タイトル: | 公開特許公報(A)_アルデヒド吸着材、アルデヒドの除去方法、酢酸の製造方法及びアルデヒド吸着材の再生方法 |
出願番号: | 2013123746 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | B01J 20/26,C07C 51/44,C07C 51/47,C07C 53/08,B01J 20/34,B01J 49/00,C07C 51/12 |
游 志雄 梅原 洋一 松村 哲朗 皆見 武志 JP 2014240057 公開特許公報(A) 20141225 2013123746 20130612 アルデヒド吸着材、アルデヒドの除去方法、酢酸の製造方法及びアルデヒド吸着材の再生方法 千代田化工建設株式会社 000003285 岡部 讓 100094112 臼井 伸一 100096943 高梨 憲通 100102808 小林 恒夫 100128646 齋藤 正巳 100128668 木村 克彦 100134393 游 志雄 梅原 洋一 松村 哲朗 皆見 武志 B01J 20/26 20060101AFI20141128BHJP C07C 51/44 20060101ALI20141128BHJP C07C 51/47 20060101ALI20141128BHJP C07C 53/08 20060101ALI20141128BHJP B01J 20/34 20060101ALI20141128BHJP B01J 49/00 20060101ALI20141128BHJP C07C 51/12 20060101ALN20141128BHJP JPB01J20/26 GC07C51/44C07C51/47C07C53/08B01J20/34 GB01J49/00 FC07C51/12 15 OL 17 4G066 4H006 4G066AA34D 4G066AA47D 4G066AB13B 4G066AC11B 4G066AE10B 4G066BA36 4G066BA38 4G066CA52 4G066DA10 4G066FA37 4G066GA11 4H006AA02 4H006AC41 4H006AD11 4H006AD17 4H006BD40 4H006BD41 4H006BD52 4H006BD84 4H006BE40 4H006BS10 本発明は、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液中のアルデヒドを吸着・除去することができるアルデヒド吸着材、アルデヒドの除去方法、酢酸の製造方法及びアルデヒド吸着材の再生方法に関する。 酢酸は、ポリ酢酸ビニル、アセチルセルロース及び酢酸エステル類の原料、並びにテレフタル酸製造プラントの溶媒等、幅広い用途を持つ基礎化学品である。酢酸の製造方法として、ロジウム触媒等の存在下にメタノールを一酸化炭素でカルボニル化して酢酸を製造するいわゆるモンサント法(あるいはメタノールカルボニル化法)が知られている。 メタノールのカルボニル化による酢酸の製造においては、アセトアルデヒドが微量副生する。また、メタノールのカルボニル化反応に有用な成分である酢酸メチルや、ヨウ化メチルなどの低沸点成分を回収し、メタノールのカルボニル化反応工程に戻して有効に再利用しようとすると、アセトアルデヒドが系内に蓄積することが知られている。アセトアルデヒドはカルボニル化条件下で縮合反応を起こし、高沸点の不飽和アルデヒド類となる。これらは縮合がさらに進行して蒸留塔下部などで析出して閉塞等の問題を起こす。また、クロトンアルデヒド等は酢酸と沸点が近いため酢酸の精製工程での分離が難しく製品酢酸に混入し、特に還元性物質として酢酸の品質低下を招く。 系内に蓄積するアセトアルデヒドを除去する方法として、特許文献1にはアセトアルデヒド、酢酸メチル、酢酸、ヨウ化メチル、水混合液を段数40段以上の蒸留塔を用い還流比10以上で蒸留することによって分離除去する方法が開示されている。また、特許文献2には、アセトアルデヒドが低沸点であること及び水に溶けやすいことを利用してヨウ化メチル(沸点42.4℃)と酢酸メチル(沸点56.9℃)とアセトアルデヒド(沸点20.2℃)の蒸気を水に接触させることによりアセトアルデヒドを除去する方法が開示されている。 しかしながら、特許文献1の方法では、アセトアルデヒドを分離除去するための蒸留塔は装置が複雑な上、ヨウ化メチルの加水分解で生じるヨウ化水素酸に対応できる高級材料を使用せざるを得ず装置が高価となるという問題がある。 また、特許文献2の水に接触させ吸収する方法は、少量ではあるが有用な物質であるヨウ化メチル、酢酸メチルが水に溶解してアセトアルデヒドと一緒に系外に排出されてしまうという問題がある。 なお、このような問題は、酢酸含有液中に含まれるアセトアルデヒドに限らず、種々のカルボン酸含有液中に含まれるアルデヒドにおいても、同様に存在する。 ここで、特許文献3には吸着法による回収方法が示されている。特許文献3は、ニトリルの精製方法に関するものであり、多価アミンを担持させた陽イオン交換樹脂にニトリルを接触させて、ニトリル中のアルデヒドを除去する方法が開示されている。しかし、この方法では、特許文献3の段落[0011]に掲載してあるようにアミノ基と反応するその他のカルボニル化合物(例えばカルボン酸類・ケトン類)もアルデヒドと同時に除去されるため、カルボン酸含有液のアルデヒド除去に用いるとカルボン酸の収量が低下し、所望の効果が得られないことが問題となる。特開2006−96764号公報特開2007−284404号公報特開平10−7638号公報 これらの課題に鑑み、本発明は、カルボン酸含有液からアルデヒドを吸着除去することができるアルデヒド吸着材、アルデヒドの除去方法、酢酸の製造方法及びアルデヒド吸着材の再生方法を提供することをその目的とする。 本発明者らは、鋭意研究の結果、多価アミンで総交換容量の1〜99モル%をイオン交換した陽イオン交換樹脂からなるアルデヒド吸着材とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、もって本発明を完成させた。 