タイトル: | 公開特許公報(A)_環状ポリスルフィド化合物の製造方法 |
出願番号: | 2013074683 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07D 341/00 |
八軒 悟士 檜山 武寛 JP 2014198688 公開特許公報(A) 20141023 2013074683 20130329 環状ポリスルフィド化合物の製造方法 住友精化株式会社 000195661 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 佐藤 剛 100156122 八軒 悟士 檜山 武寛 C07D 341/00 20060101AFI20140926BHJP JPC07D341/00 6 OL 9 本発明は、環状ポリスルフィド化合物、特に環状トリスルフィド化合物の製法に関する。 環状ポリスルフィドは、ゴム用加硫剤、各種ポリマー改質剤、最近では電子デバイス等の電極材料として有用である。環状ポリスルフィドの合成法については次の方法がある。 特許文献1には、ビストリアルキルシリルスルフィドやジアルキル−2シラ−ジチアシクロアルカンなどを、ハロゲンやイオウの塩化物と反応させることにより、環状トリスルフィド(1,2,3−トリチアン)を得る方法が記載されている。 非特許文献1には、ジチオールにトリメチルシリルクロリドを反応させて得たビストリメチルシリルスルフィドを蒸留により単離した後、二塩化硫黄と反応させることにより、環状トリスルフィド(1,2,3−トリチアン)を得る方法が記載されている。 特許文献2には、ジハロゲン化合物とアルカリ金属の多硫化物を親水性溶媒および親油性溶媒の非相溶性の二相系溶媒中で反応させることにより、環状ポリスルフィドを得る方法が記載されている。特開昭56−164181号公報特開2002−293783号公報CHEMISTRY LETTERS, pp.1355-1358, 1980 報告されている環状ポリスルフィドの製造方法は製造工程が長く実用的ではない。 特許文献1および非特許文献1では、トリメチルシリル基で硫黄原子が保護された化合物を用いるが、このような化合物は水分により容易に加水分解されることにより収率が低くなるので、反応系から水分を除去する必要がある。 さらに、非特許文献1では、ジチオールに硫黄の保護基として高価なクロロトリメチルシランを2当量反応させなければならない。 そこで、高価かつ不安定なトリメチルシリル基による硫黄原子の保護を必要とせず、反応系から水分を除去することなく、環状ポリスルフィド化合物を高収率で簡易かつ経済的に製造する方法が必要である。 特許文献2では、上記の方法とは異なり、加水分解されやすいトリメチルシリル基による硫黄原子の保護は必要ないが、硫黄原子を含まないジハロゲン化合物に、硫黄原子を2個以上含有するアルカリ金属の多硫化物M2Sx(式中、Mはアルカリ金属であり、xは2〜6の整数)を反応させることによって、環状ポリスルフィドを得る。 モノまたはジスルフィドは耐熱性に優れることが知られている。3個以上のSを有するポリスルフィドは耐久性に優れるが、Sの個数が多くなると粘度が上昇してハンドリングが困難になる。例えば、ゴムに混練する際には、分散性の観点から、低粘度のポリスルフィドが好ましい。 耐熱性、耐久性および分散性のバランスを考慮すると、環状トリスルフィドが特に有用である。 そこで、本発明者らは、特に有用な環状トリスルフィドの合成方法を検討した結果、2個のSを有するハロゲン化物と1個のSを有するアルカリ金属硫化物の反応による合成が、原料の安定性や入手容易性、合成における反応性の観点から優位であることを見出し、本発明を完成させた。 本発明は、式(1):(式中、Rは置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)で表されるジチオール化合物または式(2):(式中、Rは置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)で表される環状ジスルフィド化合物と、 式(1)で表されるジチオール化合物または式(2)で表される環状ジスルフィド化合物1モルに対して、ハロゲン化剤0.8〜5.0モルとを、有機溶媒の単相系で反応させて、式(3):(式中、Rは置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化ジチオ化合物を生成し、 式(3)で表されるハロゲン化ジチオ化合物と、前記ハロゲン化ジチオ化合物1モルに対して、M2S(式中、Mはアルカリ金属を示す。)で表されるアルカリ金属の硫化物0.8〜5.0モルとを、有機溶媒もしくは水と有機溶媒との混合溶媒の単相系または水と有機溶媒との二相系で反応させて、式(4):(式中、Rは置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)で表される環状トリスルフィド化合物の製造方法を提供する。 