タイトル: | 公開特許公報(A)_インドシアニングリーン含有粒子およびその製造方法 |
出願番号: | 2013105265 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 49/00,A61K 9/127,A61K 47/22,A61K 47/28,A61K 47/18,A61K 47/04 |
富田 佳紀 JP 2014227338 公開特許公報(A) 20141208 2013105265 20130517 インドシアニングリーン含有粒子およびその製造方法 キヤノン株式会社 000001007 岡部 讓 100094112 臼井 伸一 100096943 越智 隆夫 100101498 高橋 誠一郎 100107401 吉澤 弘司 100106183 齋藤 正巳 100128668 木村 克彦 100134393 田中 尚文 100174230 富田 佳紀 A61K 49/00 20060101AFI20141111BHJP A61K 9/127 20060101ALI20141111BHJP A61K 47/22 20060101ALI20141111BHJP A61K 47/28 20060101ALI20141111BHJP A61K 47/18 20060101ALI20141111BHJP A61K 47/04 20060101ALI20141111BHJP JPA61K49/00 AA61K9/127A61K47/22A61K47/28A61K47/18A61K47/04 16 1 OL 26 4C076 4C085 4C076AA19 4C076BB11 4C076CC50 4C076DD22 4C076DD54 4C076DD60 4C076FF70 4C076GG08 4C076GG21 4C076GG46 4C085HH01 4C085JJ05 4C085KA27 4C085KB56 4C085LL03本発明は、インドシアニングリーンを含有する粒子、およびその製造方法に関する。 近年、非侵襲的に診断ができるイメージング方法として、蛍光イメージング法や光音響イメージング法が注目されている。 蛍光イメージング法は蛍光色素に光を照射し、色素が発する蛍光を検出する方法で、各種イメージングに広く用いられている。光音響イメージング法は、光を照射された測定対象の分子が放出する熱が起こす体積膨張により生じる音響波の強度と音響波の発生位置を検出することで、測定対象の画像を得る方法である。蛍光イメージング法や光音響イメージング法において、測定対象部位からの蛍光の大きさや音響波の強度を大きくするための造影剤として色素を用いることができる。 このような造影剤においては、信号強度(蛍光や音響波の強度)を有効に増幅するために、光を吸収することで蛍光または音響波を発する色素をミセル、ポリマーミセル、リポソーム、その他の等(以下、単に粒子という場合は、特に言及される場合を除き、これらの総称を意味する)に集積することにより、色素密度を上げて、照射エネルギーの吸収効率を上げることが望まれる。 光を吸収することで蛍光または音響波を発することが知られている色素として、インドシアニングリーン(Indocyanine Green、以下、ICGと略すことがある)が知られている。なお、本明細書において、ICGとはシアニン骨格を有し、下記に示される構造を有する化合物を指す。 ただし、対イオンはNa+でなくともよく、H+あるいはK+でもよい。またヨウ化ナトリウムNaIを添加してもよい。 しかし、ICGは低分子であることからサイズが小さく、リンパ節内滞留性が低いため、よりサイズの大きいリンパ節用造影剤が望まれていた。ICGを含み、よりサイズの大きな粒子として、非特許文献1には、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol:PVA)を界面活性剤にしてエマルジョン溶媒拡散法によって得たICG含有乳酸−グリコール酸共重合体(poly(lactide−co−glycolide:以下PLGAと略すことがある)粒子が開示されている。特開2005−220045号公報”Enhanced photo−stability, thermal−stability and aqueous−stability of indocyanine green in polymeric nanoparticulate systems”, Journal of Photochemistry and Photobiology B:Biology,74、29−38(2004)”J−aggregation and disaggregation of indocyanine green in water”,Chemical Physics,Volume 220,385−392(1997)”Degree of aggregation of indocyanine green in aqueous solutions determined by Mie scattering”,Chemical Physics,Volume 220,373−384(1997)”Microstructure of indocyanine green J−aggregates in aqueous solution”, Chemical Physics,Volume 269,399−409(2001) しかし、非特許文献1に開示されたICGを含有する粒子には、リポソーム内に充填できる色素量に限界があり、造影剤粒子のICG含有率が低く、標的組織へのICG輸送量が減少し、造影感度が不十分になる結果、ICG含有粒子を大量に投与する必要が生じることになり、患者に過度の負担を与えることになるという問題があった。 ICGを含有する粒子の造影剤においては、生体内での粒子のICG含有率が優れていることが必要であるが一般的なリポソーム作製方法においてはリポソーム内に充填できる色素量に限界があった。具体的には水和分散法においては有機溶媒に溶解し溶媒除去したリン脂質フィルムをICG水溶液と共に超音波撹拌することによりICG水溶液を内包するリポソームを形成できる。かかる方法において例えば粒径70nm前後のリポソームの体積、乾燥重量より求めたリポソーム個数から計算される内水相体積は全体の0.5vol%前後しかない。 飽和濃度に近いICG水溶液を使って水和分散し限外ろ過や遠心などで濃縮したとしても造影剤全体のICGモル吸光係数εは108オーダーである。 別のリポソーム作製方法であるバンガム法においてはリン脂質クロロホルム溶液にICGメタノール溶液を混和溶解した後、溶媒除去したICGを含むリン脂質フィルムをバッファ水溶液と共に超音波撹拌することによりICGをリン脂質内に含むリポソームを形成できる。かかる方法において上記同様の粒径70nm前後のリポソームの体積、乾燥重量より求めたリポソーム個数から計算されるリポソーム脂質膜の体積は全体の1vol%前後しかない。 この場合でも造影剤全体のICGモル吸光係数εは108オーダーである。よってICG含有率が高いICG含有粒子が求められていた。 そこで本発明は、外水相から内水相へとICGを輸送しICG内水相濃度を高めることが可能なpH勾配法に基づく粒子の作製方法を提供する。 pH勾配法を含む従来のリポソーム作製法においては高濃度ICG水溶液(非特許文献2によれば1.5mM以上)をリン脂質の相転移温度である60℃以上(非特許文献2では65℃を基準に20℃、45℃、80℃、90℃)に加熱した状態にするとJ会合体の形成(以下、J会合体化、と略すことがある)が始まり、会合体の核形成が更なるJ会合体化促進することが知られている。 しかしpH勾配法において外水相におけるICGの濃度が高いほど内包率が高くなる傾向にあり、pH勾配法より高内包率化を目標とするため非特許文献2に記載の1.5mM以上とすることが一般的に行われ内包化の加熱処理時にJ会合体を形成することが避けられなかった。ICGがJ会合体を形成すると、粒子におけるICGの内包率を高くすることが難しい。 なぜなら、pH勾配法はトランスメンブレン勾配とも呼ばれ、外水相に含まれる非イオン性溶質がリン脂質膜を越えて内水相に移動するもので、移動時に分子容積が小さい方が移動量は多くなる。そして、 非特許文献3にあるように、ICGのJ会合体は分子数20000乃至50000の集合体であることが知られており、リン脂質メンブレンをトランスするには巨大すぎるためである。 