タイトル: | 公開特許公報(A)_アピゲニンの産生方法 |
出願番号: | 2013077288 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07D 311/28,A61K 31/352,A61P 5/30,A61P 15/12,A61P 17/00,A61P 17/16,A61K 36/18,A23L 2/38,A23L 2/52 |
稻福 桂一郎 比嘉 光 山地 亮一 JP 2014201529 公開特許公報(A) 20141027 2013077288 20130402 アピゲニンの産生方法 金秀バイオ株式会社 397040993 公立大学法人大阪府立大学 505127721 志村 尚司 100104307 稻福 桂一郎 比嘉 光 山地 亮一 C07D 311/28 20060101AFI20140930BHJP A61K 31/352 20060101ALI20140930BHJP A61P 5/30 20060101ALI20140930BHJP A61P 15/12 20060101ALI20140930BHJP A61P 17/00 20060101ALI20140930BHJP A61P 17/16 20060101ALI20140930BHJP A61K 36/18 20060101ALI20140930BHJP A23L 2/38 20060101ALI20140930BHJP A23L 2/52 20060101ALI20140930BHJP JPC07D311/28A61K31/352A61P5/30A61P15/12A61P17/00A61P17/16A61K35/78 CA23L2/38 CA23L2/00 F 9 3 OL 15 4B017 4C062 4C086 4C088 4B017LC03 4B017LG15 4B017LL09 4B017LP04 4C062EE54 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA04 4C086BA08 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA14 4C086NA20 4C086ZA81 4C086ZA89 4C086ZC11 4C088AB12 4C088AC01 4C088BA06 4C088BA11 4C088CA02 4C088MA02 4C088MA52 4C088NA14 4C088NA20 4C088ZA81 4C088ZA89 4C088ZC11 本発明はアピゲニンの産生方法に関する。 ステロイドホルモンは、コレステロールから合成され、生殖腺や副腎から血中へと分泌された後、標的細胞へと運ばれ、ホルモンとしての作用を発揮する。女性ホルモンのエストロゲンは卵巣で生産され、思春期では排卵を起こさせ、乳腺のような生殖期の発達に寄与するだけでなく、脳や骨、そして心血管系のような末梢組織にも作用する。エストロゲンの生理活性は、リガンド結合型の転写因子であるエストロゲン受容体(ER)を介して発揮される。エストロゲンが結合したERは、上記組織において標的遺伝子に存在するエストロゲン応答配列と呼ばれるDNA配列へ作用して、標的遺伝子の転写を調節する。 女性ホルモンのエストロゲンのうちでも17-β-エストラジオール(E2)が最も活性の高いエストロゲンである。エストロゲンは、皮膚の繊維芽細胞に作用してヒアルロン酸やコラーゲン合成を調節し、UV照射によって起こる炎症反応、免疫抑制そして皮膚がん発症に対する保護作用にも関与する。それゆえに、卵巣の機能低下が起こり、エストロゲン生産が低下する更年期には、末梢血管や体温中枢に影響を与えることによって、肩こりやホテリのような更年期障害が起こるだけでなく、肌の弾力性や潤いやはりを失うことによって皮膚の老化も起こる。 日本を含む先進国において高齢化社会が進むにつれて問題視されている疾病に骨粗鬆症や更年期障害がある。実際の治療法としてエストロゲン補充療法があるが、昨今、疾病は治療ではなく予防するという概念が高まり、植物由来の機能性食品や化粧品原料の開発が行なわれている。漢方薬を含む生薬や民間薬は長年の使用経験から効果とともに安全性についても確認されているものが多い。馬鞭草は漢方としてこれまで通経薬、腫れ物、皮膚病、婦人病に使用されてきた経緯を持つ植物である。また、特許文献1には、馬鞭草がエストロゲン様生理活性を示し、閉経後骨粗鬆症の予防又は治療剤および飲食物として利用可能であることが示されている。 