タイトル: | 公開特許公報(A)_分離分析方法 |
出願番号: | 2013129467 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 27/447 |
佐藤 康博 牟田口 綾夏 田中 克治 JP 2015004565 公開特許公報(A) 20150108 2013129467 20130620 分離分析方法 大塚電子株式会社 000206967 特許業務法人深見特許事務所 110001195 佐藤 康博 牟田口 綾夏 田中 克治 G01N 27/447 20060101AFI20141205BHJP JPG01N27/26 331E 7 8 OL 21 本発明は、試料中の成分の分離分析方法に関する。 様々な分野において、試料中に含まれる複数の成分の各々について定量あるいは定性を行うための方法として、各種の分離分析法が知られている。例えば、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)、ガスクロマトグラフ法(GC)、薄層クロマトグラフ法(TLC)などが知られており、特に生化学分野などで採用されている分離分析法としては、ゲル電気泳動法が知られている。 また、近年、少量の試料で高速分析を可能とするために、キャピラリー電気泳動法が開発されている。キャピラリーは、被測定物質が含まれる溶媒を溜める細径のガラス管のことである。このキャピラリーの中の溶媒に電位をかけて、被測定物質を電気泳動させる方法がキャピラリー電気泳動法である。キャピラリー内の狭い空隙での電気泳動においては、電気泳動媒体の粘度が低くても対流の発生が大幅に抑制されるため、キャピラリー内にゲルを充填する必要はなく、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、デキストラン、プルランなどの合成高分子または天然高分子の溶液を充填すれば、それらが充分に分子ふるい媒体として機能する。また、キャピラリー電気泳動法では、キャピラリーの中の溶媒に含まれる被測定物質を検出するのに、例えば、キャピラリーの一部(光検出部という)に光(例えば紫外線)を当てて、その透過光のスペクトルを測定する。 キャピラリー電気泳動法に関して、例えば、非特許文献1(忠海 聡子,遠藤 忍,赤川 博人,板橋 豊,間接紫外検出キャピラリー電気泳動法による脂肪酸の組成分析,BUNSEKI KAGAKU,Vol.52,No.9,pp.847-850,2003)には、キャピラリー電気泳動装置を用いた植物油などに含まれる複数の脂肪酸類〔ステアリン酸(18:0)(左側は炭素数を示し、右側は不飽和結合数を示す。以下、同様。)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、パルミチン酸(16:0)、ミリスチン酸(14:0)など〕の分離分析方法について、検討および定量結果が開示されている。 また、非特許文献2(F. Haddadian,S.A.Shamsi,And I.M.Warner,Separation of Saturated and Unsaturated Free Fatty Acids Using Capillary Electrophoresis with Indirect Photometric Detection,Journal of Chromatographic Science,Vol.37,pp.103-107,April 1999)は、非特許文献1の参考文献であり、ここではC12−C31に相当する飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の分離について、泳動液組成の違いとキャピラリーの温度変化(20〜40℃)による影響を検討している。 特許文献1(特開平5−317699号公報)には、HPLCなどのクロマトグラフィーに用いる銀担持シリカゲルの作製方法が記載されている。そして、リノール酸(18:2)とリノレン酸(18:3)について、銀担持シリカゲルを用いたクロマトグラフィーによる分離について述べられている。しかし、他の脂肪酸類の分離については検討されていない。 なお、非特許文献3(村田 義夫,水溶液中のオレイン酸カリウムのミセル構造解明への2次元NMR法(NOESY)の応用,福岡大学理学集報,40,2,pp.203-216,2010)には、2次元NMR法を用いて、オレイン酸カリウムの温度および濃度による状態変化を分析した結果が開示されている。非特許文献2のFig.14には、オレイン酸カリウムがM(ミセル領域)、およびA〜E(それぞれ異なる会合状態、液晶状態)をとることが示され、さらに、B領域からC領域の20℃、C領域からD領域への50℃の状態変化が予測される旨記載されている。また、非特許文献3のFig.17には、同じく2次元NMR法を用いた、オレイン酸カリウム(18:1)の炭素鎖における回転相関時間(τc)の温度依存性についての分析結果が示されている。ここでは、オレイン酸カリウム(18:1)の炭素鎖で、特に2重結合付近の構造が、約30℃から40℃以上の温度領域で大きな変化をすることが示されている。