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タイトル:公開特許公報(A)_ポリブチレンテレフタレートの製造方法
出願番号:2013117830
年次:2014
IPC分類:C08G 63/78,C08G 63/183,C12P 7/62,C12P 7/18,C12N 1/19,C12N 1/21


特許情報キャッシュ

宇都宮 賢 井澤 雄輔 小西 範和 松園 真一郎 鈴木 隆行 ジャプス ミカエル バーク マーク クラーク ウォーレン JP 2014012822 公開特許公報(A) 20140123 2013117830 20130604 ポリブチレンテレフタレートの製造方法 三菱化学株式会社 000005968 ジェノマティカ・インコーポレイテッド 504356052 Genomatica, Inc. 重野 剛 100086911 宇都宮 賢 井澤 雄輔 小西 範和 松園 真一郎 鈴木 隆行 ジャプス ミカエル バーク マーク クラーク ウォーレン JP 2012128064 20120605 C08G 63/78 20060101AFI20131220BHJP C08G 63/183 20060101ALI20131220BHJP C12P 7/62 20060101ALI20131220BHJP C12P 7/18 20060101ALI20131220BHJP C12N 1/19 20060101ALI20131220BHJP C12N 1/21 20060101ALI20131220BHJP JPC08G63/78C08G63/183C12P7/62C12P7/18C12N1/19C12N1/21 6 1 OL 24 4B064 4B065 4J029 4B064AC05 4B064AD83 4B064BJ01 4B064BJ04 4B064CA02 4B064CA05 4B064CA06 4B064CA19 4B064CC24 4B064CD09 4B064DA20 4B065AA01X 4B065AA01Y 4B065AA24X 4B065AA26X 4B065AA72X 4B065AB01 4B065BA02 4B065BB15 4B065BB16 4B065BB17 4B065BD29 4B065BD30 4B065CA05 4B065CA60 4J029AA03 4J029AB04 4J029AD01 4J029AD02 4J029AD10 4J029BA05 4J029CB06A 4J029HA01 4J029HB01 4J029HB02 4J029KE02 4J029KE12 4J029KE15 4J029LB01 本発明は、バイオマス資源由来の1,4−ブタンジオールを原料として、色調が良好なポリブチレンテレフタレートを製造する方法に関する。 熱可塑性ポリエステル樹脂の中で代表的なエンジニアリングプラスチックであるポリブチレンテレフタレート(以下、“PBT”と略記することがある。)は、成形加工の容易性、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、保香性、その他の物理的・化学的特性に優れていることから、自動車部品、電気・電子部品、精密機器部品などの射出成形品の成形材料として広く使用されている。また、近年は、その優れた性質を活かし、フィルム、シート、モノフィラメント、繊維などの一般消費材分野でも広く使用されており、これに伴って、色調が良好なPBTが求められるようになってきている。 通常、PBTはテレフタル酸またはそのアルキルエステルと1,4−ブタンジオール(以下、“1,4−BG”と略記することがある。)とを反応させて得ることができるが、1,4−BGは、その反応中にテトラヒドロフラン(以下、“THF”と略記することがある。)に転化しやすいため、1,4−BGからTHFへの転化を抑えた収率のよいPBTの製造方法が求められる。 また、循環型(サステイナブル)社会の構築を求める声の高まりと共に、PBTにおいてもエネルギーと同様に化石燃料由来の原料からの脱却が望まれている。化石燃料を原料としない場合、植物などを原料とするバイオマス資源由来の原料が有力な原料候補の一つであり、PBTの原料である1,4−BGにおいてもバイオマス資源由来の1,4−BGを原料としたPBTを製造する方法が検討されている。 しかし、バイオマス資源由来の原料1,4−BGを用いた場合、石油などの化石燃料から得られた原料1,4−BGを用いた場合に比べ、得られるPBTの色調が悪くなる。この色調悪化の主たる要因としては、PBT中の窒素原子含有成分の存在が考えられる。また、この成分以外の他成分によるPBT色調への影響も存在すると考えられる。 特許文献1には、バイオマス資源由来の原料を用いてPBTを得る技術について、バイオマス資源由来の原料1,4−BGの窒素原子含有量を0.01〜50質量ppmに制御することにより、窒素原子含有量50質量ppm以下のPBTを得ることについて記載されている。更に、原料1,4−BG中に含まれる1−アセトキシ−4−ヒドロキシブタン(以下、“1,4−HAB”と略記することがある。)は、PBTの重縮合反応を遅延させ、PBTへの着色も生じるが、原料1,4−BGにおける窒素原子濃度を制御した1,4−BGを原料として用いることにより、重合遅延によるPBTの着色を低減できる旨が記載されている。 また、従来の1,4−BGの製造方法において、副生物としてガンマブチロラクトン(以下、“GBL”と略記することがある。)が発生することが知られている。例えば特許文献2には、化石燃料由来の原料からの1,4−BGの製造法において、マレイン酸、コハク酸、無水マレイン酸および/またはフマル酸などから、それらを水素化して1,4−BGを含む粗水素化生成物を得る際に、ガンマブチロラクトンが副生することが記載されている。 バイオマス資源由来の原料から1,4−BGを製造する方法では、特許文献3にバイオマス資源由来のコハク酸に対して化学的還元あるいは生物工学的な水素化を行い、1,4−BGを製造することが記載され、特許文献4には、菌体から直接発酵することで1,4−BGを得る方法が記載されている。特開2008−101143号公報特開平11−240846号公報特開2009−077719号公報特表2010−521182号公報 しかしながら、特許文献3に記載の方法では、特許文献2と類似の水素化を伴うことからGBLの副生が進行する可能性が高い。また、特許文献4の方法では、代謝経路などから副生物としてGBLが発生する可能性が高い。 さらに上記特許文献1〜4には、原料1,4−BG中に含まれるガンマブチロラクトンと窒素原子含有化合物との関係については記載されていない。 また、原料1,4−BG中の1,4−HABの存在による重合遅延が原因で起こるPBTの着色を抑制するべく原料1,4−BG中の窒素原子含有化合物含有量を制御しても、重合遅延は抑制できるものの、PBTの不要な着色を抑制できない場合があることが判明した。 本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、原料として、バイオマス資源由来の1,4−BGを用いて、色調の良好なPBTを効率的に生産する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、原料1,4−BG中に含まれるガンマブチロラクトンが、PBTの製造時に原料1,4−BG中の窒素原子含有化合物と反応して生成する化合物が、新たなPBTの着色を引き起こす原因となっていることを見出した。そして、前記窒素原子含有化合物を含有する1,4−BGを用いてPBTを製造する際には、1,4−BG中のガンマブチロラクトンの含有量を特定量に制御することで、色調が良好なPBTを得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。 即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[6]に存する。[1] 窒素原子含有量が0.01〜50質量ppmのバイオマス資源由来である原料1,4−ブタンジオールを含むジオール成分と、テレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステルを含むジカルボン酸成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させる工程(a)と、前記工程(a)で得られた反応物を重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを得る重縮合反応工程(b)とを有するポリブチレンテレフタレートの製造方法であって、前記原料1,4−ブタンジオールにおけるガンマブチロラクトンの含有量が1〜100質量ppmである、ポリブチレンテレフタレートの製造方法。