タイトル: | 公開特許公報(A)_成熟インスリンポリペプチドの作製方法 |
出願番号: | 2013098777 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 1/19,C12P 21/02 |
アンダーセン, アッセー, スロウズ クリステンセン, ラース, ヘイランド JP 2013208119 公開特許公報(A) 20131010 2013098777 20130508 成熟インスリンポリペプチドの作製方法 ノボ・ノルデイスク・エー/エス 596113096 園田 吉隆 100109726 小林 義教 100101199 アンダーセン, アッセー, スロウズ クリステンセン, ラース, ヘイランド EP 05107513.3 20050816 C12N 15/09 20060101AFI20130913BHJP C12N 1/19 20060101ALI20130913BHJP C12P 21/02 20060101ALI20130913BHJP JPC12N15/00 AC12N1/19C12P21/02 E 18 1 2008526490 20060815 OL 29 4B024 4B064 4B065 4B024AA01 4B024BA02 4B024CA01 4B024CA09 4B024CA11 4B024CA20 4B024DA06 4B024DA12 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA01 4B024HA11 4B064AG16 4B064CA06 4B064CA19 4B064CC24 4B064DA01 4B065AA26X 4B065AA72X 4B065AA90Y 本発明は、酵母において成熟ヒトインスリン類似体を作製するための方法に関連する。 インスリンは、ランゲルハンス島のβ細胞で生産されるポリペプチドホルモンである。活性なインスリン分子は、2つのジスルフィド架橋によって連結されるB-鎖及びA-鎖からなる2鎖の分子である。インスリンは、構造B−C−Aを有する前駆体分子プロインスリンとして合成され、このC-ペプチド鎖は、A-鎖のN末端アミノ酸残基とB-鎖のC末端アミノ酸残基を連結する。成熟した2鎖のインスリンは、A-鎖及びB-鎖との接合部に位置する塩基性アミノ酸残基の対で、C-ペプチドの切断によって形成される。A-鎖及びB-鎖は、A7とB7のCys残基の間及びA20とB19のCys残基の間の2つのジスルフィド架橋を併せ持つ。さらに、生物学的に活性なインスリン分子は、位置A6及びA11にCys残基間の内部ジスルフィド橋を有する。 組換えDNA技術の発達の後、遺伝的に修飾された宿主細胞におけるインスリン及びその前駆体を生産するために数多くの方法が記述されている。したがって、大腸菌からインスリンを作製する方法は、例えば、Frank, B.H., Pettee, J.M., Zimmerman, R.E. & Burck, P.J. Peptides. Synthesis-Structure-Function. Proceedings of the Seventh American Peptide Symposium (D.H.Rich及びE.Gross編集). Pierce Chemical Company, p. 729 (1981)に開示される。大腸菌は発現されたポリペプチドをフォールディングするための細胞機構を有さず、成熟インスリンにA-鎖及びB-鎖を連結するジスルフィド架橋を構築するので、この方策には、再フォールディングとその後のC-ペプチドの切断の間のジスルフィド架橋のインビトロ構築などの多くのインビトロプロセシング工程が含まれる。 大腸菌とは対照的に、真核生物は、ジスルフィド架橋をフォールディングして構築するために必要な機構を有しており、ゆえに、遺伝的に修飾した生物体における成熟したインスリンの生産のために良好な候補であるようである。米国特許第4914026号では、酵母宿主細胞の酵母α-因子リーダー配列に連結されるヒトプロインスリン遺伝子の挿入、及びプロインスリンが発現されて、成熟形態で分泌される条件下で、栄養培地中で形質転換された酵母細胞を生育することによる、酵母中での成熟インスリンの作製方法が開示される。 Thim等は、Proc Natl. Acad. Sci. USA, volume 83, 6766-6770において、RREAENLQKR(配列番号:1)、RREAPLQKR(配列番号:2)、RREALQKR(配列番号:3)、KREALQKR(配列番号:4)、及びRRLQKR(配列番号:5)などの修飾されたC-ペプチドを有する多くのインスリン前駆体とヒトプロインスリンの発現を開示している。また、配列番号:5は、Thim等, in FEBS Letters, volume 212, number 2, 307-312によって開示される。 さらに、国際公報第97/03089号は、式BZAを有するインスリン前駆体であって、B及びAが少なくとも一のジスルフィド結合によって連結されているヒトインスリンのA及びBペプチド鎖であり、Zが少なくとも一のタンパク質分解性切断部位、例えばKREQKLISEEALVDKR(配列番号:6)を含んでなるポリペプチドであるインスリン前駆体の発現を開示した。 しかしながら、開示されたインスリン前駆体は、培養培地に僅かな量の成熟インスリンの分泌を引き起こすだけである。 欧州特許第0163529A、PCT特許出願第95/02059号及び同第90/10075号は、培養液からの初回回収の後に成熟インスリン又はインスリン類似体に酵素的に転換される酵母中のインスリン又はインスリン類似体の前駆体の発現に基づいた、インスリン及びインスリン類似体の作製方法を開示する。前駆体分子は特定の修飾C-ペプチドを含んでなり、さらにインスリンB-鎖のN末端伸展を含みうる。修飾されたC-ペプチド及びB-ペプチドの可能なN末端伸展は、酵母細胞中で切断されないように設定されているため、A-鎖及びB-鎖が修飾されているが正しく配置されたジスルフィド架橋を有するC-ペプチドによって連結されたままとなっている1鎖のペプチドとして前駆体が分泌される。そして、成熟インスリン又はインスリン類似体産物は、C-ペプチド及びおそらくN末端伸展を切断するために、多くの続くインビトロ酵素処置によって得られる。これらの酵素処置は時間がかかり、しばしば費用が高く、高価なクロマトグラフィ工程などのようなさらに続く生産工程においてその後取り除かれなければならない付加的な不純物を導入する。 分泌顆粒を天然に形成することができない遺伝的に操作した動物細胞における成熟したインスリンを作製するための方法は、米国特許第6348327号において開示される。 本発明の目的は、高価で時間がかかる以降の精製方法工程を避けるために、十分にプロセシングされた成熟ヒトインスリン類似体を分泌することができる真菌類株を開発することである。 一態様では、本発明は、ヒトインスリン類似体の前駆体をコードするDNAベクターを含んでなる真菌類細胞を培養することによる成熟ヒトインスリン類似体の作製方法であって、該前駆体が、インスリンペプチドのA-鎖及びB-鎖それぞれへの両接合部で切断部位と隣接した連結ペプチドを含んでなり、真菌類細胞内で切断される該切断部位により、細胞が正しくプロセシングされて成熟した、2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することができる方法に関する。 本発明によるヒトインスリン類似体は、真菌類細胞内で1鎖の前駆体として発現され、細胞内で切断され、更なるインビトロ処理の必要性のない成熟した2鎖のヒトインスリン類似体として分泌される。 インスリン分子のA-鎖及びB-鎖と連結ペプチドの各々の接合部の切断部位は同じか又は異なるが、典型的には同じでありうる。一実施態様では、A-鎖及びB-鎖への接合部の切断部位はともにKex2切断部位である。 他の実施態様では、切断部位はYps1部位である。 連結ペプチドは、正しく成熟されたインスリン類似体ポリペプチドを分泌するために真菌類細胞内での切断を確認するように最適化されるアミノ酸組成を有するであろう。 本発明の一実施態様では、A-鎖に隣接する切断部位の最後から2番目の位置のアミノ酸残基がPhe、Leu、Ile、Tyr、Trp、Val、Met及びAlaからなる群から選択される。 本発明の他の実施態様では、連結ペプチドは、A-鎖に隣接する切断部位に対して最後から2番目の位置にLeu、Ile、Tyr、Arg、Lys、His、Pro、Phe、Tyr、Trp、Met、Val又はAlaアミノ酸残基を含んでなるであろう。 本発明の更なる実施態様では、連結ペプチドは、この位置にLeu又はIleアミノ酸残基を含んでなるであろう。 また、本発明者等は、同じ位置のアミノ酸残基がAsp、Glu又はGlyであってはならないということを発見した。 ヒトインスリンのC-ペプチドのサイズは、35のアミノ酸残基である。したがって、本発明の一態様では、連結ペプチドは、天然のC-ペプチドとおよそ同じ長さのものである。 一実施態様では、連結ペプチドは2−35、2−34、2−33、2−31、2−30、2−29、2−28、2−27、2−26、2−25、2−24、2−23、2−22、2−21、2−20、2−19、2−18、2−17、2−16、2−15、2−14、2−13、2−12、2−11、2−10、2−9、2−8、2−7、2−6、2−5、2−4、又は2−3のアミノ酸残基である。 更なる実施態様では、連結ペプチドは3−35、3−34、3−33、3−31、3−30、3−29、3−28、3−27、3−26、3−25、3−24、3−23、3−22、3−21、3−20、3−19、3−18、3−17、3−16、3−15、3−14、3−13、3−12、3−11、3−10、3−9、3−8、3−7、3−6、3−5又は3−4のアミノ酸残基である。 更なる実施態様では、連結ペプチドは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30 31、32、33、34又は35のアミノ酸残基からなるであろう。 真菌類細胞は正しくプロセシングされたヒトインスリン類似体を高濃度に分泌するであろう。一実施態様では、真菌類細胞は、少なくともおよそ20からおよそ50mg/lの正しくプロセシングされた成熟した2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することが可能である。 他の実施態様では、真菌類細胞は、少なくともおよそ20からおよそ80mg/lの正しくプロセシングされた成熟した2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することが可能である。 さらに他の実施態様では、真菌類細胞は、少なくともおよそ100mg/lの正しくプロセシングされた成熟した2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することが可能である。 インスリン類似体前駆体分子からの連結ペプチドの切断が効率的であればあるほど、標的タンパク質の最終的な収率が高くなる。したがって、連結ペプチドのアミノ酸組成によりA-鎖及びB-鎖それぞれとの接合部での切断部位の切断を効率的にすることが望ましい。 