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タイトル:公開特許公報(A)_ペプチドライブラリの製造方法、ペプチドライブラリ、及びスクリーニング方法
出願番号:2013100661
年次:2014
IPC分類:C12N 15/09,C40B 40/08,C40B 40/10,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

村上 裕 川上 隆史 リード,パトリック 佐々木 亨 JP 2014217352 公開特許公報(A) 20141120 2013100661 20130510 ペプチドライブラリの製造方法、ペプチドライブラリ、及びスクリーニング方法 国立大学法人 東京大学 504137912 ペプチドリーム株式会社 506269633 稲葉 良幸 100079108 大貫 敏史 100109346 江口 昭彦 100117189 内藤 和彦 100134120 小林 綾子 100120880 村上 裕 川上 隆史 リード,パトリック 佐々木 亨 C12N 15/09 20060101AFI20141024BHJP C40B 40/08 20060101ALI20141024BHJP C40B 40/10 20060101ALI20141024BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20141024BHJP JPC12N15/00 AC40B40/08C40B40/10C12Q1/68 ZC12Q1/68 A 19 OL 40 4B024 4B063 4B024AA11 4B024AA20 4B024BA80 4B024CA12 4B024HA11 4B024HA20 4B063QA13 4B063QA18 4B063QQ28 4B063QQ53 4B063QQ79 4B063QR08 4B063QR36 4B063QR48 4B063QS02 4B063QS34 4B063QS38 4B063QX01 本発明は、コドン再割当を利用したペプチドライブラリの製造方法等に関する。 リボソームディスプレイ(参考文献1、2)やmRNAディスプレイ(参考文献3、4)などのin vitroディスプレイ法を用いたペプチドセレクションは、多様性の高いペプチドライブラリから新規な機能性ペプチドを探索するための有力な手法である。in vitroディスプレイ法において、環状構造やペプチド骨格がN-アルキル化されたペプチドでライブラリを構成すると、ペプチドのタンパク質分解への耐性、細胞膜透過性、及びコンフォメーションの剛性が増大するので、細胞内の疾患関連分子やプロテアーゼ活性を有する分子を標的とする医薬品候補のスクリーニングにも有用となる。 実際、これまでにも、翻訳後に大環状化したペプチドが、in vitroペプチドセレクションに適用され(参考文献6−10)、いくつかのケースにおいて、選択された環状ペプチドは、対応する直鎖状ペプチドよりも標的タンパク質に対して高い親和性を有していることが示された(参考文献6、8、10)。また、ペプチド骨格のN-アルキル化は、ペプチドの膜透過性、及びタンパク質分解に対する耐性を高めるため、N-メチルペプチド及びペプトイドのリボソーム合成が開発されている(参考文献11-16)。 さらに、部分的にN-メチル化された大環状ペプチドライブラリがリボソーム翻訳系で作られ、mRNAディスプレイによって新規な大環状N-メチルペプチドのセレクションに用いられた(参考文献17)。大環状N-メチルペプチドでは、N-メチル化と環状構造の両方が、タンパク質分解への耐性に重要であった(参考文献17)。環状構造とN-アルキルペプチド構造の優れた薬理学的特性は、環状N-アルキルアミノ酸(cyclic N-alkyl Mino acids; CNA)が、細胞透過性、タンパク質分解耐性、及びコンフォメーションの剛性を同時に増大させる有用なビルディングブロックとなることを示す。 CNAを含むリボソーム合成ペプチドをセレクションに用いるためには、CNAのリボソーム翻訳系への適合性が重要である。細胞抽出液による翻訳系を用いた古典的なin vitroのナンセンスサプレッションでは、リボソーム翻訳機構がいくつかのCNA(図1aの2、3及び4)を基質として許容することが示された(参考文献18-20)。また、in vivoにおいては、野生型ProRSによってtRNAにチャージされたCNA(図1aの7、8及び22)がリボソームによって取り込まれることが示されている(参考文献21-23)。しかしながら、これらの方法では、内因性終結因子-1(RF1)による翻訳の終結又は天然のプロリンの取り込みと競合するため、均一な翻訳産物を再現性よく得られなかった。したがって、これらの方法は、ペプチドセレクションのための非タンパク質性CNAを含むペプチドライブラリの調製には用いることができなかった。 また、再構成された無細胞翻訳系(参考文献24-33)を用いた非タンパク質性CNAのリボソーム取り込みが、2つのグループで研究された。Forsterらは、化学酵素的にtRNAにチャージした3-トランスヒドロキシプロリン(図1Aの3)が、アラニンやフェニルアラニンと同じ効率で、共翻訳的にペプチドに取り込まれることを報告した(非特許文献1)。Forsterらはまた、CNA(プロリン及び3-トランスヒドロキシプロリン)が、直鎖N-アルキルアミノ酸(N-メチルアミノ酸及びN-ブチルアミノ酸)よりも、翻訳装置によってペプチドに取り込まれやすいことを示唆した。しかしながら、Forsterらが実際に示したのは、ペプチド中に3-トランスヒドロキシプロリンが1つ取り込まれたことのみであり、複数の非タンパク質性CNA-tRNAを含むペプチドのリボソーム翻訳は行っていない(非特許文献2)。これは、化学酵素的にtRNAをアシル化することの難しさによるものと考えられる(参考文献34-37)。 Szostakらは、4つのチアゾリジン-2-カルボン酸(図1Aの6)、チアゾリジン-4-カルボン酸(図1Aの5)、及び3,4-デヒドロプロリン(図1Aの22)を含む4つのCNAがProRS及び翻訳装置の基質となることを示した(非特許文献3、4)。チアゾリジン-4-カルボン酸は、mRNAディスプレイセレクションにおけるビルディングブロックとして用いられ、in vitroペプチドセレクション(参考文献10)における非タンパク質性CNAの有用性が示された。しかしながら、このProRS触媒によるtRNSアシル化法では、CNAはプロリンを示すコドンにおいてしか取り込まれないため、複数の異なるCNAを異なるコドンで同時に取り込むことはできなかった。また、いくつかのCNAはaaRSの基質とならないため(参考文献38)、CNAを用いた翻訳は、aaRS酵素と相性の良いCNAの数に限られた。 このように、2つのグループによる研究により、限られた種類のCNAがペプチド中に1つだけ取り込まれることが示されたものの、使用されたtRNAアシル化法の制限から、網羅的な適合性スクリーニングや、多数の異なるCNAの複数箇所での取り込みについては、これまで報告がなかった。WO2007/066627WO2012/026566Zhang, B. et al. J. Am. Chem. Soc. 129, 11316-11317 (2007).Forster, A.C. Biotechnol J 7, 835-845 (2012).Hartman, M.C., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103, 4356-4361 (2006).Hartman, M.C., et al. PLoS One 2, e972 (2007). 本発明は、任意のタンパク質性アミノ酸及び/又は非タンパク質性アミノ酸を、それぞれ任意の場所に任意の数取り込むことができるペプチドライブラリの製造方法等を提供することを課題とする。 本発明者らは、コドン再割当の際、N1N2N3(N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され、;各N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されている。)で表されるコドンに、それぞれ異なる非タンパク質性CNAを割り当て、それぞれのアンチコドンを有する16のtRNAに対応する非タンパク質性CNAをチャージし、これらを用いてN1N2N3を複数含むmRNAを翻訳したところ、ペプチドに所望の非タンパク質性CNAを所望の数取り込むことができることを確認した。 さらに、非タンパク質性CNAに限らず、16種類のN1N2N3コドンに、すべて天然とは異なる非タンパク質性アミノ酸やタンパク質性アミノ酸を割り当てて、それぞれのアンチコドンを有する16のtRNAに対応するアミノ酸をチャージし、これらを用いてN1N2N3を複数含むmRNAを翻訳しても、ペプチドに所望のアミノ酸が所望の数取り込まれることを確認した。 また、16種類のN1N2N3コドンに、すべて天然とは異なる非タンパク質性アミノ酸やタンパク質性アミノ酸を割り当てる場合、伸長tRNAはすべて同一のtRNAを用いることができることを確認し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、〔1〕tRNAとして、以下の(a)及び(b)のみを含む、翻訳系: (a) 開始tRNA;及び (b) 全長の85%以上同一の塩基配列からなる伸長tRNA;〔2〕前記(b)の伸長tRNAは、アンチコドンループ以外は全て同じ配列を有する、上記〔1〕に記載の翻訳系;〔3〕1×106以上の異なるペプチドを含むペプチドライブラリを製造することができる、上記〔1〕又は〔2〕に記載の翻訳系;〔4〕N1N2N3でコードされるアミノ酸を含むペプチドを1×106種以上含むペプチドライブラリの製造方法であって: 前記ペプチドライブラリの各ペプチドをコードするmRNAを含み、各mRNAが複数のN1N2N3を含むmRNAライブラリを調製する工程と; N1N2N3のいずれかのコドンに対するアンチコドンを有し、該コドンに対応するアミノ酸がチャージされたtRNAを加えた無細胞翻訳系で、前記mRNAライブラリの各mRNAを翻訳する工程と、を含む方法(但し、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され、;各N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されている。);〔5〕前記mRNAライブラリに含まれる各mRNAが以下の式(I)で表される、上記〔1〕に記載の方法: X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 〔式中、X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは4〜20から選択される任意の整数を表す。