[2] 前記工程(a)に先立ち、バイオマス資源由来の1,4−ブタンジオールを精製して前記原料1,4−ブタンジオールを得る工程を更に有する、[1]に記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。[3] 前記バイオマス資源由来の1,4−ブタンジオールにおけるガンマブチロラクトンの含有量が、101質量ppm〜2質量%である、[2]に記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。[4] 前記原料1,4−ブタンジオールにおける1−アセトキシ−4−ヒドロキシブタンの含有量が1〜99質量ppmである、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。[5] 前記原料1,4−ブタンジオール又は前記バイオマス資源由来の1,4−ブタンジオールを、グルコース、フルクトース、キシロース、及びサッカロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源から発酵法により直接製造する工程をさらに有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。[6] バイオマス資源から、下記に示す天然に存在しない微生物生体触媒を用いて、前記原料1,4−ブタンジオール又は前記バイオマス資源由来の1,4−ブタンジオールを製造する工程を更に有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。 天然に存在しない微生物生体触媒:4−ヒドロキシブタン酸脱水素酵素、スクシニル−CoA合成酵素、CoA依存性コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素、またはα−ケトグルタル酸脱炭酸酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む4−ヒドロキシブタン酸生合成経路を有する微生物を含み、前記微生物が前記4−ヒドロキシブタン酸の単量体を分泌するために十分な量の前記外因性核酸を含む、微生物生体触媒 本発明によれば、バイオマス資源由来の1,4−BGを原料として、色調が良好なPBTを効率的に製造することができる。図1は、本発明のPBTの製造方法(窒素原子含有バイオ法)および従来のPBTの製造方法(石化法)で得られたPBTの色調と原料1,4−BGのGBL含有量との関係を示す相関図である。 以下、本発明をより詳細に説明するが、以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。 尚、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書における、下限値または上限値は、その下限値または上限値の値を含む範囲を意味する。 ここで、“重量%”、“重量ppm”、“重量部”及び“重量比”と、“質量%”、“質量ppm”、“質量部”及び“質量比”とは、それぞれ同義である。また単に“ppm”と記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。<PBT製造原料> 本発明において、PBTは、テレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステルを含むジカルボン酸成分と、バイオマス資源由来の原料1,4−ブタンジオールを含むジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させた後、該反応物を重縮合反応させることにより得られる。なお、テレフタル酸アルキルエステルのアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。 原料として使用されるテレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステルは、全ジカルボン酸成分の80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、100モル%であることが最も好ましい。 また、バイオマス資源由来の原料1,4−BGは、全ジオール成分の80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、99モル%以上であることが特に好ましい。 テレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステルの全ジカルボン酸成分に占める割合およびバイオマス資源由来の1,4−BGの全ジオール成分に占める割合が前記下限以上であると、電気部品等に成形する際の結晶化の点やフィルム、繊維などに成形する際の延伸による分子鎖の配向結晶化の点から、成形品としての機械的強度、耐熱性、保香性等が良好になりやすいことから好ましい。 原料となるジカルボン酸成分には、主成分のテレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステル以外のジカルボン酸成分が含まれていても良く、また、他のジカルボン酸成分をテレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステルと共に反応器に供給してもよい。 他のジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体;ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族鎖式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。 一方、原料となるジオール成分には、バイオマス資源由来の原料1,4−BG以外のジオール成分が含まれていても良く、また、他のジオール成分をバイオマス資源の原料1,4−BGと共に反応器に供給してもよい。 他のジオール成分としては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族鎖式ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール;2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物またはプロピレンオキサイド付加物;バイオマス資源由来でない1,4−BG等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。 また、PBT原料としては、上記ジカルボン酸成分、ジオール成分以外にも、共重合成分として、更に、以下の成分が用いられてもよい。 その共重合成分としては、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能成分等が挙げられる。これらの共重合成分についても、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。<バイオマス資源由来の原料1,4−BG> 本発明のPBTの製造に用いる原料1,4−BGは、バイオマス資源由来のものであり、環境保護の点から好ましい。 バイオマス資源とは、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれる。 具体的には、木材、稲わら、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。この中でも、木材、稲わら、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは木材、稲わら、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣等が挙げられ、最も好ましくはとうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシが挙げられる。 バイオマス資源は、一般に、窒素原子やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属およびアルカリ土類金属を含有する。 これらのバイオマス資源は、その方法は特に限定はされないが、例えば、酸やアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理、物理的処理等の公知の前処理・糖化の工程などを経て炭素源へと誘導される。