生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_フグの養殖方法
出願番号:2013129205
年次:2015
IPC分類:A01K 61/00,A61K 35/60,A61K 31/202,A61P 25/28,A61P 3/06


特許情報キャッシュ

野口 玉雄 大貫 和恵 太田 善久 JP 2015002694 公開特許公報(A) 20150108 2013129205 20130620 フグの養殖方法 株式会社萬坊 596162957 野口 玉雄 502218433 大貫 和恵 513156412 坂野 博行 100123652 野口 玉雄 大貫 和恵 太田 善久 A01K 61/00 20060101AFI20141205BHJP A61K 35/60 20060101ALI20141205BHJP A61K 31/202 20060101ALI20141205BHJP A61P 25/28 20060101ALI20141205BHJP A61P 3/06 20060101ALI20141205BHJP JPA01K61/00 AA61K35/60A61K31/202A61P25/28A61P3/06 11 14 OL 22 2B104 4C087 4C206 2B104AA06 2B104BA09 2B104BA13 2B104CG22 2B104FA19 2B104FA25 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB29 4C087MA17 4C087MA23 4C087MA31 4C087MA35 4C087MA37 4C087MA41 4C087MA52 4C087MA60 4C087MA66 4C087NA14 4C087ZA15 4C087ZC33 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA05 4C206MA02 4C206MA03 4C206MA04 4C206MA37 4C206MA43 4C206MA51 4C206MA55 4C206MA57 4C206MA61 4C206MA72 4C206MA80 4C206MA86 4C206NA14 4C206ZA15 4C206ZC33 本発明は、フグの養殖方法及びそれを用いたフグの無毒化方法に関し、特に、底生性生物を遮断した環境下におけるフグの養殖方法及びそれを用いたフグの無毒化方法に関する。 一般に、フグの養殖方法として、湾を仕切って5月から6月にかけて4千〜4千五百尾の稚魚を仕切った区域内に入れ次の年の10月ころまで育てる方法が知られている。フグの稚魚は体重1〜10g程度であるがわずか1年で300〜400gまでに成長、出荷段階で0.7〜1.3kgまで急成長する。 フグはハマチやタイに比べ市場価格が高く、病気に注意すれば、採算性が高い養殖魚といえる。 そして、古来より、フグが有毒である事が知られている一方、フグは美味で、昔から人に食され、特に筋肉、肝臓、及び白子が好まれていた。 フグを含め有毒な水産物を解毒する試みもなされており、水産資源の有効利用を図るべく、マイクロウェーブ処理することよって、水産物中のマリントキシン等を解毒する方法も知られている(特許文献1)。特開2005−237212号公報 しかし、上述の養殖法においては、天然フグと同様に、毒性を有するフグが多数存在していた。特に湾を仕切る粗放的な養殖においては、毒性を有するものが多く存在していたが、一部の生け簀養殖においても毒性を有するものが存在していた。 一方、一部の地域においては、伝統食品としてフグ肝が生産されていた事実もあった。これは、同種のフグ間においても、毒性を有するものと有しないものとが存在するという理由からである。したがって、フグの中には、一般に有毒と知られているものであっても無毒化したフグも存在していた。元来有毒のフグがどのような過程で、無毒化されるに至ったのか判明すれば、再び、伝統食品としてフグ肝のみならず、フグが安心して食卓に提供されることとなりうる。 しかし、何故にこのような毒を有するフグと毒を有しないフグとが同種のフグ間においてさえ存在するのかについてこれまで詳細な研究調査がなされていない。さらに、天然フグにおいて、一般に毒性を有する部位、例えば、肝、生殖巣(精巣、卵巣)、その他の内臓等についての機能についても詳細な研究調査がなされていない。なぜなら、これら一般に毒性を有する部位は、食品等として取り扱われることなく、手間と費用をかけて廃棄されているのが実情だからである。 そこで、本発明の目的は、フグを無毒化し得るフグの養殖方法を提供するとともに、フグ由来の有益な組成物を提供することにある。 発明者らは、長年に渡るフグ毒の研究から、フグ毒の由来は食物連鎖であることを突き止め、さらに無害化されたフグの有効利用について鋭意研究をした結果、本発明を見出すに至った。 本発明のフグの養殖方法は、底生性生物を遮断した環境下、フグを養殖するフグの養殖方法であって、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸を含有する飼料を供給して、フグを養殖することを特徴とする。 また、本発明のフグの養殖方法の好ましい実施態様において、前記底生性生物が、フグ毒を生産するバクテリアを含む生物であることを特徴とする。 また、本発明のフグの養殖方法の好ましい実施態様において、底生性生物が、ヒラムシ、ヒモムシ、ヤムシ、カニ、小型巻き貝、ワレカラ、ヒトデ類、フグ類、ツムギハゼ、ヒョウモンダコ、肉食性巻き貝、カブトガニ、ヤムシからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。 また、本発明のフグの養殖方法の好ましい実施態様において、底生性生物の遮断を、囲い養殖法により行なうことを特徴とする。 