生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_細胞培養用培地
出願番号:2013157651
年次:2015
IPC分類:C12N 1/00,C12P 21/08


特許情報キャッシュ

眞殿 慧子 城戸 優英 井戸垣 秀聡 JP 2015027265 公開特許公報(A) 20150212 2013157651 20130730 細胞培養用培地 ダイソー株式会社 000108993 眞殿 慧子 城戸 優英 井戸垣 秀聡 C12N 1/00 20060101AFI20150116BHJP C12P 21/08 20060101ALI20150116BHJP JPC12N1/00 GC12P21/08 10 1 OL 9 4B064 4B065 4B064AG27 4B064CA19 4B064CD13 4B065AA91X 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA01 4B065BB12 4B065CA25 本発明は、疎水性D−アミノ酸を含む細胞培養用培地、および当該培地の有用物質製造のための使用に関する。 遺伝子組換え技術を利用して、タンパク質、ペプチドが人為的に生産されている。とりわけ医薬分野においては、医薬に有用なタンパク質(例えば、ヒト化抗体、ヒト抗体等)が培養細胞を利用して製造されている。 細胞の培養に用いられる培地としては、古くより牛血清を添加した血清培地が主体であったが、医薬品生産においては病原体混入等のリスクもあり血清を含まない無血清培地が求められている。しかし、血清には細胞増殖にかかわる種々の増殖因子が含まれており、単純に血清を欠如したのみでは、細胞増殖やタンパク質生産性が著しく抑制される。そのため、多くの場合は、血清代替物質としてインスリンやトランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム等が使用されている。しかし、無血清培地、特に化学組成が明確な物質のみで構成される培地(Chemically defined培地)では、従来の血清培地に比べると細胞増殖やタンパク質生産性において劣る。その改善のため、酵母や大豆加水分解物等も使用されることがあり、このようなタンパク加水分解物は細胞増殖に極めて有効に働くことが知られている(特許文献1)。しかし、タンパク加水分解物は組成未知の成分も多く存在する複合素材であるため、医薬製造に使用する原料として安全性の面から好ましいものではない。 上記課題を解決すべく、血清を用いない培地が検討されている。なお、無血清培地では、血清中に含まれる各成分の不足を補うため、必須アミノ酸や成長因子が添加されている。しかしながら、培養に用いる細胞によっては、アミノ酸濃度が好適な範囲を外れる場合やアミノ酸の代謝産物等によって、細胞増殖の阻害を引き起こすという問題があった。また、成長因子として用いられているものの多くは、動物や組み換えタンパク由来であり、細胞のウイルス汚染の問題や培地が高価となる問題があった。この問題を解決するために、特定のL-アミノ酸のみを培地に添加することで細胞増殖を改善する方法が報告されている。(特許文献2) 近年、L-アミノ酸とは異なる生理機能を有するD-アミノ酸が注目されている。D-アミノ酸は、従来は生体で代謝することができないと考えられていたため、細菌の細胞膜中のペプチドグリカンの構成成分等の極めて限られた部位にしか存在しない生体成分とされており、生体に対する有効性についてはあまり検証されていなかった。しかし近年、植物や哺乳類においてもD−アミノ酸が生理機能を有していることが徐々に明らかとなってきており、D−アミノ酸の生理的な機能について様々な研究が進められている。 実際に、植物細胞での紅色色素生産において、芳香族D-アミノ酸を添加することにより生産性が高まることが報告されている(特許文献3)。また、線維芽細胞の増殖を抑制するためにL-バリンの代わりにD-バリンを用いた例もある(特許文献4)。しかしながら、動物細胞培養において培地成分に特定のD-アミノ酸を培地添加剤として用いた効果に関する知見は乏しく、上記の培地および培養技術を動物細胞培養に応用するには十分なものとは言えない。特表2002−520014特開2004−275047特開平5−244961特開平7−241190 本発明は、疎水性D−アミノ酸を含む細胞培養用培地、当該培地の有用物質製造のための使用を提供することを課題とする。 本発明者らは、培地成分として特定の疎水性D−アミノ酸が細胞においてタンパク質等の有用物質の生産量を増大させることを見出し、これに基づき本発明を完成させた。 本発明は、一つの側面として、疎水性D−アミノ酸を含む細胞培養用培地を提供する。 