その工程には、バイオマス資源をチップ化する、削る、磨り潰すなどの前処理による微細化工程が含まれることが多く、必要に応じて、更にグラインダーやミルによる粉砕工程も含まれる。 こうして微細化されたバイオマス資源は、通常、更に前処理・糖化の工程を経て炭素源へと誘導される。その具体的な方法としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸などの強酸による酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理、酸化剤処理などの化学的方法;微粉砕、蒸煮爆砕法、マイクロ波処理、電子線照射等の物理的方法;微生物や酵素処理による加水分解等の生物学的処理などが挙げられる。 上記のバイオマス資源から誘導される炭素源としては、通常、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトースなどのヘキソース;アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース;ペントサン、サッカロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類;酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リレノン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の油脂;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質等が用いられる。このうち、グルコース、フルクトース、キシロース、サッカロース等のヘキソース、ペントースまたは2糖類が好ましく、特にグルコースが好ましい。より広義の植物資源由来の炭素源としては、紙の主成分であるセルロースも好ましい。 通常、これらの炭素源を用いて、微生物変換による発酵法や加水分解・脱水反応・水和反応・酸化反応等の反応工程を含む化学変換法並びにこれらの発酵法と化学変換法の組み合わせにより原料1,4−BGが合成される。これらの中でも、微生物変換による発酵法が好ましい。 微生物変換による発酵法において使用する微生物としては、特段の制限はないが、例えば、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属、アクチノバチルス(Actinobacillus)属、糸状菌および酵母菌等が挙げられる。前記微生物の中でも、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属および酵母菌が好ましく、コリネ型細菌、大腸菌および酵母菌がより好ましく、大腸菌が特に好ましい。 微生物変換による発酵法の場合、特に、天然に存在しない微生物生体触媒を用いる微生物変換であって、4−ヒドロキシブタン酸脱水素酵素、スクシニル−CoA合成酵素、CoA依存性コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素、またはα−ケトグルタル酸脱炭酸酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む4−ヒドロキシブタン酸生合成経路を有する微生物を含み、該外因性核酸が、単量体4−ヒドロキシブタン酸を分泌するのに十分な量で発現される、天然に存在しない微生物生体触媒を用いることが、効率的に原料1,4−BGを製造できるので、好ましい。 本発明で用いるバイオマス資源由来の原料1,4−BGは、先述したグルコース、フルクトース、キシロース、サッカロース等の炭素源から発酵法により直接製造したものであってもよいし、発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、ガンマブチロラクトンおよびその誘導体等を化学反応により1,4−BGに変換して得られたものであってもよい。また、発酵法により得られたプロピレン、ブタジエン、ブタン、アセチレン、合成ガスなどより1,4−BGを製造しても良い。この中でも、発酵法により直接原料1,4−BGを得る方法が効率的で好ましい。 コハク酸を水添する還元触媒の例としては、例えば、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Cu、Coおよびその化合物等が挙げられる。具体的には、Pd/Ag/Re、Ru/Ni/Co/ZnO、Cu/Zn酸化物、Cu/Zn/Cr酸化物、Ru/Re、Re/C、Ru/Sn、Ru/Pt/Sn、Pt/Re/アルカリ、Pt/Re、Pd/Co/Re、Cu/Si、Cu/Cr/Mn、ReO/CuO/ZnO、CuO/CrO、Pd/Re、Ni/Co、Pd/CuO/CrO3、リン酸Ru、Ni/Co、Co/Ru/Mn、Cu/Pd/KOH、Cu/Cr/Zn等が挙げられる。この中でもRu/SnまたはRu/Pt/Snが触媒活性の点で好ましい。 また、更に、バイオマス資源から公知の有機化学触媒反応との組み合わせにより原料1,4−BGを製造する方法も用いられる。例えば、バイオマス資源としてペントースを利用する場合には公知の脱水反応、触媒反応の組み合わせで容易に原料1,4−BGを製造することができる。 バイオマス資源から誘導された原料1,4−BGには、発酵処理ならびに酸の中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子含有化合物が含まれてくる。具体的には、アミノ酸、蛋白質、アンモニア、尿素、発酵菌由来等の窒素原子含有化合物が含まれてくる。 本発明においてPBTの原料となる、バイオマス資源から得られた原料1,4−BGの窒素原子含有量は、該原料1,4−BGに対して質量比で、上限は、通常50ppm、好ましくは20ppm、更に好ましくは10ppm、より好ましくは5ppmである。また、下限は、通常0.01ppm、好ましくは0.1ppmがよく、特に精製工程の経済性の観点からは0.2ppmであることが好ましい。 原料1,4−BG中の窒素原子含有量が少なくなるほど、生成するPBTの色調などが好ましくなる傾向が強い。一方、多くなるほど、精製工程を簡便とし易く経済的に有利な上、PBT製造反応中での1,4−BGのTHFへの転化率も低く抑えやすい。 なお、本発明において、1,4−BG中の窒素原子含有量は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定することができるが、測定法はこれに限定されない。 本発明におけるPBTの製造に用いる原料1,4−BGの窒素原子含有量が0.01〜50質量ppmであると、重縮合反応速度や色調の点で好ましくなりやすい理由は定かではないが、原料1,4−BGの窒素原子含有量を制御するための発酵液の処理および蒸留を含む精製工程において、窒素原子含有化合物以外に重縮合反応を阻害し、PBTの色調を悪化させる着色誘引物質の生成を抑制できることによると推定される。 例えば、本発明で用いる原料1,4−BG中にはGBLが含まれるが、GBLは窒素原子含有化合物と種々のアミド、アミン、アミノ酸などの誘導体を生成すると考えられ、その誘導体は二官能以上を有する反応性に富む成分であることから、これら誘導体中に強くPBTの色調を悪化させる成分が存在するものと考えられる。 バイオマス資源由来の原料1,4−BG中の窒素原子含有量は、具体的には次のようにして調節することができる。例えば、バイオマス資源の発酵により得られるコハク酸を水添して原料1,4−BGを得る場合は、その発酵条件、アンモニアによる中和条件、コハク酸の晶析条件などにより、コハク酸中の窒素原子含有化合物の量を調節することが可能である。また、コハク酸を水添して得られる1,4−BGは、蒸留を含む精製条件により、その窒素原子含有量を調節することができる。また、原料1,4−BGがバイオマス資源の発酵により直接得られる場合にも、その発酵条件、アンモニアによる中和条件、得られた1,4−BGの蒸留を含む精製条件などにより調節することができる。 また、バイオマス資源由来の原料1,4−BGは、通常、GBLを不純物として含有する。例えば、マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、コハク酸エステルなどを中間体として経由し、水素化により原料1,4−BGを製造する場合や、2−ヒドロキシテトラヒドロフランを不純物として含み、その脱水素が進行する環境にある場合に、原料1,4−BGは不純物としてGBLを含有する。