タイトル: | 公開特許公報(A)_重合開始剤およびアクリル系ポリマー |
出願番号: | 2013082868 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C08F 4/04,C08F 20/34,C07C 245/04,C07C 271/20 |
千頭和 淳子 久保 晴子 山本 智也 河野 健一 JP 2014205740 公開特許公報(A) 20141030 2013082868 20130411 重合開始剤およびアクリル系ポリマー キヤノンファインテック株式会社 000208743 近藤 利英子 100098707 菅野 重慶 100135987 山田 龍也 100175787 岡田 薫 100161377 阿部 寛志 100169812 千頭和 淳子 久保 晴子 山本 智也 河野 健一 C08F 4/04 20060101AFI20141003BHJP C08F 20/34 20060101ALI20141003BHJP C07C 245/04 20060101ALN20141003BHJP C07C 271/20 20060101ALN20141003BHJP JPC08F4/04C08F20/34C07C245/04C07C271/20 5 OL 15 4H006 4J015 4J100 4H006AA01 4H006AA03 4H006AB40 4H006RA14 4J015AA07 4J100AL08P 4J100AM19P 4J100AM21P 4J100BA31P 4J100BA32P 4J100FA03 本発明は、3級アミノ基または4級アンモニウム基を有するアクリル系ポリマーの製造に好適に用いられる、新規なアゾ系化合物からなる重合開始剤、およびこれを用いて重合された、3級アミノ基または4級アンモニウム基を有するアクリル系ポリマーに関する。 通常、アクリル系ポリマーは、アゾ系化合物からなる重合開始剤(「アゾ系重合開始剤」と記す場合がある)を用いて製造される。アゾ系重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩および同酢酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)塩酸塩および同酢酸塩等に代表されるアゾアミジン系重合開始剤が開示されている(特許文献1)。 また、アゾ系重合開始剤の市販品としては、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬工業社製「VA−057」等)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(同「V−50」等)等のアゾアミジン系重合開始剤の他、アゾビスイソブチロニトリル(同「V−70」等)等のアゾニトリル系重合開始剤等も知られている。特開昭63−99045号公報 しかしながら、これらのアゾ系重合開始剤は、3級アミノ基または4級アンモニウム基(以下、「3級アミノ基等」ともいう)を有するアクリル系ポリマーの製造には適していないという問題があった。 例えば、前記アゾアミジン系重合開始剤は、いずれも親水性が高いため、3級アミノ基または4級アンモニウム基(「3級アミノ基等」と記す場合がある)を有するアクリル系モノマーに対する親和性が低く、また、前記アクリル系モノマーの良溶媒である有機溶媒に溶解し難い。従って、重合開始剤としての機能が十分に発揮されず、反応率が低いという問題があった。 一方、アゾニトリル系重合開始剤は、有機溶媒に溶解するものの、重合反応の進行に伴って反応率が頭打ちとなる場合があった。 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、3級アミノ基または4級アンモニウム基を有するアクリル系ポリマーの製造に好適に用いることができる、新規なアゾ系重合開始剤を提供するものである。より具体的には、3級アミノ基等を有するアクリル系モノマーに対する親和性が高く、前記アクリル系モノマーの良溶媒である有機溶媒への溶解性が良好で、高い反応率で3級アミノ基等を有するアクリル系ポリマーを得られるアゾ系重合開始剤を提供するものである。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、分子内に3級アミノ基を有し、前記3級アミノ基とアゾ基がアミド結合を含む連結基を介して連結されたアゾ化合物によって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明によれば、下記一般式(1)で表される重合開始剤が提供される。(式中、R1〜R4は相互に独立して炭素数1〜5のアルキル基、P1およびP2は相互に独立してアミド結合を含む連結基を示す。) 本発明の重合開始剤は、上記一般式(1)のP1およびP2が、相互に独立して、アミド結合とエステル結合を含む連結基およびアミド結合とウレタン結合を含む連結基からなる群より選択された少なくとも一種の連結基であることが好ましい。 