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タイトル:公開特許公報(A)_チオール化合物またはその塩の定量方法
出願番号:2013069356
年次:2013
IPC分類:G01N 31/00,G01N 30/06,G01N 30/86,G01N 30/88,G01N 30/04


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山口 弘貴 神田 尚明 増田 芳秀 JP 2013228386 公開特許公報(A) 20131107 2013069356 20130328 チオール化合物またはその塩の定量方法 住友精化株式会社 000195661 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所 110000280 山口 弘貴 神田 尚明 増田 芳秀 JP 2012079454 20120330 G01N 31/00 20060101AFI20131011BHJP G01N 30/06 20060101ALN20131011BHJP G01N 30/86 20060101ALN20131011BHJP G01N 30/88 20060101ALN20131011BHJP G01N 30/04 20060101ALN20131011BHJP JPG01N31/00 VG01N31/00 YG01N30/06 EG01N30/86 JG01N30/88 CG01N30/04 P 4 OL 16 2G042 2G042AA01 2G042BB20 2G042BD15 本発明は、チオール化合物またはその塩の定量方法に関する。さらに詳しくは、食品分野、環境分野、有機化学分野などにおいて、試料中に含まれているチオール化合物またはその塩を定量するのに有用なチオール化合物またはその塩の定量方法に関する。 チオール化合物は、チオール基を有する化合物である。かかるチオール化合物の定量は、食品分野、環境分野、有機化学分野などの種々の分野で行なわれている。チオール化合物およびその塩の定量は、例えば、酸化還元滴定法、液体クロマトグラフィー法、ガスクロマトグラフィー法などによって行なわれている。 しかし、酸化還元滴定法には、ヨウ素などの酸化剤によって化合物中のチオール基を酸化させ、生成されたジスルフィドの量が測定されるため、試料中に2種類以上のチオール化合物が含まれている場合、当該2種類以上のチオール化合物の総量を定量することができるが、個々のチオール化合物の量までは定量することができないという欠点がある。また、液体クロマトグラフィー法またはガスクロマトグラフィー法には、チオール化合物の検出に際して、移動相に用いられる溶離液または熱によってチオール基が酸化され、ジスルフィドになりやすいうえに、チオール化合物が揮発性を示す場合には、前処理によって当該チオール化合物が揮発するため、測定誤差が大きくなるという欠点がある。 そこで、チオール化合物との反応によってo−ニトロソチオフェノールを生成するジスルフィド化合物を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法は、前記ジスルフィド化合物とチオール化合物との反応によって生成したo−ニトロソチオフェノールを金属イオンでキレート化させ、生成したキレート化合物に基づいてチオール化合物を定量する方法であるため、複数の試薬が必要であることから、その操作が煩雑であり、しかもキレート化の効率によっては、誤差が大きくなるおそれがある。特開平6−16619号公報 本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、チオール化合物またはその塩を簡便に、かつ高精度で定量することができるチオール化合物またはその塩の定量方法およびチオール化合物またはその塩の定量用試薬を提供することを目的とする。 本発明は、(1)チオール基を有するチオール化合物もしくはその塩またはその溶液と、式(I): R1−X (I)(式中、R1は置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基、Xは脱離基を示す)で表わされる誘導体化試薬とを反応させた後、生成したスルフィド化合物の量を測定し、得られたスルフィド化合物の量に基づいてチオール化合物またはその塩の量を求めることを特徴とするチオール化合物またはその塩の定量方法、(2)前記チオール化合物もしくはその塩またはその溶液と誘導体化試薬とを塩基性物質の存在下で反応させる前記(1)記載のチオール化合物またはその塩の定量方法、(3)前記チオール基を有するチオール化合物が式(II): R2−SH (II)(式中、R2は水素原子、置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基を示す)で表わされる化合物である前記(1)または(2)に記載のチオール化合物またはその塩の定量方法、ならびに(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のチオール化合物またはその塩の定量方法に用いられる定量用試薬であって、式(I): R1−X (I)(式中、R1は置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基、Xは脱離基を示す)で表わされる誘導体化試薬を含有することを特徴とするチオール化合物またはその塩の定量用試薬に関する。 本発明のチオール化合物またはその塩の定量方法およびチオール化合物またはその塩の定量用試薬によれば、チオール化合物またはその塩を簡便に、かつ高精度で定量することができるという優れた効果が奏される。 