かかる本発明のアルデヒド吸着材は、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液中のアルデヒドを吸着するアルデヒド吸着材であって、多価アミンで総交換容量の1〜99モル%をイオン交換した陽イオン交換樹脂からなることを特徴とする。 前記多価アミンのイオン交換量は、前記陽イオン交換樹脂の総交換容量に対して10〜90モル%であることが好ましく、さらに好ましくは40〜80モル%である。 また、前記多価アミンは、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及び1,3−プロパンジアミンから選択される少なくとも一種であってもよい。 そして、前記アルデヒドは、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド及びそれらの縮合物から選択される少なくとも一種であってもよい。 また、前記カルボン酸は酢酸であってもよい。 前記陽イオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂であることが好ましい。 本発明のアルデヒドの除去方法は、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液を、上記アルデヒド吸着材に接触させることによりアルデヒドを吸着除去することを特徴とする。 そして、前記アルデヒドを含有するカルボン酸含有液としては、例えばメタノールのカルボニル化による酢酸の製造中に生じる酢酸含有液であって、その製造中に生じるプロセス液及び該製造中に生じるプロセスガスに含まれる低沸点成分を吸収させた吸収液の少なくとも一方であってもよい。 本発明の酢酸の製造方法は、メタノールを一酸化炭素でカルボニル化して酢酸を生成させるカルボニル化反応工程と、前記カルボニル化反応工程で生じた反応生成液の一部を気化して気相と液相に分離するフラッシュ蒸発工程と、前記フラッシュ蒸発工程で生じた気相を蒸留して、製品酢酸となる缶出液、及び、前記カルボニル化反応工程に循環させる塔頂流出液を生じさせるライトエンド蒸留工程と、前記カルボニル化反応工程、前記フラッシュ蒸発工程及び前記ライトエンド蒸留工程の少なくとも一つの工程で生じたプロセス液及びこれらの工程で生じたプロセスガスに含まれる低沸点成分を吸収させた吸収液の少なくとも一方を、上記アルデヒド吸着材に接触させるアルデヒド吸着工程と、を有することを特徴とする。 そして、前記ライトエンド蒸留工程で生じた前記塔頂流出液を水相と油相に分離する分離工程と、前記分離工程で分離された前記水相又は前記油相を前記カルボニル化反応工程に循環する循環工程とをさらに有し、前記プロセス液は、前記分離工程で分離された前記水相または前記油相であってもよい。 また、前記カルボニル化反応工程で生じたオフガスをメタノールに接触させてヨウ化メチルを吸収するヨウ化メチル回収工程をさらに有し、前記プロセス液は、前記ヨウ化メチル回収工程で得られるメタノール含有液であってもよい。 また、前記ライトエンド蒸留工程で生じた缶出液を精製する缶出液精製工程をさらに有し、前記プロセス液は、前記缶出液及び前記缶出液精製工程で得られる製品酢酸の少なくとも一方であってもよい。 そして、前記プロセス液又は前記吸収液は、ヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノール、アセトアルデヒド及び酢酸を含む水溶液であってもよい。 本発明のアルデヒド吸着材の再生方法は、アルデヒドを吸着させた上記アルデヒド吸着材を、無機酸水溶液で洗浄することにより、アルデヒドを多価アミンと共に除去することを特徴とする。 本発明の多価アミンで総交換容量の1〜99モル%をイオン交換した陽イオン交換樹脂からなるアルデヒド吸着材を用いることにより、カルボン酸含有液中に含まれるアルデヒドを選択的に吸着除去することができる。したがって、アルデヒドの縮合が抑制され、アルデヒドの析出による閉塞が回避できる。そして、複雑で高価な装置を用いずに、容易に安価な方法でカルボン酸含有液からアルデヒドを選択的に除去することができる。また、ヨウ化メチルや、酢酸メチル等のメタノールのカルボニル化反応に有用な低沸点成分のロスも抑制される。さらに、製品酢酸の精製負荷を低減して酢酸品質の安定化を図ることもできる。また、本発明のアルデヒド吸着材は、総交換容量の一部だけ多価アミンに置換しアミン基と酸点を共存させることによって高効率でアルデヒドを吸着することができる。本発明の酢酸の製造方法を適用することができる酢酸製造装置の一例を示す模式図である。実施例及び比較例のヒドラジン交換率とアセトアルデヒド減少量/ヒドラジン交換量との関係を示す図である。実施例及び比較例のヒドラジン交換率とアセトアルデヒド減少量との関係を示す図である。 本発明のアルデヒドを含有するカルボン酸含有液中のアルデヒドを吸着するアルデヒド吸着材は、多価アミンで総交換容量の1〜99モル%をイオン交換した陽イオン交換樹脂からなる。 陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂の交換基として、スルホ基(−SO3H)が挙げられる。具体例としては、Amberlyst15(ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオン(三菱化学社製)、DOWEX(ダウ・ケミカル社製)、CT175(ピュロライト社製)等が挙げられる。また、陽イオン交換樹脂のタイプも特に限定されず、マクロポアを有するポーラスタイプ(ポーラス型、ハイポーラス型、MR型のいずれをも含む)及びマクロポアを持たないゲルタイプのいずれの陽イオン交換樹脂を使用することができる。 多価アミンとしては、ジアミン、トリアミン、テトラミン等が挙げられ、具体例としては、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンや、1,3−プロパンジアミン等が挙げられる。 そして、本発明においては、多価アミンのイオン交換量が、陽イオン交換樹脂の総交換容量の1〜99モル%である。