生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_飼料添加物および飼料
出願番号:2013163629
年次:2015
IPC分類:A61K 36/18,A23K 1/16,A23K 1/18,A61K 31/235,A61K 31/05,A61P 33/02,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

望月 正己 伊藤 真治 大岩 聖佳 長島 協 JP 2015030717 公開特許公報(A) 20150216 2013163629 20130806 飼料添加物および飼料 出光興産株式会社 000183646 川口 嘉之 100100549 佐貫 伸一 100126505 望月 正己 伊藤 真治 大岩 聖佳 長島 協 A61K 36/18 20060101AFI20150120BHJP A23K 1/16 20060101ALI20150120BHJP A23K 1/18 20060101ALI20150120BHJP A61K 31/235 20060101ALI20150120BHJP A61K 31/05 20060101ALI20150120BHJP A61P 33/02 20060101ALI20150120BHJP C12N 15/09 20060101ALN20150120BHJP JPA61K35/78 CA23K1/16 304CA23K1/18 BA23K1/18 ZA23K1/18 DA23K1/18 AA61K31/235A61K31/05A61P33/02C12N15/00 A 10 OL 13 2B005 2B150 4B024 4C088 4C206 2B005AA05 2B005BA01 2B005BA05 2B005DA01 2B005DA05 2B005EA01 2B005EA02 2B150AA01 2B150AA02 2B150AA03 2B150AA05 2B150AA06 2B150AB10 2B150AB11 2B150DD42 2B150DD56 2B150DD57 4B024AA10 4B024CA11 4C088AB21 4C088AC04 4C088CA02 4C088CA03 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZB38 4C206AA01 4C206AA02 4C206CA17 4C206CA19 4C206DA19 4C206KA01 4C206KA18 4C206MA01 4C206MA02 4C206MA03 4C206MA04 4C206MA72 4C206NA14 4C206ZB38 本発明は、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物を含有する、飼料添加剤、飼料、これらを用いた反芻動物、豚、家禽、馬、ペット(犬、猫)、ヒトなどの飼育方法、並びにクリプトスポリジウム症の防除剤に関する。 クリプトスポリジウムは、クリプトスポリジウム科クリプトスポリジウム属の原虫であり、ヒトを含む脊椎動物の消化管などに寄生する。種と宿主の組み合わせ次第ではクリプトスポリジウム症を引き起こし、死に至る場合もある。環境中ではオーシスト(接合子嚢)となっており、環境条件に対して耐性が高い。大きさは3μmから8μm程度まで種によって異なるが、類円形・楕円形をしており厚い壁に包まれている。通常のコクシジウム類とは異なり、オーシスト中にスポロシスト(胞子、芽胞をもつ嚢子)がなく直接4個のスポロゾイト(種虫、sporozoite)と残体 (residual body) が存在する。 クリプトスポリジウムの宿主はヒトを含む幅広い脊椎動物であり、世界中に分布している。鳥類では家禽や愛玩鳥類から報告があり、病原性を示す場合も多い。哺乳類からは野生・家畜を問わず幅広い分類群にわたって報告があり蔓延しており、不顕性の場合もあればクリプトスポリジウム症を発症する場合もある。 クリプトスポリジウム属はアピコンプレックス門に属し、伝統的にコクシジウム類であると考えられてきたが、分子系統解析により分類学的に異なることが明らかになっている。牛の場合コクシジウムの感染時期は21日齢以降であるのに対し、クリプトスポリジウムが牛に感染する時期は7日齢から21日齢である。 クリプトスポリジウム属の感染は宿主にひどい下痢を起こし、早期に発見し治療しないと死に至る。しかし、クリプトスポリジウムを治療する効果的な薬剤は、まだ開発されておらず、下痢による脱水と血液成分の異常を改善するために早期に点滴治療をすることが大事である。 一方、コクシジウム属の感染は多数のオーシストやメロゾイトの出芽による腸上皮の死滅を原因とする血便が含まれる。壊死組織が盲腸に詰まることにより盲腸の壊死が起こる。