タイトル: | 公開特許公報(A)_ヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、ヒドロキシ芳香族化合物製造用組成物及びヒドロキシル化反応前駆体 |
出願番号: | 2013150491 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07C 37/60,C07C 39/04,C07B 61/00 |
野田 周祐 ランパアス ハンス 山口 正志 JP 2015020981 公開特許公報(A) 20150202 2013150491 20130719 ヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、ヒドロキシ芳香族化合物製造用組成物及びヒドロキシル化反応前駆体 三菱化学株式会社 000005968 野田 周祐 ランパアス ハンス 山口 正志 C07C 37/60 20060101AFI20150106BHJP C07C 39/04 20060101ALI20150106BHJP C07B 61/00 20060101ALN20150106BHJP JPC07C37/60C07C39/04C07B61/00 300 14 OL 15 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC42 4H006BA10 4H006BA30 4H006BA33 4H006BA53 4H006BA71 4H006BB22 4H006BB31 4H006BC34 4H006BD20 4H006BE32 4H006FC52 4H006FE13 4H039CA60 4H039CC30 本発明は、ヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、その製造において用いられる組成物、及びヒドロキシ芳香族化合物の前駆体に関する。 フェノール等のヒドロキシ芳香族化合物は、各種工業原料や有用な中間体として広く使用されている。ヒドロキシ芳香族化合物の1つであるフェノールは、従来ベンゼンを原料としたクメン法によって製造する方法が広く知られている。しかし、クメン法は一旦、クメンを中間体として経由する工程を経るため、工程数、製造設備面でも不利である。そこでベンゼンを原料とし、直接酸化によってフェノールを製造する方法が種々検討されている。 直接酸化によるフェノールの製造方法としては、過酸化水素をゼオライト触媒共存下、ベンゼンからフェノールを製造する方法が検討されている。例えば特許文献1には、チタノシリケートと過酸化水素を用いて、スルホン系溶媒を用いることでベンゼンからフェノールを得る方法が開示されている。この方法は副生成物が水であるため、環境負荷が小さい点で有利である。特開平11−240847号公報 しかし、酸化反応によって得られたモノヒドロキシ体であるフェノールは、原料であるベンゼンよりも反応性が高い。そのためベンゼンの直接酸化を行なうと、フェノールが生成した後に、更に酸化反応が進行しやすく、ジヒドロキシ体等の副生成物ができ、フェノール等のモノヒドロキシ体の選択率が低いという問題がある。 本発明の課題は、ヒドロキシ芳香族化合物を直接酸化法で得るに際し、フェノールのようなモノヒドロキシ芳香族化合物の選択率が高い製造方法を提供することを課題とする。 過酸化水素と触媒の存在下で芳香族化合物を直接酸化する場合、例えば芳香族炭化水素化合物を原料として用いた場合、モノヒドロキシ芳香族化合物の選択率は低く、2つ以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ芳香族化合物が主生成物として得られる。これは酸化反応により得られたモノヒドロキシ芳香族化合物が、原料の芳香族化合物よりも反応性が高く、触媒と接触すると、得られたモノヒドロキシ芳香族化合物が原料よりも容易に酸化されてしまうためである。その結果、原料である芳香族化合物の酸化よりも、酸化されたヒドロキシ芳香族化合物のさらなる酸化、いわゆる逐次酸化反応が優先的に進み、2つ以上のヒドロキシ基で置換されたヒドロキシ芳香族化合物の選択率が上昇すると考えられる。 そして逐次酸化反応の進行に伴い、触媒が、逐次酸化で生成したヒドロキシ芳香族化合物と接触することで触媒の劣化も起こると考えられる。 本発明者らは、芳香族化合物を酸化する際に、過酸化物及び触媒と共に、ホスフィンオキシドを共存させることにより、モノヒドロキシ芳香族化合物の選択率が向上することを見出した。 すなわち第1の発明の要旨は、[1]芳香族化合物における芳香環上の少なくとも一部の水素を酸化して、ヒドロキシ芳香族化合物を製造する方法であって、過酸化物と触媒とホスフィンオキシドの存在下、前記芳香族化合物を酸化する工程を有することを特徴とする、ヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、[2]前記触媒が、珪素及びチタンを含む複合酸化物であることを特徴とする、上記[1]に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、[3]前記過酸化物が、過酸化水素及び有機過酸化物の少なくとも一種を含有することを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、[4]前記ホスフィンオキシドが、有機ホスフィンオキシドであることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか1に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、[5]前記芳香族化合物が、芳香族炭化水素化合物であることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれか1に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、[6]前記過酸化物に対する前記ホスフィンオキシドのモル比が0.01以上であることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか1に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、[7]前記酸化工程においてスルホン化合物をさらに共存させることを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれか1に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法、に存する。 また、第2の発明の要旨は、[8]芳香環上の少なくとも一部に水素原子を有する芳香族化合物を酸化して、ヒドロキシ芳香族化合物を製造するための組成物であって、前記芳香族化合物と、触媒と、ホスフィンオキシドとを構成成分として含むことを特徴とする、組成物、[9]前記触媒が、珪素及びチタンを含む複合酸化物であることを特徴とする、上記[8]に記載の組成物、[10]前記ホスフィンオキシドが、有機ホスフィンオキシドであることを特徴とする、上記[8]又は[9]に記載の組成物、[11]前記組成物が、スルホン化合物をさらに含むことを特徴とする、上記[8]〜[10]のいずれか1に記載の組成物、[12]前記芳香族化合物に対するホスフィンオキシドのモル比が、0.001以上であることを特徴とする上記[8]〜[11]のいずれか1に記載の組成物、に在する。 さらに第3の発明の要旨は、[13]芳香族化合物と触媒とホスフィンオキシドの存在下、前記芳香族化合物における芳香環上の少なくとも一部の水素を酸化してヒドロキシ芳香族化合物を製造する工程で得られる前駆体であって、前記前駆体が、前記ヒドロキシ芳香族化合物と前記ホスフィンオキシドとの会合体であることを特徴とする、ヒドロキシル化反応前駆体、[14]前記ホスフィンオキシドが、有機ホスフィンオキシドであることを特徴とする、上記[13]に記載のヒドロキシル化反応前駆体、に存する。 第1の発明(本発明の製造方法)によれば、ヒドロキシ芳香族化合物を直接酸化法で得るに際し、高い選択率でモノヒドロキシ芳香族化合物が得られる。さらに使用する触媒の経時劣化が抑制されるという効果も得られる。 また第2の発明(本発明の組成物)によれば、モノヒドロキシ芳香族化合物を得るに際し、過酸化物の存在下で用いることにより、簡便かつ高い選択率でモノヒドロキシ芳香族化合物を製造することができる。 また第3の発明(本発明の反応前駆体)によれば、ヒドロキシ芳香族化合物を直接酸化法で得るに際し、高い選択率でモノヒドロキシ芳香族化合物を得ることができる。 以下、本発明の実施の形態について第1の発明から第3の発明の順に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。 <第1の発明:ヒドロキシ芳香族化合物の製造方法> 本発明の第1の発明は、過酸化物と触媒とホスフィンオキシドの存在下、芳香族化合物における芳香族環上の少なくとも一部の水素を酸化することによりヒドロキシ芳香族化合物を製造する方法である。以下順に詳述する。 (芳香族化合物) 第1の発明で用いられる芳香族化合物は、5つ以上の原子から構成される芳香族性を有する環状構造(以下、芳香環)を有し、その芳香環を構成する原子上に、少なくとも1つの水素原子を有する(以下、単に「原料」ということがある。)。また芳香環を構成する原子であって、水素原子を有する原子以外の原子上には、水素原子以外の置換基を有していてもよい。前記の置換基としては、例えばハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、カルボキシル基、ホスフィノ基、スルホニル基等が挙げられる。 第1の発明で用いられる芳香族化合物は、その芳香環を構成する炭素原子上に、少なくとも1つ以上の水素原子を有していれば、炭素環芳香族化合物(芳香族炭化水素)でも、複素環芳香族化合物でもよく、また単環芳香族化合物、多環芳香族化合物、及び縮合環芳香族化合物のいずれでもよい。 芳香族炭化水素の単環芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、エチルベンゼン等のアルキルベンゼン類、前記ベンゼン及びアルキルベンゼン類のベンゼン環上の水素原子の1つ以上がハロゲン、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ホスフィノ基、スルホニル基等に置換されたベンゼン置換体等を挙げることができる。 芳香族炭化水素の多環芳香族化合物としては、例えば、ビフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、テトラフェニルメタン等が挙げられる。 芳香族炭化水素の縮合環芳香族化合物としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、インデン、アズレン、フルオレン、ナフタセン、ピレン、トリフェニレンなどが挙げられる。 