本発明の一実施態様では、発現された1鎖のインスリン前駆体分子の少なくとも50%は、成熟した2鎖の分子に切断される。 他の実施態様では、発現された1鎖のインスリン前駆体分子の少なくとも60%は、成熟した2鎖の分子に切断される。 なお更なる実施態様では、発現された1鎖のインスリン前駆体分子の少なくとも70%は、成熟した2鎖の分子に切断される。 なお更なる実施態様では、発現された1鎖のインスリン前駆体分子の少なくとも75%は、成熟した2鎖の分子に切断される。 なお更なる実施態様では、発現された1鎖のインスリン前駆体分子の少なくとも85%又は少なくともの95%は、成熟した2鎖の分子に切断される。 真菌類細胞は、成熟したインスリン類似体を発現して、分泌することが可能な任意の真菌類細胞でありうる。しかしながら、酵母、特にS.セレビシア(S. cerevisiae)が本目的に十分に適することがわかった。 ヒトインスリン分子は、B-鎖に1つ及びA-鎖に2つの3つのヘリックス構造を有する。A鎖は、位置A9−A11のループによって繋がれる2つのヘリックスセグメントA2−A8及びA13−A19を含んでなり、インスリンのT-状高次構造の残基B9−B19はB-鎖の中心のα−ヘリックスを形成する。インスリン分子内の特定の突然変異により、生物学的な活性を高くするこれらのヘリックス構造の安定性が上がることが示された(N: Kaarsholm等, Biochemistry 1993, 32, 10773-10778を参照)。一般的に、本方法によって調製されるインスリン類似体は突然変異を含んでなり、この突然変異はヒトインスリン類似体分子のヘリックス構造の安定した効果を有し、これによって分泌収率が高くなるであろう。 したがって、一実施態様では、本発明に係る方法によって生産されるインスリン類似体は、一又は複数の位置A8、B10及びA14のインスリン分子に突然変異を含んでなり、更なる実施態様では、これらの位置の天然のアミノ酸残基は、Asp、Glu、His、Gln及びArgからなる群から選択されるアミノ酸残基に変異しうる。 インスリン分子の更なる突然変異には、B28及びB29位置の突然変異、A18位置の突然変異、B30又はB1アミノ酸残基の欠失、及びA21アミノ酸残基の突然変異が含まれる。 本発明の一実施態様では、位置B28のアミノ酸残基はAspであり、位置B29のアミノ酸残基はLysである。本発明の他の実施態様では、位置B28のアミノ酸残基はLysであり、位置B29のアミノ酸残基はProであり、位置B30のアミノ酸残基はThrである。 本発明の他の実施態様では、位置A18のアミノ酸はGlnである。 本発明の他の実施態様では、位置A21のアミノ酸残基はGlyである。 本発明の他の実施態様では、位置B10のアミノ酸残基はGluである。 本発明の他の実施態様では、位置A8のアミノ酸残基はHisである。 本発明の他の実施態様では、位置A14のアミノ酸残基はGluである。 本発明のなお更なる実施態様では、位置B10のアミノ酸残基はGluであり、位置A8のアミノ酸残基はHisであり、位置A14のアミノ酸残基はGluである。 本発明のなお更なる実施態様では、位置B30のアミノ酸残基は欠失される。 一実施態様では、ヒトインスリン前駆体類似体は、アミノ酸配列B(1−30)−X−X−Z−Y−Y−A(1−21)を有し、このとき、B(1−30)がヒトインスリンのB-鎖又はその類似体であり、A(1−21)がヒトインスリンA-鎖又はその類似体であり、互いに独立する各々のX及び各々のYがLys又はArg又はYps1部位であり、Zが1からおよそ35のアミノ酸残基を有するペプチド配列であり、ただし、ヒトインスリンA-鎖及び/又はB-鎖の天然のアミノ酸残基のうちの少なくとも1が他のアミノ酸残基に変異されている。 一実施態様では、配列X−X及びY−YはともにLys−Argである。 他の実施態様では、配列X−X及びY−Yは、ともにArg−Arg、Lys−Lys又はArg-Lysである。 なお更なる実施態様では、X−XはLys−Argであり、Y-YはArg-Argであり、又はX−XはArg-Argであり、Y-YはLys−Argである。 一実施態様では、Zは、2−35、2−34、2−33、2−31、2−30、2−29、2−28、2−27、2−26、2−25、2−24、2−23、2−22、2−21、2−20、2−19、2−18、2−17、2−16、2−15、2−14、2−13、2−12、2−11、2−10、2−9、2−8、2−7、2−6、2−5、2−4又は2−3のアミノ酸残基の大きさである。 更なる実施態様では、Zは、3−35、3−34、3−33、3−31、3−30、3−29、3−28、3−27、3−26、3−25、3−24、3−23、3−22、3−21、3−20、3−19、3−18、3−17、3−16、3−15、3−14、3−13、3−12、3−11、3−10、3−9、3−8、3−7、3−6、3−5又は3−4のアミノ酸残基の大きさである。 本発明の一実施態様では、Zは、2、3、4、5、7、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30 31、32、33、34及び35のアミノ酸残基の大きさであってもよい。 本発明の他の実施態様では、Zは3−20のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−19のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−18のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−15のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−14のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−13のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−12のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−11のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−10のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−9のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−8のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−7のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−6のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−5のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の他の実施態様では、Zは3−4のアミノ酸残基のアミノ酸配列である。 本発明の一実施態様では、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基は、Leu、Ile、Tyr、Arg、Lys、His、Pro、Phe、Trp、Val、Met及びAlaからなる群から選択される。 本発明の一実施態様では、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はLeuである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はIleである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はTyrである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はArgである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はLysである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はHisである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はProである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はPheである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はTrpである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はMetである。 本発明の一実施例において、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はValである。 本発明の一実施態様では、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のアミノ酸残基はAlaである。 本発明の一実施態様では、Zは配列AspGlyLeuGly(配列番号:7)を有する。 残りのZはコード可能なアミノ酸残基であってよく、同じでも異なっていてもよい。しかしながら、一実施態様では、切断部位Y−Yに対して最後から2番目の位置のZのアミノ酸残基は、Asp、Glu又はGlyでない。 他の態様では、本発明は、連結ペプチドを含むヒトインスリン類似体前駆体をコードするDNA配列であって、該連結ペプチドが、真菌類細胞内の切断部位の十分な切断により、細胞が正しくプロセシングされて成熟した、2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することができるように設定されているDNA配列に関する。 他の態様では、本発明は、連結ペプチドを含むヒトインスリン類似体前駆体をコードするDNA配列を含んでなる発現ベクターであって、該連結ペプチドが、真菌類細胞内の切断部位の十分な切断により、細胞が正しくプロセシングされて成熟した、2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することができるように設定されている発現ベクターに関する。 更なる態様では、本発明は、連結ペプチドを含むヒトインスリン類似体前駆体をコードするDNA配列を含む発現ベクターを含んでなる形質転換された真菌類細胞であって、該連結ペプチドが、真菌類細胞内の切断部位の十分な切断により、細胞が正しくプロセシングされて成熟した、2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することができるように設定されている形質転換された真菌類細胞に関する。 本発明に係る方法によって生産されるヒトインスリン類似体は、インスリンに感受性がある状態の治療に用いられうる。ゆえに、例えば重度に傷害を受けた人及び大手術を受けた人に多く見られるような高血糖症、1型糖尿病、2型糖尿病の治療に用いられうる。 便宜的に、インスリン類似体は、他の種類のインスリン、例えばより急速な作用開始を有するインスリンの類似体と混合して用いられてもよい。