルム、に溶解させて、0.5〜2mMの脂質クロロホルム溶液を所望の量、例えば、0.75〜1.5mL調製する。 適当な大きさのガラスシャーレ、例えば、直径5cmのガラスシャーレを界面活性剤で洗浄して乾燥させる。このシャーレ中に、上記の脂質クロロホルム溶液を全量流し込み、シャーレ全体に広げる。 次いで、窒素ガスをシャーレ内に流し込み、有機溶媒を揮発させる。引き続き、真空ポンプをデシケータに接続し、この中に上記のシャーレを入れて一晩置く。 例えば、0.1Mのスクロースを含有する20mMのMOPSバッファーを20mL、脂質膜が撹拌されないように、このシャーレ内に静かに注ぐ。35〜39℃で2〜4時間静置して水和させ、リポソームを作製する。以下、リポソームを「ベシクル」ということがある。 リポソーム調製の際には、上記のように、例えば、約0.1Mのスクロースを含有する20mMのMOPSバッファー(pH 6.8〜7.2)を使用し、このバッファーが内包されているリポソームを作製する。このリポソーム含有溶液を1〜3mLとって、所望の容量、例えば、15mLの遠心管に入れ、ここに所望の量、例えば、約12mLの約0.1Mのグルコース含有20mMのMOPSバッファー(pH 6.8〜7.2)を加える。 リポソームが包含するバッファーよりも、リポソームの外液であるバッファーの比重の方が重いときは、リポソームを浮遊させて精製し、逆の場合には、遠心分離によって沈降させる。遠心によって沈降させる場合には、遠心管の底に集積したリポソームを、シリンジを用いて回収することができる。以上のようにして、光学顕微鏡で観察可能な、巨大一枚膜ベシクル(giant unilamellar vesicles、以下、「GUV」ということがある)を調製する。 次いで、(b2)脂質膜形成工程では、前記脂質溶液調製工程で調製した脂質溶液を固相上で乾燥させて脂質膜を形成させる。上記のような脂質を、上記のような有機溶媒に所望の濃度、例えば、0.5〜2mMとなるように溶解させ、固相上に流して薄膜を形成させる。使用する固相としては、上記のような有機溶解を使用することからガラスシャーレが好ましい。こうした固相上に流した後に、例えば、窒素ガスを吹き付けると、形成される薄膜の厚みが一定になる。その後、薄膜を形成させた固相を終夜静置し、さらに乾燥させて、有機溶媒を完全に揮発させる。 次いで、(b3)リポソーム溶液作製工程では、上記のようにして作製した脂質膜に、所望の濃度に調製した糖を含有するグッド緩衝剤を静かに加えて、所望の温度で所望の時間、静置し、リポソーム溶液を作製する。ここで、グッドの緩衝剤の中でも、モルホリノプロパンスルホン酸(以下、「MOPS」ということがある)を使用することが、調製及び保存が容易であることから好ましい。グッドの緩衝剤は、10〜50mMの濃度で使用することが、反応効率の点から好ましい。 また、ここで上記の緩衝剤に添加する等としては、スクロース、グルコース等を挙げることができる。こうした糖の含有量は、例えば、0.05〜0.2mMとすることが、リポソームの精製、リポソームとペプチドとの結合、及びリポソームとペプチドとの結合体の精製が容易であるために好ましい。 例えば、0.5〜2mMのDOPCのクロロホルム溶液を調製し、この溶液をガラスシャーレにまく。その後、窒素ガスを吹き付けて、シャーレの内壁に脂質が薄い膜を作るようにクロロホルムを除去する。その後、例えば、真空ポンプに連結したデシケータ中でさらに一晩乾燥させる。 次に、0.05〜0.2Mの糖を含む10〜50mMのグッドの緩衝剤に脂質膜を加えて、32〜40℃にて2〜5時間インキュベートして水和させ、リポソームを作製する。例えば、約0.05〜0.2Mのスクロースを含む約20mMのMOPSバッファー中に、上記のようにして作製した脂質膜を加えて、約35〜37℃で約2〜4時間インキュベートして水和させる。この方法で、直径0.01〜10μmのリポソームを作製することができる。 引き続き、(b4)リポソーム回収工程では、前記リポソーム溶液に糖を含有するグッドの緩衝剤を添加して、遠心によりリポソームを回収する。この工程で使用する糖としては、グルコース、スクロース等を挙げることができるが、グルコースを使用すると、リポソームを容易に沈降させることができるために好ましい。 リポソームの作製からこのリポソームに結合したcDNAをリポソームごと回収する工程を示した模式図を図6に示す。 上記のようにして作製したリポソーム溶液に、所望の濃度の糖を含有するグッドの緩衝剤を所望の量加えて遠心し、リポソームを回収する。例えば、0.05〜0.2mMのグルコースを含有する10〜50mMのMOPSを4〜6倍容加えて遠心する。この溶液を使用することにより、リポソーム内に封入されたスクロース含有MOPSの比重の方が、リポソーム外液であるグルコースを含有するMOPSの比重よりも大きくなるために、遠心するだけで、リポソームを沈降させることができる。