本発明はICGを単量体のまま粒子に大量に内包させることを目的とする。ICGと、粒子を、1mM以上10M以下のカオトロピック剤を含む溶液中で混合する工程を有することを特徴とするインドシアニングリーン含有粒子(ICG含有粒子)の製造方法を提供する。 本発明に係る粒子は、ICGをJ会合体化せず粒子内に安定に保持することができる。本発明の一実施形態における粒子の例である。本発明の一実施形態における別の粒子の例である。ICG水溶液ならびにICGのJ会合体の吸収スペクトルである。実施例1における本発明の1.5mM インドシアニングリーン(ICG、日本公定書協会製)および尿素を含む水溶液を60℃30分加熱した前後のスペクトルシフトを各100mM以下の尿素濃度で測定した結果一覧であって、左端のマスはICGを含まない100mM尿素水溶液のみの吸収スペクトルで、各マスの横軸は波長で左端が500nm、右端が950nmであり、縦軸は吸光度でスケールは任意である。 2段になっているマスの上段は加熱前で下段は加熱後の吸収スペクトルを示す。左端のマスはICGを含まないブランクであって、左端から2マス目は1.5mMICGに各100mM以下の尿素濃度(一覧表の上部に尿素濃度を記載)添加物を加えた溶液の吸収スペクトルで、上段と下段は加熱前後を表わす。実施例1における本発明の1.5mM インドシアニングリーン(ICG、日本公定書協会製)および尿素を含む水溶液を60℃30分加熱した前後のスペクトルシフトを各100mM以下のクエン酸濃度で測定した結果一覧であって、左端のマスはICGを含まない100mMクエン酸水溶液のみの吸収スペクトルで、各マスの横軸は波長で左端が500nm、右端が950nmであり、縦軸は吸光度でスケールは任意である。2段になっているマスの上段は加熱前で下段は加熱後の吸収スペクトルを示す。 左端のマスはICGを含まないブランクであって、左端から2マス目は1.5mMICGに各100mM以下のクエン酸濃度(一覧表の上部にクエン酸濃度を記載)添加物を加えた溶液の吸収スペクトルで、上段と下段は加熱前後を表わす。1.5mM 以下のインドシアニングリーン(ICG、日本公定書協会製)を含む水溶液を60℃30分加熱した前後のスペクトルシフトを測定した結果一覧であって、左端のマスはICGを含まない水のみの吸収スペクトルで、各マスの横軸は波長で左端が500nm、右端が950nmであり、縦軸は吸光度でスケールは任意である。 2段になっているマスの上段は加熱前で下段は加熱後の吸収スペクトルを示す。 左端のマスはICGを含まないブランクであって、左端から2マス目は1.5mMICG水溶液の吸収スペクトルで(一覧表の上部にICG濃度を記載)、上段と下段は加熱前後を表わす。本発明の実施例2において尿素添加pH勾配法で得たICG含有粒子の吸収スペクトルである。780nm付近に吸収ピークが認められる。本発明の比較例1において尿素を添加しない従来のpH勾配法で得たICG含有粒子の吸収スペクトルである。895nm付近に吸収ピークが認められる。本発明の比較例2においてpH勾配を施さないで得たICG含有粒子の吸収スペクトルである。780nm付近に吸収ピークが認められる。本発明の実施例2で得たリポソームであって、pH勾配でICG内包前ならびに内包・精製後において粒径を比較したデータである。 以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限られない。 本発明の第一の実施形態は、ICGと、粒子を、1mM以上10M以下のカオトロピック剤を含む溶液中で混合する工程を有することを特徴とするICG含有粒子の製造方法である。 また、本実施形態に係るICG含有粒子の製造方法は、カオトロピック剤を含む溶液が6.25mM以上のカオトロピック剤を有することが好ましく、100mM以下のカオトロピック剤を有することがさらに好ましい。 また、ICGと、粒子を、1mM以上10M以下のカオトロピック剤を含む溶液中で混合する工程においては、ICGが溶解したカオトロピック剤を含む溶液と、粒子とを混合することが好ましい。本実施形態は、例えば、ICGを外水相からリポソーム内水相に内包させるpH勾配法において、外水相に例えば尿素などのカオトロピック剤を添加することで、ICGのJ会合体化を抑制し、ICGの内包率の高い粒子を製造することができる。 カオトロピック剤とは、水分子間の相互作用を減少させ、それによる構造を不安定化させる物質のことである。カオトロピック剤の好ましい例として、尿素、グアニジン、ヨウ素、あるいはこれらのイオンを挙げることができ、カオトロピック剤の好ましい濃度として1mM以上10M以下であり、尿素であれば、特に好ましい濃度として、10mM以上1M以下を挙げることができる。 1mM以上10M以下のカオトロピック剤を含む溶液は、好ましくは、pHが7未満であり、さらに好ましくは5未満を挙げることができる。なお、溶液には特に限定はなく、水、水系溶媒、緩衝液、粒子分散媒などを指し、例としては、表2中の、A溶液、B溶液、あるいは、尿素100mMを含むpH3.0の溶液、を挙げることができる。 また、本発明において、粒子は特に限定されないが、好ましい例としてリポソームを挙げることができる。 本発明の好ましい実施形態の一は、インドシアニングリーンと粒子とを含むインドシアニングリーン含有粒子であって、前記インドシアニングリーン含有粒子がさらにカオトロピック剤を有することを特徴とするインドシアニングリーン含有粒子である。 本実施形態では、粒子の波長895nm(J会合体に由来)の光の吸光度と780nm(単量体に由来)の光の吸光度との比率O.D.(895nm)/O.D.(780nm)が1.0以下であることが好ましいが特に限定されず、粒子内でのJ会合体と単量体との存在比は特に限定されない。 同様に、粒子の、波長700nm(H会合体に由来)の光の吸光度と780nm(単量体に由来)の光の吸光度との比率O.D.(700nm)/O.D.(780nm)が1.0以下であることが好ましいが特に限定されず、粒子内でのH会合体と単量体との存在比は特に限定されない。 本実施形態における粒子は、さらに、リン脂質を含むことができ、さらに好ましくは、本実施形態における粒子のリン脂質は二重膜を形成しており、リン脂質が粒子に占める割合は好ましくは30重量%以上である。また、リン脂質の例として、リン酸ジエステル結合を有する脂質を挙げることができる。本実施形態の粒子は、さらに、コレステロールを有することができ、粒子の好ましい例として、リポソームを挙げることができる。 粒子の粒径に限定はないが、好ましい例として、平均粒径1000nm以下、さらに好ましくは200nm以下を挙げることができる。粒子系は、例えば、光散乱法で測定することができる。 またさらには、本実施形態の粒子は、表面にPEG鎖を有することができる。 本発明の好ましい実施形態の一は、上記ICG含有粒子を含む光音響イメージング造影剤である。本実施形態の光音響イメージング造影剤は好ましくは、前記ICG含有粒子と、ICG含有粒子を分散するための分散媒を有する。この場合、上記カオトロピック剤を含む分散媒を有することができる。(J会合体) ICGは特定の条件下においてJ会合体(J−aggregate)を形成することが知られている(非特許文献2、3及び4)。J会合体は、数μmの平均粒径を有する多量体であり、単量体に比べて、吸収極大波長が長波長側に大きくシフトし、その吸収帯が鋭くなることが知られている。 ICGのJ会合体とは、ICGの多量体構造物である会合体のうち、単量体に比べて吸収波長がずれて、880nm乃至910nmに吸光度の極大をもつものと定義する。なお、本明細書において粒子にICGが含まれるという場合、粒子にICGのJ会合体やH会合体が含まれることを阻害しない。 J会合体およびH会合体は造影の妨害とはならないが、会合することによってICG単量体に由来する780nmの吸収が減ずるため、会合体の形成を抑制することが感度の点で好ましい。 ICGのJ会合体を用いると一般的な蛍光イメージング装置や光音響イメージング装置における計測の境界波長域であるため光源出力が下がり、感度が低下する。 本発明では、会合状態を抑制し、単量体を高濃度に内包させることによりリンパ節等の測定対象部位へのICGの集積を高めることが可能になる。(粒子) 本願明細書では、粒子は特に限定されず、ICGの含有の有無に関わらず全ての粒子を指し、ICGを含む粒子を指して、特に「インドシアニングリーン含有粒子」「ICG含有粒子」などと言う場合がある。