このようなインスリン類似体の例は、例えば欧州特許第214826号、欧州特許第375437号及び欧州特許第383472号を含む欧州特許出願に記述される。 更なる態様では、本発明は、適切な薬学的に受容可能なアジュバント及び添加剤、例えば安定化、保存又は等張性に適する一又は複数の薬剤と組み合わせてヒトインスリン類似体を含有してなる製薬製剤に関する。pSA50と称する酵母プラスミドの例を示す。プラスミドは、サッカロミセス・セレビシアTPI遺伝子の転写プロモーターと転写ターミネーターの間にプラスミドへ挿入されたEcoRI−XbaI断片を含んでなる発現カセットを含む。実施例3に記載の、インスリン前駆体 B(1−30)−KRDGLGKR−(A1−21)を含むNcoI-XbaI DNA断片であって、A18Q(配列番号:8)及び対応するアミノ酸配列(配列番号.10)を示す。1.25Lの開始容量を用いた発酵槽への添加速度(g添加/分)に対する経時的な特徴を開示する。また、時間との関係で発酵槽からの排出ガスにおける二酸化炭素濃度も示す。600nmで測定される光学濃度及びL発酵培養液当たりのインスリン(desB30インスリンを含む)の算出濃度に対する経時的な特徴を開示する。 発酵培養液への成熟した生成物の直接的な分泌によるインスリンの産生は、各々の端に切断部位が隣接した連結ペプチドを含んでなるインスリン前駆体の細胞内プロセシングを必要とする。このような連結ペプチドは、BがヒトインスリンのB-鎖であり、Wがペプチド鎖の変化する長さである、タイプB-KR(W)nKR−Aのものでありうる。細胞内プロセシングは、ゴルジプロテアーゼKex1及びKex2によって促される。切断は、第一工程のKex2がA-鎖に付着されるKR配列で切断され、1鎖の分子を2鎖の分子に変換する複数の段階的な工程である。次いで、Kex2は、連結ペプチドWを切り離し、ジペプチドKRがB-鎖のC末端アミノ酸にまだ連結されている2鎖の中間インスリン分子を生じるであろう。最後に、Kex1は、熟成した2鎖の分子を生じる終わりのKRペプチド配列を取り除くであろう。 A鎖接合部の切断部位の効率的な切断が切断過程の更なる進行に重要であることが実験から示され、本発明に係る連結ペプチドが、A-鎖Kex2での切断部位のインビボ切断を効率的にして、付加的なインビトロプロセシング工程を必要とせずに分泌された2鎖のインスリン分子の収率が高くなるように設定される。 酵母からの活性な成熟した2鎖のヒトインスリン類似体の多量な分泌は、製薬目的のために十分に高い純度のヒトインスリン類似体を産生するために必要な、後続する精製工程の回数を有意に減少するであろう。したがって、米国特許第4916212号において開示される酵母におけるインスリンの作製方法では、インスリン前駆体は、2つの工程においてヒトインスリンに変換される。この工程は、すなわち1鎖のインスリン前駆体B(1−29)−Alal−Ala−Lys−A(1−21)をヒトインスリンのエステルに変換するためのペプチド転移、次いでインスリンエステルのヒトインスリンへの加水分解である。各々の変換工程は、最初の分離工程と少なくとも一の後続の精製工程を必要とするであろう。したがって、少なくとも一の酵素的変換を含む成熟した2鎖のインスリンを生産するためには少なくとも6つの更なる工程が必要である。 製薬生成物の場合に効率よく除去されるはずである部分的に切断された不純物又は非切断の不純物を100%切断と切り離すために行う酵素的な切断はないことは周知である。したがって、各切断工程の後に、少なくとも一の単離又は精製工程、一般的に交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィなどによるクロマトグラフィの精製が続くであろう。商業的な規模で用いられるクロマトグラフィのカラム材料は非常に高価であり、したがって、このようなクロマトグラフィ工程の回数を減少することは生産経済に意味のある影響を及ぼす。後続の変換及び精製工程の減少は、この方法に費やす労働作業の量及び時間を更に減少し、ゆえに更に生産経済を向上させるであろう。 成熟した2鎖のインスリン類似体が培養液から直接高収率で単離される本方法において、製薬的な使用のために十分な純度の生成物を産生するために必要な後続の工程ははるかに少ない。 本発明に係る方法によって生産されるインスリン類似体は、インスリン分子のヘリックス構造を安定化する修飾に加えて、A-鎖及びB-鎖の特定の位置で修飾してもよい。したがって、位置B28のアミノ酸残基はAspであってもよい。他の種類のインスリン類似体において、位置B1のアミノ酸残基は欠失されている。この種のインスリン類似体の具体例は、desB1ヒトインスリンである。 他の種類のインスリン類似体において、位置B30のアミノ酸残基は欠失されている。他の種類のインスリン類似体において、位置B28のアミノ酸残基はLysであり、位置B29のアミノ酸残基はProである。 他の種類のインスリン類似体において、位置A18のアミノ酸はGlnであってもよく、なお更なる実施態様では、位置A21のアミノ酸残基はGlyであってもよい。 インスリン前駆体類似体をコードするDNA配列はゲノム起源又はcDNA起源のものでよく、例えばゲノムないしcDNAのライブラリを調製して、標準的な技術に従って合成オリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションによってポリペプチドのすべて又は一部をコードするするDNA配列に関してスクリーニングすることによって得られうる(例として、Sambrook, J, Fritsch, EF and Maniatis, T, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989を参照)。また、インスリン前駆体をコードするDNA配列は、確立された標準的な方法、例えばBeaucage及びCaruthers, Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859 - 1869によって記述される亜リン酸アミダイト法又はMatthes等, EMBO Journal 3 (1984), 801 - 805によって記述される方法によって合成して調製されてもよい。また、例えば米国特許第4683202号又はSaiki等, Science 239 (1988), 487 - 491に記載のように、DNA配列は、特定のプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって調製されてもよい。 DNA配列は、組換えDNA手順を行ってもよく、ベクターの選択は導入すべき宿主細胞によることが多いであろう。したがって、ベクターは自己複製するベクター、すなわち染色体外の独立体として存在すし、その複製が染色体複製から独立しているベクター、例えばプラスミドであってもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入される場合、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、組み込んでいる染色体(一又は複数)と共に複製されるものであってもよい。 好ましくは、ベクターは、インスリン前駆体をコードするDNA配列がDNAの転写に必要な付加的なセグメント、例えばプロモーターに作用可能に連結されている発現ベクターである。プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示す任意のDNA配列であってよく、宿主細胞に相同な又は異種なタンパク質をコードする遺伝子から得られてもよい。 酵母宿主細胞における使用に適切なプロモーターの例には、酵母糖分解遺伝子(Hitzeman等, J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073 - 12080;Alber及びKawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982), 419 - 434)ないしはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Young等, in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender等, eds.), Plenum Press, New York, 1982)からのプロモーター、又はTPI1(米国特許第4599311号)又はADH2-4c(Russell等, Nature 304 (1983), 652 - 654)プロモーターが含まれる。 また、インスリン前駆体をコードするDNA配列は、必要ならば、適切な転写終結因子、ポリアデニル化シグナル、転写促進因子配列及び翻訳促進因子配列に作用可能に連結されうる。さらに、本発明の組み換えベクターは、問題の宿主細胞においてベクターが複製することを可能にするDNA配列を更に含んでもよい。 宿主細胞の分泌経路にインスリンを導くために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列又はプレ配列としても知られる)は、組み換えベクターにおいて提供されうる。分泌シグナル配列は、正しいリーディングフレーム内のインスリン前駆体をコードするDNA配列に結合される。分泌シグナル配列は、ペプチドをコードするDNA配列に対して5'に共通して配位する。シグナルペプチドは天然に生じるシグナルペプチド又はその機能的な部分であってもよいか又は、合成ペプチドであってもよい。 また、酵母における効率的な分泌のために、リーダーペプチドをコードする配列は、シグナル配列の下流で、インスリン前駆体をコードするDNA配列の上流に挿入してもよい。 DNA配列又は組み換えベクターが導入される酵母宿主細胞は、インスリン前駆体を発現することができる任意の酵母細胞であってよく、酵母菌属(Saccharomyces spp.)又は分裂酵母菌属(Schizosaccharomyces spp.)、特にサッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)又はサッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)の菌株が含まれる。好適な酵母細胞の更なる例は、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、例えばクルイベロミセス・ラクチス(K. lactis)、ハンセヌラ(Hansenula)、例えばハンセヌラ・ポリモルファ(H. polymorpha)、又はピキア(Pichia)、例えばピキア・パストリス(P. pastoris)の菌株である(Gleeson等, J. Gen. Microbiol. 132, 1986, pp. 3459-3465;米国特許第4882279号を参照)。 異種性のDNAにて酵母細胞を形質転換して、異種性のポリペプチドをそこから生産するための方法は、例えば米国特許第4599311号、同第4931373号、同第4870008号、同第5037743号及び同第4845075号に記載される。