タイトル: | 公開特許公報(A)_トリメリット酸トリエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤 |
出願番号: | 2013067776 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C08L 27/06,C08K 5/10,C07C 69/76 |
三木茂男 宮崎謙一 井上貴博 岸本雅史 JP 2014189688 公開特許公報(A) 20141006 2013067776 20130328 トリメリット酸トリエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤 新日本理化株式会社 000191250 三木茂男 宮崎謙一 井上貴博 岸本雅史 C08L 27/06 20060101AFI20140909BHJP C08K 5/10 20060101ALI20140909BHJP C07C 69/76 20060101ALI20140909BHJP JPC08L27/06C08K5/10C07C69/76 Z 4 OL 12 4H006 4J002 4H006AA03 4H006AB50 4H006BJ50 4H006KC30 4J002BD03W 4J002BD04W 4J002EH146 4J002FD026本発明は、新規な塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびそれを含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物に関し、詳しくは、耐寒性、耐熱性、柔軟性に優れた新規トリメリット酸トリエステルを含む塩化ビニル系樹脂用可塑剤に関する。塩化ビニル系樹脂は、柔軟性をはじめとする種々の性能を付与するとともに、押出やカレンダー加工等の成形加工時の加工温度を低下させ、成形加工を容易にする目的で可塑剤が添加された塩化ビニル系樹脂組成物として用いられることが多い。このような塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる可塑剤に求められる性能としては、該組成物を原料として成形加工品とした場合の、柔軟性、耐寒性、耐熱性、電気特性等種々ある。このような塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる代表的な可塑剤としては、フタル酸エステルやアジピン酸エステル、トリメリット酸エステル等の多塩基酸の高級アルキルエステルが知られており、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使われている。これまで、価格、性能バランスの面より主にフタル酸エステルが使われるケースが多いが、フタル酸エステルでは対応できない耐熱性等の要求される用途では、フタル酸エステルと同等以上の性能バランスを有するトリメリット酸エステルが使われてきた。中でも、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(以下、「TOTM」という。)、トリメリット酸トリイソノニル(以下、「TINTM」という。)及びトリメリット酸トリイソデシルエステル(以下、「TIDTM」という。)は、フタル酸エステルに近い相溶性が期待できるとともに、耐熱老化性の非常に良い可塑剤であることから可使用温度105℃以上の耐熱電線や車両のダッシュボード等に多用されている。しかし、近年、耐寒性や耐熱性への要求が益々厳しくなっており、上記TOTM、TINTM及びTIDTMでは耐熱性や耐寒性が不足しており、いずれも満足する性能が得られていないのが現状である。また、柔軟性に関しても、従来使われてきた上記トリメリット酸エステルでは不十分であり、更なる改善が望まれている。本発明の目的は、上記の問題点を解決できる、耐寒性及び耐熱性が優れ、かつ柔軟性が良好な新規トリメリット酸トリエステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびその可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物を提供することである。本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、特定の脂肪族飽和アルコールとトリメリット酸若しくはその無水物をエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルが、耐寒性及び耐熱性が優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の新規な塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびそれを含む塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものである。[項1] トリメリット酸若しくはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコール混合物とをエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、前記脂肪族飽和アルコール混合物が、該アルコール混合物中の含有量が60〜95重量%の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと、5〜40重量%の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含む脂肪族飽和アルコール混合物であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。[項2] 前記脂肪族飽和アルコール混合物が、該アルコール混合物中の含有量が70〜90重量%の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと10〜30重量%の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含む脂肪族飽和アルコール混合物である[項1]に記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。[項3] トリメリット酸若しくはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコール混合物とをエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、前記脂肪族飽和アルコール混合物が、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造された直鎖構造及び分岐鎖構造を有する脂肪族飽和アルコールを含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。[項4] 塩化ビニル系樹脂と[項1]〜[項3]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤を含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。本発明の塩化ビニル系樹脂用可塑剤は、耐寒性及び耐熱性に優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤として使用できる。更に、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、良好な柔軟性を有し、かつ耐寒性、耐熱性に優れることより、電線被覆用、内装材等の自動車用、床材用、各種医療用等の塩化ビニル系樹脂組成物として使用することができる。<塩化ビニル系樹脂用可塑剤>本発明に係るトリメリット酸若しくはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族アルコール混合物とをエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステル(以下、「本エステル」という。)は、所定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。[脂肪族飽和アルコール混合物] 本発明で用いる炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコール混合物(以下、単に「脂肪族飽和アルコール混合物」という場合もある)は、該アルコール混合物中の含有量が、60〜95重量%、好ましくは70〜90重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%の2−メチルオクタノール等の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含んでなる混合物である。上記炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が60重量%未満では、耐寒性及び耐熱性が劣り、柔軟性が低下する傾向が有り、95重量%を超えると、アルコールが高価となり、経済的に好ましくなく、また、成形加工性の低下を招く懸念もある。また、上記炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が5重量%未満では、アルコールが高価となり、経済的に好ましくなく、40重量%を超えると、耐寒性及び耐熱性が劣り、柔軟性が低下する傾向が有る。また、本発明で用いる炭素数9の脂肪族飽和アルコールの混合物は、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造することができる。前記工程(1)であるヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。前記工程(2)である水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧化で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。また試薬による還元方法も例示される。