タイトル: | 公開特許公報(A)_経皮吸収剤用のリポソーム担体 |
出願番号: | 2013070094 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 9/127,A61K 47/44,A61K 47/24,A61K 47/34,A61K 47/28 |
渡来 仁 JP 2014193817 公開特許公報(A) 20141009 2013070094 20130328 経皮吸収剤用のリポソーム担体 日本全薬工業株式会社 591281220 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 渡来 仁 A61K 9/127 20060101AFI20140912BHJP A61K 47/44 20060101ALI20140912BHJP A61K 47/24 20060101ALI20140912BHJP A61K 47/34 20060101ALI20140912BHJP A61K 47/28 20060101ALI20140912BHJP JPA61K9/127A61K47/44A61K47/24A61K47/34A61K47/28 9 OL 15 4C076 4C076AA19 4C076BB31 4C076CC06 4C076DD63F 4C076DD70F 4C076EE23F 4C076FF68 本発明は、経皮吸収剤において吸収性を向上させるために有用なリポソームに関する。特に、本発明は、経皮ワクチンの担体として優れた有用性を有するリポソームに関する。 経皮ワクチンなどの経皮吸収性の投与剤は、非侵襲性であるために高い有用性を有する。しかし、表皮から浸透させる必要性があるため皮膚浸透性の高い担体の開発が必要である。 経皮ワクチンは、その投与の労力が低く安全であり、高い免疫応答が誘導できるため、家畜の感染症予防において期待される技術であるが、開発する上で、ワクチン抗原を表皮から浸透させる技術が重要となる。 しかしながら、ワクチン抗原を表皮から浸透させ、皮膚の免疫相当細胞(樹状細胞)であるランゲルハンス細胞にデリバリーする実用的技術の開発はまだなされていない。 免疫担当細胞に抗原を送達させる上で、リポソームは優れたデリバリーシステムとして機能する。本発明者等は、これまで、家畜に対するリポソームワクチンの開発研究を行い、アジュバントとして有用なホスファチジルコリン等リン脂質を含むリポソームを提供してきた(特許文献1〜3等、非特許文献1〜3等)。しかし、これらは経口、経鼻、あるいは眼内投与などの粘膜投与のためのものであり、経皮投与に適するリポソームの研究開発はなされていない。 一方、化粧料用リポソームにつき、ホスファチジルコリンとホスファチジン酸を含有するリポソームを開示し、該リポソームに関して、膜構造が柔軟で皮膚吸収性が高いと記載されている従来技術(特許文献4)があるが、これは経皮ワクチンへの応用は検討されていない。 また、インフルエンザワクチンにつき、経皮投与のための製剤であって、リポソームを用いることを記載する文献もあるが(特許文献5)、ここでは、用いるリポソームについて具体的に検討・開示はされてはいない。特開2006−111540号公報WO2007/091580号公報特開2009−286730号公報特開2009−269871号公報特開2001−151698号公報J. Vet. Med. Sci., 59(12), 1109-1114 (1997)Development and Comparative Immunology 28, 29-38(2004)Biomaterials 31, 943-951(2010) 本発明は、表皮透過性に優れ、高い免疫応答を誘導できる、経皮吸収剤担体として最適なリポソームを提供することを課題とする。 本発明者は、粘膜投与のために従来本発明者等が開発してきたリポソームを経皮投与に応用するために鋭意検討を行った。 経皮投与のためには、リポソームが表皮透過性に優れていることが不可欠である。 すなわち、非侵襲性の経皮投与のためには皮膚バリア通過が必須であるが、表皮には細胞内脂質があるので、脂質であるリポソームは通過しがたい。 そこで、経皮投与剤は表皮透過のためにアルコールに分散して投与することになるが、本発明者等は、アルコールは油を溶かすので、経皮吸収剤用リポソームには所定以上のアルコール安定性が必要であることを見出した。 さらに本発明者は、経皮吸収剤に適するアルコールに安定で且つ表皮に浸み込むリポソーム組成を鋭意検討した結果、相転移温度が高いリン脂質を組み合わせて配合することで、リポソーム膜に一定の硬さと一定の流動性を与えることができ、アルコール安定性に優れたリポソームを提供できることを見出し、本発明に至った。 より具体的には、このような相転移温度が高くアルコール安定性であるリン脂質として、DPPC、DSPC、DPPS、DSPE−PEG−SA、HePC、及びPEG−PEを選び、組み合わせて用い配合することで、経皮投与に最適なリポソームを構成することができた。 