本発明のチオール化合物またはその塩の定量方法(以下、単に「本発明の定量方法」という)は、チオール基を有するチオール化合物もしくはその塩またはその溶液と、式(I): R1−X (I)(式中、R1は置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基、Xは脱離基を示す)で表わされる誘導体化試薬とを反応させた後、生成したスルフィド化合物の量を測定し、得られたスルフィド化合物の量に基づいてチオール化合物またはその塩の量を求めることを特徴とする。 本発明の定量方法では、チオール化合物またはその塩と、前記誘導体化試薬とを反応させることによってスルフィド化合物を生成させる点に1つの大きな特徴がある。前記スルフィド化合物は、簡便な操作でチオール化合物またはその塩から生成させることができ、しかもその量を定量する際には酸化されにくい。したがって、本発明の定量方法によれば、従来のように前記誘導体化試薬を用いずにチオール化合物またはその塩を定量する場合と比べて、より高精度でチオール化合物またはその塩を定量することができる。 また、本発明の定量方法によれば、チオール化合物またはその塩と、前記誘導体化試薬とを反応させることによって生成するスルフィド化合物は、チオール化合物またはその塩の種類に応じて異なることから、試料中に複数種類のチオール化合物またはその塩が存在している場合であっても、各チオール化合物から生成されるスルフィド化合物の量を測定することにより、複数種類のチオール化合物またはその塩それぞれを同時に定量することができる。 式(I)において、R1は、置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基である。 炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などの炭素数1〜10の直鎖または分枝鎖を有するアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などの炭素数3〜10の脂環式アルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数2〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘプテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、2,4−ジメチル−3−ペンテニル基、6−メチル−5−ヘプテニル基、2,6−ジメチル−5−ヘプテニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数2〜10のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、2−ヘプチニル基、1−メチル−1−プロピニル基、2−メチル−1−プロピニル基、2−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−1−ブチニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、前記脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基は、分子内に1〜5個、好ましくは1〜3個のエーテル結合を有していてもよい。置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基のなかでは、チオール化合物またはその塩との反応性を向上させる観点から、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基が好ましい。 炭素数6〜14の芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜14のアラルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数6〜14のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数7〜14のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、前記芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基のなかでは、例えば、紫外線吸光度検出器を用いて、生成したスルフィド化合物を検出する場合、当該スルフィド化合物を高感度で検出することができることから、ナフチル基およびベンジル基が好ましい。 複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基などの芳香族複素環基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、モルホリノ基などの脂肪族複素環基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられるが、置換基を有していてもよい複素環基のなかでは、例えば、紫外線吸光度検出器を用いて、生成したスルフィド化合物を検出する場合、当該スルフィド化合物を高感度で検出することができることから、チエニル基およびピリジル基が好ましい。 アミノ基が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有していてもよいアミノ基のなかでは、チオール化合物またはその塩との反応性を向上させる観点から、メチルアミノ基およびエチルアミノ基が好ましい。 スルファニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有していてもよいスルファニル基のなかでは、チオール化合物またはその塩との反応性を向上させる観点から、スルファニル基が好ましい。 R1は、例えば、紫外線吸光度検出器を用いて、生成したスルフィド化合物を検出する場合、当該スルフィド化合物を高感度で検出することができることから、ナフチル基、ベンジル基、ベンゾイル基が好ましく、ナフチル基およびベンジル基がより好ましい。 式(I)において、Xは、脱離基である。