タイトル: | 特許公報(B1)_ニンニクスプラウトの粉末状物質 |
出願番号: | 2013100040 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A23L 1/212,A61P 39/06 |
上田 よしほ 前島 成好 前島 正容 JP 5348810 特許公報(B1) 20130830 2013100040 20130510 ニンニクスプラウトの粉末状物質 株式会社海洋牧場 503112558 株式会社不二工芸製作所 502269882 草間 攻 100083301 上田 よしほ 前島 成好 前島 正容 20131120 A23L 1/212 20060101AFI20131031BHJP A61P 39/06 20060101ALN20131031BHJP JPA23L1/212 CA61P39/06 A23L 1/212 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CiNii Thomson Innovation G−Search 特開2007−015958(JP,A) 特開2009−142201(JP,A) 特開2012−110238(JP,A) 特開2007−137794(JP,A) 園芸学研究,2006年,Vol. 5(3),p. 315-320 園学北陸支部要旨,2005年,p. 437 農耕と園芸,2009年 9月 1日,第64巻9号,p. 67 7 8 20130527 太田 雄三 本発明はニンニク(大蒜)の若芽(ニンニクスプラウト)の粉末状物質に関わり、詳細には、水耕栽培で得られたニンニクスプラウトの粉末状物質に関する。 古くからニンニク(Garlic, Allium sativum L.)は、独特の臭いと香味を有していることから、食物の味付けになどに広く使用されてきている。また、ニンニクには殺菌作用が強く、かぜなどのウイルスを殺す薬効作用があるともいわれており、最近ではニンニクのエキスを含有する健康食品等も登場している。 一般的に「ニンニク」と称して香味、食物の味付けなどに使用しているニンニクとは、ニンニク球根を構成している一つ一つの鱗茎であり、この鱗茎は、小さなリン片(側球)が集合して形成された球状の地下茎である。この側球は、葉が変形・肥大したものであり、外側から一枚の保護葉、貯蔵葉、発芽葉、および数枚の普通葉で構成され、最内部に生長点が存在する。 上記したように、ニンニクには独特の香味を有しており、健康増強に有益な食物であること、また近年の食文化の多様化に伴い、ニンニクの香味による味付けが広く行き渡り、今後益々ニンニクの需要が増大するものと思われる。 しかしながら、ニンニク自体には強烈な臭いがあることから、これを生のまま食することはほとんど無く、一部の嗜好家などにより、天ぷら油などにより唐揚げ、或いは直火による加熱処理等にして、食されているにすぎない。 一方、ニンニクの若い生葉或いは茎は、ニンニクの鱗茎に比較して臭いが少なく、また香味などの刺激も低減していることから、油炒めや煮物などに適する青物野菜として利用されているが、葉或いは茎が硬いといった問題があった。 したがって、ニンニクから得られる若芽或いはモヤシ等が検討されており、特許文献1にはニンニクの珠芽を培養するニンニクのもやしについての製造方法が提供されている。このニンニクのモヤシは、ニンニク特有の香味を備え、栄養価が高く、手軽に生のままでも食することができるとされているが、その製造方法としてはニンニク珠芽を水洗し、吸水せしめて、暗黒条件下/或いは照射条件下に培養する方法であり、ニンニクの球根を構成する珠芽一つ一つを水洗、吸水処理しなければならない手間がある。 一方、特許文献2にはニンニク茎葉野菜の栽培方法が提案されている。この栽培方法は、ニンニクの球根を暗黒条件下に特定の温度/湿度をコントロールして栽培する方法であり、その手段としては、土壌栽培或いは水耕栽培とされているが、実際の実施例においてはニンニク球根に土壌を覆土し、さらに暗室内で栽培するという土壌栽培方法しか開示されていないものであって、水耕栽培の詳細は一切不明である。 ところで最近に至り、各種十文字植物或いは緑黄野菜のスプラウト(発芽若芽)の栄養価が着目され、いくつかの野菜スプラウトが登場してきている。例えば、古くからは大豆、小豆等のスプラウト(モヤシ)を始めとし、最近では、かいわれ大根、そば、ブロッコリー、キャベツ等のスプラウトが登場し、生食野菜として広く愛用されるに至っている。 上記した特許文献2で提供されるニンニク茎葉野菜も、一つのニンニクスプラウトということができるが、その栽培方法は土壌栽培であり、その栽培に人手がかかること、また得られるスプラウト自体未だ硬いといった問題がある。 