なお、本願明細書では以下の略号を用いる。DPPC:ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidylcholine)DPPS:ジパルミトイルホスファチジルセリン(dipalmitoylphosphatidylserine)DSPC:ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoylphosphatidylcholine)DSPE−PEG−SA(PEG−PEと同じ):ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(polyethylen glycol(PEG) and stearic acid(SA)-conjugated distearoylphosphatidylethanolamine)HePC:水素添加卵黄レシチンChol:コレステロール(cholesterol)DMPC:ジミリスチルホスファチジルコリン(dimiristylphosphatidylcholine) また、これらの化合物の相転移温度は以下のとおりである。DPPC:41〜42℃DPPS:65℃DSPC:54〜58℃DSPE−PEG−SA(PEG−PE):65〜70℃HePC:50〜56℃Chol:なしDMPC:23〜24℃ そして、さらに、本発明のリポソームを用いて皮膚吸収剤を調製し皮膚に塗布して経皮免疫を検討した結果、意外にも粘膜免疫が誘導できることが分かった。 さらに、本発明者は、上記リポソームの粒径とアルコール安定性、免疫誘導性との関係も検討し、アルコール安定性及び免疫誘導性のために最適な粒径があることも見出した。 より具体的に、本発明は、以下に関するものである。〔1〕アルコール中で安定なリポソームからなる経皮吸収剤用担体。〔2〕20%エタノール含有PBS中で2時間反応させたときのカルボキシフルオレセン(CF)の放出度が50%以下であるリポソームからなる上記〔1〕記載の経皮吸収剤用担体。〔3〕相転移温度50℃以上のリン脂質を少なくとも50%以上配合して形成したリポソームからなる上記〔1〕または〔2〕に記載の経皮吸収剤用担体。〔4〕リン脂質がジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、水素添加卵黄レシチン(HePC)、及びポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA)から選ばれた一種以上である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のリポソームからなる経皮吸収剤用担体。〔5〕水素添加卵黄レシチン(HePC)、コレステロール(Chol)、及びジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)を含むことを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のリポソームからなる経皮吸収剤用担体。〔6〕水素添加卵黄レシチン(HePC):コレステロール(Chol)のモル比が1:1〜4:1であることを特徴とする請求項5に記載のリポソームからなる経皮吸収剤用担体。〔7〕リポソームが、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA)、水素添加卵黄レシチン(HePC)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA)、水素添加卵黄レシチン(HePC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SAE)、水素添加卵黄レシチン(HePC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)のいずれかである経皮吸収剤用担体。〔8〕平均粒径が0.6〜1μmである、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の経皮吸収剤用担体。〔9〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の経皮吸収剤用担体を含む経皮ワクチン。 本発明の経皮吸収剤用リポソーム担体は、特に経皮ワクチンに用いることによって、家畜感染症の防除に対して有用である。本発明は、家畜の感染症に対する新たな予防法、治療法に応用できるので、より安全な畜産製品生産のために活用することができる。 また、既存のワクチン抗原を使用することで、既存の注射ワクチンを経皮ワクチンとすることができる。このことは、ワクチンの開発コストを抑えた形で経皮ワクチンを応用できる可能性を示している。経皮免疫による免疫誘導(血清IgG)を示す図である。経皮免疫による免疫誘導(血清IgA)を示す図である。経皮免疫による腸管抗体の誘導(42日目)を示す図である。