生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法
出願番号:2013120305
年次:2014
IPC分類:C12Q 1/04


特許情報キャッシュ

黒住 明大 渡邊 哲文 高瀬 長武 福崎 康博 川久保 祐貴 中村 安宏 堀 克敏 JP 2014236685 公開特許公報(A) 20141218 2013120305 20130607 嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法 株式会社明電舎 000006105 国立大学法人名古屋大学 504139662 小林 博通 100086232 鵜澤 英久 100104938 橋本 剛 100096459 黒住 明大 渡邊 哲文 高瀬 長武 福崎 康博 川久保 祐貴 中村 安宏 堀 克敏 C12Q 1/04 20060101AFI20141121BHJP JPC12Q1/04 6 3 OL 13 4B063 4B063QA18 4B063QQ06 4B063QR45 4B063QR66 4B063QS15 4B063QS36 4B063QS39 4B063QX02 本発明は、嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法に関する。 微生物学分野では、特定属種の細菌を検出する方法として、菌体内のrRNAを標的とした蛍光in situハイブリダイゼーション(Fluorescence in situ hybridization:FISH)法が普及し、一般的に広く使用されている。この方法は、嫌気性アンモニア酸化細菌の検出にも利用されている。細菌のrRNAは、界、科、属、種等のレベルで共通な塩基配列を含んでおり、分類・同定にはその塩基配列が利用される場合が多い。また、rRNAは細胞内含有量が高いため、FISHの標的として一般的に用いられている。 FISH法は、図5に示すように、細菌のrRNAの塩基配列に特異的な蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを細胞内でハイブリダイズさせ、その蛍光を蛍光顕微鏡下で検出・計数するものである。蛍光色素で標識したプローブ(FISHプローブ)とハイブリダイズした細菌は、励起光を照射すると色素由来の蛍光を発するので、この蛍光を検出することで目的の細菌の存在の有無、または生物膜中の空間分布状況を把握することができる。 FISH法の検出感度は、主として細胞内のrRNA含量に依存することから、貧栄養な環境下に生息するrRNA含量が少ない細菌に対しては、十分な蛍光強度が得られず、その適用が制限される場合がある。したがって、より強い蛍光が得られる色素を選択することが重要であり、現在、Cy3、Cy5、Alexa Fluor(登録商標)、FITC(Fluorescein isothiocyanate)等がプローブの標識に良く利用されている。また、蛍光シグナルを増強させる手段として、プローブに酵素を結合させ、酵素反応を利用して蛍光を増幅させる方法がある(例えば、非特許文献1−3)。さらに、DVC(Direct Viable Count)法と組み合わせたDVC−FISH法や細胞内で遺伝子増幅する各手法を用いることで検出感度を向上させる手法も提案されている(例えば、非特許文献4)。特表2012−503780号公報Lebaron, P., P.Catala, C.Fajon, F.Joux, J.Baudart, and L Bernard., "A new sensitive, whole-cell hybridization technique for detection of bacteria involving a biotinylated oligonucleotide probe targeting rRNA and tyramide signal amplification.", Appl. Environ. Microbiol., 1997, 63, 3274-3278Kenzaka, T., N.Yamaguchi, K.Tani, and M.Nasu., "rRNA-targeted fluorescent in situ hybridization analysis of bacterial community structure in river water.", Microbiology, 1998, 144, 2085-2093Yamaguchi N., S.Inaoka, K.Tani, T.Kenzaka, and M.Nasu., "Detection of specific bacterial cells with 2-hydroxy-3-naphthoic acid-2'-phenylanilide phosphate and fast red TR in situ hybridization.", Appl. Environ. Microbiol., 1996, 62, 275-278Kogure, K., U.Simidu, and N.Taga., "A tentative direct microscopic method for counting living marine bacteria.", Can. J. Microbiol, 1979, 25, 415-420 しかしながら、FISH法は、標的細菌を正確に検出するためには時間と熟練を要することが少なくない。 