形質転換細胞は、選択マーカー、一般的な薬剤耐性、又は特定の栄養分、例えばロイシンの非存在下での生育能によって決定される表現型によって選択される。酵母に用いられる好適なベクターは、米国特許第4931373号に開示されるPOT1ベクターである。 本発明に係る方法は、いわゆる発酵方法である。好ましくは、発酵は、限定するものではないが空気、酸素及びアンモニアを含む加圧した無菌のガスの添加のための供給ラインを有する無菌の撹拌タンク内で行われる。発酵タンクは、pH、温度、圧力、撹拌速度、溶存酸素レベル、液内容、気泡レベル、添加速度及び酸と塩基を与える速度をモニターするための、装置/センサーを具備しうる。 温度は、およそ25からおよそ35℃、およそ26からおよそ31℃、又はおよそ26からおよそ29℃の範囲内であってよい。pHは、およそ4.0からおよそ6.8、又はおよそ5.0からおよそ6.5の範囲であろう。 撹拌をコントロールして、最低5%の飽和での最小限の溶存酸素濃度を確保する。 さらに、発酵タンクは、生理化学的な形状を問わず生成物と代謝産物の濃度、細胞密度のレベルをモニタリングするための光学装置を具備しうる。揮発性物質の消費及び形成は、発酵タンクからのガス入口及びガス出口におけるガス分析を用いてモニターする。モニターされた変数のすべてのシグナルを、変数を所定の範囲内で維持させる、又は時間との関係で所定の特徴に従って連続的に変化させる、コントロール目的に用いることができる。あるいは、変数は、他のモニターされた変数のシグナル変化に応じてコントロールする。 発酵の間に生産される所望の生成物は、可溶性細胞外物質として、又は可溶性物質又は凝集した物質を含む不溶性物質の形態で細胞内物質として存在する。生成物の形成は、恒常的又は誘導されるものであり、微生物の成長に対して依存的又は非依存的である。発酵方法は、100mLから200000Lの範囲の実用的な容量を有するタンク内で実施される。発酵方法は、バッチ法、流加培養法、反復流加培養法又は連続法として操作されうる。 発酵方法において細胞を培養するために用いる培地は、適切な補助物質を含有する最少培地又は混合培地などの、宿主細胞を生育するために好適な任意の従来の培地であってよい。適切な培地は、市販の供給元から入手可能であるか又は公開された製法(例えばアメリカ培養細胞系統保存機関のカタログにおいて)に従って調製されうる。したがって、培地は、少なくとも一の炭素源、一又は複数の窒素源、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、リン酸塩、硝酸塩及び硫酸塩の塩類を含む必須塩類、微量金属類、水溶性ビタミン、限定するものではないがプロテアーゼ阻害剤、安定剤、リガンド、消泡剤及びインデューサーを含む加工助剤を含有するであろう。培地は、熱による殺菌などのいくつかの操作条件で液体培地に分散するか、又はある程度沈殿する構成成分を含有してもよい。培地は、いくつかの液体及び気溶体を混合することによって作製されてもよい。これらの溶液は、発酵タンクに入る前に混合されてもよく、又は、所定の比率で加えられる異なる液体流として発酵タンクに供給される。培地成分の異なる液溶間の比率は発酵方法の異なる段階の間に変化しうる。これは、培地の全体の組成物が発酵過程の間に異なりうることを意味する。 好適な発酵培地は、20〜60mMのPO43−の塩類、50〜70mMのK+、20〜35mMのSO42−、4〜6mMのNa+、6〜13mMのMg2+、0.5〜1.5mMのMn2+、0.02〜0.04mMのCu2+、0.1〜0.3mMのFe2+ 、0.01〜0.05mMのZn2+、複合のアミノ酸供与源の一部として加えられる微量のCo、Mo及びNi、1〜40g/Lの酵母抽出物、m-イノシトール(100〜250mg/L)、Ca-パントテナート(2〜20mg/L)、チアミン,HCl(0.5〜20mg/L)、ピリドキシン(0.2〜20mg/L)、ナイアシンニコチンアミド(2〜7mg/L)、ビオチン(0.03〜0.8mg/L)、及びコリン-ジヒドロゲンシトレート(0.1〜0.2mg/L)から選択されるビタミン、リガンド、例としてクエン酸、H2O(0.5〜7g/L)、及び炭素源(50〜200g/L)としてのグルコースを含有しうる。窒素は、400〜1800mMの量のガス状NH3又は液体NH4OHのいずれかが連続的に添加される。水道水はカルシウム及びCl−の天然の供与源として用いる。 次いで、細胞によって生産されるペプチドは、対象のペプチドの種類に応じて、遠心又は濾過によって培地から宿主細胞を分離する、硫酸ナトリウムなどの塩によって上清又は濾過液のタンパク質性成分を沈殿する、例えばイオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィなどの様々なクロマトグラフィの手順による精製、などを含んでなる従来の手順によって培養培地から回収してもよい。 培養液からの単離の後、インスリン又はインスリン類似体を、特にB29Lys残基のε-アミノ基のアシル化によって、例えばアシル化された形態に変換してもよい。インスリンのアシル化のための方法は当分野で周知であり、例えば欧州特許第792290号及び欧州特許第894095号、及び米国特許第5693609号、同第5646242号、同第5922675号、同第5750497号及び同第6011007号開示されている。 アシル化インスリンの例は、NεB29-テトラデカノイルdes(B30)ヒトインスリン、NεB29-リトコロイル-γ-グルタミルdes(B30)ヒトインスリン、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)14CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、又はNεB29-(Nα-(HOOC(CH2)16CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。 「desB30」又は「B(1-29)」はB30アミノ酸残基を欠いている天然のインスリンB鎖を意味し、B(1-30)はヒトインスリンの天然のB鎖を意味し、「A(1-21)」は天然のインスリンA鎖を意味する。A18Qヒトインスリンは、ヒトインスリンA鎖の位置A18のGlnを有するインスリン類似体である。B10E、A8H、A14Eは、それぞれ位置B10にGlu、位置A8にHis、そして位置A14にGluを有するインスリン類似体である。 「B1」、「A1」などは、それぞれ、インスリンのB鎖の位置1のアミノ酸残基(N末端から計数した場合)と、インスリンのA鎖の位置1のアミノ酸残基(N末端から計数した場合)を意味する。また、特定の位置のアミノ酸残基は、例えば、位置B1のアミノ酸残基がフェニルアラニン残基であることを意味するPheB1として表されてもよい。 「C-ペプチド」は、各々の末端に切断部位をともに含むインスリン分子のA-ペプチド鎖及びB-ペプチド鎖を連結しているペプチド配列を意味する。 「連結ペプチド」は、それぞれA-鎖及びB-鎖との各接合部の2つの切断部位間のペプチド配列を意味する。 「成熟ヒトインスリン類似体」は、例えばCysA7とCysB7との間及び、CysA20とCysB19との間のジスルフィド架橋、並びにCysA6とCysA11との間の内部ジスルフィド架橋を有する天然のヒトインスリン分子と同じ構造的高次構造を有するが、対応する位置の天然のアミノ酸残基と比較してA-鎖及び/又はB-鎖の一又は複数の位置に特定の突然変異を有する、活性な2-鎖インスリン類似体を意味する。 本明細書中で用いられる「インスリン類似体」は、天然のインスリン に生じる少なくとも一のアミノ酸残基の欠失及び/又は置換によって、及び/又は、少なくとも一のアミノ酸残基の付加によって、形式的に天然に生じるインスリン の構造(例えばヒトインスリン のもの)から得ることができる分子構造を有するポリペプチドを意味する。付加及び/又は置換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基又は他の天然に生じるアミノ酸残基又は純粋に合成したアミノ酸残基のいずれであってもよい。典型的に、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較しておよそ7以下の突然変異、より典型的には5以下、さらにより典型的には3以下の突然変異を含むであろう。 インスリン類似体は、B鎖の位置28が天然のPro残基からAsp、Lys又はIleに修飾されうるものでもよい。また、位置B29のLysはProに修飾されてもよい。 また、位置A21のAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、Tyr又はValに、特にGly、Ala、Ser又はThrに、そして特にGlyに修飾されてもよい。さらに、位置B3のAsnはLys又はAspに修飾されてもよい。さらに、インスリン類似体の例は、des(B30)ヒトインスリン、つまりB1及びB2の一方又は両方が欠失しているインスリン類似体;A-鎖及び/又はB-鎖がN末端伸展を有するインスリン類似体及びA-鎖及び/又はB-鎖がC末端伸展を有するインスリン類似体である。さらに、インスリン類似体は、B26-B30の一又は複数が欠失しているものである。 本明細書中で用いられる「インスリン誘導体」は、天然に生じるインスリン又は、例えばインスリン骨格の一又は複数の位置に側鎖を導入することによって、又はインスリンのアミノ酸残基の基を酸化ないしは還元することによって、又は遊離のアミノ基ないしはカルボキシル基をアシル化することによって化学的に修飾されているインスリン類縁体を意味する。 「Kex2」は、2つの塩基性残基(リジン又はアルギニン)の配列の後の切断を優先的に触媒するスブチリシン様エンドプロテアーゼを意味する(Rockwell, NC, Krysan, DJ, Komiyama, T & Fuller, RS 2002 Precursor Processing by Kex2/Furin Proteases. Chem. Rev. 102: 4525-4548)。 「Kex1」は、C末端のリジル残基及び/又はアルギニル残基の除去を優先的に触媒するセリンカルボキシペプチダーゼを意味する(Shilton BH, Thomas DY, Cygler M 1997 Crystal structure of Kex1deltap, a prohormone-processing carboxypeptidase from Saccharomyces cerevisiae. Biochemistry 36: 9002-9012)。 「Yps1」は、天然のPro-α-結合因子プロセシング酵素Kex2を欠く酵母変異体のPro-α-結合因子プロセシング欠損を部分的に抑制するアスパルチルプロテアーゼを意味する(Egel-Mitani等, Yeast 6, 1990, pp. 127-137)。 「正しくプロセシングされる」とは、適切なアミノ酸残基配列を有する所望の生成物を生じさせる所望の切断点での酵素切断を意味する。 「POT」は分裂酵母ポンベトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子であり、「TPI1」はS. セレビシアトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子である。 