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タイトル:公開特許公報(A)_グリシジルアクリレートの製造方法
出願番号:2013194480
年次:2014
IPC分類:C07D 301/32,C07D 303/16


特許情報キャッシュ

西井 聖悦 万木 啓嗣 JP 2014076989 公開特許公報(A) 20140501 2013194480 20130919 グリシジルアクリレートの製造方法 株式会社日本触媒 000004628 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 西井 聖悦 万木 啓嗣 JP 2012207308 20120920 C07D 301/32 20060101AFI20140404BHJP C07D 303/16 20060101ALI20140404BHJP JPC07D301/32C07D303/16 5 OL 17 4C048 4C048AA01 4C048BB13 4C048CC01 4C048KK01 4C048UU10 4C048XX03本発明は、グリシジルアクリレートの製造方法に関する。より詳しくは、塗料、接着剤、粘着剤、繊維改質剤、分散剤、レジスト材料等のモノマー原料等として広い分野で使用されているグリシジルアクリレートの製造に好適な製造方法に関する。グリシジルアクリレートは、エポキシ基を含むアクリル酸エステルの一種である。エポキシ基を含むアクリル酸エステルは、反応性モノマー等として有用であり、塗料、接着剤、粘着剤、繊維改質剤、分散剤、レジスト材料等のモノマー原料等として広い分野で使用されている。アクリル酸エステルは、その構造から、極めて重合し易い性質を持つ化合物である。しかも、アクリル酸エステルの蒸留精製等は、気相部と液相部とが混在する系を構成するため、蒸留塔内の液相部と気相部との双方に対して、その重合を効果的に抑制し、長時間の安定な連続運転を可能とする必要がある。従来、このような重合の発生を防止するために、種々のラジカル重合禁止剤が単独又は数種組み合わされて、モノマー中に添加され、該製造工程での重合物の発生を防止している(例えば、特許文献1〜3参照)。特開2001−348358号公報特開2001−348359号公報特開2008−222610号公報グリシジルアクリレートは、エポキシ基を含むアクリル酸エステルの一種であり、アクリロイル基とエポキシ基という2つの反応性基を有するため、極めて重合し易い性質を持つ。従来、アクリル酸エステルの蒸留精製時には、上記のようにラジカル重合禁止剤が用いられてきたが、グリシジルアクリレートの蒸留精製においては、上記重合禁止剤を用いても、気相部におけるラジカル重合の抑制は充分でなく、また、エポキシ部位の開環による重合物も生じるという問題があった。本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、気相部におけるグリシジルアクリレートのラジカル重合を充分に抑制し、エポキシ部位の開環による重合物の生成も抑制し、長時間の安定な連続運転ができる、グリシジルアクリレートの製造方法を提供することを目的とする。本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、グリシジルアクリレートを精製する際に、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを併用することで、グリシジルアクリレートのラジカル重合だけでなく、エポキシ部位の開環による重合物の生成も効果的に抑制できることを見出した。従来、ニトロソ化合物はラジカル重合禁止剤として用いられている化合物であり、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを併用することにより、ラジカル重合に加え、エポキシ部位の開環によるカチオン重合の進行も効果的に抑制されることは、本発明において初めて見出された知見である。そして、このような精製工程を含むことにより、グリシジルアクリレートの製造方法が、長時間の安定な連続運転ができる製造方法となることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。すなわち、本発明は、グリシジルアクリレートの製造方法であって、上記製造方法は、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを用いて、グリシジルアクリレートを精製する工程を含むことを特徴とするグリシジルアクリレートの製造方法である。また、本発明は、前記ニトロソ化合物がニトロソフェニル化合物又はニトロソアミン化合物であることを特徴とする上記グリシジルアクリレートの製造方法である。また、本発明は、前記ラジカル重合禁止剤がアルキルフェノール系化合物であることを特徴とする上記グリシジルアクリレートの製造方法である。更に、本発明は、前記精製工程は、ニトロソ化合物の分解ガスを精留塔内に導入して精留を行う工程を含むことを特徴とする上記グリシジルアクリレートの製造方法である。以下に本発明を詳述する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。本発明のグリシジルアクリレートの製造方法は、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを用いて、グリシジルアクリレートを精製する工程を含むことを特徴とするものである。なお、本明細書においては、「ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤」を、単に「ラジカル重合禁止剤」又は「重合禁止剤」ともいう。上記ニトロソ化合物としては、例えば、ニトロソベンゼン、p−ニトロソフェノール、p−ニトロソトルエン等のニトロソフェニル化合物;N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン及びそれらの塩等のニトロソアミン化合物;等が挙げられる。