したがって、製造工程が簡単であって、さらに柔らかなニンニクスプラウトの製造方法の開発が望まれていた。 本発明者等は、かかる点を改良するべく検討を加え、ニンニクスプラウトの効果的な水耕栽培方法を提案している(特許文献3)。 本発明者等が提案したニンニクスプラウトの水耕栽培方法は、通常の土壌栽培方法に比較して簡便なものであり、また、天候に左右されず容易に暗室状態下で栽培することができることから、緑色野菜としてのニンニクスプラウトと異なり、黄白色野菜としてのニンニクスプラウトを継続的に得ることができる点で、極めて特異的なものである。 上記で得られた黄白色のニンニクスプラウトは、緑色ニンニクスプラウトを比較して柔らかく、味、香りがまろやかであり、且つ栄養価が高い、特異的な黄白色野菜であるが、本発明者等はさらにこの黄白色のニンニクスプラウトの応用を検討した結果、このものを乾燥させ、細かく裁断し、裁断した乾燥ニンニクスプラウトを微粉末状に粉砕して得たニンニクスプラウトの粉末状物質に、極めて高い抗酸化活性作用があることを見出した。 また更に、得られたニンニクスプラウトの粉末状物質が、食品調味料、或いは食品香味料として有効なものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。特公平4−16127号公報特許第2711975号掲載公報特許第4252101号掲載公報 したがって、本発明は、土壌栽培により得られたニンニクスプラウトと比較して柔らかく、味、香りがまろやかであり、且つ栄養価に高い、水耕栽培で得られた黄白色野菜としてのニンニクスプラウトの乾燥粉末状物質、特に、抗酸化活性作用を有するニンニクスプラウト粉末状物質、更には、食品調味料、或いは食品香味料としてのニンニクスプラウトの粉末状物質を提供することを課題とする。 かかる課題を解決するための本発明は、その基本的態様として、ニンニク球根を暗室状態にて水耕栽培して得た黄白色のニンニクスプラウトを、80℃以下の温度で乾燥させ、5〜20mmの長さに裁断し、裁断したニンニクスプラウトを微粉末状に粉砕して得たことを特徴とする、ニンニクスプラウトの粉末状物質である。 特に本発明は、抗酸化活性作用、すなわち、スーパーオキサイド(SOD)消去活性作用、ヒドロキシラジカル消去活性作用、或いは、一重項酸素消去活性作用等の抗酸化活性を有するニンニクスプラウト粉末状物質である。 より具体的には、本発明はこれらの抗酸化活性を有するニンニクスプラウト粉末状物質を含有してなる食品、特定保健食品である。 さらにまた、本発明は、食品調味料、食品香味料としてのニンニクスプラウト粉末状物質である。 本発明により提供されるニンニクスプラウトの粉末状物質は、水耕栽培により得た黄白色のニンニクスプラウトの粉末状物質であり、その抗酸化活性作用は極めて高いものである。 ニンニク自体は、食品の中でも高い抗酸化力を持つ食品として知られており、最近では、このニンニクを更に熟成させた「黒ニンニク」が登場し、黒ニンニクは、更に強い抗酸化力を有しているといわれている。 本発明が提供するニンニクスプラウトの粉末状物質は、食品としての生ニンニクは勿論のこと、強い抗酸化力を有しているといわれている黒ニンニクに比較しても、それより強いか、同程度の抗酸化力を有していることが判明した。 したがって、本発明が提供するニンニクスプラウトの粉末状物質は、その強い抗酸化活性により、健康食品、特に特定健康食品への応用性が高いものである。 また、独特の風味を有することから、粉末状物質自体を食品調味料、食品香味料として使用することができ、その応用性は極めて高いものである。 例えば、本発明のニンニクスプラウトの粉末状物質は、適当な容器に充填し、そのまま食品調味料、或いは食品香味料として使用することが可能であり、また、適当な充填剤と共にカプセル充填、或いは錠剤、顆粒状に成形し、特定保健食品として調製することができる利点を有している。本発明のニンニクスプラウトの粉末状物資の抗酸化作用として、スーパーオキサイド(SOD)消去活性作用、ヒドロキシラジカル消去活性作用、及び一重項酸素消去活性作用について、通常のニンニク、黒ニンニクにおける作用を対比して示した図である。 本発明は、上記したように、その基本的態様は、ニンニク球根を暗室状態にて水耕栽培して得た黄白色のニンニクスプラウトを、80℃以下の低温度の温風で乾燥させ、5〜20mmの長さに裁断し、裁断したニンニクスプラウトを微粉末状に粉砕して得たことを特徴とする、ニンニクスプラウトの粉末状物質である。 