「シグナルペプチド」なる用語は、タンパク質の前駆体形態においてN-末端配列として存在するプレ-ペプチドを意味するように理解される。シグナルペプチドの機能は、異種性タンパク質の小胞体への移行を促進させることである。シグナルペプチドは、通常、このプロセスの過程で切断される。シグナルペプチドは、タンパク質を生産する宿主生物に対して異種性又は相同性であってよい。 線状の真菌宿主細胞に有効なシグナルペプチドコード領域は、アスペルギルス・オリゼーTAKAアミラーゼ遺伝子、アスペルギルス・ニガー中性アミラーゼ遺伝子、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ遺伝子、フミコーラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)セルラーゼないしはリパーゼ遺伝子、又はリゾムコール・ミーヘイリパーゼないしはプロテアーゼ遺伝子、アスペルギルスsp.アミラーゼないしはグルコアミラーゼ、リゾムコール・ミーヘイリパーゼないしはプロテアーゼをコードする遺伝子から得られたシグナルペプチドコード領域である。好ましくは、シグナルペプチドは、A. オリゼーTAKAアミラーゼ、A. ニガー中性a−アミラーゼ、A. ニガー酸-安定性アミラーゼ、又はA. ニガーグルコアミラーゼをコードする遺伝子から得られる。 酵母宿主細胞に有用なシグナルペプチドは、サッカロミセス・セレビシアa−因子及びサッカロミセス・セレビシアインベルターゼの遺伝子から得られる。本発明のDNAコンストラクトとともに用いられうる多くのシグナルペプチドには、酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(Yps1)シグナルペプチドないしは任意の機能的な類似体(Egel-Mitani等 (1990) YEAST 6:127-137及び米国特許第5726038号)、及びMFα1遺伝子のα-因子シグナル(Thorner (1981) in The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces cerevisiae, Strathern等, eds., pp 143-180, Cold Spring Harbor Laboratory, NY及び米国特許第4870008号)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(O. Hagenbuchle等, Nature 289, 1981, pp. 643-646を参照)、変性カルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(L.A. Valls等, Cell 48, 1987, pp. 887-897を参照)、及び酵母BAR1シグナルペプチド(国際公開第87/02670号を参照)が含まれる。 「プロ-ペプチド」なる用語は、発現されたポリペプチドを小胞体からゴルジ体へ及びさらに培養培地への分泌のための分泌性小胞へ方向付けるための機能を有するポリペプチド配列を意味する(すなわち、酵母細胞の細胞膜周辺腔への細胞壁を横断して又は少なくとも細胞膜を通ってのポリペプチドの移出)。プロ-ペプチドは、酵母α-因子プロ-ペプチドであってよい。米国特許第4546082号及び同第4870008号を参照のこと。あるいは、プロ-ペプチドは、合成プロ-ペプチドであってよく、これは天然には見られないプロ-ペプチドを言う。適切な合成プロ-ペプチドは、米国特許第5395922号;同第5795746号;同第5162498号に開示されるものである。国際公開第89/02463号、国際公開第92/11378号及び国際公開98/32867号。 本発明のポリヌクレオチド配列は、混合したゲノム起源、cDNA起源、及び合成起源のものであってもよい。例えば、リーダーペプチドをコードするゲノム又はcDNA配列は、A鎖及びB鎖をコードするゲノム又はcDNA配列に結合されてもよく、その後、そのDNA配列は、周知の方法に従って異種性組換えのための所望のアミノ酸配列をコードする合成オリゴヌクレオチドを挿入することによって、又は好ましくは、適切なオリゴヌクレオチドを用いたPCRによって所望の配列を作成することによって、ある部位で修飾されうる。 本発明は、選択された微生物又は宿主細胞中で複製が可能であり、本発明のインスリン前駆体をコードするポリヌクレオチド配列を保有するベクターを包含する。組換えベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外実体として存在するベクターであってよく、その複製が染色体の複製から独立している、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、小染色体、又は人工染色体である。ベクターは、自己複製を確実に行うための何らかの手段を含んでもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入される場合、ゲノムに組み込まれるものであり、組み込まれた染色体と共に複製されるものでありうる。さらに、宿主細胞のゲノム中に導入される全DNAを共に含む単一のベクターないしはプラスミド又は2以上のベクターないしはプラスミド、又はトランスポゾンが用いられてもよい。ベクターは、直線状又は閉じた環状プラスミドであってよく、好ましくは、宿主細胞のゲノム中へのベクターの安定な組み込みを可能にするエレメント(一又は複数)、又は、ゲノムから独立した細胞中でのベクターの自己複製を可能にするエレメント(一又は複数)を含む。 一実施態様では、組み換え発現ベクターは、酵母中で複製することができる。ベクターの酵母中での複製を可能にする配列の例は、酵母プラスミド2μm複製遺伝子REP1-3及び複製開始点である。 また、ベクターは、選択マーカー、例えば、その生成物が宿主細胞内の欠損を補う遺伝子、又はアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン又はメトトレキセートなどの薬剤に耐性を与える遺伝子を含みうる。 線状の真菌宿主細胞に用いられる選択マーカーには、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、pyrG(オロチジン-5'-リン酸デカルボキシラーゼ)、及びtrpC(アントラニル酸シンターゼ)が含まれる。 酵母宿主細胞に好適なマーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1及びURA3である。酵母に好適な選択マーカーは、シゾサッカロミセスpompeTPI遺伝子(Russell (1985) Gene 40:125-130)である。 ベクターにおいて、ポリヌクレオチド配列は、適切なプロモーター配列に作用可能に連結される。プロモーターは、選択された宿主細胞中で転写活性を示す任意の核酸配列であってよく、変異体、切断された、及びハイブリッドのプロモーターを含み、該宿主細胞に異種性又は相同性のいずれかの細胞外ないしは細胞内のポリペプチドをコードする遺伝子から得てもよい。 線状の真菌宿主細胞における転写を導くために好適なプロモータの例は、アスペルギルス・オリゼーTAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー中性α-アミラーゼ、及びアスペルギルス・ニガー酸安定性αアミラーゼの遺伝子から得られるプロモーターである。 酵母宿主において、有用なプロモーターは、サッカロミセス・セレビシアMFα1、TPI、ADH又はPGKプロモーターである。 また、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、典型的に適切な転写終結区に作用可能な状態で連結されるであろう。酵母では、適切な転写終結区は、TPI転写終結区である(Alber等 (1982) J. Mol. Appl. Genet. 1:419-434)。 インスリン前駆体、プロモーター及び場合によって転写終結区及び/又は分泌シグナル配列それぞれをコードするDNA配列をライゲートするため、及び複製に必要な情報を含有する好適なベクター内にこれらを挿入するために用いる手順は、当業者に周知である(例として、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照)。 まず、本発明のインスリン前駆体をコードするDNA配列全体を含むDNAコンストラクトを調製し、続いてこの断片を適切な発現ベクター内に挿入すること、あるいは、個々のエレメント(例えばシグナル、プロ-ペプチド、修飾したC-ペプチド、A鎖及びB鎖)の遺伝子的情報を含むDNA断片を挿入した後ライゲーションを連続的に行うこと、の何れかによって、ベクターが構築されうることは理解されるであろう。 また、本発明は、本発明のインスリン前駆体をコードするポリヌクレオチド配列を含む組み換え真菌細胞に関する。そのようなポリヌクレオチド配列を含むベクターは、該ベクターが染色体組み込みとして又は上述したような自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、宿主細胞内に導入される。「宿主細胞」なる用語は、複製の間に変異が生じるために親細胞と同一でない、親細胞の任意の子孫(プロジェニー)を包含する。 本発明で使用する宿主細胞は真菌細胞である。本明細書中で用いられる「真菌」には、子嚢菌類、担子菌、ツボカビ門、及び接合菌類(Hawksworth等, In, Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKに記載)、並びに卵菌門(Oomycota)(上掲のHawksworth等, 1995、171頁に挙げる)及びすべての栄養胞子形成菌(上掲のHawksworth等, 1995)が含まれる。 一実施態様では、真菌宿主細胞は酵母細胞である。本明細書中で用いられる「酵母」には、子嚢胞子形成酵母(ascosporogenous yeast)、担子胞子形成酵母(basidiosporogenous yeast)、及び不完全菌類に属する酵母(不完全酵母菌網(Blastomycetes))が含まれる。子嚢胞子形成酵母は、スペルモフソラセア科(Spermophthoraceae)及びサッカロミセス科のファミリーに分類される。後者は、4つのサブファミリー、Schizosaccharomycoideae亜科(例えばシゾサッカロミセス属(genus Schizosaccharomyces))、Nadsonioideae亜科、Lipomycoideae亜科、及びSaccharomycoideae亜科(例えばピキア属(genera Pichia)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)及びサッカロミセス属(Saccharomyces))からなる。担子胞子形成酵母には、ロイコスポリディウム(Leucosporidim)、ロードスポリディウム(Rhodosporidium)、スポリディオボーラス(Sporidiobolus)、フィロバシディウム(Filobasidium)、及びフィロバシディエラ(Filobasidiella)が含まれる。