薬物は有効であるが、食肉処理された食肉に残留する薬物による薬剤耐性の出現の可能性がある。コクシジウム属については、ワクチンが開発されているが、1種類のワクチンは1種の属にしか効果を示さない。成功事例では、孵化した雛へのワクチン接種により、生涯にわたり免疫が持続した。仔牛の感染時期は21日齢以降である。 分子系統解析によれば、クリプトスポリジウムは胃に感染するオーシストがやや大型のものと、腸に感染するやや小型のものとに大別できることがわかっており、現在のところ次にあげる19種が認められている。 大型種のオーシストはおよそ7×5μm程度以上であり、感染部位は胃である。Cryptosporidium murisの主な宿主はげっ歯類であるがヒトやラクダにも感染する。C. andersoniの主な宿主はウシである。C. galliは様々な鳥類に寄生する。C. serpentisはヘビ、トカゲに寄生する。オーシストは6×5μmと中間的だが、分子系統解析では大型種に近いことがわかっている。C. fragileはカエルから見出された。C. molnariは魚類に寄生する。この種はオーシストが5μm程度の球形と小さく、また分子系統解析が行われていないため他の大型種と近縁かどうかは不明である。感染部位も主に胃だが、腸にも認められる。 小型種のオーシストは5×4.5μm程度で、感染部位は基本的には小腸である。C. parvumの主な宿主は反芻動物とヒトであり、感染部位は小腸の絨毛である。C. hominisの主な宿主はヒト、サルである。C. wrairi は実験動物のモルモットから見出される小型種である。C. felisの主な宿主はネコであるが、ヒトやウシにも感染する。C. canisの主な宿主はイヌ科動物であるがヒトにも感染する。C. suisの主な宿主はブタであるがヒトにも感染する。C. bovisの主な宿主は離乳後の仔牛である。C. ryanaeの主な宿主はウシである。オーシストが3.2×3.7μmと非常に小さい。C. fayeriは有袋類から見出された。C. macropodumは有袋類から見出された。C. meleagridisの主な宿主はシチメンチョウだが、オウムやヒトにも感染する。C. baileyiは鳥類に比較的広く寄生する。感染部位は腸および呼吸器である。オーシストは6×4.5μm程度とやや小型で細長い。C. varaniiはトカゲなどに寄生する。感染部位は腸および総排出腔である。 環境では4〜6μmの大きさのオーシストを呈しており増殖することはないが、ひとたびヒト、イヌ、ネコ、ウシ等の哺乳類の体内に取り込まれると、オーシストから放出されたスポロゾイトが消化器系、特に小腸に寄生して増殖する。増殖において一部は再びオーシストを形成し、糞便とともに環境中に放出される。 人畜共通感染症のため、水源等が汚染されるとしばしば飲料水や水道水に混入して集団的な下痢症状を発生させることがある。下痢は水様便を呈し、3L/日、回数にして数十回/日に達する。現在、特効薬は無い。旅行者下痢症の一因でもある。AIDSなど免疫不全症を発症している患者の場合、死に至ることもある。上水道の残留塩素など塩素による消毒ではオーシストを不活化させることができないため、先進国においてもしばしば集団感染が報告されている。有名な事例として、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー市(1993年)や埼玉県越生町(1996年)の感染事故があげられる。 このため、クリプトスポリジウム症の防除剤が求められているが、現在のところ、有効なクリプトスポリジウム症防除剤は存在しない。 カシューナッツ殻油及び/又はその主成分であるアナカルド酸類を有効成分とした、アイメリア科アイメリア属に属する原虫によるコクシジウム症軽減剤(特許文献1−3)が提案されているが、クリプトスポリジウム科クリプトスポリジウム属は、アイメリア科アイメリア属に属するコクシジウム類から、分類学上遠くに位置している。従って、カシューナッツ殻油が、クリプトスポリジウム属原虫の防除に効果があるか否かは不明であった。特開平8−231410号公報国際公開WO2009/139468号パンフレット国際公開WO2010/143627号パンフレット 本発明の目的は、従来は予防及び治療が困難であったクリプトスポリジウム症に対して高い予防および治療効果を示し、安全性に優れ、副作用などの問題がなく、しかも薬剤への耐性獲得による効果の減退などが生じないクリプトスポリジウム症防除剤、それを含有する飼料、並びに該クリプトスポリジウム症防除剤や飼料を用いる動物の飼育方法を提供することである。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物を使用すると、動物のクリプトスポリジウム症の予防および治療に効果があることを見出した。 本発明者らは、このようにして本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下のとおりである。