すなわち、本発明のアルデヒド吸着材は、陽イオン交換樹脂の総交換容量の一部を多価アミンでイオン交換したものである。多価アミンのイオン交換量は、実用的には陽イオン交換樹脂の総交換容量の10〜90モル%が好ましく、さらに好ましくは40〜80モル%である。 多価アミンで、陽イオン交換樹脂の総交換容量の1〜99モル%をイオン交換する方法は特に限定されないが、例えば、陽イオン交換樹脂を充填したカラムに、所望のイオン交換量に相当する量の多価アミン、すなわち、陽イオン交換樹脂の総交換容量の1〜99モル%に相当する量の多価アミンを含んだ水溶液を循環させる方法や、陽イオン交換樹脂を、所望のイオン交換量に相当する量の多価アミンを含む水溶液に添加して振とうする方法等が挙げられる。 このような、多価アミンで総交換容量の1〜99モル%をイオン交換した陽イオン交換樹脂からなるアルデヒド吸着材は、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液に接触させることにより、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液中のアルデヒドを選択的に吸着し、カルボン酸含有液中に含まれるアルデヒドを除去することができる。したがって、系内のアルデヒドの縮合が抑制され、アルデヒドの析出によるカラム等装置の閉塞が回避できる。そして、本発明は、多価アミンを担持した陽イオン交換樹脂からなる吸着材による除去なので、特許文献1のように複雑で高価な装置を用いずに、容易に安価な方法でカルボン酸含有液からアルデヒドを除去することができる。また、ヨウ化メチルや、酢酸メチル等のメタノールのカルボニル化反応等に有用な低沸点成分が除去されてしまうという特許文献2のような問題も解決される。そして、例えば酢酸の製造方法に適用した場合は、製品酢酸の精製負荷を低減して酢酸製品品質の安定化を図ることができる。なお、詳しくは後述するが、本発明のアルデヒド吸着材は、イオン交換容量の一部だけ多価アミンに置換しアミン基と酸点を共存させることによって高効率でアルデヒドを吸着することができる。 アルデヒドとしては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等の脂肪族アルデヒドや、これらの縮合物であるクロトンアルデヒド、パラアルデヒド等が挙げられる。 カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。 アルデヒド吸着材をアルデヒドを含有するカルボン酸含有液に接触させる方法は特に限定されないが、例えば、アルデヒド吸着材を充填したカラムに、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液を上昇流または下降流で通液させる流通方法、アルデヒド吸着材をアルデヒドを含有するカルボン酸含有液に懸濁浮遊状態にした流動層とする方法や、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液をアルデヒド吸着材と接触させて振とうする方法等が挙げられる。接触させる温度は特に限定されないが、例えば、100℃以下で接触させることが好ましい。また、アルデヒド吸着材の量も特に限定されず、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液が含有するアルデヒドの量や、アルデヒド吸着材の吸着容量等に基づいて決定すればよい。勿論、アルデヒド吸着材をアルデヒドを含有するカルボン酸含有液に接触させて行う吸着は、連続的でも間欠的でもよい。 このような、多価アミンで総交換容量の1〜99モル%をイオン交換した陽イオン交換樹脂からなる本発明のアルデヒド吸着材が、高効率でカルボン酸含有液中に含まれるアルデヒドを除去することができる機構は、以下のように推測される。 まず、多価アミンで陽イオン交換樹脂の一部をイオン交換することにより、陽イオン交換樹脂に多価アミンのアミノ基の一つが結合し多価アミンが陽イオン交換樹脂に担持される。この陽イオン交換樹脂に結合した多価アミンが有する、陽イオン交換樹脂に結合していないアミノ基は、アルデヒドと求核付加反応によって結合することができる。なお、本発明においては、多価アミンのイオン交換量は、陽イオン交換樹脂の総交換容量の1〜99モル%なので、陽イオン交換樹脂の酸点、すなわち、スルホ基等のH+は、多価アミンによるイオン交換の後も残存している。 次に、多価アミンで一部をイオン交換した陽イオン交換樹脂に、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液を接触させる。この時、陽イオン交換樹脂に担持された多価アミンの、陽イオン交換樹脂に結合していないアミノ基を、上記陽イオン交換樹脂に残存している酸点が保護して、この陽イオン交換樹脂に結合していないアミノ基とカルボン酸との接触を防ぐ。したがって、上記陽イオン交換樹脂に結合していないアミノ基がアルデヒドと選択的に求核付加反応をし、アルデヒドが選択的に陽イオン交換樹脂に吸着除去される。 また、陽イオン交換樹脂に残存している酸点が、カルボン酸とアミノ基の接触を防ぐだけではなく、アミノ基に結合したアルデヒドと未反応のアルデヒドとの縮合反応の触媒としても働くため、アルデヒドの多量体を形成することができる。例えば、アセトアルデヒドの場合は、三量体のパラアルデヒドまで縮合が進行できる(3CH3CHO→C6H12O3)。 このように、陽イオン交換樹脂の酸点を一部残すことによって多量体のアルデヒドが陽イオン交換樹脂にイオン交換している多価アミンに結合され、陽イオン交換樹脂に担持された多価アミンの数モル倍量(上記アセトアルデヒドの場合は3モル倍量)を吸着することができる。したがって、本発明のアルデヒド吸着材は、高効率でカルボン酸含有液中に含まれるアルデヒドを除去することができる。 一方、陽イオン交換樹脂の総交換容量の全てを多価アミンで置換した場合は、上記陽イオン交換樹脂の酸点によるアミノ基の保護効果や触媒効果が得られないため、アルデヒドの除去効率は本発明と比較して低くなる。