また、本発明のフグの無害化方法は、本発明のフグの養殖方法に従ってフグを養殖することにより、フグを実質的に無毒化するフグの無毒化方法。 また、本発明のフグの無害化方法の好ましい実施態様において、前記フグの、肝臓、生殖巣(精巣、卵巣)、その他の内臓を無毒化することを特徴とする。 また、本発明のフグは、本発明のフグの養殖方法によりフグを養殖して、実質的に無毒化したフグであって、2MU/g未満の毒性値を有することを特徴とする。 また、本発明のフグの肝臓は、本発明のフグの肝臓であって、前記肝臓が、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸を含有することを特徴とする。 また、本発明の医薬組成物は、本発明のフグの肝臓を有効成分とすることを特徴とする。 また、本発明の医薬組成物の好ましい実施態様において、前記医薬組成物が、脳機能改善用医薬組成物であることを特徴とする。 また、本発明の医薬組成物の好ましい実施態様において、前記医薬組成物が、血清TC濃度低下作用を有する医薬組成物であることを特徴とする。 本発明のフグの養殖方法は、フグを実質的に無毒化することができ、また、機能性成分を多く含むフグを提供し得るという有利な効果を奏する。図1は、囲い養殖用の網の一例を斜視図で示す図である。図2は、飼育用の海水を殺菌濾過しながら行なう方法の一例を示す図である。図3は、排水処理のフローの一例を示す図である。図4は、取水方法の一例を示す図である。図5は、実験プロトコールを示す図である。図6は、1回目マウスの累計飼料摂取を示す図である。図7は、2回目マウスの累計飼料摂取量を示す図である。図8は、1回目マウスの体重推移を示す図である。図9は、2回目マウスの体重推移を示す図である。図10は、1回目マウスの反応潜時を示す図である。図11は、2回目マウスの反応潜時を示す図である。図12は、1回目マウスの血清脂質濃度を示す図である。図13は、2回目マウスの血清脂質濃度を示す図である。図14は、コントロール群における肝組織の病理組織学的観察を示す図である。図14中、a)は、HE染色 x10 肝正常構築の乱れ、線維の増生などは認められないことを、b)は、HE染色 x40 細胞質内泡沫脂肪沈着を認めることを、c)は、脂肪染色 x10 ビマン性に著しい脂肪沈着を認めることを、d)は、脂肪染色 x40 沈着脂肪滴の大きさが目立つ、また細胞質内の脂肪の色調の増加を認めることをそれぞれ示す。図15は、フグ肝投与群における肝組織の病理組織学的観察結果を示す図である。図15中、a)は、HE染色 x10 肝臓の正常構築の乱れを認めないことを、b)は、HE染色 x40 肝細胞における微細な脂肪沈着、c)は、脂肪染色 x10 小葉中心性脂肪沈着、d)は、脂肪染色 x40 肝細胞質内の弱い脂肪沈着、をそれぞれ示す。図16は、DHA投与群における肝組織の病理組織学的観察結果を示す図である。図16中、a)は、HE染色 x10 肝組織の正常構築は良好に保持されていることを、b)は、HE染色 x40 肝細胞質内に著変は目立たないことを、c)は、脂肪染色 x10 軽度の小葉中心性脂肪沈着を認め、斑状の染色態度、d)は、脂肪染色 x40 脂肪沈着の色調が弱く、斑な染色性を、それぞれ示す。 本発明のフグの養殖方法は、底生性生物を遮断した環境下で養殖する。これは、フグ毒の由来は食物連鎖によるものであるとの知見に基づき、フグは、毒を保有している底生性生物を好んで食する事を見出し、これを遮断することにより、フグを無毒化しようとするためである。 ここで、底生性生物とは、フグ毒を生産するバクテリアを含む生物であることを意図する。このような生物は通常海底に生息しており、例えば、ヒラムシ、ヒモムシ、ヤムシ、カニ、小型巻き貝、ワレカラ、ヒトデ類、フグ類、ツムギハゼ、ヒョウモンダコ、肉食性巻き貝、カブトガニ、ヤムシからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。本発明において、底生性生物を遮断して養殖を行なうのは、底生性生物をフグが好んで食することによりフグが毒化することが判明した事による。すなわち、フグの毒は、食物連鎖によるものであり、どのような養殖法によっても、典型的には、例えば、湾を仕切る粗放的な養殖等、海底に生息する底生性生物を遮断せずに行なえば、フグは、底生性生物を好んで食し、次第に内臓等に毒が蓄積していき、毒化すると考えられる。 底生性生物の遮断は、囲い養殖により行なうことができる。囲い養殖としては、網生け簀養殖、陸上養殖を挙げることができるが、いずれの方法による場合でも、これらの方法をそのまま用いるのではなく、底生性生物を遮断した環境下で行なう必要がある。底生性生物の遮断の方法の一例を示すと以下の通りとなる。まず、囲い養殖法を例に説明すれば、養殖に用いる網を海底から離す様にする事が必要である。すなわち、毒保有のカニ、ヒトデなどが網に接触しない様にする必要がある。あるいは、接触したとしても網の目を細かくしておく事により、養殖場内に底生性生物が混入しない様にする事が好ましい。 海底から網の距離は、好ましくは、海底から10m以上、より好ましくは20m以上である。海底との距離があまりに短いと、粗放的な養殖と同様に、養殖場内に底生性生物が侵入してくる場合もあり、誤って養殖フグがこれらを食するおそれがあるからである。 また、網の目の大きさについては、海底からの網の距離を十分とった場合には、養殖フグが逃げない大きさである限り限定されないが、海底からの距離が10m未満の場合、網の目を4mm〜10mmとするのが好ましい。この程度の網の目であれば、たとえ網の中へ未成熟の底生性生物が侵入したとしても毒性が極めて低いので、後述するフグの無毒化には影響を与えないと考えられるからである。 また、底生性生物を遮断する環境を維持するために、一旦、底生性生物を遮断する環境が得られれば、養殖場を固定する必要がある。なぜなら、潮の流れ等により、養殖場が浅瀬に流される場合もあり、この場合、底生性生物に養殖用の網が接触するおそれがあるからである。 