〕;〔6〕N1N2N3でコードされるアミノ酸を含むペプチドと、該ペプチドをコードするmRNAとの複合体を1×106種以上含むペプチド−mRNA複合体ライブラリの製造方法であって: 前記ペプチド−mRNA複合体ライブラリのペプチド部分をコードするmRNAを含み、各mRNAが複数のN1N2N3を含み、そのmRNAのORFの下流領域にピューロマイシンが結合している、ピューロマイシン結合mRNAライブラリを調製する工程と; N1N2N3のいずれかのコドンに対するアンチコドンを含み、該コドンに対応するアミノ酸がチャージされたtRNAを加えた無細胞翻訳系で、前記ピューロマイシン結合mRNAライブラリの各mRNAを翻訳し、ペプチド−mRNA複合体ライブラリを製造する工程と、を含む方法(但し、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され;N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されている。);〔7〕前記ピューロマイシン結合mRNAライブラリに含まれる各mRNAが以下の式(I)で表される、上記〔6〕に記載の方法: X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 式中、X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは4〜20から選択される任意の整数を表す;〔8〕前記N3は、1つの翻訳系内では、以下の(i)又は(ii)である、上記〔4〕から7のいずれか1項に記載の方法:(i) シトシン(C)又はウラシル(U);(ii) アデニン(A)又はグアニン(G);〔9〕前記N1N2N3が、1つの翻訳系内に16種類存在する、上記〔4〕から〔8〕のいずれか1項に記載の方法;〔10〕前記N1N2N3がコードするアミノ酸が、非タンパク質性アミノ酸を含む、上記〔4〕から〔9〕のいずれか1項に記載の方法;〔11〕前記N1N2N3がコードするアミノ酸が、すべて非タンパク質性アミノ酸である、上記〔4〕から〔9〕のいずれか1項記載の方法;〔12〕前記N1N2N3のコドンに対応するアミノ酸がチャージされたtRNAが、アンチコドンループ以外は全て同じRNA配列を有する、上記〔4〕から〔11〕のいずれか1項に記載の方法;〔13〕前記翻訳工程の後、ペプチドを大環状化する工程を含む、上記〔4〕から〔12〕のいずれか1項に記載の方法;〔14〕下記式(I)で表されるmRNAライブラリにコードされるペプチドを1×106種以上含むライブラリ: X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 〔式中、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され;各N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されており;X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは4〜20から選択される任意の整数を表す。〕;〔15〕下記式(I)で表されるmRNAライブラリにコードされるペプチドを1×106種以上含むライブラリであって、ペプチドのそれぞれが、該ペプチドをコードするmRNAとの複合体を形成している、ライブラリ: X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 〔式中、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され;各N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されており;X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは4〜20から選択される任意の整数を表す。〕;〔16〕 前記N3は、1つの翻訳系内では、以下の(i)又は(ii)である、上記〔14〕又は〔15〕に記載の方法:(i) シトシン(C)又はウラシル(U);(ii) アデニン(A)又はグアニン(G);〔17〕ライブラリを構成するペプチドが大環状を形成している、上記〔14〕から〔16〕のいずれか1項に記載のペプチドライブラリ。〔18〕 標的物質に結合するペプチドを同定するスクリーニング方法であって、 上記〔4〕から〔13〕のいずれか1項に記載の方法で製造されたペプチドライブラリ、又は上記〔14〕から〔17〕のいずれか1項に記載のペプチドライブラリと、標的物質とを接触させてインキュベートする工程と、 前記標的物質と結合したペプチドを選択する工程と、を含む方法;及び〔19〕標的物質に結合するペプチドを同定するスクリーニング方法であって、 上記〔6〕から〔13〕のいずれか1項に記載の方法で製造されたペプチド−mRNA複合体ライブラリ、又は、上記〔15〕から〔17〕のいずれか1項に記載のペプチド−mRNA複合体ライブラリに対して逆転写反応を行い、ペプチド−DNA複合体ライブラリを得る工程と、 前記ペプチド−DNA複合体ライブラリと、標的物質とを接触させてインキュベートする工程と、 前記標的物質と結合したペプチド−DNA複合体群を選択する工程と、 前記選択されたペプチド−DNA複合体群のDNAをPCR法で増幅する工程と、 前記増幅したDNAを転写してmRNAライブラリを製造し、そのmRNAのORFの下流領域にピューロマイシンを結合させてピューロマイシン結合mRNAライブラリを製造し、これを翻訳してペプチド−mRNA複合体ライブラリを製造する工程と、を含み、 前記逆転写反応を行う工程から、ペプチド−mRNA複合体ライブラリを製造する工程までを2回以上繰り返して、標的物質に親和性の高いペプチドを選択する、方法、に関する。 本発明の方法によれば、任意のタンパク質性アミノ酸及び/又は非タンパク質性アミノ酸を、それぞれ任意の場所に任意の数取り込んで、十分な多様性のペプチドライブラリを製造することができる。かかるペプチドライブラリは、疾患関連標的分子に結合する医薬品候補ペプチドを選択するために有用であり、各種のin vitroディスプレイ法にも適用できる。 非タンパク質性アミノ酸として、環状構造を有するアミノ酸や、N-アルキルアミノ酸を用いれば、タンパク質分解への耐性、細胞膜透過性、及びコンフォメーションの剛性が増大したペプチドライブラリを得られる。かかるペプチドライブラリは、細胞内の分子やプロテアーゼ活性を有する分子など、これまでのペプチドライブラリでは標的とするのが困難であった分子を標的とする医薬品候補のスクリーニングにも有用である。 また、本発明の方法によれば、ペプチドライブラリを発現させる翻訳系において、すべてのアミノ酸について、アンチコドンループ以外は同一の配列を有する伸長tRNAを用いることができるので、各tRNAの反応性が均一となり、再現性よく予定したペプチドを得ることができる。図1は、コドン再割当による、N-アルキル多環式ペプチドミメティクスのDNAプログラムされた合成に関する。図1Aは、実験に用いたCNAの化学構造を示す。1, L-proline; 2, L-pipecolic acid; 3, trans-4-hydroxy-L-proline; 4, cis-4-hydroxy-L-proline; 5, thiazolidine-4-carboxylic acid; 6, thiazolidine-2-carboxylic acid; 7, cis-4-fluoro-L-proline; 8, trans-4-fluoro-L-proline; 9, 4,4-difluoro-L-proline; 10, 3,3,-dimethyl-L-proline; 11, 1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline-3-carboxylic acid; 12, 7-hydroxy-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline-3-carboxylic acid; 13, cis-4-phenyl-L-proline; 14, trans-4-phenyl-L-proline; 15, 2-tryptoline-3-carboxylic acid; 16, O-benzyl-trans-4-hydroxy-L-proline; 17, cis-3-phenyl-L-proline; 18, 4-hydroxy-L-pipecolic acid; 19, 4-oxo-L-proline; 20, (2S,3aS,7aS)-2,3,3a,4,5,6,7,7a-octahydroindole-2-carboxylic acid; 21, (1R,3S,4S)- 2-azabicyclo[2.2.1]heptane-3-carboxylic acid; 22, 3,4-dehydro-L-proline.図1Bは、TRAPシステムにおける、様々な環状N-アルキルアミノアシル(CNA)-tRNAを用いて、ピューロマイシン(Pu)-DNAリンカーを介してmRNAにディスプレイされた完全N-アルキル多環式ペプチドミメティクスのライブラリを、鋳型mRNAを用いて合成する過程を示す。TRAPシステムにおいて、mRNA又はDNAから翻訳されたN-アルキル多環式ペプチドミメティクスは、それぞれをコードするmRNA上に自発的にディスプレイされる。図1Cは、最適条件下におけるマイクロヘリックスRNAのアミノアシル化を、Acid urea PAGEで測定した結果を示す。CNA12、15及び17は、enhanced-flexizyme(eFx)と対応するCNAシアノメチルエステルを用いてマイクロヘリックスRNAにチャージし、他のCNAは、dinitro-flexizyme(dFx)と対応するCNA 3,5-ジニトロベンジルエステルを用いてマイクロヘリックスRNAにチャージした。図2は、ペプチドの1ヶ所のみにCNAを取り込む実験の設計と結果を示す。図2Aは、mRNA 1とこれにコードされるペプチド1の配列を示す。CNAは、空きUCCコドンに割り当てられた。図2Bは、[14C]-Aspで標識して発現させたペプチドのTricine-SDS-PAGE解析の結果を示す。ペプチドは、フレキシザイムで調製した100μMの環状N-アルキルアミノアシル-tRNAAsn-E2(GGA)の存在下で合成した。ラジオアイソトープのカウントに基づく各ペプチドの産生効率を下段のグラフに示す。エラーバーは、triplicateで行った実験から計算した標準偏差を示す。図2Cは、400 μM、200 μM、100 μM、50 μM、又は25 μMのCNA-tRNAの存在下で発現させたペプチド1の濃度を示す。図2D上段は、CNAの1ヶ所の取り込みアッセイに用いたmRNA 2と、mRNA 2にコードされるペプチド2を示す。CNAは、空きコドンUCCに割り当てた。図2D下段は、CNAを含むペプチド2のMALDI-TOF MS分析の結果を示す。C及びOは、それぞれ一価イオン[M + H]+のcalculated molecular massと、observed molecular massを示す。アスタリスク(*)とダガー(†)は、それぞれ、完全長のCNAを有するペプチドと、不完全長ペプチドのピークを示す。図2E上段は、CNAの連続した2ヶ所の取り込みアッセイに用いたmRNA 3と、mRNA 3にコードされるペプチド3を示す。CNAは、空きコドンUCCに割り当てた。図2E下段は、CNAを含むペプチド3のMALDI-TOF MS分析の結果を示す。C及びOは、それぞれ一価イオン[M + H]+のcalculated molecular massと、observed molecular massを示す。アスタリスク(*)とダガー(†)は、それぞれ、2つのCNAを有するペプチドと、1つのCNAを有するペプチドのピークを示す。図3は、bis-N-アルキル二環式ペプチドのDNAプログラミングによる合成のためのコドン再割当を示す。図3Aは、鋳型mRNA 4-9と、それらがコードするbis-N-アルキル二環式ペプチド4-9の配列を表す。図3Bは、DNAプログラミングによるbis-N-アルキル二環式ペプチドの合成のための遺伝暗号を示す。4つのNNUコドンは、4つの異なるCNAに割り当てられた。図3Cは、MALDI-TOF-MSスペクトルと、bis-N-アルキル二環式ペプチドの構造を示す。一価イオン[M + H]+のcalculated molecular mass(C)と、observed molecular mass(O)が、各スペクトルに示されている。アスタリスク(*)は、それぞれのbis-N-アルキル二環式ペプチドに対応するピークを示す。図3Dは、mRNAとそのnear-cognate tRNAの間のG-U塩基対で起こりうるNNUコドンのミスリードを説明する図である。最も懸念されるのは、1番目と2番目のコドンが、正しいA-U対及びG-C対ではなく、G-U対として読まれるミスリードである。正しく読まれたNNUコドン−アンチコドン対はコドン表の中に記載され、G-U対にミスリードされたコドン−アンチコドン対はコドン表の外に記載されている。太い矢印は、near-cognate tRNAによってNNUコドンのミスリードが生じる可能性を示す。コドン再割当に際し、16のNNUコドンを、それぞれ4つのNNU near-cognateコドンを含むように、4つのセットに分類し、16のNNUコドンが、near-cognateコドンにミスリードされることなく、正しく解読されるか確認した。図4は、tris-N-アルキル三環式ペプチドのDNAプログラミングによる発現のためのコドン再割当を示す。図4Aは、鋳型mRNA 10-13と、それらがコードするbis-N-アルキル二環式ペプチド10-13の配列を示す。図4Bは、MALDI-TOF-MSスペクトルと、tris-N-アルキル三環式ペプチドの構造。