タイトル: | 公開特許公報(A)_ジクロロメタンの精製方法およびそれを用いるジフルオロメタンの製造方法 |
出願番号: | 2013101207 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07C 17/389,C07C 19/03,C07C 17/20,C07C 19/08,C07B 61/00 |
大野 博基 大井 敏夫 JP 2014221727 公開特許公報(A) 20141127 2013101207 20130513 ジクロロメタンの精製方法およびそれを用いるジフルオロメタンの製造方法 昭和電工株式会社 000002004 ユニオン昭和株式会社 390016090 特許業務法人SSINPAT 110001070 大野 博基 大井 敏夫 C07C 17/389 20060101AFI20141031BHJP C07C 19/03 20060101ALI20141031BHJP C07C 17/20 20060101ALI20141031BHJP C07C 19/08 20060101ALI20141031BHJP C07B 61/00 20060101ALN20141031BHJP JPC07C17/389C07C19/03C07C17/20C07C19/08C07B61/00 300 11 OL 12 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC30 4H006AD11 4H006AD17 4H006BA14 4H006BA55 4H006BC13 4H006BC52 4H006BD10 4H006BD40 4H006BD52 4H006EA02 4H039CA51 4H039CD20 本発明は、ジクロロメタンとフッ化水素とを気相で反応させてジフルオロメタンを製造する方法、およびその原料の一つであるジクロロメタンを精製する方法に関する。 クロロフルオロカーボン類による成層圏のオゾン層破壊が深刻な問題となり、その使用が国際的に禁止され、さらに、ハイドロクロロフルオロカーボン類の生産および使用も規制の対象とされている。他方、ジフルオロメタン(CH2F2)は、塩素を含まない化合物であり、オゾン層破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数も小さく、冷凍能力にも優れていることから、代替冷媒化合物として重要視されている。 従来、このジフルオロメタンの製造方法に関しては、ジクロロメタンとフッ化水素とを気相でフッ素化触媒の存在下で反応させてジフルオロメタンを製造する方法(特許文献1)が知られている。 一方、ハイドロフルオロカーボン類の製造に於ける原料の精製方法として、特許文献2には、トリクロロエチレン中の水酸基を有する芳香族化合物である安定剤を、モレキュラーシーブを用いて除去する除去方法が開示されており、安定剤を除去することによってトリクロロエチレンとフッ化水素とを反応させる際に用いられる触媒の活性低下を防ぐことができると記載されている。 また、特許文献3には、安定剤および/または水分を含む粗塩化エチルを平均細孔径が3〜11Å程度のゼオライトおよび/または炭素質吸着剤と液相で接触させ、安定剤および/または水分を低減させる塩化エチルの精製方法および精製された塩化エチルを用いるフルオロエタンの製造方法に関する発明が開示されており、この発明により、安定剤および/または水分を簡便な方法で効率よく除去し、フルオロエタン製造の際の触媒の劣化等を防止して経済的にフルオロエタンを製造できると記載されている。特表平8−508028号公報特開平5−286875号公報国際公開2006/030656号 一般にハイドロフルオロカーボン類を製造するための原料の中には、種々の安定剤が含有されることが多い。例えば、ジフルオロメタンの原料である市販のジクロロメタンには、光、水、温度等の条件によりジクロロメタンが分解してホルムアルデヒド、塩化水素、塩化メチル等が生じるのを防ぐため、安定剤が数十〜数千ppm添加されている。