タイトル: | 公開特許公報(A)_入浴剤 |
出願番号: | 2013185790 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 8/97,A61Q 19/10,A61K 8/20 |
阪本 歩 JP 2015051952 公開特許公報(A) 20150319 2013185790 20130907 入浴剤 阪本 歩 512329493 松田 聡 100107881 阪本 歩 A61K 8/97 20060101AFI20150220BHJP A61Q 19/10 20060101ALI20150220BHJP A61K 8/20 20060101ALI20150220BHJP JPA61K8/97A61Q19/10A61K8/20 7 OL 11 4C083 4C083AA121 4C083AA122 4C083AB331 4C083AB332 4C083CC25 4C083DD16 4C083EE06 4C083EE42 本発明は、アロマテラピーを用いた入浴剤に関するものである。 多くの女性が現在、PMS(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)や、「月経痛(生理痛)」と呼ばれる月経困難症、排卵痛、月経不順、過多月経などといった身体的及び精神的不快症状に悩まされている。 PMSとは、月経の約10日〜1週間ほど前から起こる、便秘、乳房の痛み、頭痛、腰痛、むくみ、気分の悪さなどの身体的な症状や、イライラやうつ状態など心理的な症状を指し、特に月経に関するトラブルとしてよく知られている。また、月経困難症とは、下腹部痛、頭痛、腰痛、発熱、下痢、嘔吐、悪心などといった症状が月経期間中に起こり、それによって日常生活に支障をきたすほどの状態になることをいう。特に若い女性に多いとされている。 これらの症状は主に、一定の周期で女性ホルモンの分泌が増減することに関わっているとされている。卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は女性の2大ホルモンと言われ、排卵を境にそれぞれの分泌バランスが変化することが、月経、妊娠、出産など、女性の身体の変化に大きく関与する。 月経の初日を周期の始まり(第1日)とすると、そこから次の月経の直前までが、ひとつの周期となる。月経周期が例えば28日周期の場合、初日から約14日目ほど、一般的な目安としては次の月経の11〜16日前に排卵がある。基礎体温は、月経から排卵までは低めの低温期であり、排卵時にいったん下がり、その後急激に上がって高温期となり、約14日間基礎体温の高温期が続いた後に次の月経となる。 エストロゲンは、いわゆる「女性らしさ」をつくる性ホルモンで、思春期頃から分泌が始まり、生殖機能の成長を促す。卵巣機能の発育、乳腺の発達、子宮内膜の増殖等、子宮内の環境を整えることで受精卵の着床に最適な状態、つまり「妊娠しやすい状態」に身体を整えていく。また、骨を丈夫にしたり、記憶力の維持や食欲の抑制、コレステロールの抑制、自律神経の安定といった役割を持ち、身体だけでなく心の状態にも影響を与える。エストロゲンの分泌が増える結果として、肌の状態が整い、髪に艶と張りが与えられ、気力もアップするとされている。性周期の中では、月経終了頃から排卵日の直前により多く分泌される。 プロゲステロンは、性周期の中では排卵後に多く分泌される。排卵後の卵胞が黄体化されることによって分泌され、高温期を維持、さらに子宮内膜を肥大させ、受精卵が着床した後には、子宮の状態を安定させ胎児が成長しやすい環境を整えるという非常に重要な役割を担っている。妊娠すればプロゲステロンは出産まで分泌され続け、妊娠中に必要なさまざまな働きを行い、受精が成立しなければ、肥厚した子宮内膜は出血を伴って剥がれ落ちる。その一方でプロゲステロン優位期には水分や血行が滞るため、にきびや吹き出物等の肌荒れ、腰痛、便秘、胸の張り、むくみなどの女性にとって不快な症状が引き起こされやすい。 主に上記2つのホルモンの分泌バランスが、性周期の間である約1ヶ月を通してうまく保たれることによって、女性の身体はその機能が滞りなく働くと考えられ、また、体調だけではなく心の健康を維持することも可能になる。 