脱離基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;ジアゾ基;例えば、スルホニル基、トシル基、メシル基、トリフルオロスルホニル基などの置換基を有していてもよいスルホニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。スルホニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基などの炭素数1〜10のアルキル基、トリル基などの炭素数6〜14のアリール基、トリフルオロメチルスルホニル基などの炭素数1〜4のトリフルオロアルキルスルホニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの脱離基のなかでは、チオール化合物またはその塩との反応性を向上させる観点から、ハロゲン原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。 前記誘導体化試薬のなかでは、紫外線吸光度検出器を用いて、生成したスルフィド化合物を検出する場合、当該スルフィド化合物を高感度で検出することができることから、ナフチルブロマイドおよびベンジルブロマイドが好ましい。 チオール化合物は、分子内にチオール基を有する化合物であればよい。かかるチオール化合物としては、例えば、式(II): R2−SH (II)(式中、R2は水素原子、置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基を示す)で表わされる化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。 式(II)において、R2は、置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基である。R2における置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基および置換基を有していてもよいスルファニル基は、R1における置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基と同じである。R2は、生成したスルフィド化合物を高感度で検出することができることから、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基およびトリル基が好ましく、メチル基がより好ましい。 式(II)で表わされる化合物のなかでは、生成したスルフィド化合物を高感度に検出することができることから、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基およびトリル基が好ましく、メチル基がより好ましい。 チオール化合物の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定するものではない。これらのチオール化合物の塩のなかでは、高感度に検出することができることから、チオール化合物のアルカリ金属塩およびチオール化合物のアルカリ土類金属塩が好ましく、チオール化合物のリチウム塩、チオール化合物のナトリウム塩、チオール化合物のカリウム塩、チオール化合物のマグネシウム塩およびチオール化合物のカルシウム塩がより好ましく、チオール化合物のナトリウム塩がより好ましい。 チオール化合物またはその塩が固体である場合、溶媒にチオール化合物またはその塩を溶解させたチオール化合物溶液またはチオール化合物塩溶液を用いることができる。チオール化合物が固体である場合、用いられる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素化合物などの非水溶性有機溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの水溶性有機溶媒などの有機溶媒、水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、チオール化合物の塩が固体である場合、用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの水溶性有機溶媒、水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。チオール化合物またはその塩が固体である場合、チオール化合物溶液またはチオール化合物塩溶液におけるチオール化合物もしくはその塩の含有量は、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応効率を高め、高い再現性で当該チオール化合物またはその塩を定量する観点から、好ましくは0.001g/mL以上、より好ましくは0.01g/mL以上であり、ジスルフィド化合物の副生を抑制し、高精度で前記チオール化合物またはその塩を定量する観点から、好ましくは0.1g/mL以下、より好ましくは0.08g/mL以下である。 前記チオール化合物もしくはその塩と前記誘導体化試薬との反応は、溶媒の存在下で行なわれる。前記チオール化合物またはその塩を高い再現性で定量する観点から、前記チオール化合物もしくはその塩と前記誘導体化試薬と溶媒とを均一な組成となるように混合することが好ましい。かかる反応を行なう際に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの水溶性有機溶媒、水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの溶媒のなかでは、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応効率を高め、前記チオール化合物またはその塩を高い再現性で定量する観点から、水とアセトニトリルとの混合溶媒(以下、「水−アセトニトリル溶液」という)および水とメタノールとの混合溶媒(以下、「水−メタノール溶液」という)が好ましく、水−アセトニトリル溶液がより好ましい。