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タイトル:公開特許公報(A)_ベータポリケトンの製造方法、ベータポリケトン、特定金属イオン抽出剤の製造方法及び特定金属イオン抽出剤
出願番号:2013176102
年次:2015
IPC分類:C08F 8/06,B01J 20/26,B01J 20/30,C08F 16/06,C07C 49/12,C07C 45/29


特許情報キャッシュ

葭田 真昭 佐藤 敬士 JP 2015044923 公開特許公報(A) 20150312 2013176102 20130827 ベータポリケトンの製造方法、ベータポリケトン、特定金属イオン抽出剤の製造方法及び特定金属イオン抽出剤 国立大学法人宇都宮大学 304036743 丸山 英一 100101340 葭田 真昭 佐藤 敬士 C08F 8/06 20060101AFI20150213BHJP B01J 20/26 20060101ALI20150213BHJP B01J 20/30 20060101ALI20150213BHJP C08F 16/06 20060101ALI20150213BHJP C07C 49/12 20060101ALN20150213BHJP C07C 45/29 20060101ALN20150213BHJP JPC08F8/06B01J20/26 EB01J20/30C08F16/06C07C49/12C07C45/29 16 OL 18 4G066 4H006 4J100 4G066AA53D 4G066AC12A 4G066AC12B 4G066BA03 4G066BA38 4G066CA46 4G066DA07 4G066FA17 4H006AA02 4H006AA03 4H006AB82 4H006AC44 4H006BE44 4J100AD02P 4J100AG04P 4J100CA31 4J100HA01 4J100HB42 4J100HE01 4J100JA15 本発明は、原料としてポリビニルアルコール(PVA)を用いることができるベータポリケトンの製造方法、ベータポリケトン、特定金属イオン抽出剤の製造方法及び特定金属イオン抽出剤に関する。 PVAは、代表的な、高分子化合物の反応生成物である。例えば、酢酸ビニルモノマーを重合したポリ酢酸ビニルを、ケン化する反応により、反応生成物としてPVAを得ることができる。 PVAは、例えば、液晶画面の偏光フィルム原料、繊維や紙の加工剤、木工ボンドや合板用の接着剤、塩ビの重合添加剤、自動車のフロントガラス用中間膜原料などとして利用されている。 PVAは、工業的には、反応生成物としてそのまま用いられることが多く、これを更なる反応に供した例は少ない。 PVAを更なる反応に供した例としては、PVAからビニロン、ポリビニルブチラールを生成するアセタール化反応がある。 また、特許文献1は、PVAの固体表面の親水性を低減するために、PVAを、フッ素含有長鎖アルキル基を有するトリハロシラン化合物と反応させることを開示する。 更にまた、特許文献2は、PVAを低重合度化する方法として、酸化剤を用いたPVAの主鎖開裂反応を開示する。 PVAを反応物(原料)として利用したり、高機能化したりする試みは、上述した程度であり、十分に検討されていない。この理由のひとつとして、PVAが安定性の高い高分子であること(逆に言えば、反応性に乏しいこと)などが挙げられる。特開平11−322986号公報特開2000−86992号公報 本発明者は、反応物(原料)としてのPVAに着目し、鋭意検討した結果、これを酸化する反応が生起し得ること、及び、かかる酸化反応によって得られる生成物であるベータポリケトンが、新たな機能性材料としての有望な特性を示すことを見出した。 そこで、本発明の課題は、反応物(原料)としてのPVAの新たな利用可能性を提供することにある。 また、本発明の他の課題は、新たな機能性材料を提供することにある。 また、本発明の更なる他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。 上記課題は、以下の各発明によって解決される。(請求項1) ポリビニルアルコールを酸化することによりベータポリケトンを得ることを特徴とするベータポリケトンの製造方法。(請求項2) 前記ポリビニルアルコールを、酸化剤を用いて酸化することを特徴とする請求項1記載のベータポリケトンの製造方法。(請求項3) 前記酸化剤として、窒素酸化物を用いることを特徴とする請求項2記載のベータポリケトンの製造方法。(請求項4) 前記窒素酸化物として、二酸化窒素及び/又は四酸化二窒素を用いることを特徴とする請求項3記載のベータポリケトンの製造方法。