本発明は、一つの側面として、疎水性D−アミノ酸を含む細胞培養用培地を用いて細胞を培養する行程を含む、有用物質の製造方法を提供する。 本発明によれば、疎水性D−アミノ酸を有効成分とする安価で安全性の高い優れた動物細胞用培地を提供することができる。本発明の疎水性D−アミノ酸を含む細胞培養用培地は、細胞の形態や種類(特に形質転換細胞)等に限定されず増殖を促進させ、有用物質の生産量を増大させる。即ち、本発明が提供する細胞培養用培地および当該培地を用いた有用物質の製造方法は、細胞における有用物質の生産量を増大させることができ、抗体を利用した臨床診断薬製造、抗体医薬生産、再生医療、細胞治療等の分野での応用が可能である。CHO細胞培養時における生細胞数の経時的変化を示す図である。培養3〜4日目の1細胞あたりの抗体生産速度を示す図である。培養8日目の培養液中のIgG抗体濃度を示す図である。 本発明は、疎水性D−アミノ酸を含む細胞培養用培地、疎水性D−アミノ酸を含む細胞培養用培地を用いて細胞を培養する行程を含む、有用物質の製造方法を提供する。疎水性D−アミノ酸 本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンを例示することができる。なかでも、容易に入手可能な点で、疎水性D−アミノ酸のバリン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニンがより好ましく、メチオニンがさらに好ましい。また、上述した疎水性D−アミノ酸を2種以上混合して用いることも可能である。 本発明に用いることのできる疎水性D−アミノ酸は、一水塩、無水物等のいずれも含まれる。また、塩としては、塩酸塩、ナトリウム塩、酢酸塩、硫酸塩等をあげることができる。 本発明の疎水性D−アミノ酸を含む細胞培養用培地における疎水性D−アミノ酸の含有量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、例えば、0.002%(w/v)以上であればよく、0.004%(w/v)以上が好ましい。また、1%(w/v)以下であればよく、0.5%(w/v)以下であることが好ましい。また、培地中における疎水性D-アミノ酸の含有量は、0.002〜1%(w/v)であればよく、0.004〜0.5%(w/v)が好ましい。なお、疎水性D−アミノ酸を2種以上混合して用いる場合は、上記範囲であれば本発明の効果を得ることができる。 本発明の培地にD−バリンを添加する場合の添加量は、0.004%(w/v)以上であればよく、0.08%(w/v)以上が好ましい。また、1%(w/v)以下であればよく、0.5%(w/v)以下が好ましい。また、培地中におけるD-バリンの含有量は、0.004〜1%(w/v)の範囲であればよく、0.08〜0.5%(w/v)の範囲が好ましい。 本発明の培地にD−ロイシンを添加する場合の添加量は、0.002%(w/v)以上であればよく、0.004%(w/v)以上が好ましい。また、1%(w/v)以下であればよく、0.5%(w/v)以下が好ましい。また、培地中におけるD-ロイシンの含有量は、0.002〜1%(w/v)の範囲であればよく、0.004〜0.5%(w/v)の範囲が好ましい。 本発明の培地にD−フェニルアラニンを添加する場合の添加量は、0.004%(w/v)以上であればよく、0.08%(w/v)以上が好ましい。また、1%(w/v)以下であればよく、0.5%(w/v)以下が好ましい。また、培地中におけるD-フェニルアラニンの含有量は、0.004〜1%(w/v)の範囲であればよく、0.08〜0.5%(w/v)の範囲が好ましい。 本発明の培地にD−メチオニンを添加する場合の添加量は、0.002%(w/v)以上であればよく、0.004%(w/v)以上が好ましく、0.08%(w/v)以上がより好ましい。また、1%(w/v)以下であればよく、0.5%(w/v)以下が好ましく、0.3%(w/v)以下がより好ましい。また、培地中におけるD-メチオニンの含有量は、0.002〜1%(w/v)の範囲であればよく、0.004〜0.5%(w/v)の範囲が好ましく、0.08〜0.3%(w/v)の範囲がより好ましい。 上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」は、細胞での有用物質の産生促進に使用することができる。産生促進は、そのメカニズムに関係なく、一定時間内に有用物質の産生量が増大すればよく、例えば、細胞増殖を促進することにより有用物質の産生を増大させてもよく、個々の細胞における有用物質の発現量を増大させることにより有用物質の産生を増大させてもよく、その両方でもよい。