バイオマス資源から発酵法により直接原料1,4−BGを得る場合も、発酵槽内でマレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、コハク酸エステルなどの水素化が進行しているものと考えられ、GBLが副生する。 本発明において、PBTの製造に用いる原料1,4−BGが、上記のように副生したGBLを多く含む粗1,4−BG(以下、単に“1,4−BG”と記載することがある。)である場合には、1,4−BGを精製して原料1,4−BGを得ることができる。1,4−BG中のGBL含有量は、該1,4−BGに対して質量比で、上限は、通常2質量%、好ましくは1質量%、更に好ましくは1000ppm、特に好ましくは200ppm、最も好ましくは180ppmである。また、下限は、通常101ppm、好ましくは120ppmであり、特に発酵工程や水添工程の経済性の観点からは下限が150ppmであることが望ましい。 本発明においてPBTの製造に用いるバイオマス資源由来の原料1,4−BGのGBL含有量は、該原料1,4−BGに対して質量比で、上限は、通常100ppm、好ましくは50ppm、更に好ましくは40ppm、特に好ましくは30ppm、最も好ましくは20ppmである。また、下限は、通常1ppm、好ましくは2ppmであり、特に精製工程の経済性の観点からは下限が5ppmであることが好ましい。 窒素原子含有化合物を含有する原料1,4−BG中のGBL含有量が少なくなるほど、PBT製造における重縮合反応速度、生成するPBTの色調などが好ましくなる傾向が強い。一方、多くなるほど、精製工程を簡便とし易く経済的に有利となる。本発明においては、原料1,4−BGのGBL含有量を上記の範囲で調節することにより、得られるPBTの色調を調整することができる。 なお、原料1,4−BG又は1,4−BG中のGBLの含有量は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。 本発明におけるPBTの製造に用いるバイオマス資源由来の原料1,4−BGのGBL含有量が1〜100質量ppmであると重縮合反応速度や色調の点で好ましくなりやすい理由は定かではないが、前述したように、GBLと窒素原子含有成分との反応により生成し、PBTの色調を悪化させる原因と考えられる、二官能以上を有し反応性に富む種々のアミド、アミン、アミノ酸などの誘導体を低減することができることによると考えられる。 バイオマス資源由来の原料1,4−BG中のGBL含有量は、具体的には次のようにして調節することができる。例えば、バイオマス資源の発酵により得られるコハク酸を水添して原料1,4−BGを得る場合は、その発酵条件、アンモニアによる中和条件、コハク酸の晶析条件などによりコハク酸中のGBL量を調節することができる。しかし、コハク酸の水添において、GBLは1,4−BGを合成する際の中間体であり、GBL量を正確に制御するのは困難である。そのため、バイオマス資源由来の原料1,4−BGをPBTの製造のための反応器に供給する前に、予め精製することにより原料1,4−BG中のGBL含有量を調節することが好ましい。 この場合、GBLは1,4−BGよりも軽沸点の成分であり、1,4−BGの精製工程で軽沸点成分の分離蒸留を行うことで、原料1,4−BG中のGBL含有量を調節することができる。 1,4−BGがバイオマス資源の発酵により直接得られる場合にも、その発酵条件、アンモニアによる中和条件、得られた1,4−BGの蒸留を含む精製条件などによりGBL含有量を調節することができるが、この場合も1,4−BGの精製を行って、GBLを含む軽沸点成分を除去することが好適な手段である。 一般的にGBLと1,4−BGとの分離蒸留は、充填物および/またはトレイを用いた多段蒸留で行うことができる。この際、GBLは分離蒸留塔の塔頂部より留去させることができるが、高温度条件ではGBLは1,4−BGと反応して高沸化してしまう。この高沸成分は次工程でGBLに分解するため、軽沸点成分の分離蒸留塔での該高沸成分の生成を低減することが好ましい。 このような観点から、分離蒸留塔の塔頂部温度は、通常40〜180℃が好ましく、更に好ましくは50〜160℃であり、特に好ましくは60〜150℃の範囲である。塔頂部温度がこの下限以上の温度であることにより、水による冷却が容易となり、経済性の点から好ましい。一方、上記上限以下の温度であることにより、該高沸成分の生成が大幅に加速されることを防ぐことから好ましい。 また、本発明においてPBTの製造に用いるバイオマス資源由来の原料1,4−BGにおける1−アセトキシ−4−ヒドロキシブタン(1,4−HAB)含有量は、該原料1,4−BGに対して質量比で、上限は、好ましくは99ppm、更に好ましくは90ppm、特に好ましくは80ppm、最も好ましくは70ppmである。また、下限は、好ましくは1ppmであり、更に好ましくは2ppm、特に精製工程の経済性の観点からは下限が5ppmであることが好ましい。窒素原子含有化合物を含有する1,4−BG中の1,4−HAB含有量が少なくなるほど、PBT製造における重縮合反応速度、生成するPBTの色調などが好ましくなる傾向が強い。一方、多くなるほど、精製工程を簡便とし易く経済的に有利となる。 なお、原料1,4−BG中の1,4−HABの含有量は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。 バイオマス資源由来の原料1,4−BG中の1,4−HAB含有量は、例えば、バイオマス資源の発酵により得られるコハク酸を水添して原料1,4−BGを得る場合は、その発酵条件、アンモニアによる中和条件、コハク酸の晶析条件などによりコハク酸中の1,4−HAB量を調節することでも調節することができる。しかし、バイオマス資源由来の1,4−BGをPBTの製造のための反応器に供給する前に、予め精製することにより原料1,4−BG中の1,4−HAB含有量を調節することが好ましい。 この場合、1,4−HABは1,4−BGよりも軽沸点の成分であり、1,4−BGの精製工程で軽沸点成分の分離蒸留を行うことで、原料1,4−BG中の1,4−HAB含有量を調節することができる。 1,4−BGがバイオマス資源の発酵により直接得られる場合にも、その発酵条件、アンモニアによる中和条件、得られた1,4−BGの蒸留を含む精製条件などにより1,4−HAB含有量を調節することができるが、この場合も1,4−BGの精製を行って、1,4−HABを含む軽沸点成分を除去することが好適な手段である。 1,4−HABと1,4−BGとの分離蒸留は、前述のGBLと1,4−BGとの分離蒸留時に同時に行うことができる。<PBTの製造> 本発明のPBTの製造方法は、PBTを製造することができればよく、特に制限されない。 PBTの公知の製造方法は、主原料としてテレフタル酸を用いるいわゆる直接重合法と、主原料としてテレフタル酸アルキルエステルを用いるエステル交換法とに大別される。前者は、初期のエステル化反応で水が生成し、後者は初期のエステル交換反応でアルコールが生成するという違いがあるが、原料の入手安定性、留出物の処理の容易さ、原料原単位の高さ、また本発明による改良効果という観点からは直接重合法が好ましい。 直接重合法の一例としては、次のような方法が挙げられる。 テレフタル酸を含むジカルボン酸成分と原料1,4−BGを含むジオール成分とを、単数若しくは複数段のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒の存在下で行う。エステル化反応温度は、通常180℃以上、好ましくは200℃以上、特に好ましくは210℃以上、通常260℃以下、好ましくは250℃以下、特に好ましくは245℃以下である。エステル化反応圧力は、通常10kPa以上、好ましくは13kPa以上、特に好ましくは50kPa以上、通常133kPa以下、好ましくは120kPa以下、特に好ましくは110kPa以下である。エステル化反応時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、通常5時間以下、好ましくは3時間以下の条件である。 上記条件下で連続的にエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、複数段の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下で連続的に重縮合反応を行う。重縮合反応温度は通常210℃以上、好ましくは220℃以上、通常260℃以下、好ましくは250℃以下、特に好ましくは245℃以下である。