(請求項5) 請求項1〜4の何れかに記載のベータポリケトンの製造方法により得られたことを特徴とするベータポリケトン。(請求項6) ケト型及び/又はエノール型に由来するIR吸収を示すことを特徴とする請求項5記載のベータポリケトン。(請求項7) 前記IR吸収が、1710〜1725cm−1及び/又は1620〜1655cm−1に現れることを特徴とする請求項6記載のベータポリケトン。(請求項8) 下記(1)に表わされるオキソエチレン単位を複数有することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載のベータポリケトン。(請求項9) ポリビニルアルコールを酸化することにより特定金属イオン抽出剤を得ることを特徴とする特定金属イオン抽出剤の製造方法。(請求項10) 前記ポリビニルアルコールを、酸化剤を用いて酸化することを特徴とする請求項9記載の特定金属イオン抽出剤の製造方法。(請求項11) 前記酸化剤として、窒素酸化物を用いることを特徴とする請求項10記載の特定金属イオン抽出剤の製造方法。(請求項12) 前記窒素酸化物として、二酸化窒素及び/又は四酸化二窒素を用いることを特徴とする請求項11記載の特定金属イオン抽出剤の製造方法。(請求項13) 請求項9〜12の何れかに記載の特定金属イオン抽出剤の製造方法により得られたことを特徴とする特定金属イオン抽出剤。(請求項14) ケト型及び/又はエノール型に由来するIR吸収を示すことを特徴とする請求項13記載の特定金属イオン抽出剤。(請求項15) 前記IR吸収が、1710〜1725cm−1及び/又は1620〜1655cm−1に現れることを特徴とする請求項14記載の特定金属イオン抽出剤。(請求項16) パラジウムイオンに対して抽出能を有することを特徴とする請求項13〜15の何れかに記載の特定金属イオン抽出剤。 本発明によれば、反応物(原料)としてのPVAの新たな利用可能性を提供することができる。 また、本発明によれば、新たな機能性材料を提供することができる。実施例の結果を示す図(ベータポリケトンのIRスペクトル)実施例の結果を示す図(ベータポリケトンのUVスペクトル) 本発明でいう「ベータポリケトン」は、ベータポリケトンのケト−エノール互変異性体を包含し得る総称である。 ケト型のベータポリケトンは、カルボニル基が1つの炭素原子を介して隣接した構造を有する化合物である。即ち、1つのカルボニル基から見てベータ位に、次のカルボニル基が位置する構造を有している。 ケト型のベータポリケトンとしては、下記(2)で表される構造(オキソエチレン単位の複数繰り返し構造)を有する化合物を挙げることができる。(但し、nは2以上の整数である。) エノール型のベータポリケトンは、上述したケト型のベータポリケトンのカルボニル基(ケト基)の少なくとも一部が、エノールに変化(ケト−エノール互変異性)したものを指し、詳しくは後に詳述する。 従来、ポリケトンとしては、オレフィンと一酸化炭素との交互共重合体が、新たなエンジニアリングプラスチックとして検討されているが(総説:Chem. Rev., 1996, 663、特開2013−76024号公報)、この共重合体は、1−オキソトリメチレンを繰り返し単位としており、カルボニル基の間に炭素が2個存在するため、カルボニル基から3番目、即ちガンマ位に次のカルボニル基が位置するガンマポリケトンである。 ベータポリケトンについては、ほとんど産業に利用された例がない。唯一、試薬としアセチルアセトンが市販されている。(アセチルアセトンのIUPAC名は、2,4−ペンタンジオンであり、2つのカルボニル基の間に炭素が1個で、カルボニル基から2番目、即ちベータ位に次のカルボニル基が位置するベータジケトンである。つまり、ベータポリケトンの一種(上記(2)において、n=2の場合)とみることができる。)。他には、天然物合成中間体として、カルボニル基を3個有するベータトリケトンが報告されている程度である(Chem. Pharm. Bull., 28, 2460 (1980))。nが5以上のベータポリケトンについては報告された例がない。 本発明のベータポリケトンの製造方法は、新規な製造方法であり、nが2又は3のベータポリケトンだけでなく、nが4以上の比較的分子量の大きいベータポリケトンを製造する場合において特に好適に用いることができる。 本発明によってはじめて提供されるnが4以上のベータポリケトンは、機能性材料としての種々の可能性を有しており、後に詳述するが、例えば、特定金属イオン抽出剤としての能力に優れる。 また、本発明を実施する際には、原料として、例えば、比較的容易に入手可能なPVAを利用することができる。本発明は、ひとつの局面において、PVAの新たな利用可能性を提供するものであるということもできる。 