一価イオン[M + H]+のcalculated molecular mass(C)と、observed molecular mass(O)が、各スペクトルに示される。アスタリスク(*)は、それぞれのtris-N-アルキル三環式ペプチドに対応するピークを示す。図5は、tetra-N-アルキル四環式ペプチドのDNAプログラミングによる発現のためのコドン再割当を示す。図5Aは、鋳型mRNA 19-23と、それらがコードするbis-N-アルキル二環式ペプチド19-23の配列を示す。図5Bは、DNAプログラミングによるtetra-N-アルキル四環式ペプチドの発現のためのリプログラミングされた遺伝暗号。16のNNUコドンのすべてが、16の異なるCNAに割り当てられた。図5Cは、MALDI-TOF-MSスペクトルと、tetra-N-アルキル四環式ペプチドの構造を示す。一価イオン[M + H]+のcalculated molecular mass(C)と、observed molecular mass(O)が、各スペクトルに示される。アスタリスク(*)は、それぞれのtetra-N-アルキル四環式ペプチドに対応するピークを示す。図6A〜Cは、ストレプトアビジン-pull downアッセイを利用して行った、TRAPディスプレイに用いるランダムNNU mRNAライブラリにおけるスペーサ配列の最適化を示す。図6Aは、ペプチド-mRNA/cDNA複合体のストレプトアビジン-pull downアッセイの概要を示す。TRAPシステムにおいては、発現したペプチドは、翻訳系内において自発的に自身をコードするmRNAにピューロマイシンDNAリンカーを介してディスプレイされる。ペプチドをディスプレイするmRNAは、ペプチドにbiocytinが含まれているので(BiotK)、ストレプトアビジンを固定したビーズによって、ペプチドをディスプレイしていないmRNAから分離し、リアルタイムPCRで定量することができる。図6B上段は、スペーサ配列の最適化に用いられたmRNAライブラリとペプチドライブラリの配列を示す。UGCコドンをBiotKに再割当した。mRNAの太字の領域がスペーサである。リボソームを引き止めて、ペプチドのピューロマイシンへの転移効率を上げるための空きUAGコドンに下線を付した。図6Cは、ストレプトアビジン-pull downアッセイを利用して行った、最初の空きUAGコドンとピューロマイシンDNAリンカーアニーリング領域の間の距離の最適化を示す。上段は、最適化に用いたmRNAライブラリとペプチドライブラリの配列を示す。UGGコドンをbiocytin(BiotK)に再割当した。リボソームを引き止めて、ペプチドのピューロマイシンへの転移効率を上げるための最初の空きUAGコドンに下線を付した。ピューロマイシンDNAリンカーのアニーリング領域をイタリックで示した。Xaaは、ランダムなタンパク質性アミノ酸を示す。下段は、異なるスペーサ配列を有するmRNAライブラリのディスプレイ効率の比較を示す。図7は、ストレプトアビジン-pull downアッセイで測定した、TRAPディスプレイにおける完全N-アルキル多環式ペプチドミメティクスのディスプレイ効率を示す。図7Aは、ペプチド/mRNA/cDNA複合体のストレプトアビジン-pull downの概念図である。TRAPシステムにおいては、発現したペプチドは、翻訳系において、それをコードするmRNAにpu-DNAリンカーを介して自発的にディスプレイされる。ストレプトアビジン(StAv)固定ビーズを用いて、自身がコードするペプチド(N-ビオチン化フェニルアラニン;BiotF)をディスプレイするmRNAを、ペプチドをディスプレイしないmRNAから分離し、リアルタイムPCRで定量した。図7Bは、ディスプレイ効率の測定に用いられたmRNAライブラリとペプチドライブラリの配列を示す。開始AUGコドンは、BiotFに割り当てた。ピューロマイシンへのペプチドの移行の効率を上げるための、リボソームをつなぎとめる空きUAGコドンに下線を付した。ピューロマイシン-DNAリンカーアニーリング領域は、イタリック体で示した。Xaaは、ランダムなCNA又はタンパク質性アミノ酸を示す。図7Cは、タンパク質性ペプチドと完全N-アルキル多環式ペプチドミメティクスのライブラリの発現のための遺伝暗号を示す。図7Dは、タンパク質性ペプチドと完全N-アルキル多環式ペプチドミメティクスのディスプレイ効率を示す。図8は、16のNNUコドンとAUGコドンに対応するtRNAのすべてをフレキシザイムによりアミノアシル化し、同様にアミノアシル化した開始tRNAとともに無細胞翻訳系に加え、代わりにアミノアシルtRNA合成酵素、野生型tRNA、遊離アミノ酸はいずれも加えずにペプチドの翻訳を行った結果、合成されたペプチドのMALDI TOF MSスペクトルを示す。(ペプチドライブラリの製造方法) 本発明に係るペプチドライブラリの製造方法の一態様は、N1N2N3でコードされるアミノ酸を含むペプチドを1×106種以上含むペプチドライブラリの製造方法であって: 前記ペプチドライブラリの各ペプチドをコードするmRNAを含み、各mRNAが複数のN1N2N3を含むmRNAライブラリを調製する工程と; N1N2N3のいずれかのコドンに対するアンチコドンを有し、該コドンに対応するアミノ酸がチャージされたtRNAを加えた無細胞翻訳系で、前記mRNAライブラリの各mRNAを翻訳する工程と、を含む。 本明細書において、「N1N2N3」は、アミノ酸を指定するコドンを意味し、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択される。1つのmRNAには、N1N2N3が複数含まれているが、それぞれのN1、N2及びN3はそれぞれ独立に選択される。 したがって、例えば、mRNAに、−N1N2N3−N1N2N3−が含まれる場合、それぞれ2つのN1、N2及びN3は、互いに同一であっても異なってもよい。 N1N2N3のうち、N3は、1つの翻訳系内では、以下の(i)又は(ii)であってもよい。(i) シトシン(C)又はウラシル(U)(ii) アデニン(A)又はグアニン(G) すなわち、ある翻訳系においては、N1N2C又はN1N2Uのみが存在する。N1N2Cのみであってもよいし、N1N2Uのみであってもよいし、N1N2CとN1N2Uが混在していてもよい。 また、別の翻訳系においては、N1N2A又はN1N2Gのみが存在する。N1N2Aのみであってもよいし、N1N2Gのみであってもよいし、N1N2AとN1N2Gが混在していてもよい。 上記(i)又は(ii)の場合、1つの翻訳系においてN1N2N3が表すコドンは計16種類とすることが好ましい。tRNAとmRNAの間では、3番目の塩基についてG-U対が許容されるため、例えば、UUUとUUCには別のアミノ酸を割り当てて正確に翻訳することができないからである。したがあって、上記(i)の場合、16種類のN1N2に対して、N3はC又はUのいずれかとするとよく、同様に、上記(ii)の場合、16種類のN1N2に対して、N3はA又はGのいずれかとするとよい。 すなわち、1つの翻訳系においては、N1N2Uで表される16種類のN1N2N3を用いてもよいし、N1N2Cで表される16種類のN1N2N3を用いてもよいし、N1N2UとN1N2Cで表される計16種類のN1N2N3を用いてもよい。また、N1N2Aで表される16種類のN1N2N3を用いてもよいし、N1N2Gで表される16種類のN1N2N3を用いてもよいし、N1N2AとN1N2Gで表される計16種類のN1N2N3を用いてもよい。 また、1つの翻訳系において、N1N2N3が表すコドンを16種以上としてもよい。例えば、1つの翻訳系において、N1N2UとN1N2Cで表される計16種類と、N1N2AとN1N2Gで表される計16種類のN1N2N3を用いて、N1N2N3が表すコドンを計32種類とすることも可能である。 本発明においては、N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当される。再割当においては、天然の遺伝暗号表におけるコドンとアミノ酸の関係とは異なるものを割り当てることもできるし、同一のものを割り当てることもできる。本明細書において、「天然の遺伝暗号表」とは、生体においてmRNAのトリプレットからなる遺伝暗号が表すアミノ酸を示した表をいう。 以下、便宜的に、N3がUである場合、すなわちN1N2N3がN1N2Uになる場合を例に挙げて本発明を説明するが、N3が、A、G、Cのいずれかである場合、すなわちN1N2A、N1N2G、N1N2Cとなる場合や、N1N2UとN1N2Cからなる翻訳系や、N1N2AとN1N2Gからなる翻訳系等でも同様に実施可能である。 天然の遺伝暗号表においてN1N2Uは、以下のアミノ酸を示す。 したがって、本明細書においては、例えば、UUUにはPheを割り当ててもよいし、Phe以外のアミノ酸を割り当ててもよい。UCUにはSerを割り当ててもよいし、Ser以外のアミノ酸を割り当ててもよく、「N1N2U」コドンには、あらゆるアミノ酸を割り当てることができる。「コドンにアミノ酸を割り当てる」とは、あるコドンがそのアミノ酸をコードするように遺伝暗号表を書き換えることを意味する。本明細書においては、「コドンにアミノ酸を割り当てる」と「コドンを再割当する」とは同義で用いられる。 各コドンに対する、天然の遺伝暗号表とは異なるアミノ酸の割り当ては、例えば、人工アミノアシル化RNA触媒フレキシザイム(Flexizyme)を利用したコドン再割当によって実現される。フレキシザイムによれば、任意のアンチコドンを有するtRNAに所望のアミノ酸を結合させることができるので、任意のコドンに任意のアミノ酸を割り当てることが可能となる。フレキシザイムについては後述する。本明細書においては、tRNAにアミノ酸を結合させることを、アミノ酸をtRNAにチャージする、tRNAをアミノアシル化する、又は、アミノ酸でtRNAをアシル化する、という場合もある。 本発明においては、「N1N2U」に、非タンパク質性アミノ酸を割り当ててもよい。例えば、非タンパク質性アミノ酸として、環状構造を含むアミノ酸や、N-アルキルアミノ酸を用いれば、タンパク質分解への耐性、細胞膜透過性、及びコンフォメーションの剛性が増大したペプチドライブラリを得ることができる。かかるペプチドライブラリは、細胞内の疾患関連分子を標的とするものや、プロテアーゼ活性を有する分子を標的とするペプチドのスクリーニングに有用である。ペプチドにN1N2Uが2以上含まれる場合、すべてを非タンパク質性アミノ酸としてもよいし、一部を非タンパク質性アミノ酸としてもよい。 本明細書において、「アミノ酸」は、その最も広い意味で用いられ、天然アミノ酸に加え、人工のアミノ酸変異体や誘導体を含む。アミノ酸は慣用的な一文字表記又は三文字表記で示される場合もある。本明細書においてアミノ酸又はその誘導体としては、天然タンパク質性L-アミノ酸;非天然アミノ酸;アミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物などが挙げられる。非天然アミノ酸の例として、主鎖の構造が天然型と異なる、α,α-二置換アミノ酸(α-メチルアラニンなど)、N-アルキル-α-アミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、α-ヒドロキシ酸や、側鎖の構造が天然型と異なるアミノ酸(ノルロイシン、ホモヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸、ホモフェニルアラニン、ホモヒスチジンなど)及び側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸など)が挙げられるがこれらに限定されない。 また、本明細書において「アミノ酸」は、タンパク質性アミノ酸(proteinogenic amino acids)と、非タンパク質性アミノ酸(non-proteinogenic amino acids)を含む。 本明細書において「タンパク質性アミノ酸」は、タンパク質を構成するアミノ酸(Arg、His、Lys、Asp、Glu、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Gly、Pro、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、及びVal)を意味する。 