タイトル: | 公開特許公報(A)_水蒸気の可視化方法 |
出願番号: | 2013176058 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 21/47 |
吉澤 知佐 JP 2015045540 公開特許公報(A) 20150312 2013176058 20130827 水蒸気の可視化方法 旭化成せんい株式会社 303046303 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 古賀 哲次 100087413 中村 和広 100108903 齋藤 都子 100142387 三間 俊介 100135895 吉澤 知佐 G01N 21/47 20060101AFI20150213BHJP JPG01N21/47 Z 5 OL 12 特許法第30条第2項適用申請有り 2014/15秋冬 ベンベルグR 機能素材展示会(開催日:平成25年8月21日〜8月23日) 2G059 2G059AA05 2G059BB08 2G059CC09 2G059DD15 2G059DD16 2G059FF01 2G059GG01 2G059HH02 2G059HH06 2G059KK04 2G059MM09 2G059MM10 本発明は、サイズ0.38nmの水1分子が複数会合した肉眼では見えない会合水分子(以下、水蒸気ともいう。)の吸収、透過、放出又は蒸発状態を可視化する方法に関する。会合水分子は、サイズ数十μm以下であると肉眼では見えないと言われている。 従来、衣服内、寝装内の熱移動特性を評価するために、人体皮膚温を模擬し、温熱板やサーマルマネキンを活用する等の方法が利用されている(非特許文献1参照)。 汗の蒸発も加味した熱・水分移動特性についても研究がなされており、皮膚の発汗状態を模擬し、発汗サーマルマネキンを活用する方法や、ろ紙と温熱板又は温熱板と微多孔膜や焼結板等を積層して模擬発汗皮膚とし、生地やろ紙の重量変化や、ヒーターの熱量変化から蒸発潜熱を含む熱・水分移動特性を推定するといった方法が提案されている(非特許文献2、3、4、特許文献1、2参照)。 しかしながら、潜熱移動は、顕熱移動の4倍程度の効果があるため(非特許文献5参照)、これらの技術はいずれも、人の恒常性に重要とされる不感蒸泄及び発汗作用を生地等の重量変化やヒーターの熱量から推し量るといった間接的な評価方法に過ぎない。 また、衣服内や寝装内の、気流による熱移動の効果を可視化するために、垂直方向に立てたヒーターと透明なフィルム板の間に煙幕をためて微粒子の流体をデジタルカメラで観察する方法も提案されている(非特許文献6参照)。 しかしながら、かかる方法においては、不感蒸泄や発汗作用による水分移動については勘案されていないし、フィルムを生地と見立てるため、素材の吸湿性や透過性が無視されている。 また、透明な媒質の中の、透明な媒体の移動については、屈折率が異なることを利用したシュリーレン装置、デジタルフォログラフィーを利用した位相差観察等によって、ガスの噴射、熱の移動、物質の溶解の状態なども可視化、観察方法が提案されているが、居住空間、衣服内、寝装内等、一般的な衣住環境に相当する温湿度において、僅かな水蒸気流を可視化することは現在不可能であるとされている。要するに、居住空間、衣服内、寝装内等、一般的な衣住環境において、水蒸気の吸収、透過、放出、滞留、蒸発等を可視化する技術は未だ確立されていない。特許第3633525号公報特許第4582134号公報衣環境の科学 建帛社 p35−39(2004年12月12日)衣環境の科学 建帛社 p43−45(2004年12月12日)着ごこちと科学 裳華房 p36−38(1996年5月25日)繊学誌p352−356 Vol.56 No.12(2000)日本家政学誌 p176−186 Vol.48 No.2(1997)J.Text.Mach.Soc.Japan Vol.57 No.4(2004)光アライアンス 2008.7 p50−51衣環境の科学 建帛社 p22−23(2004年12月12日) 前記した従来技術の状況に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、居住空間、衣服内、寝装内等、一般的な衣住環境において、肉眼では見えない会合水分子(水蒸気)の吸収、透過、放出、滞留、蒸発等の状態を可視化する方法を提供することである。 