タイトル: | 公開特許公報(A)_石英中のジルコニウム分析法 |
出願番号: | 2013172488 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 31/00 |
本正 孝也 岡 秀行 JP 2015040789 公開特許公報(A) 20150302 2013172488 20130822 石英中のジルコニウム分析法 株式会社 東ソー分析センター 507130912 水野 勝文 100087398 岸田 正行 100067541 高野 弘晋 100103506 本正 孝也 岡 秀行 G01N 31/00 20060101AFI20150203BHJP JPG01N31/00 TG01N31/00 Y 2 OL 6 2G042 2G042AA01 2G042BC04 2G042CA03 2G042CA04 2G042CB06 2G042EA01 2G042FA01 2G042FA02 2G042FB02 本発明は石英ガラスまたは石英粉に含有されるジルコニウムを定量する分析方法に関するものである。 金属やセラミックス、鉱石などの無機試料は一般的に固体であることが多く、これら固体無機試料中の微量金属成分の濃度を測定するには、難溶解性である固体試料をあらかじめ処理(試料分解)して、測定法に適した溶液状態にする必要がある。 難溶性固体無機試料の分解法は、大別して溶解法と融解法があり、溶解法は溶媒に試料を溶かす操作であり、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)容器を用いる加圧酸分解法は代表的な溶解法の一つである。加圧下で酸に分解する加圧酸分解は、密閉容器内で加熱するため、試料を短時間で分解でき揮発成分の損失や汚染混入が抑制できる溶解法として知られている。融解法は試料を試薬(融剤)と混合して高温加熱し、溶融物を水や酸に可溶な状態にする手法である。いずれの試料分解法も、分解によって試料を汚染せずに、また定量元素を揮散することなく測定まで行うことが重要である。 石英などのシリカを主な構成成分とするケイ酸塩化合物の場合、含有される不純物元素の濃度を測定するには、試料をフッ化水素酸等で分解溶解して、溶解液に含まれる元素を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)等により定量することが一般に行われている。特開1997−257669公報 加圧酸分解により試料を溶解する手法は、特にケイ酸塩化合物中の成分分析法として従来からよく用いられているが、ジルコニウムは容易に分解できないことから測定誤差を与える問題点があった。これは、ケイ酸塩中に含有されるジルコニウムは、その形態によって試料分解時に全量溶解しないためと考えられる。 本発明が解決しようとする課題は、石英中に含有されるジルコニウムの形態による測定誤差を与えない石英中のジルコニウムの分析方法を提供することである。 本発明は、石英ガラスまたは石英ガラス製造用の石英粉を全て溶解するのに必要なフッ化水素酸またはフッ化水素酸と硫酸の混酸で石英ガラスまたは石英粉を加熱溶解した後、蒸発乾固し、得られた乾固物に炭酸アルカリ金属塩およびホウ酸を添加して加熱融解し、得られた溶融物を無機酸水溶液で溶解した溶液中のジルコニウムを定量分析することを特徴とする石英中のジルコニウム分析方法に関するものである。 本発明により、石英中に含まれるジルコニウムを正確に定量することが可能となり、含有するジルコニウムの形態が測定濃度へ影響するという問題を解決し、よって、石英中に含有するジルコニウムの形態による測定誤差を与えない分析方法を提供することができる。 以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。本発明者らは、通常の酸溶解法で容易に分解できない試料の分解法として、以下の分析方法を提供する。 すなわち、本発明の石英中のジルコニウムの分析方法は、濃度35wt%以上のフッ化水素酸または濃度35wt%以上のフッ化水素酸と濃度96wt%以上の硫酸の混酸で石英を加熱溶解した後、この溶解液を蒸発乾固し、得られた乾固物に炭酸アルカリ金属塩およびホウ酸を添加して加熱融解し、得られた溶融物を無機酸水溶液で溶解した溶液中のジルコニウムを定量分析することを特徴とする。なお、加熱溶解後の液量を減らし蒸発乾固を容易にするため、用いるフッ化水素酸及び硫酸は、各々35wt%以上及び96wt%以上の濃度を用いる。 石英の分解溶液化は、石英にフッ化水素酸またはフッ化水素酸と硫酸の混酸を加えて、加圧酸分解法により100℃以上に加熱して行う。具体的には、例えば、濃度35wt%以上のフッ化水素酸または濃度35wt%以上のフッ化水素酸と濃度96wt%以上の硫酸が体積比で12:0.5〜12:2、好ましくは12:1の混酸で石英を加熱溶解する。 溶解液を蒸発乾固し得られた乾固物は、炭酸アルカリ金属塩およびホウ酸を加え、加熱して融解させる。融剤として用いる炭酸アルカリ金属塩およびホウ酸の組成比は、例えば、具体的には無水炭酸ナトリウムとホウ酸の重量比で7:2〜7:4、好ましくは7:3であり、試料に対する添加量は重量比でそれぞれ試料と融剤が3:0.5〜3:2、好ましくは3:1となるように添加する。融解は、白金製の容器内で800℃以上に加熱して溶融させる。 無機酸水溶液は、例えば36wt%塩酸5mlを加えてアルカリ融解した溶解物を溶解する。溶解を進めるため沸騰しない程度に加熱することが好ましい。 本発明では、石英を溶解したフッ化水素酸溶解液を加熱して石英の主成分であるケイ酸分の大部分をケイフッ化水素酸(ヘキサフルオロケイ酸)やフッ化ケイ素として揮散させるので、試料中のケイ素成分が除去されて測定時のバックグラウンドの影響が少なくなり、ジルコニウムの定量精度を高くすることが可能である。 