上記の多環芳香族化合物や縮合環芳香族化合物は、これらの化合物が有する芳香環上の水素原子の1つ以上が、ハロゲン、アルキル基、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ホスフィノ基、スルホニル基等で置換されていてもよい。 複素環芳香族化合物の単環芳香族化合物としては、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアゾールなどの窒素原子を芳香環の構成原子に含むもの、フラン、ジオキサンなどの酸素原子を環の構成原子に含むもの、チオフェンなどの硫黄原子を環の構成原子に含むもの、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾールなどの2つ以上のヘテロ原子を環の構成原子に含むもの等を挙げることができる。 複素芳香族化合物の多環芳香族化合物としては、例えば、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、ベンゾジアゼピン、インドール、ベンズイミダゾール、プリンなどの窒素原子を環の構成原子に含むもの、ベンゾフランなどの酸素原子を環の構成原子に含むもの、フェノキサジン、フェノチアジンなどの2つ以上のヘテロ原子を環の構成原子に含むもの等を挙げることができる。 第1の発明で用いられる芳香族化合物は、芳香族炭化水素化合物が好ましく、単環の芳香族炭化水素化合物がより好ましい。通常、芳香族化合物は、置換基がないものほど反応活性、特に酸化剤等に対する反応性が低く、置換基が入ることで反応活性が上がる。本発明は、ベンゼンやナフタレンのような置換基のない芳香族炭化水素を酸化し、それぞれフェノールやナフトールを選択率よく製造できることから、置換基を有さない芳香族炭化水素の酸化に好適であり、特にベンゼンを原料として直接酸化によりフェノールを製造する場合に好適である。 (過酸化物) 第1の発明で用いられる過酸化物は、分子内にペルオキシ基を有し、酸化剤として機能するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素;や、過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、メチルシクロヘキシルヒドロペルオキシド、過酸化アセトン、クメンヒドロペルオキシド、イソブチルベンゼンヒドロペルオキシド、ジメチルジオキシラン、メチルエチルケトンペルオキシド等の有機過酸化物;過硫酸等が挙げられる。 このうち操作性、反応性の面で、過酸化水素及び有機過酸化物の少なくとも一種を含有することが好ましく、これらは各々単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよいが、価格の面で過酸化水素が好ましい。 第1の発明で用いられる過酸化物の含有率は、特に限定されるものではなく、反応に供する芳香族化合物の反応性に応じて適宜調整することが可能である。過酸化物の含有率は、通常、芳香族化合物に対し、0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上であり、100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。過酸化物の使用量が上記の範囲であれば、過酸化物の反応系内における溜まり込みによる自己分解を回避することができる。 過酸化物の添加方法は、特に限定されないが、反応溶液中で過酸化物を速やかに消費させることができるように、反応の進行に合わせ、反応液中に過酸化物を少量ずつ加えることが好ましい。 過酸化水素及び有機化酸化物を混合して使用する際は、その混合比率は特に限定はされるものではないが、過酸化水素に対する有機過酸化物のモル比が、通常1以下であり、好ましくは0.1以下である。上記範囲であることで、製造コストの面で有利になるためである。 (触媒) 第1の発明で用いられる触媒は、上記過酸化物とともに芳香族化合物を酸化し得るものであれば特に限定はされない。具体的には珪素、チタン、モリブデン、パラジウム、金、タングステン、レニウム、白金等の金属の金属酸化物であり、これらの金属は単独で用いても、複数用いてもよい。特に本発明における反応活性が高いことから、珪素及びチタンを含む複合酸化物が好ましい。 (珪素及びチタンを含む複合酸化物) 上記珪素及びチタンを含む複合酸化物(以下、チタノシリケートということがある。)は、構成元素として珪素、チタン及び酸素を含む複合酸化物であり、これら以外の元素、例えば、アルミニウム、硼素、ガリウム、鉄、クロム等の元素を含んでいてもよいが、好ましくは珪素、チタン及び酸素で構成された複合酸化物である。 上記チタノシリケートは、過酸化物と、酸化反応を効率よく行なう活性種を形成し、芳香族化合物を酸化するものと考えられる。具体的には例えば、過酸化物が過酸化水素である場合、チタノシリケートが過酸化水素と反応し、チタンヒドロペルオキシド構造又はチタンペルオキソ構造を生成し、これが芳香族化合物を酸化すると考えられる。 上記チタノシリケートは、結晶性チタノシリケート、層状チタノシリケート、無定形のチタノシリケートのいずれでもよい。