水−アセトニトリル溶液における水/アセトニトリルの体積比は、チオール塩を十分に溶解させる観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは60/40以上であり、チオール化合物を十分に溶解させる観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは70/30以下である。水−メタノール溶液における水/メタノールの体積比は、チオール塩を十分に溶解させる観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは60/40以上であり、チオール化合物を十分に溶解させる観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは70/30以下である。 前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応を行なう際に用いられる誘導体化試薬の量は、前記チオール化合物またはその塩の量などによって異なるので一概には決定することができないことから、前記チオール化合物またはその塩の量などに応じて適宜決定することが好ましい。 前記チオール化合物もしくはその塩と前記誘導体化試薬とを反応させる際の反応温度は、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応効率を高め、前記チオール化合物またはその塩を高い再現性で定量する観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは30℃以上であり、前記チオール化合物の揮発を抑制するとともに、ジスルフィド化合物の副生を抑制し、高精度でチオール化合物またはその塩を定量する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。 前記溶媒が水または水を含む溶媒である場合、前記チオール化合物もしくはその塩と前記誘導体化試薬とを反応させる際の溶液のpHは、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応効率を高め、前記チオール化合物またはその塩を高い再現性で定量する観点から、好ましくは8〜14、より好ましくは9〜12である。 前記チオール化合物もしくはその塩と前記誘導体化試薬とを反応させる際の反応時間は、その反応温度などによって異なるので一概には決定することができないが、前記チオール化合物またはその塩を高い再現性で定量する観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは5分間以上であり、前記チオール化合物またはその塩を迅速に定量する観点から、好ましくは30分間以下、より好ましくは15分間以下である。 前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応は、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応効率を高め、前記チオール化合物またはその塩を高い再現性で定量する観点から、塩基性物質の存在下で行なうことが好ましい。塩基性物質としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどのアンモニウム塩などの無機塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水素化ナトリウムなど有機アルカリ金属塩などの有機塩などが挙げられる。前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応効率を高め、前記チオール化合物またはその塩を高い再現性で定量する観点から、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応を行なう際に用いられる溶媒が有機溶媒である場合には、ナトリウムメトキシドが好ましく、前記溶媒が水を含む溶媒である場合には、水酸化ナトリウムが好ましい。 前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応を行なう際に用いられる塩基性物質の量は、前記チオール化合物またはその塩の量などによって異なるので一概には決定することができないことから、前記チオール化合物またはその塩の量などに応じて適宜決定することが望ましい。 なお、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応を行なう前に、他の定量方法で、前記チオール化合物またはその塩の量を大まかに求めておいてもよい。この場合、本発明の定量方法によって、より精確に前記チオール化合物またはその塩を定量することができる。この場合、前記チオール化合物またはその塩1モルあたりの誘導体化試薬の量は、前記チオール化合物またはその塩と誘導体化試薬との反応効率を高めるとともに、高い再現性で前記チオール化合物またはその塩を定量する観点から、好ましくは1〜100モル、より好ましくは5〜10モルである。また、前記チオール化合物またはその塩1モルあたりの塩基性物質の量は、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応効率を高めるとともに、高い再現性で前記チオール化合物またはその塩を定量する観点から、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは0.5〜5モルである。 前記チオール化合物もしくはその塩と前記誘導体化試薬とを反応させることにより、前記チオール化合物またはその塩の量に応じて定量的に、かつ迅速にスルフィド化合物が生成される。 生成されるスルフィド化合物は、前記チオール化合物またはその塩の種類に応じて異なる。