不完全菌類に属する酵母は、2つのファミリー、スポロボロミケス科(例えばソロボロミセス属(Sorobolomyces)及びブレラ属(Bullera))及びクリプトコックス科(例えばカンジダ属)に分類される。酵母の分類は将来変更しうるので、本発明のために、酵母は、Biology and Activities of Yeastに記載のように定義する(Skinner, F.A., Passmore, S.M., and Davenport, R.R., eds, Soc. App. Bacteriol. Symposium Series No. 9, 1980)。酵母の生物学及び酵母の遺伝学的な操作は当分野で周知である(例として、Biochemistry and Genetics of Yeast, Bacil, M., Horecker, B.J., and Stopani, A.O.M., editors, 2nd edition, 1987;The Yeasts, Rose, A.H., and Harrison, J.S., editors, 2nd edition, 1987;及び、The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, Strathern等, editors, 1981を参照)。 酵母宿主細胞は、カンジダ、クリベロマイセス、サッカロミセス、シゾサッカロミセス、ピキア、ハンゼヌラ、ヤロウイアの種菌の細胞から選択されうる。一実施態様では、酵母宿主細胞は、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ディアスタティクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformi)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・ウバルム(Sacchoromyces uvarum)、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、カンジダ・ウティリス(Candida utilis)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi)、及びゲオトリキュウム・フェルメンタンス(Geotrichum fermentans)である。他の有用な酵母宿主細胞は、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、Kluyveromyces fragilis、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、トウモロコシ裸黒穂病菌(Ustilgo maylis)、カンジダマルトース、ピキア・ギリエルモンデイ(Pichia guillermondii)、及びピキア・メタノリオール(Pichia methanoliol)である(Gleeson等, J. Gen. Microbiol. 132, 1986, pp. 3459-3465;米国特許第4882279号及び米国特許第4879231号を参照)。 一実施態様では、真菌宿主細胞は線状の真菌細胞である。「糸状菌」には、真菌(Eumycota)亜門及び卵菌(Oomycota)亜門のすべての線状形態が含まれる(上記のHawksworth等, 1995に定義)。線状の真菌類は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及び他の複合多糖類から成る増殖型菌糸に特徴がある。線状の真菌宿主細胞は、アクレモニウム属、アスペルギルス属、フザリウム属、フミコーラ属(Humicola)、ムコール属(Mucor)、マイセリオソラ属(Myceliophthora)、パンカビ属、アオカビ属、ティラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びトリコデルマ属からなる群から選択されうる。 「コード可能な(codable)アミノ酸」又は「コード可能な(codable)アミノ酸残基」なる表現は、3組のヌクレオチド(「コドン」)によってコードされうるアミノ酸又はアミノ酸残基を示すために用いられる。 本発明の文脈においては、アミノ酸の3文字又は1文字表記が以下の表に示したようにそれらの従来の意味で用いられる。明確に示さない限り、ここで言及されるアミノ酸はL-アミノ酸である。さらに、ペプチドのアミノ酸配列の左端及び右端は、それぞれ、他に特定しない限りN-末端及びC-末端である。 アミノ酸の略号: 発酵とは、液体培地に浸される微生物を繁殖させるために用いる無菌の方法を意味する。好ましくは、発酵は、限定するものではないが、空気、酸素及びアンモニアからなる、加圧した、無菌のガスの添加のための供給ラインを有する無菌の撹拌タンク内で行う。発酵槽は、pH、温度、圧力、撹拌速度、溶存酸素レベル、液内容、泡レベル、供給速度及び酸と塩基の添加速度をモニターするための装置/センサーを含みうる。さらに、発酵槽は、細胞密度のレベル、代謝産物の濃度及びそれらの生理化学的な形状にかかわらない生成物をモニターするための光学装置を具備しうる。揮発性物質の形成及び消費は、発酵槽へのガス入口及び発酵槽からのガス出口についてのガス分析を用いてモニターする。モニターされた変数のすべてのシグナルを、所定の範囲内で維持される、又は時間に関して所定の性質に従って連続的に変化する変数を考慮するコントロールの目的に用いられうる。あるいは、変数は、他のモニターされた変数からのシグナル変化に応答して制御される。 発酵の間に生産される所望の生成物は、可溶性細胞外物質として又は可溶性物質ないしは凝集した物質を含む不溶性物質のいずれかの形態の細胞内物質として存在する。生成物の形成は、恒常的又は誘導されるものであり、微生物の成長に依存しているか又は独立したものである。発酵工程は、100mLから200000Lの範囲の動作容量を有するタンク内で行われる。発酵工程は、バッチ工程(batch process)、流加工程(fed-batch process)、反復流加工程(repeated fed-batch process)又は連続工程(continuous process)として作動されうる。 バッチ工程とは、微生物がタンクに加えられる前に、無菌の培地が発酵槽内に含まれている発酵を意味する。この工程の間、酸、塩基、消泡剤、阻害薬、安定剤及びインデューサーは自動的に又は手動で加えられる。酸及び塩基は、溶液として又はガス状成分として加えられる。これらの成分は1つの供給ラインから添加されてもよいし、異なるラインで発酵槽に供給されてもよい。発酵槽内容物は、発酵工程の間に分析のために取り出されるだけである。発酵槽の全ての内容物は発酵工程終了時に回収される。しかしながら、連続的なバッチ工程のために、発酵糟の内容物は部分的に回収されるのみであって、発酵糟に新鮮な無菌の培地を再度充填し、更なるバッチ発酵を実行させる。 流加工程は、微生物が加えられる前に、一部の培地のみが発酵槽に充填される発酵である。残りの培地成分又はすでに一部が添加された培地成分の残りの量は、1つのパルスとして、一連の不連続なパルスとして、又は一定速度ないしは可変速度で添加される連続流量として、発酵槽に供給される。流加工程に先立ち、バッチ工程に続いて流加運転モードを行うことができる。この工程の間に発酵槽に加えられる培地成分は、限定するものではないが、成長制限成分、微量可溶性成分、揮発性成分又は液体環境中で限られた安定性を有する成分からなる。微生物の成長速度は、発酵槽に加えられる培地成分の速度の調整によって制御されうる。この工程の間、酸、塩基、消泡剤、阻害薬、安定剤及びインデューサーは、自動又は手動で加えられる。酸及び塩基は、溶液の一部として又はガス状の成分として加えられる。流加工程の間に加えられるすべての成分は、1つの供給ラインから添加されてもよいし、異なるラインで発酵槽に供給されてもよい。発酵槽内容物は、発酵工程の間に分析のために取り出されるだけである。発酵槽の全ての内容物は工程の終了時に回収される。 流加工程の変法は反復流加工程である。反復流加発酵は流加工程と同様に実施するが、一部の発酵槽内容物を工程の間に一又は数回取り除く。一部の発酵槽内容物の除去の後に、新鮮な培地を加えてもよい。新鮮な培地の添加の後にバッチ工程を行い、流加工程動作を再開してもよい。新鮮な培地の組成物と流加工程の間に加えられる培地は、必ずしも同一であるというわけではない。 連続工程とは、微生物が加えられ、発酵が始まる前に、いくらかの培地が加えられるタンク内での発酵を意味する。阻害薬と共に成長するために必要なすべての培地成分、インデューサー、消泡剤、酸、塩基及び生成物を安定させる成分を含有する新鮮な培地が、連続的に加えられる。用いた培地の安定性を増すかその質を改善するために、これらの成分は異なる供給ラインで発酵槽に供給されてもよいし、1つの供給ラインから添加されてもよい。酸及び塩基は、溶液の一部として又はガス状の成分として加えられる。すべての成分は、一連の不連続なパルスとして、又は一定速度ないしは可変速度で添加される連続流量として、発酵槽に加えられる。発酵槽内容物の回収は、所定の範囲内に発酵槽の内容物を維持するために、連続的に行われる。微生物の成長は、発酵糟への培地添加の速度、並びに発酵槽内容物の調整によって、制御されてもよい。 培地とは、少なくとも一の炭素源、1又は複数の窒素源、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、リン酸塩、硝酸塩及び硫酸塩の塩類を含む必須塩類、微量金属、水溶性ビタミン、限定するものではないがプロテアーゼインヒビター、安定剤、リガンド、消泡剤及びインデューサーを含む加工助剤を含有する溶液を意味する。培地は、熱による殺菌を含むいくつかの操作条件下で液体培地中に分散するか又は部分的に沈殿する成分を含有してもよい。培地は、いくつかの液体とガス状の溶液を混合することによって作製してもよい。これらの溶液は発酵槽に入れる前に混合されうるか、又は所定の比率で加えられる異なる液体流として発酵槽に供給される。培地成分の異なる溶液間の比率は、発酵工程の異なる段階の間に変化してもよい。これは、培地の組成物全体が発酵過程の間に異なってもよいことを意味している。以下の表は、異なる培地成分の濃度範囲の一覧を含む。これらの濃度は、加えた培地成分の全量を発酵糟中の培地の初期容量で除して算出される。連続的な培養のための培地濃度は、発酵槽に入れる培地中の濃度として含まれる。 以下の表は、発酵培地の典型的な成分の概要である。 本発明のインスリン類似体を含有する製薬的組成物を、インスリンに影響される症状の治療に用いることができる。したがって、例えば、時に重大な損傷を受けた人及び大手術を経た人に見られるような、1型糖尿病、2型糖尿病及び高血糖症の治療に用いることができる。任意の患者に最適な服用レベルは、使用する特定のインスリン誘導体の有効性、患者の年齢、体重、身体活動性及び食事を含む様々な因子、他の薬剤との考えられる組み合わせ、そして治療される症状の重症度に依存する。