本明細書において「非タンパク質性アミノ酸」は、タンパク質性アミノ酸以外の天然又は非天然のアミノ酸を意味する。 本発明に係るペプチドライブラリの製造方法では、「N1N2U」でコードされるアミノ酸を含むペプチドを1×106種以上含むペプチドライブラリが製造される。 各ペプチドに含まれるN1N2Uでコードされるアミノ酸の数は、特に限定されず、例えば、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個等とすることができる。各ペプチドにおけるN1N2Uでコードされるアミノ酸の位置は特に限定されない。また、各ペプチドにN1N2Uでコードされるアミノ酸は、それらのアミノ酸は隣接していてもよいし、離れていてもよい。 本発明に係るペプチドライブラリの製造方法では、ペプチドライブラリの各ペプチドをコードするmRNAを含み、各mRNAが少なくとも1つのN1N2Uを含むmRNAライブラリを調製する。 ペプチドライブラリの各ペプチドをコードするmRNAの配列は、ペプチドライブラリを構成するペプチドのアミノ酸配列に応じて決定することができ、かかるmRNAライブラリは、これをコードするDNAライブラリを合成し、これを転写することによって調製することができる。 本発明の一態様において、mRNAライブラリに含まれる各mRNAは、以下の式(I)で表される。 X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 式中、N1乃至N3は上述の通りであり、X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは1〜20から選択される任意の整数を表す。 以下、N1N2N3において、N3がUである場合、すなわち、N1N2N3がN1N2Uである場合を例に挙げて説明するが、N3が、A、G、Cのいずれかである場合も本発明は同様に実施可能である。 (N1N2U)nは、「N1N2U」がn個連続することを意味し、ライブラリを構成するペプチドの可変領域、すなわちライブラリを構成するペプチドに多様性を与える領域をコードする配列となる。n個の各N1N2Uにおいて、Nはそれぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)又はウラシル(U)を表すので、n個の「N1N2U」は、すべて異なる場合もあるし、すべて同一である場合もあるし、一部同一である場合もある。nは特に限定されないが、例えばn=4、5、6、7、8、9、10、15、20とすることができる。 X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを意味する。アミノ酸の数は、それぞれ、X1は1個〜100個、1個〜80個、1個〜50個、1個〜20個等、X2は、0個〜100個、0個〜80個、0個〜50個、0個〜20個等とすることができるが、これらに限定されない。X1とX2の配列及びアミノ酸数は、それぞれ独立に決定され、同一であっても異なっていてもよい。X1のN末端は、開始tRNAにチャージされた開始アミノ酸となる。 本発明に係るペプチドライブラリの製造方法では、次に、16種類のN1N2Uのいずれかのコドンに対するアンチコドンを有し、該コドンに対応するアミノ酸がチャージされた16種類のtRNAを加えた無細胞翻訳系で、前記mRNAライブラリの各mRNAを翻訳する。 本明細書において、「16種類のN1N2Uのいずれかのコドンに対するアンチコドンを有し、該コドンに対応するアミノ酸がチャージされた16種類のtRNA」とは、例えば、N1N2UがUCUを表し、UCUコドンに対してProが割り当てられている場合、アンチコドンとしてGGAを有し、ProがチャージされたtRNAを意味する。また、N1N2UがCCUを表し、CCUコドンに対してL-pipecolic acidが割り当てられている場合、アンチコドンとしてGGGを有し、L-pipecolic acidがチャージされたtRNAを意味する。 このようなtRNAは、フレキシザイムを用いることによって作製することができる(参考文献26、39、40、特許文献1、2)。フレキシザイムは、任意のtRNAに任意のアミノ酸又はヒドロキシ酸でアシル化することのできる人工アミノアシル化RNA触媒である。天然のアミノアシルtRNA合成酵素に合成されるアミノアシルtRNAに代えて、フレキシザイムを用いれば、所望のアミノ酸又はヒドロキシ酸を任意のコドンと対応させて、遺伝暗号表を書き換えることができる。これをコドン再割当という。 コドン再割当には、翻訳系の構成因子を目的に合わせて自由に取り除き、必要な成分だけを再構成してできる翻訳系を利用できる。例えば、特定のアミノ酸を除去した翻訳系を再構成すると、当該アミノ酸に対応するコドンが、いずれのアミノ酸もコードしない空きコドンになる。そこで、フレキシザイム等を利用して、その空きコドンに相補的なアンチコドンを有するtRNAに任意のアミノ酸を連結し、これを加えて翻訳を行うと、当該任意のアミノ酸がそのコドンでコードされることになり、除去したアミノ酸の代わりに当該任意のアミノ酸が導入されたペプチドが翻訳される。 本発明に用いられるtRNAは、大腸菌由来野生型tRNAであってもよいし、in vitroの転写で調製した人工tRNAであってもよい。 本発明において、翻訳系で用いられる16種類のNNUに対応する16種類のtRNAは、アンチコドンループ部分以外、同じ配列を有していてもよい。このような構成とすることにより、特定のtRNAの反応性が高く又は低くなることがなく、各tRNAが均一な反応性を有するようになり、再現性よく予定したペプチドを発現させることが可能となる。 本明細書において「無細胞翻訳系」とは、細胞を含まない翻訳系をいい、無細胞翻訳系としては、例えば、大腸菌抽出液、小麦胚芽抽出液、ウサギ赤血球抽出液、昆虫細胞抽出液等を用いることができる。また、それぞれ精製したリボソームタンパク質、アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)、リボソームRNA、アミノ酸、rRNA、GTP、ATP、翻訳開始因子(IF)伸長因子(EF)、終結因子(RF)、およびリボソーム再生因子(RRF)、ならびに翻訳に必要なその他の因子を再構成することで構築した、再構成型の無細胞翻訳系を用いても良い。 DNAからの転写を併せて行うためにRNAポリメラーゼを含む系としてもよい。市販されている無細胞翻訳系として、大腸菌由来の系としてはロシュ・ダイアグノスティックス社のRTS-100(登録商標)、再構成型翻訳系としてはPGI社のPURESYSTEM(登録商標)やNew England BioLabs社のPURExpressR In Vitro Protein Synthesis Kit等、小麦胚芽抽出液を用いた系としてはゾイジーン社やセルフリーサイエンス社のもの等を使用できる。 また、大腸菌のリボソームを用いる系として、例えば次の文献に記載された技術が公知である:H. F. Kung et al., 1977. The Journal of Biological Chemistry Vol. 252, No. 19, 6889-6894; M. C. Gonza et al., 1985, Proceeding of National Academy of Sciences of the United States of America Vol. 82, 1648-1652; M. Y. Pavlov and M. Ehrenberg, 1996, Archives of Biochemistry and Biophysics Vol. 328, No. 1, 9-16; Y. Shimizu et al., 2001, Nature Biotechnology Vol. 19, No. 8, 751-755; H. Ohashi et al., 2007, Biochemical and Biophysical Research Communications Vol. 352, No. 1, 270-276。 無細胞翻訳系によれば、発現産物を精製することなく純度の高い形で得ることができる。 なお、本発明の無細胞翻訳系は、転写に必要な因子を加えて、翻訳のみならず転写に用いてもよい。 本発明の方法では、無細胞翻訳系には、N1N2Uコドンに対応する天然のアミノアシルtRNA合成酵素は添加しないことも好ましい。この場合、N1N2Uコドンに対応するtRNAには、例えばフレキシザイム等の人工アミノアシルtRNA合成酵素によって、対応するアミノ酸をチャージすることができる。 本発明に係るペプチドライブラリにおいては、ペプチドが大環状化していてもよい。本明細書において大環状化とは、1つのペプチド内において、1アミノ酸以上離れた2つのアミノ酸が直接に、又はリンカー等を介して間接的に結合し、分子内に大環状の構造を作ることを意味する。 大環状化は、ジスルフィド結合、ペプチド結合、アルキル結合、アルケニル結合、エステル結合、チオエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ホスホネートエーテル結合、アゾ結合、C-S-C結合、C-N-C結合、C=N-C結合、アミド結合、ラクタム架橋、カルバモイル結合、尿素結合、チオ尿素結合、アミン結合、チオアミド結合などによることができるが、これらに限定されない。 ペプチドを大環状化することにより、ペプチドの構造を安定化させ、標的への親和性を高めることができる場合がある。 環状化のためには、例えば、N末端にクロロアセチル化したアミノ酸を用い、C末端にCysを配してもよい。これにより、N末端アミノ酸とC末端Cysとのチオエーテル結合により、ペプチドは発現した後、自然に環状化する。クロロアセチル化アミノ酸とCysとの間に形成されるチオエーテル結合は生体内の還元条件下でも分解を受けにくいので、ペプチドの血中半減期を長くして生理活性効果を持続させることが可能である。 クロロアセチル化アミノ酸としては、例えば、N-chloroacetyl-L-alanine、N-chloroacetyl-L-phenylalanine、N-chloroacetyl-L-tyrosine、N-chloroacetyl-L-tryptophan、N-3-chloromethylbenzoyl-L-phenylalanine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tyrosine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tryptophane、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-tryptophane、およびこれらに対応するD-アミノ酸誘導体を用いることができる。 また、クロロアセチル化アミノ酸として、Nγ-(2-chloroacetyl)-α,γ-diaminobutylic acid、又はNγ-(2-chloroacetyl)-α,γ-diaminopropanoic acidを用いれば、ペプチド鎖のどの部位にも導入できるので、任意の箇所のアミノ酸と、同じペプチド内のシステインとの間にチオエーテル結合が生成され、環状構造が形成される。 大環状化方法は、例えば、Kawakami, T. et al., Nature Chemical Biology 5, 888-890 (2009);Yamagishi, Y. et al., ChemBioChem 10, 1469-1472 (2009);Sako, Y. et al., Journal of American Chemical Society 130, 7932-7934 (2008);Goto, Y. et al., ACS Chemical Biology 3, 120-129 (2008);Kawakami T. et al, Chemistry & Biology 15, 32-42 (2008)に記載された方法に従って行うことができる。 クロロアセチル化アミノ酸とCysは、本発明に係るペプチドに直接結合していてもよいし、リンカー等を介して結合していてもよい。(ペプチド−mRNA複合体ライブラリの製造方法) 本発明に係るペプチド−mRNA複合体ライブラリの製造方法は、上述したペプチドライブラリの製造方法において、mRNAライブラリを調製する際、各mRNAのORF(Open reading frame)の下流領域にピューロマイシンを結合させることによって行われる。