本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、以下の条件により、肉眼では見えない会合水分子(水蒸気)の吸収、透過、放出、滞留又は蒸発状態を可視化することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。 すなわち、本発明は以下の通りのものである。 [1]青色〜緑色レーザー光、及びビデオカメラを用いた散乱光観察により、肉眼では見えないサイズの会合水分子を可視化する方法。 [2]前記青色〜緑色レーザー光は、シート状レーザーである、前記[1]に記載の方法。 [3]前記シート状レーザーの波長は532nmである、前記[2]に記載の方法。 [4]前記ビデオカメラは、最低被写体照度0.1 lux以上の感度を有する高感度ビデオカメラである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。 [5]クリーン度がクラス10000以下の室内、及び温度10〜30℃相対湿度20〜60%の環境下で、繊維製品から放出される又は該繊維製品に吸収される肉眼では見えないサイズの会合水分子を、該繊維製品の温度よりも高い温度の熱源を用いて実施する、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。 本発明に係る方法は、肉眼では見えない会合水分子(水蒸気)の挙動を可視化することができるため、居住環境や衣環境の快適性研究において、特に人の体温調節反応に関与する空間の湿度変化や動き、繊維製品の吸湿、透過、放湿能力等を評価・解析するための手段として有効である。 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。 本発明は、青色〜緑色レーザー光、及びビデオカメラを用いた散乱光観察により、肉眼では見えないサイズの会合水分子を可視化する方法に関する。より詳しくは、本発明は、クリーン度がクラス10000以下の室内、及び温度10〜30℃相対湿度20〜60%の環境下で、繊維製品から放出される又は該繊維製品に吸収される肉眼では見えないサイズの会合水分子を、該繊維製品の温度よりも高い温度の熱源を用いて実施する、青色〜緑色レーザー光、及びビデオカメラを用いた散乱光観察により、肉眼では見えないサイズの会合水分子を可視化する方法に関する。 前記したように、会合水分子は、サイズ数十μm以下であると肉眼では見えないと言われている。本発明に係る方法で可視化するに適した会合水分子のサイズは、0.05μm以上50μm以下である。 会合水分子を可視化するためには、(会合した)水分子に光を照射し、その光の散乱を利用する。散乱光の強度は光の波長の4乗に反比例して大きくなるため、水分子の光の散乱には短い波長を有する光が適する。しかしながら、紫外線のような可視光領域よりも短い波長は、理論的には散乱は強いものの、観察者の生体、特に目への悪影響が懸念されるにも拘わらず、その光路や反射光が見えないため危険であり使用できない。従って、水分子を観察するためには、可視光であり且つ400nm以上600nm以下の青〜緑の光を用いることが好ましい。 また、水分子を可視化するための光源としては、スペクトルがブロードな一般のランプや発光ダイオードではなく、更に波長域が狭く、コヒーレント性が高く、且つ集光でき高強度が得られるレーザーを用いる。青色〜緑色レーザー、例えば、アルゴンガスレーザーやLD励起レーザー、中でも500nm〜550nmのグリーンレーザー、特にコンパクトで高強度が得られるグリーンLDレーザーが視認しやすいため、好ましい光源である。レーザー光源の中でも、グリーンレーザーは比視感度が高いことが知られている(非特許文献7)。 レーザーの出力は0.5W以上、より見えやすくするためには、1W以上5W以下まで高められることが好ましい。5Wを超えると取扱い性が危険である。レーザーの出力は、より好ましくは、1.5W以上2.5W以下である。 本発明に係る方法に使用するレーザー光としては、シート状に拡がるものを用いることが好ましい。厚みが0.3mm以上5mm以下に拡がるシート状の光であると、広い領域での水蒸気の様態を観察することができる。シートの角度は鉛直方向や水平方向など、観察者が任意に設定してよい。本発明に係る方法に使用するレーザー光は、好ましくは波長域が532nmの厚み1mmのシート状緑色レーザーである。 本発明に係る方法では、観察する環境は暗室内であることが好ましい。前記光源以外の光は用いず、また光源以外の光が観察領域に漏れ入ることがないよう、暗幕や黒い板等で覆い暗室とすることが好ましい。 