このように、非特許文献3では、オレイン酸カリウム(18:1)の状態変化についての詳細な研究成果が示されている。しかしながら、それらの内容の活用方法などについては触れられていない。特開平5−317699号公報忠海 聡子,遠藤 忍,赤川 博人,板橋 豊,間接紫外検出キャピラリー電気泳動法による脂肪酸の組成分析,BUNSEKI KAGAKU,Vol.52,No.9,pp.847-850,2003F.Haddadian,S.A.Shamsi,And I.M.Warner,Separation of Saturated and Unsaturated Free Fatty Acids Using Capillary Electrophoresis with Indirect Photometric Detection,Journal of Chromatographic Science,Vol.37,pp.103-107,April 1999村田 義夫,水溶液中のオレイン酸カリウムのミセル構造解明への2次元NMR法(NOESY)の応用,福岡大学理学集報,40,2,pp.203-216,2010 非特許文献1のp.848の右欄5行には、「18:3(リノレン酸)、16:0(パルミチン酸)は移動度に差が生ずる前に溶出し、良い分離は得られなかった」と記されている。このように、非特許文献1に記載の分離分析方法では、リノレン酸やパルミチン酸に移動度が近接する成分について、高精度な定量結果を得ることができないという問題がある。 また、非特許文献2では、分離の行いにくいリノレン酸、パルミチン酸などの成分の分離については、検討されていない。また、特許文献1では、リノール酸とリノレン酸以外の他の脂肪酸類の分離については、検討されていない。 本発明は、これらの課題に鑑み、試料中の成分の分離分析において、移動度などの移動特性が近接する成分間でも分離が可能であり、高精度な測定結果を得ることのできる分離分析方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、リノレン酸(18:3)、パルミチン酸(16:0)などのピーク検出時間が近接する成分について、それらの成分自体の状態を変化させることにより、分解能を向上させることを見出し、本発明に到達した。 すなわち、本発明は、試料中に含まれる複数の成分を移動させることで、複数の前記成分の移動特性の差を利用して、前記成分を分離分析する方法であって、 複数の前記成分の状態変化を生じさせる工程を含む、分離分析方法である。 前記成分の状態変化は、3次元的な状態変化であることが好ましい。また、前記試料を加温する工程を含むことが好ましい。前記加温の温度は、30℃〜80℃であることが好ましい。また、本発明の分離分析方法では、キャピラリー電気泳動法を用いることが好ましい。 また、本発明は、試料中に含まれる複数の成分を移動させることで、複数の前記成分の移動特性の差を利用して、前記成分を分離分析する方法であって、 前記移動特性の差が増大するように前記試料を加温する工程を含む、分離分析方法にも関する。 前記加温の温度は、30℃〜80℃であることが好ましい。 本発明の分離分析方法によれば、試料中の移動度が近接する成分についても分離が可能であり、高精度な測定結果を得ることができる。特に、試料中の脂肪酸類の分離分析において、リノレン酸やパルミチン酸などの移動度が近接する成分についても分離が可能であり、高精度な測定結果を得ることができる。キャピラリー電気泳動装置の一例を示す概略図である。実施例1の標準サンプル(各2ppm)の20℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例1の標準サンプル(各2ppm)の25℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例1の標準サンプル(各2ppm)の30℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例1の標準サンプル(各2ppm)の40℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例1の標準サンプル(各2ppm)の50℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例1の標準サンプル(各2ppm)の55℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例1の標準サンプル(各2ppm)の60℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例2のキャノーラ油(5倍希釈)の60℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例2のオリーブ油(5倍希釈)の60℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例2のゴマ油(100倍希釈)の60℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例2のラー油(100倍希釈)の60℃におけるエレクトロフェログラムである。