また、本発明の重合開始剤としては、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。(式中、P3、P4は相互に独立して連結基を示す。) 更に、本発明の重合開始剤としては、下記一般式(3)または(4)で表されるものが好ましい。(式中、P5〜P8は相互に独立して連結基を示す。) また、本発明によれば、前記重合開始剤を使用し、3級アミノ基または4級アンモニウム基を有するアクリル系モノマーを重合させることにより得られる、3級アミノ基または4級アンモニウム基を有するアクリル系ポリマーが提供される。 本発明の重合開始剤は、3級アミノ基等を有するアクリル系モノマーに対する親和性が高く、前記アクリル系モノマーの良溶媒である有機溶媒への溶解性が良好で、高い反応率で3級アミノ基等を有するアクリル系ポリマーを得ることができる。 以下、本発明について詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。なお、以下の説明において、「連結基」というときは、2価の有機基を指すものとする。ここにいう「有機基」とは、炭素原子を含む官能基ないし原子団を指す。また、「アクリル系モノマー」とは、アクリル酸またはその誘導体(例えばアクリル酸エステル類、アクリル酸アミド類等)を意味し、メタクリル酸またはその誘導体も含むものとする。[1]重合開始剤: 本発明の重合開始剤は、下記一般式(1)で表されるアゾ化合物である。(式中、R1〜R4は相互に独立して炭素数1〜5のアルキル基、P1およびP2は相互に独立してアミド結合を含む連結基を示す。)[1−1]3級アミノ基: 本発明の重合開始剤は、分子内(両末端)に3級アミノ基を有する。この構造により、3級アミノ基等を有するアクリル系モノマー(例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアクリルアミド等)に対する親和性・相溶性が良好である。従って、これらのモノマーの重合開始剤として用いた際に、その機能が十分に発揮される。即ち、重合反応の進行に伴って反応率が頭打ちとなることがなく、反応率が高い。 3級アミノ基を構成するR1〜R4は炭素数1〜5のアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基には、直鎖アルキル基、分岐アルキル基が含まれる。但し、直鎖アルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基等を挙げることができ、メチル基、エチル基、1−ブチル基、1−ペンチル基が好ましい。R1〜R4は相互に独立であり、各々が異なる置換基であってもよい。但し、重合開始剤の合成を容易にし、重合開始剤の開裂で生じるラジカルの活性度を揃える上で、R1〜R4は同じ置換基であることが好ましい。[1−2]連結基: 本発明の重合開始剤は、アミド結合を含む連結基であるP1およびP2を有している。より具体的には、前記3級アミノ基と、ジアゾ基に直結するプロパン−2,2−ジイル基とがP1およびP2によって連結された構造を有する。この構造により、特にアミド基を有するアクリル系モノマー(例えばアクリル酸アミド類等)に対する親和性・相溶性が良好となる。従って、これらのモノマーの重合開始剤として用いた際に、重合反応の進行に伴って反応率が頭打ちとなることがなく、反応率が向上する。 なお、「アミド結合」とは、−CONH−で表される結合であり、両末端に炭素原子が結合されているものを指す。「アミド基」とは、−CONR2で表され、Rがアルキル基ないし水素原子である官能基を指す。本発明の重合開始剤は、2つのRがともにアルキル基であるアミド基を有するアクリル系モノマー(例えばジメチルアクリルアミド等)の重合に好適に用いることができる。 P1およびP2はアミド結合を含む連結基である限り、その構造は特に限定されない。例えば、アミド結合の片末端または両末端に連結基が結合された構造の基を挙げることができる。P1およびP2は相互に独立であり、各々が異なる置換基であってもよいが、同じ置換基であることが好ましい。 中でも、下記一般式(2)に示すように、アミド結合のN原子側末端に連結基であるP3(またはP4)が結合された構造の基であることが好ましい。即ち、本発明の重合開始剤は、下記一般式(2)に示すように、アゾ基に結合されたプロパン−2,2−ジイル基と前記3級アミノ基とが、アミド結合、P3(またはP4)が順次結合された構造の基によって連結された構造のものが好ましい。(式中、P3、P4は相互に独立して連結基を示す。) P3およびP4は連結基である限り、その構造は特に限定されない。例えば、2価の炭化水素基を挙げることができる。2価の炭化水素基には、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基等が含まれ、これらを組み合わせた基であってもよい。2価の脂肪族炭化水素基は、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等の炭素数1〜4の直鎖アルカンジイル基;プロパン−2,2−ジイル基等の炭素数1〜4の分岐アルカンジイル基;等が含まれる。