ところが実際には、女性ホルモンの調節機能は、生体内外環境からの影響を受けやすく、さまざまな要因によってその機能に支障が生じるものである。女性ホルモンを分泌させる司令塔である視床下部は、同時に自律神経もコントロールしているため、ストレスや疲労の影響を受けやすい。また、この仕組みは非常に微妙で繊細であるため、女性本人が意識できないレベルのストレスでも、敏感に反応してホルモンの分泌バランスが乱れてしまう。特に益々の社会進出とともにより過酷なストレスに曝されている現代女性は、PMSや月経困難症といった症状がより深刻になっていると言われている。 女性が抱える上記のような諸症状に対して、現在最も即効性があると考えられているのは、鎮痛剤、精神安定剤、ビタミン剤等の投薬、及びホルモン療法である。しかし、既に述べたようにホルモンの調節機能自体が繊細であるために、これらの治療によってかえって、ほかのホルモンに悪影響を及ぼすなどの副作用が生じる恐れがある。また、治療には細かな管理が必要とされるため、一個人が日常生活の中で無理なく行うには限界があった。 そこで、例えば特許文献1に示すように、PMSや月経困難症等の女性特有の不快症状が生じた場合に、その症状を精油を吸入させることにより緩和させるアロマテラピー(アロマセラピー、芳香療法)を活用しようとする動きがある。 アロマテラピーは、植物から抽出した精油等の芳香成分を用いて、マッサージトリートメントや吸入等の手段により、心身に働きかけ、健康や美容の維持及び増進に役立てようとする自然療法のひとつであり、近年急成長している産業分野である。 アロマテラピーにおいて使用する精油は、さまざまな植物の葉、花、果皮、樹皮、根、樹脂等から、主に水蒸気蒸留法、圧搾法、温浸法、冷浸法、有機溶剤抽出法、超臨界流体抽出法によって抽出される、芳香物質を含む揮発性の有機化合物である。精油は、その元の植物原料が医薬品原料として有用な物質を含有しているのと同様に、それぞれに特有の効果・効能を有していると考えられる。 呼吸器を通して吸入された精油に含まれる芳香物質は、大脳辺縁系より脳内に伝わり、自律神経系、内分泌系、免疫系を調節し、全身の健康状態へ反映されるとされており、また、心地良い香りが心身をリラックス状態へ導くことは、経験的に周知のことである。特開2006−257023号公報 しかしながら、上述の特許文献1によるアロマテラピーの活用は、PMSや月経困難症等の女性特有の不快症状が生じた場合に、対症療法的に働きかけ症状を緩和させるだけであるので、性周期を通してホルモンバランスの乱れを整えることはできず、女性の心身の健康状態を維持することができないという問題があった。 本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、女性特有の身体的及び精神的不快症状を軽減するとともに、性周期を通して女性の心身の健康状態を維持することができるアロマテラピーを用いた入浴剤を提供することを目的とする。 上記目的を達成するため、本発明の入浴剤は、 女性の性周期を区分した月経期、卵胞期、排卵期及び黄体期それぞれの期間ごとに使用され、前記それぞれの期間における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する少なくとも1種の精油を含有することを特徴とする。 前記月経期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用が、血行促進作用、子宮強壮作用、鎮痛作用、抗うつ作用、体臭防止作用、血液量増加作用、制吐作用、筋肉弛緩作用及びリンパうっ滞除去作用のうち少なくとも1つの機能的作用であり、該少なくとも1つの機能的作用を有する精油が、ペパーミント、パチュリ、マジョラム、フェンネル、グレープフルーツ、レモン、カモミールローマン、サイプレス、ベルガモット、ラベンダー、ジュニパー、ジンジャー、クローブ、ラバンジン、シトロネラ、クラリセージ及びローズマリーのうち少なくとも1種であるようにしてもよい。 