試料から放出される肉眼では見えないサイズの会合水分子を定量的に観察するためには、一般のビデオカメラではなく、より感度の高いカメラ、好ましくは超高感度カメラを用いる。使用するカメラの最低被写体照度は、小さい散乱でも見えやすくするために、小さければ小さいほどよいが、目安として1.5ルクスは必須で、肉眼では見えない会合水分子を可視化するためには、0.1ルクス以下であることが好ましく、0.0001ルクス以下であることがより好ましい。 本発明に係る方法では、会合水分子を視認しやすく且つ定量的に観察することができるように、観察する環境にはダストを持ち込まない又は予め除去しておくことが好ましい。このためには、へパフィルターを設置したクリーンユニット又はクリーンルーム内で観察することが好ましい。本発明に係る方法では、観察する室内環境のクリーンユニット又はクリーンルームのレベルは、好ましくはクラス10,000以下、より好ましくはクラス1,000以下である。 会合水分子を視認しやすく且つ定量的に観察するためには、観察する対象に応じて、観察する環境の温湿度を調整することが好ましい。 居住環境や衣環境の快適性研究において、特に人の体温調節反応に関与する空間の湿度変化や動き、繊維製品の吸湿、透過、放湿能力等を評価するためには、観察する環境の温度は、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは10℃〜30℃、さらに好ましくは10℃〜25℃であり、観察する環境の相対湿度は、好ましくは20%〜80%、より好ましくは20%〜60%、さらに好ましくは20%〜40%である。この範囲であると、水分蒸発が速すぎることもなく、また、繊維製品の吸湿特性が反映されやすいためである。温湿度の調整には、観察環境の規模に従い、ヒーター、除湿器を組み合わせればよい。本発明に係る方法においては、繊維製品を加熱することにより、該繊維製品から放出される肉眼では見えないサイズの会合水分子を可視化することができ、また、該繊維製品に吸収される肉眼では見えないサイズの会合水分子を可視化することができる。 繊維製品、例えば、生地、中わた、わた/生地積層品、不織布、おむつや衛生用品等の、吸湿、透過、放湿特性が異なる繊維製品の定性・定量評価をするためには、不感蒸泄、汗の蒸散作用を模擬し、水分子を緩やかに蒸発させための装置、例えば、バット中の液体水を皮膚温や体温に近い30℃〜40℃に保つ装置、液体水で濡らした布、セロハン、ろ紙等を同じく30℃〜40℃に保つ装置等(この装置を、発汗モデルと定義する)を活用することができる。 発汗モデルにおいて、ろ紙を使う場合、100cm2のろ紙に付与する水量は2ml以上5ml以下であることが好ましい。なぜなら、この水量は、ろ紙表面温を40℃に設定するためにヒーター温を50℃に設定した場合、10分以内で蒸発するが、1分〜2分間の吸湿・透過・放湿等の評価は安定して実施できるからである。付与水量を増加しても、蒸発しうる量は大きく変化しない。なお、ヒトの皮膚からの水分蒸発量は、暑熱下でも最大でも90g/m2・時であり、この有効発汗を換算すると3ml/100cm2・10分となるため、100cm2のろ紙に付与する水量2ml以上5ml以下は、妥当な量といえる(非特許文献8)。これ以上の発汗は無効発汗として流れ落ちる。 発汗モデルに生地を使う場合は、その生地の目付、厚みによって付与する水分量を適宜調整してもよいが、目付の200%以内であることが好ましい。 発汗モデルにおいて、水分子を緩やかに蒸発させている状態に、吸湿、透過、放湿能力が異なる生地、中わた、わた/生地積層品、不織布、おむつや衛生用品等の繊維製品を静かにかざす、あるいは、反対に、予め繊維製品を配置した状態で、緩やかに蒸発させた水分子を当てると、水蒸気の移動が生じるので、本発明に係る可視化方法によって、かかる水蒸気の移動、すなわち、気体状の会合した水分子の吸収、透過、放出、滞留、蒸発等の状態を観察することができる。 繊維製品における水蒸気の吸収、透過、放出、蒸発を定性又は定量的に評価するために本発明に係る方法を使用する場合、観察する外環境の相対湿度は70%以下、より好ましくは60%以下にすることが好ましい。70%を超えると、発汗モデルから周辺環境へ、水分子が移動しにくくなるため、素材特性が反映されにくい。滞留をみる場合は、この限りではない。 