タイトル: | 公開特許公報(A)_抗菌性口腔用組成物 |
出願番号: | 2013161380 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 8/97,A61Q 11/00 |
渡辺 秀司 鈴木 光雄 両角 旦 浜田 信城 君島 英樹 JP 2015030701 公開特許公報(A) 20150216 2013161380 20130802 抗菌性口腔用組成物 有限会社漢方歯科医学研究所 508365850 株式会社アデプト 507412416 渡辺 喜平 100086759 森島 なるみ 100100608 渡辺 秀司 鈴木 光雄 両角 旦 浜田 信城 君島 英樹 A61K 8/97 20060101AFI20150120BHJP A61Q 11/00 20060101ALI20150120BHJP JPA61K8/97A61Q11/00 7 1 OL 22 4C083 4C083AA121 4C083CC41 4C083EE32 4C083EE33 本発明は、抗菌性口腔用組成物に関する。 マスティック(乳香)は、口臭防止用の香料として有用であり、また歯周病原細菌、齲蝕病原細菌、真菌等を抑制する抗菌活性があることが知られており(例えば、特許文献1)、マスティックを配合した練り歯磨き、洗口剤、ジェル、ペースト等の口腔用組成物が多数市販されている。 マスティックの抗菌作用はマイルドであり、免疫力が低い小児や高齢者に用いても、人体にとって有益な口腔内常在菌のバランスを崩すことなく、歯周病原細菌、齲蝕病原細菌、真菌等の好ましくない細菌を抑制することができるという優れた効果がある。 しかしながら一方で、マスティックの抗菌作用はマイルドであるが故に、人体において抗菌性を発現させようとする場合には1〜10重量%という高い濃度で配合する必要がある。 また、マスティックの抗菌性を補強する成分を追加したり、別の効果を付加した口腔用組成物も開発されてきた。 例えば、特許文献2では、マスティックに、グリチルリチン酸及びその塩類等の消炎剤を配合した歯周病予防・治療用組成物が開示されている。この組成物は、市販の歯磨き剤に後から添加することができる形態であり、高濃度のマスティックを歯周病の状態に応じた適切な量で使用することができ、且つ長期に渡って組成物の安定な状態を保つことができるという特徴を有している。 特許文献3では、マスティックと、クエン酸ナトリウムと、フッ化ナトリウムかモノフルオロリン酸ナトリウムのいずれか一方又は両方とを含む、歯磨き、洗口液、ペースト等の口腔用組成物が開示されている。 しかしながら、いずれの組成物においても、低いマスティック濃度で有効な抗菌性を発現させることは困難であった。 一方、特許文献4には、歯周病原因菌に有効な抗菌活性を有する香料及びそれを含有する口腔用組成物が開示されており、前記香料の例示の中にグレープフルーツオイルが記載されているが、その抗菌活性は具体的に示されてはいない。 さらに、特許文献5には、口腔内細菌によるバイオフィルムの形成を抑制するための多環式セスキテルペン炭化水素を含有する口腔用組成物が開示されている。前記多環式セスキテルペン炭化水素を含有する精油の一群の例示の中に、グレープフルーツオイルとマスティックオイルが記載されているが、これらを同時に用いた具体例は記載されていない。 特許文献6には、柿渋抽出物とグレープフルーツ種子抽出物と、清涼剤及び/又は甘味料とを含む水溶液から成る口腔内洗浄用組成物が開示されている。口腔内に存在する種々の菌に対し殺菌効果を有すると記載されてはいるが、実際に確認しているのは柿渋抽出物とグレープフルーツ種子抽出物との混合物の齲蝕原因菌に対する抗菌性のみである。特開2002−29982号公報特開2004−83443号公報特開2011−173835号公報特開2007−99782号公報特開2012−229191号公報特開2005−2107号公報 本発明の目的は、歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び/又は真菌に対する抗菌性を有する口腔用組成物を提供することである。 特に、マスティック濃度を、従来よりも顕著に低い濃度で、上記口腔内病原細菌を有意に抑制できる処方を見出すべく研究を行い、マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツシードオイルとを併用することで、顕著に高い抗菌性が得られることを見出した。 さらに、マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツシードオイルの合計で、1重量%以下という低い濃度で、顕著に高い抗菌性を示すことを見出し、本発明に至った。 本発明によれば、以下の口腔用組成物が提供される。1.マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツシードエキスを含む口腔用組成物。2.歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び/又は真菌に対する抗菌性を有する1に記載の口腔用組成物。3.Porphyromonas gingivalis、Streptococcus mutans及び/又はCandida albicansに対する抗菌性を有する2に記載の口腔用組成物。4.前記マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツシードエキスの濃度が、合計で1.0重量%以下である1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。5.前記マスティックエッセンシャルオイルと前記グレープフルーツシードエキスの配合重量比が、1:1〜10:1の範囲内である1〜4のいずれかに記載の口腔用組成物。6.歯磨き剤又は洗口剤である1〜5のいずれかに記載の口腔用組成物。7.1〜6のいずれかに記載の口腔用組成物からなる歯周病予防・治療剤。 本発明によれば、歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び/又は真菌に対する抗菌性を有する口腔用組成物が提供できる。抗菌性試験開始時のジンジバリス菌の生菌数を100%としたときの、5分後及び15分後の各検体の菌に対する抑制率を示すグラフである。抗菌性試験開始時のミュータンス菌の生菌数を100%としたときの、5分後及び15分後の各検体の菌に対する抑制率を示すグラフである。