沈降したリポソームについては、例えば、シリンジ等で回収することができる。 以上のようにして作製したリポソームは、再結合を起こさないように、遮光して、例えば、4℃にて使用時まで保存する。 次に、リポソーム結合cDNAディスプレイ回収工程は、(c1)溶液添加工程と;(c2)分離工程と;(c3)回収工程とを備えている。(c1)溶液添加工程では、前記リポソーム含有するリポソーム溶液に、cDNAディスプレイ含有溶液を添加する。引き続き、前記の(c2)分離工程で、前記リポソームと前記cDNAディスプレイ溶液との混合液を、例えば、5,000xgで5分間遠心して分離する。その後、前記の(c3)回収工程で、前記リポソームに結合したcDNAディスプレイをリポソームごと回収する。 以上のようにして、リポソーム結合ペプチドを製造することができる。(実施例1)リポソーム結合ペプチド選択用コンストラクトの構築 図3に示す構造を有するコンストラクトの構築には、以下のものを使用した。 ランダム領域については、アルギニン含有量が多くかつストップコドンの出現確率が小さくなるように塩基のバランスを調整した配列に基づいて設計し、製造をジーンワールド(株)に委託した。 ランダム領域の5'側上流に、プライマー領域1、T7プロモーター配列、及びUTRを、また、3'側下流にヒスチジンタグ(HNtag)及びプライマー領域2を付加したDNAを常法によって合成し、PCRによって増幅させ、DNA精製カラムによって精製した。(実施例2)cDNAディスプレイ法によるインビトロでの選択(1)mRNAの合成 実施例1で作製したコンストラクトとT7 RiboMAX Express Large Scale RNA Production System(プロメガ(株)製)を用いて、添付のプロトコルに従って5〜30 pmol/μLのmRNAを合成した。(2)連結体の形成(T4 RNAリガーゼを用いたライゲーション酵素反応) ライゲーション反応は、リンカー1に対して1.5倍のmRNAを加え、20μLのT4 RNAリガーゼバッファー(50mMのトリス塩酸、pH 7.5;10mMの塩化マグネシウム、10mMのDTT;1mMのATPを含む)中にて行なった。酵素を加える前にアニーリングするため、90℃で5分間アルミブロック上にて温めた、次に70℃で5分間アルミブロック上にて温め、最後に室温で10分間放置した後、氷上に置いた。 ここに、1μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ(10 U/μL)及び1μLのT4 RNAリガーゼ(40 U/μL)(いずれもタカラバイオ(株)製)を加え、25℃で15分間、保持した。(3)cDNAディスプレイ法によるスクリーニング(3−1)無細胞翻訳系 無細胞翻訳系にはRetic Lysate IVT Kit(Ambion社製)を利用した。混合の方法等は、キットのプロトコルを参照して行った。無細胞翻訳反応に使用される全ての試薬を穏やかに撹拌して遠心した後、氷上に置いた。25μLスケールの反応液は次のような順番で混合して調製し、反応させた。 0.625μLの20X Translation Mix minus-Met、0.625μLの20X Translation Mix minus-Leu、及び17μLのRetic lysateを泡立たないよう注意深くピペッティングし、混合した。 この混合液を36.5μLのサンプル溶液中に添加し、反応液が25μLになるようにDEPC水を加えた。そして、泡が立たないように再度丁寧に混合した。混合後30℃にて20分間、翻訳反応をさせた。 上記翻訳反応後に、連結体Aと合成タンパク質の連結を促進するため、上記反応液に20μLの3Mの塩化カリウム、及び6μLの1Mの塩化マグネシウムを加え37℃で40分間反応させた。(3−2)ペプチドの精製 上記の溶液中に90pmol相当のcDNAディスプレイ分子がある場合、60μLの量の磁性ビーズ(ダイナル社製、Dynabead MyOne C1)を加え、室温で20分間インキュベートし、リンカーのピューロマイシンに合成されたペプチドが付加された連結体(リンカー−mRNA−ペプチド連結体)を磁性ビーズの表面にリンカー部分で結合させた。なお、ここでは、蛍光分子(GFP)が結合されているリンカーを使用した。 次いで、ReverTra Ace(東洋紡製)を用いて、42℃、30分の条件で反応させ、この連結体に結合しているmRNAの逆転写を行い、cDNAが連結された連結体(リンカー−mRNA−ペプチド−cDNA連結体)を得た。 引き続き、RNase T1を用いて、37℃、10分の条件で反応させ、cDNAが連結された連結体(cDNAディスプレイ)を磁性ビーズから遊離させた。