実施例2のバター(20g/L)の60℃におけるエレクトロフェログラムである。 本発明の分離分析方法は、試料中に複数の成分(分析対象)が含まれている場合にそれらを分離して分析(定量・定性)する方法である。ただし、直接測定したい試料中の成分(測定成分)が複数ある場合だけに限らず、1種類の測定成分と、該成分と分離分析における移動特性が近似する他の成分(夾雑物)とが試料中に共存し、測定成分と夾雑物とを分離して分析する必要がある場合などにおいても、本発明の分離分析方法を適用することができる。 本発明の分離分析方法は、試料中に含まれる複数の成分を移動させることで、複数の成分の移動特性の差を利用して、成分を分離分析する方法(以下、「流れ分離分析法」とよぶことがある)であり、種々公知の分離分析方法に適用することができる。 試料中の成分は、流れ分離分析法により分離できるように、成分間で移動特性の差を生じるような化合物であれば特に限定されない。該成分としては、例えば、有機化合物が挙げられ、有機化合物としては脂肪酸が挙げられる。なお、測定試料が、流れ分離分析法における移動特性が近似する複数の成分を含有する場合において、本発明は特に有用である。流れ分離分析法における移動特性が近似する複数の成分としては、例えば、脂肪酸類のうちのリノレン酸とパルミチン酸が挙げられる。 具体的な分離分析方法としては、例えば、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)、ガスクロマトグラフ法(GC)、薄層クロマトグラフ法(TLC)、ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法が挙げられる。このうち特にキャピラリー電気泳動法を用いることが好ましい。すなわち、分析装置として、キャピラリー電気泳動装置を用いることが好ましい。 図1は、キャピラリー電気泳動装置の一例を示す概略図である。図1に示されるキャピラリー電気泳動装置は、キャピラリー1を備える。キャピラリー1の内径は、例えば、100μm以下である。キャピラリー1の多くの部分はチャンバー11に収容されており、チャンバー11内は、加温手段12によって加温することができる。加温手段12は、例えば、チャンバー11内に加温した空気や液体などを媒体として循環することのできる温調装置である。 キャピラリー1の両端は、バイアル21,22内の測定試料、泳動液、洗浄液などを含む液と連通しており、キャピラリー1内も同様の液で満たされる。なお、バイアル21,22は、オートサンプラー(図示せず)などにセットされており、順次、測定試料等を含むバイアルに交換される。 また、パワーサプライ4を備えており、測定時にはこれを用いてキャピラリーの両端間に電場を印加する。これにより、キャピラリー1内の試料中の成分が移動し、各成分の移動度の差に応じて成分を分離することができる。 また、分離した成分の検出を行うための光学系として、光源31(D2ランプなど)と、該光源31から照射された光の吸光度等を測定するための検出器32(ダイオードアレイ、フォトダイオードなど)とを備えている。例えば、光源31からキャピラリー1の一部に所定の光を照射し、キャピラリー1を透過した光を検出器32で検出する。照射された検出器32で得られたデータ(時系列の吸光度を示すエレクトロフェログラムなど)は、データ演算処理装置5(パソコンなど)に送られて、測定結果の解析が行われる。なお、データ演算処理装置5は、ハードの操作を行うための指示機能等を備えていてもよい。またキャピラリー電気泳動装置の検出器としては、光学系に限定されず、質量分析計をはじめ、非接触タイプの電気伝導度検出器、蛍光検出器などを用いることも可能である。 成分の「移動特性」とは、例えば、各種のクロマトグラフ法における成分の移動速度や、キャピラリー電気泳動法における成分の移動度である。キャピラリー電気泳動法において、試料中の成分の分離は、基本的に電気泳動の原理を利用して行われる。この場合、試料成分の移動度Ueは、次のように表わすことができる。 Ue=q/6πηr (Ue:移動度、q:電荷、η:溶媒の粘度、r:ストークス半径) 分離能を向上させるためには、測定成分間のUeの違いを大きくすることが必要であるが、上式から、測定成分間のq(電荷)もしくはr(ストークス半径)の違いが大きくなるような泳動条件で測定を行うと、Ueの違いが大きくなり、分離能が向上することが分かる。 しかし、例えば、測定試料が複数種の脂肪酸類の混合物である場合、通常は脂肪酸類においても、解離して電荷(q)をもつ可能性を有する官能基は1つのカルボキシル基のみであり、さらに、ストークス半径(r)に関連する炭素鎖数についても同様の脂肪酸類が多く存在するため、rの差がわずかである脂肪酸同士を分離することは困難な場合が多い。