グリシジルアクリレートの重合抑制効果がより優れる点から、好ましくは、ニトロソベンゼン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン及びそれらの塩であり、より好ましくは、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン及びその塩である。また、上記ニトロソアミン化合物の内、塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。安価で入手が容易な点から、アンモニウム塩が好ましい。上記ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤としては、例えば、アルキルフェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、アミン系化合物、ジアルキルジチオカルバミン酸銅塩、N−オキシル化合物、及び、これらの分解物等が挙げられる。これら化合物は、1種でも2種以上でも用いることができる。上記ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤のうち、グリシジルアクリレートの重合抑制効果がより優れる点から、好ましくは、アルキルフェノール系化合物、アミン系化合物であり、より好ましくは、アルキルフェノール系化合物である。グリシジルアクリレートの製造においては、アルキルフェノール系化合物を用いることが特に効果的である。上記アルキルフェノール系化合物としては、例えば、メチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリ−エチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ジ(α−メチルベンジル)フェノール、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。上記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。上記アミン系化合物としては、例えば、フェノチアジン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、1−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−4−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−ブチル−4−フェニレンジアミン等が挙げられる。上記ジアルキルジチオカルバミン酸銅塩としては、例えば、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅等が挙げられる。上記N−オキシル化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アセチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)ピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−グリシジルオキシピペリジン、ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−N−オキシルピペリジル)スクシネート、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシ)等が挙げられる。上記分解物としては、アルキルフェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、アミン化合物、ジアルキルジチオカルバミン酸銅塩、及び、N−オキシル化合物の各分解物である限り、特に限定されない。次に、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを用いて、グリシジルアクリレートを精製する工程(精製工程)について説明する。当該精製工程においては、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤を併用することに特徴がある。これにより、気相部におけるグリシジルアクリレートのラジカル重合を充分に抑制し、エポキシ部位の開環による重合物の生成も抑制し、長時間の安定な連続運転ができる。本発明のグリシジルアクリレートの製造方法は、グリシジルアクリレートを精製する際に、精製塔内で発生する重合を防止するものである。従って、精製塔としては、その名称にかかわらず、グリシジルアクリレートの製造工程で使用され、グリシジルアクリレートを精製及び/又は製造する目的で使用される装置を広く含み、蒸留塔、精留塔、放散塔、共沸分離塔、脱水塔、酢酸分離塔、軽沸物分離塔、高沸物分離塔等が含まれる。また、本発明においては、精製塔として精留塔を用いることが好ましい。なお、本願明細書においては、「精留」とは、気液の接触面積を大きくして効率よく分離性能を向上させた蒸留を意味する。また、本願明細書においては、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを「用いる」には、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを、これら化合物をそのまま用いる形態だけでなく、それら化合物に由来する別の化合物に変化させた上で用いるような形態も含まれる。上記精製工程の好ましい形態としては、例えば、以下のような形態等が挙げられ、これらを2以上組合せたものがより好ましい。(1)ニトロソ化合物がニトロソフェニル化合物又はニトロソアミン化合物である。(2)ラジカル重合禁止剤がアルキルフェノール系化合物である。(3)ニトロソ化合物の分解ガスを精留塔内に導入して精留を行う。まず、(I)ニトロソ化合物を用いる形態、(II)ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤を用いる形態について説明する。(I)ニトロソ化合物を用いる形態としては、ニトロソ化合物の分解ガスを精留塔内に導入して精留を行う形態が好ましい。