アピゲニン(アピジェニン:apigenin)は馬鞭草に含まれるフラボノイドであることが既に報告されている。またアピゲニンのエストロゲン様生理活性についても多くの研究が実施されている。例えば、特許文献2には、アピゲニンがエストロゲン活性、特にER-β-介在エストロゲン活性を有することが示されている。 フラボノイドなどを配糖体としてヒトが摂取すると体内で吸収される際には腸内細菌が持つ酵素によって糖が切り離されたアグリコンとして吸収される。しかし腸内細菌の働きには個人差があり、同量のフラボノイドを配糖体として摂取する場合とアグリコンとして摂取する場合とで吸収される量に個人差ができる。従って、植物体に含まれる配糖体を摂取する場合には、予め配糖体構造から糖を切り離しておくことが望まれる。配糖体構造からアグリコンとする方法としてグリコシダーゼ処理を行う方法があるが、この方法は酵素反応を利用した方法であるので、効率がよい方法ではない。 ところで、コーヒーやほうじ茶のように、焙煎した植物を水で抽出して飲用することが行われている。焙煎すると、植物中の水分が蒸発し、その後、多糖やタンパク質が加熱分解された結果、低分子の糖類やアミノ酸を生じる。その他、例えばコーヒーでは、クロロゲン酸が、焙煎中に生じた低分子の糖類やアミノ酸と反応して褐色色素が生成される、ホウジ茶ではカフェインが揮発するなど種々の現象が起こることが知られている。 しかしながら、これまでのところ、焙煎により配糖体からアグリコンが生成されることは知られておらず、焙煎した馬鞭草をお茶として飲用するという事実も見いだされていない。特開2000−053576号公報特表2012−520301号公報 本発明は、焙煎することで植物体中のアグリコン、特に馬鞭草中におけるエストロゲン様生理活性物質であるアピゲニンの存在量を増加させる方法を提供することを課題とする。 本発明に係る方法は、アピゲニンの配糖体及び/又はアピゲニンの類縁物質を含む植物体を焙煎することを主要な特徴とする。 本発明によると、焙煎という簡単な方法により植物体、例えば馬鞭草中に存在するエストロゲン様生理活性物質であるアピゲニン量を増やすことができる。図1は産地の異なる馬鞭草のエストロゲン様生理活性を示す図である。図2は異なる溶媒で抽出された馬鞭草のエストロゲン様生理活性を示す図である。図3は馬鞭草エキス中のエストロゲン様生理活性に及ぼす焙煎の影響を示す図である。図4はHPLCによるエストロゲン様生理活性物質のクロマトグラフィの結果を示すチャートである。図5はSephadex LH-20によるエストロゲン様生理活性物質のクロマトグラフィの結果を示すチャートである。(A)は330nmの吸収によるチャート、(B)はエストロゲン様活性によるチャートである。図6は化合物Compound BのNMRスペクトルを示すチャートである。上段は1H−NMRスペクトルを、下段は13C−NMRスペクトルを示す。図7は化合物Compound B'とアピゲニンのHPLCによる解析結果を示すチャートである。 本発明に係る方法は、植物体からアピゲニンを含む抽出物又はアピゲニンを得る方法であって、植物体を焙煎する工程と、焙煎された植物体を抽出する工程を含む。 本発明に係る方法は、植物体におけるエストロゲン様生理活性物質、特にアピゲニンの存在量を増加させる方法に関し、馬鞭草の植物体を焙煎すると、そのアピゲニン配糖体のアグリコンであるアピゲニンが馬鞭草中に増えることにより見いだされたものである。その詳細は不明であるが、焙煎により、植物体に含まれるアピゲニンの配糖体から糖が分離されるか、もしくは植物体に含まれるアピゲニンの類縁物質からアピゲニンが生成される、あるいはその両方の現象によるものと考えられる。従って、本発明に係る方法はアピゲニンの配糖体及び/又はアピゲニンの類縁物質を含む植物であれば適用可能である。 アピゲニンは下記に化学式1で示す構造を有する。アピゲニンの配糖体は例えばアピインであり、アピゲトリン(アピゲニン-7-グルコシド)であり、ビデキシン(アピゲニン-8-C-グルコシド)であり、イソビテキシン(アピゲニン-6-C-グルコシド)であり、ロイフォリン(アピゲニン-7-O-ネオヘスペリドシド)であり得る。このようなアピゲニン配糖体及び/又はアピゲニンの類縁物質を含む植物体は、例えば、パセリであり、セロリであり、馬鞭草であり得る。馬鞭草はクマツヅラ科の植物であるクマツヅラ(Verbena officinalis L.)の別名である。 