前記卵胞期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用が、刺激作用、細胞成長促進作用、体温保温作用及び脂肪溶解作用のうち少なくとも1つの機能的作用であり、該少なくとも1つの機能的作用を有する精油が、ベルガモット、ローズウッド、ローズオットー、グレープフルーツ、フランキンセンス、ゼラニウム、シナモンリーフ、タイム、ブラックペッパー、スペアミント、ヤロウ、ティーツリー、ネロリ、コリアンダー及びユズのうち少なくとも1種であるようにしてもよい。 前記排卵期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用が、駆風作用、血行促進作用、利尿作用、鎮静作用、緩下作用及び筋肉弛緩作用のうち少なくとも1つの機能的作用であり、該少なくとも1つの機能的作用を有する精油が、オレンジ、マンダリン、プチグレン、レモングラス、ミルラ、サンダルウッド、カルダモン、ユーカリ、ラベンダー、ベンゾイン、カモミールローマン、メリッサ、クミン、ヒノキ、ベチバー及びマジョラムのうち少なくとも1種であるようにしてもよい。 前記黄体期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用が、解熱作用、通経作用、利尿作用、抗うつ作用、収れん作用、筋肉疲労回復作用、緩下作用、リンパうっ滞除去作用及び皮脂分泌抑制作用のうち少なくとも1つの機能的作用であり、該少なくとも1つの機能的作用を有する精油が、ジュニパー、ジンジャー、ゼラニウム、サイプレス、クラリセージ、パチュリ、リンデン、ローズマリー、シダーウッド、パイン、フランキンセンス、プチグレン、オレンジ、イランイラン、ジャスミン、ヘリクリサム、ライム、コリアンダー、バジル及びパルマローザのうち少なくとも1種であるようにしてもよい。 前記月経期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油が、グレープフルーツ、レモン、カモミールローマン及びサイプレスが混合された精油であり、前記卵胞期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油が、ベルガモット、ローズウッド、フランキンセンス及びゼラニウムが混合された精油であり、前記排卵期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油が、マンダリン、プチグレン、ミルラ及びユーカリが混合された精油であり、前記黄体期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油が、ゼラニウム、サイプレス、クラリセージ及びシダーウッドが混合された精油であるようにしてもよい。 また、本発明の入浴剤は、天然塩が基材であるようにしてもよい。 本発明によれば、女性特有の身体的及び精神的不快症状を軽減するとともに、性周期を通して女性の心身の健康状態を維持することができるアロマテラピーを用いた入浴剤を提供することができる。 本発明の実施の形態に係る入浴剤は、天然塩に精油が加えられたものである。本実施の形態の入浴剤は、女性の生体リズムのうち、女性ホルモンの特徴的な増減に沿って性周期を月経期、卵胞期、排卵期及び黄体期の4つの期間に分け、それぞれの期間ごとに使用される。 本実施の形態の入浴剤は、主に女性ホルモンによって引き起こされる月経期、卵胞期、排卵期及び黄体期それぞれの期間に特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油を香料成分として含有する。すなわち本実施の形態の入浴剤は、月経期、卵胞期、排卵期及び黄体期それぞれに応じて含まれる精油が選別された4種類の入浴剤からなる。 4つのそれぞれの期間にしたがって、該当期間用の入浴剤が入浴時に使用される。個人差はあるが、それぞれの期間はだいたい5〜10日間前後となる。それぞれの期間中において複数回、望ましくは3回以上同じ内容の入浴剤を使用するとよい。 月経期は、妊娠非成立時において、プロゲステロンの分泌が抑制され、低温期に入る期間である。この期間は、剥がれた子宮内膜と血液を排出するために子宮筋が収縮を繰り返すため、月経前は低下していた胃や腸の働きが活発になり、収縮も強くなるので、吐き気や下痢を起こす場合もある。