本発明の製造方法によれば、ジチオール化合物または環状ジスルフィド化合物にハロゲン化剤を反応させてハロゲン化ジチオ化合物を生成し、得られたハロゲン化ジチオ化合物にアルカリ金属の硫化物を反応させるので、高価かつ加水分解を起こしやすいトリメチルシリル基による硫黄原子の保護を必要とせずに、また、反応液からの水分の除去を必要とせずに、環状トリスルフィド化合物を高収率で簡易かつ経済的に製造することができる。 本発明の環状トリスルフィド化合物の製造方法は、 2個のSを有する、式(1)で表されるジチオール化合物(以下、「ジチオール化合物(1)」という。)または式(2)で表される環状ジスルフィド化合物(以下、「環状ジスルフィド化合物(2)」という。)をハロゲン化して、式(3)のハロゲン化ジチオ化合物(以下、「ハロゲン化ジチオ化合物(3)」という。)を生成する工程A;および ハロゲン化ジチオ化合物(3)と、1個のSを有するアルカリ金属の硫化物とを反応させて、式(4)で表される環状トリスルフィド化合物(以下、「環状トリスルフィド化合物(4)」という。)を生成する工程Bを含む。[工程A] 本発明に用いるジチオール化合物(1)および環状ジスルフィド化合物(2)のRは、置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基である。より好適には、非置換のC3〜C8のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基である。アルキレン基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などが挙げられる。アルキレン基の置換基として、アルキル基、アリール基、アルコキシ基が挙げられる。 本発明に用いるハロゲン化剤は、ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)をハロゲン化してハロゲン化ジチオ化合物(3)を生成するものであれば、特に限定されず、市販されているものを用いることもできる。このようなハロゲン化剤として、例えば、フッ素(F2)、塩素(Cl2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)などのハロゲンや、前記ハロゲンの発生源となるハロゲン化剤、例えば、塩化スルフリルや塩化ホスホリル等が挙げられる。なかでも、塩素や臭素が好適に用いられる。 ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)とハロゲン化剤とを反応させる際、ハロゲン化剤の使用量は特に限定されないが、ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)1モルに対して、0.8〜5.0モルであることが好ましく、1.0〜1.2モルであることがより好ましい。 前記ハロゲン化剤の使用量が0.8モル以上であれば、得られるハロゲン化ジチオ化合物(3)の収率が低下することがなく、5.0モル以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。 ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)とハロゲン化剤とを反応させる工程Aに使用する溶媒は単相系であり、ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)およびハロゲン化剤を溶解する有機溶媒を使用することができる。 ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)とハロゲン化剤とを反応させる際に用いる有機溶媒は特に限定されない。 水と相溶性の有機溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリル、アクリロニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ブチロラクトン、カプロラクトン、ヘキサノラクトンなどのエステル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;N−メチルピロリドンなどの含窒素複素環式ケトン類が挙げられる。 これらの中でも、ジメチルスルホキシドが好適に用いられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。 水と非相溶性の有機溶媒として、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、テトラヒドロピランなどのエーテル類;プロピオニトリルなどのニトリル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンジン、ケロシン、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼンなどの炭化水素類;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの塩素系が挙げられる。 