例えば、FISH法は、rRNAをターゲットとして細菌固有の塩基配列にFISHプローブをハイブリダイズすることで目的とする細菌を検出するが、非特異的な部位にFISHプローブがハイブリダイズしたりするおそれがある。また、自己蛍光を有する介雑物が存在する場合には、目的とする細菌と介雑物との区別が困難となるおそれがある。 また、目的とする微生物量が少ない検体に対して、FISH法でその微生物中の存在有無を把握する場合は、介雑物や自己蛍光物質が検出結果に大きく影響するおそれがある。 上記事情に鑑み、本発明は、嫌気性アンモニア酸化細菌の検出精度向上に貢献する技術を提供することを目的とする。 上記目的を達成する本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法の一態様は、嫌気性アンモニア酸化細菌を脂質染色剤により染色して検出する嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法であって、前記脂質染色剤は、ラダラン脂質と結合することで第1の蛍光物質を形成し、前記ラダラン脂質と異なる脂質と結合することで第2の蛍光物質を形成するものであり、前記第2の蛍光物質を励起する光と異なる波長を含む光を照射して前記第1の蛍光物質を励起し、該第1の蛍光物質の蛍光に基づいて、嫌気性アンモニア酸化細菌を検出することを特徴としている。 また、上記目的を達成する本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法の他の態様は、上記嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法において、前記脂質染色剤は、ナイルレッドであることを特徴としている。 また、上記目的を達成する本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法の他の態様は、上記嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法において、前記ナイルレッドの濃度範囲は、0.01〜700μg/mlであることを特徴としている。 また、上記目的を達成する本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法の他の態様は、上記嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法において、前記第1の蛍光物質を励起する光は、450〜490nmの波長の光を含むことを特徴としている。 また、上記目的を達成する本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法の他の態様は、上記嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法において、前記第1の蛍光物質を励起する光の照射時間は、5分以内であることを特徴としている。 また、上記目的を達成する本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法の他の態様は、上記嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法において、前記第2の蛍光物質の蛍光と、前記第1の蛍光物質の蛍光とに基づいて、嫌気性アンモニア酸化細菌を検出することを特徴としている。 以上の発明によれば、嫌気性アンモニア酸化細菌の検出精度向上に貢献することができる。本発明の実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法のフローを示す図である。(a)本発明の実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法による嫌気性アンモニア酸化細菌の検出画像、(b)同検出方法による大腸菌(E.Coli)の検出画像、(c)同検出方法による活性汚泥の検出画像である。(a)赤色蛍光による全てのバクテリアの検出画像、(b)緑色蛍光による嫌気性アンモニア酸化細菌の検出画像、(c)赤色蛍光と緑色蛍光による嫌気性アンモニア酸化細菌の検出画像である。本発明の実施形態2に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法のフローを示す図である。FISH法の概要を説明する説明図である。 本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法は、嫌気性アンモニア酸化細菌が特異的に分泌するとされているラダラン脂質を検出ターゲットに設定して、嫌気性アンモニア酸化細菌を検出するものである。 嫌気性アンモニア酸化細菌は、亜硝酸塩とアンモニウムから窒素ガスを生成する能力を有する細菌である。この細菌を利用したアンモニア処理方法は、一般的に排水中のアンモニア処理で利用されている硝化−脱窒素法よりも省エネルギー、低コストで窒素除去が可能になる点から、近年、注目を集めている。 嫌気性アンモニア酸化細菌は、例えば、16srRNA遺伝子(rDNA)の解析によれば、Planctmycetesに属する細菌が含まれる。