以下に、本発明を実施するための形態について、より詳しく説明する。 本発明のベータポリケトンの製造方法では、原料として、PVAを用いることができる。PVAは、洗濯のり等としても用いられており、容易に入手できる。 PVAとしては、格別限定されず、市販のものも使用でき、例えば、下記(3)に示される構造(ビニルアルコール単位の複数繰り返し構造)を有する化合物を好ましく挙げることができる。 ビニルアルコール単位の繰り返し数nは、2以上であれば格別限定されないが、3以上であることが好ましく、4以上であることが更に好ましい。ベータポリケトンの製造方法による生成物(ベータポリケトン)を機能性ポリマーとして用いる観点では、nが、10以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、100以上であることが最も好ましい。 PVAのケン化度は、特に限定されないが、ケン化度が極端に低い場合は、ベータ位にケトンが形成される確率が減り、ポリベータケトンが生成しにくくなる場合がある。PVAのケン化度は、50mol%以上であることが好ましく、98mol%以上であることがより好ましい。なお、ここで、ケン化度とは、PVAの原料であるポリ酢酸ビニル(PVAc)からのケン化度を指す。 本発明において、PVAは、固体のまま反応に供することが好ましい。固体の形状は格別限定されず、フィルム状、線状、繊維状(布状)、板状、ペレット状、粉末状、あるいは任意の成形体など、種々の形状で反応に供することができる。(なお、以下の説明では、主にフィルム状について説明する場合があるが、これは、生成物の分析が容易に行えるという観点で選択しているに過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。) また、PVAは、必ずしもその全てが後述の酸化反応によってベータポリケトンに変化しなくてもよく、少なくとも一部が変化すればよい。例えば、PVAを固体のまま反応に供する場合は、内層に未変化部分を残すように、例えば表面のみをベータポリケトンに変化させてもよい。 PVAにおいて、ビニルアルコール単位を複数繰り返した構造の両末端は、それぞれ、水素原子であってもよいし、任意の置換基により置換されていてもよい。 本発明においては、PVAの末端が置換基を有するか否かによらず、ベータポリケトンの合成反応を進行させることができる。極端な例を挙げれば、例えば、PVAの末端を、直接あるいは任意の連結基を介して、基材表面に固定した状態(例えば単分子膜)で用いる場合であっても、ベータポリケトンの合成反応を進行させることができる。 また、本発明では、原料として、上述したPVAのビニルアルコール単位における水酸基の一部又は全部の水素原子が任意の置換基(アルキル基、アリール基など)によって置換された化合物も、同様に用いることができる。このような化合物としては、格別限定されるものではないが、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール・芳香族ビニル共重合体等を好ましく例示できる。 本発明において、原料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。 本発明では、以上に説明した原料を、酸化(酸化反応)させることによって、ベータポリケトンを得る。 本発明において、酸化反応の条件は、ベータポリケトンが生成可能なものであれば、格別限定されず、適宜設定することができる。 原料を酸化するに際しては、酸化剤を用いることが好ましい。 酸化剤としては、格別限定されないが、窒素酸化物等を好ましく例示できる。 窒素酸化物としては、格別限定されないが、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(一酸化二窒素)(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素(N2O4)、五酸化二窒素(N2O5)等を好ましく例示でき、特に、NO2及び/又はN2O4を用いることが好ましい。 NO2とN2O4とは、互いに平衡の関係(2NO2⇔N2O4)で共存する。この平衡バランスは、温度や圧力の調整によって容易に制御できる。温度を上げるとNO2に平衡が傾き、圧力を上げると四酸化二窒素N2O4に平衡が傾く。 N2O4とNO2とでは、酸化力に差がある。N2O4の酸化力は比較的穏やかであり、NO2の方がより強い酸化力を示す。 本発明では、原料ポリマーの主鎖が酸化により切断(酸化開裂)されることを防止した状態で、水酸基(又は該水酸基の水素原子が置換基によって置換された基)の酸化を進行させることが好ましい。