例えば、式(II)において、R2が水素原子である場合(前記チオール化合物が硫化水素である場合)、生成されるスルフィド化合物は、式(III): H2S+2R1−X → R12SR1 (III)(式中、R1は前記と同じ)で表わされる反応式に示されるように、式(IV): R12SR1 (IV)(式中、R1は前記と同じ)で表わされる化合物である。また、式(II)において、R2が水素原子以外の官能基R3である場合、生成されるスルフィド化合物は、式(V): R32S+R1−X → R12SR3 (V)(式中、R1は前記と同じ。R3は置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基を示す)で表わされる反応式に示されるように、式(VI): R12SR3 (VI)(式中、R1およびR3は前記と同じ)で表わされる化合物である。なお、R3における置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基および置換基を有していてもよいスルファニル基は、R2における置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基および置換基を有していてもよいスルファニル基と同じである。 スルフィド化合物の量は、例えば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの分析機器を用いてスルフィド化合物から得られる信号強度、クロマトグラムのピーク面積などを測定し、既知量のスルフィド化合物と当該既知量のスルフィド化合物から得られる信号強度、クロマトグラムのピーク面積などとの関係を示す検量線を参照し、前記測定された信号強度、ピーク面積などを与えるスルフィド化合物の量を求めることによって測定することができる。液体クロマトグラフィーを用いる場合、スルフィド化合物を検出する検出器として、紫外線吸光度検出器、示差屈折率検出器などを用いることができる。また、ガスクロマトグラフィーを用いる場合、スルフィド化合物を検出する検出器として、水素炎イオン化検出器、熱伝導度検出器などを用いることができる。 前記チオール化合物またはその塩の量は、例えば、測定されたスルフィド化合物の量を、当該量のスルフィド化合物を生成するのに要するチオール化合物またはその塩の量に換算することなどによって求めることができる。 本発明のチオール化合物またはその塩の定量用試薬(以下、単に「定量用試薬」という)は、前述したチオール化合物またはその塩の定量方法に用いられる定量用試薬であり、前記誘導体化試薬を含有することを特徴とする。 本発明の定量用試薬は、前記誘導体化試薬を含有するので、本発明の定量用試薬を用いることにより、チオール化合物またはその塩を簡便に、かつ高精度で定量することができる。 本発明の定量用試薬における前記誘導体化試薬の含有量は、本発明の定量用試薬の用途などによって必要とされる前記誘導体化試薬の量が異なるので一概には決定することができないことから、本発明の定量用試薬の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。 なお、本発明の定量用試薬は、前述したチオール化合物またはその塩の定量方法において、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬との反応を行なう際に用いられる溶媒をさらに含有していてもよい。 以上説明したように、本発明の定量方法および定量用試薬によれば、前記チオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬とを反応させることによって簡便な操作で前記チオール化合物またはその塩からスルフィド化合物を生成させることができ、しかもその量を定量する際には酸化されにくいことから、従来のように前記誘導体化試薬を用いずに前記チオール化合物またはその塩を定量する場合と比べて、より高精度でチオール化合物またはその塩を定量することができる。さらに、前記チオール化合物またはその塩の種類によって前記誘導体化試薬との反応によって生成されるスルフィド化合物が異なることから、本発明の定量方法および定量用試薬によれば、被験試料中に複数種類のチオール化合物またはその塩が含まれている場合であっても、各チオール化合物を高精度で定量することができる。したがって、本発明の定量方法および定量用試薬は、食品分野、環境分野、有機化学分野などにおいて、被験試料中に含まれるチオール化合物またはその塩を高精度で定量するのに有用である。 つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。参考例1 ベンジルメチルスルフィドの濃度が1000ppm、500ppmまたは100ppmとなるように水−アセトニトリル溶液〔水とアセトニトリルとの体積比(水/アセトニトリル):30/70〕にベンジルメチルスルフィドを溶解させることにより、標準試料を得た。 各標準試料を液体クロマトグラフィーに供し、得られたクロマトグラムからピーク面積を求め、各標準試料それぞれのピーク面積を縦軸とし、各標準試料それぞれにおけるベンジルメチルスルフィドの濃度を横軸として検量線を作成した。 ベンジルメチルスルフィドの代わりに、ベンジルエチルスルフィド、ベンジルプロピルスルフィドまたはジベンジルスルフィドを用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、検量線を作成した。実施例1 100mL容メスフラスコ内に、被験試料として31.5質量%ナトリウムメタンチオラート水溶液120mgと、水−アセトニトリル溶液〔水/アセトニトリル(体積比):30/70〕30mLと、誘導体化試薬としてベンジルブロマイド180mgと、30質量%水酸化ナトリウム水溶液80mgとを添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を25℃で30秒間以上撹拌した。 