粒子は、形状は問わず、ミセル、ポリマーミセル、リポソーム、その他の粒子全てを含む。 本発明の粒子は、ICG以外に正帯電部位を有する脂質等の添加物を含んでいてもよいし、添加物を含まない粒子でもよい。粒子は特に限定されず、ミセル、ポリマーミセル、リポソーム等でもよい。また、この粒子表面には界面活性剤が存在していてもよい。 このような粒子の例として、図1に示すようなICG 1と添加物としてのリン脂質2からなる粒子や、図2に示すようなICG 1を含むリポソーム3の表面に界面活性剤4を含む粒子等が挙げられる。(平均粒径) 本実施形態に係る粒子の平均粒径は、光散乱法で測定される流体力学的平均粒子径を意味する。以下単に粒径ということがある。本実施形態に係る粒子の粒径の範囲は特に限定されない。ただし、造影剤、特にリンパ節用の造影剤として用いる場合、流体力学的平均粒子径を1000nm以下とすることで、リンパ管や組織内部への取り込みやすさ(組織浸透性)とリンパ節や組織への滞留性を高めることが可能となる。 粒径が1000nm以下の場合、EPR(Enhanced Permeability and Retention、腫瘍血管の透過性亢進と腫瘍内滞留)効果により、生体内の正常部位に比べて腫瘍部位により多くの粒子を集積させることができる。集積した粒子を、蛍光や光音響といった各種画像形成モダリティを用いて検出することによって、腫瘍部位を特異的にイメージングすることができる。また、粒径が1000nmを超えると、リンパ管等の組織内への効率的な取り込みが期待できない。そのため、粒径は10nm以上1000nm以下とすることが好ましい。粒径は20nm以上500nm以下であることがより好ましく、20nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。粒子の粒径が200nm以下であると、粒子が血中のマクロファージに取り込まれにくく、血中滞留性が高くなると考えられるからである。 粒径は電子顕微鏡観察や動的光散乱法に基づく粒径測定法により測定することができる。動的光散乱法に基づいて粒径を測定する場合、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子社製)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering, DLS)法によって流体力学的直径を測定する。 後述する細孔フィルターによってろ過したり、後述するnanoemulsion法を用いたり、リポソーム等の粒子に含ませたりすることで、このような好ましいサイズの粒子を作成することができる。(カオトロピック剤) カオトロピック剤の例として、尿素、グアニジン、ヨウ素、あるいはこれらのイオンを挙げられ、この中で特に好ましい例として尿素を挙げることができる。粒子に含まれる添加物は製造工程のpH勾配法による内包化処理時に用いるため残留することが考えられるが、尿素はビタミン静脈注射(商品名:ビタルファ注射液、コンベルビー注など)の添加剤(注射液10ml中50mg添加)として実績があり、また、尿素のMSDS(製品安全データシート)によれば静脈注射のLD50はラットやマウスで5000mg/kg前後であり、本発明の好ましい濃度範囲上限の1Mを添加したとしても尿素分子量と静脈注射の液量から毒性は認められない。 よって、本発明において尿素は製造後に排除する必要はなく、残留もしくは外水相に添加することで経時的な安定性、すなわちICG吸収波長シフトを抑制する効果を持続させることができる。(正帯電部位を有する脂質) 本発明に係る粒子は、正帯電部位を有する脂質等を含むことができる。ICGは親水性部位であるスルホン酸基を有する親水性色素であるが、正帯電部位を有する脂質を添加すると、添加物の有する正帯電部位がICGの親水性部位に会合し、ICGの疎水性を上げることができ、ICGをクロロホルム、ジクロロメタンなどの有機溶媒に可溶化することができると考えられる。 正帯電部位を有する脂質とは、脂質のうちその構造の一部に、陽イオンの部分構造を有する脂質のことを言う。このような脂質の例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリン等のグリセロ脂質、スフィンゴミエリン、スフィンゴリン脂質及びスフィンゴシン等のスフィンゴ脂質、ノイラミン酸等のアミノ糖部分を有するスフィンゴ糖脂質等の糖脂質、コレステリル−3β−カルボキシアミドエチレン−N−ヒドロキシエチルアミン及び3−([N−N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール等の合成コレステロール類、ラウリルアミン、ステアリルアミン、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(略称DOTMA)及び2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸(略称DOSPA)等の合成脂質、並びにエーテル型リン脂質及びカチオニック脂質等を挙げることができる。 また、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンの例としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン及びジアシルホスファチジルセリンなどが挙げられる。 また、正帯電部位を有する脂質は、さらにリン酸ジエステル結合を有することができ、例えば、1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DSPE)、1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DPPE)、1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DMPE)、1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DLPE)、1,2−Dioleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DOPE)、1,2−Dilinoleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DLoPE)、1,2−Dierucoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DEPE)、1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phospho−L−serine(DSPS)、1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−L−serine(DPPS)、1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−L−serine(DMPS)、1,2−Dioleoyl−sn−glycero−3−phospho−L−serine(DOPS)、1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DSPC)、1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DPPC)、1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DMPC)、1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DLPC)、1,2−Dioleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DOPC)、1,2−Dilinoleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DLoPC)などが挙げられる。 本実施形態における正帯電部位を有する脂質として、さらに、1,2−di−o−acyl−sn−glycero−3−phosphocholine、1,2−diacyl−3−trimethylammonium propane chloride、o,o’−ditetradecanoyl−N−(α−trimethylammonioacetyl)diethanolamine chloride、水素添加大豆ホスファチジルコリン(Hydrogenated Soy Phosphatidylcholine,HSPCと略すことがある)等を使用することができる。 