抗菌性試験開始時のカンジダ菌の生菌数を100%としたときの、5分後及び15分後の各検体の菌に対する抑制率を示すグラフである。 本発明の口腔用組成物は、マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツシードエキスを含むことを特徴とする。 本発明の口腔用組成物は、マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツシードオイルとを併用することでそれぞれの抗菌性の相乗効果が得られるものと考えられる。それ故、合計で1重量%以下という、従来に比べて非常に低い濃度で口腔内病原細菌を抑制できる。 本発明の口腔用組成物が抑制する歯周病原細菌の代表例としては、Porphyromonas gingivalisが挙げられ、Porphyromonas endodontalis、Prevotella intermedia、Prevptella nigrescens、Fusobacterium nucleaum、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(旧称Actinobacillus actinomycetemcomitans)、Tannerella forsythensis(旧称Bacteroides forsythus)、Treponema denticola、Campylobactor recus、Eikenella corrodens、Actinomyces属等に対しても抗菌性が期待できる。 齲蝕病原細菌の代表例としては、Streptococcus mutansが挙げられ、Streptococcus mutans、Streptococcus sobrinus等のMutans Streptococci(ミュータンスレンサ球菌群)、Streptococcus sanguis、Streptococcus mitis、Lactobacillus casei等のLactobacillus属、Actynomyces viscosus、Actinomyces neaslundiiに対しても抗菌性が期待できる。 真菌の代表例としては、Candida albicansが挙げられ、Candida glabrata、Candida krusei等の口腔カンジダ症の病原菌に対しても抗菌性が期待できる。 上記の病原細菌類はそれらが相まって、歯周病や齲蝕を発症させ、バイオフィルムの形成による歯周病の重症化、治癒困難化を招く。本発明の口腔用組成物は、日常生活で使用することによって、これら複数の病原細菌類を同時に抑制しながら、人体に有益な口腔常在菌には悪影響を及ぼさずに口腔内の衛生を保持することができる。 本発明で用いるマスティックエッセンシャルオイルは、水不溶性のマスティック樹脂を溶解・抽出したオイルである。抽出に用いるオイルとしては食用油が好ましく、例えば、オリーブ油、ヤシ油、大豆油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ナタネ油、落花生油、ツバキ油等が挙げられ、これらの他、安全な油として、中鎖脂肪酸トリグリセリド等も挙げられる。抽出方法は公知の方法を適宜選択して用いればよい。 現在では、高品質のマスティックエッセンシャルオイルが市販されており、これらを用いることができる。市販のマスティックエッセンシャルオイルとしては、例えば、Mastiha Oil(The Chios Gum Mastic Growers Association製;輸入元:(株)中村カイロ協会)や、プラナロム社、フィトアロマ研究所等が輸入販売している製品が挙げられる。 本発明で用いるグレープフルーツシードオイルは、食品添加物として広く用いられており、多数の市販品が入手可能である。グレープフルーツシードオイルの市販品には、グラム陽性菌、グラム陰性菌、カビ(真菌)等に優れた抑制効果を有すると謳った製品もあるが、各種の口腔内病原細菌について具体的なデータは示されていない。 グレープフルーツシードオイルの市販品としては、例えば、Desfan(株式会社アデプト、食品添加物天然抗菌剤)、GSE(NutriBiotic社製、グレープフルーツシード濃縮エキス)や、プラナロム社、フィトアロマ研究所等が輸入販売している製品が挙げられる。 本発明の口腔用組成物中のマスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツシードオイルの合計の濃度は、適用部位、その症状の度合い、組成物の形態等に合わせて適宜決定すればよい。合計の濃度は、0.01〜10重量%程度まで可能であるが、本発明の口腔用組成物は、マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツシードオイルとの相乗効果により、低濃度でも高い抗菌性を示すため、例えば、0.01〜2重量%でも十分な効果が得られ、実施例でも示す通り、1重量%以下でも顕著な抗菌性を示す。 マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツシードエキスの配合重量比も、特に限定されず、適用部位、その症状の度合い、組成物の形態等に合わせて適宜決定すればよい。マスティックエッセンシャルオイル:グレープフルーツシードオイルの重量比は、例えば1:10〜10:1の範囲内であり、1:1〜10:1の範囲内が好ましく、2:1〜5:1の範囲内がより好ましい。 より具体的には、マスティックエッセンシャルオイル0.1〜0.9重量%、好ましくは0.2〜0.8重量%で用いる。尚、グレープフルーツシードオイルは、マスティックエッセンシャルオイルの濃度に応じて適宜決定すればよく、例えば、0.01〜0.5重量%の濃度で用いるのが好ましい。 上記有効成分以外に、歯周病の予防・治療に有効な薬効成分を配合することもできる。このような成分としては、例えば、歯周病原細菌に対する抗菌活性を有する成分、消炎剤等が挙げられる。上記の成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 歯周病原細菌に対する抗菌活性を有する成分としては、公知の抗菌剤を用いることができ、例えば、マスティック、グレープフルーツ、シコン(紫根)、ニクズク、ビンロウジ、ヨモギ、オオバク、ボタンピ、オウゴン、ダイオウ(大黄)、ノギクカ、ヤクモソウ、熊笹、プロポリス等の植物成分が好ましく、マスティック、グレープフルーツ等の植物成分がより好ましい。 