重縮合反応圧力は、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、より好ましくは13kPa以下、中でも少なくとも1つの重縮合反応槽においては好ましくは2kPa以下であり、上記条件の減圧下で、攪拌しながら、通常2〜12時間、好ましくは2〜10時間で重縮合反応させる。 エステル交換法の一例としては、次のような方法が挙げられる。 テレフタル酸ジメチル等のテレフタル酸エステルを含むジカルボン酸成分と原料1,4−BGを含むジオール成分とを、単数若しくは複数段のエステル化反応槽内で、エステル交換反応触媒の存在下で行う。エステル交換反応温度は、通常110℃以上、好ましくは140℃以上、特に好ましくは180℃以上、通常260℃以下、好ましくは245℃以下、特に好ましくは220℃以下である。エステル交換反応圧力は、通常10kPa以上、好ましくは13kPa以上、特に好ましくは60kPa以上、通常133kPa以下、好ましくは120kPa以下、特に好ましくは110kPa以下である。エステル交換反応時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、通常5時間以下、好ましくは3時間以下の条件である。 上記条件下で連続的にエステル交換反応させ、得られたエステル交換反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、複数段の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下で連続的に重縮合反応を行う。重縮合反応温度は通常210℃以上、好ましくは220℃以上、通常260℃以下、好ましくは250℃以下、特に好ましくは245℃以下である。重縮合反応圧力は、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、より好ましくは13kPa以下、中でも少なくとも1つの重縮合反応槽においては好ましくは2kPa以下であり、上記条件の減圧下で、攪拌しながら、通常2〜12時間、好ましくは2〜10時間、重縮合反応させる。 エステル化反応またはエステル交換反応触媒としては、例えば、三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等のチタン化合物;ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸等のスズ化合物;酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物;酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物等のアルカリ土類金属化合物の他、マンガン化合物、亜鉛化合物等を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、チタン化合物、スズ化合物が好ましく、テトラブチルチタネートが特に好ましい。 エステル化反応またはエステル交換反応触媒の使用量は特に限定されないが、PBT中の金属濃度(質量)として、通常1ppm以上、好ましくは5ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、特に好ましくは20ppm以上、最も好ましくは30ppm以上、通常300ppm以下、好ましくは200ppm以下、より好ましくは150ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、特に好ましくは90ppm以下、最も好ましくは60ppm以下がよい。PBT中の金属濃度(質量)が上記上限以下であると、異物の原因になりにくい上、PBTの熱滞留時の劣化反応やガス発生が起こりにくい傾向があり、上記下限以上であると、主反応速度が速く副反応が起こりにくい。 また、重縮合反応触媒としては、エステル化反応またはエステル交換反応の触媒をそのまま重縮合反応触媒として用いても良いし、更に前記触媒を添加しても良い。重縮合反応触媒の使用量に特に制限はないが、上記のエステル化反応またはエステル交換反応の触媒と同様の理由から、PBT中の金属濃度(質量)として、通常0.5ppm以上、好ましくは1ppm以上、更に好ましくは3ppm以上、特に好ましくは5ppm以上、最も好ましくは10ppm以上、通常300ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは30ppm以下がよい。 また、触媒として有機チタン化合物を用いる場合には、異物抑制の観点から、最終的にはPBT中のチタン金属濃度(質量)は、250ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることが更に好ましく、60ppm以下であることが特に好ましく、50ppm以下であることが最も好ましい。 PBT中の金属濃度(質量)は、湿式灰化等の方法でPBT中の金属を回収した後、原子発光、誘導結合プラズマ(Induced Coupled Plasma:ICP)法等を用いて測定することができる。 また、前記のエステル化反応、エステル交換反応および重縮合反応において、前記触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸およびそれらのエステルや金属塩等の燐化合物;水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム等のナトリウム化合物、酢酸リチウム等のリチウム化合物、水酸化カリウム、酢酸カリウム等のカリウム化合物等のアルカリ金属化合物等の反応助剤;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物等の反応助剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール化合物;ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物;トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物等の抗酸化剤;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸およびそのエステル;シリコーンオイル等の離型剤等を使用しても良い。 重縮合反応槽としては、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽等の公知のものを挙げることができる。反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は、反応速度よりも物質移動が分子量増大の支配因子になる傾向があるため、副反応を抑制しつつ主反応をおし進めるために、可能な限り温度を下げ、表面更新性を上げたほうが本発明の目的を達成するには有利である。そのため、表面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した単数または複数の横型攪拌重合機を選定することが好ましい。 また、本発明の製造法で得られたPBTは、引き続き公知の方法で固相重縮合させて分子量を上げることもできる。 重縮合反応により得られたPBTは、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜出ダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状またはチップ状の粒状体とされる。粒状体は、引き続き公知の方法等で固相重縮合させて、その固有粘度を上げることもできる。<PBT> 本発明により製造されるPBT(以下、“本発明のPBT”と称することがある。)は、テレフタル酸由来の構成単位と1,4−ブタンジオール由来の構成単位を含み、1,4−ブタンジオール中の窒素原子含有量は0.01〜50質量ppm、ガンマブチロラクトン含有量は1〜100質量ppmである。 本発明のPBTにおける窒素原子含有量(質量比)の上限は、好ましくは10ppm、より好ましくは2ppmで、下限は、好ましくは0.05ppm、より好ましくは0.1ppmである。本発明のPBT中のガンマブチロラクトンの含有量による影響は不明であるが、ガンマブチロラクトンはPBT色調悪化の原因となるアミド、アミン、アミノ酸などの他成分に変換されて、PBT中に含有されているものと考えられる。 窒素原子含有量が上記範囲内のPBTは、先述した本発明に係る製造方法に従い、上記の好ましいバイオマス資源由来の原料1,4−ブタンジオールとテレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステルとを原料とすることにより得ることができる。 