嫌気性アンモニア酸化細菌の細胞には、特異な形態的特徴がある。例えば、嫌気性アンモニア酸化細菌の細胞壁にはペプチドグリカンが存在せず、特有の「ラダラン(ladderane)脂質」が存在することが知られている。 そこで、発明者らは、鋭意研究の結果、一般的な脂質を検出する脂質染色剤とラダラン脂質を結合させた場合、一般的な脂質が結合した場合の蛍光とは異なる蛍光を検出することができることを発見し、本発明を完成するに至ったものである。 つまり、本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法は、脂質染色剤とラダラン脂質を結合させ、ラダラン脂質に蛍光指標を付与して嫌気性アンモニア酸化細菌を検出する。 [実施形態1] 図1を参照して、本発明の実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法について説明する。 嫌気性アンモニア酸化細菌は、自己造粒し、直径0.2〜5mm程度の粒状の塊を形成する。この塊はグラニュールと呼ばれ、メタン発酵菌でも見られる生物膜の一種である。グラニュールは、嫌気性アンモニア酸化細菌と種々の共生菌から形成されており、グラニュール中の嫌気性アンモニア酸化細菌の分布状況を把握することは、嫌気性アンモニア酸化細菌を用いた排水処理設備を長期間安定的に運転管理する上で重要な情報となる。そこで、実施形態1では、グラニュール中の嫌気性アンモニア酸化細菌の分布状況を検出する。以下、本発明の実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法の具体的な工程について説明する。 [第1の工程(グラニュールの固定処理工程)] 第1の工程では、グラニュールの固定処理を行う(ステップS1)。グラニュールの固定処理は、例えば、グルタルアルデヒドやパラホルムアルデヒド等を用いて行う。グラニュールを含有する試料に、例えば、パラホルムアルデヒドをその濃度が4質量%になるように添加し、室温(25℃)下で2〜12時間程度保存して化学固定を行う。なお、冷蔵庫中(4℃)であれば、24時間程度保存することで化学固定を行うことができる。 [第2の工程(試料切片の切り出し処理工程)] 第2の工程では、蛍光顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡等で観察するための試料切片の切り出しを行う(ステップS2)。 固定処理後の試料を純水で数回洗浄した後、凍結切片作製用コンパウンドに30分〜2時間浸漬させる。なお、試料切片作製用コンパウンドは、O.C.T(Optimal Cutting Temperature)コンパウンドとも呼ばれ、例えば、ポリエチレンビニル、ポリエチレングリコールを主成分とする溶液である。その後、固定処理後の試料をコンパウンドに浸漬させた状態で、−80℃のディープフリーザや液体窒素を用いて急速冷凍させる。この急速冷凍処理後の試料を−20℃の冷蔵庫内に1〜3時間保存し、試料温度を−20℃程度に下げ、温度調整したコンパウンド包埋試料を得る。 ミクロトームを用いて、コンパウンド包埋試料から厚さ5〜60μmの厚さの切片を切り出し、切り出した試料切片をスライドグラスに固着させる。 なお、試料切片をスライドグラスに固着させた後、試料切片が固着されたスライドグラスをエタノール溶液に浸漬すると、コンパウンドの除去と細胞固定の補強を行うことができる。例えば、低濃度のエタノール溶液から徐々に高濃度エタノール溶液に浸漬させる。より具体的な例としては、50%、70%、80%、100%のエタノール溶液を調整し、濃度が低い順にそれぞれ1分ずつ試料切片を浸漬させる。 [第3の工程(嫌気性アンモニア酸化細菌の染色工程)] スライドグラス上の試料切片に染色液を滴下し、30分〜1時間程度、暗所で静置して嫌気性アンモニア酸化細菌を染色する(ステップS3)。 染色液に用いる染色剤としては、例えば、親油性の色素であって、嫌気性アンモニア酸化細菌と結合して異なる色のシグナルを発するものを用いる。具体的には、ナイルレッド(Nile red (CAS No.7385-67-3))、ナイルブルー硫酸水素塩(Nile Blue Hydrogensulfate)、オイルレッドO(1-(2,4-Xylidylazo)-2-naphthol)、ズダンIII(Sudan III)、ズダンIV(Sudan IV)、ズダンブラックB(Sudan Black B)等の脂質染色剤を使用することができる。なお、ナイルレッドは、嫌気性アンモニア酸化細菌を染色した場合、緑色と赤色のシグナルを得ることができ、嫌気性アンモニア酸化細菌と他の細菌との区別を行うことが容易であるので好ましい。 染色剤にナイルレッドを使用した場合、ナイルレッドの濃度を0.01〜700μg/mlに調整した染色液を使用することで、試料切片中の嫌気性アンモニア酸化細菌を染色して検出することができる。より好ましくは、ナイルレッドの濃度を50〜100μg/mlに調整した染色液を使用することで、ナイルレッドがラダラン脂質と結合することによって生じる緑色のシグナルをより鮮明に検出することができる。 嫌気性アンモニア酸化細菌を染色剤で染色した後は、余分な染色液を純水で洗浄・除去し、退色防止剤をカバーグラスと試料切片との間に封入する。