このような観点では、酸化力が比較的穏やかなN2O4に平衡を傾けた状態で、酸化反応を行うことが好ましい。 NO2及び/又はN2O4の使用量は、PVAの繰り返し単位(ビニルアルコール単位)の水酸基1モルに対して、0.1〜200倍モルであることが好ましく、0.8〜100倍モルであることがより好ましく、1.0〜50倍モルであることが最も好ましい。なお、ここでいうモル数は、NO2及び/又はN2O4を、NO2換算したモル数である(N2O4は、2分子のNO2と見なす。)。 以下に、本発明における酸化反応の好ましい反応条件について、一例として、酸化剤としてNO2及び/又はN2O4を用いる場合を例に、詳しく説明する。 酸化反応の温度は、好適な酸化力を示すN2O4の割合を増やす観点では、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、100℃以下、最も好ましくは50℃以下で行われることである。反応温度が150℃を超えると、NO2の割合が増加して、原料(ポリマー)の主鎖が切断され易くなり、得られるベータポリケトンが低分子化される場合がある。勿論、低分子化されたベータポリケトンも、産業的に有効に利用できるので、本発明はこれを排除するものではない。また、反応温度が150℃を超えると、亜硝酸エステルなどが副生され、ベータポリケトンの収率に影響を与える場合がある。この場合も、適宜精製工程を設けてベータポリケトンの純度を向上することもできる。 一方、酸化反応の温度の下限は、格別限定されるものではないが、反応効率等を向上する観点では、好ましくは、−50℃以上、より好ましくは、−20℃以上、最も好ましくは、0℃以上である。 酸化反応の圧力は、格別限定されるものではないが、NO2とN2O4とを併用する場合において、N2O4の割合を増やす観点では、好ましくは、2MPa以上、より好ましくは、4MPa以上とすることである。 一方、酸化反応の圧力の上限は、格別限定されるものではないが、好ましくは、30MPa以下、より好ましくは、10MPa以下である。 また、酸化反応の反応時間は、格別限定されるものではないが、0.1〜100時間の範囲であることが好ましく、0.5〜5時間の範囲であることがより好ましい。 本発明において、酸化剤としてNO2及び/又はN2O4を用いる場合は、溶媒として二酸化炭素を用いることが好ましい。二酸化炭素を溶媒として用いれば、溶媒の酸化を防止でき、酸化剤であるNO2及び/又はN2O4の無駄な消費や、溶媒の急激な燃焼などを避けることができ、反応の安全性を向できる。また、NO2とN2O4の平衡が圧力によって調整可能であることは上述したが、二酸化炭素を用いれば容易に圧力の調整ができ、反応性を制御し易い。 本発明の一実施形態においては、上述した反応温度や圧力の他に、二酸化炭素とNO2及び/又はN2O4の混合割合も、PVAの水酸基が効率良くカルボニル基に変換され、エノール型の構造の生成物が多く得られるように、適宜設定することができる。 二酸化炭素の重量の、NO2及びN2O4の総重量に対する混合割合は、反応温度や反応時間などに応じて適宜選択できるが、例えば、1〜5000倍であることが好ましく、10〜1000倍であることがより好ましく、50〜500倍であることが最も好ましい。 本発明において、二酸化炭素は、気体状態で用いることもできるが、液体状態あるいは超臨界状態で用いられることが好ましい。これにより、原料と酸化剤の浸透性、拡散性を向上できるため、原料の酸化反応を一律に進行させることが可能になる。 以下に、ベータポリケトンの製造方法の一例に基づいて、本発明を更に詳しく説明する。 まず、原料として、PVAを用意し、これを水等の溶媒に溶解して溶液を調製する。PVAは、溶媒が水であっても、例えば温水を用いる等により、容易に溶解することができる。 次いで、調製された溶液を、基材上に付与して乾燥する(キャスティングする)ことによって、PVAフィルムを得る。 このPVAフィルムを酸化する際には、反応容器として、オートクレーブ(圧力容器)を好適に用いることができる。 PVAフィルムを入れたオートクレーブ内を、まず、二酸化炭素で置換した後、NO2を含む二酸化炭素を流し込み、これをオートクレーブ内に封入する。 次いで、恒温槽により、オートクレーブ内の温度を所定の温度及び圧力に保ち、所定時間反応させる。 反応後、オートクレーブ内を冷却した後、内部のガスを放出させ、常圧にして、上記フィルムを回収する。 回収されたフィルム(ベータポリケトンフィルム)は、デシケータ(乾燥器)等を用いて乾燥することで、残留する不純物を容易に除去して精製できる。 また、精製の他の態様において、ベータポリケトンと、不純物との分離は、溶媒溶解性の差によって実現することもできる。