本発明のPBTの固有粘度に特に制限はないが、機械的物性、ペレット化の安定性、成形性の観点からは、好ましくは0.50dL/g以上、更に好ましくは0.70dL/g以上、好ましくは1.50dL/g以下、更に好ましくは1.35dL/g以下である。PBTの固有粘度が上記下限以上であると成形品の機械物性の点で好ましく、上記上限以下であると成形性の点で好ましい傾向がある。 PBTの固有粘度は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。 本発明のPBTの末端カルボキシル基濃度に特に制限はないが、下限が、1当量/トンであることが好ましく、2当量/トンであることが更に好ましく、3当量/トンであることが特に好ましく、5当量/トンであることが最も好ましく、上限が、50当量/トンであることが好ましく、40当量/トンであることが更に好ましく、30当量/トンであることが特に好ましく、25当量/トンであることが最も好ましい。PBTの末端カルボキシル基濃度が上記上限以下であるとPBTの耐加水分解性が良好な傾向にあり、上記下限以上であると重縮合性が良好な傾向にある。 PBTの末端カルボキシル基濃度は、樹脂を有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を用いて滴定することにより求めることができる。より具体的には、後掲の実施例の項に記載される方法で求められる。<PBTの色調> 通常、バイオマス資源由来の原料1,4−BGを用いて製造されたPBTは色調が悪化する傾向にあるが、本発明のPBTは色調が良好である。また、前述の如く、原料1,4−BG中のGBLを、1,4−BGの精製工程などでその含有量を調節することで、得られるPBTの色調を調節することが可能である。<PBT組成物> 本発明のPBTは、本発明の効果を大幅に損なわない範囲で、PBT以外の成分を含むPBT組成物とすることができる。そのPBT以外の成分の具体例を挙げると、熱可塑性、熱硬化性などの各種樹脂、離型剤、強化充填材等の充填材、難燃剤、その他各種添加剤などが挙げられる。 熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。このうち、熱可塑性樹脂が用いられる場合が多い。 これらの樹脂を配合する場合、その配合量(質量)は、本発明の優れた効果が発現されていればよく、特に制限はないが、樹脂全量に対するPBTの割合が、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、通常99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下、更に好ましくは90質量%以下となるような量である。 離型剤としては、特に制限されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール化合物;ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸およびそのエステル;シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。 強化充填材としては、特に制限されないが、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維等の無機繊維;芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維が挙げられる。このうち、無機繊維、特にガラス繊維が好適に使用される。強化充填材は、1種のみ用いても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。 強化充填材が無機繊維または有機繊維である場合、その平均繊維径は、特に制限されないが、通常1〜100μm、好ましくは2〜50μm、更に好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。また平均繊維長は、特に制限されないが、通常0.1〜20mm、好ましくは1〜10mmである。 強化充填材は、PBTとの界面密着性を向上させるため、収束剤または表面処理剤で表面処理されたものを用いることが好ましい。収束剤または表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物が挙げられる。収束剤または表面処理剤による処理は、強化充填材を予め表面処理することにより行ってもよいし、PBT組成物を調製する際に収束剤または表面処理剤と接触させてもよい。 強化充填材を用いる場合、その配合量は、PBTを含む樹脂成分100質量部に対し、通常150質量部以下、好ましくは5〜100質量部である。 本発明のPBTには、強化充填材以外の充填材を配合しても良い。充填材としては、例えば、板状無機充填材、セラミックビーズ、アスベスト、ワラストナイト、タルク、クレー、マイカ、ゼオライト、カオリン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。 板状無機充填材を配合することにより、成形品の異方性およびソリを低減することができる。板状無機充填材としては、例えば、ガラスフレーク、雲母、金属箔などを挙げることができる。これらの中ではガラスフレークが好適に使用される。 また、本発明のPBTには、難燃性を付与するために難燃剤を配合してもよい。その難燃剤としては、特に制限されず、例えば、有機ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、その他の有機難燃剤、無機難燃剤などが挙げられる。 有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等が挙げられる。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等が挙げられる。その他の有機難燃剤としては、例えば、メラミン、シアヌール酸などの窒素化合物等が挙げられる。その他の無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物などが挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。 その他の各種添加剤としては、特に制限されないが、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤の他、滑剤、触媒失活剤、結晶核剤、結晶化促進剤などが挙げられる。これらの添加剤は、重縮合途中または重縮合後に添加しても良い。 また、その他の各種添加剤としては、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの安定剤、染顔料などの着色剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤なども挙げられる。 上記のその他成分の配合方法は、特に制限されないが、例えば、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸または2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。各成分は、付加的成分を含めて、混練機に一括して供給してもよく、順次供給してもよい。また、付加的成分も含めて、各成分から選ばれた2種以上の成分をあらかじめ混合しておくこともできる。<PBTの成形加工> 本発明のPBTおよびこれを含んだPBT組成物の成形加工方法は、特に制限されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形法等、具体的には、射出成形、中空成形、押し出し成形、プレス成形などを適用できる。 本発明のPBTおよびこれを含んだPBT組成物は、色調、熱安定性、透明性、品質安定性に優れ、電気、電子部品、自動車用部品などの射出成形品、フィルム、モノフィラメント、繊維などの押出し成形品用途において好適に使用できる。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により限定されるものではない。[分析方法]<原料1,4−BGの窒素原子含有量(質量ppm)> 原料1,4−BG15mgを石英ボートに採取して、微量全窒素分析装置((株)ダイヤインスツルメンツ製 型式:「TN−10型」)を用いて試料を燃焼し、燃焼・化学発光法により定量した。