繊維製品の素材特性を評価する際や、繊維製品の水分子吸収、透過、放湿様態を観察する場合には、繊維製品と発汗モデルの距離を0.5cm〜5.0cm、より好ましくは0.5cm〜3.0cmに離すことが好ましく、更に2.0cmであるとコントラストが付きやすいため観察しやすい。水分子の透過、放湿を観察したい場合、つまり繊維製品の上方を観察する場合は、繊維製品と発汗モデルは0.5cm以下に近づけると、繊維製品と発汗モデル間の対流が起きにくいため観察しやすい。水分子の蒸発を観察したい場合には、発汗モデルと接触させてもよいし、繊維製品に予め一定水分を付与しておき、30℃〜50℃の乾熱ヒーターと接触させるのでもよい。 更に、ヒーター及び発汗モデルが、サーマルマネキンや、特許文献1に記載される発汗人体模型型装置のように立体的であれば、より実着用に近い評価ができるため、好ましい。 以下、本発明に係る方法を実施する際の光源種、カメラ種、環境(明るさ、クリーン特性、温度、湿度)の組み合わせ、及び発汗モデルの最適な使用方法を、具体的に説明する。[実施例1] チャンバー内を、暗幕で覆い、外部からの入光と光の反射を遮った約20m3の観察室を設置した。この室内は、予めヒーターと加湿器によって20℃20%RHに、更にヘパフィルターを用いてクラス10000のクリーン度に調整しておいた。室内中央に400cm2の、50℃均一に熱した温熱ヒーターを用意し、その上に定性ろ紙(ADVANTEC社製No.2)を置き、4ml/100cm2の量で蒸留水を与えて、緩やかな蒸発環境を作った。ただし、観察を開始する前に、空調は電源をOFFし空気流の影響を避けた。 このヒーター上に下記の光源種を照射し、また、下記のカメラ種を用いて、散乱光を観察することにより、肉眼では見えない水分子の動きが可視化できるかについて検討した。画像は最高画質で1分間録画保存し、解析を行った。なお、下記光源種4のみ、光がシート状に拡がるものであった。なお、シート面は、鉛直方向とした。[光源種](光源1)波長域が410〜530、ピークが470nmの青色発光ダイオード(光源2)波長域が450〜600、ピークが525nmの緑色発光ダイオード(光源3)波長域が532nmの緑色レーザー(光源4)波長域が532nmの厚み1mmのシート状緑色レーザー(光源5)波長域が488nmの青色レーザー(光源6)波長域が1064nmの赤外レーザー(光源7)波長域が633nmの赤色レーザー(光源8)波長域が350〜800nmとブロードな蛍光灯(光源9)波長域が350〜840nm、ピーク560nm〜660nmとブロードな白熱球[カメラ種](カメラ1)最低被写体照度が0.0001 luxの超高感度ビデオカメラ(カメラ2)最低被写体照度が0.1 luxの高感度ビデオカメラ(カメラ3)最低被写体照度が1.5 luxのビデオカメラ 最もはっきり見えたものから順に、以下の評価基準で5段階に評価した。 5:最もよく見えた 4:よく見えた 3:あまり見えなかった 2:ほとんど見えなかった 1:全く見えなかった これらの結果を以下の表1に示す。 光源3、光源4、光源5と、カメラ1、カメラ2との組み合わせのみ、水分子の蒸発様態が可視化することができた。それ以外はあまり見えないことがわかった。 最も鮮明に、且つ5μm以下の水分子をとらえられたのは、光源4とカメラ1の組み合わせであった。[実施例2] 次に、観察に適した環境について説明する。 チャンバー内を、暗幕で覆い、外部からの入光と光の反射を遮った約20m3の観察室(暗室)を用意した。この暗室内を、ヒーターと加湿器によって予め20℃20%RHに調整し、更に各種ヘパフィルターを用いてクリーン度について下記のクリーン条件に変更した。室内中央に400cm2の、50℃均一に熱した温熱ヒーターを用意し、その上に定性ろ紙(ADVANTEC社製No.2)を置き、4ml/100cm2の量で蒸留水を与えて、緩やかな蒸発環境を作った。ただし、観察を開始する前に、空調は電源をOFFし空気流の影響を避けた。[クリーン条件](1)クラス1000(2)クラス10000(3)クラス50000(4)未制御 このヒーター上に(光源4)をかざし、(カメラ1)にて、肉眼では見えない水分子の動きが可視化できるかについて検討した。画像は最高画質で1分間録画保存し、解析を行った。 最もよく見えたものから順に、以下の評価基準で5段階に評価した。結果を表2に示す。 5:ダストが全く見えず、水分子が大変よく見えた 4:ダストがほとんど見えず、水分子が大変よく見えた 3:ダストがあまり見えず、水分子がなんとか見えた 2:ダストが多く、水分子と区別がつきにくかった 1:ダストが多すぎ、水分子かどうか全く区別がつかなかった クリーン条件(1)と(2)のみ,水分子の蒸発様態がよく観察することができた。