後述する通り、ベータポリケトンは種々の溶媒に対して実質的に溶解しないため、ベータポリケトンを溶媒中に浸漬することで、不純物のみを溶解して分離することが可能である。 本発明のベータポリケトンは、好ましくは上述した本発明のベータポリケトンの製造方法により得ることができる。 本発明のベータポリケトンは、下記(2)で表わされる構造(オキソエチレン単位の複数繰り返し構造)を有するもの(ケト型)であるか、あるいは、そのカルボニル基(ケト)の一部がエノールに変化したエノール型互変異性体であることが好ましい。 上記(2)において、nは、2以上であれば格別限定されないが、3以上、であることが好ましく、4以上であることが更に好ましい。特に機能性ポリマー(高分子)として用いる観点では、nが、10以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、100以上であることが最も好ましい。これにより、固体としての性質を増すことができ、取扱い性や、機能発現の安定性を向上できる。 本発明において、ベータポリケトンは、固体になる程度の分子量を有することが好ましい。例えば、重量平均分子量Mwが、5000〜200000の範囲であることが好ましい。 上記のベータポリケトンにおいて、オキソエチレン単位を複数繰り返した構造の両末端は、それぞれ、水素原子であってもよいし、任意の置換基により置換されていてもよい。 本発明においては、末端が置換基を有するか否かによらず、ベータポリケトンの機能発現を実現できる。極端な例を挙げれば、例えば、ベータポリケトンの末端を、直接あるいは任意の連結基を介して、基材表面に固定した状態(例えば単分子膜)で用いる場合であっても、その機能を発現し得る。 本発明のベータポリケトンは、下記(4)で表されるような、ケト−エノール互変異性を生じ得る。 上記(4)において、上段は、ケト型のベータポリケトンであり、中段及び下段は、エノール型のベータポリケトンである。これらは、互いに互変異性体の関係にある。 このため、本発明のベータポリケトンは、ケト型及び/又はエノール型のIR吸収を示す。具体的には、ケト型のIR吸収は、1710〜1725cm−1に現れ、エノール型のIR吸収は、1620〜1655cm−1に現れる。即ち、これら当該範囲に、吸収ピークを示し得る。 また、ベータポリケトンは、UVスペクトルにおいて、209nmに極大吸収を示し、また、280nm付近にエノール化による共役に基づく吸収を示す。 エノール型のベータポリケトンにおいて、水酸基の水素原子は、隣接するカルボニル基の酸素原子と水素結合を形成し得る(水素結合を含む6員環構造の形成)。 ベータポリケトンは、必要に応じて、酸触媒を作用させることによりエノール型に変異し、塩基触媒を作用させることによりケト型に変異する。これは、一般的なケト−エノール互変異性に共通する性質である。用途に合わせて、適宜、ベータポリケトンの互変異性体の比率を調整することも好ましいことである。 本発明においては、ケト型、エノール型によらず、ベータポリケトンは、下記(1)に表されるオキソエチレン単位を複数有することが好ましい。これら複数のオキソエチレン単位は、主鎖中に含まれることが好ましい。オキソエチレン単位の数は、多いほど好ましく、2以上、3以上、4以上であることが好ましい。更に好ましいのは、オキソエチレン単位が、10以上、100以上、1000以上であることである。本発明において、オキソエチレン単位の数に、格別上限はない。 上述したポリケトン(ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))は、ケトン基(カルボニル基)間にはベンゼン環が2個あるもので、それらのケトン基はケトン基間の相互作用が小さい。また、上述したオレフィンと一酸化炭素との交互共重合体(1−オキソトリメチレンを繰り返し単位とするポリケトン)もまた、ケトン基間に炭素が2個ある(γポリケトンまたは1,4−ポリケトン)ため、それらのケトン基はケトン基間の相互作用が小さい。 これに対して、本発明のベータポリケトンは、上述したようにケトン基間の相互作用が大きく、特に、この主鎖が長鎖になるほど、その構造に起因する特異的な性質が際立つ。このような観点で、本発明のベータポリケトンは、例えば固体になる程度に、分子量が大きいことが好ましい。 本発明のベータポリケトンは、以上に説明したような構造に由来するユニークな特性により、機能性材料として好適に用いることができる。 特に、分子量が大きくなると、固体としての性質が増すため、機能性材料としての取扱い性が向上する効果も得られる。また、ベータポリケトンが、水、THF、DMF、DMSO、トルエン、NMP、DMAなど種々の溶媒に溶解され難いことも本発明者により確認されており、このことも、取扱い性の向上に寄与し得る。 