本発明においては、このようにrの差がわずかであり、そのままでは分離できないような複数の成分に対しても、成分自体の構造の状態を変化させ、成分間の移動度の差(rに関する差)を増大させることで、それらの成分の分離分析が可能になるものと考えられる。 本発明の分離分析方法は、試料中に含まれる成分の状態変化を利用して成分を分離することを特徴とする。ここで、「成分の状態変化」とは、3次元的な状態変化であることが好ましい。「3次元的な状態変化」とは、具体的には、測定成分の立体構造の変化である。この3次元的な状態変化の一つの指標としては、非特許文献3に開示される回転相関時間(τc)が挙げられる。すなわち、ある成分についての回転相関時間(τc)が変化した場合は、3次元的な状態変化が生じていると考えられる。なお、本発明における状態変化は、後述する測定成分のストークス半径(r)を変化させ、各成分間の移動度(Ue)の差を大きくするような状態変化であることが好ましい。 上記の「成分の状態変化」を生じさせるための好適な手段としては、各成分を含む試料を加温することが挙げられる。したがって、本発明の分離分析方法は、試料を加温する工程を含むことが好ましい。該工程では、試料を加温することにより、試料中に含まれる測定成分の状態変化が生じる。例えば、試料を加温した後に、ある成分についての回転相関時間(τc)が常温におけるそれよりも大きくなっている場合は、加温による成分の状態変化(3次元的な状態変化)が生じていると判断できる。なお、成分の状態変化を生じさせる方法としては、加温する方法に限定されず、例えば、液相での分離分析方法(キャピラリー電気泳動法、HPLCなど)の場合、液相のpHを調整する方法、液相中に何らかの化合物を添加する方法などを用いることも可能である。 加温の具体的な方法は、試料(試料中の測定成分)が所定の温度に達するような方法であれば特に限定されないが、例えば、キャピラリー電気泳動装置を用いる場合、加温は、キャピラリーの周囲の雰囲気(キャピラリーが収容されたチャンバー内の空気など))を所定の温度に加温する方法が挙げられる。また、加温は、測定中(例えば、キャピラリー電気泳動法では、キャピラリー内に電荷を印加している間)に行ってもよく、測定前に行ってもよく、測定前および測定中に行ってもよい。 加温の温度は、好ましくは30〜80℃であり、より好ましくは40〜70℃、最も好ましくは55〜65℃ある。30〜80℃の範囲においては、流れ分離分析法における移動特性が近似する有機化合物(例えば、脂肪酸類のうちのリノレン酸とパルミチン酸)の分離分析が可能であり、55〜65℃の範囲においては、流れ分離分析法における移動特性が近似する有機化合物のより精度の高い分離分析が可能となる。ここでいう加温の温度とは、加温中における試料の温度であり、通常は一定の定常状態に達したときの温度である。ただし、実際には、例えば、キャピラリー電気泳動装置のキャピラリー周囲の雰囲気(キャピラリーが収容されたチャンバー内の空気など)の温度や、HPLCのカラム周囲の雰囲気の温度を調整することで、試料の温度が調整される。 なお、試料を加温することにより、例えば、キャピラリー電気泳動法の場合は、キャピラリー内部に充填された泳動液と試料の温度が上昇し、それらの粘性が低下するため、分析時間を短縮することが可能になるという利点も得られる。 また、本発明の分離分析方法をキャピラリー電気泳動法に適用した場合、従来のHPLCやGC分析法で必要であった、試料成分の誘導体化などの手間のかかる前処理が不要であるという利点も得られる。 (実施例1) 本実施例では、上述の図1に示すようなキャピラリー電気泳動装置(Agilent7100キャピラリ電気泳動システム)を用いて、6種類の脂肪酸類(ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、パルミチン酸(16:0)、ミリスチン酸(14:0))を各々2ppmずつ含有する標準試料(東京化成工業株式会社製)について、温度条件を変化させて分離分析を行った。 (操作方法) 本実施例では、以下の(1)〜(6)の操作をこの順で実施した。(1)キャピラリーのセットを行う。(2)泳動液を収容したバイアルをセットする。(3)上記標準試料を収容したバイアルをセットする。(4)キャピラリー電気泳動装置とパソコン(指示機能を有するデータ演算処理装置)の電源を入れる。(5)パソコンのソフトウエアを起動し、次の分析条件を専用のソフトウエアにプログラミングする。 1.キャピラリーの温調温度:20、25、30、40、50、55または60℃ 2.キャピラリー内への泳動液充填:フラッシュ、300sec 3.キャピラリー内への試料注入:50mbar、4sec 4.検出波長:254nm(リファレンス波長:400nm) 5.印加電圧:25kV、測定時間:20min(6)専用のソフトウエアを実行させて測定を開始する。 キャピラリーとしては、フューズドシリカ製のキャピラリー(内径50μm、全長64.5cm、有効長56cm)を使用した。なお、全長とは、キャピラリーの全体の長さであり、有効長とは、サンプル注入口から検出部分までの長さである。 