(1)非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物を含有することを特徴とするクリプトスポリジウム症防除剤。(2)クリプトスポリジウムがCryptosporidium muris、Cryptosporidium andersoni、Cryptosporidium galli、Cryptosporidium serpentis、Cryptosporidium fragile、Cryptosporidium molnari、Cryptosporidium parvum、Cryptosporidium hominis、Cryptosporidium wrairi、Cryptosporidium felis、Cryptosporidium canis、Cryptosporidium suis、Cryptosporidium bovis、Cryptosporidium ryanae、Cryptosporidium fayeri、Cryptosporidium macropodum、Cryptosporidium meleagridis、Cryptosporidium baileyi、またはCryptosporidium varaniiである、(1)に記載のクリプトスポリジウム症防除剤。(3)(1)または(2)に記載のクリプトスポリジウム症防除剤を含むことを特徴とする、飼料添加剤。(4)(3)に記載の飼料添加剤を含むことを特徴とする、飼料。(5)反芻動物、豚、家禽、馬、またはペット用である、(4)に記載の飼料。(6)(4)または(5)に記載の飼料を摂取させることを特徴とする飼育方法。(7)(4)に記載の飼料を用いることを特徴とする、反芻動物、豚、家禽、馬、またはペットにおけるクリプトスポリジウム症の防除方法。(8)(4)に記載の飼料を用いることを特徴とする、反芻動物、豚、家禽、馬、またはペットにおける下痢の防除方法。(9)反芻動物、豚、家禽、馬、ペット、またはヒトのクリプトスポリジウム症の防除に用いるための、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物。(10)反芻動物、豚、家禽、馬、ペット、またはヒトのクリプトスポリジウム症防除剤の製造のための、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物の使用。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤、これを含有する飼料添加剤、飼料により、動物のクリプトスポリジウム症を軽減することができる。また、本発明のクリプトスポリジウム症防除剤、これを含有する飼料添加剤、飼料により、動物の増体重量及び成長の改善が期待できる。 非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物は、安価に大量に入手が可能であり、飼料や飲水として投与することによってクリプトスポリジウム症を効果的に防除することができる。 また、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物は、天然物であるため、安全性に優れ、副作用などの問題がなく、しかも薬剤への耐性獲得による効果の減退などが生じない。浮遊法で検出された子牛下痢サンプルからのクリプトスポリジウムオーシストを矢印で示す(写真)。浮遊液は飽和食塩砂糖液(比重1.28)である。仔牛下痢便より回収したCryptosporidium sp.(上段)およびC. parvum (GenBank Accession number: JX914623、下段)の18S rRNA部分の配列の比較を示す。仔牛下痢便より回収したCryptosporidium sp.およびGenBankに登録された近縁種の 18S rRNA部分の配列に基づく系統樹図を示す。系統樹は、Neighbor-Joining法で作成した。学名の右はAccession numberを示す。仔牛下痢便より回収したCryptosporidium sp.は、8本のチューブに分注し、8検体としてDNA抽出および配列解析を行った。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤は、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物を含有することを特徴とする。 カシューナッツ殻油は、カシューナッツ ツリー(Anacardium occidentale L.)の実の殻に含まれる油状の液体である。カシューナッツ殻油は、その成分として、アナカルド酸、カルダノール、カルドールを含むものである。一般に、アナカルド酸は加熱処理することによりカルダノールに変換する。