固定化の方法は特に限定されないが、複数箇所において、例えば、いかだに固定したロープを繋いだアンカーを海底に打ち固定する事ができる。これによって、いかだが流されない様に、ひいては、網が海底に接近しない様にする事ができる。 本発明は、このように、底生性生物を遮断した環境下、フグを養殖するフグの養殖方法であって、さらに、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸を含有する飼料を供給して、フグを養殖し、成長させることを特徴とする。これらドコサヘキサエン酸(DHA)等を含有する飼料を供給しながら、フグを養殖することにより、フグを成長させると、フグに効率よくこれら成分が蓄積されるばかりでなく、フグ本来のもつ成分との相乗効果によって、以下の実施例に示すような有利な効果を奏するからである。 ここで、不飽和脂肪酸には、n−6系とn−3系とがあり、本発明においては、リノレン酸などのnー3系不飽和脂肪酸を用いることができる。なお、n-6系とは、メチル基の方から調べて、最初に存在する二重結合が、n-6の炭素(C-13)とn-7の炭素(C-12)の間に存在する多価不飽和脂肪酸のことをいい、n-3系では、最初の二重結合が、n-3の炭素とn-4の炭素の間に存在するものを一般的にいう。 飼料において、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸の含有量は、以下の通りである。すなわち、飼料の固形分100g当たり、脂質分は1〜10g、好ましくは3〜9gである。飼料において、脂質中、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、5〜30%、好ましくは15〜23%である。また、飼料において、脂質中、イコサペンタエン酸(IPA)は、1〜15%、好ましくは、3〜10%である。また、飼料において、脂質中、n−3系不飽和脂肪酸は、15〜45%、好ましくは、20〜40%である。また、飼料において、脂質中、n−6系不飽和脂肪酸は、1〜8%、好ましくは、2〜5%である。なお、DHAは高度不飽和脂肪酸のため、脂肪酸が酸化されやすい成分である。酸化しない抗酸化物質であるビタミンAやEが多量に含まれている。事実、ビタミンEは54.7mg/100gと非常に多く含まれている。 ここで、囲い養殖法の一例を図1を用いて説明する。図1Aは、囲い養殖用の網を斜視図で示したものであり、図中、1はフロート、2は鋼管、3は網である。すなわち、囲い養殖法に用いる装置としては、少なくともフロート、筏、網、及び装置固定用アンカーを備える。フロート1は、発泡スチロール等、網及び鋼管を沈ませないほどの浮力を有するものであれば特に限定されない。筏の材質は特に限定されないが、例えば、鋼管2等のある程度強度を有するものである。網3の材質も特に限定されず例えば、化繊等を挙げることができる。網3の網目は、フグが逃げ出さない程度であれば、特に限定されない。但し、網が海底に十分近い場合、例えば10m以内等では、底生性生物が混入しないように、網目を細かくする必要がある。このような網目は、4〜10mmの範囲である。アンカーは、主として海底から一定の距離を確保するために装置を固定するためのものである。 網について、簡単に説明すれば、稚魚サイズが5cm〜12cm(稚魚重量50g)ほどの間では、網目を、4〜20mmの範囲とするのが好ましい。魚サイズ12cm〜20cm(魚重量50〜200g)ほどの間では、網目を、8〜20mmの範囲とするのが好ましい。魚サイズ20cm〜30cm(魚重量600gまで)ほどの間では、網目を、18〜40mmの範囲とするのが好ましい。魚サイズ30cm〜50cm(魚重量1000〜1500g)ほどの間では、網目を、35〜60mmの範囲とするのが好ましい。このような養殖を、図1Aに示す点線で鋼管を仕切って行なってもよい。すなわち、成長時期に合わせて筏を区分けして成長の異なるフグを同時に養殖しても良い。 これに対して、陸上養殖法においては、囲い養殖と異なり、養殖当初に底生性生物を遮断した環境を準備すれば、ほとんどの場合、当該環境を維持する事ができる。したがって、陸上養殖法においては、養殖を開始する時期に、底生性生物が混入している場合は、積極的に除去する必要がある。 しかしながら、陸上養殖法においても、底生性生物の卵等が当初から養殖場に混入していれば、次第に底生性生物が成長、増殖するおそれがある。このような場合には、適当な濾過装置を用いて養殖場の海水を濾過して、底生性生物を除去しつつ養殖をすることができる。このような濾過装置は、特別のものを用意する必要は必ずしもなく、底生性生物の卵等が除去できる限り特に限定されない。 例えば、図を用いて、本発明における陸上養殖法の一例を示せば以下の通りになる。図4は、取水方法の一例を示す。図4に示す取水装置は、少なくとも、水中ポンプ、濾過機、貯水槽を備える。図4に基づき説明すると、海水21を水中ポンプ20によって貯水槽23まで汲み上げる。この貯水槽23は、より慎重に取水するために設けたものであり、必ず必要なものではなく、したがって、水中ポンプから汲み上げた海水を直接的に濾過機へ導入しても良い。貯水槽23から送水ポンプ22で濾過機24へ送水する。濾過機24において、濾過しつつ、塩素等により殺菌、滅菌処理することができる。これによって、底生性生物を除去することができる。濾過、殺菌された海水は、非常用、補給用等のために貯水槽で一時保存される。なお、濾過、殺菌された海水を直接飼育槽に導入しても良い。 図2は、飼育槽及び飼育槽内を循環する海水の様子を示したものである。すなわち陸上養殖装置を説明したものである。陸上養殖装置は、飼育槽、濾過槽、温度調整槽、曝気装置、酸素供給装置を備える。濾過槽は、底生性生物の混入が永続的に保つことをより確実にするため、複数の濾過槽を設けても良い。