蒸発乾固し得られた乾固物は、白金皿や白金るつぼ中で試料と融剤を混合し高温に加熱・融解する融解法によって、水や酸に可溶な状態に変化させる。ケイ酸塩は炭酸ナトリウム、アルミナやジルコニアは炭酸ナトリウムや硫酸水素カリウムと対象試料によって使用する融剤は異なる。 本発明の分析方法は、融解法として融剤に炭酸アルカリ金属塩の炭酸ナトリウムとホウ酸を用いた。炭酸ナトリウムにホウ酸を加えて用いると、炭酸ナトリウムのみの場合よりも融点が下がって800℃での融解が容易になる。 炭酸アルカリ金属塩およびホウ酸を添加して加熱融解した溶融物を溶解する無機酸水溶液の無機酸としては、例えば塩酸や硝酸等を挙げることができる。 無機酸水溶液の濃度は2wt%以上が好ましい。無機酸水溶液の濃度が2wt%未満では、融剤による溶融物をイオン化するのに十分な酸濃度が得られず、無機酸により完全に溶解することができないため、好ましくない。 天然石英粉に含まれるジルコニウムの形態にはジルコン(ZrSiO4)とジルコニア(ZrO2)があり、加圧酸分解法によりジルコニアは比較的容易に溶解するが、ジルコンは溶解不可能なため、加圧酸分解法で得られるジルコニアの定量値は低い。これは、石英粉に含まれるジルコニウムの形態によって測定値が変化することを示しており、すなわち天然石英粉中のジルコニウムを精度良く定量するには、ジルコンを加熱分解するアルカリ融解が必須である。 本発明の対象である石英ガラスまたは石英ガラス製造用の石英粉に含有されるジルコニウムを分析した例が、特許文献1に記載されている。しかし、融剤にアルカリ金属の無水塩である四ホウ酸ナトリウムを用いてアルカリ融解する特許文献1の分析方法では、フッ化水素酸と他の無機酸の混酸で分解した液の蒸発乾固物をバーナーを用いて800℃以上で加熱融解することが困難であり、また加熱融解物を無機酸水溶液または純水で溶解した際、室温で塩が析出し、その後の誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)による定量が不可能である。 本発明による、融剤に炭酸ナトリウムなどの炭酸アルカリ金属塩とホウ酸を用いる融解法では、ジルコニア及びジルコンともに溶解可能であるので、ジルコニウムの形態による定量値への影響はなく、分解溶液化した試料中のジルコニウムを正確に定量できる。 本発明におけるジルコニウムの定量分析法としては、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)などをあげることができる。 以下の実施例により、具体的に本願発明を説明するが、実施例によって本願発明は何等限定されるものでない。実施例1 上記に示した分析手順に従い、石英粉3gを白金ルツボ(分解器)に入れ、40wt%フッ化水素酸12ml、96wt%硫酸1mlを加え、分解器を密閉し150℃で15時間加熱して溶解させた。この溶解液を加熱して揮発分を揮散させ、乾固した残留物を得た。この残留物に無水炭酸ナトリウム0.7g、ホウ酸0.3gを加え、バーナーで800℃以上に加熱し融解した。溶解物に超純水5ml、36wt%塩酸5mlを加え加温して内容物を溶解し、25mlに定容希釈した。この試料液を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)によって液中のジルコニウム濃度を測定した。結果を表1に示した。比較例1 石英粉3gを加圧酸分解用ポリテトラフルオロエチレン製容器に採り、40wt%フッ化水素酸13ml、96wt%硫酸1mlを加え、密閉し150℃で12時間加熱して溶解させた。この溶解液を白金皿に取り硫酸0.2mlを加え、加熱して揮発分を揮散させ、乾固した残留物を得た。この残留物に60wt%硝酸1ml、超純水10mlを加え加熱して溶解した後、溶解物を25mlに定容希釈した。この試料液を発光分光装置(ICP−AES)によって液中のジルコニウム濃度を測定した。結果を表1に示した。 表1の結果に示すように、従来の加圧酸分解法によるジルコニウム濃度の定量値は、本発明の方法である融解法に比べて大幅に低い値を示した。また、天然石英粉の精製によるジルコニウム元素の減少は加圧酸分解法では確認されなかったが、本方法では確認することができる。 本発明により、石英中に含まれるジルコニウムを正確に定量することが可能となり、ジルコニウムの形態による測定誤差を与えない分析方法が提供された。石英ガラスまたは石英ガラス製造用の石英粉を全て溶解するのに必要なフッ化水素酸またはフッ化水素酸と硫酸の混酸で石英ガラスまたは石英粉を加熱溶解した後、蒸発乾固し、得られた乾固物に炭酸アルカリ金属塩およびホウ酸を添加して加熱融解し、得られた溶融物を無機酸水溶液で溶解した溶液中のジルコニウムを定量分析することを特徴とする石英中のジルコニウム分析方法。濃度35wt%以上のフッ化水素酸または濃度35wt%以上のフッ化水素酸と濃度96wt%以上の硫酸を用いて加熱溶解することを特徴とする請求項1に記載の分析方法。 【課題】石英を確実に試料分解して溶液状態にまで変換し、含有されるジルコニウムを正確に定量する方法を提供する。【解決手段】石英ガラスまたは石英ガラス製造用の石英粉を全て溶解するのに必要なフッ化水素酸またはフッ化水素酸と硫酸の混酸で石英ガラスまたは石英粉を加熱溶解した後、蒸発乾固し、得られた乾固物に炭酸アルカリ金属塩およびホウ酸を添加して加熱融解し、得られた溶融物を無機酸水溶液で溶解した溶液中のジルコニウムを定量分析することを特徴とする石英中のジルコニウム分析方法。【選択図】なし