骨盤内では鬱血が起こりやすく、下腹部痛や腰痛、下肢のだるさといった症状が出ることも多い。体温が低く、血液量が減るため、顔色が悪くなることがある。さらに水分が失われやすく脂分も少ないので肌の乾燥を招きやすい。そのほか、落ち込みがち、匂いに過敏、月経痛、抵抗力ダウン、疲れやすい、冷えなどの症状が出ることがある。月経が終わりに近づくにつれ、エストロゲンの分泌が徐々に増えるため、上述したような痛みやだるさは軽減することが多い。 このような月経期に特有の身体的及び精神的状態に対応して精油に求められる機能的作用としては、主に血行促進作用、子宮強壮作用、鎮痛作用、抗うつ作用、体臭防止(デオドラント)作用、血液量増加作用、制吐作用、筋肉弛緩作用、リンパうっ滞除去作用等が挙げられる。本実施の形態の月経期用の入浴剤では、これらの機能的作用のうち少なくとも1つの機能的作用を有する精油として、ペパーミント、パチュリ、マジョラム、フェンネル、グレープフルーツ、レモン、カモミールローマン、サイプレス、ベルガモット、ラベンダー、ジュニパー、ジンジャー、クローブ、ラバンジン、シトロネラ、クラリセージ、ローズマリー等のうち少なくとも1種が用いられる。 卵胞期では、排卵を前にエストロゲンの分泌が最も高まる。排卵の数日前にエストロゲンのレベルは大幅に増加し、排卵の前日頃に頂点に達する。この期間は、代謝が活発になり、水分や老廃物の排泄がスムーズになって、むくみや肌荒れも解消されていきやすい。精神的にも安定し、食欲もコントロールしやすく、肌の状態も一番良い時期とされる。体温は降下する。 このような卵胞期に特有の身体的及び精神的状態に対応して精油に求められる機能的作用としては、主に刺激作用、細胞成長促進作用、体温保温作用、脂肪溶解作用等が挙げられる。本実施の形態の卵胞期用の入浴剤では、これらの機能的作用のうち少なくとも1つの機能的作用を有する精油として、ベルガモット、ローズウッド、ローズオットー、グレープフルーツ、フランキンセンス、ゼラニウム、シナモンリーフ、タイム、ブラックペッパー、スペアミント、ヤロウ、ティーツリー、ネロリ、コリアンダー、ユズ等のうち少なくとも1種が用いられる。 排卵期では、卵胞期のエストロゲンの急増が引き金となって黄体形成ホルモン(LH)の分泌が急増し、排卵が誘発される。排卵を境にプロゲステロンの分泌が活発になり、高温期に入る。この期間は、プロゲステロンの影響を受けて胃や腸の働きや水分の排泄などの働きが徐々に低下しやすいため、むくみ、便秘、骨盤内の鬱血、だるさ等を感じやすく、苛立ちなど精神的にも不安定になりやすい。 このような排卵期に特有の身体的及び精神的状態に対応して精油に求められる機能的作用としては、主に駆風作用、血行促進作用、利尿作用、鎮静作用、緩下作用、筋肉弛緩作用等が挙げられる。本実施の形態の排卵期用の入浴剤では、これらの機能的作用のうち少なくとも1つの機能的作用を有する精油として、オレンジ、マンダリン、プチグレン、レモングラス、ミルラ、サンダルウッド、カルダモン、ユーカリ、ラベンダー、ベンゾイン、カモミールローマン、メリッサ、クミン、ヒノキ、ベチバー、マジョラム等のうち少なくとも1種が用いられる。 黄体期では、エストロゲンと大量のプロゲステロンが生成される。黄体期では、エストロゲンは増えるもののプロゲステロンの増加の影響が大きい。妊娠しなかった場合黄体は退化していくため、プロゲステロンのレベルは下がる。この期間は、水分の排泄や腸の働きが低下しやすいため、むくみや便秘が起こりやすい。体温が高く血行も良くなりやすいので、顔色はやや赤みを帯びた明るい色になりやすいが、肌の水分量に対して皮脂分泌が盛んになることでニキビや吹き出物などの肌のトラブルが多くなる。子宮内膜が増殖して子宮が最も膨らむ時期であるため、骨盤内では鬱血が起こりやすく、下腹部痛や腰痛など、腰まわりのだるさを感じやすくなる場合がある。その他、頭痛、胸が張る、のぼせる、眠気、肩こりなどの症状が出やすい。さらに苛立ち、不安感、うつ症状など情緒が不安定となりやすく、身体が糖質を必要とする結果、食欲のコントロールが困難になりやすく、体重が増えやすい。 このような黄体期に特有の身体的及び精神的状態に対応して精油に求められる機能的作用としては、主に解熱作用、通経作用、利尿作用、抗うつ作用、収れん作用、筋肉疲労回復作用、緩下作用、リンパうっ滞除去作用、皮脂分泌抑制作用等が挙げられる。