中でも炭素数1〜4の直鎖アルカンジイル基が好ましく、エチレン基が更に好ましい。2価の脂環式炭化水素基としては、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のシクロアルカンジイル基等を挙げることができる。2価の芳香族炭化水素基としては、1,4−フェニレン基等を挙げることができる。P3およびP4は相互に独立であり、各々が異なる置換基であってもよいが、同じ置換基であることが好ましい。 本発明の重合開始剤は、上記一般式(1)のP1およびP2が、相互に独立して、アミド結合とエステル結合を含む連結基およびアミド結合とウレタン結合を含む連結基からなる群より選択された少なくとも一種の連結基であることが好ましい。このような構造の連結基を有することにより、エステル結合やアミド結合を有するアクリル系モノマー(例えばアクリル酸エステル類等)との相溶性を改善することができる。更に、アクリル系モノマーの重合が進行し、ポリマーとなった後も、開始剤由来の構造とポリマーとの親和性が良好であるため、凝集体が発生し難い。 なお、「エステル結合」とは、−OC(=O)−で表される結合であり、両末端に炭素原子が結合されているものを指す。「ウレタン結合」とは、−OCONH−で表される結合であり、両末端に炭素原子が結合されているものを指す。 前記形態においては、P1およびP2がアミド結合とエステル結合、またはアミド結合とウレタン結合を含む連結基である限り、その構造は特に限定されない。但し、下記一般式(3)に示すように、アミド結合のN原子側末端と、エステル結合のO原子側末端とが連結基であるP6(またはP7)によって連結され、エステル結合のC原子側末端に連結基であるP5(またはP8)が連結された構造の基であることが好ましい。 同様に、下記一般式(4)に示すように、アミド結合のN原子側末端と、ウレタン結合のO原子側末端とが連結基であるP6(またはP7)によって連結され、ウレタン結合のN原子側末端に連結基であるP5(またはP8)が連結された構造の基であることが好ましい。 即ち、本発明の重合開始剤は、上記一般式(3)または(4)に示すように、アゾ基に直結するプロパン−2,2−ジイル基と前記3級アミノ基とが、アミド結合、P6(またはP7)、エステル結合またはウレタン結合、P5(またはP8)が順次結合された基によって連結された構造を有するものが好ましい。 P5〜P8は連結基である限り、その構造は特に限定されない。例えば、P3およびP4の項で例示した基と同様の基を挙げることができる。これらの中でも、P6、P7としてはエチレン基が好ましく、P5、P8としてはメチレン基、エチレン基、1,4−フェニレン基が好ましい。上記一般式(3)に示す、エステル結合を有する重合開始剤の場合には、P6、P7がエチレン基、P5、P8がメチレン基または1,4−フェニレン基であることが好ましい。上記一般式(4)に示す、ウレタン結合を有する重合開始剤の場合には、P6、P7がエチレン基、P5、P8がエチレン基であることが好ましい。P5〜P8は相互に独立であり、各々が異なる置換基であってもよい。但し、P6とP7が同じ置換基であることが好ましく、P5とP8が同じ置換基であることが好ましい。[1−3]化合物の具体例: 上記一般式(1)〜(4)で表されるアゾ化合物の具体例としては、下記式(I)〜(VII)に示す化合物(I)〜(VII)等を挙げることができる。化合物(I)〜(VII)は従来公知の製法により合成することができる。以下に具体的な製法の一例を示す。但し、化合物(I)〜(VII)はこれらの製法以外の製法によっても合成することができる。[1−3A]P1およびP2がアミド結合を含む化合物: P1およびP2がアミド結合を含む化合物としては、化合物(I)および(II)を挙げることができる。 化合物(I)、(II)は、1級アミノ基と3級アミノ基を有するジアミン(N,N−ジアルキルアルキレンジアミン)と、アゾ基の両末端にアルコキシカルボニル基(−COOR。Rはアルキル基)を有するアゾ化合物(アゾジカルボン酸ジアルキル)と、を反応させることにより得られる。この反応により、N,N−ジアルキルアルキレンジアミンの1級アミノ基とアゾジカルボン酸ジアルキルのカルボニル基に由来するアミド結合が形成される。 前記ジアミンとしては、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン等を用いることができる。前記アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を用いることができる。前記アゾ化合物は、従来公知のアゾ化合物の製法により合成することができる。[1−3B]P1およびP2がアミド結合とエステル結合を含む化合物: P1およびP2がアミド結合とエステル結合を含む化合物としては、化合物(III)〜(VI)を挙げることができる。 