(実施例3)巨大一枚膜リポソームの作製(1)リポソームの作製 本実施例では、光学顕微鏡で観察可能なGUVを調製した。0.1Mのスクロース含有20mMのMOPSバッファー及び0.1Mのグルコース含有20mMのMOPSバッファーを調製した。 40μLのDOPC(AVT)を960μLのクロロホルムに溶解させて、1mMの脂質クロロホルム溶液1mLを調製した。 直径5cmのガラスシャーレを界面活性剤で洗浄して乾燥させた。このシャーレ中に、上記の脂質クロロホルム溶液を全量(1mL)流し込み、シャーレ全体に広げた。 次いで、窒素ガスをシャーレ内に流し込み、クロロホルムを揮発させた。引き続き、油回転真空ポンプをデシケータに接続し、この中に上記のシャーレを入れ、一晩置いた。 0.1Mのスクロース含有20mMのMOPSバッファーを20mL、脂質膜が撹拌されないように、このシャーレ内に静かに注いだ。37℃で3時間静置して水和させ、リポソームを作製した。(2)リポソームの回収 リポソーム調製の際に、上記のように0.1Mのスクロース含有20mMのMOPSバッファー(pH 7.0)を使用し、このバッファーが内包されているリポソームを作製した。このリポソーム含有溶液を2mLとって15mLの遠心管に入れ、ここに、12mLの0.1Mのグルコース含有20mMのMOPSバッファー(pH 7.0)を加えた。 リポソーム作製時と異なるバッファーを使用することで、リポソームの外液であるグルコース含有MOPSバッファーに比べて、リポソーム内液のスクロース含有MOPS溶液の比重の方が重くなるため、遠心分離により沈降させた。遠心管の底に集積したリポソームを、シリンジを用いて回収した。 得られたリポソームの大きさを、スケールバーとともに図8に示す。黒い矢印で示すものがリポソームである。また、ゼータサイザー(マルバーンインスタルメンツ社製、英国製)で形成されたリポソームの大きさを測定した。結果を図9に示す。 図9に示すように、このときの実験では、直径が1nm以下の非リポソームと、直径が100nmを越えるサイズのリポソームとが形成されたことが確認された。 その後の実験を繰り返し、直径が1〜10μmのリポソームが形成されることを確認した(不図示)。(実施例4)結合ペプチドのスクリーニング(1)作製したリポソームとペプチドとの結合性の確認 実施例3で作製したリポソーム溶液(0.1Mのスクロースを含有する20mMのMOPSバッファー(pH 7.0))を2mLとって15mLの遠心管に入れ、ここに実施例2で作製したcDNAディスプレイを含む溶液を0.1mL加えた。さらに、12mLの0.1Mのグルコース含有20mMのMOPSバッファー(pH 7.0)を加え、その後、5,000xgで、25℃にて5分間遠心した。対照には、cDNAディスプレイを含まない溶液のみを加え、同様に遠心操作を行った。 図7に、遠心管の中のリポソーム、cDNAディスプレイ、cDNAが結合した状態のリポソームを示す模式図と顕微鏡で観察された像(図7の左側)及び遠心後の模式図と顕微鏡で観察された像(図7の右側)を示した。 リポソームに結合したcDNAディスプレイは、図7の左側及び右側の顕微鏡の下側の像に示すように、蛍光が観察された。これに対し、リポソームに結合していないcDNAディスプレイのみでは蛍光は観察されなかった。(2)リポソーム結合ペプチドのスクリーニング−1 実施例2で得られたペプチドを、上記のようにリポソーム溶液を混合して、リポソームへの結合性を調べた結果、84個のペプチドが得られた。これらのうち、共通の配列を有する17個の配列を図8にまとめて示した。これら以外のペプチドの配列には共通するものが見られず、収束しなかった。 図8に示した通り、Aグループ(11個)のペプチドのアルギニンの含有量は37%、リジンを含めると47%であった。また、Bグループ(4個)のペプチドのアルギニンの含有量は43%でリジンを含めるとAグループと同様の47%であった。Cグループ(2個)のペプチドのアルギニンの含有量は30%でリジンを含めると43%となっており、いずれのグループに属するペプチドも、コンストラクト作製時のアルギニン含有量56%(リジンを含めると60%)よりも、これらの割合は低くなっていた。 これらのペプチドとリポソームの脂質二重層の結合様式を示す模式図を図9に示す。図9中、疎水性のアミノ酸は黒丸で、また、親水性のアミノ酸は白丸で示した。また、親水性かつ塩基性のアミノ酸は網かけで示した。これらのペプチドは、その中央付近に疎水性のアミノ酸配列があるため、この部分で脂質二重層と結合し、親水性のアミノ酸配列が脂質二重層の外液である水溶液と接する位置にあると考えられた。 A-1のペプチドのアミノ酸配列を見ると、枠をつけた11個の配列中7個が疎水性のアミノ酸である。このため、疎水性のアミノ酸によって膜内に進入していくモデルと一致した(図10参照)。