しかし、安定剤は、ジクロロメタンとフッ化水素とを気相でフッ素化触媒の存在下にて反応させて目的物であるジフルオロメタンを製造する際に、前記触媒の寿命を短くしたり、副生成物の発生の原因となったりするため、除去して極力低減させなければならない。 本発明は、このような背景の下になされたものであって、ジクロロメタン中に含まれる安定剤を低減することができ、操作が容易で工業的に実施可能なジクロロメタンの精製方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ジクロロメタンとフッ化水素とをフッ素化触媒の存在下で反応させてジフルオロメタンを製造する方法であって、前記触媒の劣化および副生成物の発生を抑制し、高い収率でジフルオロメタンを得ることのできる製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意検討した結果、安定剤を含むジクロロメタンを液相状態でゼオライト類と接触させることにより安定剤を低減することができることを見出した。さらに、ジクロロメタンを、このような方法により安定剤を除去ないし低減してからフッ化水素と気相でフッ素化触媒の存在下に反応させることにより、触媒の劣化および副生成物の発生を抑制し、高い収率でジフルオロメタンを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 よって、本発明は、例えば、以下の[1]〜[11]に示される事項からなる。 [1] 2−メチル−2−ブテン、ヒドロキノンおよびレゾルシノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の安定剤を含むジクロロメタンを液相状態下で平均細孔径が3〜11Åであるゼオライト類と接触させて前記安定剤を低減させるジクロロメタンの精製方法。 [2] 前記ゼオライト類が、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ10Xおよびモレキュラーシーブ13Xからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]に記載のジクロロメタンの精製方法。 [3] 前記ジクロロメタンを液相状態下で前記ゼオライト類と接触させる際の温度が−15〜65℃である上記[1]または[2]に記載のジクロロメタンの精製方法。 [4](1)上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法によりジクロロメタンを精製する工程、および(2)前記工程(1)を経たジクロロメタンとフッ化水素とを、反応器内でフッ素化触媒の存在下、気相で反応させてジフルオロメタンを含むガスを得る工程を含むジフルオロメタンの製造方法。 [5] 前記フッ素化触媒が、酸化クロム(III)を含む触媒成分を含む、担持型または塊状型の触媒である上記[4]に記載のジフルオロメタンの製造方法。 [6] 前記フッ素化触媒が、触媒成分が活性アルミナに担持された担持型触媒であり、前記活性アルミナが、中心細孔径が50〜400Åであり、中心径±50%に分布を有する孔が70%以上を占め、細孔の容積が0.5〜1.6ml/gの範囲であり、純度が99.9質量%以上であり、かつ、ナトリウム含有量が100質量ppm以下である活性アルミナである上記[4]または[5]に記載のジフルオロメタンの製造方法。 [7](3)前記工程(2)で得られた前記ジフルオロメタンを含むガスを、液化した後、蒸留し、高沸点留分とジフルオロメタンを含む低沸点留分とに分離する工程、および(4)前記工程(3)で得られた前記低沸点留分からジフルオロメタンを精製する工程をさらに含む上記[4]〜[6]のいずれかに記載のジフルオロメタンの製造方法。 [8] 前記工程(4)が、ジフルオロメタンを水および/またはアルカリ性物質を含む処理剤に接触させて酸成分を除去する工程を含む上記[7]に記載のジフルオロメタンの製造方法。 [9] 前記工程(4)が、イオン当量比で20〜60%のナトリウムイオンがカリウムイオンにより交換されたモレキュラーシーブ3A型ゼオライト成形体を、ケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムの水溶液に浸漬させて、該成形体にシリカを付着させ、次いで該成形体を該水溶液から回収し、脱水し、活性化して得られた乾燥剤にジフルオロメタンを接触させて脱水する工程を含む上記[7]または[8]に記載のジフルオロメタンの製造方法。 [10] 前記工程(3)における蒸留が、0.1〜5MPaの圧力範囲内で行われる上記[7]〜[9]のいずれかに記載のジフルオロメタンの製造方法。 [11] 前記工程(3)の後に前記工程(2)および前記工程(3)を繰り返すジフルオロメタンの製造方法であって、前記工程(3)の後の前記工程(2)において前記高沸点留分を前記反応器に供給する、上記[7]〜[10]のいずれかに記載のジフルオロメタンの製造方法。 本発明に係るジクロロメタンの精製方法によれば、ジクロロメタン中に含まれる安定剤を簡便に効率よく低減、除去してジクロロメタンを精製することができ、また、本発明に係るジフルオロメタンの製造方法によれば、触媒の劣化および副生成物の発生を抑制し、高い収率でジフルオロメタンを製造することができる。得られたジフルオロメタンは冷媒やエッチングガスとして使用することができる。 以下、本発明について詳しく説明する。 [ジクロロメタンの精製方法] 本発明のジクロロメタンの精製方法は、ジクロロメタン、より詳細には安定剤を含むジクロロメタン(以下「粗ジクロロメタン」ともいう。)を液相状態下でゼオライト類と接触させて前記ジクロロメタンに含まれる安定剤を低減させることを特徴としている。 ジフルオロメタン(CH2F2)製造用の原料である市販のジクロロメタンには、水、温度や光等による分解等を防止し長期間の安定性を保つための安定剤として2−メチル−2−ブテン、ヒドロキノンやレゾルシノール等が一般的に添加されている。その添加量は、数百〜数千質量ppmである。また、ジクロロメタンには、水分が数十〜数百質量ppm含まれている。 ジクロロメタンをフッ素化触媒の存在下でフッ化水素と反応させてジフルオロメタンを製造する際に、前述の安定剤は、製造上重要なフッ素化触媒に悪影響(フッ素化触媒の活性の低下、短寿命化等)を与え、また、好ましくない微量の副生成物の発生等を引き起こすため、極力少ないことが望まれ、ジクロロメタンとフッ化水素との反応の工程に導入されないことがさらに望まれる。また、水は、ジフルオロメタンを製造する際に、ジクロロメタンを加水分解させて好ましくない副生成物を発生させる原因となり、さらに反応装置の材料の腐食等を引き起こすため、極力少ないことが好ましい。例えば、安定剤および水の合計量としては、20質量ppm以下が好ましく、15質量ppm以下がさらに好ましく、10質量ppm以下が最も好ましい。 前記ゼオライト類の平均細孔径は3〜11Åであり、好ましくは3〜10Åである。この平均細孔径の測定方法としては、Arガスを用いるガス吸着法が挙げられる。平均細孔径が上記範囲にあると、ゼオライトは、ジクロロメタンの吸着を抑えつつ、安定剤および水に対して高い吸着能力を発揮する。また、前記ゼオライト類のシリカ/アルミナ比(すなわち、ゼオライト類を構成するSiO2およびAl2O3のモル比)は3以下であることが好ましい。前記ゼオライト類としては、モレキュラーシーブ3A(MS−3A)、モレキュラーシーブ4A(MS−4A)、モレキュラーシーブ5A(MS−5A)、モレキュラーシーブ10X(MS−10X)およびモレキュラーシーブ13X(MS−13X)が好ましい。 粗ジクロロメタンをゼオライト類と液相で接触させる方法としては、回分式または連続式の方法を用いることができる。 本発明のジクロロメタンの精製方法を工業的に実施する場合には、前記ゼオライト類を固定床にて連続的に流通させる方法が好ましく、また、粗ジクロロメタンの液体基準の空間速度(LHSV)は、安定剤や水の濃度および粗ジクロロメタンの処理量により適宣選択できるが、通常は1〜80Hr-1の範囲が好ましい。また、本発明のジクロロメタンの精製方法を工業的に実施する場合には、前記ゼオライトを吸着剤とする吸着塔を2塔設け、2塔を切り替えて連続的に精製を行う方法を用いることが好ましい。 粗ジクロロメタンを液相でゼオライト類と接触させる際の温度は、好ましくは−15〜65℃であり、より好ましくは2〜55℃である。