20%エタノール安定リポソーム経皮免疫後の抗体産生(血清抗OVA-IgG)を示す図である。20%エタノール安定リポソーム経皮免疫後の抗体産生(血清抗OVA-IgA)を示す図である。20%エタノール安定リポソーム経皮免疫後の抗体産生(腸管抗OVA-IgG)示す図である。20%エタノール安定リポソーム経皮免疫後の抗体産生(腸管抗OVA-IgA)示す図である。20%エタノール抵抗性リポソーム経皮ワクチンによる免疫誘導(アジュバント比較:血清IgG)20%エタノール抵抗性リポソーム経皮ワクチンによる免疫誘導(アジュバント比較:血清IgA)20%エタノール抵抗性リポソーム経皮ワクチンによる免疫誘導(アジュバント比較:IgGサブクラス、Day42)20%エタノール抵抗性リポソーム経皮ワクチンによる免疫誘導(アジュバント比較:腸管IgA) 以下には、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。 前記したように、本発明は、リポソームをアルコール安定性にすることによって、経皮吸収用担体に適することを見出したものであるが、本発明では、リポソームのアルコール安定性を示す指標として、20%エタノール含有PBS中で2時間反応させたときのカルボキシフルオレセン(CF)の放出度を用いた(以下単に「CF放出度」ということがある。)。CF放出度は、例えば、80%であっても経皮吸収用担体に用いることができるが、リポソーム膜が壊れ抗原等の封入剤がリークしてしまい皮膚を通過する封入剤が減少する可能性が高くなるので効率的ではない。よって、本発明において好ましいCF放出度は、約50%以下であり、より好ましくは約30%以下、さらに好ましくは約20%以下である。 このようなアルコール安定性のリポソームは、リン脂質として、相転移温度の高いものを配合することで達成できる。相転移温度が高いリン脂質を組み合わせて配合することで、リポソーム膜に一定の硬さと一定の流動性を与えることができるからである。リポソームは、相転移温度が50℃以上のリン脂質を少なくとも50モル%以上配合して形成するのが好ましい。ここで、リポソームを相転移温度が50℃以上のリン脂質を少なくとも50モル%以上配合して形成するとは、相転移温度が50℃以上のリン脂質を選び、それを少なくとも50モル%以上配合してリポソームを形成すれば良いのであって、50モル%を超えなければ相転移温度が50℃以上のリン脂質や他の脂質(コレステロールなど)を含んでも良いことを示す。相転移温度50℃以上のリン脂質が80モル%以上であればさらに好ましく、逆に50モル%以下程度になるとアルコール安定性が低下し好ましくない。 相転移温度が50℃以上のリン脂質としては、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、水素添加卵黄レシチン(HePC)、及びポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA)、水素添加卵黄レシチン(HePC)が挙げられる。特に水素添加卵黄レシチン(HePC)が安価で入手しやすいので好ましい。 リポソームにはリン脂質以外のコレステロール(Chol)を配合することができるが、水素添加卵黄レシチン(HePC)にコレステロール(Chol)を配合するときは、水素添加卵黄レシチン(HePC):コレステロール(Chol)のモル比が1:1〜4:1であることがより好ましい。 具体的な配合例として、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA);水素添加卵黄レシチン(HePC)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA);水素添加卵黄レシチン(HePC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SAE);水素添加卵黄レシチン(HePC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)などが挙げられる。ここで、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA)は、DSPC、DPPS、コレステロール、及びDSPE−PEG−SAを組み合わせて配合することを示す。 また、経皮吸収用担体として用いるリポソームの平均粒径は0.6〜1μm程度が好ましい。この平均粒径は、リポソームを通過させるエクストルーダーの孔径によって示される値である。 本発明のリポソームは、経皮ワクチン用の担体として好適に用いることができる。その際、経皮用ワクチンには、リポソーム以外にアジュバントをさらに配合して用いても良い。