化合物(III)〜(VI)は、まず、3級アミノ基を有するカルボン酸(アミノカルボン酸)から酸クロライドを合成し、次いで、前記酸クロライドと、アミド結合を含み、分子末端に水酸基を有するアゾ化合物とを反応させることにより得られる。この反応により、前記酸クロライドのカルボニル基と、前記アゾ化合物の前記水酸基に由来するエステル結合が形成される。 前記アミノカルボン酸としては、N,N−ジメチルグリシン、3−ジメチルアミノ安息香酸等を用いることができる。これらのアミノカルボン酸は塩化チオニルとの反応によって対応する酸クロライドとすることができる。前記アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]等を用いることができる。前記アゾ化合物は、従来公知のアゾ化合物の製法により合成することができる。[1−3C]P1およびP2がアミド結合とウレタン結合を含む化合物: P1およびP2がアミド結合とウレタン結合を含む化合物としては、化合物(VII)を挙げることができる。 化合物(VII)は、3級アミノ基を有するイソシアネートと、アミド結合を含み、分子末端に水酸基を有するアゾ化合物とを反応させることにより得られる。この反応により、前記イソシアネートのイソシアネート基(−NCO)と、前記アゾ化合物の前記水酸基に由来するウレタン結合が形成される。 前記イソシアネートとしては、イソシアン酸4−ジメチルアミノフェニル、エタンアミン−2−イソシアネート−N,N’−ジメチル等を用いることができる。前記アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]等を用いることができる。前記アゾ化合物は、従来公知のアゾ化合物の製法により合成することができる。 上記のようにして得られたアゾ系化合物は、例えばNMR(核磁気共鳴法)、IR(赤外分光法)、各種クロマトグラフィーによる解析等により同定することができる。[2]アクリル系ポリマー: 本発明のアクリル系ポリマーは、3級アミノ基または4級アンモニウム基を有するアクリル系ポリマーであり、前記重合開始剤を使用し、3級アミノ基または4級アンモニウム基を有するアクリル系モノマーを重合させることにより得られる。 3級アミノ基を有するアクリル系モノマーとしては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等を用いることができる。これらのモノマーの中でも、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびジメチルアクリルアミドが好ましい。 4級アンモニウム基を有するアクリル系モノマーとしては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等を用いることができる。 本発明のアクリル系ポリマーは、3級アミノ基等を有するアクリル系モノマーおよび本発明の重合開始剤を使用すること以外は、従来公知の重合法に準じて製造することができる。重合開始剤の量も特に限定されないが、モノマー1モルに対し0.003〜0.017モルを添加することが好ましく、0.005〜0.015モルを添加することが更に好ましく、0.008〜0.013モルを添加することが特に好ましい。 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、文中の「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。[合成例1〜7] 合成例1〜7として、アゾ系重合開始剤である前記化合物(I)〜(VII)を合成した。化合物(I)〜(VII)の同定は、NMR(核磁気共鳴装置)およびFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)により行った。NMRとしては、日本電子社製「ECA400」を用いた。NMRの測定溶媒はテトラヒドロフラン−d8とした。FT−IRとしては、島津製作所製「IRPrestige−21」を用いた。(合成例1)<化合物(I)の合成> 還流管、滴下ロート、温度計および攪拌装置を備えたガラス製4つ口フラスコを窒素置換した。次いで、ジメチルホルムアミド(DMF)100g、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル46g(0.2モル)およびN,N−ジメチルエチレンジアミン35g(0.4モル)を仕込み、これらを氷冷下で攪拌混合しながら、ナトリウムメトキシド10g(0.2モル)を加え、同条件下で2時間反応させた。析出した結晶を濾取し、メタノールから再結晶させ、その結晶を吸引濾過することにより、化合物(I)48gを得た(収率70%)。その結果を表1に示す。(合成例2)<化合物(II)の合成> N,N−ジメチルエチレンジアミン35g(0.4モル)を、N,N−ジエチルエチレンジアミン46g(0.4モル)に変更した以外は合成例1と同様にして、化合物(II)56gを得た(収率70%)。その結果を表1に示す。