本発明で用いられる植物体の部位も植物種やアピゲニンの含有量に応じて適宜選択される。その部位は、例えば全草であり、葉であり、茎を含めた葉であり得る。また、焙煎される植物体は、乾燥物又は未乾燥物のいずれでもよい。 本発明に係る方法は、前記植物体を焙煎する工程を含む。用語「焙煎」は当業者が通常用いる意味で用いられ、水分を加えることなく植物体を加熱することを意味する。焙煎は、コーヒー豆やお茶を焙煎する方法と同様の方法で行えばよく、いわゆる浅煎りから深煎りまで任意の程度に行えばよい。つまり、70℃以上200℃又は300℃以下の温度になるまで、1分〜30分程度加熱すればよく、加熱時間は焙煎温度と量に応じて適宜調整すればよい。また、浅煎りよりも深煎りする方がアピゲニンの生成量は増加する傾向にある。 焙煎された植物体は、焙煎前の植物体に比べて多くのアピゲニンを含む。このため、焙煎された植物体はアピゲニンの抽出原料として好適に用いられる。アピゲニンの抽出は常法により行える。抽出溶媒はアピゲニンを抽出できる溶媒であればよく、例えば水、メタノールやエタノール、ブタノールなどの低級アルコール、エチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル、n-ヘキサンなどの炭化水素類であり得る。これらの例示された溶媒の1種又は2種以上の混液が抽出溶媒として用いられる。抽出条件も当業者により適宜定められる。例えば、室温若しくは加温下で抽出溶媒と焙煎された植物体とを接触させる。得られた抽出物は精製を加えることなく、抽出エキスとして用いることができる。また、得られた抽出物はアピゲニンの精製用にも好適に用いられる。アピゲニンの精製方法も常法によればよく、液液分配による方法、カラムクロマトグラフィによる方法などが例示される。本発明に係る方法は焙煎処理といった非常に簡単な操作でアグリコンであるアピゲニンを生成する方法であるので、配糖体を酵素処理する方法に比べて効率のよい方法であると言える。 焙煎された植物体はいわゆる茶葉としても利用され得る。この茶葉を用いた茶飲料は、植物体の乾燥物を茶葉として用いた茶飲料に比べてより多くのエストロゲン様生理活性物質であるアピゲニンを含み得る。この結果、通経薬、腫れ物、皮膚病、婦人病などに対して従来の茶飲料より効果のある茶飲料が提供される。提供される茶飲料は、馬鞭草だけを用いた煎じ茶であり、馬鞭草以外の茶葉を併せて用いたブレンド茶であり得る。また、焙煎された植物体から得られた抽出物はエストロゲン様生理活性物質として用いられ得る。 以下、本発明について、下記の実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されることがないのは言うまでもない。1.未焙煎馬鞭草抽出エキスのエストロゲン受容体転写活性化能(ER転写活性能)(産地別) まず、馬鞭草(未焙煎)にエストロゲン様生理活性物質が存在するかを評価するため、産地の異なる馬鞭草のメタノール抽出液を用いて下記に示す方法によりER転写活性を測定した。 乾燥馬鞭草粉末(中国産3種(No.2、3、5)、日本産2種(No.1、2))それぞれ1gあたり20mlのメタノールを加え、静置することによって抽出した。抽出された馬鞭草抽出エキスはADVANTEC No.2濾紙(Toyo Roshi Kaisha, Ltd., Tokyo, Japan)にて濾過し、ロータリーエバポレーターによって蒸発乾固させた。この乾固物を10mg当り1mlのメタノールで溶解した後、IWAKI Disporsable sterile syringe filter(3mm、0.20μm、cellulose acetate membrane(Asahi Techno Glass Corp., Chiba, Japan))にて濾過滅菌を行い、培養細胞添加用のサンプルとした。 この結果、各種馬鞭草メタノール抽出エキスは、中国産と日本産の産地に関わらず、全てのサンプルで有意なエストロゲン受容体転写活性が検出された(図1)。これらの結果、日本産no.1の馬鞭草が最もエストロゲン様生理活性を有していたため、以後の実験にはこの日本産no.1の乾燥馬鞭草粉末からの抽出物を用いた。 (ER転写活性の測定方法) ER受容体転写活性は、Firefly Luciferase活性をRenilla Luciferase活性で割り、リガンド非存在下での値に対する相対活性(Relative Lucifearase Units: RLU)として求めた。 (1)細胞培養 アフリカミドリザル腎臓細胞(COS-7)細胞は、American Type Culture Collection(Manassas, VA, USA)から購入した。COS-7細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)、抗生物質(ペニシリン:100units/mLとストレプトマイシン:100μg/mL)、1g/LのNaHCO3を含むRPMI1640培地(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)(RPMI1640(10%FBS,+P/S))で、95%大気、5%CO2、100%湿度、温度37℃の条件下で組織培養用ディッシュを用いて培養した。細胞は90%の飽和状態に達したとき、リン酸緩衝生理食塩水(PBS(-):137mM NaCl、2.68mM KCl、8.1mM Na2HPO4 and 1.47mM KH2PO4、pH 7.4)で洗浄し、0.25%トリプシンと0.02%エチレンジアミン四酢酸を含むPBSで処理して、細胞をディッシュからはがし、新鮮な培地で懸濁して、新しいディッシュにまいた。COS-7細胞は1/4で継代し48時間後に飽和状態に達した。 (2)プラスミド エストロゲン受容体発現プラスミドpCAGGS-ERαは足達博士(京都大学)より分与された。Firefly luciferaseレポーターベクターとしてpGL3-3xERE-TATA-Lucを用いた。Renilla LuciferaseコントロールレポーターベクターpRL-TK(Promega Corp., Madison, WI, USA)をトランスフェクションの導入効率を測定するために使用した。 (3)培養細胞への一過性トランスフェクション RPMI1640(10%FBS、+P/S)を用いて60mmディッシュで飽和状態に達したCOS-7細胞を60mmディッシュにRPMI1640培地(dextran-coated charcoal-stripped FBS、penicillin/streptomycin-free)(RPMI1640(CS-FBS、-P/S))を用いて1/4で継代を行い48時間培養後に再び飽和状態になったところでまたは24-well plateに1/30で各ウエルにつき500μlずつまき、18時間培養後にトランスフェクションを行った。以下に1well当たりに添加したDNA量を示す。ES転写活性の測定にはレセプターの種類に応じて以下のDNAを使用した。 pGL3-3xERE-TATA-Luc 0.25μg pCAGGS-ERα 0.25μg pRL-TK 0.025μg 25μlのRPMI 1640無血清培地(penicillin/streptomycin-free)に上記の各3種類のDNAを加えて懸濁した。同様の培地25μlにMetafecteneを1μl溶解し、先のDNAを懸濁した培地と混ぜ合わせ、室温で20分静置した。このDNA懸濁培地50μlを24-well plateに培養しておいた細胞に添加した。24時間培養後、培地を500μlのRPMI 1640培地(CS-FBS、-P/S)に交換し、E2(終濃度 10nM)または馬鞭草抽出サンプル(終濃度100μg/ml)を添加後、さらに24時間培養し、活性測定に使用した。 (4)ルシフェラーゼ活性の測定 ルシフェラーゼ活性の測定にはDual-Luciferase Reporter Assay System Kit(Promega, Madison, WI, USA)を用いた。上記方法で培養した細胞をプレートの1ウエル当たり、1mlのPBS(-)で2回洗浄し、PBS(-)を完全に取り除いた後、1xPLB試薬(5xPLB試薬:Dual-Luciferase Reporter Assay System Kitに付属しており、使用時は蒸留水で1/5に希釈した)を1ウエル当たり50μl添加し、20分間穏やかに振とうして測定用サンプルとした。当該サンプル5μlを1.5mlチューブに入れ、Luciferase Assay ReagentII(LARII)(Dual-Luciferase Reporter Assay System Kitに付属)を5μl加えてピペッティングし、ルミノメーター (Turner biosystems)で酵素活性を測定した(Firefly Luciferase活性)。