また、陽イオン交換樹脂を多価アミンでイオン交換しない場合は、アルデヒドを除去することができない。 ここで、特許文献3においては、アミノ基と反応するカルボン酸類もアルデヒドと同時に除去される旨の記載がある。しかしながら、本発明においては、上述したように、多価アミンで陽イオン交換樹脂の一部をイオン交換しているため陽イオン交換樹脂の酸点が残存し、これにより上記アミノ基の保護効果が生じる。また、カルボン酸含有液には通常水が含まれるため、カルボン酸とアミノ基との中和反応が熱力学的に進行しにくくなる。したがって、本発明においては、カルボン酸がアルデヒドの除去に与える影響を回避することができ、カルボン酸含有液からアルデヒドを選択的に除去することができる。 なお、本発明のアルデヒド吸着材が除去できるアルデヒド量は、陽イオン交換樹脂に担持された多価アミンの量(すなわちイオン交換量)と、陽イオン交換樹脂に残存する酸点の量の関係で決まるため、陽イオン交換樹脂の総交換容量に対するイオン交換量が一定値以上では増加しない。 本発明のアルデヒド吸着材は、通常の陽イオン交換樹脂と同様の方法で再生することができる。具体的には、本発明のアルデヒド吸着材を硫酸や塩酸などの無機酸水溶液で洗浄することにより、アルデヒドを多価アミンと共に除去できる。アルデヒド吸着材を無機酸水溶液で洗浄する方法としては、例えば、0.1〜2.0mol/L濃度、望ましくは0.5mol/L程度の濃度で、硫酸、塩酸等の無機酸水溶液を、アルデヒド吸着材を充填したカラムに通液する方法や、アルデヒド吸着材を上記無機酸水溶液に添加して振とうする方法等が挙げられる。 本発明のアルデヒド吸着材を無機酸水溶液で洗浄すると、プロトンのイオン交換作用により多量体アルデヒドを結合している多価アミンが陽イオン交換樹脂から脱離する。洗浄された陽イオン交換樹脂は、再び多価アミンに一部置換されることにより、カルボン酸含有液からのアルデヒドの選択除去に用いることができる。そして、本発明においては、上述したように、アルデヒドの多量体が陽イオン交換樹脂に担持された多価アミンと共に、酸で洗浄されるため、より少量の酸で、多量のアルデヒドを陽イオン交換樹脂から脱離させることができる。したがって、再生に使用する酸の量を少なくすることができる。 このような本発明のアルデヒド吸着材を用いて、アルデヒドを含有するカルボン酸含有液からアルデヒドを除去する方法は、酢酸の製造方法に適用することができる。すなわち、従来の酢酸の製造方法(例えばメタノールを一酸化炭素でカルボニル化して酢酸を生成させ、これを蒸留等で精製すると共に、生じたプロセス液やプロセスガスの低沸点成分を循環させる酢酸の製造方法)に、酢酸製造中に生じるプロセス液やプロセスガスの低沸点成分を吸収させた吸収液に上記本発明のアルデヒド吸着材を接触させるアルデヒド吸着工程を追加することができる。例えば、本発明の酢酸の製造方法は、メタノールを一酸化炭素でカルボニル化して酢酸を生成させるカルボニル化反応工程と、カルボニル化反応工程で生じた反応生成液の一部を気化して気相と液相に分離するフラッシュ蒸発工程と、フラッシュ蒸発工程で生じた気相を蒸留して、製品酢酸となる缶出液及びカルボニル化反応工程に循環させる塔頂流出液を生じさせるライトエンド蒸留工程と、カルボニル化反応工程、フラッシュ蒸発工程及びライトエンド蒸留工程の少なくとも一つの工程で生じたプロセス液及びこれらの工程で生じたプロセスガスに含まれる低沸点成分を吸収させた吸収液の少なくとも一方を、上記本発明のアルデヒド吸着材に接触させるアルデヒド吸着工程とを有する。 まず、メタノールを一酸化炭素でカルボニル化して酢酸を生成させる(カルボニル化反応工程)。メタノールと一酸化炭素を反応させて酢酸を生成する方法は特に限定されないが、例えば、ロジウムやイリジウム等の錯体を担持した固体触媒や、ヨウ化メチル等の助触媒を含む液相中で、メタノールと一酸化炭素を反応させる不均一系でもよい。また、固体触媒の代わりに、液相中に溶解するロジウムやイリジウムなどの貴金属触媒を用いる均一系でもよい。 固体触媒としては、四級化窒素を含有する樹脂担体上に貴金属錯体を担持した固体触媒が挙げられる。四級化窒素を含有する樹脂担体とは、典型的にはピリジン樹脂、すなわち窒素原子が四級化されうるピリジン環を構造中に含む樹脂であり、たとえば4−ビニルピリジンとジビニルベンゼンの共重合体が代表的なものである。ただし、この特定の樹脂に限られるわけではなく、四級化されて貴金属錯体を吸着担持しうる塩基性窒素を含有する樹脂を包括的に含む趣旨である。したがって、上記4−ビニルピリジンに代えて、ビニル基の位置が異なる2−ビニルピリジンや、ビニルメチルピリジンなどの置換ビニルピリジン類、もしくはビニルキノリン類などの各種塩基性窒素含有モノマーを含むもの、あるいはジビニルベンゼンに代えて、エチレン性不飽和結合を含む基を2以上有する各種架橋性モノマーを含むものを用いることができる。さらに、上記塩基性窒素含有モノマーおよび架橋性モノマーに加えて、スチレンやアクリル酸メチルなどの他の重合性コモノマーを含むものを用いることもできる。 樹脂担体に担持される貴金属錯体とは、当該カルボニル化反応に対する触媒作用を示す貴金属の錯体であって、上記樹脂担体の四級化窒素にイオン交換吸着されるものをいう。そのような貴金属としては、ロジウムやイリジウムが知られているが、一般にはロジウムが好適に用いられる。樹脂担体とロジウムのハロゲン化物や酢酸ロジウムなどのロジウム塩とヨウ化メチルを含む溶液中において、一酸化炭素加圧下(0.7〜3MPa)で接触させると、その樹脂担体にロジウムを担持させることができる。このとき、樹脂担体中の窒素原子は四級化され、これにロジウムとヨウ化メチルと一酸化炭素との反応によって生成したロジウム錯イオン、すなわちロジウムカルボニルアイオダイド錯体[Rh(CO)2I2]−がイオン交換的に結合し、固体触媒が得られる。 このような固体触媒や金属触媒が充填された反応器内に、反応原料のメタノール、反応溶媒および助触媒からなる混合液を反応液として充填する。反応溶媒としては、従来公知の各種のものが用いられる。この反応は、通常、酢酸を反応溶媒として行なわれるが、この場合、酢酸は反応生成物であるとともに反応溶媒としても働くことになる。