本発明のインスリン誘導体の1日の用量は、公知のインスリン組成物に関するものと同様に、当業者によって個々の患者について決定されることが推奨される。 インスリンの類似体の製薬的組成物は、通常のアジュバント及び添加剤を含有しており、好ましくは水溶液として調製される。水溶媒質は、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム又はグリセロールにて等張にされる。さらに、水溶媒質は、亜鉛イオン、バッファ及び保存料を含有してもよい。組成物のpH値は所望の値に調整され、およそ4〜およそ8.5の間であってもよい。 本発明の一実施態様では、製剤のpHは、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9及び10.0からなる群から選択される。 製薬的組成物は、安定化、保存又は等張性に適する一又は複数の薬剤などの通常のアジュバント、例えば亜鉛イオン、フェノール、クレゾール、パラベン、塩化ナトリウム、グリセロール又はマンニトールを含むであろう。 製薬に使用するバッファは、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン(bicine)、トリシン、リンゴ酸、スクシナート、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はこれらの混合物からなる群から選択されうる。 薬学的に受容可能な保存料は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチメロサール(thiomerosal)、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3p-クロルフェノキシプロパン-1,2-ジオール)又はそれらの混合物からなる群から選択されうる。本発明の他の実施態様では、保存料は0.1mg/mlから20mg/mlの濃度で存在する。本発明の他の実施態様では、保存料は0.1mg/mlから5mg/mlの濃度で存在する。本発明の他の実施態様では、保存料は5mg/mlから10mg/mlの濃度で存在する。本発明の他の実施態様では、保存料は10mg/mlから20mg/mlの濃度で存在する。これらの特定の保存料のそれぞれは、本発明の別の実施態様を構成する。製薬的組成物への保存料の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照のこと。 等張剤は、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えばL-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)、ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、又はそれらの混合物からなる群から選択されうる。例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンブン、ヒドロキシエチルデンプン、及びカルボキシメチルセルロース-Naを含む単糖類、二糖類、又は多糖類、又は水溶性グルカン類のような任意の糖を使用することができる。一実施態様では、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは少なくとも一の--OH基を有するC4−C8炭化水素として定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一実施態様では、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述の糖類又は糖アルコールは個々に又は組み合わせて使用することができる。糖又は糖アルコールが液体調製物中で可溶性であり、本発明の方法を使用して達成される安定化効果に悪影響を及ぼさない限り、使用される量に決まった制限はない。一実施態様では、糖又は糖アルコール濃度はおよそ1mg/mlとおよそ150mg/mlの間である。本発明の更なる実施態様では、等張剤は1mg/mlから50mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、等張剤は1mg/mlから7mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、等張剤は8mg/mlから24mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、等張剤は25mg/mlから50mg/mlの濃度で存在する。製薬的組成物への等張剤の使用は当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照のこと。 本明細書で挙げられた刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が個々に及び具体的に参考として援用されるよう示され、また、その全てが本明細書において説明されたように(法によって許可される最大範囲に)、それらの全て及びその同じ範囲に参考として本明細書中に援用される。 全ての表題及び副題は、本明細書において便宜的にのみに用いられ、何らの方法でも、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。 本明細書で提供された、任意の及び全ての例示的実施例、又は典型的な言い回し(例えば、「のような」)の使用は、単に本発明のより良い解明を意図するものであり、請求項で断らない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書中の言い回しの何れも、請求されていない要素を本発明の実施のために必須であると表すものとして解釈されるべきではない。 ここで特許書類の引用及び組み込みは、便宜的にのみ行われ、そのような特許書類の有効性、特許性、及び/又は実施性のいずれの観点をも反映するものではない。 本発明は、これに付随した請求の範囲に挙げる対象事項の全ての改変及び等価物を適用可能な法によって許容されるように含む。一般的方法 すべての発現プラスミドはC−POTタイプのものであり、欧州特許第171142号にに記載のものと類似する。プラスミドの選別及びS.セレビシエ中における安定化のために、シゾサッカロミセス・ポンベトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子(POT)を含有することに特徴がある2μベースの発現ベクターがある。また、このプラスミドは、S.セレビシエトリオースリン酸イソメラーゼのプロモーター及びターミネーター配列を含む。これらの配列は、プラスミドpKFN1003(国際公開第9010075号に記述)の対応する配列に類似している。 酵母形質転換体は、宿主株S. セレビシエ株MT663又はME1719の形質転換によって調製される。酵母株MT663(MATa/MATα pep4-3/pep4-3 HIS4/his4 Δtpi:: LEU2/Δtpi:: LEU2 Cir')は、「Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen」に、国際公開第92/11378号と関連して寄託されており、寄託番号DSM6278が与えられている。S. セレビシエ株ME1719(MATa/α leu2/leu2 pep4-3/pep4-3 Δtpi:: LEU2/Δtpi:: LEU2 Δura3/Δura3 Δyps1:: URA3 / Δyps1:: ura3 Cir+)は、国際公開第98/01535号に記述される。 MT663又はME1719は、YPGaL(1%バクトイースト抽出物、2%バクトペプトン、2%ガラクトース、1%ラクテート)上で600nmでのO.D.が0.6になるまで増殖させた。培養物100mlを遠心分離にて回収し、10mlの水で洗浄し、再遠心分離し、1.2M ソルビトール、25mM Na2EDTA pH=8.0及び6.7mg/ml ジチオトレイトールを含む溶液10mlに再懸濁した。この懸濁液を30℃で15分間インキュベートし、遠心分離し、細胞を、1.2M ソルビトール、10mM Na2EDTA、0.1M クエン酸ナトリウム、pH5.8及び2mgのNovozymC3234を含む溶液10mlに再懸濁した。懸濁液を30℃で30分間インキュベートし、細胞を遠心分離にて回収し、10mlの1.2M ソルビトール及び10mlのCAS(1.2M ソルビトール、10mM CaCl2、10mM Tris HCl(Tris=トリス(ヒドロキシメチル1)-アミノメタン)pH=7.5)で洗浄し、2mlのCASに再懸濁した。形質転換のために、1mlのCAS-懸濁細胞を、およそ0.1mgのプラスミドDNAと混合し、室温に15分間置いた。1mlの(20% ポリエチレングリコール4000、10mM CaCl2、10mM Tris HCl、pH=7.5)を加え、該混合物を室温にさらに30分間置いた。この混合物を遠心分離し、ペレットを0.1mlのSOS(1.2M ソルビトール、33% v/v YPD、6.7mM CaCl2)に再懸濁し、30℃で2時間インキュベートした。次いで、懸濁液を遠心分離し、ペレットを0.5mlの1.2M ソルビトールに再懸濁した。次いで、52℃で、1.2M ソルビトールに加えて2.5%アガーを含む、6mlのトップアガー(Sherman等 (1982) Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor LaboratoryのSC培地)を加え、該懸濁液を同じアガーを凝固したソルビトール含有培地を含むプレートの上に注いだ。実施例1 A18Q-インスリンのための酵母発現系のコンストラクト。 図1は、pSA50と称する酵母プラスミドを示す。プラスミドは、S.セレビシエTPI遺伝子の転写-プロモーターと転写-ターミネーターの間にプラスミドに挿入されたEcoRI-XbaI断片を含む発現カセットを含む。プラスミドpSA50では、EcoRI−XbaI断片は、MFα1*プレ-プロリーダー、二塩基性プロセシングエンドペプチダーゼKEX2のLys-Arg切断部位、及びインスリン前駆体B(1−30)-KRDGLGKR-(A1−21), A18Qからなる融合生成物をコードする。 インスリン前駆体B(1−30)-KRDGLGKR-(A1−21), A18Qをコードする配列を含有するDNA断片を、以下の通りに構築した。2.5pmolのオリゴヌクレオチドASA-SCI-2(図2の配列1279-1358に対応する)とSCI-kex2-3(図2の配列1425−1337に対応する−リバースプライマー)を、10μlの10×高フィデリティーバッファ、2.5mM dNTP、1μlの高フィデリティーポリメラーゼ及び76μlのH2Oを含有するPCR反応液に混合した。1サイクル(94℃30秒間、50℃30秒間、72℃1分間)の後、100pmolのオリゴヌクレオチドASA-SCI1(図2の1252−1301に対応する)とASA-SCI-7(配列1464−1407に対応する−リバースプライマー)を加えて、上記のように9サイクル行った。