結晶性チタノシリケートとしては、特に限定されないが、例えば酸素10員環の細孔を有する結晶性チタノシリケートとしては、IZA(国際ゼオライト学会)の構造コードでMFI構造を有するTS−1(例えば、米国特許第4410501号)、MEL構造を有するTS−2(例えば、Journal of Catalysis 130, pp440−446, (1991))、MRE構造を有するTi−ZSM−48(例えば、Zeolite 15, pp164−170, (1995))、FER構造を有するTi−FER(例えば、Journal of Materials Chemistry 8, pp1685−1686, (1998))等が挙げられる。 酸素12員環の細孔を有する結晶性チタノシリケートとしては、IZAの構造コードで、BEA構造を有するTi−Beta(例えば、Journal of Catalysis 199, pp41−47, (2001))、MTW構造を有するTi−ZSM−12(例えば、Zeolite 15, pp236−242, (1995))、MOR構造を有するTi−MOR(例えば、The Journal of Physical Chemistry B 102, pp9297−9303, (1998))、ISV構造を有するTi−ITQ−7(例えば、Chemical Communications pp761−762,(2000))、MSE構造を有するMCM−68(例えば、Chemical Communications pp6224−6226,(2008))、MWW構造を有するTi−MWW(例えば、Chemistry Letters, pp774−775,(2000))、ETS−4やETS−10(例えば、Studies in Surface Science and Catalysis pp22-23(1995))等が挙げられる。 酸素14員環の細孔を有する結晶性チタノシリケートとしては、IZAの構造コードで、DON構造を有するTi−UTD−1(例えば、Studies in Surface Science and Catalysis 15, pp519−529,(1995))等が挙げられる。 層状チタノシリケートとは、例えば結晶性チタノシリケートを製造する際に用いる結晶性チタノシリケートの層状前駆体、結晶性チタノシリケートの層間を拡張したチタノシリケート等、層状構造を有するチタノシリケートの総称をいう。層状構造であることは、電子顕微鏡やX線回折パターンの測定により確認できる。また前記層状前駆体とは、脱水縮合等の処理を行なうことで結晶性チタノシリケートを形成するチタノシリケートをいう。具体的には、酸素10員環の細孔を有する層状チタノシリケートとしては、Ti−ITQ−6(例えば、Angewandte Chemie International Edition 39, pp1499−1501,(2000))等が挙げられる。 酸素12員環の細孔を有する層状チタノシリケートとしては、Ti−MWW前駆体(例えば、特開2005-262164号公報)、Ti−YNU−1(例えば、Angewandte Chemie International Edition 43, pp236−240,(2004))、Ti−MCM−36(例えば、Catalysis Letters,113, pp160-164, (2007))、Ti−MCM−56(例えば、Microporous and Mesoporous Materials 113, pp435−444,(2008))等が挙げられる。 無定形のチタノシリケートとしては、例えば、シリカ‐チタニアの複合酸化物や、メソポーラスチタノシリケートが挙げられる。メソポーラスチタノシリケートは、規則性のメソ細孔を有するチタノシリケートの総称であり、規則性メソ孔とは、メソ孔が規則的に繰り返し配列された構造をいう。メソ細孔とは、細孔径2nm〜10nmの細孔をいう。 具体的には、Ti−MCM−41(例えば、Microporous and Mesoporous Materials 10, pp259−271,(1997))、Ti−MCM−48(例えば、Chemical Communications pp145−146,(1996))、Ti−SBA−15(例えば、Chemistry Materials 14, pp1657−1664,(2002))、Ti−MMM−1 (例えば、Microporous and Mesoporous Materials 52, pp11-18, (2002)) 、Ti−HMS(国際公開WO96/29297号)、Ti−MSU−1(例えば、Science,269,pp1242,(1995))等が挙げられる。 第1の発明では、上記チタノシリケートを1種類又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。またこれらのチタノシリケートは、上記した文献に基づき合成して使用しても、市販品を購入して使用することもできる。 またこれらのチタノシリケートは、そのまま用いても、その表面を(NH4)HF2等のフッ素化剤での処理(Adv. Synth. Catal. 2007, 349, 979.)、シリル化剤での処理(特開昭62-185081号公報)、環状アミンでの処理(特開2011-212673号公報)等を行ない、用いることもできる。 第1の発明で使用可能なチタノシリケートは、好ましくは結晶性チタノシリケートであり、より好ましくは酸素10員環の細孔を有する結晶性チタノシリケートであり、さらに好ましくはMFI構造を有するTS−1である。TS−1は疎水性が高いため、原料である疎水性が高い芳香族化合物と反応液中で接触した際に、親和性を示し、芳香族化合物との反応が進行しやすいと考えられるためである。 