よって、上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」は、細胞増殖促進剤として、細胞における有用物質の発現促進剤として、またはその両方として使用することができる。 上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」は、細胞培養用培地に添加することにより有用物質の産生促進に使用することができる。また、好ましい実施態様において、上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」は、細胞培養用培地に添加することにより、無血清下または血清の濃度を低減させた条件下(例えば、5、3または1%(v/v)FBS含有条件下)で有用物質の産生を促進する。よって、上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」は、単独で培地添加因子として使用できる。 また、本発明の培地には、他の有用物質の産生促進に寄与する物質を用いることができる。例えば、ビタミン類、核酸類、アミン類、糖類、有機酸、微量元素、塩類等を含有させることができる。ビタミン類としては、塩化コリン、シアノコバラミン、ニコチン酸アミド、D−パントテン酸又はその塩、塩酸ピリドキシン又は塩酸ピリドキサール、D−ビオチン、塩酸チアミン、リボフラビン、葉酸、DL−α−リポ酸、ミオ−イノシトール等が挙げられる。核酸類としては、アデニン又はその塩、チミジン等が挙げられる。アミン類としては、プトレッシン又はその塩等が挙げられる。 また、微量元素としては、亜セレン酸ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、ケイ酸ナトリウム、バナジン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、塩化ニッケル(II)、塩化第一スズ、硫酸マンガン等が挙げられる。また、有機酸としてはピルビン酸又はその塩等が挙げられ、糖としてはブドウ糖等が挙げられる。 また、塩類としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、リン酸一水素二ナトリウム等が挙げられる。 上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」を添加する培地は、例えば、EMEM、αMEM、DMEM、Ham's medium、RPMI1640、Fisher's mediumまたはそれらの混合物であってもよい。これらの培地に上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」を添加することにより、有用物質の製造に有用な無血清培地を調製でき、または血清の濃度を低減させた培地(例えば、5、3または1%(v/v)FBS含有培地)を調製することができる。また、増殖因子(例えば、EGF、aFGF、bFGF、HGF、IGF-1、IGF-2、NGF、これらの類似の成長因子など)又は血清代替物質、サイトカイン(インターロイキン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロンなど)、接着因子または細胞外マトリックス成分(例えばコラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよび類似物)、脂質(例えば、りん脂質、コレステロール、ウシコレステロール濃縮物、脂肪酸、スフィンゴリピッドおよび類似物)などを添加することにより、血清非含有で使用することを前提とした無血清培地、無タンパク培地またはケミカリー・ディファインド培地に添加して用いることもできる。これらの培地の例としては、SAFC Biosciences社製のX-CELL 302, EX-CELL 325-PF、EX-CELL CD CHO等、Life Technologies社製のSFM II、CHO-III-PFM、CD CHO等、また、Irvine Scientific社製のIS-CHO CD、BalanCD Growth A Medium等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、このような無血清培地、無タンパク培地、またはケミカリー・ディファインド培地を任意の比率で2種以上を混合した混合培地に対しても同様に用いることができる。このような上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」を含有する培地は、有用物質の製造に使用することができる。 