上記ニトロソ化合物の分解ガスとしては、上記ニトロソ化合物を分解して得られるガスであれば特に限定されない。当該分解ガスは、重合抑制作用を有するものである。また、ニトロソ化合物をガス(気体)にすると、液体や固体の場合に比べて、少量のニトロソ化合物を安定的に精留塔内に供給でき、ニトロソ化合物の供給量を容易に調節することができる。更に、精留塔の塔底部に当該分解ガスを供給すると、分解ガス成分が、精留塔内を上昇しつつ、ガス状で存在するグリシジルアクリレートと容易に混合することができ、これによってより効果的にこれら化合物の重合を防止することができる。上記ニトロソ化合物の分解ガスを発生させる方法としては、例えば、ニトロソ化合物を溶媒に溶かした溶液を分解槽に加え、当該ニトロソ化合物溶液を加熱して、その分解ガスを発生させる方法等が挙げられる。ニトロソ化合物を溶解するために用いる溶媒は、精留塔内条件や、ニトロソ化合物の溶媒に対する溶解性や分解性等の化学的・物理的性質によって、適宜選択すればよい。当該溶媒としては、例えば、水、アルコール、炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、等が挙げられる。これらは1種でも2種以上でも用いることができる。上記アルコールとしては、例えばブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。上記炭化水素としては、例えばヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等が挙げられる。上記エーテルとしては、例えばポリエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンジルフェニルケトン、シクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。上記エステルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルラクテート等が挙げられる。分解ガスを発生させる際の加熱温度(分解槽での加熱温度)としては、ニトロソ化合物が十分に熱分解する温度の観点から、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。ニトロソ化合物の熱分解温度以上の加温の必要はなく、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。分解ガスを発生させる際の圧力(分解槽中の圧力)としては、0.01hPa以上が好ましく、0.1hPa以上がより好ましく、1hPa以上が更に好ましい。また、200hPa以下が好ましく、150hPa以下がより好ましく、100hPa以下が更に好ましい。ニトロソ化合物の投入方法については、特に制限されず、精留前に分解槽に仕込んでもよいし、精留開始時に投入してもよいし、精留途中において投入してもよい。また、一括で仕込む又は投入してもよいし、断続的に投入してもよいし、連続的に滴下して投入してもよい。分解ガスを発生させる分解槽においては、ニトロソ化合物を系内で均一にするために撹拌することが好ましい。上記のようにして発生させたニトロソ化合物の分解ガスは、例えば、上記分解槽を精留塔に接続すること等により、精留塔に導入することができる。精留塔の構造としては、精留ができるものであれば特に限定されないが、気液の接触面積を大きくした棚段式精留塔や充填式精留塔等が好ましい。棚段としては、例えば、シーブトレイ、バブルキャップトレイ、バルブトレイ、アングルトレイ、フレキシトレイ、バラストトレイ、チムニートレイ等が挙げられる。充填物としては、例えば、スルザーパッキン、ディクソンパッキン、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、サドル等が挙げられる。また、上記分解槽と精留塔を接続するために、接続管等を用いることができる。当該接続管の形状・材質としては特に限定されないが、グリシジルアクリレートに対して耐食性があれば良く、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS317Lのステンレススチール類やハステロイ類等が好ましい。精留塔内の圧力は、0.01hPa以上が好ましく、0.1hPa以上がより好ましく、1hPa以上が更に好ましい。また、200hPa以下が好ましく、150hPa以下がより好ましく、100hPa以下が更に好ましい。なお、通常は上記分解槽と精留塔を接続しているので、その場合、上記分解槽内の圧力と精留塔内の圧力は同じとなる。精留塔内の温度は、精留塔内の圧力に依存するため特に限定されないが、精留塔内でのグリシジルアクリレートの重合防止の観点から、130℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。また下限値は精留が可能な温度であれば問題なく、35℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。上記ニトロソ化合物とその分解物との合計の使用量は、グリシジルアクリレートの上昇蒸気量に対して下限値として好ましくは、0.01質量ppm以上であり、より好ましくは、0.1質量ppm以上であり、更に好ましくは、0.5質量ppm以上である。また、上限値として好ましくは、5000質量ppm以下であり、より好ましくは、1000質量ppm以下であり、更に好ましくは、500質量ppm以下である。ここでいう上昇蒸気量とは、精留塔のリボイラーに加えられた熱量に応じて、リボイラーで発生するモノマーの蒸気の総量を意味する。より好ましい形態としては、ニトロソ化合物の分解ガスを、非凝縮性ガスと共に、精留塔内に導入する形態である。非凝縮性ガスを併用することにより、ニトロソ化合物の分解ガスの導入量を制御しやすくなる。つまり、ニトロソ化合物の分解ガスの発生量は、分解槽へのニトロソ化合物の仕込み量、溶媒量、容器の断面積、分解槽温度、撹拌速度等により変化するため、非凝縮性ガスの導入量を制御することにより、ニトロソ化合物の分解ガスの精留塔内への導入量を容易に制御することができる。