それ以外は適しないことがわかった。[実施例3] 次に、観察に適した温湿度条件について説明する。 チャンバー内を、暗幕で覆い、外部からの入光と光の反射を遮った約20m3の観察室(暗室)を設置した。暗室内は、ヘパフィルターを用い、予めクリーン度を1000に設定した。室内中央に400cm2の、50℃均一に熱した温熱ヒーターを用意し、その上に定性ろ紙(ADVANTEC社製No.2)を置き、4ml/100cm2の量で蒸留水を与えて、緩やかな蒸発環境を作った。ただし、観察を開始する前に、空調は電源をOFFし空気流の影響を避けた。 このヒーター上に(光源4)と(カメラ1)で、下記温湿度条件下で肉眼では見えない水分子の動きが可視化できるかについて検討した。画像は最高画質で1分間録画保存し、解析を行った。[温度条件](温度条件1)10℃(温度条件2)20℃(温度条件3)25℃(温度条件4)30℃(温度条件5)35℃[相対湿度条件](湿度条件1)20%(湿度条件2)40%(湿度条件3)60%(湿度条件4)80%(湿度条件5)90% 最もよく見えたものから順に、以下の評価基準で5段階に評価した。結果を表3に示す。 5:水分子が大変よく見えた 4:水分子が見えた 3:水分子がなんとか見えた 2:水分子がほとんど見えなかった 1:水分子が全く見えなかった (温度条件1、2、3、4)と(湿度条件1、2、3)との組み合わせで蒸発状態が観察できた。ただし、10℃×20%RHの環境は、チャンバーの能力限界外のため、設定できなかった。 緩やかな蒸発環境を作るために好ましいヒーター温度−環境温度の差は、少なくとも20℃であることがわかった。[実施例4] 次に、繊維製品の吸湿、透過、放湿特性を定性・定量評価をするための発汗モデルについて具体例を説明する。 チャンバー内を、暗幕で覆い、外部からの入光と光の反射を遮った約20m3の観察室(暗室)で行った。暗室内は、ヒーターと加湿器によって予め20℃20%RHに、更にヘパフィルターを用いてクラス1000のクリーン度に調整し、(光源4)と(カメラ1)を用いて実験を行った。 下記発汗モデル1〜8を以下のように作製した。(モデル1〜4)20cm×20cm、深さ7cmのステンレスバスに水又は湯を5cmまで注ぎ、水温はそれぞれの条件にて一定にし、1時間放置した。(モデル5〜8)20cm×20cm、厚み5cmの電熱ヒーター(天板は、熱伝導性のよい銅板を使用)に、定性ろ紙をおき(ADVANNTEC社製No.2)を置き、4ml/100cm2の量で蒸留水を与えて、緩やかな蒸発環境を作った。ヒーター温はそれぞれの条件にて一定にした。[発汗モデル](モデル1)40℃に保った水を入れたバット(モデル2)37℃に保った水を入れたバット(モデル3)30℃に保った水を入れたバット(モデル4)25℃に保った水を入れたバット(モデル5)4ml/100cm2の水分を付与したろ紙の表面温を40℃にするために50℃に設定したヒーター(モデル6)4ml/100cm2の水分を付与したろ紙の表面温を35℃にするために45℃に設定したヒーター(モデル7)4ml/100cm2の水分を付与したろ紙の表面温を30℃にするために40℃に設定したヒーター(モデル8)4ml/100cm2の水分を付与したろ紙の表面温を25℃にするために35℃に設定したヒーター これらの熱源に、厚み0.3mm、25cm×25cmのアクリル板に、20cm×20cmの穴をあけてできた生地枠に、日本規格協会の標準添付布をたるみが無いように貼り、上記の発汗モデルに上方から静かにかざし、肉眼では見えない水分子の吸収、透過、放湿の様子が可視化できるかについて(光源4)(カメラ1)を用いて検討を行った。画像は最高画質で1分間録画保存し、解析を行った。ただし、観察を開始する前に、空調は電源をOFFし空気流の影響を避けた。生地と発汗モデル面の距離は2cmとした。 標準添付布として、吸湿性が高い(公定水分率11%)キュプラ、吸湿性が低いポリエステル(同0.4%)を用いた。吸収・透過、吸収・透過せず滞留する水分子が、よく区別できたものから順に、以下の評価基準で5段階に評価した。結果を以下の表4に示す。 5:水分子の吸収・透過、滞留が大変よく見えた 4:水分子の吸収・透過、滞留が見えた 3:水分子の吸収・透過、滞留がなんとか見えた 2:水分子の吸収・透過、滞留がほとんど見えなかった 1:水分子の吸収・透過、滞留が全く見えなかった (モデル1〜2)と(モデル5〜7)が適していた。