これらの中でも、ジクロロメタンが好適に用いられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。 ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)とハロゲン化剤とを反応させる工程Aに使用する溶媒のうち、最も好適な溶媒はジクロロメタンである。 ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)とハロゲン化剤とを反応させる際の溶媒使用量は特に限定されないが、ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)100質量部に対して、50〜2000質量部であることが好ましく、100〜1500質量部であることがより好ましい。 前記溶媒の使用量が50質量部以上であれば、生成するハロゲン化ジチオ化合物(3)が溶解せず懸濁状態となることがなく、次工程の収率が向上する。また、前記溶媒の使用量が2000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。 ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)とハロゲン化剤とを反応させる際の反応温度としては、0〜50℃であることが好ましく、20〜30℃であることがより好ましい。 前記反応温度が0℃以上であれば、反応に長時間を要することがない。前記反応温度が50℃を超えても反応系に影響はないが、50℃以下であれば温度に見合う効果が認められ、経済的に有用である。 ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)とハロゲン化剤とを反応させる際の反応時間は30分から3時間であることが好ましく、1時間から2時間であることが好ましい。 前記反応時間が30分以上であれば、反応がほぼ完了する。前記反応時間が3時間を超えても反応系に影響はないが、3時間以下であれば、時間に見合う効果が認められ、経済的に有用である。[工程B] 本発明に用いるアルカリ金属の硫化物のアルカリ金属として、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなど、またはそれらの組合せが挙げられる。なかでも、ナトリウムが好適である。すなわち、アルカリ金属の硫化物としては、Li2S、Na2S、K2Sなど、またはそれらの組合せが挙げられ、Na2Sが好適である。 ハロゲン化ジチオ化合物(3)とアルカリ金属の硫化物とを反応させる際、アルカリ金属の硫化物の使用量は特に限定されないが、ハロゲン化ジチオ化合物(3)1モルに対して、0.8〜5.0モルであることが好ましく、1.0〜1.1モルであることがより好ましい。 前記アルカリ金属の硫化物の使用量が0.8モル以上であれば、得られる環状トリスルフィド化合物(4)の収率が低下することがなく、5.0モル以下であれば使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。 工程Aの反応後、溶媒を取り除くことでハロゲン化ジチオ化合物(3)を高収率で単離することができる。 単離したハロゲン化ジチオ化合物(3)とアルカリ金属の硫化物M2Sとを反応させる工程Bにおいて、新たな溶媒を用いて、有機溶媒または水と有機溶媒との混合溶媒を用いる単相系を形成するか、有機相/水相の二相系を形成する。 あるいは、ハロゲン化ジチオ化合物(3)を単離することなく、工程Aの反応液にアルカリ金属の硫化物M2Sを添加して工程Bの反応を行うこともできる。工程Aの反応を単独の有機溶媒中で行った場合、M2Sの溶解性を考慮して、水の添加により、前記有機溶媒との混合溶媒を用いる単相系を形成するか、有機相/水相の二相系を形成する。 工程Bにおいて、単相系で反応させる場合、ハロゲン化ジチオ化合物(3)およびアルカリ金属の硫化物を溶解する混合溶媒を使用する。また、二相系で反応させる場合、少なくともハロゲン化ジチオ化合物(3)を溶解する溶媒を有機相に使用する。 工程Bで用いることができる有機溶媒は、工程Aで用いることができるものと同様である。 ハロゲン化ジチオ化合物(3)とアルカリ金属の硫化物とを単相系で反応させる際の溶媒使用量は特に限定されないが、ハロゲン化ジチオ化合物(3)100質量部に対して、50〜1000質量部であることが好ましく、100〜800質量部であることがより好ましい。 前記溶媒の使用量が50質量部以上であれば、系内の濃度が低いため線状のポリマーを生成する可能性がなく環状トリスルフィドの収率が高くなる。