カシューナッツの皮とは、カシューナッツの殻と胚(ナッツ)の間にある薄い皮のことである。 カシューナッツの殻を圧搾することにより抽出した非加熱カシューナッツ殻油は、J.Agric.Food Chem. 2001, 49, 2548-2551に記載されるように、アナカルド酸を55〜80質量%、カルダノールを5〜20質量%、カルドールを5〜30質量%含むものである。 非加熱カシューナッツ殻油を70℃以上、好ましくは130℃以上で加熱処理した加熱カシューナッツ殻油は、非加熱カシューナッツ殻油の主成分のアナカルド酸が脱炭酸しカルダノールに変換され、アナカルド酸を0〜10質量%、カルダノールを55〜80質量%、カルドールを5〜30質量%含むものとなる。 非加熱カシューナッツ殻油を常温(20℃)で、約1年以上保管して得られるカシューナッツ殻油は、非加熱カシューナッツ殻油の主成分のアナカルド酸が脱炭酸しカルダノールに変換され、アナカルド酸を0〜40質量%、カルダノールを30〜80質量%、カルドールを5〜30質量%含むものとなる。 カシューナッツ殻油は、カシューナッツの殻を圧搾することにより抽出した植物油として得ることができる。また、カシューナッツ殻油は、抽出により、例えば、カシューナッツ殻を溶剤抽出して得ることもできる。さらに、カシューナッツ殻油は、特開平8−231410号公報に記載されている方法によって、例えば、溶剤抽出法によって得ることができる。 カシューナッツ殻油は、その他にもカシューナッツの殻を粉砕・破砕して得られたもの、カシューナッツ皮であってもよい。また、カシューナッツ殻油は、市販品を用いることもできる。 本発明の加熱カシューナッツ殻油は、上記のようにして得られた非加熱カシューナッツ殻油を、70℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することによって得ることができる。また、非加熱カシューナッツ殻油を常温(20℃)で、約1年以上保管して得られるカシューナッツ殻油であってもよい。 本発明の加熱カシューナッツ殻油は、カシューナッツの殻から圧搾抽出(非加熱カシューナッツ殻油)し、これを130℃に加熱処理して得たものでもよい。 本発明の非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油は、副作用の問題がない。牛、ブタ、家禽等の家畜は、給餌される抗生物質や飼料によっては、消化率の低下、下痢、食欲不振等の副作用の症状が見られ、死に至ることもある。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤中のカシューナッツ殻油の含有量は、好ましくは0.1質量%〜100質量%、より好ましくは0.5質量%〜100質量%、さらに好ましくは1.0質量%〜100質量%、最も好ましくは10質量%〜100質量%である。0.1質量%以上であれば所定量の防除剤で抗クリプトスポリジウム症効果を奏することができる。 本発明の飼料添加剤中のクリプトスポリジウム症防除剤の含有量は、好ましくは0.1質量%〜100質量%、より好ましくは0.5質量%〜100質量%、さらに好ましくは1.0質量%〜100質量%、最も好ましくは10質量%〜100質量%である。 本発明の飼料中の飼料添加剤の含有量は、好ましくは0.005質量%〜20質量%、より好ましくは0.01質量%〜20質量%、さらに好ましくは0.05質量%〜20質量%である。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤を飼料中に含有させて用いるときは、飼料中のカシューナッツ殻油の含有量が、好ましくは0.001質量%〜2.0質量%、より好ましくは0.005質量%〜1.0質量%、さらに好ましくは0.01質量%〜0.5質量%となるようにすればよい。0.001質量%以上であれば所定量の飼料で抗クリプトスポリジウム症効果を奏することができ、2.0質量%以下であれば飼料組成に影響を与えないので好ましい。 本発明において使用されるカシューナッツ殻油は、油分を含有するカシューナッツの殻をそのまま又はこれを粉砕・破砕したものを用いてもよいし、カシューナッツ皮を用いてもよいが、含有しているカシューナッツ殻油(CNSL)に換算して(カシューナッツ殻にはCNSLが25〜30質量%含まれており、カシューナッツ皮中にはCNSLが0.5〜3.0質量%含まれている)、クリプトスポリジウム症防除剤、飼料添加剤、飼料中の含有量を上記範囲内とすればよい。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤は、カシューナッツ殻油の代わりに、アナカルド酸、カルダノール、またはカルドールを含んでいてもよい。 本発明において使用されるアナカルド酸としては、天然物アナカルド酸、合成アナカルド酸、それらの誘導体が挙げられる。