ピューロマイシンは、ペプチドや核酸で構成されるリンカーを介してmRNAに結合させてもよい。mRNAのORF下流領域にピューロマイシンを結合させることにより、mRNAのORFを翻訳したリボソームがピューロマイシンを取り込み、mRNAとペプチドの複合体が形成される。このようなペプチド−mRNA複合体は、遺伝子型と表現型を対応付けることができ、in vitroディスプレイに応用できる。(ライブラリ) 本発明は、上述した製造方法により製造されるペプチドライブラリ及びペプチド−mRNA複合体ライブラリも包含する。 本発明に係るペプチドライブラリの一態様は、下記式(I)で表されるmRNAライブラリにコードされる。 X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 〔式中、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され;各N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されており;X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは4〜20から選択される任意の整数を表す。〕。 X1、X2、N1、N2、N3、及びnは既述のとおりである。例えば、X1として開始アミノ酸のみ含み、X2がなくてもよい。 また、本発明に係るペプチド−mRNA複合体ライブラリの一態様は、上記式(I)で表されるmRNAライブラリにコードされるペプチドライブラリにおいて、ペプチドのそれぞれが自身をコードするmRNAと複合体を形成している。 本発明に係るライブラリは、標的分子に結合するペプチドのスクリーニングに有用である。特に、NNUコドンがコードするアミノ酸として、ペプチドのタンパク質分解への耐性、細胞膜透過性、及びコンフォメーションの剛性を増大させる非タンパク質性アミノ酸を用いれば、細胞内の分子やプロテアーゼ活性を有する分子など、これまでのペプチドライブラリでは標的とすることが困難であった分子を標的とする医薬品候補のスクリーニングにも有用である。 本発明に係るペプチドライブラリ又はペプチド−mRNA複合体ライブラリは、ペプチドが大環状化されていてもよく、かかる構成も本発明に包含される。(スクリーニング方法) 本発明は、本発明に係る方法で製造されたペプチドライブラリを用いた、標的物質に結合するペプチドを同定するためのスクリーニング方法も提供する。 本発明に係るスクリーニング方法の一態様は、本発明に係る方法で製造されたペプチドライブラリと標的物質を接触させてインキュベートする工程を含む。 本明細書において、標的物質は特に限定されず、低分子化合物、高分子化合物、核酸、ペプチド、タンパク質、糖、脂質等とすることができる。特に、本発明のライブラリによれば、標的物質がプロテアーゼ活性を有する場合や細胞内の分子である場合にも用いることができる。 標的物質は、例えば、固相担体に固定して、本発明のライブラリと接触させてもよい。本明細書において、「固相担体」は、標的物質を固定できる担体であれば特に限定されず、ガラス製、金属性、樹脂製等のマイクロタイタープレート、基板、ビーズ、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン、PVDFメンブレン等が挙げられ、標的物質は、これらの固相担体に公知の方法に従って固定することができる。 標的物質と、ライブラリは、適宜選択された緩衝液中で接触させ、pH、温度、時間等を調節して相互作用させる。 本発明のスクリーニング方法の一態様は、標的物質と結合したペプチドを選択する工程をさらに含む。標的物質と結合したペプチドの選択は、例えば、ペプチドを公知の方法に従って検出可能に標識し、上記接触工程の後、緩衝液で固相担体表面を洗浄し、標的物質に結合している化合物を検出して行う。 検出可能な標識としては、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素、25I、131I、35S、3H等の放射性物質、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、近赤外蛍光材料等の蛍光物質、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン等の発光物質、金コロイド、量子ドットなどのナノ粒子が挙げられる。酵素の場合、酵素の基質を加えて発色させ、検出することもできる。また、ペプチドにビオチンを結合させ、酵素等で標識したアビジン又はストレプトアビジンを結合させて検出することもできる。 単に結合の有無又は程度を検出・測定するのみでなく、標的物質の活性の亢進又は阻害を測定し、かかる亢進活性又は阻害活性を有するペプチドを同定することも可能である。このような方法により、生理活性を有し、医薬として有用なペプチドの同定も可能となる。 ペプチド−mRNA複合体ライブラリの場合、TRAPディスプレイ法(参考文献48、49)を応用してスクリーニングを行うことができる。 この場合、まず、ペプチド−mRNA複合体ライブラリに対して逆転写反応を行った後、当該ライブラリと標的物質とを接触させる。標的物質に結合する複合体を選択し、このDNAをPCRで増幅する。このDNAをTRAP反応系に加えることで、再度ペプチド−mRNA複合体ライブラリを作製し、同様の操作を繰り返す。 これにより、標的物質に高い親和性を有するペプチド−mRNA複合体が濃縮されるので、濃縮された複合体のDNAの配列を解析して、標的物質に結合するペプチドを効率よく同定することができる。(スクリーニング用キット) 本発明は、ペプチドのスクリーニング用キットも提供する。 本発明のスクリーニング用キットの一態様は、本発明に係る製造方法で製造されたペプチドライブラリ、又は、ペプチド−mRNA複合体ライブラリを含む。 本発明のスクリーニング用キットは、他に、標的物質とペプチド又はペプチド−mRNA複合体との結合を検出するのに必要な試薬及び装置を含む。かかる試薬及び装置としては、例えば、固相担体、緩衝液、標識用試薬、酵素、酵素反応停止液、マイクロプレートリーダーが挙げられるがこれらに限定されない。(翻訳系) 本発明は、tRNAとして、以下の(a)及び(b)のみを含む、翻訳系も包含する。 (a) 開始tRNA (b) 全長の85%以上同一の塩基配列からなる伸長tRNA 上述のとおり、本発明者らは、フレキシザイムを利用したコドンの再割当により、N1N2N3が任意のアミノ酸をコードする翻訳系を開発した。天然の翻訳系においては、各アミノ酸に対応したアンチコドンを有するtRNAが存在し、各tRNAは、アンチコドンループ以外の領域においてもそれぞれ固有の配列を有する。 しかしながら、フレキシザイムを利用し、N1N2N3のすべてに任意のアミノ酸を再割当する場合、tRNAをすべて人工のものとすることができる。この場合、翻訳系に加える各N1N2N3に対応する伸長tRNAは、全長の85%以上、又は90%以上が同一の塩基配列からなるものであっもよい。すなわち、アンチコドンを除いた配列のうち、ほとんど配列が同じである伸長tRNA群を用いることができる。伸長tRNA群は、アンチコドンループ以外すべて同じ塩基配列のものとしてもよい。 本明細書において、アンチコドンループとは、tRNAにおけるアンチコドンを含む一本鎖のループ部分を示す。アンチコドンループの配列は、コドン−アンチコドンの相互作用を相補するように、当業者が適宜決定することが可能である(参考文献45)。 このようにして得られる翻訳系は、tRNAとして、一種類の開始tRNAと、一種類の伸長tRNA(すなわち、アンチコドン以外ほとんど同じ塩基配列であるtRNA)しか含まないので、各tRNAの反応性が均一となり、再現性よく予定したペプチドを得ることができる。 本発明に係る翻訳系によれば、mRNAにおけるN1N2N3の多様性に基づき、1×106以上の異なるペプチドを含むライブラリを製造することが可能である。 本発明に係る翻訳系は、転写に必要な因子を加えて転写に用いてもよい。また、本発明に係る翻訳系は、上述した、本発明に係るペプチドライブラリの製造方法に好適に用いられる。 本明細書において引用されるすべての特許文献及び参考文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。 以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。 本実施例では、フレキシザイム(参考文献26,39,40)を用いて、リボソーム触媒によるペプチドへの取り込みについて様々なCNAを網羅的にスクリーニングし、ペプチド骨格に効率よく好適に取り込まれるCNAを同定した。また、コドン再割当によって、16のNNUコドンに16の異なるCNAを割り当て、高度にN-アルキル化された多環式ペプチドミメティクスを、鋳型DNA依存的に発現できる可能性を探索した。最後に、完全N-アルキル化多環式ペプチドミメティクスのライブラリと、本発明者らが最近開発したin vitro TRAP(transcription/translation coupled with association of puromycin-linker)ディスプレイ法(図1B)との適合性を調べるために、完全N-アルキル化多環式ペプチドミメティクスのランダムライブラリについて、それらをコードするmRNA上にディスプレイできる効率を測定した。 また、アミノアシル合成酵素及び野生型tRNAを全く加えずに、フレキシザイムで合成したアミノアシルtRNAを添加しすることで、16のNNUコドンを、CNA以外のタンパク質性アミノ酸及び非タンパク質性アミノ酸に割り当てた翻訳系を調製した。本翻訳系を用いて、ペプチドをリボソーム合成したところ、所望のアミノ酸が取り込まれたペプチドが検出された。以下、詳細に説明する。〔方法〕1.翻訳に用いるtRNAとフレキシザイムの調製 フレキシザイムによりアミノアシル化するtRNAは特開平2008-125396号公報等に記載の方法によりin vitroの転写で調製した。原料となる以下の化学合成オリゴヌクレオチドはオペロンバイオテクノロジー株式会社より購入した。P1: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTTTCAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号1)P2: 5'-GAACCAGTGACATACGGAACCTCAATCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号2)P3: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTATCAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号3)P4: 5'-GAACCAGTGACATACGGAATGTCAATCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号4)P5: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTTCCAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号5)P6: 5'-GAACCAGTGACATACGGAACCCCATTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号6)P7: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTACCAATCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号7)P8: 