この反応では、副生物として酢酸メチル、ジメチルエーテル、水、アセトアルデヒドなどが生成し、これらは溶媒、反応促進剤および未反応原料とともに、酢酸を製品として分離回収した残液としてカルボニル化反応工程に戻されるので、カルボニル化反応工程における液相はこれら成分すべての混合物からなる。カルボニル化反応工程は、固定床、膨張床、混合槽など各種形式の反応器を用いて実施することができ、また、回分式操作および連続式操作のいずれを採用してもよいが、工業的には反応条件をコントロールしやすい連続式混合槽が好ましい。 次に、カルボニル化反応工程からの反応生成液(連続式混合槽の場合はカルボニル化反応工程における液相と同一組成)は、まずフラッシュ蒸発部で一部を気化させて気相と液相とに分離(フラッシュ蒸発工程)した後、その気相をライトエンド蒸留塔に導いてその下部から缶出液として製品酢酸となる酢酸を分離(ライトエンド蒸留工程)する。分離回収される酢酸以外の残液、例えば、フラッシュ蒸発部で得られる缶出液や、ライトエンド蒸留工程で得られる塔頂流出液等は、一部がプロセスからパージされる他は、適宜精製工程を経て、カルボニル化反応工程に戻される。 このようにフラッシュ蒸発工程に続いてライトエンド蒸留工程を行うのは、反応生成液が上記に述べたように各種成分の混合物であり、酢酸はそれらの中で揮発度が小さい成分であるが、実際にはさらに揮発度の小さい(あるいは不揮発性の)不純物が混入するため、フラッシュ蒸発部の缶出液から酢酸を製品として回収するわけにはいかないからである。なお、フラッシュ蒸発工程とライトエンド蒸留工程は、一連の工程として行うこともできるし、別個の工程として行うこともできる。すなわち、例えば、フラッシュ蒸発部とライトエンド蒸留塔は単一の塔の底部とその上部に一体的に設けることもできるし、フラッシャーとライトエンド蒸留塔に分けて別塔として構成することもできる。 そして、本発明においては、上記酢酸の製造中に生じたプロセス液(液体)、具体的には上記カルボニル化反応工程で生じたプロセス液(すなわちカルボニル化反応で生じた反応生成液)、フラッシュ蒸発工程で生じたプロセス液やライトエンド蒸留工程で生じたプロセス液を、上記本発明のアルデヒド吸着材に接触させる(アルデヒド吸着工程)。また、上記酢酸の製造中に生じたプロセスガス(気体)、具体的には、上記カルボニル化反応工程で生じたプロセスガス(すなわちカルボニル化反応で生じたオフガス)、フラッシュ蒸発工程で生じたプロセスガスやライトエンド蒸留工程で生じたプロセスガスに含まれる低沸点成分を水、メタノール、または酢酸等に吸収させた吸収液を、上記本発明のアルデヒド吸着材に接触させてもよい。なお、低沸点成分とは、プロセスガスに含まれる成分のうち、酢酸の製造工程中に気化した成分である。低沸点成分としては、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸や、アルデヒドが挙げられる。 上述したように、メタノールのカルボニル化による酢酸の製造においてはアセトアルデヒドが副生するため、カルボニル化反応工程、フラッシュ蒸発工程やライトエンド蒸留工程で得られるプロセス液やプロセスガスには、アセトアルデヒドが含まれる。なお、プロセス液やプロセスガスは、アセトアルデヒドの他に、水、酢酸や、ヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノール等の成分も含む。 このアセトアルデヒドが酢酸の製造を行う系内に存在すると、アセトアルデヒドはカルボニル化条件下で縮合反応を起こし、高沸点の不飽和アルデヒド類となる。これらの縮合がさらに進行して蒸留塔下部などで析出して閉塞等の問題を起こす。また、クロトンアルデヒド等は酢酸と沸点が近いため酢酸の精製工程での分離が難しく製品酢酸に混入し、特に還元性物質として酢酸の品質低下を招く。そして、特に、メタノールのカルボニル化反応に有用な成分である酢酸メチルやヨウ化メチルなどの低沸点成分を回収し再利用するために、各工程で生じたプロセス液やプロセスガスに含まれる低沸点成分を酢酸の反応系内に循環させると、アセトアルデヒドが蓄積してしまう。 本発明の酢酸の製造方法においては、アルデヒド吸着工程において、アセトアルデヒドを上記アルデヒド吸着材で好適に吸着させて除去することができるため、蒸留塔下部などの製造装置でアルデヒドが析出して閉塞するという問題を解決できる。また、ライトエンド蒸留工程で生じる缶出液に対してアルデヒド吸着工程を行うことで、製品酢酸の品質を良好にすることもできる。 アルデヒド吸着工程は、カルボニル化反応工程、フラッシュ蒸発工程やライトエンド蒸留工程で生じたプロセス液や、これらの工程で生じたプロセスガスに含まれる低沸点成分を水、メタノール、または酢酸等に吸収させた吸収液を、上記のアルデヒドを含有するカルボン酸含有液と同様の方法で、本発明のアルデヒド吸着材に接触させればよい。接触方式は特に限定されず、連続流通式または回分式の少なくとも一つの方式あるいはその組み合わせで実施することができる。なお、連続流通式を用いる場合、所定の陽イオン交換樹脂を充填したカラムにプロセス液や吸収液を流す方向は、上昇流でも下降流でもよい。 また、本発明の酢酸の製造方法は、上記ライトエンド蒸留工程で生じた塔頂流出液を水相と油相に分離する分離工程と、この分離工程で分離された水相または油相をカルボニル化反応工程に循環する循環工程とをさらに有していてもよい。そして、この分離工程で分離された水相または油相を、アルデヒド吸着工程の被処理液であるプロセス液としてもよい。すなわち、分離工程の後段で、アルデヒド吸着工程を行ってもよい。 アルデヒド吸着工程は、分離工程で分離された水相や油相の一部に対して行ってもよいし、水相や油相の全部に対して行ってもよい。例えば、分離工程で分離された水相の一部のみを、アルデヒド吸着工程を経てカルボニル化反応工程に循環させるようにしてもよい。 分離工程としては、塔頂流出液を容器中で静置することにより水相と油相に分離する方法が挙げられる。また、循環工程は、例えば分離工程を行う容器から油相や水相をカルボニル化反応工程に戻す配管及びポンプ等の送液手段により行うことができる。 