測定後、速やかに5μlのStop & Glo Reagent(Dual-Luciferase Reporter Assay System Kitに付属の50xStop & Glo SubstrateをStop & Glo Bufferで1/75に希釈)を添加、ピペッティングし、再び酵素活性を測定した(Renilla Luciferase活性)。2.未焙煎馬鞭草抽出エキスのエストロゲン受容体転写活性化能(ER転写活性能)(抽出溶媒別) 次に、馬鞭草からエストロゲン様生理活性物質を抽出する際に使用する溶媒を検討した。乾燥馬鞭草粉末(日本産 no.1)1gに対してそれぞれ10mlの蒸留水、メタノール、ブタノール、酢酸エチル、アセトン、n-ヘキサンを加え、24時間静置して抽出を行った後、上記1.と同様にADVANTEC No.2濾紙にて濾過し、ロータリーエバポレーターによって蒸発乾固させたものを10mgあたり1mlのメタノールで溶解した後、濾過滅菌を行った。得られた水抽出画分は52.3mg、メタノール抽出画分は56.1mg、ブタノール抽出画分は153.5mg、酢酸エチル抽出画分は13.7mg、アセトン抽出画分は19.6mg、ヘキサン抽出画分は7.5mgであった。得られた抽出物について、ER転写活性を測定した。 馬鞭草抽出エキスのうち、メタノール抽出物、酢酸エチル抽出物、アセトン抽出物において有意なエストロゲン受容体転写活性が検出されたが、水、ブタノール、ヘキサンによる抽出画分には有意な生理活性は検出されなかった(図2)。これらの結果より、馬鞭草に含まれるエストロゲン様生理活性物質は水に溶けにくく、また、n-ヘキサンのような無極性溶媒にも溶けず、メタノールや酢酸エチルのような中極性の溶媒によく溶けることがわかった。3.焙煎が馬鞭草抽出エキスのエストロゲン様活性に与える影響 馬鞭草粉末(焙煎なし、焙煎普通、焙煎強め)の2gを20mlのメタノールで2日間静置して抽出を行った。抽出された馬鞭草抽出エキスはADVANTEC No.2濾紙 (Toyo Roshi Kaisha, Ltd., Tokyo, Japan)にて濾過し、ロータリーエバポレーターによって蒸発乾固させた。この乾固物を10mg当り1mlのメタノールで溶解した後、IWAKI Disporsable sterile syringe filter(3mm、0.20μm、cellurose acetate membrane(Asahi Techno Glass Corp., Chiba, Japan))にて濾過滅菌を行い、培養細胞添加用のサンプルとした。なお、このとき、乾燥馬鞭草では106.3mg、乾燥焙煎馬鞭草では90.7mgのメタノール抽出画分が得られた。これらのメタノール抽出画分について、ER転写活性を測定した。 焙煎の程度の異なる馬鞭草をメタノールで抽出後、それぞれ終濃度で10、50、100μg/mlとなるように添加し、ER転写活性を測定した。その結果、馬鞭草抽出液は濃度依存的にエストロゲン受容体の転写活性を促進し、焙煎の程度が進むにつれて、強い活性を示すことが明らかとなった(図3)。4.HPLCを用いたエストロゲン様活性物質の精製 ODSで分離したエストロゲン様生理活性物質を含む画分(Fraction 6)からHPLCを用いてエストロゲン様活性物質の単離を行った。 抽出は乾燥馬鞭草粉末100gに対して1000mlのn-ヘキサンを加え、48時間静置して抽出後、吸引濾過し、ヘキサン抽出画分と残渣に分けた。残渣をさらに1000mlのメタノールにて48時間抽出し、吸引濾過後、蒸発乾固させた。500mlの酢酸エチル、及び等量の蒸留水にて3回分配濾過し、酢酸エチル抽出画分を得た。このとき、746mgの酢酸エチル抽出画分が得られた。次に300mgの酢酸エチル抽出画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離した。ガラス製、直径2.0cm(内径)、全長75cmのカラムを用いた。30gのWakogel C-300(Wako Pure Chemical Industries, Ltd., Osaka, Japan)をn-ヘキサンに懸濁してカラムに充填した。サンプルは3g程度の充填材に吸着させた後、充填材とともに減圧留去させ、n-ヘキサンに懸濁してカラムに重層した。溶出は、n-ヘキサン、n-ヘキサン:酢酸エチル= 2:8、n-ヘキサン:酢酸エチル=4:6、n-ヘキサン:酢酸エチル= 6:4、n-ヘキサン:酢酸エチル=8:2、酢酸エチルの順にそれぞれ80mlを1ベッドとして各フラクションにつき2ベッド分で溶出操作を行った。