本発明の組成物は、各種の剤形で用いることができるが、洗口剤(うがい薬)、リンス液、歯磨き剤等として用いるか、塗布剤、あるいはパップ剤として口内等の患部に貼り付けて用いることが好ましく、洗口剤として用いることが特に好ましい。 本発明の口腔用組成物には、上記成分の他、用途や剤形に応じて、溶媒、香料、清涼剤、甘味剤、着色剤、界面活性剤、潤滑剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、賦形剤、消炎剤、薬用成分等の通常口腔用に用いられている添加剤をさらに含むことができる。上記添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 溶媒としては、エタノール、水等の生体適合性の良いものを用いることが好ましい。 香料としては、メントール、ペパーミント油、スペアミント油、オレンジ油、レモン油、ユーカリ油、ハッカ油、アカシア油、ウイキョウ油、クエントウ油、カラムス油、ショウノウ油、ニッケイ油、ケイ皮油、ケイ葉油、バラ油、ビャクダン油、チョウジ油、ハーブ油、バナナ油、リンゴ油、サリチル酸メチル、カルボン、アネトール、リモネン等のテルペン類;及び調合香料等が挙げられる。 甘味料としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、キシリトール、ステビオサイド、ステビアエキス、レバウディオサイド、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスベリジルジヒドロキシカルコン、ペリラルチン、タウマチン、グリチルチン、グリチルリチンモノグルコサイド、ヘルナンズルチン、トレハロース、アスパルテーム、ソルビット等が挙げられる。 また、調味剤として、梅果実エキス、乳酸、乳酸ナトリウム等を配合してもよい。 着色剤としては、青色1号、黄色4号等の法定色素、二酸化チタン、カルメル等が挙げられる。 界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられる。具体的には、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラウロイルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N−アシルタウリン塩、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はその脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。 潤滑剤としては、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール等の糖アルコール;グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。 増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム(セルロースガム)、メチルセルロース、ヒドロキシエチル、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩、ジュランガム、キサンタンガム、グアガム、トラガントガム、カラヤガム、ビーガム、アラビアガム等のガム類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル等が挙げられる。 pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、酢酸等の有機酸及びその塩類;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸リチウム、尿素、アミノ酸オリゴマー、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム等の無機酸カルシウム塩、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、マロン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、フィチン酸カルシウム等の有機酸カルシウム塩等が挙げられる。 防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、イソプロピルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、フェノキシエタノール、ソルビン酸等が挙げられる。 消炎剤としては、例えば、グリチルリチン酸及びその塩類、グリチルレチン酸及びその塩類、トラネキサム酸、塩化リゾチーム、オウバクエキス、トウキ軟エキス、酢酸dl−αトコフェロール、ニコチン酸dl−αトコフェロール、イプシロアミノカプロン酸、アズレンスルホン酸塩、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン等が挙げられる。 薬効成分としては、アラントイン、酢酸トコフェロール、イソプロピルメチルフェノール、デキストラーゼ、クロロフィル、銅クロロフィルナトリウム、フラボノイド、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキサイドディスムターゼ、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムアラントイン、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、ジヒドロコレスタノール、ビサボロール、グリセロフォスフェート、塩化セチルピリジニウム、水溶性無機リン酸化合物、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化カリウム、フッ化ケイ素酸ナトリウム、フッ化アルミニウム、フッ化銀、フッ化水素酸ヘキシルアミン、フッ化水素酸デカノールアミン、フッ化水素酸オクタデセニルアミン等のフッ化物、エデト酸、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸銅、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化銅、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6、パントテン酸塩等のビタミン類、グリシン、リジン、ヒスチジン等のアミノ酸類、塩化ナトリウム、重曹、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、ザルコシネート、カテキン類等のポリフェノール化合物類、生薬等が挙げられる。 