さらに、分離工程で分離された水相を、必要に応じてアルデヒド吸着工程でアルデヒド吸着材に接触させた後、カルボニル化反応工程で副生される過剰水を除去する過剰水蒸留工程をさらに有していてもよい。この過剰水蒸留工程によりヨウ化メチル、酢酸メチル等の有用成分が油相に回収される。そして、過剰水蒸留工程で得られた水相は、系外に排出することができる。 また、カルボニル化反応工程で生じたオフガスをメタノールに接触させてヨウ化メチルを回収するヨウ化メチル回収工程をさらに有していてもよい、そして、ヨウ化メチル回収工程で得られるメタノール含有液を、アルデヒド吸着工程の被処理液としてもよい。すなわち、ヨウ化メチル回収工程の後段で、アルデヒド吸着工程を行ってもよい。 カルボニル化反応工程で生じたオフガスとは、例えばカルボニル化反応工程を行う反応器の頂部から排出される未反応一酸化炭素、メタノール、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸、アセトアルデヒドなどを含むガスである。ヨウ化メチル回収工程では、このオフガスをメタノールに接触させて、オフガス中のヨウ化メチル、さらには酢酸メチルなどの有用成分を吸収させる。例えば、ヨウ化メチル吸収塔の下部からオフガスを導入し、上部から液体メタノールを降らしてオフガスと接触させればよい。ヨウ化メチル等を吸収したメタノール含有液は、適宜アルデヒド吸着工程を経て、カルボニル化反応工程に循環させてもよい。また、ヨウ化メチル吸収塔の頂部等から排出されるヨウ化メチルが除去されたオフガスは、必要に応じて活性炭等で精製された後、反応系外に排出される。 また、過剰水除去蒸留工程により生じるヨウ化メチル、酢酸メチル等を含むプロセスガスをメタノールに接触させてヨウ化メチルを回収する工程をさらに有していてもよい。このヨウ化メチルを回収する工程は、上記ヨウ化メチル回収工程と同様の方法で行えばよい。そして、このヨウ化メチルを回収する工程で得られるメタノール含有液も、アルデヒド吸着工程の被処理液としてもよい。また、ヨウ化メチルを吸収したメタノール含有液は、適宜アルデヒド吸着工程を経て、カルボニル化反応工程に循環させてもよい。 さらに、ライトエンド蒸留工程で生じ製品酢酸となる缶出液を精製する缶出液精製工程を有していてもよい。そして、ライトエンド蒸留工程で生じ製品酢酸となる缶出液や、缶出液精製工程で得られる製品酢酸を、アルデヒド吸着工程の被処理液としてもよい。すなわち、ライトエンド蒸留工程や、缶出液精製工程の後段で、アルデヒド吸着工程を行ってもよい。 缶出液精製工程は、ライトエンド蒸留工程で生じた缶出液を、例えば酢酸精製用蒸留塔等で蒸留してプロピオン酸などの酢酸よりも高分子量の成分を除去する精製をすればよい。 また、フラッシュ蒸発部の液相をカルボニル化反応工程に戻す経路の途中で、フラッシュ蒸発部の液相を酸性陽イオン交換樹脂と接触させることにより、ピリジン樹脂担体の熱分解等により生じる塩基性窒素含有化合物を除去する工程(塩基性窒素化合物除去工程)を有していてもよい。 フラッシュ蒸発部の液相は主に酢酸からなるが、固体触媒の樹脂担体からピリジン環などの塩基性窒素含有分子が分解溶出した場合には、それもフラッシュ蒸発部の液相に含まれてくる。そのような塩基性窒素含有分子(これらは四級化されている)を含む液相をそのままカルボニル化反応工程に戻すと、カルボニル化反応工程における液相中にそのような分子が蓄積し、固体触媒の樹脂担体中の塩基性窒素含有部位と貴金属錯体のイオンを奪う分配が生じる。すなわち、カルボニル化反応工程における液相中に貴金属錯体がより多く遊離して、触媒機能が低下することになる。塩基性窒素化合物除去工程を行うことにより、触媒機能の低下を抑制することができる。 このような本発明の酢酸の製造方法を適用できる酢酸の製造装置を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の酢酸の製造方法を適用することができる酢酸の製造装置の一例を示す模式図である。 図1に示すように、酢酸の製造装置10は、メタノールを一酸化炭素でカルボニル化して酢酸を生じさせるカルボニル化反応器11と、カルボニル化反応器11から排出される反応生成液の一部を気化して気相と液相に分離するフラッシュ蒸発手段であるフラッシャー12と、フラッシャー12から排出される気相を蒸留して、製品酢酸となる缶出液及び塔頂流出液を生じさせるライトエンド蒸留手段であるライトエンド蒸留塔14と、ライトエンド蒸留塔14で生じた塔頂流出液を水相と油相に分離する分離手段であるデカンタ15を有し、デカンタ15から排出された油相は配管19を経由してデカンタ15から配管20を経由して送られる水相の液とともにカルボニル化反応器11に戻される構成となっている。 また、図1に示す酢酸の製造装置10は、フラッシャー12から排出される液相を酸性陽イオン交換樹脂と接触させる塩基性窒素化合物吸着カラム13を有する。 そして、図1に示すように、デカンタ15から排出された水相の一部を本発明のアセトアルデヒド吸着材に接触させるアルデヒド吸着カラム16が、デカンタ15の後段で配管20から分岐された配管上に設けられている。アルデヒド吸着カラム16は、本発明のアルデヒド吸着材が充填されたカラムである。 図1では、デカンタ15から排出された水相を、本発明のアルデヒド吸着材の処理対象としたが、その他の工程から生じるプロセス液やプロセスガスに含まれる低沸点成分を吸収した吸収液を処理対象としてもよく、その場合は、処理対象のプロセス液やプロセスガスを生じる工程の後段に、アルデヒド吸着カラム16を設ければよい。 また、図1に示す酢酸の製造装置10は、アルデヒド吸着カラム16の後段に、アルデヒド吸着カラム16から排出された水相を蒸留して、カルボニル化反応工程で副生される過剰水を除去すると共に、ヨウ化メチル、酢酸メチル等を分離する過剰水除去蒸留塔17が設けられている。 さらに、図1に示す酢酸の製造装置10は、カルボニル化反応器11の頂部から排出される一酸化炭素、メタノール蒸気、ヨウ化メチルや酢酸メチルを含むガスであるオフガスが導入され、これをメタノールと接触させてヨウ化メチル等を回収するヨウ化メチル吸収塔18aが設けられている。