たとえば、以下では、一次、二次、三次の3段階の濾過槽を用いた場合について説明する。海水の流れに沿って説明すると、飼育槽からポンプ(図示せず)を通じて、一次濾過槽6へ海水を送水する。一次濾過槽6では、主にSS除去を行なう。SSとは、浮遊物質量(Suspended Solids)の略称で、水中に浮遊又は懸濁している直径2mm以下の粒子状物質をいう。これには、粘土鉱物による微粒子、動植物プランクトンやその死骸、下水、工場廃水などに由来する有機物や金属の沈澱物が含まれている。 一次濾過槽6で濾過された海水は循環ポンプ7を通して二次濾過槽8へ送水される。二次濾過槽8では海水を電気分解して得られた塩素で殺菌、滅菌する。殺菌、滅菌された海水は、三次濾過槽9へ送られる。三次濾過槽9では、主として、生物による濾過が行われる。すなわち、好気性細菌による濾過を行なう。 このようにして濾過された海水は、必要に応じて、温度調整、曝気調整、酸素調整されて、元の飼育槽へ戻る。温度調整は、温度調整槽11で行なうことができ、ここでは、冷凍機10などの温度調整機能を有する器具を備える。この温度調整槽によって、夏場など海水が高温に達することにより、飼育に問題が生じた場合に対処することができる。一般に飼育槽内の海水が25℃以上となると魚に影響を及ぼすので、適宜冷却するのが好ましい。 また、曝気は、濃縮酸素を濾過海水に強制的に混入するもので、これによって、酸素を供給する。また、曝気の主たる目的は、窒素ガスや炭酸ガスの放出にある。SSを除去した飼育水を硝化細菌の働きでアンモニア態窒素→亜硝酸態窒素→硝酸態窒素に変え水中から放出する。また、飼育魚やろ過システム中の細菌が呼吸することによって水中に排泄する炭酸ガスもこのシステムで大気中に放出する。したがって、以上が順調に進まないと酸素の溶入が困難となる。水中に溶け込む酸素量には限度があり循環システムでは酸素を過飽和に溶け込ませる技術が求められる。酸素供給においては、大気(空気)中の酸素を濃縮し、循環ろ過システムでクリーニングされた海水に溶入する。エアレーションでは大気の温度が海水に影響を与えるため、酸素濃度を高めるシステムでは曝気は最小限に留めることが望ましい。濃縮酸素の代わりに、液体酸素(純酸素)を溶入してもよい。なお、排水処理は、SS除去後、生物濾過槽を経由して塩素で滅菌して行なう。 このように、まず、取水処理時に海水を殺菌、滅菌処理し、さらに、飼育時においても海水を循環させて殺菌、滅菌処理することにより、底生性生物の卵、幼生等が海水に混入されていたとしても、未然に飼育槽から遮断することが可能となる。 なお、その他の養殖法に関しては、飼料として、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸の含有する以外は、通常の養殖法に従う。例えば、フグは雑食であるので、餌として特に限定されることはない。本発明においては、上述の底生性生物を遮断した環境下、これらの通常の餌をフグに与えることができる。 次に、本発明のフグの無毒化方法について説明する。本発明のフグの無毒化方法においては、上述した本発明の養殖方法により養殖することによって、フグを実質的に無毒化する。 ここで、実質的に無毒化とは、人体に害を及ぼすおそれがない10MU/g未満をいう。具体的な養殖方法については、上述の説明を本発明の無毒化方法にそのまま引用する事ができる。 また、ふ化後15週間以内のフグを前述の本発明のフグの養殖法を用いて養殖することにより、実質的に無毒化することができる。ふ化後15週間以内のものであれば、あまり成長していないので、フグが元来保有する毒量も少なく、かかる段階のフグを上述の養殖法により養殖すれば、フグの無毒化を達成できる。 なお、ある程度成長したフグの場合、天然の有毒魚であれ、毒餌を摂取し毒化した養殖魚であれ、殆ど毒が抜ける事がなく、1〜3年の間毒を保持しつづける傾向がある。この観点から、ある程度成長したフグに関しては、十分長い間、上記本発明の養殖法で養殖する必要がある。 また、本発明の好ましい実施態様において、前記フグの、肝臓、生殖巣(精巣、卵巣)、その他の内臓を無毒化する。これらは、フグ毒が、食物連鎖によるものであるとの知見に基づき、上述の底生性生物を遮断した環境下で行なうことにより、毒の由来を絶つことによる結果、フグが無毒化することを見出したことによるものである。 また、本発明のフグの肝臓は、本発明のフグの肝臓であって、前記肝臓が、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸を含有することを特徴とする。 また、本発明の医薬組成物は、本発明のフグの肝臓を有効成分とすることを特徴とする。これは、上述の本発明のフグの養殖方法によれば、フグの肝臓には、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸が効率よく蓄積されることを見出したことによる。 本発明のフグの肝臓を有効成分とする医薬組成物は、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)又はn−3系不飽和脂肪酸の少なくとも1種を含むことができる。 本発明による医薬組成物は、有効的な量のフグの肝臓由来の成分、及び適当な投与携帯の形で調製することができる。本発明の医薬組成物における投与量は、投与対象患者の病態及びその重篤度、投薬形態、選択した投与経路及び1日当たりの投与回数等により変更することができる。 本発明の医薬組成物における投与量は、ラットにおいては少なくとも約200(約8)mg/kg/日(約200mgとは試料の量、食べた量、(約8mg)とは、200mg中の肝の量)となる量であり、ヒトにおいては感受性の相違等により、更に低い量であることが好ましい。ヒトにおける薬物に対する感受性は、ラットにおける薬物に対する感受性の薬10倍程度と推定される。したがって、60kgの成人に対して、約12(約0.5)g/日(約12gとはひとの食べた量、(約0.5g)とは、その中の肝の量)となる。 