上記の他、基剤、可溶化剤、洗浄剤等を、剤型に応じて配合することができる。 以下、口腔用組成物の歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び真菌の代表的な菌に対する抗菌性試験結果を示して、本発明をより具体的に説明する。試験に用いた組成物(以下、検体という): 検体1:下記表1に示す濃度でマスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツシードオイルを含有するジェル状歯磨き剤組成物 検体2:下記表1に示す濃度でマスティックエッセンシャルオイルのみを含有するジェル状歯磨き剤組成物 検体1及び2は、上記有効成分以外は同一の組成とした。上記有効成分以外の組成物の構成成分には、基剤、可溶化剤、増粘剤、消炎剤、殺菌剤、洗浄剤、pH調整剤、湿潤剤、清涼剤、溶剤及び精製水を含む。 検体に用いたマスティックエッセンシャルオイルは、Mastiha Oil(The Chios Gum Mastic Growers Association製;輸入元:(株)中村カイロ協会)であり、グレープフルーツシードオイルは、Desfan-100(輸入元:株式会社アデプト)であった。[試験方法]1)試験菌:(A)歯周病原細菌:Porphyromonas gingivalis JCM 8525(ジンジバリス菌)(B)齲蝕病原細菌:Streptococcus mutans IFO 13955(ミュータンス菌)(C)真菌:Candida albicans NBRC 1594(カンジダ)2)菌数測定用培地及び培養条件:試験菌(A): 5%馬脱繊維血液加Brucella Agar(BBL)、平板塗抹培養法、35℃±1℃,5〜7日間嫌気培養試験菌(B): SCDLP寒天培地[日本製薬株式会社]、混釈平板培養法、35℃±1℃、2日間好気培養試験菌(C): GPLP寒天培地[日本製薬株式会社]、混釈平板培養法、25℃±1℃、2日間好気培養3)試験菌液の調製:試験菌(A): 試験菌を5%馬脱繊維血液加Brucella Agarで35℃±1℃、4〜7日間嫌気培養した後、生理食塩水に浮遊させ、菌数が108〜109/mLとなるように調製し、試験菌液とした。試験菌(B): 試験菌を普通寒天培地[栄研化学株式会社]で35℃±1℃、18〜24時間好気培養した後、精製水に浮遊させ、菌数が107〜108/mLとなるように調製し、試験菌液とした。試験菌(C): 試験菌をPotato Dextrose Agar(Difco)で25℃±1℃、2日間好気培養した後、精製水に浮遊させ、菌数が107〜108/mLとなるように調製し、試験菌液とした。4)試験操作 検体3gに、各試験菌液を0.03mL接種し、試料とした。室温で保存し、5及び15分後に試料をSCDLP培地[日本製薬株式会社]で直ちに10倍[試験菌(A)の検体1)は100倍]に希釈し、試料中の生菌数を、菌数測定用培地を用いて測定した。 尚、対照として、精製水を用いて同様に試験し、開始時及び15分後(試験菌(A)は開始時並びに5及び15分後)について生菌数を測定した。 菌液接種直後の対照の生菌数を測定し、開始時の生菌数とした。 結果を下記表2に示す。また、開始時の生菌数を100%としたときの各検体の菌に対する抑制率を図1〜3に示す。 表2中の生菌数「<10」及び「<1000」は、菌の検出限界より低い、即ち、菌を検出しなかったことを意味する。ジンジバリス菌(成人性歯周病原細菌): 検体1(本発明の口腔用組成物)では、5分及び15分の時間経過において、抗菌性が極めて高く、生菌が検出されなかったのに対し、検体2(マスティックエッセンシャルオイルのみ)では、5分及び15分の時間経過において開始時の約10分1に生菌数が低下した。 検体1では、15分以上培養を続けたとしても、菌は発生しないと推測されるが、検体2では、時間の経過、口腔環境の変化によって生菌数が増加していくと推測される。 この結果から、本発明の口腔用組成物は、ジンジバリス菌に対し非常に顕著な抑制効果が認められる。ミュータンス菌(齲蝕病原細菌): 検体1では、5分の時間経過において生菌は検出されず、15分後においても菌の発生率は0・02%であり、強い抑制効果が認められた。 検体2では、5分及び15分の時間経過において抑制効果が弱く、ミュータンス菌に対する抗菌性は認められなかった。カンジダ菌(真菌): 検体1では、5分後及び15分後において抑制効果が認められたが、検体2では、抑制効果は認められなかった。 検体1の15分後の菌の抑制率は80%と高い抗菌性が認められたが、検体2については抗菌性が認められなかった。 カンジダ菌の増殖抑制は口腔カンジダ症の予防・治療に有効であるばかりでなく、カンジダ菌を抑制することにより、歯肉縁下のバイオフィルムの形成防止に効果があると考えられ歯周病の発生抑制も期待できる。 本発明の口腔用組成物は、人体に対して安全な成分を用い、口腔内病原細菌は顕著に抑制するが、人体に有益な口腔内常在菌のバランスは崩さないため、免疫力の低い小児や高齢者にも用いることができ、口腔内の衛生を保持する上で非常に有用である。 本発明の口腔用組成物は、日常生活の中での歯周病、齲蝕、口腔カンジダ症の予防・治療に有用である。 マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツシードエキスを含む口腔用組成物。 歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び/又は真菌に対する抗菌性を有する請求項1に記載の口腔用組成物。 Porphyromonas gingivalis、Streptococcus mutans及び/又はCandida albicansに対する抗菌性を有する請求項2に記載の口腔用組成物。 前記マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツシードエキスの濃度が、合計で1.0重量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。 