また、その際に使用した標準試料には、トルエン中にアニリンを溶解し、窒素原子換算で0、0.5、1.0、2.0μg/mLのものをそれぞれ作製して使用した。<原料1,4−BGのGBL、その他の成分の含有量(質量ppm)> ガスクロマトグラフィー分析装置((株)島津製作所製 型式:「島津GC−2014型」)にて、DB−1カラム(無極性)を用い、修正面積百分率法により、原料1,4−BG、GBL、その他、1,4−HAB等の各ピークの成分の含有量を求め、原料1,4−BG中の含有量を算出した。<PBT製造時の水・THF生成量> エステル化反応における留出液について、カールフィッシャー法(三菱化学(株)製「CA−03」で測定)にて水分量を求め、水分以外は有機成分とした。有機成分中のTHF量を上記ガスクロマトグラフ法により求め、THF生成量とした。THF生成量をテレフタル酸に対するモル%で表し、転化率とした。<PBTの固有粘度(IV)> ウベローデ型粘度計を使用して以下の手順で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度1.0g/dLのPBT溶液および溶媒のみの落下秒数をそれぞれ測定し、下記式で算出した。 IV=((1+4KHηsp)0.5−1)/(2KHC) 但し、ηsp=(η/η0)−1であり、ηはPBT溶液落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、CはPBT溶液のPBT濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。<PBTの末端カルボキシル基濃度(当量/トン)> ベンジルアルコール25mLにPBT0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定し、下記式で算出した。 末端カルボキシル基濃度=(A−B)×0.1×f/W(当量/トン) 但し、Aは、滴定に要した0.01Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Bはブランクでの滴定に要した0.01モル/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、WはPBT試料の量(g)、fは、0.01モル/Lの水酸化ナトリウムの力価である。<PBTの色調(b値)> ペレット状のPBTを内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定用セルに充填し、測色色差計Color Meter ZE2000(日本電色工業(株)製)を使用して、反射法により測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。色調は、L、a、b表色系におけるb値で評価した。b値が低いほど黄ばみが少なく色調が良好であることを示す。[原料1,4−BG] 発酵法から直接原料1,4−BGを製造する方法として、特表2010−521182号公報および米国特許出願公開第2011/0003355号明細書の実施例1〜4に記載の方法で得た粗1,4−ブタンジオールを精製してバイオ法による原料1,4−BG(B)(以下、“バイオ法(B)”と略記することがある。)を得た。 石化法の原料1,4−BGは実際に工業的に入手可能な製品を使用した。 ブタン法によって得られる原料1,4−BG(C)(以下、“ブタン法(C)”と略記することがある。)は、ブタンの酸化により生成するマレイン酸、コハク酸、無水マレイン酸および/またはフマル酸を原料として、それらを水素化して得られる。 ブタジエン法によって得られる原料1,4−BG(D)(以下、“ブタジエン法(D)”と略記することがある。)は、ブタジエン、酢酸および酸素を用いてアセトキシ化反応を行って、中間体であるジアセトキシブテンを得、そのジアセトキシブテンを水添、加水分解することで得られる。 プロピレン法によって得られる原料1,4−BG(E)(以下、“プロピレン法(E)”と略記することがある。)は、プロピレンの酸化により得られるアリルアルコールのオキソ反応により得られる。[参考例1:バイオ法(B)の精製] 特表2010−521182号公報の記載を元に有機体の発酵培地から生物学的に1,4BG含有組成物を生産したバイオ法(B)の原料1,4−BGを以下の方法で精製した。以下、「GBL」は「ガンマブチロラクトン」、「1,4−HAB」は「1−アセトキシ−4−ヒドロキシブタン」、「BGTF」は「2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン」である。また、「ppm」、「%」はいずれも質量基準の値である。以下の表−2、表−3においても同様である。 バイオ法(B)の原料1,4−BGは米国特許出願公開第2011/0003355号明細書に記載の方法で、即ち、濾過、遠心分離及びイオン交換樹脂により菌体と塩分の全量又は各々の少なくとも一部を除去した後、蒸留により水を除去して行い、表−1に示す精製前1,4−BGを得た。 この精製前1,4−BGに対して、ガラス製のロータリーエバポレーターを使用して脱水濃縮を行った。圧力を10.7kPaとし、内温度は175℃で実施した。留出率は10質量%であり、フラスコ内に残った仕込み量に対して90質量%の1,4−BG溶液を回収した。 次に、脱水後の1,4−BG溶液を原料に用いてガラス製の器具を用いて回分蒸留を行い、複数のフラクションに分離して1,4−BGからの高沸分および軽沸分の分離を行った。この際、理論段として3段相当の多段蒸留塔を用いた。塔頂圧力を13.3kPaとし、塔底温度を182℃に制御した。留出温度は軽沸分を除去するとともに上昇し、その後175℃で安定した。この塔頂温度が安定した留分を1,4−BGとして採取した。原料仕込み量に対して1,4−BGのフラクションを80質量%回収した。この精製1,4−BGのフラクションの組成も表−1に示す。 表−1の精製後の組成を持つ1,4−BGを更に同じ回分蒸留装置を使用して、複数のフラクションに分離し、GBL、窒素原子含有量の異なる精製バイオ法(B)を5ロット得た。このロットを初留から順にロット1、ロット2、ロット3、ロット4、ロット5とする。各ロット中のGBL含有量、窒素原子含有量、1,4−HAB含有量、BGTF含有量を、表−2に示した。なお、GBLは、高沸点成分から再生される場合があり、表−1の精製後の1,4−BGに対して、表−2に示すロット1〜5ではGBLが増加している。[PBTの製造]<実施例1> 攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管、および減圧用排気口を備えた反応容器に、テレフタル酸113g、バイオ法の原料1,4−BG(ロット1)を183gおよび触媒としてテトラブチルチタネートを予め6質量%溶解させたバイオ法の原料1,4−BG(ロット1)溶液0.7gを仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。次に、系内を攪拌しながら150℃まで加温後、大気圧下、220℃に1時間で昇温させて、さらに2時間生成する水を留出させつつエステル化反応を行った。 次に、酢酸マグネシウム4水塩を水に溶解し、さらにバイオ法の原料1,4−BG(ロット1)に溶解させた酢酸マグネシウム4水塩1質量%の1,4−BG溶液(酢酸マグネシウム4水塩、水、1,4−BGの質量比1:2:97)1.3gを添加した。 次に、220℃で0.25時間保持後、0.75時間かけて245℃まで昇温し、保持した。一方、圧力は重合開始から、1.5時間かけて0.07kPaになるように減圧し、同減圧下で0.8時間重縮合反応を行い、反応系を常圧に戻し重縮合を終了した。得られたPBTを反応槽の底部からストランドとして抜き出し、10℃の水中を潜らせた後、カッターでストランドをカットすることによりペレット状のPBTを得た。 酢酸マグネシウム添加後の減圧開始から重縮合終了までを重縮合時間として、固有粘度/重縮合時間を重縮合速度とした。重縮合速度は0.37dL/g/時間であった。エステル化反応中の留出液についてTHF量を分析し、仕込みテレフタル酸あたりのモル%で表したTHF転化率は、70.6モル%であった。 得られたPBTの上記測定法による分析結果と原料1,4−BGとして用いたバイオ法(ロット1)のGBL含有量、窒素原子含有量、1,4−HAB含有量、BGTF含有量を表−3に示す。<実施例2> 実施例1において、原料1,4−BGをバイオ法の精製で得られたロット2に変更した以外は全て同様にPBTを製造した。