機能性材料としては、格別限定されないが、例えば、金属イオン抽出剤、イオン電導性ポリマー(例えばイオン伝導性フィルム)、電気伝導性ポリマー(例えば透明電極)などを好ましく例示できる。 更に、機能性材料としては、金属錯体触媒、塗料、接着剤、インキ等の親和剤又は分散剤なども、好ましく例示できる。 また更に、本発明のベータポリケトンを更なる反応に供して、更なる新たな機能性材料への誘導を行うこともできる。 本発明のベータポリケトンは、金属イオンを抽出する抽出能を有するため、金属イオン抽出剤として好適に用いることがでる。特に、希少金属(rare metal)にも分類されるパラジウムに対して、これを選択的に抽出する特定金属イオン抽出能を発揮することができる。 以下に、金属イオン抽出に関して詳しく説明する。 本発明の特定金属イオン抽出剤の製造方法では、原料であるポリビニルアルコールを酸化することにより特定金属イオン抽出剤を得る。 原料は、ポリビニルアルコールに限定されず、上述したベータポリケトンの製造方法で説明した原料を用いてもよい。 また、ポリビニルアルコールの酸化についても、上述したベータポリケトンの製造方法において説明した構成を援用することができる。 本発明の特定金属イオン抽出剤の製造方法においては、必ずしも当該特定金属イオン抽出剤がベータポリケトンであることを厳密に確認する必要がない。得られる特定金属イオン抽出剤が、上述したケト型及び/又はエノール型に由来するIR吸収を示すものであれば、特定金属イオン抽出剤として好適に用いることができるからである。 このようなIR吸収を示すように原料の酸化を行うこと(つまり、IR吸収の変化を、酸化反応条件設定のための指標として用いること)ことも、本発明においては好ましいことである。これは、特定金属イオン抽出剤の製造方法だけでなく、上述したベータポリケトンの製造方法においても同じことである。 本発明の特定金属イオン抽出剤は、以上に説明した特定金属イオン抽出剤の製造方法により得られるが、必ずしも、この方法により得られたものに限定されない。 本発明の特定金属イオン抽出剤は、上述した本発明のベータポリケトンを含むものを、好適に用いることができる。 ベータポリケトンは、分子量が大きくなるほど特定金属イオン抽出剤の抽出能が特異的なものとなる。具体的には、パラジウムに対する選択性が高まることが確認されている。例えば、パラジウム、白金、インジウムを含む水溶液中から、高い選択性で、実質的にパラジウムのみを抽出することができる。 本発明の金属イオン抽出方法では、以上に説明した特定金属イオン抽出剤を用いて、金属イオンの抽出を行う。抽出対象となる金属イオンは、パラジウムイオンであることが好ましい。 本発明の金属イオン抽出方法では、特定金属イオン抽出剤を固体状で用いる場合、これを、金属イオンを含む液中に浸漬させるだけで、上述した特有の抽出能を発揮する。また、液中から引き上げるだけで金属イオンを回収できる。 本発明の特定金属イオン抽出剤は、有機溶媒や水への溶解度を小さくできるため、安定に用いることができ、回収も容易である。 また、本発明の特定金属イオン抽出剤は、液中での使用に限定されず、気相中あるいは固相中でも抽出能を発揮し得る。 従来の特定金属イオン抽出剤は、ほとんどが小分子であり、有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、エチルヘキシルアルコールなど)に溶かした状態で用いられている。そのため、液中からの回収には、凝集剤や濾過膜が必要になる場合もある。また、有機溶媒(特にジクロロメタンなど)の使用は、環境への配慮から、できるだけ避けたいところである。 これに対して、本発明の特定金属イオン抽出剤は、固体状のままでも優れた効果を発揮でき、有機溶媒中に限らず、水中においても、クリーンな金属抽出を実現できる。 更に、本発明のベータポリケトンは、基本的に、炭素、水素、酸素により構成されるので、完全焼却処分を好適に適用できる。例えば、金属を回収するための一態様として、金属が吸着されたベータポリケトンを焼却することにより、残った金属を回収することもできる。 以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。 以下の実施例において、IR測定には、日本分光FT/IR−4100 ATR法(プリズム:Diamond)を用いた。UV測定には、日立ダブルビーム分光光度計 U−2000A形を使用した。ICP発光分光分析には島津ICPS−7500を使用した。1.