本発明に係る正帯電部位を有する脂質として、特にこのましくは、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルコリンを挙げられる。(リポソーム) 本発明の粒子はリポソームの形状をとることができる。本明細書においてリポソームとは、脂質、糖脂質、リン脂質、ステロール、ならびにそれらの組み合わせにより構成される単層リポソーム及び多重層リポソームを意味する。脂質は異なる脂質の混合物から構成されていてもよく、また脂質の誘導体、たとえばポリエチレングリコール結合リン脂質なども使用することができる。リポソームの調製方法は、従来公知の方法を利用でき、適宜選択して望ましい物性のリポソームを得ることができる。脂質の種類や量などは、リポソームの用途に応じて適宜選択することができる。例えば、脂質量や比率、脂質の荷電を考慮することで、リポソームの粒径や表面電位を制御することができる。 リポソームに含まれる中性リン脂質の例としては、大豆あるいは卵黄レシチン、リゾレシチン、またはこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体である。その他にも、半合成のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、スフィンゴミエリンも挙げられる。また、合成されたホスファチジン酸(PA)などのアルキルあるいはアルケニル誘導体も使用でき、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)などが挙げられる。 リポソームに含まれる糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリドなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質などが挙げられる。 粒子をリポソームとする場合、リポソーム膜構成分子として、上記の他にも必要に応じ他の分子を加えることもでき、例として、膜安定化剤として作用するコレステロール類、エチレングリコールなどのグリコール類、デキストランなどの糖類、電荷制御のために添加されるリン酸ジアルキルエステル類、ステアリルアミンなどの脂肪族アミンが例示される。(粒子へのICGの含有) 本発明において粒子がICGを含有するというとき、たとえば、粒子がリポソームであって、リポソームにICGが内包される場合を挙げられる。ICGは水溶性物質であり、典型的にはリポソームの内水相に内包される。しかし、ICGはリン脂質との親和性を有していることやICG同士の多量体化を起こしやすいことから、リポソーム膜表面や脂質二重膜内の局在も起こりえる。本明細書中では、では上記3通りの場合、すなわち、「リポソーム内水相への内包」、「リポソームの膜内への局在」ならびに「リポソーム表面への局在」をあわせてリポソームへの含有とする。(界面活性剤) 本実施形態の粒子の作製には、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、高分子界面活性剤又はリン脂質等を使用することができる。これらの界面活性剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。上記本実施形態における界面活性剤に使用する非イオン性界面活性剤としては、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80及びTween85等のポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、Brij35、Brij58、Brij76、Brij98、Triton X−100、Triton X−114、Triton X−305、Triton N−101、Nonidet P−40、Igepol CO530、Igepol CO630、Igepol CO720並びにIgepol CO730等を挙げることができる。 また、上記本実施形態における界面活性剤に使用するアニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホネート、デシルベンゼンスルホネート、ウンデシルベンゼンスルホネート、トリデシルベンゼンスルホネート、ノニルベンゼンスルホネート並びにこれらのナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩等を挙げることができる。 また、本発明における界面活性剤に使用するカチオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化ヘキサデシルピリジニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム及び塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等を挙げることができる。 また、本発明における界面活性剤に使用する高分子界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及びゼラチン等を挙げることができる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの市販品としては、プルロニックF68(シグマアルドリッチジャパン社製)、プルロニックF127(シグマアルドリッチジャパン社製)などが挙げられる。 また、本発明における界面活性剤に使用するリン脂質としては、水酸基、メトキシ基、アミノ基、カルボキシル基、N−ヒドロキシスクシンイミド基又はマレイミド基のいずれかの官能基を有するホスファチジル系リン脂質であることが好ましい。また、界面活性剤に使用するリン脂質はPEG鎖を含むものであってもよい。 腫瘍へのパッシブターゲティングの原理として提唱されているEPR効果を生じさせるためには、高い血中滞留性を有することが造影剤には求められる。ポリエチレングリコールは血中タンパク質との相互作用を抑制することで肝臓などの細網内皮系細胞に貪食され難くなり、粒子の血中滞留性を向上させることができるため、本発明の粒子へのポリエチレングリコールの導入は非常に有益である。 ポリエチレングリコールの分子量や粒子への導入率を適宜変えることにより、その機能を調節することができる。その分子量が500から200000のポリエチレングリコールの使用が好ましく、特に2000から100000が好適である、また粒子へのポリエチレングリコール導入率は、該粒子を構成する脂質に対して0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜30モル%、より好ましくは0.1〜10モル%である。 粒子へのポリエチレングリコール導入方法は、公知の技術を利用することができる。好ましい例としては、粒子を被覆するリン脂質類の中に、予めポリエチレングリコール結合リン脂質などを含めて粒子を作製する方法である。ポリエチレングリコール結合リン脂質の例としては、ホスファチジルエタノールアミンのポリエチレングリコール誘導体、たとえばジステアロイルフォスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール(DSPE−PEG)などがある。 