PBT製造時のTHFへの転化率[%]、重縮合時間[時間]、重縮合速度[dL/g/時間]、PBTの上記測定法による分析結果を併せて表−3に示す。<実施例3> 実施例1において、原料1,4−BGをバイオ法の精製で得られたロット3に変更した以外は全て同様にPBTを製造した。PBT製造時のTHFへの転化率[%]、重縮合時間[時間]、重縮合速度[dL/g/時間]、PBTの上記測定法による分析結果を併せて表−3に示す。<実施例4> 実施例1において、原料1,4−BGをバイオ法の精製で得られたロット4に変更した以外は全て同様にPBTを製造した。PBT製造時のTHFへの転化率[%]、重縮合時間[時間]、重縮合速度[dL/g/時間]、PBTの上記測定法による分析結果を併せて表−3に示す。<比較例1> 実施例1において、原料1,4−BGをバイオ法の精製で得られたロット5に変更した以外は全て同様にPBTを製造した。PBT製造時のTHFへの転化率[%]、重縮合時間[時間]、重縮合速度[dL/g/時間]、PBTの上記測定法による分析結果を併せて表−3に示す。<比較例2> 実施例1において、原料1,4−BGを表−3に示す組成のブタン法(C)の1,4−BGに変更した以外は全て同様にPBTを製造した。PBT製造時のTHFへの転化率[%]、重縮合時間[時間]、重縮合速度[dL/g/時間]、PBTの上記測定法による分析結果を併せて表−3に示す。<比較例3> 実施例1において、原料1,4−BGを表−3に示す組成のブタジエン法(D)の1,4−BGに変更した以外は全て同様にPBTを製造した。PBT製造時のTHFへの転化率[%]、重縮合時間[時間]、重縮合速度[dL/g/時間]、PBTの上記測定法による分析結果を併せて表−3に示す。<比較例4> 実施例1において、原料1,4−BGを表−3に示す組成のプロピレン法(E)の1,4−BGに変更した以外は全て同様にPBTを製造した。PBT製造時のTHFへの転化率[%]、重縮合時間[時間]、重縮合速度[dL/g/時間]、PBTの上記測定法による分析結果を併せて表−3に示す。 実施例1〜4と比較例2〜4を対比すると、実施例1〜4の原料1,4−BG中の1,4−HABの濃度が異なるが、重縮合時間が2.3時間と全て同じであるのに対して、比較例2〜4の重縮合時間は2.7時間や2.4時間となっていることから、バイオマス資源由来の1,4−BGを原料としてPBTを製造すると、石油原料由来の1,4−BGを原料としてPBTを製造する場合に対して、窒素原子含有化合物の存在によって1,4−HABの影響による重合遅延を抑制できていることがわかる。 実施例1〜4と比較例1を比べると、バイオマス資源由来の1,4−BG(窒素原子が存在)でも、1,4−BG中のGBLの含有量が1〜100質量ppmであれば、PBTの着色は少ないことから、窒素原子含有化合物とGBLとの反応生成物による着色が抑えられていることがわかる。 図1は実施例1〜4、比較例1の原料1,4−BG中のGBL含有量に対するPBTの色調b値、および比較例2〜4の原料1,4−BG中のGBL含有量に対するPBTの色調b値を示すグラフである。図1から、窒素原子が存在しない原料1,4−BG(比較例2〜4)ではGBLの濃度とb値の相関が確認できないが、窒素原子が存在するバイオマス資源由来の原料1,4−BGではGBL含有量と色調b値の相関があることから、GBLによるPBTの着色はバイオマス資源由来の原料1,4−BG中の窒素原子化合物とGBLとの反応で新たに発生する化合物が着色を誘発していると推定できる。<参考例2> 比較例3で使用した原料1,4−BG(ブタジエン法(D))に2−ピロリドンを123質量ppm(窒素原子含有量20.2質量ppm)添加し、それ以外は全て比較例3の条件と同様にPBT合成を行った。その結果、得られたPBTの色調b値は2.7であり、123質量ppmの2−ピロリドン添加により色調b値が1.5増加した。尚、GBLの分子量と2−ピロリドンの分子量から、123ppmの2−ピロリドンをGBL量に換算すると、124質量ppmとなる。 本発明では、GBLと窒素原子含有化合物から誘導される成分が色調を悪化させると推定しているが、アンモニアとGBLから誘導される2−ピロリドンによるPBTの色調悪化は、この推定を支持するものである。GBLと窒素原子含有化合物から誘導される成分が色調悪化の原因であるために、窒素原子含有化合物を含有せずGBLのみを含有する原料では、GBL含有量増加に伴うPBTの色調悪化が確認されないものと理解できる。 尚、本機構は2−ピロリドンに限定されるものではなく、また、窒素成分をアンモニアに限定するものではない。 窒素原子含有量が0.01〜50質量ppmのバイオマス資源由来である原料1,4−ブタンジオールを含むジオール成分と、テレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステルを含むジカルボン酸成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させる工程(a)と、前記工程(a)で得られた反応物を重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを得る重縮合反応工程(b)とを有するポリブチレンテレフタレートの製造方法であって、 前記原料1,4−ブタンジオールにおけるガンマブチロラクトンの含有量が1〜100質量ppmである、ポリブチレンテレフタレートの製造方法。 前記工程(a)に先立ち、バイオマス資源由来の1,4−ブタンジオールを精製して前記原料1,4−ブタンジオールを得る工程を更に有する、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。 前記バイオマス資源由来の1,4−ブタンジオールにおけるガンマブチロラクトンの含有量が、101質量ppm〜2質量%である、請求項2に記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。 前記原料1,4−ブタンジオールにおける1−アセトキシ−4−ヒドロキシブタンの含有量が1〜99質量ppmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。 前記原料1,4−ブタンジオール又は前記バイオマス資源由来の1,4−ブタンジオールを、グルコース、フルクトース、キシロース、及びサッカロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源から発酵法により直接製造する工程をさらに有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。 バイオマス資源から、下記に示す天然に存在しない微生物生体触媒を用いて、前記原料1,4−ブタンジオール又は前記バイオマス資源由来の1,4−ブタンジオールを製造する工程を更に有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。 天然に存在しない微生物生体触媒:4−ヒドロキシブタン酸脱水素酵素、スクシニル−CoA合成酵素、CoA依存性コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素、またはα−ケトグルタル酸脱炭酸酵素をコードする少なくとも1つの外因性核酸を含む4−ヒドロキシブタン酸生合成経路を有する微生物を含み、前記微生物が前記4−ヒドロキシブタン酸の単量体を分泌するために十分な量の前記外因性核酸を含む、微生物生体触媒 【課題】生物資源由来の1,4−ブタンジオール(BG)を用いた、色調が良好なポリブチレンテレフタレート(PBT)の製造方法を提供する。【解決手段】窒素原子含有量が0.01〜50質量ppmのバイオマス資源由来である原料1,4−ブタンジオールを含むジオール成分と、テレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステルを含むジカルボン酸成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させる工程(a)と、前記工程(a)で得られた反応物を重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを得る重縮合反応工程(b)とを有するポリブチレンテレフタレートの製造方法であって、前記原料1,4−ブタンジオールにおけるガンマブチロラクトンの含有量が1〜100質量ppmである、ポリブチレンテレフタレートの製造方法。【選択図】図1


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