上記非凝縮性ガスとは、露点が精留塔内の温度以下であるガスを意味し、例えば、空気、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン等の希ガス類;これらの混合物;製造工程で発生した排ガス等が挙げられる。好ましくは、窒素、ヘリウム等である。また、非凝縮性ガスとしては、酸素を含むことが好ましい。非凝縮性ガスとして酸素を含む場合、非凝縮性ガス中の酸素濃度は、0.01〜9体積%の範囲内であることが好ましい。非凝縮性ガス中の酸素濃度が0.01体積%未満であると、グリシジルアクリレートが重合を引き起こす可能性が高まるおそれがあり、酸素濃度が9体積%を超えると、爆発範囲に属するおそれがある。なお、ニトロソ化合物を精留塔内に導入するための非凝縮性ガスにおいては、ニトロソ化合物の分解ガスを導入することが目的であるため、必ずしも酸素は必要ではない。一方、後述のように、精留塔の塔底部の液相部に導入する非凝縮性ガスにおいては、ラジカル重合禁止剤の効力をより効果的に得るため、酸素を含有させることが特に好ましい。非凝縮性ガスの精留塔内への導入量は、重合防止作用を有する分解ガスを効率よく精留塔へ導入する観点より、分解槽の容量に対して10vol%/h以上であることが好ましく、50vol%/h以上がより好ましく、100vol%/h以上が更に好ましい。また、非凝縮性ガスの導入量が多すぎると、ニトロソ化合物のロスが増加するので、3000vol%/h以下が好ましく、2000vol%/h以下がより好ましい。ニトロソ化合物の分解ガスを、非凝縮性ガスと共に、精留塔内に導入する方法としては、例えば以下のような方法等が挙げられる。ニトロソ化合物の分解ガスを発生させる分解槽に、非凝縮性ガスを導入する導入管を取り付け、これにより、分解槽で発生したニトロソ化合物の分解ガスと、分解槽に導入された非凝縮性ガスが、共に接続管を通って、精留塔内に導入される。更に好ましい形態としては、ニトロソ化合物の分解ガスを、非凝縮性ガスと共に、精留塔の塔底部の気相部へ導入する形態である。ニトロソ化合物の分解ガスを、精留塔の塔底部の気相部へ導入することにより、より効果的に、気相部でのグリシジルアクリレートの重合を抑制し、エポキシ開環物の生成を抑制することができる。また、精留塔の塔底部の液相部へ、更に酸素を含んだ非凝縮性ガスを導入することが特に好ましい。精留塔に、酸素を含んだ非凝縮性ガスを導入する導入管を塔底部の液相部まで到達するように取り付けることにより、精留塔の塔底部の液相部へ酸素を含んだ非凝縮性ガスを導入することができる。なお、精留塔の塔底部の液相部には、グリシジルアクリレートが主に含まれている。グリシジルアクリレートが主に含まれているとは、塔底部の液相部を100質量%とした場合、グリシジルアクリレートが50質量%以上含まれていることを意味する。好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。(II)ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤を用いる形態としては、当該ラジカル重合禁止剤を、精留塔の塔頂部より導入する形態が好ましい。上記ラジカル重合禁止剤を、精留塔の塔頂部より導入することにより、グリシジルアクリレートとの混合が容易で、精留塔内の組成を変化させずに精製操作を継続することができる。ラジカル重合禁止剤を精留塔の塔頂部より導入する際、ラジカル重合禁止剤(固体、液体の形態にかかわらず)は、精留系の液組成と類似し溶解しやすい等の点から、グリシジルアクリレートに溶かして用いることが好ましい。また、グリシジルアクリレートに溶かしたラジカル重合禁止剤は、例えばポンプ等を用いて、精留塔の塔頂部より導入することができる。なお、本発明で使用するラジカル重合禁止剤がそれ自体で液体である場合には、塔内組成と相互溶解性が十分でない場合においても、塔内構造物を経由して移動するのに粘度や反応性等の点で障害がなければ、塔頂部からの供給が可能である。上記ラジカル重合禁止剤は、1種でも2種以上でも用いることができる。また、その供給時期については、特に制限されず、全てを同時に供給してもよいし、ラジカル重合禁止剤の種類ごとに供給時期をずらして添加してもよい。上記ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤の添加量(塔頂部からの添加量)としては、操作条件に応じて適宜調整され、特に限定されない。グリシジルアクリレートの重合防止の点から、上記ラジカル重合禁止剤の総量が、グリシジルアクリレートの上昇蒸気量に対して、下限値として好ましくは3質量ppm以上であり、より好ましくは300質量ppm以上であり、更に好ましくは500質量ppm以上である。また、上限値として好ましくは10000質量ppm以下であり、より好ましくは6000質量ppm以下であり、更に好ましくは4000質量ppm以下である。上昇蒸気量の意味は、上述したとおりである。モノマー蒸気の総量は、計算で容易に算出することができ、ラジカル重合禁止剤の投入基準を決定する上で重要な因子となる数字である。より好ましい形態としては、グリシジルアクリレート溶液が含まれる塔底部の液相部にも、ラジカル重合禁止剤を添加しておく形態である。塔底部の液相部へのラジカル重合禁止剤の添加量としては、塔底部の液相部を100質量%とした場合、好ましくは10〜10000質量ppmであり、より好ましくは100〜5000ppm質量であり、更に好ましくは500〜2000質量ppmである。これにより、グリシジルアクリレートの重合を防止する作用がより効果的に発揮される。塔底部の液相部にもラジカル重合禁止剤を添加する場合は、上記(I)において、塔底部の液相部へ酸素を含んだ非凝縮性ガスを導入することがより好ましい。ラジカル重合禁止剤は、酸素分子が存在することによって効力をより効果的に発揮する。精留塔の塔底部の液相部へ酸素を含んだ非凝縮性ガスを導入することにより、液相部でのグリシジルアクリレートの重合を抑制する。