蛍光色素は、励起光を当てると退色するので、退色防止剤として、例えば、0.1%paraphenylenediamineを含む50%グリセロール溶液等を封入することで退色を大幅に防止することができる。 [第4の工程(嫌気性アンモニア酸化細菌の検出工程)] 第3の工程で染色された観察用プレパラート上の試料切片を蛍光顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡等で観察する(ステップS4)。ここでは、染色剤として、ナイルレッドを用いた場合について説明する。 波長500〜560nmの光を含む励起光であるGreen励起光(G励起)を試料切片に照射し、600nm付近の赤色蛍光を検出する。この赤色蛍光を検出して、ナイルレッドにより染色された脂質(つまりは、細菌)の存在箇所を検出する。G励起は、ナイルレッドを用いて脂質を検出する場合に、通常行われる検出方法である。 また、波長450〜490nmの光を含む励起光であるBlue励起光(B励起)を試料切片に照射して、500〜570nm付近の緑色蛍光を検出する。この緑色蛍光を検出することで、G励起により検出された赤色蛍光のうち、嫌気性アンモニア酸化細菌に相当するシグナルを識別することができる。この現象は、嫌気性アンモニア酸化細菌が分泌するラダラン脂質とナイルレッドが結合することにより生じるものと考えられている。なお、この緑色蛍光は、退色防止剤を封入しても退色が速いので、励起光の照射時間は、5分以内であることが好ましい。 以上のように第4の工程では、嫌気性アンモニア酸化細菌から緑色と赤色のシグナルが得られ、その他の細菌からは赤色のシグナルを得ることができる。そして、G励起とB励起により得られる画像(以後、G励起画像、B励起画像と称する)を重ね合わせることで、ナイルレッドで染色された細菌から嫌気性アンモニア酸化細菌を識別し、より正確に嫌気性アンモニア酸化細菌の所在を把握することができる。 また、B励起画像のみで、嫌気性アンモニア酸化細菌を検出することも可能である。この場合も、微分干渉顕微鏡や位相差顕微鏡を用いて、試料全体のコントラスト(嫌気性アンモニア酸化細菌の輪郭)が強調された画像(微分干渉像)や明視野画像を取得し、この取得された画像に、B励起画像を重ね合わせることで、嫌気性アンモニア酸化細菌をより正確に識別することができる。 さらに、B励起画像、G励起画像及び微分干渉像を取得して、これら3画像を重ね合わせることで、嫌気性アンモニア酸化細菌が存在している部分だけ緑色に発光している画像を得ることができる。なお、B励起画像、G励起画像及び微分干渉像の取得順序は、特に限定されるものではないが、同時に取得すると各画像間の重ね合わせが容易となるので、好ましい。 [実施例1] 具体的な実施例を挙げて、実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法についてより詳細に説明する。実施例1では、図1に示したフローに従って、グラニュール中の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出を行った。 [ステップS1] グラニュールを含有する試料に、パラホルムアルデヒドの濃度が4質量%になるように、パラホルムアルデヒドを添加し、室温(25℃)下で12時間保存して化学固定を行った。 [ステップS2] 固定処理後の試料を純水で数回洗浄した後、凍結切片作製用コンパウンドに2時間浸漬させた。その後、固定処理後の試料をコンパウンドに浸漬させた状態で、−80℃のディープフリーザで急速冷凍させた。この急速冷凍処理後の試料を−20℃の冷蔵庫内に3時間保存して、コンパウンド包埋試料を得た。 ミクロトームを用いてコンパウンド包埋試料から厚さ60μmの試料切片を切り出し、スライドグラスに固着させた。 試料切片をスライドグラスに固着させた後、試料切片を、50%、70%、80%、100%の濃度のエタノール溶液にそれぞれ1分ずつ濃度が低い順に浸漬させた。 [ステップS3] スライドグラス上の試料切片にナイルレッドの濃度が100μg/mlの染色液を滴下し、暗所で1時間静置して嫌気性アンモニア酸化細菌を染色した。染色後、余分な染色液を純水で洗浄・除去し、市販の退色防止剤をカバーグラスと試料切片との間に封入した。 [ステップS4] 染色された観察用プレパラート上の試料切片を蛍光顕微鏡(オリンパス社製FV−1000)で観察した。 試料切片に波長500nmのGreen励起光(G励起)を照射し、600nm付近の赤色蛍光を検出した。また、試料切片に波長450nmのBlue励起光(B励起)を照射して、500〜570nm付近の緑色蛍光を検出した。さらに、試料切片の微分干渉像を取得した。 図2(a)は、嫌気性アンモニア酸化細菌を含有するグラニュールのB励起画像、G励起画像及び微分干渉像の3画像を重ね合わせた画像である。また、図2(b),(c)は、それぞれ大腸菌(E.Coli)を含有する試料と、活性汚泥を含有する試料に対して、ステップS1からステップS4の処理を行って得られたB励起画像、G励起画像及び微分干渉像の3画像を重ね合わせた画像である。 図2(a)から明らかなように、実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法によれば、脂質を染色する染色剤とラダラン脂質とが結合することによって生じる緑色蛍光を検出することで、グラニュールにおける嫌気性アンモニア酸化細菌の分布状態を把握することができた。