泳動液としては、N−メチルホルムアミド/ジオキサン/蒸留水(4:6:1,v/v/v)に2.5mMアデノシン−1−リン酸、50mM Tris(2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)を溶解したものを使用した。 試料の溶媒としては、N−メチルホルムアミド/ジオキサン(4:1,v/v)を使用し、試料を該溶媒により希釈および溶解したものをバイアル中に充填した。 検出系では、光源としてD2ランプを用い、検出器としてダイオードアレイを用いた。検出波長は、上記のとおり254nmに設定した。また、リファレンス波長を400nmとして、400nmでの吸光度から、アデノシン−1−リン酸の最大吸収波長である254nmでの吸光度を差し引くことで、エレクトロフェログラムのピークが正のピークとなるように表示した。 なお、分析に使用した泳動液、試料の溶媒、検出波長、印加電圧等についての条件は、非特許文献1とほぼ同様に設定した。また、キャピラリー(試料)の加温の温度を20〜60℃の範囲内で変化させて、上記標準試料中の各脂肪酸について分離分析をおこなった。各々の温度における測定結果を図2〜図8に示す。 本実施例においては、温度が20℃および25℃である場合(図2および3)は、非特許文献1の結果と同様に、リノレン酸とパルミチン酸の分離が不十分であり、全ての脂肪酸類を同時に分離分析することはできなかった。これに対して、温度が30℃以上の場合(図4〜8)は、リノレン酸とパルミチン酸のピークが分離可能であり、全ての脂肪酸類を同時に分離分析することができた。さらに、温度が55℃および60℃の場合(図7および8)は、リノレン酸とパルミチン酸のピークがほぼ完全に分離できているため、これらの脂肪酸について、より精度の高い分析が可能であると考えられる。また、分析時間も非特許文献1より短縮することができた。 (実施例2) キャピラリー(試料)の加温の温度を60℃に固定した以外は、実施例1と同様にして、5種類の試料(キャノーラ油、オリーブ油、ゴマ油、ラー油、バター)について、脂肪酸類の測定(分離分析)を行った。なお、試料は、実施例1と同様に溶媒で希釈もしくは溶解したものを用いた。各試料についての測定結果を図9:キャノーラ油(5倍希釈)、図10:オリーブ油(5倍希釈)、図11:ゴマ油(10倍希釈)、図12:ラー油(100倍希釈)、および、図13:バター(20g/L)に示す。 図9〜13(特に図9)に示す結果から、本発明の分離分析方法によって、リノレン酸とパルミチン酸のような分離が難しい成分についても、分離分析が可能であることが分かる。 また、各試料について検出された脂肪酸の種類(定性結果)を表1にまとめた。表1に示される結果から、各試料について検出された脂肪酸は、文部科学省のホームページに掲載の「五訂増補 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編」(URLは、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/houkoku/1299179.htm)で示された各試料中の主要成分と一致していることが確認できた。 今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。 1 キャピラリー、11 チャンバー、12 加温手段、21,22 バイアル、31 光源、32 検出器、4 パワーサプライ、5 データ演算処理装置。 試料中に含まれる複数の成分を移動させることで、複数の前記成分の移動特性の差を利用して、前記成分を分離分析する方法であって、 複数の前記成分の状態変化を生じさせる工程を含む、分離分析方法。 前記成分の状態変化は、3次元的な状態変化である、請求項1に記載の分離分析方法。 前記試料を加温する工程を含む、請求項1または2に記載の分離分析方法。 前記加温の温度は、30℃〜80℃である、請求項3に記載の分離分析方法。 キャピラリー電気泳動法を用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分離分析方法。 試料中に含まれる複数の成分を移動させることで、複数の前記成分の移動特性の差を利用して、前記成分を分離分析する方法であって、 前記移動特性の差が増大するように前記試料を加温する工程を含む、分離分析方法。 前記加温の温度は、30℃〜80℃である、請求項6に記載の分離分析方法。 【課題】試料中の成分の分離分析において、移動度が近接する成分間でも分離が可能であり、高精度な測定結果を得ることのできる分離分析方法を提供すること。【解決手段】本発明は、試料中に含まれる成分の状態変化を利用する、前記試料中の成分の分離分析方法である。前記成分の状態変化は、3次元的な状態変化であることが好ましい。また、前記試料を加温する工程を含むことが好ましく、前記加温の温度は、30℃〜80℃であることが好ましい。また、本発明の分離分析方法では、キャピラリー電気泳動法を用いることが好ましい。また、前記試料は、複数の成分を含むことが好ましい。【選択図】図8