(合成例3)<化合物(III)の合成> 還流管、滴下ロート、温度計および攪拌装置を備えたガラス製4つ口フラスコを窒素置換した。次いで、DMF100g、N,N’−ジメチルグリシン21.6g(0.21モル)および塩化チオニル35g(0.3モル)を仕込み、これらを攪拌混合しながら、ガス発生が終了するまで2時間加熱還流し、カルボン酸を塩素化させた。更に、減圧下、過剰の塩化チオニルを留去し、蒸留による精製を行い、3級アミンを有する酸クロライド24g(0.2モル)を得た(収率95%)。 前記3級アミンを有する酸クロライド24g(0.2モル)に、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]28g(0.1モル)およびDMF100gを加えて溶解させ、室温(20℃)下、30分攪拌することにより、エステル化を行った。この反応液にヘプタン300gを加えて結晶を析出させ、その結晶を吸引濾過することにより、化合物(III)32gを得た(収率70%)。その結果を表1に示す。(合成例4)<化合物(IV)の合成> N,N’−ジメチルグリシン20g(0.2モル)をN,N’−ジブチルグリシン39g(0.21モル)に変更した以外は合成例3と同様にカルボン酸の塩素化を行い、3級アミンを有する酸クロライド38g(0.2モル)を得た(収率95%)。 前記3級アミンを有する酸クロライド32g(0.2モル)を用いたこと以外は合成例3と同様にエステル化を行い、化合物(IV)25gを得た(収率70%)。その結果を表1に示す。(合成例5)<化合物(V)の合成> 還流管、滴下ロート、温度計および攪拌装置を備えたガラス製4つ口フラスコを窒素置換した。次いで、DMF100g、N,N’−ジペンチルグリシン24g(0.11モル)および塩化チオニル18g(0.15モル)を仕込み、これらを攪拌混合しながら、ガス発生が終了するまで2時間加熱還流し、カルボン酸を塩素化させた。更に、減圧下、過剰の塩化チオニルを留去し、蒸留による精製を行い、3級アミンを有する酸クロライド24g(0.1モル)を得た(収率95%)。 前記3級アミンを有する酸クロライド23g(0.1モル)に、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]14g(0.05モル)およびDMF100gを加えて溶解させ、室温(20℃)下、30分攪拌することにより、エステル化を行った。この反応液にヘプタン300gを加えて結晶を析出させ、その結晶を吸引濾過することにより、化合物(V)15gを得た(収率70%)。その結果を表1に示す。(合成例6)<化合物(VI)の合成> N,N’−ジペンチルグリシン24g(0.11モル)を3−ジメチルアミノ安息香酸18部(0.11モル)に変更した以外は合成例5と同様にカルボン酸の塩素化を行い、3級アミンを有する酸クロライド19g(0.1モル)を得た(収率95%)。 前記3級アミンを有する酸クロライド19g(0.1モル)を用いたこと以外は合成例5と同様にエステル化を行い、化合物(VI)19gを得た(収率70%)。その結果を表1に示す。(合成例7)<化合物(VII)の合成> 還流管、滴下ロート、温度計および攪拌装置を備えたガラス製4つ口フラスコを窒素置換した。次いで、DMF100g、エタンアミン−2−イソシアネート−N,N’−ジメチル23g(0.2モル)および2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]22g(0.1モル)を仕込み、これらを室温(20℃)下、30分攪拌することにより、ウレタン化を行った。この反応液にヘプタン300gを加えて結晶を析出させ、その結晶を吸引濾過することにより、化合物(VII)32gを得た(収率70%)。その結果を表1に示す。[実施例1〜10、比較例1〜4] 実施例1〜10としてポリマーA〜Jを、比較例1〜4としてK〜Nを製造した。重合反応のモニタリングはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により行った。モノマーの反応率はNMR(核磁気共鳴装置)により評価した。ポリマーの分子量および分子量分布は、前記GPCにより評価した。NMRとしては、日本電子社製「ECA400」を用いた。NMRの測定溶媒はテトラヒドロフラン−d8とした。GPCとしては、東ソー社製「HLC8220」を用いた。GPCカラムとしては、東ソー社製「TSK−GEL4000HXL」、「TSK−GEL3000HXL」および「TSK−GEL2000HXL」を用いた。カラムオーブン温度は40.0℃とした。(実施例1)<ポリマーAの製造> 還流管、滴下ロート、温度計および攪拌装置を備えたガラス製4つ口フラスコを窒素置換した。次いで、DMF100g、モノマーとしてジメチルアミノエチルアクリレート57g(0.4モル)、開始剤として化合物(I)1.7g(0.005モル)を仕込み、これらを攪拌しながら加熱し、系内の温度を80℃まで上昇させ、前記温度で重合反応を行った。GPCによりモニタリングしながら重合を進め、分子量が所望の値に達したところで加熱を停止し、ポリマーAを47g得た(収率80%)。