本実施の形態の黄体期用の入浴剤では、これらの機能的作用のうち少なくとも1つの機能的作用を有する精油として、ジュニパー、ジンジャー、ゼラニウム、サイプレス、クラリセージ、パチュリ、リンデン、ローズマリー、シダーウッド、パイン、フランキンセンス、プチグレン、オレンジ、イランイラン、ジャスミン、ヘリクリサム、ライム、コリアンダー、バジル、パルマローザ等のうち少なくとも1種が用いられる。 本実施の形態の入浴剤において用いられる精油は、植物から抽出された天然の精油であることが望ましい。なぜならば、精油が持つとされる機能的作用は、各原料植物が持っている機能に由来するものであり、精油が人工的に合成または調整されたものや混ぜ物のあるものでは、効果が低減してしまうおそれがあるからである。 本実施の形態の入浴剤に用いられる精油は、単独で用いてもよいし、2種以上を調合してもよい。ただし、アロマテラピーにおいて、精油の大きな特徴のひとつとして、2種類以上の精油を混合することで生じる各機能的作用の相乗効果が非常に大きいことが挙げられるため、より持続的に多岐にわたる効果を期待するのであれば、2種以上を調合することが望ましい。 本実施の形態の入浴剤に含まれる精油の適量は、一般的な家庭用浴槽の湯量(約200〜300リットル前後)で、1回分を0.3ml以内とするのが望ましい。この理由は、皮膚刺激のある種類の精油も存在するということもあるが、使用する精油の全体量が増えることで肌に刺激が生じてしまうためである。また、精油は香りが強すぎることでリラックス効果を減少させてしまう懸念もあるため、可能であれば、より少量たとえば0.1ml程度から適宜調整していくことが好ましい。なお、精油を調合する場合、各精油の量は、香りの強さや持続時間の差、刺激の強弱など、複数の観点から判断して割合を決定し、調合した全体量が、上述した適量となるようにする。 本実施の形態の入浴剤では、基材として天然塩を用いるが、これは精油を浴槽の湯に効果的に拡散させるため及び皮膚への刺激を緩和するためである。また、天然塩が持つ入浴効果及び清浄効果の促進、発汗効果、保温効果、美肌効果等も得ることができる。 このように本実施の形態の入浴剤では、性周期を女性ホルモンの特徴的な増減に沿って月経期、卵胞期、排卵期及び黄体期の4つの期間に分けそれぞれの期間ごとに使用して、主に女性ホルモンによって引き起こされるそれぞれの期間に特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油を香料成分として含有するようにしたので、アロマテラピーと入浴を併用し、それぞれが有する効能を相乗的に高めながら、PMSや月経困難症等の女性特有の不快症状を含んだ女性特有の身体的及び精神的不快症状を軽減することができるとともに、女性ホルモンによって影響される生体リズムの全体を整えることができる。 この場合の「生体リズムの全体を整える」というのは、従来の月経前及び/または月経中の不快症状を軽減することに目的が絞られたものではなく、心身の「バランスをとる」というアロマテラピー本来の意義に基づいて、日常の全体を通して女性の心身のケアをすること、またケアができることである。女性が自らの心身の全体状態及び生体リズムを常に把握しうることによって、将来にわたって恒常的な心身のケアが可能となり、現在または将来において抱えうるさまざまな身体的及び精神的不快症状を軽減または回避することもできる。 また、本実施の形態の入浴剤では、使用するのに特別な装置や道具を必要とせず、使用者本人が記録等を続ける必要も生じない。単に日常の入浴時に、性周期の期間を把握し、該当入浴剤を選び、実際に使用するのみという手軽さがあり、精油に関する専門知識に乏しい一般の消費者にとって、日常生活の中で無理なく継続的に行えるケアのひとつとして定着しうるものである。 本実施の形態の入浴剤は、女性の一生の大半を司る女性ホルモンによる心身への影響を調整しながら、入浴効果を増強し、アロマテラピー効果によるリラクセーションも享受でき、しかも自宅で日常的に自ら手軽に用いることができる、女性にとって理想的な入浴剤であると言える。 