つぎに、前記メスフラスコ内の溶液に、液量が100mLとなるまで前記水−アセトニトリル溶液を添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を均一な組成となるまで撹拌し、測定試料を得た。かかる測定試料には、生成したベンジルメチルスルフィドが含まれていた。 測定試料を液体クロマトグラフィーに供し、測定試料中に含まれるベンジルメチルスルフィドに対応するピークのピーク面積を求めた。なお、液体クロマトグラフィーの分析条件は、表1に示されるとおりである。参考例1で得られた検量線と、ベンジルメチルスルフィドに対応するピークのピーク面積とに基づき、測定試料におけるベンジルメチルスルフィドの濃度を算出した。算出されたベンジルメチルスルフィドの濃度を、ナトリウムメタンチオラートの量と当該量のナトリウムメタンチオラートから生成するベンジルメチルスルフィドの量との相関関係に基づき、被験試料におけるナトリウムメタンチオラートの濃度に換算した。以下、換算によって得られた濃度を「測定濃度」ともいう。また、測定濃度と、被験試料におけるナトリウムメタンチオラートの濃度の真値(31.5質量%)とに基づき、式(VII):〔誤差(%)〕=|(濃度の真値−測定濃度)/(濃度の真値)|×100 (VII)にしたがって誤差を算出した。 その結果、被験試料におけるナトリウムメタンチオラートの濃度の真値は31.5質量%であり、測定濃度は31.2質量%であり、誤差は0.95%であった。したがって、かかる結果から、チオール化合物の塩であるナトリウムメタンチオラートの定量に際して前記誘導体化試薬であるベンジルブロマイドを用いることにより、ナトリウムメタンチオラートを定量することができることがわかる。参考例2 メタンチオールの濃度が1000ppm、500ppmまたは100ppmとなるように水−アセトニトリル溶液〔水とアセトニトリルとの体積比(水/アセトニトリル):30/70〕にメタンチオールを溶解させることにより、標準試料を得た。 各標準試料を液体クロマトグラフィーに供した。得られたクロマトグラムからピーク面積を求め、各標準試料それぞれにおけるメタンチオールに対応するピークのピーク面積を縦軸とし、各標準試料それぞれにおけるメタンチオールの濃度を横軸として検量線を作成した。比較例1 100mL容メスフラスコ内に、水−アセトニトリル溶液〔水とアセトニトリルとの体積比(水/アセトニトリル):30/70〕30mLと、被験試料として31.5質量%ナトリウムメタンチオラート水溶液120mgと、35質量%塩酸80mLとを添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を25℃で30秒間以上撹拌した。 つぎに、前記メスフラスコ内の溶液に、液量が100mLとなるまで前記水−アセトニトリル溶液を添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を均一な組成となるまで撹拌し、測定試料を得た。 測定試料を液体クロマトグラフィーに供し、測定試料中に含まれるメタンチオールに対応するピークのピーク面積を求めた。なお、液体クロマトグラフィーの分析条件は、表1に示されるとおりである。参考例2で得られた検量線と、メタンチオールに対応するピークのピーク面積とに基づいて、測定試料におけるメタンチオールの濃度を算出した。つぎに、算出されたメタンチオールの濃度を、ナトリウムメタンチオラートの量と当該量のナトリウムメタンチオラートから生成するメタンチオールの量との相関関係に基づき、被験試料におけるナトリウムメタンチオラートの濃度に換算し、測定濃度を得た。また、測定濃度と、被験試料におけるナトリウムメタンチオラートの濃度の真値(31.5質量%)とに基づき、式(VII)にしたがい、誤差を求めた。 その結果、被験試料におけるナトリウムメタンチオラートの濃度の真値は31.5質量%であり、測定濃度は25.1質量%であり、誤差は20.3%であった。かかる結果と、実施例1で得られた結果とから、チオール化合物の塩であるナトリウムメタンチオラートの定量に際して前記誘導体化試薬であるベンジルブロマイドを用いた場合には(実施例1)、チオール化合物の塩であるナトリウムメタンチオラートの定量に際してベンジルブロマイドを用いなかった場合(比較例1)と比べて、誤差が著しく小さいことがわかる。実施例2 100mL容メスフラスコ内に、被験試料として25.3質量%ナトリウムエタンチオラート水溶液120mgと、水−メタノール溶液〔水/メタノール(体積比):30/70〕30mLと、誘導体化試薬としてベンジルブロマイド180mgと、30質量%水酸化ナトリウム水溶液80mgとを添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を25℃で30秒間以上撹拌した。 つぎに、前記メスフラスコ内の溶液に、液量が100mLとなるまで水−メタノール溶液〔水/メタノール(体積比):30/70〕を添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を均一な組成となるまで撹拌し、測定試料を得た。かかる測定試料には、生成したベンジルエチルスルフィドが含まれていた。 測定試料を液体クロマトグラフィーに供し、測定試料中に含まれるベンジルエチルスルフィドに対応するピークのピーク面積を求めた。なお、液体クロマトグラフィーの分析条件は、表1に示されるとおりである。参考例1で得られた検量線と、ベンジルエチルスルフィドに対応するピークのピーク面積とに基づき、測定試料におけるベンジルエチルスルフィドの濃度を算出した。つぎに、算出されたベンジルエチルスルフィドの濃度を、ナトリウムエタンチオラートの量と当該量のナトリウムエタンチオラートから生成するベンジルエチルスルフィドの量との相関関係に基づき、被験試料におけるナトリウムエタンチオラートの濃度に換算し、測定濃度を得た。また、測定濃度と、被験試料におけるナトリウムエタンチオラートの濃度の真値(25.3質量%)とに基づき、式(VII)にしたがい、誤差を求めた。 