用いうるアジュバントとして、ポリI:C、MPL、イミダゾキノリン誘導体、TDM等の病原体関連分子パターン(Toll like receptors、NOD-like receptors、RIG-I-like receptors、C-type lectin receptlrs 等)のアゴニストの他、サポニン、α-ガラクシトシルセラミド(αGalCer)、スクアレン、ADP-リボシル化外毒素、サイトカイン、ケモカインなどが挙げられるが、サポニン、αGalCer、MPLが好ましく、特にαGalCerが好ましい。 以下に実施例によって、本発明で、アルコール抵抗性のリポソームを構築し、その経皮吸収剤としての至適粒径、有用性を確認したことを具体的に示す。さらに、経皮ワクチンに用いるアジュバントの種類も変えて適性を試験した。<アルコール抵抗性リポソームの作出> 本発明者は、本発明者等が家畜に対するワクチンの粘膜投与のために開発研究してきたホスファチジルコリン等リン脂質を含むリポソームの組成(特許文献1〜3参照)を参考にしながら、以下の組成のリポソームについてアルコール抵抗性を検討した。 #1.DPPC:DPPS:Chol:DSPE‐PEG‐SA=1:1:2:0.2(モル比) #2.DSPC:Chol:DSPE‐PEG‐SA=7:2:0.2(モル比) #3.DSPC:DPPS:Chol:DSPE‐PEG‐SA=7:3:2:0.2(モル比) #4.DSPC:DPPS:Chol:DSPE‐PEG‐SA=1:1:2:0.2(モル比) #5.DMPC:DPPS:Chol:DSPE‐PEG‐SA=1:1:2:0.2(モル比) #6.DSPC:DPPS:Chol=1:1:2(モル比) カルボキシフルオレセイン (CF) を封入したリポソームは以下に示す薄膜法によって作製した。リン脂質およびコレステロールを10mモル濃度になるように溶媒 (クロロホルム/メタノール混合液)に溶解して、リン脂質およびコレステロールがそれぞれ♯1〜♯6に示された割合 (モル比) になるよう混合してガラス容器へ入れる。ロータリーエバポレーターによってガラス容器中の溶媒を留去することによって容器側面へ脂質膜を付着させる。ここへ0.05M濃度のCF水溶液を添加し、振とう機で撹拌することにより脂質膜を容器から剥がし、CFを封入した各リポソームを得た。 CFを封入した各リポームを0%、2%、5%、10%ならびに20%エタノール含有PBS(phosphate buffer saline)に懸濁させ、室温で30分、1時間ならびに2時間反応させた。各反応時間におけるCFの放出量を測定し、アルコール抵抗性リポソームの脂質組成や組成比を検討した。 結果は表1に示すとおりである。 ♯1〜♯6組成に用いられるDPPC、DSPC、DPPS、DPSE-PEG-SA、及びDMPCの相転移温度はそれぞれ41〜42℃、54〜58℃、65℃、65〜70℃、及び23〜24℃であり、Cholには相転移温度はみられない。♯1〜♯6組成において、相転移温度が50℃以上であるリン脂質の割合は、それぞれ♯1で28.6モル%、♯2で80.0モル%、♯3で86.3モル% ♯4で52.4モル%、♯5で28.6モル%、♯6で50.0モル%であり、相転移温度が50℃以上であるリン脂質の割合が高くなるほど、アルコール抵抗性が高くなり、50℃以上であるリン脂質の割合が50モル%を下回るときアルコール抵抗性が低く(CFリーク率(%)が高く)なることが分かった。なお、表1において、−は試験を行っていないことを示す。<抗体産生の確認> 表1の結果から最もアルコール抵抗性の高かった♯3のリポソームを用いて、経皮投与による免疫誘導能の確認をした。その際、♯3のリポソームにmonophosphoryl lipid A(MPL)をアジュバントとして使用した(2μgMPL/マウス)。 この実験では、抗体産生に対するリポソーム粒径(1μm、0.6μm)の影響も同時に確認した。 経皮免疫は、モデル抗原として卵白アルブミン(OVA)を100μg/マウスで用い、0日、14日、28日後の血清IgG、血清IgA、及び42日目の腸管抗体の誘導を測り、それぞれ図1、図2、及び図3に示した。 免疫誘導能の確認は以下の方法で実施した。 OVAを封入したリポソームをCF封入リポソームと同様の方法で作製した。これを20%エタノール含有PBS中へ分散させ、OVA量が100μg/マウスになるようマウス背部へ塗布することにより免疫した。免疫は14日間隔で計3回実施した。免疫開始前 (day 0) および開始後14日毎 (Day 14、Day 28、Day42) に血液を採取し、それぞれの時点におけるOVAに特異的な血清中IgGおよびIgA抗体価をELISA法によって測定した。またDay 42の時点で採取した小腸をPBS中で懸濁し、その上澄み液中のOVA特異的IgGおよびIgA抗体価を腸管抗体としてELISA法によって測定した。 その際、OVAを対照として用いた。 図1〜図3の結果から、OVA封入リポソームは、粒径0.6μmでも1μmでも、血清IgG、血清IgA、腸管IgG、及び腸管IgAのいずれにおいても、OVAに対して、有意に優れた免疫特性を示したことが分かった。 これらの結果から、相転移温度が高くアルコール抵抗性の高いリポソームを用いれば、経皮的に免疫誘導をできることが分かった。