官能基が水酸基、メトキシ基、アミノ基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、マレイミド基でありPEG鎖を含むような界面活性剤に使用するリン脂質としては、例えば、化学式2で示される1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine−N−[poly(ethylene glycol)] (DSPE−PEG−OH)、化学式3で示されるPoly(oxy−1,2−ethanediyl),α−[7−hydroxy−7−oxido−13−oxo−10−[(1−oxooctadecyl)oxy]−6,8,12−trioxa−3−aza−7−phosphatriacont−1−yl]−ω−methoxy− (DSPE−PEG−OMe)、化学式4で示されるN−(aminopropyl polyethyleneglycol)−carbamyl distearoylphosphatidyl−ethanolamine(DSPE−PEG−NH2)、化学式5示される3−(N−succinimidyloxyglutaryl) aminopropyl polyethyleneglycol−carbamyl distearoylphosphatidyl−ethanolamine(DSPE−PEG−NHS)、化学式6で示されるN−(3−maleimide−1−oxopropyl) aminopropyl polyethyleneglycol−carbamyl distearoylphosphatidyl−ethanolamine(DSPE−PEG−MAL)等のリン脂質を挙げることができる。なお、化学式2乃至6において、nは5以上500以下の整数である。 なお、本発明において用いる界面活性剤は1種類であってもよいし、2種類又はそれ以上の種類の界面活性剤を同時に用いてもよい。(捕捉分子) 本発明の一実施形態おいて、上記の粒子の一部に、捕捉分子を固定化することにより、標的部位を特異的に標識することができる。 捕捉分子とは、腫瘍などの標的部位に特異的に結合する物質、標的部位の周辺に存在する物質に特異的に結合する物質などであり、生体分子や医薬品等の化学物質などから任意に選択することができる。具体的には、抗体、抗体フラグメント、酵素、生物活性ペプチド、グリコペプチド、糖鎖、脂質、分子認識化合物などが挙げられる。これらの物質は単独で用いることもできるし、あるいは複数を組み合わせて用いることもできる。 捕捉分子が化学結合された粒子を用いることで、標的部位の特異的な検出、標的物質の動態、局在、薬効、代謝等の追跡を行うことができる。例えば、捕捉分子として腫瘍に特異的に結合する物質を採用すれば、腫瘍の特異的検出が可能となる。また捕捉分子として、特定の疾病部位の周辺に多く存在するタンパク質や酵素などの生体物質に特異的に結合する物質を用いれば、その疾病を特異的に検出することが可能である。なお、本実施形態に係る粒子によれば、捕捉分子を持たない場合でも、EPR効果によって腫瘍を検出することは可能である。(捕捉分子の固定化) 本発明の粒子には捕捉分子を固定化してもよい。固定化する方法は、含有粒子に捕捉分子を化学結合させることができる限り、いかなる公知の方法をも使用することができる。例えば、前記した界面活性剤が有する官能基と捕捉分子の官能基とを反応させて化学結合する方法等を使用することができる。 例えば、界面活性剤がN−ヒドロキシスクシンイミド基を有するホスファチジル系リン脂質である場合、アミノ基を有する捕捉分子と反応させて、粒子に捕捉分子を固定化することができる。捕捉分子の固定化後、界面活性剤の未反応のN−ヒドロキシスクシンイミド基は、グリシン、エタノールアミン、又は末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール等と反応させて失活させることが好ましい。 また、界面活性剤がマレイミド基を有するホスファチジル系リン脂質である場合、チオール基を有する捕捉分子と反応させて、粒子に捕捉分子を固定化することができる。捕捉分子の固定化後、界面活性剤の未反応のマレイミド基は、L−システイン、メルカプトエタノール、又は末端にチオール基を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール等と反応させて失活させることが好ましい。 また、界面活性剤がアミノ基を有するホスファチジル系リン脂質である場合、グルタルアルデヒドを用いて捕捉分子のアミノ基と反応させ、粒子に捕捉分子を固定化することができる。捕捉分子の固定化後、エタノールアミン、又は末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール等を反応させて未反応のアミノ基の活性をブロックすることが好ましい。あるいは、界面活性剤のアミノ基をN−ヒドロキシスクシンイミド基やマレイミド基に置換して、捕捉分子を固定化しても良い。(粒子の製造方法) 本実施形態に係るICG含有粒子の製造方法の一例は、ICGを含まない粒子(空リポソーム)を調製するステップと、ICGを内包させたICG含有粒子を調製するステップとを含む。(ICGを含まない空リポソーム粒子を調製するステップ) 以下に、本実施形態に係る粒子の製造方法の非限定的な例を挙げる。(空リポソーム粒子の製造例)(リポソームの調製方法) リポソームは、公知のリポソーム製造方法により調製することができる。公知の技術としては、Banghamらの方法、その変法、超音波処理法、エタノール注入法、コール酸(界面活性剤)法、凍結融解法、逆相蒸発法、ならびに市販のキットを用いた方法などが挙げられ、これら公知の方法により調製されるリポソームを本発明に供することができる。すなわち、リポソーム調製時あるいは後にICGを内包化させることができる。 リポソームの製造方法の好ましい例は、Banghamらにより報告されたリポソーム作製方法に従うものである。すなわち、リン脂質などのリポソームの原料を有機溶媒に溶解、混合して、有機溶媒を減圧下で除去して脂質を乾固させ、これを水系媒体で分散させ、超音波照射により均一化させることでリポソームを形成させるものである。その後、リポソーム溶液を加温あるいは超音波処理することもできる。 以下、ICGを内包するリポソームの製造例を挙げる。リン脂質などのリポソームの原料を有機溶媒に溶解、混合し、有機溶媒を減圧下で除去して溶質を乾固させる。これを中性緩衝液で分散させ、超音波照射により均一化させることでリポソームを形成させることにより、リポソーム内部に中性緩衝液を含むリポソームを調製する。その後、リポソーム外側の緩衝液を酸性緩衝液に置換することにより、リポソーム内側が中性、外側が酸性のpH勾配を持ったリポソーム分散液を調製する。得られたリポソーム分散液に酸性緩衝液に溶解したICG溶液を添加し、原料リン脂質の転移温度以上で30分間加温撹拌することによりJ会合体化したICGがリポソームに内包されてしまう。 ICGを酸性緩衝液であるpH3のクエン酸バッファ中で60℃加熱するとJ会合体化することが原因である。 pH勾配を利用した薬剤のリポソームへの内包方法は、塩基性薬剤のリポソーム内への内包に有効である。しかしICGは酸性薬剤であるため、本願発明者らはこれとは逆のpH勾配をもつリポソームの調製を試みた。この条件でICGを内包させたところ、内包されたICGがほとんどJ会合体化することがわかった。 J会合体化は反応速度論で説明することができ、反応速度には濃度と反応温度および触媒がパラメータとなる。 すなわち、ICGのJ会合体化はICG濃度と加熱温度およびリン脂質やクエン酸や水素イオンなどが正触媒として機能すると思われる。なお、本発明の尿素はJ会合体化を抑制するため負触媒として機能すると考えることもできる。(ICGを内包させたリポソーム粒子を調製するステップ) 本願発明者らは、上記、公知のpH勾配法をさらに改良することにより、ICGを単量体としてリポソーム内へ高濃度に内包させることに成功した。 すなわち、ICGの調製方法は、ICGの酸性緩衝液(ICG濃度=1.5mM)に100mM濃度となるよう尿素を添加することで加熱してもJ会合体化しにくいICGの水溶液を調製することができる。得られたICGの水溶液を外水相として、上記の公知のICGを含まない空リポソーム粒子を調製するステップで得た空リポソーム調製後に内包化させることで、本発明の粒子を得られる。 内包化処理は上記したリポソーム外側の緩衝液を本発明の尿素を含む酸性緩衝液に置換してリポソーム内側が中性、外側が酸性のpH勾配を持ったリポソーム分散液に、上記ICG水溶液を添加し60℃で30分以上加熱撹拌する。 上述したように、本発明において、尿素はJ会合体化を抑制するため負触媒として機能すると考えることができる。 なお、尿素は触媒として機能するため、尿素濃度に比例することはなく、図4の実験結果からわかるように一定濃度以上を添加していれば効果は同じであると思われる。図4の実験結果から本発明において1mM以上、特に10mM以上の尿素濃度であることが好ましい。 このようにしてICGが内包されたリポソームを遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、限外ろ過などにより精製することで本発明のリポソームが調製される。