また、液相部でトラップされなかった分子状酸素は、気相部でグリシジルアクリレートとラジカル重合禁止剤と混ざることにより、気相部でのグリシジルアクリレートの重合を抑制する。本発明における精製工程は、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを用いて、グリシジルアクリレートを精製するものである。よって、当該精製工程においては、上記(I)ニトロソ化合物を用いる形態及び(II)ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤を用いる形態を、適宜組合せて精製することができる。上記精製工程の特に好ましい形態としては、ニトロソ化合物の分解ガスを、非凝縮性ガスと共に、精留塔の塔底部の気相部へ導入し、かつ、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤を、精留塔の塔頂部より導入する形態である。なお、ニトロソ化合物を液体で多量に導入すると溜出液にニトロソ化合物が混入し着色する要因となるが、ニトロソ化合物の分解ガスを用いることにより、グリシジルアクリレートの重合防止に必要な最低限量のみの導入が可能となり、液体を導入する場合に比べて着色が抑制される。また、上記ラジカル重合禁止剤を併用することにより、ニトロソ化合物の導入量を最小限に抑えることができ、着色を更に抑制することができる。上記精製工程の最も好ましい形態としては、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩の分解ガスを、非凝縮性ガスと共に、グリシジルアクリレートの精留塔の塔底部の気相部へ導入し、かつ、アルキルフェノール系化合物を、精留塔の塔頂部より導入する形態である。これに加えて、上述のように、精留塔の塔底部の液相部への、酸素を含んだ非凝縮性ガスの導入やラジカル重合禁止剤の添加を、更に組合せるとより一層好ましい。なお、上記各形態において、塔頂部温度は、精留塔内の圧力に依存し、圧力が低ければ低いほど塔頂部温度も低くなる。重合防止の観点から、温度が低い方が重合が進み難く、安全に操作が可能である。また、塔底部の液相部温度は、精留塔内の圧力とその時の液組成(精留が進むにつれて、軽沸物が溜出して高沸点物が塔底部に残ることによって、塔底部の温度が徐々に高くなる)に依存する。更に、塔底部の気相部温度は、精留塔内の圧力に依存する。このように、塔頂部温度と、塔底部の気相部温度と液相部温度は、精留塔内の圧力により決まる。図1に、本発明における精製工程の一例を示す。分解槽2において、非凝縮性ガス導入管3から非凝縮性ガスを導入しながら、ニトロソ化合物溶液4を加熱し、その分解ガスを発生させる。発生した分解ガスは、非凝縮性ガスと共に、接続管5を通って、精留塔1の塔底部気相部6に導入される。また、非凝縮性ガス導入管3から非凝縮性ガスを塔底部液相部7に導入し、更に、塔頂部8からラジカル重合禁止剤を添加する。本発明のグリシジルアクリレートの製造方法は、上記グリシジルアクリレートの精製工程を含むことを特徴とするものである。上記グリシジルアクリレートは、アクリル酸又はアクリル酸の金属塩と、エピクロロヒドリンを反応させることにより、製造することができる。アクリル酸の金属塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム、リチウムの塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウムの塩等)が挙げられる。これらは、1種でも2種以上でも使用することができる。上記グリシジルアクリレートは、アクリル酸からでもアクリル酸の金属塩からでも合成できる。ここでは、グリシジルアクリレートの製法の一例として、アクリル酸の金属塩を用いた場合について以下に説明する。アクリル酸の金属塩を用いた反応において、エピクロロヒドリンの使用量としては、アクリル酸の金属塩1モルに対して、1〜15モルであることが好ましい。この範囲に設定することによって、反応を効率的にすすめることができ、高い収率で目的物のグリシジルアクリレートを合成することができる。より好ましくは2〜11モル、更に好ましくは3〜9モルである。反応時間は、特に限定されないが、反応時間が短すぎる場合、反応が進行せずに充分な収率が得られない恐れがあり、反応時間が長すぎる場合、生成したグリシジルアクリレートの分解が生じたりすることで充分な収率が得られない恐れがあることから、好ましくは0.1〜10時間であり、より好ましくは1〜9時間であり、更に好ましくは2〜7時間である。反応温度は、特に限定されないが、反応温度が高すぎると生成したグリシジルアクリレートの分解や重合が生じる恐れがあり、反応温度が低すぎると、反応が進行しないことから、好ましくは30〜120℃であり、より好ましくは40〜110℃であり、更に好ましくは50〜100℃である。上記反応においては、塩基性触媒を用いることができる。当該塩基性触媒としては、エピクロロヒドリン等のエポキシ化合物が開環や重合を起こさないものであることが好ましい。塩基性触媒である有機塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアミン類;テトラメチルアンモニウム=ヒドロキシド、テトラエチルアンモニウム=ヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウム=ヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド、トリメチルエチルアンモニウムクロリド、ジメチルジエチルアンモニウムクロリド、メチルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの塩基性触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記塩基性触媒の中でも、第4級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、テトラメチルアンモニウムクロリド、トリメチルエチルアンモニウムクロリド、ジメチルジエチルアンモニウムクロリド、メチルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等が好ましく挙げられる。