一方で、図2(b),(c)に示すように、大腸菌や活性汚泥では、緑色蛍光シグナルを得ることができなかった。 なお、図3(a)に示すように、赤色蛍光を検出するだけでは、嫌気性アンモニア酸化細菌と他の細菌(バクテリア)とが検出されるので、他の細菌から嫌気性アンモニア酸化細菌を区別することが困難である。これに対して、図3(b)に示すように、緑色蛍光を検出すると、嫌気性アンモニア酸化細菌の分布状態を把握することができる。つまり、嫌気性アンモニア酸化細菌は、ラダラン脂質とそれ以外の脂質を含んでいると考えられ、ラダラン脂質由来の蛍光シグナル(緑色蛍光)を得ることで、嫌気性アンモニア酸化細菌の所在を把握することができる。なお、染色剤とラダラン脂質とが結合することで検出される緑色蛍光だけでも、嫌気性アンモニア酸化細菌の分布状態を把握することは可能であるが、図3(c)のように、赤色蛍光と緑色蛍光とを重ね合わせた画像を得ることで、嫌気性アンモニア酸化細菌の分布状態をよりはっきりと把握することができる。 以上のような、本発明の実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法によれば、嫌気性アンモニア酸化細菌を選択的に検出することができる。つまり、嫌気性アンモニア酸化細菌に特有のラダラン脂質を選択的に検出することができるので、従来の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法(例えば、FISH法)よりも嫌気性アンモニア酸化細菌を精度よく検出することができる。 また、脂質染色剤として、例えば、ナイルレッドのような脂質と結合して初めて蛍光物質となる染色剤を用いると、介雑物の影響を受けないため、FISH法よりも正確に嫌気性アンモニア酸化細菌を検出することができる。 通常、生物膜をナイルレッドで染色する時には、10μg/ml以下の濃度のナイルレッドが用いられる。これに対して、本発明の実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法では通常の使用濃度よりも濃い濃度である、50〜100μg/mlで嫌気性アンモニア酸化細菌を染色することで、ナイルレッドとラダラン脂質とが結合することによって生じる緑色蛍光をより鮮明に検出することができる。 また、本発明の実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法は、脂質染色剤で染色された試料の蛍光色の波長により、嫌気性アンモニア酸化細菌を特定するので、通常のFISH法による嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法よりも試料の調整から検出(観察)までに要する時間を大幅に短縮することができる。 なお、ラダラン脂質とナイルレッドが結合した箇所に、500〜560nmの励起光を照射すると、赤色蛍光を検出することができる。この理由として、ラダラン脂質以外の脂質が存在している、あるいは、ナイルレッドとラダラン脂質が結合することにより緑色蛍光を発する構造だけでなく、赤色蛍光を発する構造が存在する等の理由が考えられる。 [実施形態2] 次に、図4を参照して、本発明の実施形態2に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法について詳細に説明する。 実施形態2に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法では、分散汚泥中の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出を行う。なお、実施形態2に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法は、試料をスライドグラス上に固着させる方法が異なることを除いて実施形態1の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法と同じである。よって、試料の染色方法(ステップS3)や試料の検出方法(ステップS4)は、実施形態1の方法と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。 [第1’の工程(分散汚泥の固定処理工程)] 第1’の工程では、嫌気性アンモニア酸化細菌を含有する分散汚泥の固定処理を行う(ステップS1’)。分散汚泥の固定処理は、例えば、グルタルアルデヒドやパラホルムアルデヒド等を用いて行う。嫌気性アンモニア酸化細菌を含有する分散汚泥に、例えば、パラホルムアルデヒドをその濃度が4質量%になるように添加し、室温(25℃)下で2〜12時間程度保存して化学固定を行う。なお、冷蔵庫中(4℃)であれば、24時間程度保存することで化学固定を行うことができる。 [第2’の工程(試料準備工程)] 固定処理後の試料を純水で数回洗浄した後、試料を菌体光学密度(OD660)が、0.1〜0.5程度になるように純水中に分散させ、得られた分散液をスライドグラス上に滴化・乾燥固着させる(ステップS2’)。 