以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、精油が植物から抽出された天然の精油である例について説明したが、本発明の目的が損なわれない限りにおいて、香料として、スクラレオール、酢酸リナリル、酢酸ベンジル、リナロール、シトラール、シトロネラール、メントール、シネオール、カンファー、ヌートカトン、シトロネロール、アンゲリカ酸エステル、安息香酸エステル、ゲラニオール等の香料化合物を用いても良い。 また、上記実施の形態では、入浴剤の基材として天然塩を用いた例について説明したが、入浴剤の基材は天然塩に限るものではなく、本発明の目的が損なわれない限り、例えば、無機塩類、有機酸類、油脂類、アルコール類、生薬・ビタミン類等、入浴時の基材として適当なものであれば、状況に応じて適宜選択することは可能である。また、本発明の入浴剤は、本発明の目的が損なわれない限りにおいて、ハーブや温泉成分等その他のさまざまな成分を含むようにしても良い。 以下に実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。 10名の女性被験者を対象に、本発明の入浴剤を1ヶ月間使用してもらい、女性の身体的及び精神的状態の変化を評価する試験を行った。 すなわち、月経期、卵胞期、排卵期及び黄体期各々の性周期内の期間に応じた入浴剤を用いて、1回あたり15分〜30分の時間入浴してもらい、それを約1ヶ月間続けてもらった。各被験者は4種類の入浴剤を、それぞれの期間中に3回ずつ使用し、約1カ月かけてすべての入浴剤を使い切る。この試験で使用した入浴剤の精油の内容を表1に示す。すべての被験者に対して同じ4種類の入浴剤を3包ずつ、つまり計12包配布した。 いずれも1回分の入浴剤は、天然塩40gに、表1の内容の調合香料である精油を0.25ml加えたものである。被験者に対しては、試験開始時に比較期(試験開始前の約半年〜1ヶ月前)における各症状について評価してもらい、その後、試験全体終了時に各症状について同様に評価してもらった。ここでは、各被験者が自身の心身について把握しうる範囲での表2に示す身体的及び精神的各症状についての評価とした。 各被験者が記入した各症状についての評価は下記の評価基準に従って点数化し、比較期及び試験全体終了時について10名の平均値を算出した。比較期及び試験全体終了時について、26項目の症状で合計した点数の10名の平均値を表3に示す。なお、症状は全部で26項目なので、すべての項目において4点の最大点であれば、1人につき最大104点となる。また、比較期及び試験全体終了時について、各症状における10名の点数の平均値を表4に示す。評価基準(5段階)0:症状なし1:ごく軽度。または疑わしい。2:軽度。日常生活にほとんど影響なし。必ずしも苦痛を感じない。3:中等度。日常生活にある程度の影響を及ぼす。しばしば苦痛を感じる。4:重度。日常生活に重大な影響を及ぼす。強く苦痛を感じる。 いずれの性周期内期間及び症状においても、試験全体終了時の点数は比較期に比べて減少した。すなわち、本実施例の結果より、本発明の入浴剤は、女性の身体的及び精神的不快症状を軽減する効果を有することがわかった。 また、被験者によるアンケートにおいては、上記の各症状に対する効果以外にも、複数の被験者から「入浴自体が充実したリラックスの時間になった」、「各期間の身体の状態が求めるものと、香りのイメージ(さっぱり、華やか、など)が合っていて気持ちが良かった」、「自分の月経周期を意識して過ごすことができたので、今後に役立てたい」、「月経中以外でも身体の調整が必要だと実感した」といった感想が提出された。 女性の性周期を区分した月経期、卵胞期、排卵期及び黄体期それぞれの期間ごとに使用され、前記それぞれの期間における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する少なくとも1種の精油を含有することを特徴とする入浴剤。 