より好ましくは、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等が挙げられる。第4級アンモニウム塩は、単独で使用してもよいし、任意の2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。上記塩基性触媒の使用量は、反応原料であるアクリル酸の金属塩とエピクロロヒドリンとの合計量100質量部に対して、下限は、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.002質量部以上である。また、上限は、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。上記のようにして得られたグリシジルアクリレートを、上記精製工程に付すことにより、重合物及びエポキシ開環物の生成が抑制され、グリシジルアクリレートを長時間安定的に製造することができる。なお、得られたグリシジルアクリレートを上記精製工程に付す前に、固液分離工程及び水洗工程に付すことが好ましい。上記固液分離工程は、グリシジルアクリレートの合成によって生成する塩化金属塩からなる固体部分と液体部分とを分離できる限り、その方法は特に制限されず、ろ過、遠心分離、デカンテーション等を用いることができる。固液分離の方法としては、分離効率及び操作性の簡便性から、これらの中でも、ろ過が好ましい。固液分離をろ過により行う場合、加圧、常圧、減圧のいずれの条件で行ってもよいが、加圧又は常圧が好ましい。上記水洗工程は、触媒除去を目的に実施する。水洗に用いる水量は、固液分離工程後の総液量100質量%に対して、3〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜35質量%であり、更に好ましくは7〜25質量%である。また、水洗に用いる水温は、0〜50℃が好ましく、より好ましくは5〜40℃であり、更に好ましくは10〜35℃である。このような温度の水を用いることで、副生物のグリシドールを効率的に水層へ溶解させることができ、かつ、グリシジルアクリレートの水層への溶解を抑制することができる。上記水洗工程後、油水分離を行うことがより好ましく、これによりグリシジルアクリレートが含まれる油層を得ることができる。また、上記得られた油層に、反応原料や副生物が多く含まれる場合は、上記精製工程に付す前に単蒸留を行い、油層中のグリシジルアクリレート濃度を高めておくことが更に好ましい。本発明はまた、グリシジルアクリレートにニトロソ化合物及び/又はニトロソ化合物の分解物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを共存させてなるグリシジルアクリレート組成物でもある。上述したような、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを併用することにより、グリシジルアクリレートのラジカル重合、及び、エポキシ部位の開環によるカチオン重合の進行を効果的に抑制する効果は、グリシジルアクリレートの精製時に限って発揮されるものではなく、グリシジルアクリレートにこれらを添加した組成物とすることで、グリシジルアクリレートの重合を抑制し、安定に保つことができる。ここで、ニトロソ化合物の分解物は、上記ニトロソ化合物の分解ガスと同じ物質であり、本発明のグリシジルアクリレートの製造方法の精製工程と同様に、ガスの状態で存在していてもよく、液体や固体の状態で存在していてもよい。本発明のグリシジルアクリレート組成物は、ニトロソ化合物を含んでいてもよく、ニトロソ化合物の分解物を含んでいてもよい。ニトロソ化合物を含む場合、ニトロソ化合物の含有量は、グリシジルアクリレート組成物中のグリシジルアクリレート100質量%に対して、0.00001〜3質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.0001〜1質量%であり、更に好ましくは、0.0005〜0.1質量%である。ニトロソ化合物の分解物を含む場合、分解物のN分含有量は、グリシジルアクリレート組成物のグリシジルアクリレートに対して、0.01〜1000質量ppmであることが好ましい。より好ましくは、0.05〜500質量ppmであり、更に好ましくは、0.1〜100質量ppmである。N分含有量は、三菱化学アナリテック製 微量全窒素分析装置 TN−100型を用いて測定することができる。本発明のグリシジルアクリレート組成物におけるラジカル重合禁止剤の含有量は、組成物中のグリシジルアクリレート100質量%に対して、0.0001〜3質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.001〜1質量%であり、更に好ましくは、0.002〜0.1質量%である。グリシジルアクリレート組成物が、ニトロソ化合物及び/又はニトロソ化合物の分解物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを上記好ましい割合で含むことにより、グリシジルアクリレートの重合を抑制して安定に保つ効果がより充分に発揮される。本発明のグリシジルアクリレート組成物中のグリシジルアクリレート含有量は、グリシジルアクリレート組成物100質量%に対して、90質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、95質量%以上であり、更に好ましくは、98質量%以上である。本発明のグリシジルアクリレート組成物は、グリシジルアクリレートを高濃度で含む場合でも、優れたグリシジルアクリレートの重合抑制効果を発揮することができるため、グリシジルアクリレートを高濃度で含むことは本発明のグリシジルアクリレート組成物の好適な実施形態である。