反応率は1H‐NMRスペクトルから算出した。分子量はGPC測定による重量平均分子量(Mw)、分子量分布はGPC測定による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比から算出される分子量分布(Mw/Mn)から得られた値である。その結果を表2に示す。(実施例2)<ポリマーBの製造> 開始剤として化合物(II)2.0g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーBを製造した。その結果を表2に示す。(実施例3)<ポリマーCの製造> 開始剤として化合物(III)2.3g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーCを製造した。その結果を表2に示す。(実施例4)<ポリマーDの製造> 開始剤として化合物(VII)2.3g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーDを製造した。その結果を表2に示す。(実施例5)<ポリマーEの製造> 開始剤として化合物(IV)1.8g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーEを製造した。その結果を表2に示す。(実施例6)<ポリマーFの製造> 開始剤として化合物(V)2.1g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーFを製造した。その結果を表2に示す。(実施例7)<ポリマーGの製造> モノマーとしてジメチルアクリルアミド59g(0.6モル)、開始剤として化合物(VII)2.3g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーGを製造した。その結果を表2に示す。(実施例8)<ポリマーHの製造> 開始剤として化合物(IV)1.9g(0.005モル)を使用した以外は、実施例7と同様にしてポリマーHを製造した。その結果を表2に示す。(実施例9)<ポリマーIの製造> 開始剤として化合物(V)2.1g(0.005モル)を使用した以外は、実施例7と同様にしてポリマーIを製造した。その結果を表2に示す。(実施例10)<ポリマーJの製造> 開始剤として化合物(VI)2.7g(0.005モル)を使用した以外は、実施例7と同様にしてポリマーJを製造した。その結果を表2に示す。(比較例1)<ポリマーKの製造> 開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業社製「V−70」、表中「アゾニトリル系開始剤」と記す)0.8g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーKを製造した。その結果を表2に示す。(比較例2)<ポリマーLの製造> 開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬工業社製「VA−057」、表中「アゾアミジン系開始剤(1)」と記す)1.7g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーLを製造した。その結果を表2に示す。(比較例3)<ポリマーMの製造> 開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(和光純薬工業社製「V−50」、表中「アゾアミジン系開始剤(2)」と記す)1.3g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーMを製造した。その結果を表2に示す。(比較例4)<ポリマーNの作製> 開始剤として2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬工業社製「VA−086」、表中「アゾアミド系開始剤」と記す)1.4g(0.005モル)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリマーNを製造した。その結果を表2に示す。<反応率> 反応率については、下記基準により評価した。 85%以上の場合、非常に良好(◎) 80%以上、85%未満の場合、良好(○) 80%未満の場合、不良(×)<分子量分布> 分子量分布については、下記基準により評価した。 2.0以下の場合、非常に良好(◎) 2.0超、2.5以下の場合、良好(○) 2.5超の場合、不良(×)<重合開始剤と溶媒との親和性(目視)> 重合開始剤と溶媒との親和性は、重合開始剤の溶媒への溶解性により評価した(表中の「溶媒[目視]」の欄)。具体的には、実施例または比較例における重合時と同濃度になるように、溶媒に重合開始剤を添加し、室温(25℃)における溶解性を目視確認し、下記基準により評価した。 