温度が上記範囲にあると、ジクロロメタンの分解反応を抑制しつつ、かつ吸着容器(吸着装置)の耐圧性を特別に高めたり、水の固結等を防止する装置を設けたりすることなく、ジクロロメタンを精製することができる。 また、圧力は0.05〜1MPaの範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜0.6MPaの範囲がよい。圧力が上記範囲にあると、吸着容器(吸着装置)の耐圧性を特別に高めることなくジクロロメタンを精製することができる。 安定剤を含むジクロロメタンを前記のゼオライト類と液相で接触させることにより、不純物の総量(安定剤および水の合計量)が20質量ppm以下に、より好ましくは15質量ppm以下に、さらに好ましくは10質量ppm以下に低減されたジクロロメタンを得ることができる。 [ジフルオロメタンの製造方法] 次に本発明のジフルオロメタンの製造方法について説明する。 本発明のジフルオロメタンの製造方法は、次の工程を含むことを特徴とする。(1)上述した本発明のジクロロメタンの精製方法によりジクロロメタンを精製する工程、および(2)前記工程(1)を経たジクロロメタンとフッ化水素とを、反応容器内でフッ素化触媒の存在下、気相で反応させてジフルオロメタンを含むガスを得る工程。 前記工程(1)を経てから、前記工程(2)を実施すると、前記工程(2)で使用されるフッ素化触媒の劣化を抑制し(フッ素化触媒を長寿命化し)、副生成物の発生を抑制して、ジフルオロメタンの収率を向上させ、より効率的かつ経済的にジフルオロメタンを製造することができる。工程(2)で得られるジフルオロメタンを含むガスは、主としてジフルオロメタンを含んでおり、さらに副生成物である塩化水素、クロロフルオロメタン、未反応のジクロロメタン、フッ化水素などの不純物を含む場合がある。 前記フッ素化触媒としては、酸化クロム(III)を主成分とし、任意にIn、Zn、Ni、Co、MgおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含む触媒成分(以下「触媒成分a」ともいう。)を含む、担持型または塊状型の触媒が好ましい。前記触媒成分aを含む担持型触媒において、担持型触媒全体に占める酸化クロム(III)の割合は、好ましくは10〜30質量%である。 前記フッ化触媒の担体としては、中心細孔径が50〜400Å、中心径±50%に分布を有する孔が70%以上を占め、細孔の容積が0.5〜1.6ml/gの範囲であり、純度が99.9質量%以上であり、かつ、ナトリウム含有量が100質量ppm以下である活性アルミナが好ましい。 前記フッ素化触媒としては、前記触媒成分aが前記活性アルミナに担持されてなる担持型触媒(以下「触媒b」ともいう。)がより好ましい。前記触媒bにおける前記触媒成分aの担持率(触媒成分aの質量/触媒bの質量)は、好ましくは10〜30質量%である。 また、これらのフッ素化触媒としては、少なくとも一部がフッ化水素等によりフッ素化処理(すなわち、触媒の活性化)されたものが好ましい。 前記工程(2)における反応の際の温度範囲は、好ましくは170℃〜350℃であり、より好ましくは200〜330℃である。反応温度が上記範囲にあると、副生成物の発生や触媒の劣化を抑え、高い反応収率でジフルオロメタンを製造することができる。 反応原料であるフッ化水素とジクロロメタンとのモル比(HF/CH2Cl2)は、好ましくは3〜30の範囲にあり、より好ましくは5〜20の範囲にある。モル比が上記範囲にあると、副生成物の発生を抑えて高い選択率で、かつ経済的にジフルオロメタンを製造することができる。 反応原料供給容積速度(F)の反応器触媒容積(V)に対する比の値である空間速度(SV)は50〜100000h-1である。 反応の際の圧力範囲は、好ましくは0.1〜1.0MPaであり、より好ましくは0.1〜0.7MPaである。圧力が上記範囲にあると、反応容器(反応装置)の耐圧性を特別に高めることなく、容易な操作でかつ経済的にジフルオロメタンを製造することができる。 