本発明のICGを内包するリポソームの調製において重要なポイントは、ICGを内包させるためのICGの高濃度環境かつ加温によるリポソーム相転移のふたつである。 溶液中のICGの濃度は少なくとも0.1mM以上、好ましくは1.0mM以上であり、加温は少なくとも20℃、好ましくは37℃以上、さらに好ましくは65℃以上である。しかし、90℃では色素の分解が促進されることから、好ましい加温温度範囲は、37℃から65℃である。(造影剤) 本実施形態に係る粒子はICGを含んでおり、近赤外光を吸収して蛍光又は音響波を発することができるため、蛍光イメージング用又は光音響イメージング用の造影剤として用いることができる。また、ICGは緑色であるため、目視で検出するための造影剤としても使用できる。 ここで、本明細書において「造影剤」とは、主に、検体内にあって観察したい組織や分子とその周囲の組織や分子とのコントラスト差を生じさせ、当該観察したい組織や分子の形態情報あるいは位置情報の検出感度を向上させることができる物質と定義する。ここで「蛍光イメージング」や「光音響イメージング」とは、上記の組織や分子を蛍光検出装置あるいは光音響信号検出機装置などによって、イメージングすることを意味する。 本実施形態に係る造影剤は、本実施形態に係る粒子及び前記粒子が分散された分散媒を有する。分散媒は、本実施形態に係る粒子を分散させるための液状の物質であり、例えば生理食塩水、注射用蒸留水などが挙げられる。また、造影剤は、食塩やグルコースなどの薬理上許容できる添加物を有していても良い。本実施形態に係る造影剤は、上記本実施形態に係る粒子をこの分散媒に予め分散させておいてもよいし、本実施形態に係る粒子と分散媒とをキットにしておき、生体内に投与する前に粒子を分散媒に分散させて使用してもよい。(蛍光イメージング法) 本実施形態に係る造影剤は、蛍光イメージング法に用いることもできる。本実施形態に係る造影剤を用いた蛍光イメージング法は、本実施形態に係る造影剤を検体もしくは前記検体から得られる試料に投与する工程と、前記検体もしくは前記検体から得られる試料に光を照射する工程と、前記検体内もしくは前記検体から得られる試料内に存在する前記粒子由来物質の蛍光を測定する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。 本実施形態に係る造影剤を用いた蛍光イメージング法の一例は以下の通りである。すなわち、本実施形態に係る造影剤を検体に投与し、あるいは前記検体より得られた臓器等の試料に添加する。なお、前記検体とは、実験動物やペット等、その他、特に限定されることなく、あらゆる生物を指し、前記検体中もしくは検体より得られた試料としては、臓器、組織、組織切片、細胞、細胞溶解物などを挙げることができる。前記粒子の投与あるいは添加後、前記検体等に対し近赤外波長域の光を照射する。 イメージングは、市販の蛍光イメージング装置IVIS (IVIS(登録商標) Lumina Imaging Systemなど)を用い、ICGフィルターを使って行うことができる。 上述したように、光イメージング装置はこの波長範囲を使うよう設計されているものが多く、IVISもICG単量体の吸収波長780nmには対応している(フィルタセット4のExcitation Passband705−780nm)。 また、IVIS(登録商標) Lumina Imaging SystemのスペックシートによればQuantum Efficiency は >85% at 500 700 nm, >30% at 400 900 nmとあるように、J会合体の吸収波長では装置の感度が低下することが知られている。 本実施形態に係る光音響イメージング法において、照射される光の波長は使用するレーザー光源により選択することが可能である。本実施形態に係る蛍光イメージング法においては、効率良く音響信号を取得するために、生体内における光の吸収、拡散の影響が少ない「生体の窓」と呼ばれる600nm乃至1300nmの、近赤外光領域の波長の光を照射することが好ましい。 本実施形態に係る造影剤からの蛍光を蛍光検出器で検出し、電気信号に変換することができる。この蛍光検出器より得られた電気信号に基づき、前記検体等の内の吸収体の位置や大きさを計算することができる。例えば、造影剤が基準とする閾値以上で検出されれば、その検体に前記粒子由来物質が存在すると推定され、又は、前記検体より得られた試料に前記粒子由来の物質が存在すると推定することができる。 本実施形態に係る造影剤を検体に投与した場合、リンパ節、特にがん原発巣からリンパ管に流入したがん細胞が最初に到達するセンチネルリンパ節を好適に検出することできる。この場合、腫瘍内あるいは腫瘍周辺にリンパ節用造影剤を注射し、注射後の適切な時間に造影剤の検出を行う。(光音響イメージング方法) 本実施形態に係る造影剤は、光音響イメージング法に用いることができる。なお、本明細書において、光音響イメージングは、光音響トモグラフィー(断層撮影法)を含む概念である。本実施形態に係る造影剤を用いた光音響イメージング法は、本実施形態に係る造影剤を検体もしくは前記検体から得られる試料に投与する工程と、前記検体もしくは前記検体から得られる試料にパルス光を照射する工程と、前記検体内もしくは前記検体から得られる試料内に存在する前記粒子由来物質の光音響信号を測定する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。 本実施形態に係る造影剤を用いた光音響イメージング法の一例は以下の通りである。すなわち、本実施形態に係る造影剤を検体に投与し、あるいは前記検体より得られた臓器等の試料に添加する。なお、前記検体とは、実験動物やペット等、その他、特に限定されることなく、あらゆる生物を指し、前記検体中もしくは検体より得られた試料としては、臓器、組織、組織切片、細胞、細胞溶解物などを挙げることができる。前記粒子の投与あるいは添加後、前記検体等に対し近赤外波長域のレーザーパルス光を照射する。 本実施形態に係る光音響イメージング法において、照射される光の波長は使用するレーザー光源により選択することが可能である。本実施形態に係る光音響イメージング法においては、効率良く音響信号を取得するために、生体内における光の吸収、拡散の影響が少ない「生体の窓」と呼ばれる600nm乃至1300nmの近赤外光領域の波長の光、特に700nm乃至900nmの波長の光を照射することが好ましい。 本実施形態に係る造影剤からの光音響信号(音響波)を、音響波検出器、例えば圧電トランスデューサで検出し、電気信号に変換する。この音響波検出器より得られた電気信号に基づき、前記検体等の内の吸収体の位置や大きさ、あるいはモル吸光係数などの光学特性値分布を計算することができる。例えば、造影剤が基準とする閾値以上で検出されれば、その検体に前記粒子由来物質が存在すると推定され、又は、前記検体より得られた試料に前記粒子由来の物質が存在すると推定することができる。 本実施形態に係る造影剤を検体に投与した場合、リンパ節、特にがん原発巣からリンパ管に流入したがん細胞が最初に到達するセンチネルリンパ節を好適に検出することできる。この場合、腫瘍内あるいは腫瘍周辺にリンパ節用造影剤を注射し、注射後の適切な時間に造影剤の検出を行う。 本発明では、色素の漏出を抑制することで、色素の集積による消光を起こさせ、照射されたパルス光のエネルギーが蛍光発光に用いられることを防ぎ、より多くの熱エネルギーに変換することができる。そのため、より効率的に音響信号を取得することが可能となる。 以下の実施例でICGを含む粒子を作製する際に用いる具体的な試薬や反応条件を挙げているが、これらの試薬や反応条件は、変更が可能であり、それらの変更は本発明の範囲に包摂されるものとする。したがって以下の実施例は、本発明の理解を助けることが目的であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。(実施例1) ICGのJ会合体の形成例ならびにJ会合体の抑制効果例を以下に記す。 1.5mMのインドシアニングリーン(ICG、日本公定書協会製)および、100mM以下の各種濃度の尿素を含む水溶液を60℃で30分加熱した前後のスペクトルシフトを、各100mM以下の尿素濃度で測定した結果一覧を図4に示した。また、1.5mMのインドシアニングリーン(ICG、日本公定書協会製)およびクエン酸を含み、かつ、尿素を含まない水溶液を60℃30分加熱した前後のスペクトルシフトを各10mM以下のクエン酸濃度で測定した結果一覧を図5に、それぞれ示す。 