ベータポリケトンの製造(実施例1) PVA(Aldrich:Mowiol(登録商標)10−98、Mw〜61000、けん化度98.0〜98.8mol%、0.2g)を蒸留水(5g)に溶解し、キャスティングして厚さ約30μmのフィルムを作成し、これを20×30mm(20.6mg)に切断し50mLステンレス製オートクレーブ中のフィルムホルダーに取り付け、CO2を2回置換後CO2を20g導入した。このオートクレーブを氷浴中で5℃以下まで冷却した。両端にバルブを付けた3mL容量のステンレス製のNO2採取管にNO2を0.54g精秤したものを、試料の入った反応用50mLステンレス製オートクレーブのCO2導入ラインに直列に取り付け、NO2採取管の上からCO2で流し込んだ。この際、CO2の量が合計50.7gになった。この後、反応用オートクレーブを恒温層に入れ、容器内温18℃で5〜6MPaになり1時間撹拌反応した。反応後、氷浴で5℃以下に冷却した後ガスを放出し、常圧にして試料を取り出しデシケータに一晩保存した。得られたフィルムのFT−IR−ATR測定では、1715cm−1および1652cm−1にケト型およびエノール型由来の吸収が、2930cm−1付近の吸収強度に対してそれぞれ0.23倍および4.07倍の吸収強度のスペクトルが得られた(図1)。(実施例2) 実施例1において、用いたNO2量を0.53gとし、CO2の合計量を55.9gとしたこと以外は、実施例1と同様に、PVAフィルムの酸化反応を行った。得られたフィルムのFT−IR−ATR測定では、1715cm−1および1646cm−1にケト型およびエノール型由来の吸収が、2930cm−1付近の吸収強度に対してそれぞれ1.59倍および1.41倍の吸収強度のスペクトルが得られた。(実施例3) 実施例1において、用いたNO2量を0.45gとし、CO2の合計量を58.8gとしたこと以外は、実施例1と同様にPVAフィルムの酸化反応を行った。得られたフィルムのFT−IR−ATR測定では、1714cm−1および1651cm−1にケト型およびエノール型由来の吸収が、2930cm−1付近の吸収強度に対してそれぞれ0.76倍および2.29倍の吸収強度のスペクトルが得られた。(実施例4) PVA(Aldrich:Mowiol(登録商標)10−98、Mw〜61000、けん化度98.0〜98.8mol%、0.2g)を蒸留水(5g)に溶解し、キャスティングして厚さ約30μmのフィルムを作成し、これを90mgとり50mLステンレス製オートクレーブ中のフィルムホルダーに取り付け、CO2を2回置換後CO2を20g導入した。このオートクレーブを氷浴中で5℃以下まで冷却した。両端にバルブを付けた3mL容量のステンレス製のNO2採取管にNO2を0.108g精秤したものを、試料の入った反応用50mLステンレス製オートクレーブのCO2導入ラインに直列に取り付け、NO2採取管の上からCO2で流し込んだ。この際、CO2の量が合計38.27gになった。この後、反応用オートクレーブを恒温層に入れ、容器内温18℃で4.8〜5.3MPaになり1時間撹拌反応した。反応後、氷浴で5℃以下に冷却した後ガスを放出し、常圧にして試料を取り出しデシケータに一晩保存した。得られたフィルムのFT−IR−ATR測定では、1717cm−1および1651cm−1にケト型およびエノール型由来の吸収が、2930cm−1付近の吸収強度に対してそれぞれ1.16倍および2.16倍の吸収強度のスペクトルが得られた。UVスペクトルでは処理前のフィルムは波長200〜400nmの領域には吸収がなかったのに対して、酸化処理で得られたフィルムは209nmに極大吸収と280nm付近に吸収が現れた(図2)。(実施例5) PVA(関東化学:重合度500、けん化度86.5〜89.0mol%、0.2g)を蒸留水(5g)に溶解し、キャスティングして厚さ約30μmのフィルムを作成し、これを20×30mm(22.6mg)に切断し50mLステンレス製オートクレーブ中のフィルムホルダーに取り付け、CO2を2回置換後CO2を20g導入した。このオートクレーブを氷浴中で5℃以下まで冷却した。両端にバルブを付けた3mL容量のステンレス製のNO2採取管にNO2を0.60g精秤したものを、試料の入った反応用50mLステンレス製オートクレーブのCO2導入ラインに直列に取り付け、NO2採取管の上からCO2で流し込んだ。この際、CO2の量が合計59.0gになった。この後、反応用オートクレーブを恒温層に入れ、容器内温18℃で5〜6MPaになり1時間撹拌反応した。反応後、氷浴で5℃以下に冷却した後ガスを放出し、常圧にして試料を取り出しデシケータに一晩保存した。得られたフィルムのFT−IR−ATR測定では、1714cm−1および1632cm−1にケト型およびエノール型由来の吸収が、2930cm−1付近の吸収強度に対してそれぞれ1.07倍および1.29倍の吸収強度のスペクトルが得られた。