本発明のジフルオロメタンの製造方法は、さらに、(3)前記工程(2)で得られた前記ジフルオロメタンを含むガスを、液化した後、蒸留し、高沸点留分とジフルオロメタンを含む低沸点留分とに分離する工程、および(4)前記工程(3)で得られた前記低沸点留分からジフルオロメタンを精製する工程を含んでいてもよい。 本発明のジフルオロメタンの製造方法が前記工程(3)および工程(4)を含むと、純度の高いジフルオロメタンを得ることができる。 前記工程(3)における蒸留を蒸留塔で実施する場合であれば、前記工程(2)で得られた前記ジフルオロメタンを含むガスを蒸留塔に導入する方法としては、たとえば、前記ガスを冷却し、ポンプで蒸留塔に導入する方法、前記ガスをコンプレッサーを用いて蒸留塔に導入する方法が挙げられる。設備費、操作等を考慮すると、前記ガスを冷却し、ポンプで蒸留塔に導入する方法が好ましい。蒸留塔の操作圧力は、経済性、操作性の観点から、好ましくは0.1〜5MPaであり、より好ましくは0.3〜3MPaである。 本発明のジフルオロメタンの製造方法では、2つの蒸留塔を用い、まず工程(3)において、前記工程(2)で得られた前記ジフルオロメタンを含むガス、すなわち主成分であるジフルオロメタンおよび不純物を含むガスを、冷却し液化した後、第一蒸留塔に導入して、蒸留塔の塔頂より主として目的物であるジフルオロメタンを含み、さらに副生成物である塩化水素を含む留分(塔頂留分)を抜き出し、工程(4)においてこの塔頂留分を第二蒸留塔に導入して塔頂より塩化水素を抜き出し、塔底より目的物であるジフルオロメタンを回収してもよい。 前記工程(3)を経たジフルオロメタン、具体的には、前記低沸点留分中のジフルオロメタン、あるいは第二蒸留塔を使用する場合であれば、第二蒸留塔の塔底留分であるジフルオロメタンの中には微量の酸分(HFやHCl等)が含まれるため、好ましくは、ジフルオロメタンを水および/またはアルカリを含む処理剤と接触させて、酸分を除去する。アルカリを含む処理剤としては、アルカリ水溶液、およびアルカリを含む固体材料(たとえば、ソーダライム)が挙げられる。酸分の除去処理後のジフルオロメタン中の酸分濃度は、好ましくは1.0質量ppm以下である(測定:イオンクロマトグラフ)。 酸分の除去処理が施されたジフルオロメタンが水分を含有する場合には、好ましくはジフルオロメタンの脱水(乾燥)工程が設けられる。 この脱水(乾燥)工程で、脱水剤としてモレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4Aまたはモレキュラーシーブ5Aを用いると、ジフルオロメタンは、分子径が小さいためこれらの脱水剤に吸着され、吸着熱等により分解されてしまう。この問題を解決するため、脱水剤(乾燥剤)としては、イオン当量比で20〜60%のナトリウムイオンがカリウムイオンにより交換されたモレキュラーシーブ3A型ゼオライト成形体を、ケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムの水溶液に浸漬させて、該成形体にシリカを付着させ、次いで該成形体を該水溶液から回収し、脱水、活性化して得られる脱水剤(乾燥剤)が好ましい。この脱水剤(乾燥剤)を用いて脱水(乾燥)されたジフルオロメタン中の水分濃度は、好ましくは10質量ppm以下である(測定:カールフィシャー法)。 前記工程(3)で得られた前記高沸点留分には、ジフルオロメタンの原料のジクロロメタン、フッ化水素、中間体であるクロロフロオロメタンなどが含まれる。本発明のジフルオロメタンの製造方法では、前記工程(3)の後に前記工程(2)および前記工程(3)を繰り返し、前記工程(3)の後の前記工程(2)において、前記高沸点留分を前記反応器に供給してもよい。 前記高沸点留分を前記反応器に供給する際には、前記高沸点留分をそのまま供給してもよく、前記高沸点留分に含まれる特定の成分のみを供給してもよい。 以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。 [原料例1] 市販のジクロロメタン(安定剤入り)をガスクロマトグラフにて分析したところ、ジクロロメタン中の2−メチル−2−ブテン(慣用名:イソアミレン)含有量は318質量ppmであった。なお、p−ヒドロキノンおよび水は、無添加であった。 [原料例2] 市販のジクロロメタン(安定剤入り)をガスクロマトグラフでp−ヒドロキノンの量を、カールフィシャー法で水の量を分析したところ、ジクロロメタン中のp−ヒドロキノンの量は272質量ppm、水の量は129質量ppmであった。なお、2−メチル−2−ブテンは、無添加であった。 <ジクロロメタンの精製方法> [実施例1] 内容積100mlのステンレス製容器に、モレキュラーシーブ5A(ユニオン昭和株式会社製:平均細孔径4.2Å、シリカ/アルミナ比=2.0)を20g充填し、真空乾燥後、容器を冷却しながら、原料例1のジクロロメタンを80g充填し、室温(約23℃)に保ちながら時々撹拌し、ジクロロメタンの充填から約7時間後、液相の一部を採取して、ガスクロマトグラフで分析した。その結果、ジクロロメタン中の2−メチル−2−ブテンの量は、1質量ppm(検出下限:0.5質量ppm)にまで低減されていた。 [実施例2] 内容積100mlのステンレス製容器に、モレキュラーシーブ5A(ユニオン昭和株式会社製:平均細孔径4.2Å、シリカ/アルミナ比=2.0)を30g充填し、真空乾燥後、容器を冷却しながら、原料例2のジクロロメタンを70g充填し、室温(約25℃)に保ちながら時々撹拌し、ジクロロメタンの充填から約7時間後、液相の一部を採取して、ガスクロマトグラフおよびカールフィシャー法で分析を行った。その結果、p−ヒドロキノンの量は、1質量ppm(検出下限:0.5質量ppm)にまで低減されており、水の量は4質量ppm(検出下限:0.5質量ppm)にまで低減されていた。 [実施例3] 内容積200mlのステンレス製容器に、モレキュラーシーブ13X(ユニオン昭和株式会社製:平均細孔径10Å、シリカ/アルミナ比=2.5)を30gとモレキュラーシーブ3A(ユニオン昭和株式会社製:平均細孔径3Å、シリカ/アルミナ比=2.0)を15g充填し、真空乾燥後、容器を冷却しながら、原料例2のジクロロメタンを120g充填し、温度を10℃に保ちながら時々撹拌し、ジクロロメタンの充填から約7時間後、液相の一部を採取して、ガスクロマトグラフおよびカールフィシャー法で分析を行った。その結果、p−ヒドロキノンの量は、1質量ppmにまで低減されており、水の量は3質量ppmにまで低減されていた。 <ジフルオロメタンの製造方法> [触媒調製例1] フッ素化触媒の担体として、中心細孔径が50〜400Åであり、中心径±50%に分布を有する孔が70%以上を占め、細孔の容積が0.5〜1.6ml/gの範囲で製造された、純度99.9質量%以上で、かつ、ナトリウム含有量が100質量ppm以下である活性アルミナ(日揮ユニバーサル(株)、商品名:NST−7)を使用した。 塩化クロム(CrCl3・6H2O)191.5gを、純水132mlに投入し、湯浴上で70〜80℃に加熱して溶解した。得られた溶液を室温まで冷却後、上記の活性アルミナ400gを前記溶液に浸漬して、活性アルミナに前記溶液を全量吸収させた。次いで、濡れた状態の活性アルミナを90℃の湯浴上で乾固させ、さらに空気循環型の熱風乾燥器内で3時間乾燥させた。得られた乾燥物を、インコネル製反応器に充填し、常圧下、330℃で、窒素希釈したフッ化水素気流中で、次いで100%フッ化水素気流中でフッ素化処理(触媒の活性化)し、フッ素化触媒1を得た。 [触媒調製例2] 塩化クロム191.5gに替えて塩化クロム191.5gおよび塩化亜鉛(ZnCl2)16.57gを用いて溶液を調製した以外は触媒調製例1と同様にして、フッ素化触媒2を得た。 [実施例4、5および比較例1] (実施例4) 内径2.54cm、長さ1mのインコネル600型反応器に、触媒調製例1で調製した触媒(フッ素化触媒1)80mlを充填し、窒素ガスを流しながら反応器内の温度を250℃に、圧力を0.3MPaに保持した。その後、反応器内にフッ化水素を72.85NL/hrで供給し、窒素ガスの供給を停止した後、スケールアップしたこと以外は実施例1と同様な操作で得られたジクロロメタンを気化させてから6.10NL/hrで供給し、ジクロロメタンとフッ化水素との反応を開始した。反応開始から約8時間後に、反応器出口のガスを、アルカリ水溶液と接触させて酸分を除去してからガスクロマトグラフにて分析した。