具体的には、有用物質を産生する細胞を、上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」を含む培地で培養し、細胞から産生された有用物質を単離することを含む方法により有用物質を製造できる。当該培地は、無血清培地または血清の濃度を低減させた培地(例えば、5、3または1%(v/v)FBS含有培地)とすることができる。例えば、有用物質として抗体を製造する場合には、抗体産生細胞を、上記で説明した「本発明で用いることのできる疎水性D−アミノ酸」を含む培地で培養し、抗体を精製することを含む方法により抗体を製造できる。抗体の精製工程は、例えば、プロテインAアフィニティーカラムクロマトグラフィー、低pH処理によるウイルス不活化、その他のクロマトグラフィー工程(陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー等、ウイルス除去フィルターによる濾過、濃縮工程、最終濾過が含まれる。 本明細書において、有用物質とは、医薬、農薬、食品、その他化学工業に有用な物質であれば特に制限はない。好ましくは、抗体、酵素(ウロキナーゼ等)、ホルモン(インスリン等)、サイトカイン(インターフェロン、インターロイキン、エリスロポエチン、G−CSF、GM−CSF等)等の生理活性タンパク質、ペプチド等が挙げられる。抗体は、例えば、マウスモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体である。また、免疫グロブリンのクラスは特に限定されないが、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2等)である。有用物質は、外来遺伝子の発現産物である組み換えタンパク質であり得る。 本明細書において、細胞については組換えタンパク等の有用物質生産に使用可能な細胞であれば特に限定されず、CHO細胞、BHK細胞、HepG2細胞、rodent myeloma細胞(例えば、SP2/O細胞、NSO細胞等のマウス骨髄腫細胞等)、ハイブリドーマ、昆虫細胞およびそれらの細胞に外来遺伝子を導入した形質転換細胞が例として挙げられる。有用物質として抗体を産生させる場合は、CHO細胞、SP2/O細胞またはNSO細胞等を細胞融合することによって得られるハイブリドーマ等を抗体産生細胞として採用することができる。 培養温度、CO2濃度、培養時間等の培養条件は、培養する細胞の種類にとって適宜選択することができる。一般的には、培養温度は特に限定されないが、例えば約30〜40℃、好ましくは約37℃である。また、CO2濃度は、例えば約1〜15%、好ましくは5〜10%である。培養時間は、例えば約1日〜21日間である。 本発明の培地を用いた培養方法としては、大きく回分培養法(Batch培養法)、および流加培養法(Fed−Batch培養法)、連続培養法等を例示することができる。 回分培養法は培養のたびに培地を作成して培養途中の培地追加をしない方法である。設備的には簡素であり雑菌汚染のリスクが少ないというメリットがある。流加培養法は培養途中に培地を追加することで栄養素枯渇や有害物質蓄積による細胞増殖阻害をある程度回避できるため、回分培養と比較してより長期の培養が可能となり目的タンパクを高濃度に生産させることができる。連続培養法は新しい培地を追加すると同時に古い培地を抜き取ることにより、培養槽内で生じる有害物質の蓄積と栄養素の枯渇を回避し、連続的に細胞培養と目的タンパクの生産を行なう方法である。連続培養の応用として、膜濾過や重力による細胞沈降を用いることにより、細胞を培養槽内に残したまま古い培地成分のみを抜き取る方法もあり、これにより細胞を高密度培養して目的タンパクの生産性を向上させる方法もある。 以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1 IgG遺伝子を導入しIgG抗体を分泌産生するCHO細胞株(ATCC CRL−12445)をATCCより購入して用いた。このCHO細胞株を10%FBS含有DMEMにて培養した後回収し、1%FBS含有DMEMに懸濁し、12wellマルチプレートに4×104cells/wellとなるように播種した。下記の評価検体である疎水性D−アミノ酸を滅菌超純水に溶解し、最終濃度40、200、1,000μg/ml(0.004%(w/v)、0.02%(w/v)、0.1%(w/v))となるように各wellに添加した。また、コントロールとして、検体と等量の滅菌超純水を添加した。培養温度37℃、CO2濃度5%で培養した。3日培養後、培養液中のIgGの濃度を下記に記載の方法で測定した。結果は、コントロールwellの培養液中のIgG濃度(つまり滅菌超純水のみを添加したwellの培養液中のIgG濃度)を100として、評価検体である各疎水性D−アミノ酸を添加したwellの培養液中のIgGの濃度を表1に示した。