前記月経期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用が、血行促進作用、子宮強壮作用、鎮痛作用、抗うつ作用、体臭防止作用、血液量増加作用、制吐作用、筋肉弛緩作用及びリンパうっ滞除去作用のうち少なくとも1つの機能的作用であり、該少なくとも1つの機能的作用を有する精油が、ペパーミント、パチュリ、マジョラム、フェンネル、グレープフルーツ、レモン、カモミールローマン、サイプレス、ベルガモット、ラベンダー、ジュニパー、ジンジャー、クローブ、ラバンジン、シトロネラ、クラリセージ及びローズマリーのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の入浴剤。 前記卵胞期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用が、刺激作用、細胞成長促進作用、体温保温作用及び脂肪溶解作用のうち少なくとも1つの機能的作用であり、該少なくとも1つの機能的作用を有する精油が、ベルガモット、ローズウッド、ローズオットー、グレープフルーツ、フランキンセンス、ゼラニウム、シナモンリーフ、タイム、ブラックペッパー、スペアミント、ヤロウ、ティーツリー、ネロリ、コリアンダー及びユズのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の入浴剤。 前記排卵期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用が、駆風作用、血行促進作用、利尿作用、鎮静作用、緩下作用及び筋肉弛緩作用のうち少なくとも1つの機能的作用であり、該少なくとも1つの機能的作用を有する精油が、オレンジ、マンダリン、プチグレン、レモングラス、ミルラ、サンダルウッド、カルダモン、ユーカリ、ラベンダー、ベンゾイン、カモミールローマン、メリッサ、クミン、ヒノキ、ベチバー及びマジョラムのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の入浴剤。 前記黄体期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用が、解熱作用、通経作用、利尿作用、抗うつ作用、収れん作用、筋肉疲労回復作用、緩下作用、リンパうっ滞除去作用及び皮脂分泌抑制作用のうち少なくとも1つの機能的作用であり、該少なくとも1つの機能的作用を有する精油が、ジュニパー、ジンジャー、ゼラニウム、サイプレス、クラリセージ、パチュリ、リンデン、ローズマリー、シダーウッド、パイン、フランキンセンス、プチグレン、オレンジ、イランイラン、ジャスミン、ヘリクリサム、ライム、コリアンダー、バジル及びパルマローザのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の入浴剤。 前記月経期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油が、グレープフルーツ、レモン、カモミールローマン及びサイプレスが混合された精油であり、前記卵胞期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油が、ベルガモット、ローズウッド、フランキンセンス及びゼラニウムが混合された精油であり、前記排卵期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油が、マンダリン、プチグレン、ミルラ及びユーカリが混合された精油であり、前記黄体期における特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する精油が、ゼラニウム、サイプレス、クラリセージ及びシダーウッドが混合された精油であることを特徴とする請求項1に記載の入浴剤。 天然塩が基材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の入浴剤。 【課題】アロマテラピーと入浴を併用し、それぞれが有する効能を相乗的に高めながら、女性特有の身体的及び精神的不快症状を軽減し、性周期を通して女性の心身の健康状態を維持する。【解決手段】入浴剤を女性の性周期を区分した月経期、卵胞期、排卵期及び黄体期それぞれの期間ごとに使用し、女性ホルモンによって引き起こされるそれぞれの期間に特有の身体的及び精神的状態に対応した機能的作用を有する少なくとも1種の精油を含有させる。【選択図】なし