結果を下記に示す。 CH2F2 89.9557 CH2ClF 8.1014 CH2Cl2 1.9281 その他 0.0148 (単位:体積%) その後、前記の反応を継続し、反応開始から約48時間後、反応器出口ガスを、アルカリ水溶液と接触させて酸分を除去してからガスクロマトグラフにて分析した。結果を下記に示す。 CH2F2 90.9925 CH2ClF 8.0037 CH2Cl2 0.9886 その他 0.0152 (単位:体積%) (実施例5) 次いで、ジクロロメタンを、スケールアップしたこと以外は実施例2と同様な操作で得られたジクロロメタンに切り替えて上記と同様な反応条件で反応を継続し、ジクロロメタンの切り替えから約24時間後、反応器出口ガスを、アルカリ水溶液と接触させて酸分を除去してからガスクロマトグラフにて分析をした。結果を下記に示す。 CH2F2 91.3526 CH2ClF 7.9205 CH2Cl2 0.7119 その他 0.0150 (単位:体積%) [比較例1] 次に、ジクロロメタン(精製品)を、原料例1のジクロロメタン(未精製品)に切り替えて上記と同様な反応条件で反応を継続し、切り替え後、約48時間後、反応器出口ガス中の酸分をアルカリ水溶液で除去し、ガスクロマトゲラフにて分析をした。結果を下記に示す。 CH2F2 86.3325 CH2ClF 8.5829 CH2Cl2 5.0404 その他 0.0442 (単位:体積%) 結果から明らかなように、ジクロロメタンとして未精製品のジクロロメタンを用いた場合には目的物であるジフルオロメタンの収率が低下し、また、不純物(その他)が増加した。 [実施例6および比較例2] (実施例6) 内径2.54cm、長さ1mのインコネル600型反応器に、触媒調製例2で調製した触媒(フッ素化触媒2)80mlを充填し、窒素ガスを流しながら昇温し温度を250℃、圧力を0.3MPaに保持し、その後フッ化水素を73.85NL/hrで供給し、窒素ガスの供給を停止した後、スケールアップしたこと以外は実施例1と同様な操作で得られたジクロロメタンを6.10NL/hrで供給し、反応を開始した。反応開始から約8時間後、反応器出口ガスを、アルカリ水溶液と接触させて酸分を除去してからガスクロマトグラフにて分析した。結果を下記に示す。 CH2F2 89.1226 CH2ClF 8.4255 CH2Cl2 2.4365 その他 0.0154 (単位:体積%) (比較例2) その後、ジクロロメタン(精製品)を、原料例2のジクロロメタン(未精製品)に切り替えて上記と同様な反応条件で反応を継続し、切り替え後、約45時間後、反応器出口ガスを、アルカリ水溶液と接触させて酸分を除去してからガスクロマトグラフにて分析をした。結果を下記に示す。 CH2F2 85.8890 CH2ClF 11.0225 CH2Cl2 3.0446 その他 0.0439 (単位:体積%) 結果から明らかなように、未精製品のジクロロメタンでは目的物であるジフルオロメタンの収率が低下し、また、不純物(その他)が増加した。 [実施例7] 実施例4、5と同様の操作を行い、次いで反応器出口ガスを冷却器を備えた容器に回収し、冷却して液化させ、回収物を、蒸留装置に導入して0.65MPaの圧力下で蒸留した。蒸留装置は凝縮器を備えた理論段数20段(実段数36段)の蒸留塔であり、蒸留塔の塔頂から主として塩化水素とジフルオロメタンを回収し、塔底から高沸分の主としてフッ化水素、クロロフロオロメタン、ジクロロメタンを回収した。塔頂から回収された塩化水素およびジフルオロメタンを、温度約5℃で2%水酸化カリウム水溶液に接触させて酸分を除去した後、ジフルオロメタン中の酸分(HF+HCl)濃度をイオンクロマトグラフにて分析したところ、酸分濃度は0.7質量ppmであった。 次に、ジフルオロメタンをさらにアルカリ水溶液に接触させ、次いで乾燥剤を充填したカラムと接触させてから、カールフィシャー法によりジフルオロメタン中の水分を分析したところ、水分の量は5質量ppmであった。