特にベンゼンの酸化を行なう場合、TS−1は細孔径が小さく(5.4×5.6nm)、形状選択性がある、すなわち細孔内にベンゼンが入って反応してフェノールが得られた際に、細孔の大きさによってそれ以上の酸化反応が起こりにくくなるためより好ましい。 第1の発明で使用可能なチタノシリケートの珪素原子とチタン原子との割合は、特に限定されないが、原子比で通常Si/Ti=10以上であり、好ましくは20以上であり、通常500以下であり、好ましくは100以下である。珪素原子とチタン原子との割合を前記範囲にすることにより、オレフィンや芳香族化合物を酸化させる反応活性が高く、かつ不純物成分が少ない反応が可能となる。 第1の発明で使用可能なチタノシリケートの含有率は特に限定されないが、原料となる芳香族化合物に対して、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、通常30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。前記範囲の値にすることにより、原料溶液中に添加した触媒を十分に攪拌することができる。 (ホスフィンオキシド) 第1の発明では、芳香族化合物に対し、過酸化物、触媒とともに、ホスフィンオキシドを用いる。 ホスフィンオキシドは、下記一般式(1)で表わされるような構造を有する化合物であり、5価のリン原子が酸素原子と二重結合で結合し、さらにリン原子上に3つの置換基R1〜R3を有するものである。 置換基R1〜R3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つであり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。置換基R1〜R3は、好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1つである。 炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、それらは置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボキシル基、スルホン基等が挙げられ、スルホン基が好ましい。 また炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、それらは置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボキシル基、スルホン基等が挙げられ、スルホン基が好ましい。 またハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、塩素原子が好ましい。 第1の発明で用いられるホスフィンオキシドは、前述の一般式(1)を満たせば特に限定されないが、例えばトリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、ジフェニルメチルホスフィンオキシド、ジフェニルエチルホスフィンオキシド、フェニルジメチルホスフィンオキシド、フェニルジエチルホスフィンオキシド等の有機ホスフィンオキシドや、トリクロロホスフィンオキシド等の無機ホスフィンオキシドが挙げられ、好ましくは、反応性の面で、有機ホスフィンオキシドであり、より好ましくは、コスト面で有利な点でトリフェニルホスフィンオキシドである。 第1の発明で用いられるホスフィンオキシドの使用量は特に限定はされないが、原料である芳香族化合物の含有量に対して、通常、モル比で0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上であり、通常2以下であり、好ましくは1.1以下である。 またホスフィンオキシドの過酸化物に対する使用量は、特に限定はされないが、過酸化物の含有量に対して、通常モル比で0.01以上であり、好ましくは1以上であり、通常100以下であり、好ましくは10以下である。生成するヒドロキシ芳香族化合物のモル量は過酸化物の等量以下になるため、ホスフィンオキシドの下限値として好ましいのは等量となる1以上である。 (溶媒) 第1の発明は、上記酸化工程において溶媒を使用しないで芳香族化合物の芳香環上の水素原子を酸化することができるが、転化率を向上させる点で溶媒を使用する方が好ましい。 このような溶媒としては、芳香族化合物の水への溶解性を向上させる働きを有する溶媒が好ましい。また反応によってモノヒドロキシ芳香族化合物が得られた際に、後述する反応前駆体の分配率が、水よりも高い溶媒が好ましい。 第1の発明における反応系は、特に限定されるものではないが、通常、二相系反応で行なわれる。そのため、通常は過酸化物により活性化された触媒が水相に存在し、有機相を形成する原料の芳香族化合物と接触する部分で酸化反応が起こると考えられる。そしてホスフィンオキシドは、酸化反応により生成したヒドロキシ芳香族化合物と会合し、有機相中に溶解する。そのため、酸化剤との接触の機会が減少し、モノヒドロキシ芳香族化合物の選択率が向上すると考えられる。 上記の推定反応機構から、芳香族化合物の水への溶解性を向上させる働きを有する溶媒が存在することで、芳香族化合物の水への分配率が増大するため、芳香族化合物と水の接触機会が増大し、その結果、原料の転化率が向上すると考えられるためである。 そして得られたヒドロキシ芳香族化合物は、ホスフィンオキシドと会合することで、後述する反応前駆体が生成する。反応前駆体の分配率が、水よりも高い溶媒が存在することで、速やかに溶媒中に反応前駆体が移動し、モノヒドロキシ芳香族化合物の選択率が向上するものと考えられる。 