ヨウ化メチル吸収塔18aは、下部からオフガスを導入し、上部から液体メタノールを降らす構成である。 また、図1に示す酢酸の製造装置10は、過剰水除去蒸留塔17の頂部から排出されるヨウ化メチルや、酢酸メチル等を含むガスが導入され、これをメタノールと接触させてヨウ化メチルを回収するヨウ化メチル吸収塔18bが設けられている。ヨウ化メチル吸収塔18bもヨウ化メチル吸収塔18aと同様に、下部からガスを導入し、上部から液体メタノールを降らす構成である。但し、ヨウ化メチル吸収塔18bは、ヨウ化メチル吸収塔18aよりも低圧で行うものである。 このような酢酸の製造装置10を用いた酢酸の製造方法について以下に例示する。まず。カルボニル化反応器11に、メタノールと一酸化炭素が導入され、これらが反応することにより酢酸が生成する。詳述すると、カルボニル化反応器11では、固体触媒が、液相中に分散して存在する。液相は、溶媒としての酢酸と、反応促進剤であるヨウ化メチルと、反応原料としてのメタノールと、各種反応副生物(酢酸メチル、アセトアルデヒド、水等)を含んでいる。固体触媒が分散した上記反応液中には一酸化炭素ガスが吹き込まれ、例えば、反応温度100〜200℃、反応圧力1〜5MPa程度の条件において、メタノールが一酸化炭素と反応して酢酸を生成する。 カルボニル化反応器11の頂部から排出されるオフガスは、ヨウ化メチル吸収塔18aに下部から導入される。ヨウ化メチル吸収塔18aに導入されたオフガスは、ヨウ化メチル吸収塔18aの上部から降らせた液体メタノールに接触し、ヨウ化メチルが液体メタノールに吸収される。ヨウ化メチル等を吸収したメタノール含有液は、カルボニル化反応器11に戻される。また、ヨウ化メチル吸収塔18aの頂部等から排出されるヨウ化メチル等が除去されたオフガスは、反応系外に排出される。 一方、カルボニル化反応器11の反応生成液は、スクリーンなどを通して取り出され、フラッシャー12に導入される。そして反応生成液はフラッシュ蒸発により一部が気化して気相と液相となる。 フラッシュ蒸発により生じた液相は、塩基性窒素化合物吸着カラム13に流入され、塩基性窒素化合物が吸着除去された後、カルボニル化反応器11に戻される。 また、フラッシュ蒸発により生じた気相は、後段のライトエンド蒸留カラム14に流入する。ライトエンド蒸留カラム14では、フラッシャー12から流入した気相を蒸留により分離するが、フラッシャー12から流入した気相を構成する成分のうち最も揮発度が小さい酢酸の一部が塔頂留分に含まれるようにすることで、他の気相成分がすべて塔頂留分に含まれるようにすることができる。フラッシャー12で気相に含まれる酢酸の大部分は、ライトエンド蒸留カラム14下部より缶出液として取り出され、適宜精製処理を受けた後、製品として分離回収される。 他方、ライトエンド蒸留カラム14の塔頂流出液は、デカンタ15に導入され、水相と油相に分離される。デカンタ15の油相は、配管19を経由してデカンタ15から配管20を経由して送られる水相の液と混合され、カルボニル化反応器11に戻される。 そして、デカンタ15の水相の一部は配管20から分岐されて、本発明のアルデヒド吸着材が充填されたアルデヒド吸着カラム16に通液され、アルデヒドが除去される。 その後、アルデヒドが除去された水相は、過剰水除去蒸留塔17に送られて、蒸留される。過剰水除去蒸留塔17から排出される水相は、反応系外に排出される。一方、過剰水除去蒸留塔17の頂部から排出されるヨウ化メチル、酢酸メチル等を含むガスは、ヨウ化メチル吸収塔18bに下部から導入される。ヨウ化メチル吸収塔18bに導入されたガスは、ヨウ化メチル吸収塔18bの上部から降らせた液体メタノールに接触し、ヨウ化メチルが液体メタノールに吸収される。ヨウ化メチル等を吸収したメタノール含有液は、カルボニル化反応器11に戻される。また、ヨウ化メチル吸収塔18bの頂部等から排出されるヨウ化メチル等が除去されたオフガスは、反応系外に排出される。 以下に、本発明の更なる理解のために実施例を用いて説明するが、実施例はなんら本発明を限定するものではない。 <実施例1〜7及び比較例1> 500mlネジ口三角フラスコに、表1の「Amberlyst−15添加量(g)−dry」欄に記載する量のAmberlyst15(ダウ・ケミカル社製、総交換容量5.38mmol/g−dry、含水率54.0wt%)と、イオン交換水200mlと、表1の「ヒドラジン一水和物添加量」欄に記載する量のヒドラジン一水和物(ヒドラジンが各実施例及び比較例の陽イオン交換樹脂の総交換容量の26〜100モル%に相当する量)とを入れて、室温で5時間振とう撹拌を行った。ついで上澄みをスポイトで吸い取り、イオン交換水200mlを加えて撹拌してから、また上澄みを除去した。これを10回繰り返して置換洗浄を行った。 図1に示す酢酸の製造装置において、ライトエンド蒸留塔頂流出液の水相(デカンターの水相)の模擬液(代表的な組成;アセトアルデヒド3wt%、酢酸メチル19wt%、メタノール4wt%、ヨウ化メチル2wt%、酢酸5wt%、水67wt%)200gを、上記置換洗浄を行った後のネジ口三角フラスコに入れ、40℃で5時間振とうを行った後、上澄み液中のアセトアルデヒド濃度をガスクロマトグラフィー(GC)で分析した。結果を表1に示す。また、ヒドラジン交換率とアセトアルデヒド減少量/ヒドラジン交換量の関係を図2に、ヒドラジン交換率とアセトアルデヒド減少量の関係を図3に示す。 各実施例及び比較例の陽イオン交換樹脂の総交換容量は、Amberlyst15の総交換容量値5.38mmol/g−dryに、Amberlyst15の添加量を乗じることで求められる。そして、陽イオン交換樹脂の総交換容量に対するヒドラジンの、イオン交換量(表1、図2及び図3において「ヒドラジン交換率(%)」と記載する)は、ヒドラジンの添加量(mmol)/各実施例及び比較例の陽イオン交換樹脂の総交換容量(mmol)×100で求めることができる。なお、添加したヒドラジンは、全てイオン交換している。 