また、投与形態は、経口剤(タブレット、カプセル、被膜タブレット、顆粒、溶液、シロップ)、直腸投与用坐剤、注射等を挙げることができる。投与対象患者は、慢性疾患の場合が多く、長期投与の必要性、連用の容易性という観点から、好ましくは、経口剤である。 投与形態には、従来の他の成分、例えば、安定保存剤、甘味料、着色剤、芳香料などを含むことができる。 急性毒性試験について、フグの肝臓の致死量は、そのTTX含量より、2mg/kgと推定できる。 また、本発明の医薬組成物の好ましい実施態様において、前記医薬組成物が、脳機能改善用医薬組成物であることを特徴とする。好ましい実施態様において、前記医薬組成物が、血清TC濃度低下作用を有する医薬組成物であることを特徴とする。これらの有効性については、以下の実施例において明らかにされる。 以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈されることを意図するものではない。実施例1 体重3kgの雌の天然魚及び養殖魚から採卵し、卵に養殖の雄親の精子をかけて人工授精させ、次いでふ化させて稚魚を得た。孵化稚魚を陸上で10〜11週位まで飼育し、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)、n−3系不飽和脂肪酸をそれぞれ含有する人口餌料を与えて飼育した。その後、屋外施設に収容し、その約9〜11日後海面いけすにうつした。これは、フグはタイやヒラメに比べて体形が水流を受けやすいので、水質、水流のコントロールが飼育し易い施設で飼育するのが好ましいからである。特に、海面いけすでは波や風の影響を受けやすく、稚魚がいけす網ですれるおそれもある。このように、稚魚を室内で数週間程度アルテミア、ミジンコなどの飼料で飼育し、その後囲い養殖用の種苗に用いた。 網生け簀養殖用の概念図を図1に示す。図1A中、1はフロート、2は鋼管(60mm)、3は網である。フロートとしては、発泡スチロールを用いた。網3としては、縦10m×横10m×深さ4mのものを用いた。実際に、深さ4mの網を海底から10m以上離し、底生性生物が接触しない様に十分注意した。 稚魚のサイズ12cm以下までは、図1に示す筏を4分割して、4〜10mmの網を用いて、5〜10週間の間養殖した。その後は、8〜37mmの網に稚魚を移し、6〜14ヵ月の間養殖した。養殖中は、1日に2〜5回、イワシ、サバ、アジなどの市販の魚粉餌料のほかに、飼料として、脂質中、DHA18.1%、IPA6.9%、n−3系不飽和脂肪酸29.8%、n−6系不飽和脂肪酸3.5%を含むもの(固形量100gあたり6gの脂質、1.5gのDHA、0.2gのIPAを含む)を準備して、当該飼料を与え、1〜3年間飼育した。 最終的に、養殖したフグの毒性を検査した。毒性の検査に用いたフグは、全部で5,836尾であった。このうち5,697尾は肝臓、139尾は卵巣について検査した。この結果、すべてのトラフグのこれらの部位について毒性値は、いずれも8MU/g未満であり、非常に安全な値が得られた。実施例2 実施例1と同様に、4週間程飼育した稚魚を用いて、今度は、陸上養殖方式によって、養殖を行なった。 図2は、飼育用の海水を殺菌濾過しながら行なう方法の一例を示す。図3は、排水処理のフローを示す。 陸上養殖方式では、100トン水槽(直径10m)の底に砂を敷詰め、海水を循環させて養殖を行なった。取水は海面養殖場から1km近く離れた場所で水深3m程の中層からポンプアップすることにより、図4に示すようなシステムを通じて行なった。 これを300m程離れた養殖場の高架貯水タンク(100トン)に濾過機を通して一時貯水した。この海水は飼育槽の補充用と緊急用としてストックし、逆洗や機材の洗浄水は水道水を使用した。 飼育槽の海水は蒸発分と餌の脂肪分を表面から取り除く分(飼育水の5〜10%/日)を除きSS除去、生物濾過、酸素溶入をし循環再利用した。図2に示すシステムを用いて、海水を循環させつつフグの飼育を行なった。一次濾過槽では、主として、SS除去し、二次濾過槽では、海水を電気分解して得た塩素で殺菌、滅菌し、三次濾過槽では、生物濾過(好気性細菌による濾過)を行なった。なお、必要に応じて、曝気装置により、濾過海水に濃縮酸素を強制的に溶入し(純酸素を利用する装置もある)、また、温度調整槽(冷凍機)により、温度調整を行なった。飼育魚に問題が起きるのは主として高水温なので最高水温を26℃に押える事を目的に使用した。排水処理はSS除去後、生物濾過槽を経由して塩素で滅菌して行なった。 このような飼育槽内で、1日に2回〜5回イワシ、サバ、アジや市販の魚粉飼料のほかに、飼料として、脂質中、DHA18.1%、IPA6.9%、n−3系不飽和脂肪酸29.8%、n−6系不飽和脂肪酸3.5%を含むもの(固形量100gあたり6gの脂質、1.5gのDHA、0.2gのIPAを含む)を準備して、当該飼料を与えることにより、1〜3年間飼育した。 このような飼育方法によって、飼育したトラフグの肝臓、精巣、卵巣、その他の内臓の毒性試験を実施例1と同様に行なった結果、すべてのトラフグの各部位における毒性値は、いずれも2MU/g未満であり、非常に安全な値が得られた。実施例3 次に、本発明のフグの養殖方法によって得られたフグの機能性、特にフグ肝の機能性について調べた。すなわち、フグ肝を食品として与えたマウスを用いてフグ肝の機能性の効果を調べた。<実験方法> 実験動物には、5週齢のddY系雄マウス(1回目n=44、2回目n=42)を使用した。<飼育環境および期間> マウスの飼育は、1つのケージに2匹ずつ入れ、室温23℃、湿度55±5%、明暗サイクル12時間(明期8時〜20時)の飼育室で行った。飼育期間は3週間で、飼料と水は自由摂取とし、摂食量と体重を毎日測定した。<実験群> 1回目の飼育は2群に分け、コントロール群(フグ肝を含まない飼料を摂取させた群:n=22)とフグ肝投与群(フグ肝を含む飼料を摂取させた群:n=22)とした。