タイトル: | 公開特許公報(A)_メタクリル酸エステルの製造方法 |
出願番号: | 2013063491 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07C 67/38,C07C 69/54,C07B 61/00 |
関 航平 鈴田 哲也 三浦 直輝 JP 2014189490 公開特許公報(A) 20141006 2013063491 20130326 メタクリル酸エステルの製造方法 住友化学株式会社 000002093 中山 亨 100113000 坂元 徹 100151909 関 航平 鈴田 哲也 三浦 直輝 C07C 67/38 20060101AFI20140909BHJP C07C 69/54 20060101ALI20140909BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140909BHJP JPC07C67/38C07C69/54 ZC07B61/00 300 7 1 OL 21 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC13 4H006AC14 4H006AC48 4H006BA02 4H006BA06 4H006BA17 4H006BA25 4H006BA33 4H006BA45 4H006BA48 4H006BA55 4H006BA62 4H006BA81 4H006BE40 4H006KA34 4H006KC14 4H006KE00 4H039CA39 4H039CA66 4H039CG10 4H039CJ10 4H039CL45 本発明は、メタクリル酸エステルの製造方法に関するものである。 メタクリル酸エステルを製造する方法として、例えば、特許文献1には、プロパン、プロピレン、ブタン、1−ブテン、2−ブテン、イソブタン、イソブテン、ブタジエンから選ばれる炭化水素を熱分解してプロピンとプロパジエンの合計含有量が2重量%以上である分解ガスを得、得られた分解ガスと、炭素数が2以上で10以下の炭化水素を熱分解するプラント(通称 エチレンプラント)から出てくる分解ガスとの混合ガスを、エチレンプラントと共有の分離工程に付すことによりプロピン及びプロパジエンに富む混合液を分離し、次いで分離された混合液を抽出蒸留に付すことにより、精プロピンと、プロパジエンを主成分とする粗プロパジエンとに分離して、得られた精プロピンを、パラジウム触媒の存在下、一酸化炭素及びメタノールと反応させてメタクリル酸メチルを製造する方法が開示されている。特開2007−269707号公報 しかしながら、上記従来の方法では、炭化水素を熱分解して得られるプロピンとプロパジエンの選択率が低いため、メタクリル酸エステルの生産性の点で必ずしも満足のいくものではないことや、エチレンプラントに隣接させる必要があるため立地的な制約を受けやすいこと等の問題があり、立地的な制約を受け難く、経済的、工業的に有利な新たなメタクリル酸エステルの製造方法の開発が望まれていた。 そこで、本発明の目的は、立地的な制約を受け難く、経済的、工業的に有利なメタクリル酸エステルの製造方法を提供することにある。 かかる状況下、本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。 (1)下記の工程を含むメタクリル酸エステルの製造方法。 脱水反応工程:脱水反応触媒の存在下にアセトンを脱水反応させてプロピン、プロパジエン及び水を含む反応混合物を得る工程 プロピン・プロパジエン分離工程:前記脱水反応工程で得られた反応混合物から、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を分離する工程 プロピン精製工程:前記プロピン・プロパジエン分離工程で分離されたプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を、プロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物と、プロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物とに分離する工程 カルボニル化反応工程:前記プロピン精製工程で得られたプロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物を、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む触媒の存在下、一酸化炭素及び炭素数1〜3のアルコールと接触させてメタクリル酸エステルを得る工程 (2)前記脱水反応触媒が、ケイ素と、第1族金属元素及び第2族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含有する触媒である前記(1)に記載の製造方法。 (3)前記脱水反応工程における反応混合物がさらに未反応のアセトンを含み、前記プロピン・プロパジエン分離工程において、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を分離することにより、未反応のアセトンを含む混合物を得る前記(1)又は(2)に記載の製造方法。 (4)下記の工程をさらに含む前記(3)に記載の製造方法。 アセトン循環工程:前記プロピン・プロパジエン分離工程で得られた未反応のアセトンを含む混合物に含まれるアセトンの少なくとも一部を前記脱水反応工程に供給する工程 (5)下記の工程をさらに含む前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。 異性化反応工程:前記プロピン精製工程で得られたプロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物を、異性化触媒の存在下に異性化させ、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を得る工程 (6)下記の工程をさらに含む前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。 メタクリル酸エステル精製工程:前記カルボニル化反応工程で得られたメタクリル酸エステル、未反応のプロピン及び未反応の炭素数1〜3のアルコールを含む反応混合物から、プロピン及び炭素数1〜3のアルコールを回収すると共に、メタクリル酸エステルを精製する工程 (7)下記の工程をさらに含む前記(6)に記載の製造方法。 アルコール循環工程:前記メタクリル酸エステル精製工程で得られた炭素数1〜3のアルコールの少なくとも一部を前記カルボニル化反応工程に供給する工程 本発明によれば、立地的な制約を受け難く、経済的、工業的に有利なメタクリル酸エステルの製造方法を提供することができる。本発明を実施する場合のフローの例である。 本発明は、下記の脱水反応工程、プロピン・プロパジエン分離工程、プロピン精製工程及びカルボニル化反応工程を含むものである。 