(3)リポソーム結合ペプチドのスクリーニング−2 実施例3で形成されたリポソームと実施例2で作製した蛍光標識ペプチドとを、ペプチドの終濃度100nM、25℃で3時間インキュベートした場合と、リポソームのみの場合を、それぞれ、共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果を図11及び12に示す。図中のスケールバーは2μmである。 この大きさのリポソームであっても、ペプチドとインキュベートした場合には、蛍光含観察され、ペプチドが結合していることが確認された。これに対し、リポソームのみでは蛍光は確認されなかった。 ペプチドの濃度を6μMに上げ、25℃で2時間インキュベートした場合でも、蛍光観察像より、ペプチドがリポソームに結合していることが示された。結果を図13に示す。 以上より、上記のコンストラクトを用いてインビトロ選択してスクリーニングを行うことにより、リポソームに結合するペプチドが得られたことが確認された。 また、本発明は、医薬、診断薬、環境分析、食品分析、研究用バイオイメージング等の幅広い分野において有用である。配列番号1:リポソーム結合ペプチドA配列番号2:リポソーム結合ペプチド(クローンA-1)配列番号3:リポソーム結合ペプチド(クローンA-2)配列番号4:リポソーム結合ペプチド(クローンA-3)配列番号5:リポソーム結合ペプチドB配列番号6:リポソーム結合ペプチド(クローンB-1)配列番号7:リポソーム結合ペプチド(クローンB-2)配列番号8:リポソーム結合ペプチド(クローンC) C末端に4個以上の塩基性アミノ酸配列を有し、中央部にリポソームの膜と結合するアミノ酸配列を有することを特徴とする、10〜100アミノ酸から構成される、リポソーム結合ペプチド。 前記ペプチドを構成するアミノ酸数は、25〜40であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。 前記ペプチドが、配列番号1〜3のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するものである、請求項1又は2に記載のリポソーム結合ペプチド。 配列表の配列番号1 Arg His Ser Lys Ser Leu Xaa Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Xaa Arg Lys Arg Thr Leu 配列表の配列番号2 Arg Ile Ser Lys Ile Thr Arg Pro Pro Thr Arg Thr Xaa Arg Glu Arg Glu Arg Thr Leu Thr Pro Arg Pro Arg Arg Arg Arg Glu Ile 配列表の配列番号3 Gly Ser Lys Lys Glu Pro Arg Pro Ser GlyIle Arg Thr Arg Arg Ile Asn Arg Arg Leu Arg Arg Leu Arg Pro Leu Lys Lys His Leu 前記配列番号1のペプチドが、配列番号4〜6からなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸配列を有するものであることを特徴とする、請求項1に記載のリポソーム結合ペプチド。 配列表の配列番号4 Arg His Ser Lys Ser Leu Pro Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Arg Arg Lys Arg Thr Leu 配列表の配列番号5 Arg His Ser Lys Ser Leu Ser Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Arg Arg Lys Arg Thr Leu 配列表の配列番号6 Arg His Ser Lys Ser Leu Pro Ser Arg Val Ile Pro Arg Ala Asp Pro Arg Thr Lys Thr Arg Arg Arg Arg Gly Arg Lys Arg Thr Leu 前記配列番号2のペプチドが、配列番号7又は8に記載のアミノ酸配列を有するものであることを特徴とする、リポソーム結合ペプチド。 配列表の配列番号7 Arg Ile Ser Lys Ile Thr Arg Pro Pro Thr Arg Thr Xaa Arg Glu Arg Glu Arg Thr Leu Thr Pro Arg Pro Arg Arg Arg Arg Glu Ile 配列表の配列番号8 Arg Ile Ser Lys Ile Thr Arg Pro Pro Thr Arg Thr Arg Arg Glu Arg Glu Arg Thr Leu Thr Pro Arg Pro Arg Arg Arg Arg Glu Ile 5’側から3’側に向かって、プライマー領域1と、プロモーター領域と、非翻訳領域と、ランダム領域と、タグ領域と、プライマー領域2とを含む、リポソーム結合ペプチドの作製用コンストラクト。 