なお、この乾燥剤としては、カリウムイオン交換率33%、平均粒径2.1mmφのビーズ状で、ゼオライト分80%の3A型ゼオライト成形体100gを、40質量%ケイ酸ナトリウム水溶液100質量部に対して水20質量部を加えて得られた水溶液に完全に浸漬し、室温で24時間保持した後、成形体を取り出して水洗し、200℃で2時間乾燥し、さらに450℃で2時間加熱して活性化することにより得られた乾燥剤を用いた。 本発明によれば、冷媒などとして産業上重要であるジフルオロメタンの高純度品を得ることができる。 2−メチル−2−ブテン、ヒドロキノンおよびレゾルシノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の安定剤を含むジクロロメタンを液相状態下で平均細孔径が3〜11Åであるゼオライト類と接触させて前記安定剤を低減させるジクロロメタンの精製方法。 前記ゼオライト類が、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ10Xおよびモレキュラーシーブ13Xからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のジクロロメタンの精製方法。 前記ジクロロメタンを液相状態下で前記ゼオライト類と接触させる際の温度が−15〜65℃である請求項1または2に記載のジクロロメタンの精製方法。(1)請求項1〜3のいずれかに記載の方法によりジクロロメタンを精製する工程、および(2)前記工程(1)を経たジクロロメタンとフッ化水素とを、反応器内でフッ素化触媒の存在下、気相で反応させてジフルオロメタンを含むガスを得る工程を含むジフルオロメタンの製造方法。 前記フッ素化触媒が、酸化クロム(III)を含む触媒成分を含む、担持型または塊状型の触媒である請求項4に記載のジフルオロメタンの製造方法。 前記フッ素化触媒が、触媒成分が活性アルミナに担持された担持型触媒であり、前記活性アルミナが、中心細孔径が50〜400Åであり、中心径±50%に分布を有する孔が70%以上を占め、細孔の容積が0.5〜1.6ml/gの範囲であり、純度が99.9質量%以上であり、かつ、ナトリウム含有量が100質量ppm以下である活性アルミナである請求項4または5に記載のジフルオロメタンの製造方法。(3)前記工程(2)で得られた前記ジフルオロメタンを含むガスを、液化した後、蒸留し、高沸点留分とジフルオロメタンを含む低沸点留分とに分離する工程、および(4)前記工程(3)で得られた前記低沸点留分からジフルオロメタンを精製する工程をさらに含む請求項4〜6のいずれかに記載のジフルオロメタンの製造方法。 前記工程(4)が、ジフルオロメタンを水および/またはアルカリ性物質を含む処理剤に接触させて酸成分を除去する工程を含む請求項7に記載のジフルオロメタンの製造方法。 前記工程(4)が、イオン当量比で20〜60%のナトリウムイオンがカリウムイオンにより交換されたモレキュラーシーブ3A型ゼオライト成形体を、ケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムの水溶液に浸漬させて、該成形体にシリカを付着させ、次いで該成形体を該水溶液から回収し、脱水し、活性化して得られた乾燥剤にジフルオロメタンを接触させて脱水する工程を含む請求項7または8に記載のジフルオロメタンの製造方法。 前記工程(3)における蒸留が、0.1〜5MPaの圧力範囲内で行われる請求項7〜9のいずれかに記載のジフルオロメタンの製造方法。 前記工程(3)の後に前記工程(2)および前記工程(3)を繰り返すジフルオロメタンの製造方法であって、前記工程(3)の後の前記工程(2)において前記高沸点留分を前記反応器に供給する、請求項7〜10のいずれかに記載のジフルオロメタンの製造方法。 【課題】ジクロロメタン中に含まれる安定剤を低減することができ、操作が容易で工業的に実施可能なジクロロメタンの精製方法を提供すること。【解決手段】2−メチル−2−ブテン、ヒドロキノンおよびレゾルシノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の安定剤を含むジクロロメタンを液相状態下で平均細孔径が3〜11Åであるゼオライト類と接触させて前記安定剤を低減させるジクロロメタンの精製方法。【選択図】なし