初めにn-ヘキサンにて溶出した際の画分をフラクション1とし、1ベッド容量分ずつ集め、フラクション12まで分取した。このとき活性画分(Fraction 7)として19.5mg得た。 シリカゲルカラムクロマトグラフィーを繰り返すことにより得られた活性画分をオクタデシルシリル(ODS)シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離した。ガラス製、直径2.0cm(内径)、全長75cmのカラムを用いた。充填材としてはWakogel 100C18(Wako Pure Chemical Industries, Ltd. , Osaka, Japan)を用いた。30gの充填材を100%メタノールで懸濁後、カラムに充填した。その時の充填材の体積は50mlとなり、1ベッドを50mlとした。0.1%酢酸/25%メタノールで2ベッド容量分平衡化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで得たFraction 7をサンプルとして30mg分を重層した。溶出は、0.1%酢酸を含むメタノールを順に25%、50%、75%、100%の順にそれぞれ2ベッド容量ずつ行った。初めに25%メタノールにて溶出した際の画分をフラクション1とし、フラクション8まで分取した。このとき、活性画分Fraction 6として14.3 mg得た。 ここで分離したエストロゲン様生理活性物質を含む画分(Fraction 6)からHPLCを用いてエストロゲン様活性物質の単離を行った。HPLCシステムは日本分光(株)(JASCO Corp., Tokyo, Japan)のものを用いた(HPLCポンプ:JASCO PU-2089 Plus、オートサンプラー:JASCO AS-2057 Plus、LC-Netコントローラー:JASCO LC-Net II/ADC、紫外、可視光検出器:JASCO UV-2057 Plus、データ分析ソフトウェア:JASCO ChromNAV Chromatograph Data Station)。カラムはガードカラムとしてX-Bridge Shield RP18(φ4.6mm内径.×5mm)(Waters Corp., Milfold, MA, USA)を用いた。分析カラムはX-Bridge Shield RP18(φo4.6mm 内径×250mm)(Waters Corp., Milfold, MA, USA)を用いた。 溶媒系は、移動相Aとして0.1%(v/v)酢酸を含む超純水と移動相Bとして0.1%(v/v)酢酸を含むアセトニトリルを用いた。分析タイムプログラムとして、流量は毎分1.0ml、移動相Aでシステム全体を平衡化した状態で分析開始から80minまでかけて移動相Bの割合を60%(v/v)まで上昇させ、100minまでで移動相Bを100%(v/v)とした後、105minまで移動相Bが100%(v/v)の状態を続け、115minまでかけて分析開始時の状態に戻した。この時の検出波長は330nmで行った。 その結果、2本のピークが検出され、保持時間はそれぞれ前のピーク(Compound A)が56.433minで後ろのピーク(Compound B)が57.275 minであった(図4)。HPLCによるエストロゲン様活性化合物の分取を試みたが、2本のピークの保持時間が近すぎるため困難と判断した。5.Sephadex LH-20を用いたエストロゲン様活性物質の精製 ODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた活性画分(Fraction 6)をゲルろ過クロマトグラフィにより分離した。エコノカラム(Bio Rad, Hercules, CA, USA.)、直径1.0cm(内径)、全長40cmのカラムを用いた。充填材としてSephadex LH-20(GE Healthcare UK Ltd., England)を用いた。32ml程の充填材を80%メタノールで懸濁後、カラムに充填した。Super fraction collector SF-2120(Toyo Roshi Kaisha, Ltd., Tokyo, Japan)で2mlずつを回収した。その後、各フラクションを330nmでの波長による吸光度を測定した。サンプルは3mgのFraction 6を80%メタノールに溶解し、15,000rpmで遠心分離後に回収した上清約2.39mg分をサンプルとして重層した。 