5'-GAACCAGTGACATACGGACTGCCAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号8)P9: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTTACAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号9)P10: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTCACAATCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号10)P11: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTAAGAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号11)P12: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTGACAATCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号12)P13: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTTGCAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号13)P14: 5'-GAACCAGTGACATACGGATCCGCAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号14)P15: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTAGCAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号15)P16: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTGGCAATCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号16)P17: 5'-GAACCAGTGACATACGGATTATGAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3' (配列番号17)P18: 5'- GTAATACGACTCACTATAGGAGAGATGCCGGAGCGGCTGAACGGACCGG -3' (配列番号18)P19: 5'- TGGCGGCTCTGACTGGACTCGAACCAGTGACATACGGA -3' (配列番号19)P20: 5'- GGCGTAATACGACTCACTATAG -3' (配列番号20)P21: 5'- TGGCGGCTCTGACTGGACTC -3' (配列番号21) 配列番号18は配列1〜17とのオーバーラップ伸長反応と1回目のPCR反応に、配列番号19は1回目のPCR反応に、配列番号20と配列番号21は2回目のPCR反応にそれぞれ用いた。翻訳開始tRNAとフレキシザイムeFx、フレキシザイムdFxは特開平2008-125396号公報に記載の材料と方法により調製した。2.1つの環状N-アルキルアミノ酸を含むペプチドのリボソーム合成 0.04 μMの鋳型DNA、それぞれ0.5 mMのMet、Tyr、Lys、50 μMの[14C]-Asp、0.03 μMのMetRS、0.02 μMのTyrRS、0.11 μMのLysRS、0.13 μMのAspRS、及び200、100、50、25、又は12.5 μMの環状N-アルキルアミノアシル-tRNAAsn-E2(GGA)を含む翻訳反応液を37℃で60分インキュベートした。反応産物を、tricine-SDS PAGEとオートラジオグラフィー(Pharox FX, BIO-RAD)で解析した。MALDI-TOF-MS解析には、[14C]-Aspの代わりにAspを用い、100 μMの環状N-アルキルアミノアシル-tRNAAsn-E2(GGA)を加えて反応を行い、翻訳産物をC-TIP(Nikkyo Technos)で脱塩し、CHCAを飽和させた80%アセトニトリルと0.5%酢酸で溶出した後、autoflex II (BRUKER DALTONICS)のlinear positive modeで解析した。3.bis-N-アルキル二環式ペプチド、tris-N-アルキル三環式ペプチド、及びtetra-N-アルキル四環式ペプチドのリボソーム合成 0.04 μMの鋳型DNA、それぞれ0.5 mMのMet、Tyr、Arg、0.03 μMのMetRS、0.02 μMのTyrRS、0.03 μMのArgRS、50 μMのそれぞれのcyclic N-alkyl aminoacyl-tRNAAsn-E2、5 μMの試験管内で転写したtRNAfMet(CAU)を含む翻訳反応液を37℃で60分インキュベートした。MALDI-TOF-MS解析は、上述のとおり行った。4.タンパク質性ペプチド及びN-アルキル多環式ペプチドのディスプレイ効率の測定 ランダムな(NNU)8 mRNAライブラリを、抽出した天然のtRNAを含まず、それぞれ0.5 mMのSer、Trp、0.04 μMのSerRS、0.03 μMのTrpRS、2.5 μMのmRNAライブラリ、10 μMのEF-P、2.5 μMのピューロマイシン-DNAリンカー、20 μMのbiotinyl-Phe-tRNAfMet(CAU)、それぞれ10 μMの16の環状N-アルキルアミノアシルtRNAAsn-E2、及びそれぞれ5 μMのtRNASer(CAU)、tRNATrp(CCA)を含むTRAPシステム内で、37℃で25分インキュベートして、ビオチン化N-アルキル多環式ペプチドライブラリに翻訳した。反応後に逆転写によりcDNAを合成した後に、ストレプトアビジンを固定化した磁気ビーズを用いて、ペプチドをディスプレイしたmRNAを選択的に回収した。 タンパク質性ペプチドライブラリは、アミノ酸としてMet、Gln、Lys及びGluを含まず、20種類のaaRSと、2.5 μMのmRNAライブラリ、2.5 μMのピューロマイシン-DNAリンカー、20 μMのbiotinyl-Phe-tRNAfMet(CAU)、抽出した天然のtRNA混合物、及び試験管内で転写した5 μMのtRNASer(CAU)を含むTRAPシステムを使用した。逆転写反応とストレプトアビジン-pull downは上述の通りに行った。5.アミノアシルtRNA合成酵素及び野生型tRNAを用いない翻訳合成 アミノ酸はすべて参考文献26、12及び13と、特開平2008-125396号公報に記載の方法により、3,5-ジニトロベンジルエステルまたはシアノメチルエステルに変換してフレキシザイムの基質とした。3,5-ジニトロベンジルエステルとして調製したものは、π-メチル-ヒスチジン(His(3-Me))、L-アルギニン(Arg)、L-アラニン(Ala)、N-メチル-L-アラニン(MeAla)、グリシン(Gly)、N-メチル-グリシン(MeGly)、L-ヒスチジン(His)、L-イソロイシン(Ile)、N-メチル-L-ノルロイシン(MeNle)、L-リジン(Lys)、シクロロイシン(Cle)、N-n-ブチル-グリシン(BuGly)、L-システイン(Cys)の13種、シアノメチルエステルに変換したものはL-チロシン(Tyr)、N-メチル-L-フェニルアラニン(MePhe)、N-(2-フェニルエチル)-グリシン(PheEtGly)、L-トリプトファン(Trp)、N-クロロアセチル-L-フェニルアラニン(ClAcPhe)の5種である。表2に示す遺伝暗号表の組み合わせに従い、3,5-ジニトロベンジルエステルはフレキシザイムdFx共存下で、シアノメチルエステルはフレキシザイムeFx共存下でそれぞれtRNAと反応させた。JPA 2008-125396に記載の沈殿操作によりアミノアシルtRNAを精製し、翻訳の前に溶解して用いた。 遊離アミノ酸、大腸菌由来野生型tRNA及びアミノアシルtRNA合成酵素を添加せずに調製した大腸菌由来再構成翻訳系に、前述のアミノアシルtRNAを酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.2)に溶かした溶液を加えた。N-クロロアセチル-L-フェニルアラニンあるいはL-システインのエステルと反応させたtRNAは最終濃度がそれぞれ50 μM相当になるように、それ以外のアミノ酸エステルでアミノアシル化したNNUコドン対応の16種類のtRNAは最終濃度がそれぞれ25 μM相当になるように加えた。図8A及びBに記載のORFを有する鋳型DNAを約100 nMの濃度で加え、37℃で20分放置したのち逆相チップでペプチドを脱塩精製し、MALDI-TOF-MSで検出した。〔結果〕1.コドン再割当に用いられる環状N-アルキルアミノ酸(CNA)のスクリーニング これまでの研究では用いられなかった13のCNAを含む21の購入可能なCNAを用いた(図1A)。21のすべてのCNAを、3,5-ジニトロベンジルエステル又はシアノメチルエステルに化学的に誘導し、対応するフレキシザイムの基質に変換した。フレキシザイムによるCNAのtRNAアシル化の条件は、活性化エステル誘導体、及びin vitro翻訳で調製されたtRNAアナログであるマイクロヘリックスRNAを用いて最適化した。CNA-マイクロヘリックスRNAの産生効率を、Acid urea PAGEで分離して定量したところ、すべてのCNAがマイクロヘリックスRNAにチャージされたことが確認され、最適条件下では、収率が25%を超えた(図1C)。収率は、フレキシザイムを用いた翻訳基質スクリーニングの過去の研究(参考文献12,13)に基づき、翻訳アッセイには十分であると考えられた。 アンチコドンGGAを有する、改変した大腸菌のAsn tRNA(tRNAAsn-E2)(参考文献30)を、最適条件下で、フレキシザイムによってCNAでアミノアシル化した。得られたCNA-tRNAAsn-E2(GGA)と、fMet-(Lys)3-CNA-FLAGペプチドをコードするDNAを用いて、UCCコドンでの1ヶ所の取り込みアッセイを行った(図2A)。ペプチドの合成は、タンパク質性アミノ酸を4種類のみ(Met、Lys、Asp及びTyr)とそれぞれのcognateのaaRSを含む転写/翻訳カップリングシステムで行った。比較のため、プロリン-3,5-ジニトロベンジルエステルとフレキシザイムで調製したPro-tRNAAsn-E2(GGA)を用いて、同じDNAをfMet-(Lys)3-Pro-FLAGに転写及び翻訳した。ペプチドの収率は、fMet-(Lys)3-CNA-FLAGペプチドへの[14C]-Asp(CNA残基より下流の配列内にある)の取り込みに基づいて計算した。60分後、SDSを加えて翻訳反応を停止し、ペプチド産物はTricine SDS-PAGEの後にオートラジオグラフィーで検出した。 図2Bは、半数近いCNAが、タンパク質性プロリンより効率よくペプチドに取り込まれたことを示す。残りのCNAの取り込み効率は、タンパク質性プロリンよりは低かったが、100 μMの対応CNA-tRNAの存在下では、CNAが取り込まれたペプチドの濃度は、すべて0.1μMを超えた(図2C)。 続いて、100 μMのCNA-tRNA存在下で、fMet-(Tyr)3-CNA-FLAGをコードするDNAから合成した翻訳産物を脱塩し、MALDI-TOF分析を行ったところ、すべてのCNAがペプチドに取り込まれたことが確認された(図2D)。しかしながら、CNA15及び21の場合は、CNA取り込み部位の後の伸長で生じた副生成物として、短いペプチドが検出された。これは、新生ペプチドとこれらのCNAの間のN-アルキルペプチド結合の形成が遅いことによるものと思われる。 CNA取り込みについてさらに調べるために、fMet-(Tyr)3-(CNA)2-Arg-(Tyr)3ペプチドをコードするDNAを調製し、連続した2つのUCCコドンで、2つのCNAが連続して取り込まれるか確認した(図2E)。ペプチド発現のための翻訳系は、3つのタンパク質性アミノ酸(Met、Tyr及びArg)とそれらのcognate aaRSから構築した。脱塩した翻訳産物のMALDI-TOF-MS解析によれば、15のCNA(図1Aの2-10、12-14、16、19及び22)は、うまくペプチドに取り込まれた(図2E)。そこで、これらの15のCNAとプロリンを、その後の実験に用いた。2.高度にN-アルキル化された多環式ペプチドミメティクスの合成におけるコドン再割当 16のNNUコドンを16の異なるCNAに割り当てる、コドン再割当の実現可能性を調べた。16のNNUコドンが対応するCNAに正しく解読されるかについて、もっとも懸念されたのは、NNUコドンの最初又は2番目のコドン塩基において、正しいA-U対及びG-C対ではなく、G-U対とする読み間違い(ミスリード)が生じることであった(図3D)(参考文献41-47)。