また、前記溶媒の使用量が1000質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。 ハロゲン化ジチオ化合物(3)とアルカリ金属の硫化物とを二相系で反応させる際の水相および有機相の溶媒使用量は特に限定されないが、ハロゲン化ジチオ化合物(3)100質量部に対して、50〜1500質量部であることが好ましく、100〜1000質量部であることがより好ましい。 前記溶媒の使用量が50質量部以上であれば、系内の濃度が低いため線状のポリマーを生成する可能性がなく環状トリスルフィドの収率が高くなる。また、前記溶媒の使用量が1500質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。 有機相/水相の二相系で反応させる場合、相間移動触媒を用いることができる。その使用量は、ハロゲン化ジチオ化合物(3)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜9質量部であることがより好ましい。 前記相間移動触媒の使用量が0.01質量部以上であれば、反応が完結するので、収率が低下することがない。前記相間移動触媒の使用量が10質量部以下であれば、使用量に見合う効果が認められ、経済的に有用である。 相間移動触媒としては、例えば、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリエチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライドおよびトリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩、ヘキサドデシルトリエチルホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライドおよびテトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド等の4級ホスホニウム塩等が挙げられる。中でも、収率を向上させる観点および経済性の観点等から、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドが好ましく用いられる。 ハロゲン化ジチオ化合物(3)とアルカリ金属の硫化物とを反応させる際の反応温度としては、0〜120℃であることが好ましく、20〜100℃であることがより好ましい 前記反応温度が0℃以上であれば、反応に長時間を要することがない。前記反応温度が120℃を超えても反応系に影響はないが、120℃以下であれば温度に見合う効果が認められ、経済的に有用である。 ハロゲン化ジチオ化合物(3)とアルカリ金属の硫化物とを反応させる際の反応時間は20分から2時間であることが好ましく、30〜1時間であることが好ましい。 前記反応時間が20分以上であれば、反応がほぼ完了する。前記反応時間が2時間を超えても反応系に影響はないが、2時間以下であれば、時間に見合う効果が認められ、経済的に有用である。 反応終了後、有機層を分離し、減圧または常圧下にて濃縮することで環状トリスルフィド化合物(4)を得ることができる。 以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。(実施例1)[1,2,3−トリチエパンの製造] 攪拌機、温度計、滴下ロートおよび冷却器を備え付けた300mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2−ジチアン6.0g(50mmol)およびジクロロメタン50gを仕込み、塩素3.7g(52mmol)を吹き込み、20℃で1時間撹拌した。その後、水100gに硫化ナトリウム3.9g(50mmol)を加え溶解させた水溶液を添加し、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド0.3g(0.9mmol)を加え20℃で1時間攪拌した。 分液により油層を取得した後、留去により溶媒を取り除くことで1,2,3−トリチエパンを5.7g(収率75%)で取得した。この物質はGCMS測定および1H−NMR測定により目的とする1,2,3−トリチエパンであることを確認した。1H−NMR(400MHz、溶媒:CDCl3):2.79(s,4H)、1.91(s,4H) なお、別途、1,2−ジチアンと塩素との反応により、1,2−ブタンジスルフェニルクロライドが収率99〜100%で取得できたことを確認した。(実施例2)[1,2,3−トリチアンの製造] 攪拌機、温度計、滴下ロートおよび冷却器を備え付けた300mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,3−プロパンジチオール5.4g(50mmol)およびジクロロメタン50gを仕込み、塩素3.7g(52mmol)を吹き込み、20℃で1時間撹拌した。