前記マスティックエッセンシャルオイルと前記グレープフルーツシードエキスの配合重量比が、1:1〜10:1の範囲内である請求項1〜4のいずれかに記載の口腔用組成物。 歯磨き剤又は洗口剤である請求項1〜5のいずれかに記載の口腔用組成物。 請求項1〜6のいずれかに記載の口腔用組成物からなる歯周病予防・治療剤。 【課題】歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び/又は真菌に対する抗菌性を有する口腔用組成物を提供する。【解決手段】マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツシードエキスを含む口腔用組成物。【選択図】図120130814A16330全文3 本発明は、抗菌性口腔用組成物に関する。 マスティック(乳香)は、口臭防止用の香料として有用であり、また歯周病原細菌、齲蝕病原細菌、真菌等を抑制する抗菌活性があることが知られており(例えば、特許文献1)、マスティックを配合した練り歯磨き、洗口剤、ジェル、ペースト等の口腔用組成物が多数市販されている。 マスティックの抗菌作用はマイルドであり、免疫力が低い小児や高齢者に用いても、人体にとって有益な口腔内常在菌のバランスを崩すことなく、歯周病原細菌、齲蝕病原細菌、真菌等の好ましくない細菌を抑制することができるという優れた効果がある。 しかしながら一方で、マスティックの抗菌作用はマイルドであるが故に、人体において抗菌性を発現させようとする場合には1〜10重量%という高い濃度で配合する必要がある。 また、マスティックの抗菌性を補強する成分を追加したり、別の効果を付加した口腔用組成物も開発されてきた。 例えば、特許文献2では、マスティックに、グリチルリチン酸及びその塩類等の消炎剤を配合した歯周病予防・治療用組成物が開示されている。この組成物は、市販の歯磨き剤に後から添加することができる形態であり、高濃度のマスティックを歯周病の状態に応じた適切な量で使用することができ、且つ長期に渡って組成物の安定な状態を保つことができるという特徴を有している。 特許文献3では、マスティックと、クエン酸ナトリウムと、フッ化ナトリウムかモノフルオロリン酸ナトリウムのいずれか一方又は両方とを含む、歯磨き、洗口液、ペースト等の口腔用組成物が開示されている。 しかしながら、いずれの組成物においても、低いマスティック濃度で有効な抗菌性を発現させることは困難であった。 一方、特許文献4には、歯周病原因菌に有効な抗菌活性を有する香料及びそれを含有する口腔用組成物が開示されており、前記香料の例示の中にグレープフルーツオイルが記載されているが、その抗菌活性は具体的に示されてはいない。 さらに、特許文献5には、口腔内細菌によるバイオフィルムの形成を抑制するための多環式セスキテルペン炭化水素を含有する口腔用組成物が開示されている。前記多環式セスキテルペン炭化水素を含有する精油の一群の例示の中に、グレープフルーツオイルとマスティックオイルが記載されているが、これらを同時に用いた具体例は記載されていない。 特許文献6には、柿渋抽出物とグレープフルーツ種子抽出物と、清涼剤及び/又は甘味料とを含む水溶液から成る口腔内洗浄用組成物が開示されている。口腔内に存在する種々の菌に対し殺菌効果を有すると記載されてはいるが、実際に確認しているのは柿渋抽出物とグレープフルーツ種子抽出物との混合物の齲蝕原因菌に対する抗菌性のみである。特開2002−29982号公報特開2004−83443号公報特開2011−173835号公報特開2007−99782号公報特開2012−229191号公報特開2005−2107号公報 本発明の目的は、歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び/又は真菌に対する抗菌性を有する口腔用組成物を提供することである。 特に、マスティック濃度を、従来よりも顕著に低い濃度で、上記口腔内病原細菌を有意に抑制できる処方を見出すべく研究を行い、マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツ種子抽出物とを併用することで、顕著に高い抗菌性が得られることを見出した。 さらに、マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツ種子抽出物の合計で、1重量%以下という低い濃度で、顕著に高い抗菌性を示すことを見出し、本発明に至った。 本発明によれば、以下の口腔用組成物が提供される。1.マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツ種子抽出物を含む口腔用組成物。2.歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び/又は真菌に対する抗菌性を有する1に記載の口腔用組成物。3.Porphyromonas gingivalis、Streptococcus mutans及び/又はCandida albicansに対する抗菌性を有する2に記載の口腔用組成物。4.前記マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツ種子抽出物の濃度が、合計で1.0重量%以下である1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。5.前記マスティックエッセンシャルオイルと前記グレープフルーツ種子抽出物の配合重量比が、1:1〜10:1の範囲内である1〜4のいずれかに記載の口腔用組成物。6.歯磨き剤又は洗口剤である1〜5のいずれかに記載の口腔用組成物。7.1〜6のいずれかに記載の口腔用組成物からなる歯周病予防・治療剤。 本発明によれば、歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び/又は真菌に対する抗菌性を有する口腔用組成物が提供できる。抗菌性試験開始時のジンジバリス菌の生菌数を100%としたときの、5分後及び15分後の各検体の菌に対する抑制率を示すグラフである。抗菌性試験開始時のミュータンス菌の生菌数を100%としたときの、5分後及び15分後の各検体の菌に対する抑制率を示すグラフである。抗菌性試験開始時のカンジダ菌の生菌数を100%としたときの、5分後及び15分後の各検体の菌に対する抑制率を示すグラフである。 