完全に溶解する(〇) 一部、不溶物がある(△) 溶解しない(×)<重合開始剤とモノマーとの親和性(目視)> 重合開始剤とモノマーとの親和性は、重合開始剤のモノマーへの溶解性により評価した(表中の「モノマー[目視]」の欄)。具体的には、実施例または比較例における重合時と同濃度になるように、モノマーに重合開始剤を添加し、室温(25℃)における溶解性を目視確認し、下記基準により評価した。 完全に溶解する(〇) 一部、不溶物がある(△) 溶解しない(×)<重合開始剤とモノマーとの親和性(溶解性パラメータ)> 重合開始剤とモノマーとの親和性については、前記目視評価の他、溶解性パラメータによっても評価した(表中の「モノマー[パラメータ]」の欄)。具体的には、重合開始剤の溶解性パラメータとモノマーの溶解性パラメータとの差を算出し、下記基準により評価した。 溶解性パラメータの差が0.00以上、1.70以下の場合、良好(○) 溶解性パラメータの差が1.70超、5.00以下の場合、やや不良(△) 溶解性パラメータの差が5.00超の場合、不良(×) なお、重合開始剤またはモノマーの溶解性パラメータδは、これら各々の官能基の分子凝集エネルギー(即ち、重合開始剤等のモル蒸発熱ΔE)から算出した値を使用した。具体的には、下記式から算出した。なお、原子団の蒸発エネルギーおよび原子団のモル体積は、Fedorsの値を使用して算出した。 δ=(ΔE/V)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2(式中、ΔE:重合開始剤等のモル蒸発熱、V:重合開始剤等のモル体積、Δei:重合開始剤等の原子団の蒸発エネルギー(J/mol)、Δvi:重合開始剤等の原子団のモル体積(cm3/mol)) 表2に示すように、合成例1〜7の重合開始剤は、3級アミノ基を有するアクリル系モノマーに対する親和性(目視、パラメータ)、前記アクリル系モノマーの溶媒に対する親和性(目視)とも良好であった。このため、合成例1〜7の重合開始剤を用いた実施例1〜10においては、重合反応の反応率および収率が80%以上と高かった。また、分子量分布が狭い(即ち、物性のバラつきの少ない)アクリル系ポリマーを得ることができた。 一方、比較例1で用いたアゾニトリル系開始剤は、3級アミノ基を有するアクリル系モノマーに対する親和性(目視)、前記アクリル系モノマーの溶媒に対する親和性(目視)とも良好であった。しかし、比較例1においては、重合反応の反応率および収率が70%と低かった。これは重合開始剤とモノマーの溶解性パラメータの差が大きいことが原因であると考えられた。また、比較例2、3で用いたアゾアミジン系開始剤は、溶媒に対する親和性(目視)、モノマーに対する親和性(目視、パラメータ)が不良ないしやや不良であった。このため、比較例2、3においては、重合反応の反応率および収率が40%と著しく低く、分子量分布も2.6と広かった。更に、比較例4で用いたアゾアミド系開始剤は、溶媒に対する親和性(目視)、モノマーに対する親和性(目視、パラメータ)がやや不良であった。このため、比較例4においては、重合反応の反応率および収率が60%と低く、分子量分布も2.4と広かった。 本発明の重合開始剤は、3級アミノ基等を有するアクリル系モノマーに対する親和性が高く、前記アクリル系モノマーの良溶媒である有機溶媒への溶解性が良好で、高い反応率で3級アミノ基等を有するアクリル系ポリマーを得ることができる。従って、3級アミノ基等を有するアクリル系ポリマーの製造に好適に用いることができる。 下記一般式(1)で表される重合開始剤。(式中、R1〜R4は相互に独立して炭素数1〜5のアルキル基、P1およびP2は相互に独立してアミド結合を含む連結基を示す。) 上記一般式(1)のP1およびP2が、相互に独立して、アミド結合とエステル結合を含む連結基およびアミド結合とウレタン結合を含む連結基からなる群より選択された少なくとも一種の連結基である請求項1に記載の重合開始剤。 下記一般式(2)で表される請求項1または2に記載の重合開始剤。(式中、P3、P4は相互に独立して連結基を示す。) 下記一般式(3)または(4)で表される請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合開始剤。(式中、P5〜P8は相互に独立して連結基を示す。) 請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合開始剤を使用し、3級アミノ基または4級アンモニウム基を有するアクリル系モノマーを重合させることにより得られる、3級アミノ基または4級アンモニウム基を有するアクリル系ポリマー。 【課題】3級アミノ基等を有するアクリル系モノマーに対する親和性が高く、アクリル系モノマーの良溶媒である有機溶媒への溶解性が良好で、高い反応率で3級アミノ基等を有するアクリル系ポリマーを得られるアゾ系重合開始剤を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表される重合開始剤。(式中、R1〜R4は相互に独立して炭素数1〜5のアルキル基、P1およびP2は相互に独立してアミド結合を含む連結基を示す。)【選択図】なし