図4および図5は添加物濃度系列による波長シフトの結果を示した図である。図4、図5の左端のマスはICGを含まない、添加物のみの吸収スペクトルで、各マスの横軸は波長で左端が500nm、右端が950nmであり、縦軸は吸光度でスケールは任意である。ここでいう添加物は、尿素のことである。 2段になっているマスの上段は加熱前で下段は加熱後の吸収スペクトルを示す。 左端のマスはICGを含まないブランクであって、左端から2マス目は1.5mMのICGに100mM添加物を加えた溶液の吸収スペクトルで、上段と下段は加熱前後を表わす。左端から3マス目は2マス目の半分の濃度の添加物を加えた溶液で、以下同様にICGは1.5mMのまま添加物濃度のみを半分ずつ減じた溶液の加熱前後のスペクトルを示す。 ICGのJ会合体は895nmの吸収ピークを示す為、この有無でJ会合体化の抑制効果を確認することができる。 図4のαで示される濃度範囲では、尿素の濃度が低いため、ICGのJ会合体化が抑制されない。また、図5のβで示される範囲は、尿素を添加しないため、ICGのJ会合体化が抑制されない。 また、非特許文献2でICGがJ会合体化する条件を再現するために、60℃で30分加熱した前後のスペクトルシフトをICG水溶液1.5mM以下のICG濃度で測定した結果を図6に示す。 図6は左端のマスはICGを含まない水だけの吸収スペクトル、左端から2マス目は1.5mM ICG水溶液で上段と下段は加熱前後を表わし、3マス目は2マス目の半分の濃度のICG水溶液、以下同様にICG濃度を半分ずつ減じた溶液の加熱前後のスペクトルを示す。 各マスの横軸は波長で左端が500nm、右端が950nmであり、縦軸は吸光度でスケールは任意である。 図4で示すように、1.5mM ICG水溶液に100mM尿素を添加すると加熱前後で吸収ピーク波長が変化せずJ会合体化を抑制し、尿素濃度6.25mM前後までJ会合体の形成を抑制している効果がある。 同時にICGのH会合体は700nm波長付近に吸収を持つことが知られているが、尿素添加するとH会合体の形成も抑制されている。 なお、尿素が希薄になるとICGは加熱後にJ会合体を形成し895nm付近に吸収ピークを持つため、J会合体化の抑制が有効な尿素濃度範囲がわかった。 一方、図5においてクエン酸中ではクエン酸濃度によらず加熱後にJ会合体を形成している。また、クエン酸濃度が12.5mMより高いときには凝集沈殿も生じているため溶液スペクトルのベースラインが低くなっている。 また図6では水溶媒においてICG濃度を1.5mM以下としているが、非特許文献2などで実験している1.5mMより低いICG濃度範囲でもJ会合体を形成し得る。 本実施例から、尿素を濃度6.25mM以上入れるとICGはJ会合体化を抑制されることがわかった。 J会合体化の抑制のメカニズムは不詳であるが、尿素が水クラスターをばらばらにするため、ICGに水和水が結合しやすくなると思われる。その結果、ICG同士が凝集するのを抑制し、加熱しても単量体のまま存在するために吸収波長シフトが起こらないと推測される。 本発明のカオトロピック剤濃度は1mM以上10M以下、特に好ましくは尿素が10mM以上1M以下であることを特徴とする。 濃度の下限は図4ならびに図5に示した尿素添加による凝集抑制効果の現われる範囲である。 一方、濃度の上限範囲について以下で説明する。 尿素の水への溶解度は107.9g/100ml(20°C)、半数致死量LD50は8500mg/kg(oral,rat)であることが知られている。静脈注射液量10ml(肝・循環機能検査用薬ジアグノグリーンと同じ液量)に尿素は10.79g溶解し、1リットル当たり1079gで尿素の分子量60.06であるから、17.9Mまで溶解する。 また、体重50kgで換算すると半数致死量LD50=8.5g/kg×50kg=425gとなるが、注射液10mlには上記したように10.79gまでしか溶解しない。 また、本発明の尿素濃度の上限値10Mを添加した10ml注射液内には600.6g×10/1000=6.006gの尿素が存在し、 体重50kgの半数致死量LD50に対して6.006g/425g=1.41×10−2であるため半数致死量LD50の約1/100の無作用量、あるいはそれ以下の濃度で十分な凝集抑制効果を得られた。(実施例2) (様々な系におけるICG含有粒子の調製と比較) 表2に示した内水相、外水相の組み合わせにより、実施例3、比較例1,2のICG含有粒子を調製した。なお、内水相とは、粒子の内側に含まれる相を指し、外水相とは、粒子の外側の相を指す。 実施例3は、外水相と内水相でpH勾配があり、なおかつ、外水相が尿素を含む例、比較例1は、pH勾配はあるものの外水相が尿素を含まない例、比較例2は、pH勾配がなく、かつ外水相が尿素を含まない例を示す。 いずれにおいても、空リポソームの調製方法は以下のとおりである。すなわち、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、COATSOME MC−8080、日本油脂製)、コレステロール(和光純薬製)、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール(DSPE−PEG、日本油脂製)をそれぞれ重量比で3:1:1に秤量した。3種の脂質の合計量102mgあたりメタノール・クロロホルム(1:1)溶液2mlに溶解し、37℃で1時間撹拌した後、溶媒留去し、さらに室温で一晩、真空乾燥した。得られた脂質乾固物(3種の脂質の合計量102mgにつき)に表2に示した内水相の溶液を10mlをそれぞれ添加し、37℃で1時間撹拌した。そして60℃で30分間、バス型超音波装置(3周波超音波洗浄器 VS−100III、アズワン製)により超音波処理(28kHz60秒→45kHz60秒→100kHz3秒のサイクルで照射)した後、ポアーサイズ0.22μm膜を通過させた。通過した空リポソーム分散液の外水相を限外ろ過(撹拌式セル、限外ろ過膜300KDa、ミリポア製)により表2に示した内水相の溶液である、HEPES 10mM, NaCl 150mM, pH 7.3にそれぞれ置換した後、濃縮し、DSPCとコレステロールの合計脂質濃度を40mg/mLに調整した。DSPCとコレステロールの定量は市販定量キット(リン脂質Cテストワコー、コレステロールE−テストワコー、和光純薬製)で行った。 HEPES 10mM, NaCl 150mM, pH 7.3は、HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピぺラジニル]−エタンスルホン酸、インビトロジェン製)を濃度10mMに10mM水酸化ナトリウムを添加してpH7.3にpH調製した緩衝液である。 クエン酸 10mM, pH3.0は、クエン酸一水和物(ナカライテスク製)とクエン酸三ナトリウム二水和物(ナカライテスク製)を溶解しpH3.0に調製した緩衝液である。クエン酸 10mM, 尿素 100mM,pH3.0は、尿素(和光純薬製)を前記クエン酸緩衝液1リットルに6g添加し濃度100mMに調製したものである。(実施例3)(外水相と内水相でpH勾配があり、なおかつ、外水相が尿素を含む系で調製されたICG含有粒子)(実施例3−1)(ICG含有粒子の調製) インドシアニングリーン(ICG、日本公定書協会製)を実施例3の外水相の溶液である、クエン酸 10mM, 尿素 100mM,pH3.0に溶解し、ICG濃度、6mg/mlとなるICG溶液を作製した。上記、実施例2で調製された空リポソームにICG溶液を添加し、以下の条件でICG内包処理したリポソームを調製した。すなわち、ICG溶液及び上記で調製された空リポソームの分散液を60℃の恒温槽中に15分置いて、それぞれ、60℃に加温した。2.5mLの空リポソーム分散液に、2.5mLのICG溶液を添加し、60℃で30分撹拌した)。その後、外水相の溶液15ml添加し、回収したリポソーム分散液にさらに、さらに外水相の溶液を注入しながら限外ろ過(限外ろ過膜300KDa)処理し、遊離のICGを除去し精製した。精製後、液量をおよそ4mlに濃縮し回収した。 ICG含有粒子はさらに精製を進めるため及び小粒径成分を回収するため、遠心分離機を用いて288000Gの加速度で20分間の遠心分離を行い、沈殿した大粒径リポソームならびに不純物を除去して上清のみを回収した。