そして、染色工程(ステップS3)を経て、スライドグラス上に固着された試料を染色し、検出工程(ステップS4)により、試料中の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出を行う。 以上のような、本発明の実施形態2に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法によれば、実施形態1に係る嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法と同様に、嫌気性アンモニア酸化細菌を精度よく検出することができる。また、通常のFISH法による嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法よりも試料の調整から検出(観察)までに要する時間を大幅に短縮することができる。 以上、具体的な例を挙げて説明したように、本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法によれば、嫌気性アンモニア酸化細菌を精度良く検出することができる。また、嫌気性アンモニア酸化細菌の検出時間を大幅に短縮することができる。 FISH法では、rRNAやゲノムDNAの目的箇所に蛍光プローブをハイブリダイゼーションさせた後、余分は蛍光プローブを洗浄する。一般的なプロトコルではハイブリダイゼーションに要する時間は2時間から24時間であり、洗浄工程に要する時間は10〜60分である。これに対して、本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法では、染色と洗浄に要する時間は30分程度である。また、FISH法におけるハイブリダイゼーション工程と洗浄工程では温度を厳密に管理する必要があるが、本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法はすべて室温下で作業することができる。これらの点から本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法は、生物膜中の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出時間を大幅に短縮できるだけでなく、作業性も改善できる。したがって、本発明の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法を排水処理場での嫌気性アンモニア酸化細菌の検出試験に適用することで、排水処理場における嫌気性アンモニア酸化細菌を短時間で容易に検出することができる。 嫌気性アンモニア酸化細菌を脂質染色剤により染色して検出する嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法であって、 前記脂質染色剤は、ラダラン脂質と結合することで第1の蛍光物質を形成し、前記ラダラン脂質と異なる脂質と結合することで第2の蛍光物質を形成するものであり、 前記第2の蛍光物質を励起する光と異なる波長を含む光を照射して前記第1の蛍光物質を励起し、該第1の蛍光物質の蛍光に基づいて、嫌気性アンモニア酸化細菌を検出することを特徴とする嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法。 前記脂質染色剤は、ナイルレッドであることを特徴とする請求項1に記載の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法。 前記ナイルレッドの濃度範囲は、0.01〜700μg/mlであることを特徴とする請求項2に記載の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法。 前記第1の蛍光物質を励起する光は、450〜490nmの波長の光を含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法。 前記第1の蛍光物質を励起する光の照射時間は、5分以内であることを特徴とする請求項4に記載の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法。 前記第2の蛍光物質の蛍光と、前記第1の蛍光物質の蛍光とに基づいて、嫌気性アンモニア酸化細菌を検出することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の嫌気性アンモニア酸化細菌の検出方法。 【課題】嫌気性アンモニア酸化細菌の検出を精度良く行う。【解決手段】嫌気性アンモニア酸化細菌を含有する試料を脂質染色剤で染色する。染色した試料に、波長500〜560nmのGreen励起光(G励起)を照射して600nm付近の赤色蛍光を検出する。検出された赤色蛍光により、ナイルレッドにより染色された脂質(つまりは、細菌)の存在箇所を検出する。また、染色した試料に、波長450〜490nmのBlue励起光(B励起)を照射して500〜570nm付近の緑色蛍光を検出する。検出された緑色蛍光により、嫌気性アンモニア酸化細菌が特異的に分泌するラダラン脂質を検出する。G励起とB励起により得られる画面を重ね合わせ、脂質染色剤で染色された細菌から嫌気性アンモニア酸化細菌を識別する。【選択図】図3


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