上記の製造工程で得られる炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコールの混合物の具体例としては、約70%以上の直鎖状のノナノールと約30%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるリネボール9(商品名、シェルケミカルズ社)等が挙げられる。[エステル化反応]上記脂肪族飽和アルコール混合物とトリメリット酸若しくはその無水物とのエステル化反応を行うに際し、該アルコール混合物は、例えば、トリメリット酸若しくはその無水物1モルに対して、好ましくは3.05モル〜4.00モル、より好ましくは3.10モル〜3.80モル、特に3.15モル〜3.60モルを使用することが推奨される。エステル化反応に用いる触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類又はアルカリ金属類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸等が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体等が例示され、アルカリ金属類としてはナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示され、これらの1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数1〜4のナトリウムアルコキシド、水酸化ナトリウム、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜4.0重量%、特に0.03重量%〜3.0重量%を使用することが推奨される。エステル化温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3時間〜30時間で反応は完結する。エステル化においては、反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。 又、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去する。上記エステル化方法により得られた本エステルは、引き続き、必要に応じて液液抽出、減圧蒸留、吸着精製等により精製してもよい。吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、上述した本エステルを、可塑剤として塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。[塩化ビニル系樹脂]本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われ、汎用塩化ビニル樹脂の場合、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法が挙げられ、また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法が挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300〜5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、マレイン酸およびそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエンースチレンーメチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエンーアクリロニトリルー(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が例示される。[塩化ビニル系樹脂組成物]塩化ビニル系樹脂組成物における本エステルの含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。1重量部未満では所定の可塑化効果が得られにくく、100重量部を越えて配合した場合には、成形品表面へのブリードが激しく、いずれの場合も好ましくない。但し、上記の塩化ビニル系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合することができる。例えば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、当該可塑剤を1〜500重量部程度配合することができる。塩化ビニル系樹脂組成物は、本エステルと共に他の公知の可塑剤を併用することができる。又、必要に応じて難燃剤、安定剤、安定化助剤、着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、滑剤或いは帯電防止剤等の添加剤を配合することができる。上記本エステル以外の他の可塑剤や添加剤は、1種でまたは2種以上適宜組み合わせて本エステルと共に配合されていてもよい。本エステルと併用することができる公知の可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOTP)、イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOIP)等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)等のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル類、ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニルエステル(DINCH)等の脂環式二塩基酸類、ジカプリン酸1.4−ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等が例示される。上記可塑剤の配合量は1〜100重量部程度である。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜20重量部程度である。安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸化合物、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物、アンチモンメルカプタイド化合物等が例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定剤の配合量は0.1〜20重量部程度である。安定化助剤としては、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライトなどが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定化助剤の配合量は0.1〜20重量部程度である。着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度である。加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアエレート、ステアリン酸カルシウムなどが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度である。充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライト、などの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は1〜100重量部程度である。酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度である。紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度である。ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10重量部程度である。滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する滑剤の配合量は0.1〜10重量部程度である。帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度である。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、本エステル、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を例えばモルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌機により攪拌混合を行い、塩化ビニル系樹脂組成物の混合粉とすることができる。一方、本エステル、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することによりペレット状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。更に、本エステル、塩化ビニル系ペースト樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することによりペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。[塩化ビニル系樹脂成形体]本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物(配合粉状やペレット状)を、真空成型、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。一方、上記ペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物は、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、スラッシュ成形、スクリーン加工等の従来公知の方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは玩具、装飾品等特殊な形状のもの、例えば星形、多角形形状が例示される。