つまり、素材の吸湿特性差を明確することができた。また、標準添付布を静かにかざしてから20秒後の、標準添付布と発汗モデル面間の空間温湿度を、温湿度センサーにて測定したところ、キュプラが28℃60%RH、ポリエステルが30℃95%RHであり、可視化した観察結果と一致していた。 繊維製品と発汗モデル面の距離を0.5cmより近づけた場合、観察域が小さすぎて見えにくかった。また5.0cmより離して観察したが、対流が起きるためか、吸湿が見えにくくなった。繊維製品と発汗モデル面の距離は、1.0cm以上2.0cm以下が最も観察しやすかった。[実施例5] 繊維製品の蒸発特性を定性・定量評価をするための他の発汗モデルについて具体例を説明する。チャンバー内を、暗幕で覆い、外部からの入光と光の反射を遮った約20m3の観察室(暗室)で行った。暗室内は、ヒーターと加湿器によって予め20℃20%RHに、更にヘパフィルターを用いてクラス1000のクリーン度に調整し、(光源4)と(カメラ1)を用いて実験を行った。 表面温を40℃に設定したヒーターを用意した。予め重量を150%に調整した繊維製品である標準添付布を枠にたるみが無いように貼り、上記のヒーターに上方から静かに近づけ、生地と発汗モデル面の距離、すなわち、ヒーターとの距離を以下のように変えて、肉眼では見えない、繊維製品からの水分子蒸発の様子が可視化できるかについて(光源4)(カメラ1)を用いて検討を行った。画像は最高画質で1分間録画保存し、解析を行った。ただし、観察を開始する前に、空調は電源をOFFし空気流の影響を避けた。前述の標準添付布、中でも速乾性が低い綿(公定水分率8.5%)、速乾性が低いポリエステル(同0.4%)を用いた。蒸発する水分子が、よく見えたものから順に、以下の評価基準で5段階に評価した。結果を以下の表5に示す。[ヒーターとの距離](距離1)繊維製品とヒーターの距離0cm(距離2)繊維製品とヒーターの距離0.5cm(距離3)繊維製品とヒーターの距離1.0cm 5:水分子の蒸発が大変よく見えた 4:水分子の蒸発が見えた 3:水分子の蒸発がなんとか見えた 2:水分子の蒸発がほとんど見えなかった 1:水分子の蒸発が全く見えなかった (距離1)のように、熱源と接触させると、繊維製品(素材)の乾燥速度差を明確することができた。 また、標準添付布の重量を水分で150%に調整したものの乾燥速度を測定したが、綿標準添付布が8.2分、ポリエステル標準添付布が2.2分となり、可視化した観察結果を一致していた。 本発明に係る方法は、肉眼では見えない会合水分子(水蒸気)の挙動を可視化することができるため、居住環境や衣環境の快適性研究において、特に人の体温調節反応に関与する空間の湿度変化や動き、繊維製品の吸湿・透過・放湿能力等を評価・解析するための手段として好適に利用可能である。 青色〜緑色レーザー光、及びビデオカメラを用いた散乱光観察により、肉眼では見えないサイズの会合水分子を可視化する方法。 前記青色〜緑色レーザー光は、シート状レーザーである、請求項1に記載の方法。 前記シート状レーザーの波長は532nmである、請求項2に記載の方法。 前記ビデオカメラは、最低被写体照度0.1 lux以上の感度を有する高感度ビデオカメラである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 クリーン度がクラス10000以下の室内、及び温度10〜30℃相対湿度20〜60%の環境下で、繊維製品から放出される又は該繊維製品に吸収される肉眼では見えないサイズの会合水分子を、該繊維製品の温度よりも高い温度の熱源を用いて実施する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 【課題】居住空間、衣服内、寝装内等、一般的な衣住環境において、肉眼では見えない会合水分子(水蒸気)の吸収、透過、放出、滞留、蒸発等の状態を可視化する方法の提供。【解決手段】青色〜緑色レーザー光、及びビデオカメラを用いた散乱光観察により、肉眼では見えないサイズの会合水分子を可視化する方法。より詳しくは、クリーン度がクラス10000以下の室内、及び温度10〜30℃相対湿度20〜60%の環境下で、繊維製品から放出される又は該繊維製品に吸収される肉眼では見えないサイズの会合水分子を、該繊維製品の温度よりも高い温度の熱源を用いて実施する、青色〜緑色レーザー光、及びビデオカメラを用いた散乱光観察により、肉眼では見えないサイズの会合水分子を可視化する方法。【選択図】なし