その後、水100gに硫化ナトリウム3.9g(50mmol)を加え溶解させた水溶液を添加し、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド0.3g(0.9mmol)を加え20℃で1時間攪拌した。 分液により油層を取得した後、留去により溶媒を取り除くことで1,2,3−トリチアンを4.4g(収率63%)で取得した。この物質はGCMS測定および1H−NMR測定により目的とする1,2,3−トリチエパンであることを確認した。1H−NMR(400MHz、溶媒:CDCl3):2.60(s,4H)、1.90(s,2H) なお、別途、1,3−プロパンジチオールと塩素との反応により、1,3−プロパンジスルフェニルクロライドが収率99〜100%で取得できたことを確認した。(比較例1)[1,2,3−トリチエパンの製造] 攪拌機、温度計、滴下ロートおよび冷却器を備え付けた300mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2−ジチアン6.0g(50mmol)およびジクロロメタン50gを仕込み、塩素3.7g(52mmol)を吹き込み、20℃で1時間撹拌した。その後、水100gに硫化ナトリウム2.7g(35mmol)を加え溶解させた水溶液を添加し、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド0.3g(0.9mmol)を加え20℃で1時間攪拌した。 分液により油層を取得した後、留去により溶媒を取り除くことで1,2,3−トリチエパンを4.3g(収率56%)で取得した。この物質はGCMS測定および1H−NMR測定により目的とする1,2,3−トリチエパンであることを確認した。1H−NMR(400MHz、溶媒:CDCl3):2.79(s,4H)、1.91(s,4H) なお、別途、1,2−ジチアンと塩素との反応により、1,2−ブタンジスルフェニルクロライドが収率99〜100%で取得できたことを確認した。 本発明の製造方法によれば、ジチオール化合物(1)または環状ジスルフィド化合物(2)にハロゲン化剤を反応させてハロゲン化ジチオ化合物(3)を生成し、得られたハロゲン化ジチオ化合物(3)にアルカリ金属の硫化物を反応させるので、簡易かつ経済的に、高い収率で環状トリスルフィド(4)を製造することができる。このように製造された環状トリスルフィドは、ゴム用加硫剤、各種ポリマー改質剤、最近では電子デバイス等の電極材料として有用である。 式(1):(式中、Rは置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)で表されるジチオール化合物または式(2):(式中、Rは置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)で表される環状ジスルフィド化合物と、 式(1)で表されるジチオール化合物または式(2)で表される環状ジスルフィド化合物1モルに対して、ハロゲン化剤0.8〜5.0モルとを、有機溶媒の単相系で反応させて、式(3):(式中、Rは置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化ジチオ化合物を生成し、 式(3)で表されるハロゲン化ジチオ化合物と、前記ハロゲン化ジチオ化合物1モルに対して、M2S(式中、Mはアルカリ金属を示す。)で表されるアルカリ金属の硫化物0.8〜5.0モルとを、有機溶媒もしくは水と有機溶媒との混合溶媒の単相系または水と有機溶媒との二相系で反応させて、式(4):(式中、Rは置換または非置換のC2〜C18のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)で表される環状トリスルフィド化合物の製造方法。 ハロゲン化剤が、F2、Cl2、Br2、I2、塩化スルフリルおよび塩化ホスホリルよりなる群から選択される、請求項1の製造方法。 式(3)で表されるハロゲン化ジチオ化合物中のXが、F、Cl、BrおよびIよりなる群から選択される、請求項1の製造方法。 M2Sで表されるアルカリ金属の硫化物中のMが、Li、NaおよびKよりなる群から選択される、請求項1の製造方法。 ハロゲン化剤の使用量が、式(1)で表されるジチオール化合物または式(2)で表される環状ジスルフィド化合物1モルに対して、1.0〜1.2モルである、請求項1の製造方法。 アルカリ金属の硫化物の使用量が、式(3)で表されるハロゲン化ジチオ化合物1モルに対して、1.0〜1.1モルである、請求項1の製造方法。 【課題】高価かつ加水分解を起こしやすいトリメチルシリル基による硫黄原子の保護を必要とせずに、環状トリスルフィド化合物を高収率で簡易かつ経済的に製造する。 【解決手段】2個のSを有するジチオール化合物または環状ジスルフィド化合物をハロゲン化して、ハロゲン化ジチオ化合物を生成し;次いで、ハロゲン化ジチオ化合物と、1個のSを有するアルカリ金属の硫化物とを反応させて、環状トリスルフィド化合物を製造する。【選択図】なし