本発明のグリシジルアクリレート組成物は、グリシジルアクリレート、ニトロソ化合物及び/又はニトロソ化合物の分解物、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤以外のその他の成分を含んでいてもよいが、その他の成分の含有量は、グリシジルアクリレート組成物100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以下であり、更に好ましくは、2質量%以下である。本発明のグリシジルアクリレート組成物が含むグリシジルアクリレートは、上述した本発明のグリシジルアクリレートの製造方法によって得られたものであってもよく、異なる製造方法で得られたものであってもよい。好ましくは、本発明のグリシジルアクリレート組成物が、本発明のグリシジルアクリレートの製造方法によって得られたグリシジルアクリレートに、必要に応じてニトロソ化合物、ニトロソ化合物の分解ガス、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤を添加して調製されたものであることである。このように、本発明のグリシジルアクリレート組成物が、本発明のグリシジルアクリレートの製造方法によって得られたグリシジルアクリレートを用いて調製されたものであることは、本発明のグリシジルアクリレート組成物の好適な実施形態の1つである。本発明のグリシジルアクリレートの製造方法は、上述の構成よりなり、気相部におけるグリシジルアクリレートのラジカル重合を充分に抑制し、エポキシ部位の開環による重合物の生成も抑制し、長時間の安定な連続運転ができる優れた製法である。本発明における精製工程の一例を示す図である。以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下ことわりのない場合、「%」、「ppm」は「質量%」、「質量ppm」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。合成例(1)グリシジルアクリレート(GA)合成液の調整ガス導入管、温度計、撹拌機、及び、還流冷却管を備えた5L反応容器に、アクリル酸カリウム(日本触媒社製)900g、エピクロロヒドリン(EpCH)(ダイソー社製)3780g、アデカスタブAO−20(1,3,5−トリス−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸)(ADEKA社製)9.4g、及び、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)(共同薬品社製)9.4g、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシ)(EC3314A)(ナルコ社製)9.4gを仕込み、系内水分をカールフィッシャー法により測定し、水を添加して系内水分を500ppmに調整した。その後、テトラメチルアンモニウムクロリド(日本特殊化学社製)6.7gを添加して、7%酸素ガス(93%窒素ガス)を吹き込みながら、70℃で4時間反応させた。反応終了後、反応で生じた塩をろ過により取り除き、ろ液を得た。得られたろ液量に対して10質量%の水を加えて30分間攪拌し、静置後に油水分離を行い、油層を得た。この様にして得られたGA合成液量は3812gで、組成はEpCHが73.0質量%、グリシドール(GDO)が0.03質量%、GAが21.3質量%であった。また、使用したアクリル酸カリウム900gに対するGAの収率は77.5mol%であった。(2)粗GAボトム液このGA合成液3789gを、ガス導入管、温度計、減圧一定装置を備えた5L単蒸留装置に仕込み、7%酸素ガス(93%窒素ガス)を吹き込みながら、減圧度を67hPaから40hPaに徐々に下げながら、ボトム温度が70℃になるまで単蒸留でEpCHを留去し、粗GAボトム液960gを得た。この様にして得られた粗GAボトム液組成は、EpCHが11.4質量%、GDOが0.4質量%、GAが75.1質量%であった。実施例1合成例で得られた粗GAボトム液904gを、塔頂部に重合禁止剤導入管、塔底部の気相部に分解槽との接続管、塔底部の液相中に7%酸素ガス(93%窒素ガス)導入管を備えた精留装置(精留塔)に仕込み、減圧度20hPaで精留を実施した。塔頂部より導入するラジカル重合禁止剤として、上昇蒸気量に対して、2,000ppmのBHTを溶かした溜出液の一部を導入した。また、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩(NPH)分解槽にて、NPHを予めガス化させ、当該分解槽を精留装置に接続した。そして、接続管を通して塔底部の気相部に、このNPHガスを非凝縮性ガスと共に導入した。精留後に、充填物(スルザーパッキン)及び気相部に重合物が生成しているかどうかの確認を行ったところ、重合物は確認できなかった。実施例2実施例1を繰り返し15回行っても、充填物及び気相部に重合物の生成は無かった。実施例3実施例1を繰り返し28回行ったところ、充填物に極少量の重合物が生成した。得られたポリマーの13C−NMRを測定したところ、177PPM、67PPM、51PPM、43PPM付近に、グリシジルアクリレートのホモポリマーに特徴的なピークを確認した。比較例1実施例1で用いた装置を用いて精留操作を実施した。ただし、塔底部の気相部へのNPHガスの導入は実施しなかったところ、精留後に充填物及び気相部に重合物が生成した。得られたポリマーの13C−NMRを測定したところ、177PPM、67PPM、51PPM、43PPM付近以外に、130PPM付近にアクリロイル基に由来するピークが確認でき、エポキシ部位の開環重合物が一部混入していることが示唆された。比較例2実施例1で用いた装置を用いて精留操作を実施した。ただし、塔頂部の気相部への重合禁止剤の導入は実施しなかったところ、精留後に充填物及び気相部に重合物が生成した。得られたポリマーの13C−NMRを測定したところ、177PPM、67PPM、51PPM、43PPM付近以外に、130PPM付近にアクリロイル基に由来するピークが確認でき、エポキシ部位の開環重合物が一部混入していることが示唆された。表1において、アルキルフェノール及びNPHにおける○印は、これら成分を添加したことを示す。