2回目の飼育は3群に分け、コントロール群(フグ肝を含まない飼料を摂取させた群:n=16)とフグ肝投与群(フグ肝を含む飼料を摂取させた群:n=16)、およびDHA投与群(DHAを含む飼料を摂取させた群:n=10)とした。<飼料配合> マウスの飼料配合は、AIN-93G(Reeves PG,Nielsen FH,Fahey GC:AIN-93 Gpurified diets for laboratory rodents,Final report of the American Institute of Nutrition ad hoc writing Committee on the reformulation of the AIN-76A rodent diet,pp.1939-51(1993).)に基づき調製した。なお、本実施例では、機能性成分(DHA、IPA等)の効果を検証するため、飼料中の脂質源として機能性成分が微量であるラード(1.3g/100g)を使用した。 1回目において、フグ肝投与群のフグ肝量は、飼料100 gあたり9 gとし、DHAが628 mg、IPAが525 mg含まれている(表1)。表1は、1回目マウスの飼料配合(g/100 g)を示す。 2回目では、フグ肝投与群のフグ肝量は、飼料100 gあたり6 gとし、DHAが696 mg、IPA が546 mg含まれている(表2)。表2は、2回目マウスの飼料配合(g/100 g)を示す。<実験装置> 実験装置は、マウス用ステップスルーケージ(室町機械株式会社)とショックジェネレータ・スクランブラ(室町機械株式会社)を用いた。 マウス用ステップスルーケージは明室と暗室の2室で構成され、ギロチンドアによって仕切られている。ショックジェネレータ・スクランブラは、電流を発生させる装置であり、マウス用ステップスルーケージとコードで接続し、電流を流すことができる。マウスが暗室に入ると、床面グリッドを通じてショックジェネレータ・スクランブラから暗室側にのみ電気ショックを与える。<受動回避試験> 図5に、実験プロトコールを示す。受動回避試験では、ギロチンドアを閉めた状態で明室にマウスを入れ、30秒後にギロチンドアを開け、マウスの四肢が暗室に完全に移動するまでの時間(反応潜時)を計測した。まず、マウスを実験装置に慣れさせ、暗室が安全であることを記憶させるための習慣性試験を飼育開始から2週間行った。次に、そのマウスに暗室が恐怖であることを記憶させるために、マウスが暗室に入った直後に電気ショック(0.4 mA、2秒)を与えた。そして、マウスが暗室中の恐怖を記憶しているかを確認するため、電気ショックの3、7日後に記憶確認試験を行った。なお、300秒を最大反応潜時とし、反応潜時が長いほど暗室中の恐怖記憶が維持されていると判断した。<血清脂質測定> 受動回避試験に供したマウスは、エーテル麻酔をした後、解剖して血液を採取し、以下の実験を行った。血液は、遠心分離により血清を取り出し、血清中のトリグリセリド(TG)、総コレステロール(TC)、HDL-コレステロール(HDL-C)濃度を測定した。上記項目の測定には和光純薬工業株式会社のトリグリセリドE-テストワコー、コレステロールE-テストワコー、HDL-コレステロールE-テストワコーを用いた。<統計処理> 実験結果は、平均値(mean)±標準偏差(SD)で示した。統計解析にはJMP8を用いた。 1回目の統計処理は、適合度検定により各群の正規分布が均一でないことを確認した後、反応潜時の差、さらに血清脂質濃度の差を検定するために、Wilcoxonの順位和検定もしくはStudentのt検定を行った。p値が5 %以下を有意差ありとして判定した。 2回目の統計処理は、3群間の反応潜時の差、さらに血清脂質濃度の差を検定するため、Tukey-KramerのHSD検定を行った。p値が5 %以下を有意差ありとして判定した。<病理組織学的観察> 受動回避試験に供したマウスは、エーテル麻酔をした後、採血後に剖検した。腹部を広く切開し、肉眼的観察を行った後、可及的速やかにマウスごと10 %ホルマリン水で固定した。十分に固定されたことを確認し、約1週後にマウスの肝臓から小組織片を作製して再固定し、それらを3ブロックに分けた。次いで型の如く脱水および包埋し、厚さ4 μmのパラフィン切片を4枚作製した。その際、脂肪染色用に別途、肝臓から小組織片を作製した。 染色法は3種類行い、基本染色としてHE染色(Hematoxyline-Eosin重染色)を、多糖類ならびにグリコーゲンを観察するためにPAS染色(Periiodic-Acid Schiff反応)を、再固定された一部のマウスについては、脂質の蓄積の程度とその沈着様式を観察するため、屠殺時に固定した肝組織の小組織片から凍結切片を作製し、脂肪染色(Sudan III染色)を施した。他に予備として2枚の未染色標本を作製した。<受動回避試験><飼育期間のマウスの累計飼料摂取量> 飼育期間のマウスの累計飼料摂取量は、1回目の試験において、コントロール群で189.86±9.37 g、フグ肝投与群で194.38±8.89 g(図6)、2回目の試験において、コントロール群で217.64±9.70 g、フグ肝投与群で214.98±15.31 g、DHA投与群で216.30±15.36 g(図7)を示した。累計飼料摂取量は、1回目、2回目ともに各群間において有意差は認められなかった。<飼育期間のマウスの体重推移および体重増加量> 飼育期間のマウスの体重推移は、1回目の試験において、コントロール群で25.69±0.61gから37.04±2.46g、フグ肝投与群で25.70±0.66gから38.57±3.13g(図8)、2回目の試験において、コントロール群で25.87±0.75gから37.97±1.98g、フグ肝投与群で25.98±1.11gから38.37±3.51g、DHA投与群で26.03±0.69gから37.51±3.33g(図9)に増加した。