その結果、被験試料におけるナトリウムエタンチオラートの濃度の真値は25.3質量%であり、測定濃度は25.0質量%であり、誤差は1.2%であった。したがって、かかる結果から、チオール化合物の塩であるナトリウムエタンチオラートの定量に際して前記誘導体化試薬であるベンジルブロマイドを用いることにより、ナトリウムメタンチオラートを定量することができることがわかる。実施例3 100mL容メスフラスコ内に、被験試料として31.5質量%ナトリウムメタンチオラート水溶液120mgと、25.3質量%ナトリウムエタンチオラート水溶液120mg、23.5質量%ナトリウムプロパンチオラート水溶液120mgとの混合物と、水−アセトニトリル溶液〔水/アセトニトリル(体積比):30/70〕30mLと、誘導体化試薬としてベンジルブロマイド540mgと、30質量%水酸化ナトリウム水溶液240mgとを添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を25℃で30秒間以上撹拌した。 つぎに、前記メスフラスコ内の溶液に、液量が100mLとなるまで水−アセトニトリル溶液〔水/アセトニトリル(体積比):30/70〕を添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を均一な組成となるまで撹拌し、測定試料を得た。かかる測定試料には、生成したベンジルメチルスルフィド、ベンジルエチルスルフィドおよびベンジルプロピルスルフィドが含まれていた。 測定試料を液体クロマトグラフィーに供し、測定試料中に含まれるベンジルメチルスルフィド、ベンジルエチルスルフィドおよびベンジルプロピルスルフィドそれぞれに対応するピークのピーク面積を求めた。なお、液体クロマトグラフィーの分析条件は、表1に示されるとおりである。参考例1で得られた検量線と、ベンジルメチルスルフィド、ベンジルエチルスルフィドおよびベンジルプロピルスルフィドそれぞれに対応するピークのピーク面積とに基づき、測定試料におけるベンジルメチルスルフィド、ベンジルエチルスルフィドおよびベンジルプロピルスルフィドそれぞれの濃度を算出した。つぎに、ベンジルメチルスルフィド、ベンジルエチルスルフィドおよびベンジルプロピルスルフィドそれぞれの算出された濃度を、ナトリウムメタンチオラートの量と当該量のナトリウムメタンチオラートから生成するベンジルメチルスルフィドの量との相関関係、ナトリウムエタンチオラートの量と当該量のナトリウムエタンチオラートから生成するベンジルエチルスルフィドの量との相関関係およびナトリウムプロパンチオラートの量と当該量のナトリウムプロパンチオラートから生成するベンジルプロピルスルフィドの量との相関関係それぞれに基づき、被験試料におけるナトリウムメタンチオラートの濃度、被験試料におけるナトリウムエタンチオラートの濃度および被験試料におけるナトリウムプロパンチオラートの濃度それぞれに換算し、測定濃度を得た。また、各測定濃度と、ナトリウムメタンチオラート、ナトリウムエタンチオラートおよびナトリウムプロパンチオラートそれぞれの濃度の真値とに基づき、式(VII)にしたがい、誤差を求めた。 その結果、用いられたナトリウムメタンチオラート水溶液におけるナトリウムメタンチオラートの濃度の真値は31.5質量%であり、測定濃度は31.3質量%であり、誤差は0.6%であった。また、用いられたナトリウムエタンチオラート水溶液におけるナトリウムエタンチオラートの濃度の真値は25.3質量%であり、測定濃度は25.1質量%であり、誤差は0.8%であった。さらに、用いられた23.5質量%ナトリウムプロパンチオラート水溶液におけるナトリウムプロパンチオラートの濃度の真値は23.5質量%であり、測定濃度は23.1質量%であり、誤差は1.7%であった。したがって、これらの結果から、各チオール化合物の塩(ナトリウムメタンチオラート、ナトリウムエタンチオラートおよびナトリウムプロパンチオラート)の定量に際して前記誘導体化試薬であるベンジルブロマイドを用いることにより、被験試料中に複数種類のチオール化合物の塩が含まれている場合であっても、各チオール化合物の塩を定量することができることがわかる。実施例4 100mL容メスフラスコ内に、被験試料として10.5質量%硫化水素ナトリウム水溶液120mgと、水−アセトニトリル溶液〔水/アセトニトリル(体積比):30/70〕30mLと、誘導体化試薬としてベンジルブロマイド360mgと、30質量%水酸化ナトリウム水溶液80mgとを添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を25℃で30秒間以上撹拌した。 つぎに、前記メスフラスコ内の溶液に、液量が100mLとなるまで前記水−アセトニトリル溶液を添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を均一な組成となるまで撹拌し、測定試料を得た。かかる測定試料には、生成したジベンジルスルフィドが含まれていた。 測定試料を液体クロマトグラフィーに供し、測定試料中に含まれるジベンジルメチルスルフィドに対応するピークのピーク面積を求めた。なお、液体クロマトグラフィーの分析条件は、表1に示されるとおりである。参考例1で得られた検量線と、ジベンジルスルフィドに対応するピークのピーク面積とに基づき、測定試料におけるジベンジルスルフィドの濃度を算出した。つぎに、算出されたジベンジルスルフィドの濃度を、硫化水素ナトリウムの量と当該量の硫化水素ナトリウムから生成するジベンジルスルフィドの量との相関関係に基づき、被験試料における硫化水素ナトリウムの濃度に換算し、被験試料における硫化水素ナトリウムの測定濃度を得た。また、測定濃度と、被験試料における硫化水素ナトリウムの濃度の真値(10.5質量%)とに基づき、式(VII)にしたがい、誤差を算出した。 その結果、被験試料における硫化水素ナトリウムの濃度の真値は10.5質量%であり、測定濃度は10.2質量%であり、誤差は2.9%であった。