本発明の口腔用組成物は、マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツ種子抽出物を含むことを特徴とする。 本発明の口腔用組成物は、マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツ種子抽出物とを併用することでそれぞれの抗菌性の相乗効果が得られるものと考えられる。それ故、合計で1重量%以下という、従来に比べて非常に低い濃度で口腔内病原細菌を抑制できる。 本発明の口腔用組成物が抑制する歯周病原細菌の代表例としては、Porphyromonas gingivalisが挙げられ、Porphyromonas endodontalis、Prevotella intermedia、Prevptella nigrescens、Fusobacterium nucleaum、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(旧称Actinobacillus actinomycetemcomitans)、Tannerella forsythensis(旧称Bacteroides forsythus)、Treponema denticola、Campylobactor recus、Eikenella corrodens、Actinomyces属等に対しても抗菌性が期待できる。 齲蝕病原細菌の代表例としては、Streptococcus mutansが挙げられ、Streptococcus mutans、Streptococcus sobrinus等のMutans Streptococci(ミュータンスレンサ球菌群)、Streptococcus sanguis、Streptococcus mitis、Lactobacillus casei等のLactobacillus属、Actynomyces viscosus、Actinomyces neaslundiiに対しても抗菌性が期待できる。 真菌の代表例としては、Candida albicansが挙げられ、Candida glabrata、Candida krusei等の口腔カンジダ症の病原菌に対しても抗菌性が期待できる。 上記の病原細菌類はそれらが相まって、歯周病や齲蝕を発症させ、バイオフィルムの形成による歯周病の重症化、治癒困難化を招く。本発明の口腔用組成物は、日常生活で使用することによって、これら複数の病原細菌類を同時に抑制しながら、人体に有益な口腔常在菌には悪影響を及ぼさずに口腔内の衛生を保持することができる。 本発明で用いるマスティックエッセンシャルオイルは、水不溶性のマスティック樹脂を溶解・抽出したオイルである。抽出に用いるオイルとしては食用油が好ましく、例えば、オリーブ油、ヤシ油、大豆油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ナタネ油、落花生油、ツバキ油等が挙げられ、これらの他、安全な油として、中鎖脂肪酸トリグリセリド等も挙げられる。抽出方法は公知の方法を適宜選択して用いればよい。 現在では、高品質のマスティックエッセンシャルオイルが市販されており、これらを用いることができる。市販のマスティックエッセンシャルオイルとしては、例えば、Mastiha Oil(The Chios Gum Mastic Growers Association製;輸入元:(株)中村カイロ協会)や、プラナロム社、フィトアロマ研究所等が輸入販売している製品が挙げられる。 本発明で用いるグレープフルーツ種子抽出物は、食品添加物として広く用いられており、多数の市販品が入手可能である。グレープフルーツ種子抽出物の市販品には、グラム陽性菌、グラム陰性菌、カビ(真菌)等に優れた抑制効果を有すると謳った製品もあるが、各種の口腔内病原細菌について具体的なデータは示されていない。 グレープフルーツ種子抽出物の市販品としては、例えば、Desfan(株式会社アデプト、食品添加物天然抗菌剤)、GSE(NutriBiotic社製、グレープフルーツ種子抽出物)や、プラナロム社、フィトアロマ研究所等が輸入販売している製品が挙げられる。 本発明の口腔用組成物中のマスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツ種子抽出物の合計の濃度は、適用部位、その症状の度合い、組成物の形態等に合わせて適宜決定すればよい。合計の濃度は、0.01〜10重量%程度まで可能であるが、本発明の口腔用組成物は、マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツ種子抽出物との相乗効果により、低濃度でも高い抗菌性を示すため、例えば、0.01〜2重量%でも十分な効果が得られ、実施例でも示す通り、1重量%以下でも顕著な抗菌性を示す。 マスティックエッセンシャルオイルとグレープフルーツ種子抽出物の配合重量比も、特に限定されず、適用部位、その症状の度合い、組成物の形態等に合わせて適宜決定すればよい。マスティックエッセンシャルオイル:グレープフルーツ種子抽出物の重量比は、例えば1:10〜10:1の範囲内であり、1:1〜10:1の範囲内が好ましく、2:1〜5:1の範囲内がより好ましい。 より具体的には、マスティックエッセンシャルオイル0.1〜0.9重量%、好ましくは0.2〜0.8重量%で用いる。尚、グレープフルーツ種子抽出物は、マスティックエッセンシャルオイルの濃度に応じて適宜決定すればよく、例えば、0.01〜0.5重量%の濃度で用いるのが好ましい。 上記有効成分以外に、歯周病の予防・治療に有効な薬効成分を配合することもできる。このような成分としては、例えば、歯周病原細菌に対する抗菌活性を有する成分、消炎剤等が挙げられる。上記の成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 歯周病原細菌に対する抗菌活性を有する成分としては、公知の抗菌剤を用いることができ、例えば、マスティック、グレープフルーツ種子抽出物、シコン(紫根)、ニクズク、ビンロウジ、ヨモギ、オオバク、ボタンピ、オウゴン、ダイオウ(大黄)、ノギクカ、ヤクモソウ、熊笹、プロポリス等の植物成分が好ましく、マスティック、グレープフルーツ種子抽出物等の植物成分がより好ましい。 本発明の組成物は、各種の剤形で用いることができるが、洗口剤(うがい薬)、リンス液、歯磨き剤等として用いるか、塗布剤、あるいはパップ剤として口内等の患部に貼り付けて用いることが好ましく、洗口剤として用いることが特に好ましい。 