上記溶媒の種類は特に限定されるものではないが、芳香族化合物と水の双方に対し、溶解度を有するものが挙げられ、例えばメタノールやエタノール等のアルコール;アセトン等のケトン化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジフェニルスルホン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン等のスルホン化合物;等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 上記溶媒の中でもスルホン化合物が好ましく、反応性の面からはジメチルスルホンやスルホランがより好ましい。これらは上述した反応機構から、芳香族化合物の水への溶解性を向上させる働きを有する溶媒であり、かつ後述する反応前駆体の分配率が、水よりも高い溶媒であると考えられる。 第1の発明で使用可能な溶媒の添加率は特に限定されず、原料である芳香族化合物の溶解度や反応性に応じ、適宜調整の上、添加率を決定することができる。溶媒の添加率が高ければ芳香族化合物の水への分配率が向上し、触媒との接触効率が増すため反応が促進されることは言うまでもないが、相反して生成物の分離工程の負荷が増大する。このため芳香族化合物に対する溶媒の添加率は、通常は1質量%以上、好ましくは5質量%以上、100質量%以下、好ましくは20質量%以下である。 (ヒドロキシ芳香族化合物) 第1の発明において、芳香族化合物は、酸化工程を経て芳香環上の水素がヒドロキシ基に置換され、ヒドロキシ芳香族化合物が得られる。そしてこのとき、主生成物として、原料の芳香環上の水素が一つ酸化されたモノヒドロキシ芳香族化合物が高い選択率で得られる。例えば、原料として芳香族炭化水素化合物を用いた場合、芳香族炭化水素化合物の最も反応性の高い水素原子が酸化され、その水素原子の位置にヒドロキシ基が一つ導入されたモノヒドロキシ芳香族化合物が主生成物として得られる。芳香族炭化水素化合物から得られるモノヒドロキシ芳香族化合物としては、例えばo−/p−フェニルフェノール、9−ヒドロキシアントラセン等が挙げられる。具体的には、原料としてベンゼンを用いた場合、フェノールが主生成物として得られ、また原料としてナフタレンを用いた場合にはナフトール、好ましくは1−ナフトールが得られる。 原料の芳香族化合物が、複素環芳香族化合物の場合、その芳香環上の原子のうち、最も酸化されやすい原子が酸化されたモノヒドロキシ芳香族化合物が得られる。 具体的に得られるモノヒドロキシ複素環芳香族化合物としては、例えばピリジン−N−オキシド、2−ヒドロキシフラン、2-ヒドロキシチオフェン、5−ヒドロキシオキサゾール、3−ヒドロキシインドール、2−ヒドロキシベンゾフラン、2−ヒドロキシフェノチアジン等である。 (製造条件) 第1の発明において、原料、過酸化物、触媒及びホスフィンオキシドの反応方法は特に限定されるものではなく、これらをすべて一括で仕込んで反応させても、順次混合して使用してもよい。反応方法としては、順次混合して行なうことが好ましく、混合の順序は特に限定されないが、芳香族化合物、触媒及びホスフィンオキシドをあらかじめ混合し、前記の組成物とした後に、過酸化物を加えることが好ましい。この順序で行なうことにより、過酸化物の自己分解による消費を抑制できるため、反応の効率の面と、安全性の面で好ましい。 第1の発明における酸化反応は、特に限定されず、回分式、半回分式、連続式のいずれで行ってもよく、これらを組み合わせて行ってもよい。また第1の発明における反応温度は、特に限定されず、原料の反応性に応じ、適宜調整することができるが、通常10℃以上、好ましくは30℃以上、通常100℃以下、好ましくは70℃以下である。また、第1の発明における反応時間は、特に限定されず、反応の進行に応じ、適宜調整することができるが、通常1秒以上、好ましくは1分以上であり、通常5時間以下、好ましくは3時間以下である。上記範囲内であることにより、転化率と選択率のバランスがよい製造が可能になる。また、第1の発明における反応圧力は、特に限定されず、原料の沸点に応じ、適宜調整することができるが、通常0.1MPa以上、好ましくは大気圧であり、通常10MPa以下、好ましくは2MPa以下である。また、第1の発明における撹拌速度は、特に限定されず、溶液またはスラリーの性状に応じ、適宜調整することができるが、通常1rpm以上、好ましくは10rpm以上であり、通常10000rpm以下であり、好ましくは1000rpm以下である。 (後処理、取り出し、精製) 第1の発明によって得られたモノヒドロキシ芳香族化合物は、通常の分離手法を用いて触媒と分離し、取り出すことができ、具体的には濾過、分別蒸留、結晶化等の方法を用いることによって触媒とモノヒドロキシ芳香族化合物とを分離し、モノヒドロキシ芳香族化合物を取り出すことができる。また分別蒸留や結晶化等の手法を用いて、モノヒドロキシ芳香族化合物をさらに精製することも可能である。 <第2の発明:組成物> 本発明の第2の発明は、原料となる芳香族化合物と、触媒と、ホスフィンオキシドを含む組成物(以下、「ヒドロキシ芳香族化合物を製造するための組成物」と言うことがある。)である。前記組成物に、過酸化物を添加することで、原料である芳香族化合物が酸化され、ヒドロキシ芳香族化合物を効率よく製造することができる。これらの成分は予め混合しておいても、反応時に混合してもよいが、これらは混合によっても安定であることから、予め混合させておくことが望ましい。 