<評価> 実施例1〜5において、測定された光学的特性より、PVAの酸化によるベータポリケトンの生成が確認された。2.金属イオンの吸着(抽出)実験(実施例6) 実施例2で得られたフィルムを用いて金属イオンの吸着実験を行った。 Pd(II)イオンを1mg/L含む0.1M硝酸酸性溶液10mLに、20℃、10分間フィルムを浸漬し、処理前後におけるPd(II)イオン濃度をICP発光分光分析装置で分析したところ、処理後においてPd(II)の100%が抽出されていた。(実施例7) 実施例3で得られたフィルムを用いた金属イオンの吸着実験を行った。 Pd(II)イオンを10mg/L含む0.1M硝酸酸性溶液10mLに、20℃、10分間フィルムを浸漬し、処理前後におけるPd(II)イオン濃度をICP発光分光分析装置で分析したところ、処理後においてPd(II)の87%が抽出されていた。(実施例8) 実施例7において、金属イオンとして、パラジウムに代えて、白金又はインジウムを含む溶液を調製したこと以外は実施例7と同様の試験を行ったところ、白金、インジウムの何れも抽出されなかった。<評価> 実施例6、7より、ベータポリケトンが、パラジウムに対して優れた抽出能を有することがわかる。 更に、実施例6、7と、実施例8との対比より、ベータポリケトンが、パラジウムに対して選択的な抽出能を発現できることがわかる。3.溶解度試験(実施例9) 実施例4で得られたフィルムを粉砕して得たベータポリケトンの粉末2mgを、下記表1に示す各種溶媒に添加し、下記表1に示す温度下で、0.5時間攪拌した。 その結果、ベータポリケトンが、表1に示す条件で、何れの溶媒にも溶解しないことが確認された。<評価> 実施例9の結果より、ベータポリケトンが、種々の溶媒に対して難溶であることがわかる。このことから、ベータポリケトンの機能を、種々の溶媒中において、安定に発揮し易いことがわかる。 ポリビニルアルコールを酸化することによりベータポリケトンを得ることを特徴とするベータポリケトンの製造方法。 前記ポリビニルアルコールを、酸化剤を用いて酸化することを特徴とする請求項1記載のベータポリケトンの製造方法。 前記酸化剤として、窒素酸化物を用いることを特徴とする請求項2記載のベータポリケトンの製造方法。 前記窒素酸化物として、二酸化窒素及び/又は四酸化二窒素を用いることを特徴とする請求項3記載のベータポリケトンの製造方法。 請求項1〜4の何れかに記載のベータポリケトンの製造方法により得られたことを特徴とするベータポリケトン。 ケト型及び/又はエノール型に由来するIR吸収を示すことを特徴とする請求項5記載のベータポリケトン。 前記IR吸収が、1710〜1725cm−1及び/又は1620〜1655cm−1に現れることを特徴とする請求項6記載のベータポリケトン。 下記(1)に表わされるオキソエチレン単位を複数有することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載のベータポリケトン。 ポリビニルアルコールを酸化することにより特定金属イオン抽出剤を得ることを特徴とする特定金属イオン抽出剤の製造方法。 前記ポリビニルアルコールを、酸化剤を用いて酸化することを特徴とする請求項9記載の特定金属イオン抽出剤の製造方法。 前記酸化剤として、窒素酸化物を用いることを特徴とする請求項10記載の特定金属イオン抽出剤の製造方法。 前記窒素酸化物として、二酸化窒素及び/又は四酸化二窒素を用いることを特徴とする請求項11記載の特定金属イオン抽出剤の製造方法。 請求項9〜12の何れかに記載の特定金属イオン抽出剤の製造方法により得られたことを特徴とする特定金属イオン抽出剤。 ケト型及び/又はエノール型に由来するIR吸収を示すことを特徴とする請求項13記載の特定金属イオン抽出剤。 前記IR吸収が、1710〜1725cm−1及び/又は1620〜1655cm−1に現れることを特徴とする請求項14記載の特定金属イオン抽出剤。 パラジウムイオンに対して抽出能を有することを特徴とする請求項13〜15の何れかに記載の特定金属イオン抽出剤。 【課題】反応物(原料)としてのPVAの新たな利用可能性を提供すること、新たな機能性材料を提供すること。【解決手段】 ポリビニルアルコールを酸化することによりベータポリケトンを得ることを特徴とするベータポリケトンの製造方法、及びこの製造方法により得られるベータポリケトン、ポリビニルアルコールを酸化することにより特定金属イオン抽出剤を得ることを特徴とする特定金属イオン抽出剤の製造方法、及びこの特定金属イオン抽出剤の製造方法により得られる特定金属イオン抽出剤によって解決される。【選択図】なし


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