下記全ての評価検体について、IgG産生量の増加が認められた。評価検体:D−バリン(和光純薬工業株式会社);D−ロイシン(和光純薬工業株式会社);D−フェニルアラニン(東京化成工業株式会社);D−メチオニン(ペプチド研究所株式会社);IgG産生量の測定方法 Bethyl Laboratories, Inc.製のhuman IgG ELISA測定キット(Human IgG ELISA Quantitation Set, ELISA StarterAccessory Kit)を用い、細胞培養液中のIgG濃度を測定した。実施例2 IgG遺伝子を導入しIgG抗体を分泌産生するCHO細胞株(ATCC CRL−12445)をATCCより購入して用いた。このCHO細胞株をIrvine Scientific社製BalanCD Growth A培地(200nM MTX)に馴化して浮遊性細胞として培養した。250mlの三角フラスコに、上記培地を60ml添加したものに、上記培地に評価検体であるD−メチオニンを滅菌超純水に溶解し、培地中の最終濃度1000μg/mlとなるように添加した。また、比較検体としてL-メチオニンを滅菌超純水に溶解し、同様に培地中の最終濃度が1000μg/mlとなるように添加した。また、コントロールとして検体添加量と等量の滅菌超純水を添加した。培養温度37℃、CO2濃度5%、攪拌120rpmで振盪培養した。培養0、2、3、4、7、8日目の培養液をサンプリングし、生細胞数、及びIgG抗体濃度を測定した。CHO細胞培養時における生細胞数の経時的変化を図1に示す。また、1細胞あたりの抗体生産速度を図2及び図3に示す。培養8日目の培養液中のIgG抗体濃度を図4に示す。 図1に示すように、D−メチオニンを加えた培地では超純水添加(コントロール)の場合と同様の細胞増殖性を示したが、L−メチオニンを加えた培地では細胞増殖が阻害された。一方、図2に示すように培養中の1細胞あたりの抗体生産速度としては、超純水添加(コントロール)の値と比較してD−メチオニンを添加した培地で43%、L−メチオニンを添加した培地で81%それぞれ増加した。このことは、メチオニン添加により細胞あたりの抗体生産能力が増強されたことを意味する。また、図3に示すように培養液中に生産されるIgG抗体量は、超純水添加(コントロール)の場合と比較してD−メチオニンを添加した培地で7%増加し、L−メチオニンを添加した培地では6%減少した。これはL−メチオニンでは、細胞あたりの抗体生産速度向上効果よりも細胞増殖抑制効果が大きく働き、結果的に全体としての抗体生産量が減少してしまったためである。一方、D−メチオニンは、L−メチオニンと異なり細胞増殖阻害効果がないため培養液中に生産されるIgG抗体量を効果的に増加させることが可能である。 本発明が提供する培地、および製造方法は、細胞を用いた有用物質の生産に利用できる。 疎水性D‐アミノ酸を含有する動物細胞培養用培地。 疎水性D−アミノ酸が、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、及びメチオニンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の培地。 疎水性D‐アミノ酸の含有量が0.002〜1%(w/v)であることを特徴する請求項1又は2に記載の培地。 細胞が、形質転換細胞である、請求項1から3のいずれかに記載の培地。 形質転換細胞が、CHO細胞である請求項1から4のいずれかに記載の培地。 培地がIgG抗体産生用である、請求項1から5のいずれかに記載の培地。 請求項1から6のいずれかに記載の培地を用いて細胞を培養することを含む、有用物質の製造方法。 細胞が、形質転換細胞である、請求項7に記載の方法。 形質転換細胞が、CHO細胞である請求項7または8に記載の方法 有用物質がIgG抗体である、請求項7から9のいずれかに記載の方法。 【課題】細胞培養用培地、および当該培地の有用物質製造のための使用を提供する。【解決手段】疎水性D-アミノ酸を含む動物細胞培養用培地、疎水性D-アミノ酸を含む細胞培養用培地を用いて細胞を培養する行程を含む有用物質の製造方法。疎水性D−アミノ酸が、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、及びメチオニンからなる群より選択される少なくとも1種であり、含有量が0.002〜1%(w/v)である。培用する細胞が、形質転換細胞であり、CHO細胞である。生産される有用物質がIgG抗体である。【選択図】図1


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