また、市販のアナカルド酸を用いてもよい。アナカルド酸は、特開平8−231410号公報に記載されるように、カシューナッツの殻を有機溶剤で抽出処理して得られたカシューナッツ油を、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてn−ヘキサン、酢酸エチルおよび酢酸の混合溶媒の比率を変えて溶出する(特開平3−240721号公報、特開平3−240716号公報など)ことによって得ることができる。このようなアナカルド酸は、カシューナッツ殻油と同様の含有量で、クリプトスポリジウム症防除剤、飼料添加剤、飼料に含めることができる。 本発明において使用されるカルダノールとしては、天然物カルダノール、合成カルダノール、それらの誘導体が挙げられる。また、本発明において使用されるカルダノールは、カシューナッツ殻油の主成分のアナカルド酸を脱炭酸することにより、得ることができる。このようなカルダノールは、カシューナッツ殻油と同様の含有量で、クリプトスポリジウム症防除剤、飼料添加剤、飼料に含めることができる。 なお、加熱カシューナッツ殻油を用いる場合、加熱カシューナッツ殻油中のアナカルド酸とカルダノールとの質量比は、好ましくは、0:100〜20:80である。 本発明において使用されるカルドールとしては、天然物カルドール、合成カルドール、それらの誘導体が挙げられる。また、本発明において使用されるカルドールは、カシューナッツ殻油から精製することにより、得ることもできる。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤の対象となる動物は、好ましくは、反芻動物(牛、羊など)、豚、家禽(鶏など)、馬、ペット(犬、猫など)、およびヒトであるが、クリプトスポリジウムの防除、より詳細には、クリプトスポリジウムの感染防除、クリプトスポリジウムのオーシストの殺傷などを必要とする宿主である限り、これらに限定されない。なお、本発明において、防除とは予防および治療を含むものである。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤の防除対象は、クリプトスポリジウムに起因する病害であるが、好ましくは、クリプトスポリジウム症、すなわち、クリプトスポリジウム属の原虫によって引き起こされる病害である。クリプトスポリジウム症を引き起こすクリプトスポリジウム属の原虫としては、C. muris、C. andersoni、C. galli、C. serpentis、C. fragile、C. molnari、C. parvum、C. hominis、C. wrairi、C. felis、C. canis、C. suis、C. bovis、C. ryanae、C. fayeri、C. macropodum、C. meleagridis、C. baileyi、及びC. varanii等が挙げられるが、これらに限定されない。 クリプトスポリジウム症の主な症状としては下痢が挙げられ、幼齢期の動物において発症することが多い。例えば、仔牛では、7日齢から21日齢でクリプトスポリジウムに感染する。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤の剤形は特に制限されず、例えば粉末、液体、固体、錠剤、カプセル剤、乳剤など任意の形態とすることができる。本発明のクリプトスポリジウム症防除剤は、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物、並びに必要に応じて任意成分を混合し、製剤化することにより製造することができる。なお、剤形の形態によっては、カシューナッツ殻、カシューナッツ殻の粉砕・破砕物、カシューナッツ皮をそのまま他の任意成分と混合させて、本発明のクリプトスポリジウム症防除剤とすることができる。さらに、他の任意成分と混合させず、カシューナッツ殻そのもの、カシューナッツ殻の粉砕・破砕物そのもの、またはカシューナッツ皮そのものを、飼料添加剤、さらには飼料とすることもできる。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤は、対象動物の飲料水に非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドールなどをそのまま添加することにより、対象動物に摂取させてもよい。これらの飲料水中の濃度は、上述の通り、本発明のクリプトスポリジウム症防除剤中のカシューナッツ殻油の含有量と同様とすればよい。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤には、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物と、珪藻土、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、パーライト、酸性白土、活性白土、ケイ酸を適宜混和して飼料添加剤としても良い。 