特にCF放出度が20%以下であり、相転移温度が50℃以上であるリン脂質を80モル%以上含む♯3を用いたときに、高い経皮免疫誘導が得られることが分かった。 他の実施例として、安価で入手しやすいHePC(水素添加卵黄レシチン)をリポソームの材料として用いるリポソームにつき、アルコール抵抗性、免疫誘導性を確認した。 リポソーム組成以外は、実施例1に準じて実験を行った。なお、HePC(水素添加卵黄レシチン)の相転移温度は50〜56℃、DPPSの相転移温度は65℃である。また、実施例1と同様にmonophosphoryl lipid A(MPL)をアジュバントとして使用した(2μgMPL/マウス)。<アルコール抵抗性> 実施例2におけるリポソームの組成と、そのアルコール抵抗性は以下の表2に示すとおりである。<免疫誘導の確認> 表2から特にアルコール抵抗性の高い♯1、3及び5の組成を選び、経皮免疫誘導を行った。結果を図4〜図7に示す。図4〜図7において♯1、3及び5はそれぞれgroup3、2、及び1として示されている。特にCF放出度20%以下という高いアルコール抵抗性のリポソームで、高い経皮免疫誘導が示されている。 以上の実施例1及び実施例2の結果から、アルコール抵抗性が高く、相転移温度の高いリポソームを用いることで、経皮免疫に有用なリポソームが得られることが分かった。<アジュバントの種類> 本発明の経皮リポソームについて、アジュバントとして最適な物質を選定するために、アジュバントを変更した試験を行った。 実施例1の♯3のリポソームを用いて、アジュバントとして、サポニン、MPL、αGalCerを用いた以外は実施例1に準じて経皮免疫試験も行った。 結果を図8〜図11に示す。 図8〜11の結果から分かるように、サポニン、MPL、αGalCerのいずれでも、血清IgG、血清IgA、及び腸管IgAのいずれについても、対照(アジュバンドなし)に比して有意の差がある免疫特性が得られており、特に、αGalCerが最も好ましいことが分かった。 本発明の経皮吸収剤用担体は、特に経皮ワクチン用として用いることで家畜感染症の防除に対して有用である。本発明は、家畜の感染症に対する新たな予防法、治療法に応用できるので、より安全な畜産製品生産のために活用することができる。 また、既存のワクチン抗原を使用することで、既存の注射ワクチンを経皮ワクチンとすることができる。このことは、ワクチンの開発コストを抑えた形で経皮ワクチンを応用できる可能性を示している。アルコール中で安定なリポソームからなる経皮吸収剤用担体。20%エタノール含有PBS中で2時間反応させたときのカルボキシフルオレセン(CF)の放出度が50%以下であるリポソームからなる請求項1記載の経皮吸収剤用担体。相転移温度50℃以上のリン脂質を少なくとも50モル%以上配合して形成したリポソームからなる請求項1または2に記載の経皮吸収剤用担体。リン脂質がジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、水素添加卵黄レシチン(HePC)、及びポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA)から選ばれた一種以上である請求項1〜3のいずれかに記載のリポソームからなる経皮吸収剤用担体。水素添加卵黄レシチン(HePC)、コレステロール(Chol)、及びジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリポソームからなる経皮吸収剤用担体。水素添加卵黄レシチン(HePC):コレステロール(Chol)のモル比が1:1〜4:1であることを特徴とする請求項5に記載のリポソームからなる経皮吸収剤用担体。リポソームが、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA)、水素添加卵黄レシチン(HePC)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SA)、水素添加卵黄レシチン(HePC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)/ポリエチレングリコール-ステアリン酸-共役ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG−SAE)、水素添加卵黄レシチン(HePC)/ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)/コレステロール(Chol)のいずれかである経皮吸収剤用担体。平均粒径が0.6〜1μmである、請求項1〜7のいずれかに記載の経皮吸収剤用担体。請求項1〜8のいずれかに記載の経皮吸収剤用担体を含む経皮ワクチン。 【課題】経皮ワクチン用に特に適する経皮吸収剤用リポソーム担体を提供すること【解決手段】アルコール抵抗性の高いリポソームによって、経皮吸収剤用担体に適するリポソームを提供することができた。【選択図】なし