本発明の口腔用組成物には、上記成分の他、用途や剤形に応じて、溶媒、香料、清涼剤、甘味剤、着色剤、界面活性剤、潤滑剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、賦形剤、消炎剤、薬用成分等の通常口腔用に用いられている添加剤をさらに含むことができる。上記添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 溶媒としては、エタノール、水等の生体適合性の良いものを用いることが好ましい。 香料としては、メントール、ペパーミント油、スペアミント油、オレンジ油、レモン油、ユーカリ油、ハッカ油、アカシア油、ウイキョウ油、クエントウ油、カラムス油、ショウノウ油、ニッケイ油、ケイ皮油、ケイ葉油、バラ油、ビャクダン油、チョウジ油、ハーブ油、バナナ油、リンゴ油、サリチル酸メチル、カルボン、アネトール、リモネン等のテルペン類;及び調合香料等が挙げられる。 甘味料としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、キシリトール、ステビオサイド、ステビアエキス、レバウディオサイド、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスベリジルジヒドロキシカルコン、ペリラルチン、タウマチン、グリチルチン、グリチルリチンモノグルコサイド、ヘルナンズルチン、トレハロース、アスパルテーム、ソルビット等が挙げられる。 また、調味剤として、梅果実エキス、乳酸、乳酸ナトリウム等を配合してもよい。 着色剤としては、青色1号、黄色4号等の法定色素、二酸化チタン、カルメル等が挙げられる。 界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられる。具体的には、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラウロイルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N−アシルタウリン塩、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はその脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。 潤滑剤としては、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール等の糖アルコール;グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。 増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム(セルロースガム)、メチルセルロース、ヒドロキシエチル、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩、ジュランガム、キサンタンガム、グアガム、トラガントガム、カラヤガム、ビーガム、アラビアガム等のガム類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル等が挙げられる。 pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、酢酸等の有機酸及びその塩類;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸リチウム、尿素、アミノ酸オリゴマー、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム等の無機酸カルシウム塩、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、マロン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、フィチン酸カルシウム等の有機酸カルシウム塩等が挙げられる。 防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、イソプロピルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、フェノキシエタノール、ソルビン酸等が挙げられる。 消炎剤としては、例えば、グリチルリチン酸及びその塩類、グリチルレチン酸及びその塩類、トラネキサム酸、塩化リゾチーム、オウバクエキス、トウキ軟エキス、酢酸dl−αトコフェロール、ニコチン酸dl−αトコフェロール、イプシロアミノカプロン酸、アズレンスルホン酸塩、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン等が挙げられる。 薬効成分としては、アラントイン、酢酸トコフェロール、イソプロピルメチルフェノール、デキストラーゼ、クロロフィル、銅クロロフィルナトリウム、フラボノイド、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキサイドディスムターゼ、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムアラントイン、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、ジヒドロコレスタノール、ビサボロール、グリセロフォスフェート、塩化セチルピリジニウム、水溶性無機リン酸化合物、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化カリウム、フッ化ケイ素酸ナトリウム、フッ化アルミニウム、フッ化銀、フッ化水素酸ヘキシルアミン、フッ化水素酸デカノールアミン、フッ化水素酸オクタデセニルアミン等のフッ化物、エデト酸、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸銅、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化銅、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6、パントテン酸塩等のビタミン類、グリシン、リジン、ヒスチジン等のアミノ酸類、塩化ナトリウム、重曹、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、ザルコシネート、カテキン類等のポリフェノール化合物類、生薬等が挙げられる。 