本発明の飼料添加剤は、ペットフード、ペット用サプリメント(以下、飼料という。)に用いられる他の飼料成分と混合して、飼料とすることができる。飼料の種類や、カシューナッツ殻油以外の成分は、特に制限されない。飼料は、好ましくは反芻動物、豚、家禽、馬、またはペット用である。 本発明の飼料は、飼料添加剤をそのまま飼料成分に添加し、混合して製造することができる。この際、粉末状、固形状の飼料添加剤を用いる場合は、混合を容易にするために飼料添加剤を液状又はゲル状の形態にしてもよい。この場合は、水、大豆油、菜種油、コーン油などの植物油、液体動物油、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの水溶性高分子化合物を液体担体として用いることができる。また、飼料中におけるカシューナッツ殻油の均一性を保つために、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カゼインナトリウム、アラビアゴム、グアーガム、タマリンド種子多糖類などの水溶性多糖類を配合することも好ましい。 本発明の飼料は、糖類(乳糖、トレハロースなど)、メイズ、マイロ、ふすま、米糠、脱脂糠、乾燥糠、圧ぺん大麦、圧ぺんトウモロコシ、大豆粕、トウモロコシ粉、米粉、大豆粉などを含んでもよい。これらの飼料中の濃度としては、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは5〜75質量%、さらに好ましくは10〜50質量%である。 本発明の飼料は、また、反芻動物、豚、家禽、馬、またはペットの成長促進に有効な成分、栄養補助成分、保存安定性を高める成分等の任意成分をさらに含むものであってもよい。このような任意成分としては、例えば、エンテロコッカス類、バチルス類、ビフィズス菌類、ラクトバチルス菌類等の生菌剤;アミラーゼ、リパーゼ等の酵素;L−アスコルビン酸、塩化コリン、イノシトール、葉酸等のビタミン;塩化カリウム、クエン酸鉄、酸化マグネシウム、リン酸塩類等のミネラル;DL−アラニン、DL−メチオニン、塩酸L−リジン等のアミノ酸;フマル酸、酪酸、乳酸、酢酸及びそれらの塩類等の有機酸;エトキシキン、ジブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;プロピオン酸カルシウム等の防カビ剤;カルボキシメチルセルロース(CMC)、カゼインナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等の粘結剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤;アスタキサンチン、カンタキサンチン等の色素;各種エステル、エーテル、ケトン類等の着香料が挙げられる。 本発明の飼料は、牛などの反芻動物、豚、鶏などの家禽、馬または犬、猫などのペットの飼育に好適である。摂取させる飼料の量は、動物の種類、体重、年齢、性別、健康状態、飼料の成分などにより適宜調節することができ、このとき飼料に含まれるカシューナッツ殻油が好ましくは0.005〜100g/体重100kg・日、より好ましくは0.01〜100g/体重100kg・日、さらに好ましくは0.02〜100g/体重100kg・日である。 飼料を摂取させる方法及び飼育する方法は、動物の種類に応じて、通常用いられる方法をとることができる。 以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。製造例 カシュー・トレーディング(株)よりカシューナッツの殻500kgを入手し、圧搾することによりカシューナッツ殻油(非加熱CNSL)158kgを製造した。 CNSLの組成は以下の方法で測定した。すなわち、HPLC(Waters600、日本ウォーターズ株式会社)、検出機(Waters490E、日本ウォーターズ株式会社)、プリンタ(クロマトパックC−R6A、島津製作所)、カラム(SUPELCOSIL LC18、SUPELCO社)を用いた。アセトニトリル:水:酢酸が80:20:1(容量比)の溶媒を用い、流速は2ml/分とした。280nmの吸光度で検出した。 非加熱カシューナッツ殻油には、アナカルド酸が61.8質量%、カルダノールが8.2質量%、カルドールが19.9質量%、加熱カシューナッツ殻油には、アナカルド酸が0.0質量%、カルダノールが71.4質量%、カルドールが14.4質量%含まれていた。実施例 牧場の生後1カ月齢の仔牛下痢便よりクリプトスポリジウム野外株を浮遊法により回収した。回収した株を顕微鏡にて観察したところオーシストが観察された(図1)。回収した株のDNA抽出を行い、その配列を決定したところ、18S rRNA部分の配列は配列番号1を有していた。