また、体重増加量は、1回目の試験において、コントロール群で11.35±2.45g、フグ肝投与群で14.91±9.93g、2回目の試験において、コントロール群で12.10±2.04g、フグ肝投与群で12.39±3.17g、DHA投与群で11.48±3.20gを示した。体重増加量は、1回目、2回目ともに各群間において有意差は認められなかった。 以上のことから、正規に機能性成分の評価をすることが可能であると判断した。<習慣性試験のマウスの反応潜時> 受動回避試験の結果を、図10、図11に示した。習慣性試験のマウスの反応潜時は、1回目の試験が、コントロール群で6.31±3.56秒、フグ肝投与群で9.30±14.58秒、2回目の試験が、コントロール群で6.00±3.54秒、フグ肝投与群で4.76±1.72秒、DHA投与群で5.26±1.54秒を示し、1回目および2回目の試験において、各群間に有意差は認められなかった。<記憶確認試験のマウスの反応潜時> まず、1回目の試験において、習慣性試験と記憶確認試験のマウスの反応潜時を比較した。電気ショック3、7日後の反応潜時は、コントロール群、フグ肝投与群ともに習慣性試験の反応潜時より有意に延長した(p<0.01)。従って、両群ともに恐怖を記憶していたと考えられる。 次に、両群間における記憶確認試験のマウスの反応潜時を比較した。電気ショック3日後の反応潜時は、コントロール群で116.23±95.16秒、フグ肝投与群で197.32±117.25秒を示し、電気ショック7日後の反応潜時は、コントロール群で107.23±114.75秒、フグ肝投与群で181.64±102.35秒を示した。記憶確認試験の反応潜時は、電気ショック3、7日後ともにフグ肝投与群がコントロール群に対して有意に延長した(p<0.05)。従って、フグ肝投与群は、コントロール群と比較して、より恐怖を記憶していたと考えられる。 1回目の試験では、フグ肝投与群がコントロール群と比較して、より強く恐怖を記憶していたことが証明され、フグ肝には記憶学習能力の向上効果があることが示唆された。 2回目の試験についても同様に、習慣性試験と記憶確認試験のマウスの反応潜時を比較した。電気ショック3、7日後の反応潜時は、すべての群で習慣性試験の反応潜時より有意に延長した(p<0.01)。従って、すべての群で恐怖を記憶していたと考えられる。 次に、3群間における記憶確認試験のマウスの反応潜時を比較した。電気ショック3日後の反応潜時は、コントロール群で49.56±53.13秒、フグ肝投与群で76.81±78.14秒、DHA投与群で38.20±34.08秒を示し、電気ショック7日後の反応潜時は、コントロール群で120.56±95.97秒、フグ肝投与群で49.81±65.40秒、DHA投与群で155.20±97.22秒を示した。 記憶確認試験については、1回目と2回目で全く異なる結果が得られた。このような結果が得られた理由として、飼育時にDHAが不足し、一時的に全群をコントロール群の飼料で飼育したため、フグ肝を継続して与えることができず、記憶学習能力の向上効果が十分に得られなかったのではないかと考えられる。また、2回目の試験は、7月〜8月に行ったため、気温が高く、飼料に用いたフグ肝の鮮度を保持できなかった可能性も挙げられる。<血清脂質濃度> 1回目の実験結果を図12に示した。TG濃度は、コントロール群で180.08±59.14 mg/dl、フグ肝投与群で176.47±62.48 mg/dlを示し、各群において有意差は認められなかった。TC濃度は、コントロール群が164.37±30.60 mg/dl、フグ肝投与群が137.03±24.67 mg/dlを示し、フグ肝投与群はコントロール群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。HDL-C濃度は、コントロール群が130.92±27.45 mg/dl、フグ肝投与群が110.97±20.43 mg/dlを示し、TC濃度中のHDL-C濃度の割合は、コントロール群が81%、フグ肝投与群が82%であり、有意差は認められなかった。以上のことから、フグ肝投与群のTC濃度の低下は、LDL-コレステロールの低下に伴うものであると考えられる。 2回目の実験結果を図13に示した。TG濃度は、コントロール群が139.19±51.25 mg/dl、フグ肝投与群が151.50±43.77 mg/dl、DHA投与群が89.63±22.42 mg/dlを示し、DHA投与群が他の2群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。TC濃度は、コントロール群が163.25±35.70 mg/dl、フグ肝投与群が125.62±37.92 mg/dl、DHA投与群が111.46±30.23 mg/dlを示し、フグ肝投与群およびDHA投与群はコントロール群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。HDL-C濃度は、コントロール群が121.07±23.82 mg/dl、フグ肝投与群が92.72±25.18 mg/dl、DHA投与群が88.19±19.64 mg/dlを示し、TC濃度中のHDL-C濃度の割合は、コントロール群が75%、フグ肝投与群が75%、DHA投与群が81%であり、各群間に有意差は認められなかった。 以上の結果から、TC濃度は、1回目、2回目ともにフグ肝投与群がコントロール群と比較して低値を示した。また、2回目の試験では、DHA投与群もフグ肝投与群と同様に低値を示したことから、フグ肝に含まれるDHAが血清TC濃度を低下させたのではないかと考えられる。<肝組織の病理組織学的観察><観察結果> コントロール群のHE染色および脂肪染色の結果を図14に示した。HE染色では、軽微ながらエオシンの染色性がやや低下し、強拡大(x40)ではいずれの細胞質内にも無数の小空胞が確認された(図14b)。