また、重合物においては、○印:重合物が生成しなかった、△印:重合物が極少量生成した、×印:重合物が多く生成した、ことを示す。実施例4合成例で得られた粗GAボトム液960gを、塔頂部に重合禁止剤導入管、塔底部の気相部に分解槽との接続管、塔底部の液相中に7%酸素ガス(93%窒素ガス)導入管を備えた精留装置(精留塔)に仕込み、多段蒸留を実施した。分解槽の操作条件は、10gのポリエチレングリコールに0.02gのN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩を溶解させ、500vol%/hで7%酸素ガス(93%窒素ガス)を導入しながら、22hpa、液温度70℃で分解したガスを精留塔塔底部の気相部に導入した。これらの操作により、軽沸液95.9g(GA含有量17.5wt%)、初留液140.7g(GA含有量85.9wt%)、グリシジルアクリレート534.4g(GA純度99.8wt%)を得た。得られた留出液中のN分濃度を三菱化学アナリテック製 微量全窒素分析装置 TN−100型で測定したところ、何れも1ppmであった。多段蒸留は、以下の圧力、温度の条件で行った。多段蒸留に用いた蒸留塔の理論段数は10段であった。軽沸カット:塔頂 部圧力40hPa、塔頂部温度70℃まで溜出。初留カット:塔頂部圧力40hPaから20hPaに減圧し、塔頂部温度79.5℃まで留出。本留:塔低部圧力:22hPa、塔低部温度110℃までGAを留出。得られた留出液100gに対して10mgのBHTを添加し、50℃の恒温乾燥機内で90日間保管した結果、高分子量物の生成は無かった。実施例5添加したラジカル重合禁止剤をBHTの代わりにtert−ブチルハイドロキノン(TBH)10mgを添加したこと以外は実施例4と同様に行った。実施例6添加したラジカル重合禁止剤をBHTの代わりにアンテージW400(2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、川口化学工業社製)10mgを添加したこと以外は実施例4と同様に行った。実施例7添加したラジカル重合禁止剤をBHTの代わりにアンテージW500(2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、川口化学工業社製)10mgを添加したこと以外は実施例4と同様に行った。比較例3実施例4で得られた本留留出液100gを50℃の恒温乾燥機内で2日間保管した結果、高分子量物の生成が確認された。実施例4〜7、比較例3の結果をまとめたものを表2に示す。実施例8比較例1で得られた溜出液100gに対して10mgのBHTと0.5mgのNPHを添加し、50℃の恒温乾燥機内で50日間保管した結果、高分子量物の生成は無かった。実施例9添加したラジカル重合禁止剤をBHTの代わりにTBH10mgを添加したこと以外は実施例8と同様に行った。実施例10添加したラジカル重合禁止剤をBHTの代わりにアンテージW400 10mgを添加したこと以外は実施例8と同様に行った。実施例11添加したラジカル重合禁止剤をBHTの代わりにアンテージW500 10mgを添加したこと以外は実施例8と同様に行った。実施例8〜11の結果をまとめたものを表3に示す。このように、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを用いて、グリシジルアクリレートを精製する工程を含むことを特徴とするグリシジルアクリレートの製造方法を用いることによって、気相部におけるグリシジルアクリレートのラジカル重合を充分に抑制し、エポキシ部位の開環による重合物の生成も抑制し、長時間の安定な連続運転ができるという作用機序、及び、グリシジルアクリレートにニトロソ化合物又はニトロソ化合物の分解ガスと、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを共存させることによって、グリシジルアクリレートのラジカル重合を充分に抑制し、エポキシ部位の開環による重合物の生成も抑制し、グリシジルアクリレートを安定に保つことができるという作用機序は、すべて同様である。したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。1:精留塔2:分解槽3:非凝縮性ガス導入管4:ニトロソ化合物溶液5:接続管6:塔底部気相部7:塔底部液相部8:塔頂部グリシジルアクリレートの製造方法であって、該製造方法は、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを用いて、グリシジルアクリレートを精製する工程を含むことを特徴とするグリシジルアクリレートの製造方法。前記ニトロソ化合物は、ニトロソフェニル化合物又はニトロソアミン化合物であることを特徴とする請求項1に記載のグリシジルアクリレートの製造方法。前記ラジカル重合禁止剤は、アルキルフェノール系化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリシジルアクリレートの製造方法。前記精製工程は、ニトロソ化合物の分解ガスを精留塔内に導入して精留を行う工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリシジルアクリレートの製造方法。グリシジルアクリレートにニトロソ化合物及び/又はニトロソ化合物の分解物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを共存させてなることを特徴とするグリシジルアクリレート組成物。 【課題】気相部におけるグリシジルアクリレートのラジカル重合を充分に抑制し、エポキシ部位の開環による重合物の生成も抑制し、長時間の安定な連続運転ができる、グリシジルアクリレートの製造方法を提供する。【解決手段】グリシジルアクリレートの製造方法であって、該製造方法は、ニトロソ化合物と、ニトロソ化合物とは異なるラジカル重合禁止剤とを用いて、グリシジルアクリレートを精製する工程を含むことを特徴とするグリシジルアクリレートの製造方法。【選択図】なし


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