得られた配列をGenBankに登録されているCryptosporidium parvumの配列と比較したところ、相同性は100%であった(図2)。従って、今回の野外分離株はC. parvumであると同定した。また、18S rRNA部分の配列に基づく系統樹を、Neighbor-Joining法で作成した(図3)。 感作方法は以下の通りとした。すなわち、非加熱CNSLをエタノールで溶解・調整したものを1,000ppmに段階希釈した後6穴マイクロプレートに分注し、C. parvum 未成熟オーシスト浮遊液を等量分注し25℃で4日間感作させた。 検査方法は以下の通りとした。すなわち、感作後顕微鏡下(×600)で成熟オーシスト(胞子形成オーシスト)の率を算出した。なお、カウントは30個ずつ2回行い、その平均値をとり下記の式により殺オーシスト率を求めた。殺オーシスト率=(1-被験物質感作の胞子形成率/被験物質無感作の胞子形成率)×100 胞子形成オーシスト数測定及び殺オーシスト率算出結果を表1に示した。平均胞子形成オーシスト率は、非加熱CNSL 1000ppm群で10.0%であった。溶媒対照である20%エタノール群は93.3%、無感作対照群は95.0%であった。この平均胞子形成オーシスト率から算出した殺オーシスト率は、非加熱CNSL 1000ppm群で89.5%であった。 本発明のクリプトスポリジウム症防除剤、これを含む添加剤、および飼料により、動物(特に、反芻動物、家禽、ペット、ヒト)のクリプトスポリジウム症を防除することができる。非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物を含有することを特徴とするクリプトスポリジウム症防除剤。クリプトスポリジウムがCryptosporidium muris、Cryptosporidium andersoni、Cryptosporidium galli、Cryptosporidium serpentis、Cryptosporidium fragile、Cryptosporidium molnari、Cryptosporidium parvum、Cryptosporidium hominis、Cryptosporidium wrairi、Cryptosporidium felis、Cryptosporidium canis、Cryptosporidium suis、Cryptosporidium bovis、Cryptosporidium ryanae、Cryptosporidium fayeri、Cryptosporidium macropodum、Cryptosporidium meleagridis、Cryptosporidium baileyi、またはCryptosporidium varaniiである、請求項1に記載のクリプトスポリジウム症防除剤。請求項1または2に記載のクリプトスポリジウム症防除剤を含むことを特徴とする、飼料添加剤。請求項3に記載の飼料添加剤を含むことを特徴とする、飼料。反芻動物、豚、家禽、馬、またはペット用である、請求項4に記載の飼料。請求項4または5に記載の飼料を摂取させることを特徴とする飼育方法。請求項4に記載の飼料を用いることを特徴とする、反芻動物、豚、家禽、馬、またはペットにおけるクリプトスポリジウム症の防除方法。請求項4に記載の飼料を用いることを特徴とする、反芻動物、豚、家禽、馬、またはペットにおける下痢の防除方法。反芻動物、豚、家禽、馬、ペット、またはヒトのクリプトスポリジウム症の防除に用いるための、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物。反芻動物、豚、家禽、馬、ペット、またはヒトのクリプトスポリジウム症防除剤の製造のための、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物の使用。 【課題】本発明は、従来は予防及び治療が困難であったクリプトスポリジウム症に対して高い予防および治療効果を示し、安全性に優れ、副作用などの問題がなく、しかも薬剤への耐性獲得による効果の減退などが生じないクリプトスポリジウム症防除剤、それを含有する飼料、並びに該クリプトスポリジウム症防除剤や飼料を用いる動物の飼育方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、非加熱カシューナッツ殻油、加熱カシューナッツ殻油、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、カシューナッツ皮、及び/又は、カシューナッツ殻粉砕物を含有することを特徴とするクリプトスポリジウム症防除剤を提供する。【選択図】なし配列表


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