本発明で使用する原料となる黄白色のニンニクスプラウトは、ニンニク球根を暗室状態にて水耕栽培して得たものであるが、具体的には、本発明者等が先に提案している特許文献3(特許第4252101号掲載公報)に記載の方法により、効率的に製造することができる。 詳細には、ニンニク球根を、網目状を有する栽培カゴ上に載置して、その状態で栽培槽に収容し、栽培カゴ上に載置したニンニク球根の底部が水中に位置するように水又は養液水を栽培槽内で水位調整並びに循環給水させ、栽培カゴ上でニンニク球根よりニンニク若芽を生育させることを特徴とするニンニクスプラウトの水耕栽培により、製造することができる。 かかる、黄白色野菜としてのニンニクスプラウトから本発明の粉末状物質を調製するには、具体的には以下のようにして行うことができる。 すなわち、暗室状態で水耕栽培して得た黄白色のニンニクスプラウトを、低温温風乾燥させる。温風乾燥条件としては、80℃以下の温度、好ましくは40℃程度の低温風により乾燥させるのが良い。 次いで、乾燥された黄白色ニンニクスプラウトを、細かく裁断する。 裁断の程度は一概に限定できないが、次工程の微粉末化のために適する長さに裁断すれば良く、5〜20mm程度の長さに裁断するのが好ましい。 かくして裁断された乾燥ニンニクスプラウトを、汎用されている粉砕機、例えば、通常の粉砕機として使用されているハンマーミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて、本発明のニンニクスプラウトの微粉砕状物質を調整することができる。 かくして調製された本発明のニンニクスプラウトの粉末状物質は、さらに、過熱水蒸気による粉体殺菌機により殺菌処理を行い、その後適当な容器に充填し、そのまま食品調味料、或いは食品香味料として使用することが可能であり、また、適当な充填剤と共にカプセル充填、或いは錠剤、顆粒状に成形し、特定保健食品として調製することができる。 本発明が提供するニンニクスプラウトの粉末状物質には、抗酸化作用が極めて高いものであることが判明した。 その作用は、具体的には、スーパーオキサイド(SOD)消去活性作用、ヒドロキシラジカル消去活性作用、或いは、一重項酸素消去活性作用等の抗酸化活性であり、その抗酸化活性について、第三者分析委託企業に依頼した、ESR法によるスーパーオキサイド消去活性、ヒドロキシラジカル消去活性、並びに一重項酸素消去活性を、ニンニク野菜、黒ニンニクと比較して検討したところ、下記表1に示す結果であった。 上記の結果から、本発明のニンニクスプラウト粉末状物質の抗酸化活性は、ニンニク野菜の抗酸化力を大きく上回り、スーパーオキサイド消去活性並びに一重項酸素消去活性にあっては、約5倍の値であり、ヒドロキシラジカル消去活性は約2倍の値であった。 ニンニクは食品の中でも高い抗酸化力を持つ食品であり、ニンニクを熟成させた黒ニンニクは、熟成前と比較して抗酸化物質(ポリフェノール)等が増加することが知られている。 本発明のニンニクスプラウト粉末状物質にあっては、抗酸化力が強い黒ニンニクに比較しても、ヒドロキシラジカル消去活性は低いものであったが、スーパーオキサイド消去活性並びに一重項酸素消去活性にあっては、黒ニンニクに比較しても1.3〜1.4倍ほど高く、極めて強い抗酸化活性を示していた。 これらの対比を、図1に示した。 従来から、ニンニクに含まれる「アリシン」という成分に、抗酸化作用があることが知られている。もともとニンニクにはアリイン(Alliin)と称される天然のスルホキシド誘導体が含まれており、アリイン自体はシステインの誘導体である。 新鮮なニンニクを切ったり、すり下ろしたりすると、アリインが酵素アリイナーゼによってアリシンに変換され、このアリシンが、ニンニクの独特な芳香の原因物質であるといわれている。 そこで、本発明のニンニクスプラウト粉末状物質におけるアリインとアリシンの含有量を、アリインについてはHPLC−MS/MS法にて、アリシンについてはガスクロマトグラフ法により分析した結果、以下の表2に示す通りであった。 上記の分析結果からも判明するように、本発明のニンニクスプラウト粉末状物質には、抗酸化作用を有するアリインが多く含まれており、また独特の匂いの元となるアリシンの含有量が低く、効果的なニンニクスプラウト粉末状物質であることが良く理解される。 本発明が提供するニンニクスプラウト粉末状物質は、適当な容器に充填し、粉末状物資として、そのまま食品調味料、食品香味料として、使用することができる。 例えば、ラーメンに振りかけて、ニンニク特有の香味、芳香をもつラーメンとして食することができ、その他、料理の下味、或いは隠し味として、調理段階で食材と共に使用して、調理された料理に独特の味付けを施すことができるものである。 