したがって、かかる結果から、チオール化合物の塩である硫化水素ナトリウムの定量に際して前記誘導体化試薬であるベンジルブロマイドを用いることにより、硫化水素ナトリウムを定量することができることがわかる。実施例5 100mL容メスフラスコ内に、被験試料として31.5質量%ナトリウムメタンチオラート水溶液120mgと、不純物試料として3.3質量%硫化ナトリウム水溶液120mgとの混合物と、水−アセトニトリル溶液〔水/アセトニトリル(体積比):30/70〕30mLと、誘導体化試薬としてベンジルブロマイド360mgと、30質量%水酸化ナトリウム水溶液80mgとを添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を25℃で30秒間以上攪拌した。 つぎに、前記メスフラスコ内の溶液に、液量が100mLとなるまで水−アセトニトリル溶液〔水/アセトニトリル(体積比):30/70〕を添加した。その後、前記メスフラスコ内の溶液を均一な組成となるまで攪拌し、測定試料を得た。かかる測定試料には、生成したベンジルメチルスルフィドおよびジベンジルスルフィドが含まれていた。 測定試料を液体クロマトグラフィーに供し、測定試料中に含まれるベンジルメチルスルフィドおよびジベンジルスルフィドそれぞれに対応するピークのピーク面積を求めた。なお、液体クロマトグラフィーの分析条件は、表1に示されるとおりである。参考例1で得られた検量線と、ベンジルメチルスルフィドおよびジベンジルスルフィドそれぞれに対応するピークのピーク面積とに基づき、測定試料におけるベンジルメチルスルフィドおよびジベンジルスルフィドそれぞれの濃度を算出した。 つぎに、算出されたベンジルメチルスルフィドの濃度を、ナトリウムメタンチオラートの量と当該量のナトリウムメタンチオラートから生成するベンジルメチルスルフィドの量との相関関係に基づき、被験試料におけるナトリウムメタンチオラートの濃度に換算し、測定濃度を得た。また、算出されたジベンジルスルフィドの濃度を、硫化ナトリウムの量と当該量の硫化ナトリウムから生成するジベンジルスルフィドの量との相関関係に基づき、被験試料における硫化ナトリウムの濃度に換算し、測定濃度を得た。その後、各測定濃度と、ナトリウムメタンチオラートおよび硫化ナトリウムそれぞれの濃度の真値とに基づき、式(VII)にしたがい、誤差を求めた。 その結果、用いられたナトリウムメタンチオラート水溶液におけるナトリウムメタンチオラートの濃度の真値は31.5質量%であり、測定濃度は31.4質量%であり、誤差は0.3%であった。さらに、用いられた硫化ナトリウム水溶液における硫化ナトリウムの濃度の真値は3.3質量%であり、測定濃度は3.2質量%であり、誤差は3.0%であった。したがって、これらの結果から、ナトリウムメタンチオラートの定量に際して前記誘導体化試薬であるベンジルブロマイドを用いることにより、被験試料中に不純物として硫化ナトリウムが含まれている場合であっても、主成分であるナトリウムメタンチオラートおよび不純物である硫化ナトリウムをそれぞれ定量することができることがわかる。 以上の結果から、被験試料中に含まれるチオール化合物またはその塩と前記誘導体化試薬とを反応させた後、生成したスルフィド化合物の量を測定し、得られたスルフィド化合物の量に基づいてチオール化合物またはその塩の量を求めることにより、被験試料中に含まれるチオール化合物またはその塩を高精度で定量することができることがわかる。また、チオール化合物の種類によって誘導体化試薬との反応によって生成されるスルフィド化合物の種類が異なることから、被験試料中に複数種類のチオール化合物またはその塩が含まれている場合であっても、各チオール化合物または各塩を高精度で定量することができることがわかる。 チオール基を有するチオール化合物もしくはその塩またはその溶液と、式(I): R1−X (I)(式中、R1は置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基、Xは脱離基を示す)で表わされる誘導体化試薬とを反応させた後、生成したスルフィド化合物の量を測定し、得られたスルフィド化合物の量に基づいてチオール化合物またはその塩の量を求めることを特徴とするチオール化合物またはその塩の定量方法。 前記チオール化合物もしくはその塩またはその溶液と誘導体化試薬とを塩基性物質の存在下で反応させる請求項1記載のチオール化合物またはその塩の定量方法。 前記チオール基を有するチオール化合物が式(II): R2−SH (II)(式中、R2は水素原子、置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基を示す)で表わされる化合物である請求項1または2に記載のチオール化合物またはその塩の定量方法。 請求項1〜3のいずれかに記載のチオール化合物またはその塩の定量方法に用いられる定量用試薬であって、式(I): R1−X (I)(式中、R1は置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基、Xは脱離基を示す)で表わされる誘導体化試薬を含有することを特徴とするチオール化合物またはその塩の定量用試薬。 【課題】チオール化合物またはその塩を簡便に、かつ高精度で定量することができるチオール化合物またはその塩の定量方法および定量用試薬を提供すること。【解決手段】チオール基を有するチオール化合物もしくはその塩またはその溶液と、式(I):R1−X (I)(式中、R1は置換基もしくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいスルファニル基を示し、Xは脱離基を示す)で表わされる誘導体化試薬とを反応させた後、生成したスルフィド化合物の量を測定し、得られたスルフィド化合物の量に基づいてチオール化合物またはその塩の量を求めるチオール化合物またはその塩の定量方法ならびに前記誘導体化試薬を含有するチオール化合物またはその塩の定量用試薬。【選択図】なし


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