第2の発明で用いられる芳香族化合物は、第1の発明で用いられる芳香族化合物と同様であり、芳香族炭化水素化合物であることが好ましく、単環の芳香族炭化水素化合物であることがより好ましい。単環の芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、エチルベンゼン等のアルキルベンゼン類、前記ベンゼン及びアルキルベンゼン類のベンゼン環上の水素原子の1つ以上がハロゲン、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ホスフィノ基、スルホニル基等に置換されたベンゼン置換体等を挙げることができる。 第2の発明に含まれる触媒は、第1の発明で用いられる触媒と同様であり、チタニルシリケートが好ましい。具体的なチタニルシリケートは第1の発明で記載のものと同じである。チタニルシリケートは、第2の発明の組成物中で安定した状態で存在することができるためである。 第2の発明に含まれるホスフィンオキシドは、第1の発明の一般式(1)で記載した構造を有するものであれば特に限定はされないが、有機ホスフィンオキシドであることが好ましい。有機ホスフィンオキシドは、第2の発明の組成物中で安定した状態で存在することができるためである。 第2の発明の組成物は、上記構成成分以外のものを含んでいてもよいが、第1の発明で記載した溶媒を含んでいることが好ましい。第2の発明の組成物を均一に混合することができるためである。第2の発明に使用可能な溶媒としては、好ましくはスルホン化合物である。 第2の発明の各構成成分の混合比は、特に限定されないが、原料である芳香族化合物に対して、ホスフィンオキシドが通常、モル比で0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上であり、通常2以下であり、好ましくは1.1以下である。 <第3の発明:ヒドロキシル化反応前駆体> 本発明において、原料の芳香環上の水素が一つ酸化されたヒドロキシ芳香族化合物が高い選択率で得られる理由は定かではないが、本発明の酸化反応において用いられるホスフィンオキシドが、生成したヒドロキシ芳香族化合物との会合体を形成することで触媒との接触を抑制するためと考えられる。この会合体を以下、「ヒドロキシル化反応前駆体」ということがある。 第3の発明では、ホスフィンオキシドが、ヒドロキシ芳香族化合物と会合体を形成した状態で存在する。これは触媒が存在する水相中における酸化された芳香族化合物の濃度が、ホスフィンオキシドを添加しない場合に比べて、大きく低下していることから会合体を形成しているものと推測される。このような会合体を形成することで、ヒドロキシ芳香族化合物と触媒との接触を抑制することができる。これは触媒が存在する水相中の酸化された芳香族化合物の濃度がホスフィンオキシドを添加しない場合に比べて大きく低下することから推測される。 また反応によって生成するモノヒドロキシ芳香族化合物に対するホスフィンオキシドのモル比としては、通常0.1以上、好ましくは1.0以上であり、通常5.0以下、好ましくは2.0以下である。上記範囲にあることで、生成したモノヒドロキシ芳香族化合物が、ホスフィンオキシドと十分に会合し、逐次反応の進行を抑制することができるためである。 本発明で得られるヒドロキシ芳香族化合物の用途は特に限定されるものではないが、 フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂原料、ビスフェノールAなどの各種化成品の原材料、医薬品や染料などの原材料として用いられるほか、溶剤、消毒剤、殺菌剤、分析用試薬、防腐剤等に用いることができる。 (分析条件) 本発明による反応生成物は、液体クロマトグラフィー(LC)を用いて分析した。また触媒の構造は、X線回折測定により分析した。 (液体クロマトグラフィー)・検出器 :島津製作所社製 SPD−10AVP・使用カラム :ジーエルサイエンス社製 Inertsil ODS−3V・カラム温度 :50℃・溶離液 :50体積%アセトニトリル水溶液、 流速 1mL/分・検出波長 :212nm・注入量 :10μL (X線回折(X‐ray diffraction、XRD)測定) XRD測定は、以下の条件で行った。・装置名: PANalytical社製 X’PertPro MPD・光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα) Soller Slit (0.04rad) Divergence Slit (Valiable Slit) 試料台:回転試料台(Spinner) 受光側:半導体アレイ検出器(X’ Celerator) Ni−filter Soller Slit (0.04rad) ゴニオメーター半径:243mm・測定条件 X線出力(CuKα):40kV、30mA 走査軸:θ/2θ 走査範囲(2θ):3.0−70.0° 測定モード:Continuous 読込幅:0.016° 計数時間:29.8sec 自動可変スリット(Automatic−DS):10mm(照射幅) 横発散マスク:10mm(照射幅) 可変スリットから固定スリットへの変換を経てXRDパターンを得た。 (触媒調製) 触媒として用いるチタノシリケートを、米国特許US4410501に記載の方法に従い、Si/Tiモル比=24/1であるチタノシリケート(以下、触媒A)と、Si/Tiモル比=82/1であるチタノシリケート(以下、触媒B)を調製した。 