その結果、330nmに吸収を持つ物質が2本のピーク(Compound A'とCompound B'と示す)として検出され、分離された(図5(A))。各ピーク画分に含まれる物質のエストロゲン様活性を評価したところ、Compound B'に顕著なエストロゲン様活性が検出された(図5(B))。このとき、活性画分(Fraction 6-B)として0.45mg得た。 また、HPLCにより分析したところSephadex LH-20により単離したCompound A'はHPLCにより分離したCompound Aと、Compound B'はCompound Bと同じ保持時間を示した(Data not shown)。 これらの精製により、100gの乾燥焙煎馬鞭草粉末から4.35mgのエストロゲン様活性物質を得ることができた。分取したサンプルは減圧留去し、NMR解析および培養細胞での評価系に使用した。6.NMRによるCompound B'の解析 Compound B'をDMSOに溶解して13C及び1H NMRによる解析を行った。その結果、図6に示すスペクトルが得られた。これらの結果を既知の物質の解析データと照合したところ、フラボンの一種である4',5,7-trihydroxyflavone(アピゲニン、apigenin)(化学式1)と非常に良く似たピークを示した。C(4')-OHを示すピークがCompound Bについては10.31であったが、アピゲニンでは3.49であった。それ以外のピークではほぼ一致した(表1、表2)。7.HPLCによるCompound B'とアピゲニンの分析 NMRでの解析から、Compound B'がアピゲニンであることが示唆されたことから、市販のアピゲニンをHPLCにて分析し、その保持時間について検討を行った。その結果、図7に示すようにCompound B' は市販品のアピゲニンと同様の保持時間であった(CompoundB'、24.017min:apigenin、24.000min)。さらに等量のCompound B'とアピゲニンの混合物を分析したところ、23.767minにアピゲニンの2倍量のピークが検出された。これらの結果から、今回馬鞭草から単離精製したエストロゲン様活性物質がアピゲニンであると同定した。8.まとめ 以上の結果、馬鞭草(Verbena Officinalis LINN.)に含まれるエストロゲン様生理活性物質はアピゲニンであると同定された。また、焙煎した馬鞭草に比べて、焙煎していない馬鞭草からは弱いエストロゲン様活性しか検出することができないことが判明した。焙煎することによって焙煎前に存在したアピゲニン類縁物質あるいはアピゲニン配糖体からアグリコンであるアピゲニンになったと推測される。一般的に配糖体構造からアグリコンとする方法として、β-グルコシダーゼ処理が行なわれているが、今回実施した焙煎法は、β-グルコシダーゼ処理よりも馬鞭草から簡便にしかも安価でアピゲニンを産生させる加工技術と言える。 本発明の方法によると、馬鞭草から非常に簡単な方法でエストロゲン様生理活性物質であるアピゲニンを高収率で産生できる。 植物体からアピゲニンを含む抽出物又はアピゲニンを得る方法であって、 植物体を焙煎する工程と、 焙煎された植物体からアピゲニンを抽出する工程を含む方法。 前記植物体は、アピゲニン配糖体及び/又はアピゲニンの類縁物質を含む植物の植物体である請求項1に記載の方法。 前記植物体は、馬鞭草及び/又はその近縁植物の植物体である請求項1又は2に記載の方法。 植物体を焙煎して、該植物体中のエストロゲン様生理活性物質の存在量を増加させる方法。 前記エストロゲン様生理活性物質はアピゲニンである請求項4に記載の方法。 前記植物体は、アピゲニンの配糖体及び/又はアピゲニンの類縁物質を含む植物体である請求項4又は5に記載の方法。 前記植物体は、馬鞭草及び/又はその近縁植物の植物体である請求項4〜6の何れか1項に記載の方法。 請求項4〜7の何れか1項に記載の方法で得られた植物体。 焙煎された馬鞭草及び/又はその近縁植物を含む茶葉又はその茶葉を使用した茶飲料。 【課題】 植物体を焙煎することで配糖体から糖を分離してアグリコン、特に馬鞭草中におけるエストロゲン様生理活性物質であるアピゲニンを増加させる方法を提供する。【解決手段】 例えば馬鞭草のようにアピゲニンの配糖体及び/又はアピゲニンの類縁物質を含む植物体を焙煎して、植物体中に含まれるエストロゲン様生理活性物質量を増やす。得られた焙煎植物体は、いわゆる茶葉として利用される。また、エストロゲン様生理活性物質であるアピゲニンの抽出原料として利用される。【選択図】図3