そこで、図3Aに示されるとおり、4つのコドン(UUU、UCU、CUU及びCCU)から選ばれる2つの異なるコドンを含むmRNAを設計し、対応するDNAの鋳型を調製した。4つ試験コドンは、お互いにnear-cognateであり、そのうち3つは、対応するnear-cognate aa-tRNAにG-U塩基対にミスリードされる可能性があった(図3D)。 本体がtRNAAsn-E2で、アンチコドンループが異なる4種類のtRNAを調製し、図3Bに示されるリプログラミングされた遺伝暗号にしたがって、CNA(12,1,8又は3)をそれぞれのtRNAにチャージした。 翻訳系は、16NNUコドンのすべてが空きコドンとなるように、ネイティブの塩基修飾tRNA混合物に代えて、in vitro転写されたtRNAfMet(CAU)、tRNATyr(CUA)、及びtRNAArg(CCG)を用いて構成し、tRNATyr(CUA)は、TyrRSによってチロシル化しUAGコドンを読むようにした(図3B)。6つのDNA鋳型を用いた転写/翻訳産物を脱塩してMALDI-TOF-MS解析したところ、6つのプログラムされたbis-N-アルキル二環式ペプチドが主生成物として合成されていることが確認できた(図3C)。 また、bis-N-アルキル二環式ペプチド合成で用いられた4種類のコドン(UUU、UCU、CUU、及びCCU)から選択される3つの異なるコドンを含むmRNAの翻訳により、3つの異なるCNAを連続して取り込めるか調べた(図4A)。 翻訳産物を脱塩してMALDI-TOF-MSで解析したところ、鋳型DNAを用いた翻訳反応では、4つの鋳型のいずれも、期待通りtris-N-アルキル三環式ペプチドが主生成物として生成されていた(図4B)。上記の実験により、所望のbis-N-アルキル二環式ペプチドとtris-N-アルキル三環式ペプチドのDNAプログラム合成は、4つのnear-cognateのコドンの(UUU、UCU、CUU、及びCCU)を正確に解読し、ミスリードすることなく目的のCNAを取り込めることが確認された。 DNAプログラムしたN-alkyl多環式ペプチドミメティクスにおいてnear-cognateの4つのコドンを正確に解読できたことから、16のNNUコドンのすべてに異なるCNAを割り当てるコドン再割当を試みた。 前の実験で用いられた4つの異なるNNUコドン(UUU、UCU、CUU、及びCCU)を含む鋳型mRNA 14を設計した(図5A、5B)。これを、コドンの再割当を行った遺伝暗号(図5B)をもつ翻訳系に加えた。なおコドンの再割当は、CNA(図1Aの12、1、8及び3)をチャージしたアンチコドンループの配列のみ異なるtRNA Asn-E2を翻訳系に加えることで行った。MALDI-TOF-MS解析により、鋳型mRNA14から、所望のtetra-N-アルキル四環式ペプチド14が正しく合成されることが示された(図5C)。 12のNNUコドン(図5A、図3D)を含む、3つの鋳型mRNA15、16及び17を設計した。これを、コドンの再割当を行った遺伝暗号(図5B)をもつ翻訳系に加えた。なおコドンの再割当は、上記と同様に、本体がtRNAAsn-E2で、アンチコドンループの配列のみ異なる12のtRNAを調製し、翻訳系に加えることで行った。MALDI-TOF-MS解析により、鋳型mRNA15-17から、所望のtetra-N-アルキル四環式ペプチド15-17が正しく合成されることが示された(図5C)。 上記の実験により、tetra-N-アルキル四環式ペプチドのDNAプログラム合成では、16のNNUコドンが16の異なるCNAに正しく割り当てられ、near-cognateによるミスリーディングもないことが示された(図5B、図3D)。3.完全N-アルキル化多環式ペプチドミメティクスランダムライブラリのTRAPディスプレイ 16のNNUコドンを16の異なるCANに割り当てるコドン再割当技術が開発されたことから、ランダムNNU mRNAライブラリに基づく完全N-アルキル化多環式ペプチドミメティクスライブラリのディスプレイ効率を、本発明者らが最近開発したTRAPディスプレイによって評価した。 TRAPディスプレイは、mRNAの3'末端に相補的なオリゴDNAリンカーの3'末端に結合したピューロマイシンを含む転写/翻訳カップリング系を用いる。TRAPシステムでは、DNAが反応系中で転写及び翻訳されてペプチドが生成され、発現したペプチドは自動的に自身をコードするmRNAに、ピューロマイシンDNAリンカーを介してディスプレイされる(trapped)。 まず、完全N-アルキル化多環式ペプチドミメティクスライブラリのディスプレイ効率を評価する前に、NNUコドンを含まないいくつかのスペーサ配列を試した(図6A、B)。ビオチン修飾したアミノ酸をC末端定常領域に再割当し、ストレプトアビジンpull-downを行いディスプレイ効率を測定することで、効率よくディスプレイが行えるスペーサ配列を同定した。その結果、(AUG)4スペーサのペプチドディスプレイ効率が最も高いことが明らかになった(図6B)。 同様のpull-down解析により、mRNA上の最初の空きUAGコドンと、ピューロマイシンDNAリンカーアニーリング領域との距離が長くなると、ペプチドディスプレイ効率が低下することが示された(図6C)。このことは、mRNAのスペーサ領域の上流が翻訳されている間に、ピューロマイシンが未熟なペプチドを攻撃する可能性が低いことを示唆している。 一方、導入効率の低いCNA(15及び21)を用いた場合、C末端切断ペプチドの発現が見られている(図2D)。このことから、上記のように、ビオチン修飾したアミノ酸をC末端定常領域に再割当する方法では、C末端切断ペプチドがディスプレイされ、ペプチドディスプレイ効率を正確に評価できない可能性も考えられる。。そこで、ディスプレイ効率を正確に評価するために、以下の実験ではN末端にビオチン修飾アミノ酸を再割当した翻訳系を用いた。 完全N-アルキル化多環式ペプチドミメティクスのディスプレイ効率は、ランダムCNA8残基と(AUG)4スペーサを含むペプチドライブラリをコードするNNU mRNAライブラリを構築して評価した(図7B)。ペプチドのN末端をビオチンで標識するためにN-ビオチン化Phe-tRNAを用いた(図7A)。TRAPシステムには、開始AUGコドンをBiotFに割り当てるためにMetを入れず、スペーサAUGコドンをSerに割り当てるために、in vitroで転写されたSerRSでSerをチャージしたtRNASer(CAU)を加えた(図7B、C)。また、これまでに鋳型mRNAは鋳型DNAよりもペプチドディスプレイ効率が高いことが示されていることから、TRAPシステムには、鋳型DNAに代えて鋳型mRNAを加えた。 予めチャージした16種類のCNA-tRNA Asn-E2(図7C右)を含む翻訳産物からのストレプトアビジンpull-downにより、ビオチン化した完全N-アルキル化多環式ペプチドミメティクスがそれぞれのmRNAにディスプレイされる効率は、1.9%であることがわかった(図7D)。一方で、コントロールの翻訳に対する同様のストレプトアビジンpull-down実験により(図7C左)、ビオチン化されたタンパク質性ペプチドはそれをコードするmRNAに10.7 %の効率でディスプレイされることが示された(図7D)。このことから、N-アルキル多環式ペプチドミメティクスのディスプレイ効率は、対応する蛋白質性アミノ酸からなるペプチドに比べて1/5程度であることが分かった。このことは、0.5mLの翻訳反応液において、約1013個のユニークな完全N-アルキル化多環式ペプチドミメティクスが、それをコードするmRNA上にディスプレイできることを示している。4.翻訳反応系外で合成したアミノアシルtRNAのみによる翻訳合成 すでに上記の実験で証明されているように、フレキシザイムを用いればNNUコドンとCNAアミノ酸を、その種類に限定されることなく対応付けることができる。そこで次に、本発明に係るライブラリの製造方法は、アミノアシルtRNA合成酵素や野生型tRNAが規定するアミノ酸とコドンの対応関係に全く依存せずに行われ得ることを実証した。この実験では、AUGコドンと16のNNUコドンに対応するtRNAのすべてをフレキシザイムによりアミノアシル化し、同様にアミノアシル化した開始tRNAとともに無細胞翻訳系に加え、代わりにアミノアシルtRNA合成酵素、野生型tRNA、遊離アミノ酸は全て加えずに翻訳系を調製した。本翻訳系を用いて、8残基から成るチオエーテル環状ペプチドを3種類の鋳型DNAから合成した。また、N-クロロアセチル-L-フェニルアラニンの代わりにN-アセチル-L-アラニンを使うことで13残基から成る直鎖状のペプチドも同様の方法で合成した。 MALDI-TOF-MSで翻訳産物を解析した結果、目的のペプチドが合成されていることが確認できた(図8A、B)。この結果は、アミノアシルtRNA合成酵素、野生型tRNA、遊離アミノ酸の数を制限した、あるいは全く用いない系で、ペプチドライブラリが構築可能であることを示唆している。〔方法(補足)〕1.フレキシザイムの基質となる環状N-アルキルアミノ酸の合成 すべての環状N-アルキルアミノ酸、及びBoc基で保護した環状N-アルキルアミノ酸は、Watanabe Chemical、Sigma & Aldrich、TCI、又はBachemから購入した。環状N-アルキルアミノ酸12、15及び17は、シアノメチルエステル(CME)に変換し、その他は3,5-ジニトロベンジルエステル(DBE)に変換した(参考文献26)。2.フレキシザイムによる、N-アルキルアミノ酸を用いたマイクロヘリックスRNAのアミノアシル化 マイクロヘリックスRNAとフレキシザイムは、適切な鋳型の試験管内転写により調製した(参考文献26)。アミノアシル化効率は、マイクロヘリックスRNAを用いて測定した。 反応は、25 μM dFx(DBE基質について)又はeFx(CME基質について)、25 μM マイクロヘリックスRNA、及び5 mM 環状N-アルキルアミノ酸基質を、0.1 M Hepes-K buffer(pH 7.5、20 mM MgCl2及び20 % DMSO)中で、全5 μLとし、氷上で行った。 手順は以下のとおりである。まず、50 μM マイクロヘリックスRNA(0.2 M Hepes-K buffer pH 7.5(2.5 μL)中)を95℃で1分加熱し、室温で5分以上冷却した。環状N-アルキルアミノ酸10については、HEPES-KOH(pH 7.5)に代えて、Bicine(pH 9)を加えた。続いて、MgCl2(100 mM、1 μL)及びdFx又はeFx(250 μM、0.5 μL)を反応液に加えた。反応は、環状N-アルキルアミノ酸(25 mM、1 μL in DMSO)を加えて開始し、氷上で1時間、3時間、6時間、及び18時間インキュベートした。環状N-アルキルアミノ酸17については、25 mMに代えて200 mMの基質5 μlを用いた。 反応の停止は、15 μLのローディングバッファ(150 mM sodium acetate pH 5、10 mM EDTA、及び83% formamide)を加えて行った。 得られたサンプルを、20 % denaturing acid PAGE(50 mM sodium acetate pH 5、6 M urea)で解析した。RNAをエチジウムブロマイドで染色し、Pharos FX (BIO-RAD)で解析した。3.環状N-アルキルアミノ酸でアミノアシル化されたtRNAAsn-E2の調製 tRNAAsn-E2は、適切な鋳型の試験管内転写により調製した(参考文献30)。tRNAAsn-E2 のアミノアシル化は、以下の条件で行った。 25 μM dFx(DBE基質について)又はeFx(CME基質について)、25 μM tRNAAsn-E2、20 mM MgCl2、及び5 mM 環状N-アルキルアミノ酸基質を、0.1 M Hepes-K buffer(pH 7.5、20 mM MgCl2及び20 % DMSO)中で、全50 μLとし、氷上で行った。 手順は以下のとおりである。まず、50 μM tRNAAsn-E2(0.2 M Hepes-K buffer pH 7.5(25 μL)中)を95℃で1分加熱し、室温で5分以上冷却した。環状N-アルキルアミノ酸10については、HEPES-KOH(pH 7.5)に代えて、Bicine(pH 9)を加えた。続いて、MgCl2(100 mM、10 μL)及びdFx又はeFx(250 μM、5 μL)を反応液に加えた。