得られたチタノシリケートを粉末X線回折(XRD)により分析したところ、MFI型の構造が確認された。 (実施例1) フラスコに、原料となる芳香族化合物として、ベンゼンを10g(111mmol)、上記触媒A(Si/Tiモル比=24/1)を0.5g、溶媒としてジメチルスルホンを1g、及びトリフェニルホスフィンオキシド2.0g(7.2mmol)を入れ、本発明の組成物とし、撹拌しながら内温を60℃に昇温した。ここに過酸化物として、30質量%過酸化水素水1.0mL(過酸化水素12mmol)を、1時間かけて滴下した(滴下速度0.5mL/時間)。(反応進行により、フェノールとトリフェニルホスフィンオキシドが会合した反応前駆体が形成されるものと推定される。)滴下終了後、そのまま1時間攪拌した後、反応系を処理し、液体クロマトグラフィーで分析したところ、液中のベンゼンの転化率は3.5%、フェノールの選択率は77%であった。 (比較例1) 実施例1においてトリフェニルホスフィンオキシドを添加しなかった以外は実施例1と同様に反応を行った。液中のベンゼンの転化率は3.3%、フェノールの選択率は50%であった。 (実施例2) 過酸化水素水の添加量を0.5mL(過酸化水素6mmol)とし、過酸化水素の添加が終了後に、直ちに反応系を処理した以外は、実施例1と同様に反応を行った。液中のベンゼンの転化率は1.3%、フェノールの選択率は86%であった。 (実施例3) 使用した触媒を、触媒Bに変更した以外は、実施例2と同様の方法により反応を行った。液中のベンゼンの転化率は1.6%、フェノールの選択率は92%であった。 (実施例4) トリフェニルホスフィンオキシドの添加量を0.4gにした以外は、実施例1と同様に反応を行った。液中のベンゼンの転化率は2.7%、フェノールの選択率は59%であった。 表1に示す通り、本発明の組成物を使用した場合(実施例1〜4)には、ホスフィンオキシドを含まないもの(比較例1)と比べてフェノールの選択率が向上していることが分かる。 本発明により、芳香族化合物を、高い選択率でヒドロキシ芳香族化合物に変換できるため、少ない工程数で、簡便な製造設備でフェノールのような化合物を製造することができる。 芳香族化合物における芳香環上の少なくとも一部の水素を酸化して、ヒドロキシ芳香族化合物を製造する方法であって、過酸化物と触媒とホスフィンオキシドの存在下、前記芳香族化合物を酸化する工程を有することを特徴とする、ヒドロキシ芳香族化合物の製造方法。 前記触媒が、珪素及びチタンを含む複合酸化物であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法。 前記過酸化物が、過酸化水素及び有機過酸化物の少なくとも一種を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法。 前記ホスフィンオキシドが、有機ホスフィンオキシドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法。 前記芳香族化合物が、芳香族炭化水素化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法。 前記過酸化物に対する前記ホスフィンオキシドのモル比が0.01以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法。 前記酸化工程においてスルホン化合物をさらに共存させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法。 芳香環上の少なくとも一部に水素原子を有する芳香族化合物を酸化して、ヒドロキシ芳香族化合物を製造するための組成物であって、前記芳香族化合物と、触媒と、ホスフィンオキシドとを構成成分として含むことを特徴とする、組成物。 前記触媒が、珪素及びチタンを含む複合酸化物であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。 前記ホスフィンオキシドが、有機ホスフィンオキシドであることを特徴とする、請求項8又は9に記載の組成物。 前記組成物が、スルホン化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。 前記芳香族化合物に対するホスフィンオキシドのモル比が、0.001以上であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の組成物。 芳香族化合物と触媒とホスフィンオキシドの存在下、前記芳香族化合物における芳香環上の少なくとも一部の水素を酸化してヒドロキシ芳香族化合物を製造する工程で得られる前駆体であって、 前記前駆体が、前記ヒドロキシ芳香族化合物と前記ホスフィンオキシドとの会合体であることを特徴とする、ヒドロキシル化反応前駆体。 前記ホスフィンオキシドが、有機ホスフィンオキシドであることを特徴とする、請求項13に記載のヒドロキシル化反応前駆体。 【課題】本発明は、フェノールのようなヒドロキシ芳香族化合物を直接酸化法で得るに際し、ヒドロキシ芳香族化合物の選択率が高い製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】芳香族化合物における芳香環上の少なくとも一部の水素を酸化して、ヒドロキシ芳香族化合物を製造する方法であって、過酸化物と触媒とホスフィンオキシドの存在下、前記芳香族化合物を酸化する工程を有することを特徴とする、ヒドロキシ芳香族化合物の製造方法。【選択図】なし