脂肪染色では、ビマン性に著明な脂肪陽性として見られ、脂肪滴がフグ肝投与群の肝臓よりも大きかった。しかし、小脂肪滴や大脂肪滴といわれる様なものは認められなかった(図14c)。 フグ肝投与群のHE染色および脂肪染色の結果を図15に示した。HE染色では、主に肝細胞の細胞質内において、中心静脈周囲性に顆粒状の微細な空胞が多数認められた(図15a、b)。脂肪染色では、肝小葉中心性脂肪沈着が見られ、弱拡大(x10)では帯赤色調から淡黄赤色調に斑状の染色性を示した(図15c)。強拡大(x40)では、微細で顆粒状脂肪球の沈着として確認された(図15d)。 DHA投与群のHE染色および脂肪染色の結果を図16に示した。DHA投与群は、HE染色および脂肪染色の結果がフグ肝投与群と類似しているが、DHA投与群の方が脂肪の沈着程度が弱かった(図16c、d)。<脂肪沈着の比較> 脂肪沈着の程度の関連性は、コントロール群にビマン性脂肪沈着が著しく、脂肪滴は顆粒状から中脂肪滴であった。一方、フグ肝投与群およびDHA投与群は、肝小葉中心性脂肪沈着を呈しており、弱拡大(x10)にて著しい斑状の脂肪沈着が確認された。さらに、両群ともに沈着している脂肪滴は微細顆粒状であり明らかにコントロール群と異なっていた。 以上より、フグ肝投与群とDHA投与群はほぼ同様の所見といえる。両者の相違として、多少フグ肝投与群の染色性が強く、DHA投与群は、脂肪の沈着がフグ肝投与群と比較して軽微であった。<まとめ> フグ肝投与群やDHA投与群はコントロール群に比べて、脂肪沈着の程度が極めて弱い事が明らかになり、内臓脂肪沈着による脂質代謝異常を来たす危険性は非常に低いことが判明した。 しかし、フグ肝投与群とDHA投与群との間には脂肪沈着の程度や沈着様式にあまり明瞭な相違はなかったものの、脂肪の色調や沈着の程度などからみると、僅かながらフグ肝投与群の沈着がDHA投与群よりも目立つと評価せざるを得ない。フグ肝投与群の方が強い脂肪沈着を呈した理由として、用いたDHAが純度の高い試薬であったのに対し、フグ肝は、DHAだけでなく、IPAやその他の成分を含むため、それらの影響を受けたものと考えられる。 以上の事を勘案するに、食物としてのフグ肝は、純化されたDHA餌などと脂肪沈着の程度や沈着様式などから大きな相違点はないと言える。 今回の組織学的観察から、フグ肝投与群は、DHA投与群と類似した脂肪の沈着様式を呈したことから、フグ肝を食品として摂取した際にも、内臓脂肪が蓄積しにくいのではないかと考えられる。 本実施例から、フグ肝を摂取することにより、記憶学習能力の向上や血清TC濃度の低下作用が得られることが示唆された。フグ肝は様々な成分を含有しているため、食品として摂取することで、そのほかの成分との相乗効果により、サプリメントなどのDHA単体での摂取よりも記憶学習能力の向上を図れると推察される。また、フグ肝は食品として摂取しても、DHA単体で摂取することと同様に、内臓脂肪沈着による脂質代謝異常を来たす危険性が非常に低いことが示唆された。従って、フグ肝は、機能性成分に富んだ優れた食品であると考えられる。1 フロート2 鋼管3 網4 ポンプ5 飼育槽6 一次濾過槽7 循環ポンプ8 二次濾過槽9 三次濾過槽10 冷凍機11 温度調製槽12 曝気装置13 酸素供給装置14 洗浄水15 殺菌水16 排水調整槽17 薬液タンク18 薬液ポンプ19 側溝20 水中ポンプ21 海22 送水ポンプ23 貯水槽24 濾過機25 機械室 底生性生物を遮断した環境下、フグを養殖するフグの養殖方法であって、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸を含有する飼料を供給して、フグを養殖することを特徴とするフグの養殖方法。 前記底生性生物が、フグ毒を生産するバクテリアを含む生物であることを特徴とする請求項1記載の方法。 底生性生物が、ヒラムシ、ヒモムシ、ヤムシ、カニ、小型巻き貝、ワレカラ、ヒトデ類、フグ類、ツムギハゼ、ヒョウモンダコ、肉食性巻き貝、カブトガニ、ヤムシからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2項に記載の方法。 底生性生物の遮断を、囲い養殖法により行なう請求項1〜3項のいずれか1項に記載の方法。 請求項1〜4項のいずれか1項に記載の養殖方法に従ってフグを養殖することにより、フグを実質的に無毒化するフグの無毒化方法。 前記フグの、肝臓、生殖巣(精巣、卵巣)、その他の内臓を無毒化する請求項5項記載の方法。 請求項1〜6項のいずれか1項に記載のフグの養殖方法によりフグを養殖して、実質的に無毒化したフグであって、2MU/g未満の毒性値を有するフグ。 請求項7記載のフグの肝臓であって、前記肝臓が、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸を含有することを特徴とするフグの肝臓。 請求項8記載のフグの肝臓を有効成分とする医薬組成物。 前記医薬組成物が、脳機能改善用薬剤組成物である請求項9記載の組成物。 前記薬剤組成物が、血清TC濃度低下作用を有する医薬組成物である請求項9記載の組成物。 【課題】 本発明の目的は、フグを無毒化し得るフグの養殖方法を提供するとともに、フグ由来の有益な組成物を提供することにある。【解決手段】 本発明のフグの養殖方法は、底生性生物を遮断した環境下、フグを養殖するフグの養殖方法であって、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)及び/又はn−3系不飽和脂肪酸を含有する飼料を供給して、フグを養殖することを特徴とする。また、本発明のフグの養殖方法の好ましい実施態様において、前記底生性生物が、フグ毒を生産するバクテリアを含む生物であることを特徴とする。【選択図】図14


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