反応は、環状N-アルキルアミノ酸(25 mM、10 μL in DMSO)を加えて開始し、氷上でインキュベートした。環状N-アルキルアミノ酸17については、25 mMに代えて200 mMの基質5 μlを用いた。 反応の停止は、0.6 M sodium acetate pH 5を150 μL加えて行った。 RNAをエタノール沈殿により回収し、0.1 M sodium acetateを含む70%エタノールで2回、70%エタノールで1回リンスした。4.ペプチドをコードする鋳型DNAの調製 図2Aのペプチド1をコードする鋳型DNAは、従来の方法に従って調製した(参考文献13)。他の鋳型DNAの調製に用いたプライマーは、表3に示す。鋳型DNAライブラリの調製に用いたプライマーは、表4に示す。適切なフォワードプライマー及びリバースプライマーをアニールさせ、Taq DNAポリメラーゼで伸長させた。得られたdsDNAは、適切なフォワードプライマーとリバースプライマーを用いてTaq DNAポリメラーゼで増幅した。調製された鋳型DNAは、フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿で精製した。5.再構成型無細胞翻訳系の調製 再構成型翻訳系は、従来の方法に従って調製した(参考文献28、25、44、15)。6.翻訳系におけるaaRSによるアミノアシル化のためのtRNAの調製 tRNAfMet(CAU)、tRNATyr(CUA)、tRNAArg(CCG)、及びtRNASer(CAU)は、従来の方法に準じて、適切な鋳型DNAを用いた試験管内転写により調製した(参考文献45)。tRNATrp(CCA)は、適切な鋳型DNAを用いた試験管内転写により前駆体tRNAを用意し、続いてRNase P消化を行って調製した。7.連続した2つの環状N-アルキルアミノ酸を含むペプチドのリボソーム合成 0.04 μM 鋳型DNA、それぞれ0.5 mMのMet、Tyr、及びArg、0.03 μM MetRS、0.02 μM TyrRS、0.03 μM ArgRS、及び100 μM 環状N-アルキルアミノアシル-tRNAAsn-E2(GGA)を含む翻訳反応液を、37℃で60分インキュベートした。MALDI-TOF MS解析は、翻訳産物をC-TIP (Nikkyo Technos)で脱塩し、80%アセトニトリルと0.5%酢酸のCHCA飽和液で溶出させ、autoflex II (BRUKER DALTONICS)のlinear positive modeで行った。8.スペーサ最適化のためのビオチン化ランダムペプチド/mRNA/cDNA複合体のストレプトアビジン pull downアッセイ ビオチン化-tRNAAsn-E2及びビオチン化- Phe-tRNAfMet(CAU)は、フレキシザイムを用いて調製した(参考文献26)。TRAPシステムは、従来の方法に従って調製した。スペーサ配列の最適化のために、ランダムNNT3 DNAライブラリを、1 μM T7 RNAポリメラーゼ、2.5 μM ピューロマイシン-DNAリンカー、40 μM ビオチン化-tRNAAsn-E2(GCA)、及び10% v/vのcDNAライブラリを含むcrudeのPCR混合液を含むCys枯渇TRAPシステム中で、37℃で25分転写及び翻訳して、ビオチン化ペプチドライブラリを得た。スペーサの長さの最適化には、20 μM ビオチン化Phe-tRNAfMet(CAU)を含むTrp枯渇TRAPシステムを代わりに用いた。 EDTAでリボソームを解離させた後、表5に示すプライマーと、RNase H不活性化逆転写酵素を用いてmRNAの逆転写を行った。EDTAで逆転写反応を停止させ、溶液をHEPESで中和した後、ビオチン化ペプチドをディスプレイしたcDNA/mRNA複合体を、ストレプトアビジンでコーティングしたビーズで選択的に回収し、リアルタイムPCRで定量した。参考文献1. 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Soc. 2013, 135, (14), 5433-40. tRNAとして、以下の(a)及び(b)のみを含む、翻訳系: (a) 開始tRNA;及び (b) 全長の85%以上同一の塩基配列からなる伸長tRNA。 前記(b)の伸長tRNAは、アンチコドンループ以外は全て同じ配列を有する、請求項1に記載の翻訳系。 1×106以上の異なるペプチドを含むペプチドライブラリを製造することができる、請求項1又は2に記載の翻訳系。 N1N2N3でコードされるアミノ酸を含むペプチドを1×106種以上含むペプチドライブラリの製造方法であって: 前記ペプチドライブラリの各ペプチドをコードするmRNAを含み、各mRNAが複数のN1N2N3を含むmRNAライブラリを調製する工程と; N1N2N3のいずれかのコドンに対するアンチコドンを有し、該コドンに対応するアミノ酸がチャージされたtRNAを加えた無細胞翻訳系で、前記mRNAライブラリの各mRNAを翻訳する工程と、を含む方法(但し、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され、;各N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されている。)。 前記mRNAライブラリに含まれる各mRNAが以下の式(I)で表される、請求項4に記載の方法: X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 〔式中、X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは4〜20から選択される任意の整数を表す。〕。 N1N2N3でコードされるアミノ酸を含むペプチドと、該ペプチドをコードするmRNAとの複合体を1×106種以上含むペプチド−mRNA複合体ライブラリの製造方法であって: 前記ペプチド−mRNA複合体ライブラリのペプチド部分をコードするmRNAを含み、各mRNAが複数のN1N2N3を含み、そのmRNAのORFの下流領域にピューロマイシンが結合している、ピューロマイシン結合mRNAライブラリを調製する工程と; N1N2N3のいずれかのコドンに対するアンチコドンを含み、該コドンに対応するアミノ酸がチャージされたtRNAを加えた無細胞翻訳系で、前記ピューロマイシン結合mRNAライブラリの各mRNAを翻訳し、ペプチド−mRNA複合体ライブラリを製造する工程と、を含む方法(但し、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され;N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されている。)。 前記ピューロマイシン結合mRNAライブラリに含まれる各mRNAが以下の式(I)で表される、請求項6に記載の方法: X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 式中、X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは4〜20から選択される任意の整数を表す。 前記N3は、1つの翻訳系内では、以下の(i)又は(ii)である、請求項4から7のいずれか1項に記載の方法:(i) シトシン(C)又はウラシル(U);(ii) アデニン(A)又はグアニン(G)。 前記N1N2N3が、1つの翻訳系内に16種類存在する、請求項4から8のいずれか1項に記載の方法。 前記N1N2N3がコードするアミノ酸が、非タンパク質性アミノ酸を含む、請求項4から9のいずれか1項に記載の方法。 前記N1N2N3がコードするアミノ酸が、すべて非タンパク質性アミノ酸である、請求項4から9のいずれか1項記載の方法。 前記N1N2N3のコドンに対応するアミノ酸がチャージされたtRNAが、アンチコドンループ以外は全て同じRNA配列を有する、請求項4から11のいずれか1項に記載の方法。 前記翻訳工程の後、ペプチドを大環状化する工程を含む、請求項4から12のいずれか1項に記載の方法。 下記式(I)で表されるmRNAライブラリにコードされるペプチドを1×106種以上含むライブラリ: X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 〔式中、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され;各N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されており;X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは4〜20から選択される任意の整数を表す。〕。 下記式(I)で表されるmRNAライブラリにコードされるペプチドを1×106種以上含むライブラリであって、ペプチドのそれぞれが、該ペプチドをコードするmRNAとの複合体を形成している、ライブラリ: X1-(N1N2N3)n-X2 (I) 〔式中、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され;各N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されており;X1及びX2は、それぞれ任意の数のアミノ酸からなるペプチドをコードするmRNAを表し、nは4〜20から選択される任意の整数を表す。〕。 前記N3は、1つの翻訳系内では、以下の(i)又は(ii)である、請求項14又は15に記載のペプチドライブラリ:(i) シトシン(C)又はウラシル(U);(ii) アデニン(A)又はグアニン(G)。 ライブラリを構成するペプチドが大環状を形成している、請求項14から16のいずれか1項に記載のペプチドライブラリ。 標的物質に結合するペプチドを同定するスクリーニング方法であって、 請求項4から13のいずれか1項に記載の方法で製造されたペプチドライブラリ、又は請求項14から17のいずれか1項に記載のペプチドライブラリと、標的物質とを接触させてインキュベートする工程と、 前記標的物質と結合したペプチドを選択する工程と、を含む方法。 標的物質に結合するペプチドを同定するスクリーニング方法であって、 請求項6から13のいずれか1項に記載の方法で製造されたペプチド−mRNA複合体ライブラリ、又は、請求項15から17のいずれか1項に記載のペプチド−mRNA複合体ライブラリに対して逆転写反応を行い、ペプチド−DNA複合体ライブラリを得る工程と、 前記ペプチド−DNA複合体ライブラリと、標的物質とを接触させてインキュベートする工程と、 前記標的物質と結合したペプチド−DNA複合体群を選択する工程と、 前記選択されたペプチド−DNA複合体群のDNAをPCR法で増幅する工程と、 前記増幅したDNAを転写してmRNAライブラリを製造し、そのmRNAのORFの下流領域にピューロマイシンを結合させてピューロマイシン結合mRNAライブラリを製造し、これを翻訳してペプチド−mRNA複合体ライブラリを製造する工程と、を含み、 前記逆転写反応を行う工程から、ペプチド−mRNA複合体ライブラリを製造する工程までを2回以上繰り返して、標的物質に親和性の高いペプチドを選択する、方法。 【課題】本発明は、任意のタンパク質性アミノ酸及び/又は非タンパク質性アミノ酸を、それぞれ任意の場所に任意の数取り込むことができるペプチドライブラリの製造方法等を提供することを課題とする。 【解決手段】本発明は、N1N2N3でコードされるアミノ酸を含むペプチドを1×106種以上含むペプチドライブラリの製造方法であって: 前記ペプチドライブラリの各ペプチドをコードするmRNAを含み、各mRNAが少なくとも1つのN1N2N3を含むmRNAライブラリを調製する工程と; N1N2N3のいずれかのコドンに対するアンチコドンを有し、該コドンに対応するアミノ酸がチャージされたtRNAを加えた無細胞翻訳系で、前記mRNAライブラリの各mRNAを翻訳する工程と、を含む方法(但し、N1、N2及びN3は、それぞれ独立に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)から選択され;各N1N2N3には、任意のアミノ酸が再割当されている。)、を提供する。【選択図】 なし


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