表1に示すように、多価アミンで総交換容量の1〜99モル%をイオン交換した陽イオン交換樹脂からなる本発明のアルデヒド吸着材を用いた実施例1〜7では、アルデヒドが良好に吸着除去されていた。一方、多価アミンで総交換容量の100%をイオン交換した陽イオン交換樹脂を用いた比較例1では、アルデヒドを除去することはできたが、実施例1〜7と比べて、ヒドラジンに対して除去できたアルデヒドのモル比(アセトアルデヒド減少量/ヒドラジン交換量)は少なかった。 詳述すると、表1及び図2から、実施例1〜7ではアセトアルデヒドの吸着量はヒドラジンに対して2倍以上であり、特に多価アミンで総交換容量の約70%以下をイオン交換した陽イオン交換樹脂を用いた実施例1〜5ではアセトアルデヒドの吸着量はヒドラジンに対して約3倍であることが分かる。したがって、実施例1〜7、特に実施例1〜5では、高効率でアルデヒドを除去していると言える。なお、実施例1〜5は、ヒドラジンに対して約3倍のアセトアルデヒドが吸着しているため、アセトアルデヒドが3量体になってヒドラジンに吸着していると推測される。 また、表1及び図3から、ヒドラジン交換率が約70%でアセトアルデヒドが吸着除去される量が最大になることが分かる。 10 酢酸の製造装置 11 カルボニル化反応器 12 フラッシャー 13 塩基性窒素化合物吸着カラム 14 ライトエンド蒸留塔 15 デカンタ 16 アルデヒド吸着カラム 17 過剰水除去蒸留塔 18a、18b ヨウ化メチル吸収塔 19、20 配管 アルデヒドを含有するカルボン酸含有液中のアルデヒドを吸着するアルデヒド吸着材であって、 多価アミンで総交換容量の1〜99モル%をイオン交換した陽イオン交換樹脂からなることを特徴とするアルデヒド吸着材。 前記多価アミンのイオン交換量は、前記陽イオン交換樹脂の総交換容量に対して10〜90モル%であることを特徴とする請求項1に記載のアルデヒド吸着材。 前記多価アミンのイオン交換量は、前記陽イオン交換樹脂の総交換容量に対して40〜80モル%であることを特徴とする請求項1に記載のアルデヒド吸着材。 前記多価アミンは、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及び1,3−プロパンジアミンから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルデヒド吸着材。 前記アルデヒドは、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド及びそれらの縮合物から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルデヒド吸着材。 前記カルボン酸は酢酸であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルデヒド吸着材。 前記陽イオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルデヒド吸着材。 アルデヒドを含有するカルボン酸含有液を、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアルデヒド吸着材に接触させることによりアルデヒドを吸着除去することを特徴とするアルデヒドの除去方法。 前記アルデヒドを含有するカルボン酸含有液は、メタノールのカルボニル化による酢酸の製造中に生じるプロセス液及び該製造中に生じるプロセスガスに含まれる低沸点成分を吸収させた吸収液の少なくとも一方であることを特徴とする請求項8に記載のアルデヒドの除去方法。 メタノールを一酸化炭素でカルボニル化して酢酸を生成させるカルボニル化反応工程と、 前記カルボニル化反応工程で生じた反応生成液の一部を気化して気相と液相に分離するフラッシュ蒸発工程と、 前記フラッシュ蒸発工程で生じた気相を蒸留して、製品酢酸となる缶出液、及び、前記カルボニル化反応工程に循環させる塔頂流出液を生じさせるライトエンド蒸留工程と、 前記カルボニル化反応工程、前記フラッシュ蒸発工程及び前記ライトエンド蒸留工程の少なくとも一つの工程で生じたプロセス液及びこれらの工程で生じたプロセスガスに含まれる低沸点成分を吸収させた吸収液の少なくとも一方を、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアルデヒド吸着材に接触させるアルデヒド吸着工程とを有することを特徴とする酢酸の製造方法。 前記ライトエンド蒸留工程で生じた前記塔頂流出液を水相と油相に分離する分離工程と、前記分離工程で分離された前記水相又は前記油相を前記カルボニル化反応工程に循環する循環工程とをさらに有し、 前記プロセス液は、前記分離工程で分離された前記水相または前記油相であることを特徴とする請求項10に記載の酢酸の製造方法。 前記カルボニル化反応工程で生じたオフガスをメタノールに接触させてヨウ化メチルを吸収するヨウ化メチル回収工程をさらに有し、 前記プロセス液は、前記ヨウ化メチル回収工程で得られるメタノール含有液であることを特徴とする請求項10に記載の酢酸の製造方法。 前記ライトエンド蒸留工程で生じた缶出液を精製する缶出液精製工程をさらに有し、 前記プロセス液は、前記缶出液及び前記缶出液精製工程で得られる製品酢酸の少なくとも一方であることを特徴とする請求項10に記載の酢酸の製造方法。 前記プロセス液は、ヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノール、アセトアルデヒド及び酢酸を含む水溶液であることを特徴とする請求項10に記載の酢酸の製造方法。 アルデヒドを吸着させた請求項1〜7のいずれか一項に記載のアルデヒド吸着材を、無機酸水溶液で洗浄することにより、アルデヒドを多価アミンと共に除去することを特徴とするアルデヒド吸着材の再生方法。 【課題】カルボン酸含有液からアルデヒドを吸着により除去することができるアルデヒド吸着材を提供する。【解決手段】アルデヒドを含有するカルボン酸含有液中のアルデヒドを吸着するアルデヒド吸着材であって、多価アミンで総交換容量の1〜99モル%をイオン交換した陽イオン交換樹脂からなるアルデヒド吸着材とする。【選択図】なし