(実施例3−2)(吸収スペクトル測定) 実施例3−1で得られたICG内包化処理リポソームを実施例3の外水相の溶液で希釈し、波長500〜950nm間の吸光度を測定し、最大吸収波長及びAbs895/Abs780比を求め、粒子中のJ会合体の形成を確認した。 本実施例のICG含有粒子、すなわち、pH勾配を施し、外水相にクエン酸緩衝液と尿素を用いて調製したリポソームは、Abs895/Abs780比が0.2以下と低く、また最大吸収波長も895nm前後を示さず、ほとんど粒子内のICGはJ会合体を形成していないことが分かった(図7)。 さらに、内水相にデキストラン40や塩化ナトリウム(NaCl)を添加してもよい。(実施例3−3)(粒径測定) 実施例3−1で得られたICG含有粒子の粒径をDLS(ゼータサイザーナノ、マルバーン社製)で測定した。 本発明におけるpH勾配法を適用する空リポソーム1と内包・精製後のリポソームの粒径を図10に示した。本発明のICG含有粒子は100nm前後の粒径として調製できることが分かった。 なお、ICG含有粒子は小粒径成分を回収するため、遠心精製により大粒径化したリポソームや不純物を除去したため、平均粒径および粒径分布が空リポソームより若干小さくなっている。(比較例1)外水相と内水相でpH勾配があるが外水相が尿素を含まない系で調製されたICG含有粒子(比較例1−1)(ICG含有粒子の調製)外水相として、表2で示される比較例1用のものを用いたほかは、実施例3−1と同様の処理により、ICG含有粒子を調製した。(吸収スペクトル測定) 得られたICG含有粒子の780nmと895nmの吸光度を測定した。表5にAbs895とAbs780、Abs895/Abs780を示した。 本比較例において、pH勾配を施した、外水相に尿素を含まずクエン酸緩衝液のみを用いて調製したリポソームは図8で示したように、Abs895/Abs780比が2以上と高く、また880nm乃至910nmに吸光度の極大を示したことにより、J会合体ICGを内包したリポソームが調製されたことがわかった。(比較例2)(外水相と内水相でpH勾配がなく、かつ、外水相が尿素を含まない系で調製されたICG含有粒子)(比較例2−1)(ICG含有粒子の調製)外水相として、表2で示される比較例2用のものを用いたほかは、実施例3−1と同様の処理により、ICG含有粒子を調製した。(吸収スペクトル測定) 本比較例で調製された粒子は、図7で示した本発明と同様、Abs895/Abs780比が0.2以下と低く、また最大吸収波長も895nm前後を示さず、ほとんどリポソーム内のICGはJ会合体を形成していないことが分かった(図9)。 表3はpH勾配を施した場合とpH勾配を施さない場合とのICG含有粒子の物性値を比較したものである。 pH勾配を施さない場合、ICG内包率が低い粒子であることは表3におけるpH勾配なしのICG回収率および含有率で示したとおりであり、ICG含有率を高めるためにはpH勾配を施す必要があることは明らかである。 表3の例ではpH勾配ありはpH勾配なしに比較して5.7〜6.0倍の濃縮効果が得られている。(実施例3)(光音響信号の測定) 実施例2で得たICG含有粒子の光音響信号の強度を測定した。比較例としてICG水溶液も同様に測定した。光音響信号の計測は、パルスレーザー光をサンプルに照射し、サンプルから光音響信号を圧電素子を用いて検出し、高速プリアンプで増幅後、デジタルオシロスコープで取得した。具体的な条件は以下の通りである。光源として、チタンサファイアレーザ(Lotis社製)を用いた。波長は780nmあるいは895nm、エネルギー密度は12mJ/cm2、パルス幅は20ナノ秒、パルス繰返しは10Hzの条件とした。超音波トランスデューサとしては、型式V303(Panametrics−NDT社製)を用いた。中心帯域は1MHz、エレメントサイズはφ0.5、測定距離は25mm(Non−focus)、アンプは+30dB(超音波プリアンプ Model 5682 オリンパス社製)の条件である。測定容器としては、ポリスチレン製キュベットで、光路長0.1cm、サンプル容量は約200μlであった。溶媒は水を用いた。計測器は、DPO4104(テクトロニクス社製)を用いて、トリガー:光音響光をフォトダイオードで検出、Data acquisition:128回(128パルス)平均の条件で測定を行った。 波長は780nmにおける光音響信号測定の結果、本実施例1のICG含有粒子はICG水溶液に比較して、1.7倍の光音響信号を発生することが分かった。 インドシアニングリーンと、粒子を、1mM以上10M以下のカオトロピック剤を含む溶液中で混合する工程を有することを特徴とするインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。 前記カオトロピック剤を含む溶液は、6.25mM以上のカオトロピック剤を有することを特徴とする請求項1に記載のインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。 前記カオトロピック剤を含む溶液は、100mM以下のカオトロピック剤を有することを特徴とする請求項1または2に記載のインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。 インドシアニングリーンと、粒子を、1mM以上10M以下のカオトロピック剤を含む溶液中で混合する工程において、インドシアニングリーンが溶解したカオトロピック剤を含む溶液と、粒子とを混合することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。 前記カオトロピック剤が尿素、グアニジン、ヨウ素、あるいはこれらのイオンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。 前記カオトロピック剤が尿素であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。 前記粒子がリポソームであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。 前記カオトロピック剤を含む溶液のpHが7未満であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。 インドシアニングリーンと粒子とを含むインドシアニングリーン含有粒子であって、 前記インドシアニングリーン含有粒子がさらにカオトロピック剤を有することを特徴とするインドシアニングリーン含有粒子。 前記インドシアニングリーン含有粒子の平均粒径が1000nm以下であることを特徴とする請求項9に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 前記インドシアニングリーン含有粒子の平均粒径が200nm以下であることを特徴とする請求項9または10に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 前記粒子がリン脂質を有することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 前記粒子がリポソームであることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 前記インドシアニングリーン含有粒子がさらにコレステロールを有することを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 請求項9乃至14のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子からなる光音響イメージング造影剤。 請求項9乃至14のいずれか1項に記載のインドシアニングリーン含有粒子と、前記インドシアニングリーン含有粒子を分散するための分散媒とを有することを特徴とする光イメージング用の造影剤。 【課題】蛍光イメージングや光音響イメージングの造影剤等として使用するインドシアニングリーン(ICG)含有粒子において、ICGが凝集することなく単量体のままリポソーム内に高濃度で内包させること。【解決手段】インドシアニングリーンと、粒子と、1mM以上10M以下のカオトロピック剤を含む溶液とを混合する工程を有することを特徴とするインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。【選択図】図1