また、適当な充填剤と共にカプセル充填、或いは錠剤、顆粒状に成形したり、或いはビスケット中に含有させたりして、特定保健食品として調製することができるほか、パン生地に添加し、ガーリックパン等を簡便に調製することが可能である。 以下に、本発明を具体的実施例により、より詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例1:黄色ニンニクスプラウトの調製 特許文献3(特許第4252101号掲載公報)に記載の方法に従い、暗室条件下で、ニンニクの球根を栽培カゴに載置して、栽培槽にセットして、栽培溶液でニンニク球根の底部を浸す状態となるよう給水して6時間放置し、次いで2時間排水を行うことで、ニンニク球根の底部への栽培栄養液の供給を中止した。この操作を繰り返えすことにより、5日目程度から一部のニンニク球根からの若芽の発芽が認められた。 続いて、栽培栄養液でニンニク球根の底部を浸す状態となるよう給水して6時間放置し、次いで2時間排水を行うことで、ニンニク球根の底部への栽培栄養液の供給を中止した。この操作を繰り返えすことにより、栽培カゴ上に載置した全てのニンニク球根から若芽の発芽が認められた。 この状態で水の供給・排水をそれぞれ4時間単位で繰り返した。この操作を繰り返すことにより急速に若芽の生育が開始され、それに伴ってニンニク球根が球根を構成する鱗茎ごとに分離されてきた。 発芽開始後略16日後にスプラウトの長さ25cm程度まで生育した。この段階で、スプラウトを収穫し、黄白色野菜としてのニンニクスプラウトを得た。実施例2:ニンニクスプラウト粉末状物質の調製 上記の実施例1で得た黄色ニンニクスプラウトを、40℃の低温風による風乾で乾燥させたのち、長さ15mm程度に裁断した。 裁断して得られた乾燥ニンニクスプラウトを、ハンマーミルにより微粉末化し、ニンニクスプラウト微粉末状物質を調製した。 調製されたニンニクスプラウト微粉末状物質を、過熱水蒸気粉体殺菌機による殺菌処理(連続加圧殺菌機:G−Lab社製)を施し、目的とする本発明のニンニクスプラウト微粉末状物質を得た。 得られたニンニクスプラウト微粉末状物質の抗酸化活性は、表1並びに図1に示したとおりであり、そのアリイン並びにアリシンの含有量は表2に示した通りであった。 本発明により、土壌栽培により得たスプラウトと比較して柔らかく、味、香りがまろやかであり、且つ栄養価に高い水耕栽培による黄色ニンニクスプラウトから、抗酸化力に優れたニンニクスプラウト微粉末状物質が提供される。 本発明が提供するニンニクスプラウトの粉末状物質は、その強い抗酸化活性により、健康食品、特に特定保健食品への応用性が高いものである。 また、独特の風味を有することから、粉末状物質自体を食品調味料、食品香味料として使用することができ、その応用性は極めて高いものであり、その産業上の利用性は、多大なものである。 ニンニク球根を暗室状態にて水耕栽培して得た黄白色のニンニクスプラウトを、80℃以下の温度で乾燥させ、5〜20mmの長さに裁断し、裁断したニンニクスプラウトを微粉末状に粉砕して得たことを特徴とする、ニンニクスプラウトの粉末状物質。 抗酸化活性作用を有する、請求項1に記載のニンニクスプラウト粉末状物質。 抗酸化活性作用が、スーパーオキサイド(SOD)消去活性作用である、請求項2に記載のニンニクスプラウト粉末状物質。 抗酸化活性作用が、ヒドロキシラジカル消去活性作用である、請求項2に記載のニンニクスプラウト粉末状物質。 抗酸化活性作用が、一重項酸素消去活性作用である、請求項2に記載のニンニクスプラウト粉末状物質。 請求項1〜5のいずれかに記載のニンニクスプラウト粉末状物質を含有してなる食品、特定保健食品。 食品調味料、食品香味料としての請求項1〜5のいずれかに記載のニンニクスプラウト粉末状物質。【課題】土壌栽培により得られたニンニクスプラウトと比較して柔らかく、味、香りがまろやかであり、且つ栄養価に高い、水耕栽培で得られた、抗酸化活性を有する黄白色野菜としてのニンニクスプラウト微粉末状物質を提供すること。【解決手段】ニンニク球根を暗室状態にて水耕栽培して得た黄白色のニンニクスプラウトを乾燥させ、細かく裁断した後、裁断したニンニクスプラウトを微粉末状に粉砕して得たことを特徴とするニンニクスプラウトの粉末状物質であり、スーパーオキサイド(SOD)消去活性作用、ヒドロキシラジカル消去活性作用、或いは、一重項酸素消去活性作用等の抗酸化活性が高く、健康食品、特定保健食品への応用性が高く、また、食品調味料、食品香味料として使用することができるニンニクスプラウト微粉末状物質である。【選択図】図1