かくして得られた成形体は、水道管などのパイプ類、パイプ用の継手類、雨樋などの樋類、窓枠サイディング、平板、波板、自動車アンダーボディコート、インストルメントパネル、コンソール、ドアシート、アンダーカーペット、トランクシート、ドアトリム類などの自動車装材、各種レザー類、装飾シート、農業用フィルム、食品包装用フィルム、電線被覆、各種発泡製品、ホース、医療用チューブ、食品用チューブ、冷蔵庫用ガスケット、パッキン類、壁紙、床材、ブーツ、カーテン、靴底、手袋、止水板、玩具、化粧板、血液バック、輸液バック、ターポリン、マット類、遮水シート、土木シート、ルーフィング、防水シート、絶縁シート、工業用テープ、ガラスフィルム、字消し等に有用である。以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。(1)エステルの物性評価下記の製造例で得られたエステルは次の方法で分析を行った。エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。色相:JIS K−4101(Hazen)(1995)に準拠して測定した。(2)塩化ビニルプレスシートの作製塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、安定剤としてカルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合した後、可塑剤50重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニル樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作成した。続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。[樹脂の物性評価](3)引張試験:JIS K−6723(1995)に準拠し、プレスシートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示す。(4)耐寒性試験:クラッシュベルグ試験機を用いて、JIS K−6773(1999)に準拠して測定した。柔軟温度(℃)が低いほど耐寒性に優れる。ここで言う柔軟温度とは、前記測定において所定のねじり剛性率(3.17×103kg/cm2)を示す低温限界の温度を指す。(5)耐熱性試験:揮発減量及びシート着色の評価による。a)揮発減量:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で60分、120分加熱した後のロールシートの重量変化を測定し、重量減少率(%)を算出した。数値が少ないほど、耐熱性が高い。 重量減少率(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100b)シート着色 :ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で30分、60分間加熱した後の着色度の強弱を目視により4段階で評価した。◎:着色なし、○:若干着色する、△:着色する、×:着色が強い。[製造例1] 温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、トリメリット酸無水物96.0g(0.5モル)、脂肪族飽和アルコール混合物(シェルケミカルズ社製、製品名:リネボール9)259g(1.8モル)、キシレン10g、及びエステル化触媒としてp−トルエンスルホン酸5.0gを加え、反応温度を140℃としてエステル化反応を実施した。減圧下キシレン、アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするトリメリット酸トリエステル(以下、「TL9TM」という。)245gを得た。得られたTL9TMは、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:15であった。[製造例2] 脂肪族飽和アルコール混合物(シェルケミカルズ社製、製品名:リネボール9)259gの代わりに2−エチルヘキサノール234gを加えた以外は製造例1と同様にして、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)203.9gを得た。得られたTOTMは、エステル価:309mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:10であった。[製造例3] 脂肪族飽和アルコール混合物(シェルケミカルズ社製、製品名:リネボール9)259gの代わりにイソノニルアルコール259gを加えた以外は製造例1と同様にして、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)236gを得た。得られたTINTMは、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.03mgKOH/g、色相:8であった。[製造例4] 脂肪族飽和アルコール混合物(シェルケミカルズ社製、製品名:リネボール9)259gの代わりにイソデシルアルコール285gを加えた以外は製造例1と同様にして、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)228gを得た。得られたTIDTMは、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、色相:20であった。[実施例1]製造例1で得られたトリメリット酸トリエステルを用いて、塩化ビニルシートを作製し、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を測定した。得られた結果を表1に示した。[比較例1]製造例1で得られたトリメリット酸トリエステルの代わりに製造例2で得られたトリメリット酸トリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルシートを作製し、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を測定した。得られた結果を表1に示した。[比較例2]製造例1で得られたトリメリット酸トリエステルの代わりに製造例3で得られたトリメリット酸トリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルシートを作製し、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を測定した。得られた結果を表1に示した。[比較例3]製造例1で得られたトリメリット酸トリエステルの代わりに製造例4で得られたトリメリット酸トリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルシートを作製し、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を測定した。得られた結果を表1に示した。本発明に係るトリメリット酸トリエステルは、耐寒性及び耐熱性に優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤として使用することができ、その可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物より得られる成形加工品は、高度な耐寒性、耐熱性、柔軟性の要求される電線被覆、自動車部材として非常に有用である。トリメリット酸若しくはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコール混合物とをエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、前記脂肪族飽和アルコール混合物が、該アルコール混合物中の含有量が60〜95重量%の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと、5〜40重量%の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含む脂肪族飽和アルコール混合物であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。前記脂肪族飽和アルコール混合物が、該アルコール混合物中の含有量が70〜90重量%の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと10〜30重量%の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含む脂肪族飽和アルコール混合物である請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。トリメリット酸若しくはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコール混合物とをエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、前記脂肪族飽和アルコール混合物が、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造された直鎖構造及び分岐鎖構造を有する脂肪族飽和アルコールを含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。塩化ビニル系樹脂と請求項1〜3のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤を含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。 【課題】耐寒性及び耐熱性が優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤を提供することを目的とする。【解決手段】トリメリット酸若しくはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコールの混合物とをエステル化反応して得られる特定の構造を有する新規なトリメリット酸トリエステルを塩化ビニル系樹脂用可塑剤として使用する。【選択図】なし