結果として生じたPCR断片を、RocheのPCR精製キットを用いて精製し、NcoI及びXbaIにて消化し、最終的にアガロースゲルに流し、GFX-PCRゲルバンド精製キット(Amersham Biosciences #27-9602-01)を用いて精製した。断片を、上記(「一般的方法」)に記載のC−POTタイプ発現ベクターのNcoI-XbaIベクター断片にライゲートした。 発現プラスミドは大腸菌内で増殖させ、アンピシリン存在下で生育し、標準的な技術(Sambrook等, 1989)を用いて単離した。プラスミドDNAは、適当な制限ヌクレアーゼ(例えばEcoRI、NcoI、XbaI)によって挿入を確認し、配列分析によって、インスリン前駆体B(1−30)-KRDGLGKR-(A1−21), A18Qの適当な配列を含有することが示された(図2)。 プラスミドpSA50によりS.セレビシエ株MT663を形質転換した。プラスミドpSA50を保持する酵母形質転換体を、YPD(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース)アガー(2%)プレート上で炭素源としてのグルコース利用率によって選別し、結果として生じる株をySA63とした。実施例2 ヒトインスリン類似体の産生。 特定のヒトインスリン類似体をコードするDNAを含んでなるプラスミドを、実施例1に記載の方法に従った方法にて調製した。S.セレビシエ株をプラスミドで形質転換して、形質転換体を実施例1に記載のように単離した。 インスリン類似体のすべての前駆体は、C-ペプチドKRDGLGKR(配列番号:9)を有した。 インスリン類似体の発現のためのプラスミドにて形質転換したS. セレビシエ株MT663は、5g/L (NH4)2SO4、184mg/L (NH4)2HPO4、2.88g/L KH2PO4、1.42g/L MgSO4・7H2O、1.28g/L K2SO4、10.00g/L コハク酸、10.00g/L カザミノ酸、0.0112g/L FeSO4・7H2O、0.0086g/L MnSO4・H2O、0.0014g/L CuSO4・5H2O、0.00185g/L ZnSO4・7H2O、0.0129g/L CaCl2・2H2O、0.071g/L クエン酸、28.0mg/L m-イノシトール、14.0mg/L 塩化コリン、2.8mg/L チアミン、2.8mg/L ナイアシンアミド、2.1mg/L Ca-パントテン酸、0.14mg/L ビオチン、0.14mg/L 葉酸、40g/L グルコースからなる5mlの培地に播種した。培養は30℃で3日間行った。遠心の後、上清を、分泌されたインスリン類似体の濃度を測定する方法による定量的HPLC分析のために取り除いた。インスリン類似体の同定をLC/MS分析にて確認した。 以下の表から明らかとなる収率(mg/l)実施例3 流加発酵 B(1−30)-KRDGLGKR-(A1−21), A18Qを発現するS.セレビシエ株ySA63を、酵母抽出物(Difco):20g/L及びペプトン(Bacto):10g/L及び60g/Lのグルコース及び0.1mlの消泡剤(PEO/PPOブロックコポリマー)からなる培地に播種した。培地pHは6.5〜6.6に調整して、熱殺菌をする。グルコースは別に殺菌して、残りの無菌の成分に加える。 200mLの培養物(500mLのエーレンマイヤーフラスコ中)を、30℃で16〜30時間、250回転数/分の軌道振とう器にてインキュベートする。 50mLの振とうフラスコ培養物を、50g/Lの液体酵母抽出物(50%乾燥物)、3.6g/L KH2PO4、2.3g/L K2SO4、1.5g/L MgSO4・7H2O、0.064g/K FeSO4・7H2O、0.016g/L MnSO4・H2O、0.011g/L CuSO4・5H2O、0.016g/L ZnSO4・7H2O、0.8g/L クエン酸、2g/L m-イノシトール、0.2g/L 塩化コリン、0.2g/L チアミン,HCl、0.1g/L ピリドキシン,HCl、0.2g/L ナイアシンアミド、1g/L Ca-パントテン酸、0.005g/L ビオチン、0.05g/L p‐アミノ安息香酸、0.66mL/L 消泡剤(PEO/PPOブロックコポリマー)及び21g/L グルコースからなる1.2Lの成長培地を含有する発酵糟に移す。グルコースを除くすべての成分は熱殺菌する。グルコースは別に殺菌して、発酵槽に加える。 培養は、5.9のpH設定ポイントと1vvmの通気速度を使用して30℃で行う。培地pHは、NH4OHの添加によって設定ポイントに維持する。溶存酸素は、排出ガス組成物(酸素、二酸化炭素及びエタノール)と共にモニターする。発酵工程は、グルコースが発酵により消費される間23時間続くバッチ増殖期で始まり、その後に予め形成したエタノール上での好気性バッチ増殖がある。その後、排出ガス中のエタノールレベルが減少しはじめる場合、50%(w/w)グルコースからなる供給溶液の添加を始める。排出ガス中のエタノールレベルを250ppmより低く維持するために、添加速度は、手動調節を含め、図3に示す性質に従う。 工程の間、希釈された発酵試料の600nmでの光学濃度の測定によって増殖をモニターする。インスリンの濃度は、酸性エタノール(552g エタノール、340g 脱イオン水及び5mlの濃硫酸)にて容量基準に対して1:1に希釈した試料のHPLCによって定量化し、そして3000〜5000×gで遠心分離する。発酵ブロスL当たりのインスリンの濃度を算出する場合、沈殿物中の細胞が菱形にパッケージングされると仮定すると、酵母細胞が占める容量についての補正が含まれる。インスリンの示された濃度は、完全なインスリン及びdesB30インスリンを含む。 グルコース溶液の添加は69時間後に止める一方で、発酵をさらに4時間続けて、生成物を回収する。 時間に対する光学濃度及びインスリン濃度を図4にプロットすると、37mg/Lの発酵ブロスの最終インスリン濃度が示された。 ヒトインスリン類似体の前駆体をコードするDNAベクターを含んでなる真菌類細胞を培養することによる成熟ヒトインスリン類似体の作製方法であって、該前駆体が、インスリンペプチドのA-鎖及びB-鎖それぞれへの両接合部で切断部位と隣接した連結ペプチドを含んでなり、真菌類細胞内で切断される該切断部位により、細胞が正しくプロセシングされて成熟した2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することができる方法。 切断部位がKex2切断部位である、請求項1に記載の方法。 A-鎖に隣接する切断部位に対して最後から2番目の位置の連結ペプチドにおけるアミノ酸残基がLeu、Ile、Tyr、Arg、Lys、His、Pro、Met、Val、Ala及びPheからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。 アミノ酸残基がLeu及びIleからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。 連結ペプチドが3−35、3−34、3−33、3−31、3−30、3−29、3−28、3−27、3−26、3−25、3−24、3−23、3−22、3−21、3−20、3−19、3−18、3−17、3−16、3−15、3−14、3−13、3−12、3−11、3−10、3−9、3−8、3−7、3−6、3−5又は3−4のアミノ酸残基のサイズを有する、請求項1から4のいずれか一に記載の方法。 インスリン類似体が位置A8、B10、A18及びA14のうちの少なくとも一つに突然変異を有する、請求項1に記載の方法。 突然変異がAsp、Glu、His、Gln及びArgからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。 インスリン類似体がB10Glu、A8His、A14Gluヒトインスリンである、請求項6に記載の方法。 真菌類細胞が、少なくともおよそ20からおよそ50mg/lの正しくプロセシングされた成熟した2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することが可能である、請求項1から8のいずれか一に記載の方法。 真菌類細胞が、少なくともおよそ20からおよそ80mg/lの正しくプロセシングされた成熟した2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することが可能である、請求項1から8のいずれか一に記載の方法。 真菌類細胞が、少なくともおよそ100mg/lの正しくプロセシングされた成熟した2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することが可能である、請求項1から8のいずれか一に記載の方法。 真菌類細胞が酵母細胞である、請求項1から11のいずれか一に記載の方法。 ヒトインスリン前駆体類似体がアミノ酸配列B(1−30)−X−X−Z−Y−Y−A(1−21)を有し、B(1−30)がヒトインスリンのB-鎖又はその類似体であり、A(1−21)がヒトインスリンA-鎖又はその類似体であり、互いに独立する各々のX及び各々のYがLys又はArg又はYps1部位であり、Zが1からおよそ35のアミノ酸残基を有するペプチド配列であり、ただし、ヒトインスリンA-鎖及び/又はB-鎖の天然のアミノ酸残基のうちの少なくとも1が他のアミノ酸残基に変異している、請求項1に記載の方法。 Zが3−35、3−34、3−33、3−31、3−30、3−29、3−28、3−27、3−26、3−25、3−24、3−23、3−22、3−21、3−20、3−19、3−18、3−17、3−16、3−15、3−14、3−13、3−12、3−11、3−10、3−9、3−8、3−7、3−6、3−5又は3−4のアミノ酸残基のサイズである、請求項13に記載の方法。 X−X及びY−YがともにKex2部位である、請求項13に記載の方法。 アミノ酸配列B(1−30)−X−X−Z−Y−Y−A(1−21)を有するインスリン前駆体をコードするDNA配列であって、B(1−30)がヒトインスリンのB-鎖又はその類似体であり、A(1−21)がヒトインスリンA-鎖又はその類似体であり、互いに独立する各々のX及び各々のYがLys又はArg又はYps1部位であり、Zが1からおよそ35のアミノ酸残基を有するペプチド配列であり、ただし、ヒトインスリンA-鎖及び/又はB-鎖の天然のアミノ酸残基のうちの少なくとも1が他のアミノ酸残基に変異しているDNA配列。 請求項16に記載のDNA配列を含んでなる発現ベクター。 請求項17に記載のベクターにて形質転換された酵母細胞。 【課題】ヒトインスリン類似体の前駆体をコードするDNAベクターを含んでなる真菌類細胞を培養することによるヒトインスリン類似体の生産方法の提供。【解決手段】ヒトインスリン類似体の前駆体が、インスリンペプチドのA-鎖及びB-鎖それぞれとの両接合部で切断部位と隣接した連結ペプチドを含んでなり、真菌類細胞内で切断される該切断部位により、細胞が高濃度の正しくプロセシングされて成熟した、2鎖のヒトインスリン類似体を培養培地に分泌することができる方法。真菌細胞が酵母細胞であり、前記酵母細胞がヒトインスリンA及びBをコードするDNAを配列を含んでなる発現ベクターであり、前記発明ベクターにより、形質転換した酵母細胞である。【選択図】図1配列表