上記の他、基剤、可溶化剤、洗浄剤等を、剤型に応じて配合することができる。 以下、口腔用組成物の歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び真菌の代表的な菌に対する抗菌性試験結果を示して、本発明をより具体的に説明する。試験に用いた組成物(以下、検体という): 検体1:下記表1に示す濃度でマスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツ種子抽出物を含有するジェル状歯磨き剤組成物 検体2:下記表1に示す濃度でマスティックエッセンシャルオイルのみを含有するジェル状歯磨き剤組成物 検体1及び2は、上記有効成分以外は同一の組成とした。上記有効成分以外の組成物の構成成分には、基剤、可溶化剤、増粘剤、消炎剤、殺菌剤、洗浄剤、pH調整剤、湿潤剤、清涼剤、溶剤及び精製水を含む。 検体に用いたマスティックエッセンシャルオイルは、Mastiha Oil(The Chios Gum Mastic Growers Association製;輸入元:(株)中村カイロ協会)であり、グレープフルーツ種子抽出物は、Desfan-100(輸入元:株式会社アデプト)であった。[試験方法]1)試験菌:(A)歯周病原細菌:Porphyromonas gingivalis JCM 8525(ジンジバリス菌)(B)齲蝕病原細菌:Streptococcus mutans IFO 13955(ミュータンス菌)(C)真菌:Candida albicans NBRC 1594(カンジダ)2)菌数測定用培地及び培養条件:試験菌(A): 5%馬脱繊維血液加Brucella Agar(BBL)、平板塗抹培養法、35℃±1℃,5〜7日間嫌気培養試験菌(B): SCDLP寒天培地[日本製薬株式会社]、混釈平板培養法、35℃±1℃、2日間好気培養試験菌(C): GPLP寒天培地[日本製薬株式会社]、混釈平板培養法、25℃±1℃、2日間好気培養3)試験菌液の調製:試験菌(A): 試験菌を5%馬脱繊維血液加Brucella Agarで35℃±1℃、4〜7日間嫌気培養した後、生理食塩水に浮遊させ、菌数が108〜109/mLとなるように調製し、試験菌液とした。試験菌(B): 試験菌を普通寒天培地[栄研化学株式会社]で35℃±1℃、18〜24時間好気培養した後、精製水に浮遊させ、菌数が107〜108/mLとなるように調製し、試験菌液とした。試験菌(C): 試験菌をPotato Dextrose Agar(Difco)で25℃±1℃、2日間好気培養した後、精製水に浮遊させ、菌数が107〜108/mLとなるように調製し、試験菌液とした。4)試験操作 検体3gに、各試験菌液を0.03mL接種し、試料とした。室温で保存し、5及び15分後に試料をSCDLP培地[日本製薬株式会社]で直ちに10倍[試験菌(A)の検体1)は100倍]に希釈し、試料中の生菌数を、菌数測定用培地を用いて測定した。 尚、対照として、精製水を用いて同様に試験し、開始時及び15分後(試験菌(A)は開始時並びに5及び15分後)について生菌数を測定した。 菌液接種直後の対照の生菌数を測定し、開始時の生菌数とした。 結果を下記表2に示す。また、開始時の生菌数を100%としたときの各検体の菌に対する抑制率を図1〜3に示す。 表2中の生菌数「<10」及び「<1000」は、菌の検出限界より低い、即ち、菌を検出しなかったことを意味する。ジンジバリス菌(成人性歯周病原細菌): 検体1(本発明の口腔用組成物)では、5分及び15分の時間経過において、抗菌性が極めて高く、生菌が検出されなかったのに対し、検体2(マスティックエッセンシャルオイルのみ)では、5分及び15分の時間経過において開始時の約10分1に生菌数が低下した。 検体1では、15分以上培養を続けたとしても、菌は発生しないと推測されるが、検体2では、時間の経過、口腔環境の変化によって生菌数が増加していくと推測される。 この結果から、本発明の口腔用組成物は、ジンジバリス菌に対し非常に顕著な抑制効果が認められる。ミュータンス菌(齲蝕病原細菌): 検体1では、5分の時間経過において生菌は検出されず、15分後においても菌の発生率は0・02%であり、強い抑制効果が認められた。 検体2では、5分及び15分の時間経過において抑制効果が弱く、ミュータンス菌に対する抗菌性は認められなかった。カンジダ菌(真菌): 検体1では、5分後及び15分後において抑制効果が認められたが、検体2では、抑制効果は認められなかった。 検体1の15分後の菌の抑制率は80%と高い抗菌性が認められたが、検体2については抗菌性が認められなかった。 カンジダ菌の増殖抑制は口腔カンジダ症の予防・治療に有効であるばかりでなく、カンジダ菌を抑制することにより、歯肉縁下のバイオフィルムの形成防止に効果があると考えられ歯周病の発生抑制も期待できる。 本発明の口腔用組成物は、人体に対して安全な成分を用い、口腔内病原細菌は顕著に抑制するが、人体に有益な口腔内常在菌のバランスは崩さないため、免疫力の低い小児や高齢者にも用いることができ、口腔内の衛生を保持する上で非常に有用である。 本発明の口腔用組成物は、日常生活の中での歯周病、齲蝕、口腔カンジダ症の予防・治療に有用である。A16333全文3 マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツ種子抽出物を含む口腔用組成物。 歯周病原細菌、齲蝕病原細菌及び/又は真菌に対する抗菌性を有する請求項1に記載の口腔用組成物。 Porphyromonas gingivalis、Streptococcus mutans及び/又はCandida albicansに対する抗菌性を有する請求項2に記載の口腔用組成物。 前記マスティックエッセンシャルオイル及びグレープフルーツ種子抽出物の濃度が、合計で1.0重量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。 前記マスティックエッセンシャルオイルと前記グレープフルーツ種子抽出物の配合重量比が、1:1〜10:1の範囲内である請求項1〜4のいずれかに記載の口腔用組成物。 歯磨き剤又は洗口剤である請求項1〜5のいずれかに記載の口腔用組成物。 請求項1〜6のいずれかに記載の口腔用組成物からなる歯周病予防・治療剤。