前記ランダム領域は、10〜100アミノ酸残基で構成され、C末端に4個以上の塩基性アミノ酸配列を有し、中央部にリポソームの膜と結合するアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項6に記載のリポソーム結合ペプチド作製用コンストラクト。 前記ランダム領域は、配列表の配列番号9に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項7に記載のリポソーム結合ペプチド作製用コンストラクト。 リポソーム結合ペプチドの作製方法であって、 請求項6〜8のいずれかに記載のコンストラクトを作製するコンストラクト作製工程と; 前記コンストラクト作製工程で作製されたコンストラクトを使用したcDNAディスプレイ法を用いてペプチド−リンカー−mRNA/cDNAをインビトロで作製するcDNAディスプレイ作製工程と; 所望の直径を有するリポソームを作製するリポソーム作製工程と; 前記cDNAディスプレイ作製工程で得られたcDNAディスプレイを前記リポソームと混合させ、リポソームと結合したcDNAディスプレイを回収し、リポソーム結合cDNAディスプレイをスクリーニングする選択工程と; を備えるリポソーム結合ペプチドの作製方法。 前記cDNAディスプレイ法は、(a1)請求項6〜10のいずれかに記載のコンストラクトから転写によってmRNAを調製するmRNA調製工程と;(a2)得られたmRNAをピューロマイシンを結合させたリンカーに結合させて、第1複合体である、リンカー−mRNA複合体を形成させる第1複合体形成工程と;(a3)翻訳によって合成された前記mRNA配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドをピューロマイシンに結合させて、第2複合体である、ペプチド−リンカー−mRNA複合体を形成させる第2複合体形成工程と;(a4)前記第2複合体を磁性粒子に結合させる粒子結合工程と;(a5)前記磁性粒子に結合した第2複合体のmRNAを逆転写してcDNAを形成させ、第3複合体である、前記ペプチド−リンカー−mRNA/cDNAを形成させる第3複合体形成工程と;(a6)前記第3複合体形成工程で得られた第3複合体である、cDNAディスプレイを前記磁性粒子から遊離させる第3複合体遊離工程と;(a7)前記遊離された第3複合体を、リポソームと結合させて選択する選択工程と、を備えることを特徴とする、請求項9に記載のリポソーム結合ペプチドの作製方法。 前記リポソーム作製工程は、(b1)脂質の有機溶媒溶液を調製する脂質溶液調製工程と;(b2)前記脂質溶液調製工程で調製した脂質溶液を固相上で乾燥させて脂質膜を形成させる脂質膜形成工程と;(b3)前記脂質膜にグッド緩衝剤を加えてリポソーム溶液を作製するリポソーム溶液作製工程と;(b4)前記リポソーム溶液に糖を含有するグッド緩衝剤を加えてリポソームを回収するリポソーム回収工程と;を備えることを特徴とする、請求項9又は10に記載のリポソーム結合ペプチドの作製方法。 前記選択工程は、(c1)前記リポソームを含有するリポソーム溶液に、cDNAディスプレイ含有溶液を添加する添加工程と;(c2)前記リポソームと前記cDNAディスプレイ溶液との混合液を遠心分離する遠心工程と;(c3)前記リポソームに結合したcDNAディスプレイをリポソームごと回収する回収工程と、を備えることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のリポソーム結合ペプチドの作製方法。 【課題】 本発明は、脂質二重層で形成されるリポソームを用いてリポソームと相互作用をするペプチドの作製方法、及びその方法によって得られたリポソーム結合ペプチドを提供することを目的とする。【解決手段】 C末端に4個以上の塩基性アミノ酸配列を有し、中央部にリポソームの膜と結合するアミノ酸配列を有することを特徴とする、リポソーム結合ペプチドを提供する。また、リポソーム結合ペプチド作製用コンストラクトを作製するコンストラクト作製工程と;このコンストラクトを使用したcDNAディスプレイ法を用いてインビトロでcDNAディスプレイを作製するcDNAディスプレイ作製工程と;リポソーム作製工程と;リポソーム結合cDNAディスプレイをスクリーニングする選択工程と;を備えるリポソーム結合ペプチドの作製方法を提供する。【選択図】 なし配列表


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