本発明の脱水反応工程は、脱水反応触媒の存在下にアセトンを脱水反応させてプロピン、プロパジエン及び水を含む反応混合物を得る工程である。汎用溶媒であるアセトンを原料に使用することにより、立地的な制約を受け難く、メタクリル酸エステルの製造原料であるプロピンを効率的に得ることができる。 前記脱水反応触媒としては、ケイ素と、第1族金属元素及び第2族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含有する触媒が好ましい。該触媒としては、第1族金属元素のケイ酸塩;第2族金属元素のケイ酸塩;シリカを含む担体に、第1族金属元素を含む化合物、第2族金属元素を含む化合物、第1族金属元素及び第2族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種〔以下、金属成分ということがある。〕が担持されてなる触媒〔以下、金属成分担持触媒ということがある。〕;シリカを含まない担体に、第1族金属元素のケイ酸塩及び第2族金属元素のケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が担持されてなる触媒〔以下、ケイ酸塩担持触媒ということがある。〕等が挙げられるが、プロピン及びプロパジエンが高い選択率で得られる点で、金属成分担持触媒、ケイ酸塩担持触媒が好ましい。金属成分担持触媒において、第1族金属元素を含む化合物、第2族金属元素を含む化合物、第1族金属元素及び第2族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の中でも、プロピン及びプロパジエンが高い選択率で得られる点で、第1族金属元素を含む化合物及び第1族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、第1族金属元素を含む化合物がより好ましい。ケイ酸塩担持触媒において、第1族金属元素のケイ酸塩及び第2族金属元素のケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の中でも、プロピン及びプロパジエンが高い選択率で得られる点で、第1族金属元素のケイ酸塩が好ましい。 前記第1族金属元素のケイ酸塩としては、ケイ酸リチウム(Li2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])、ケイ酸ナトリウム(Na2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])、ケイ酸カリウム(K2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])、ケイ酸ルビジウム(Rb2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])、ケイ酸セシウム(Cs2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])等が挙げられる。前記第2族金属元素のケイ酸塩としては、ケイ酸マグネシウム(MgO・nSiO2、n=1〜4[モル比])、ケイ酸カルシウム(CaO・nSiO2、n=1〜4[モル比])、ケイ酸ストロンチウム(SrO・nSiO2、n=1〜4[モル比])、ケイ酸バリウム(BaO・nSiO2、n=1〜4[モル比])等が挙げられる。 前記金属成分担持触媒において、第1族金属元素を含む化合物としては、リチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物、ルビジウム化合物、セシウム化合物が挙げられ、中でも、アセチレン結合を有する化合物及び/又はジエンが高い選択率で得られる点で、ナトリウム化合物、カリウム化合物、ルビジウム化合物、セシウム化合物が好ましい。第1族金属元素を含む化合物の中でも、第1族金属元素のハロゲン化物、第1族金属元素の炭酸塩、第1族金属元素の酸化物、第1族金属元素の水酸化物、第1族金属元素のケイ酸塩が好ましく、第1族金属元素のハロゲン化物、第1族金属元素の酸化物、第1族金属元素の水酸化物、第1族金属元素のケイ酸塩がより好ましい。第1族金属元素のハロゲン化物の中でも、第1族金属元素の塩化物が好ましい。 リチウム化合物としては、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)等のハロゲン化リチウム、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸水素リチウム(LiHCO3)、硫酸リチウム(Li2SO4)、硫酸水素リチウム(LiHSO4)、亜硫酸リチウム(Li2SO3)、亜硫酸水素リチウム(LiHSO3)、硝酸リチウム(LiNO3)、亜硝酸リチウム(LiNO2)、チオ硫酸リチウム(Li2S2O3)、ケイ酸リチウム(Li2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])、リン酸三リチウム(Li3PO4)、ホウ酸リチウム(Li3BO3)、次亜塩素酸リチウム(LiClO)、亜塩素酸リチウム(LiClO2)、塩素酸リチウム(LiClO3)、過塩素酸リチウム(LiClO4)等のオキソ酸塩、酸化リチウム(Li2O)、過酸化リチウム(Li2O2)、水酸化リチウム(LiOH)等の酸化物及び水酸化物、酢酸リチウム(CH3COOLi)、クエン酸リチウム等の有機酸塩、水素化リチウム(LiH)、硫化リチウム(Li2S)、硫化水素リチウム(水硫化リチウム)(LiHS)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)等が挙げられ、それらの水和物が存在する場合は水和物も用いることができる。また、必要に応じて、それらの2種以上を用いてもよい。 ナトリウム化合物としては、フッ化ナトリウム(NaF)、塩化ナトリウム(NaCl)、臭化ナトリウム(NaBr)、ヨウ化ナトリウム(NaI)等のハロゲン化ナトリウム、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、ケイ酸ナトリウム(Na2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、ホウ酸ナトリウム(Na3BO3)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)、塩素酸ナトリウム(NaClO3)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)等のオキソ酸塩、酸化ナトリウム(Na2O)、過酸化ナトリウム(Na2O2)、水酸化ナトリウム(NaOH)等の酸化物及び水酸化物、酢酸ナトリウム(CH3COONa)、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩、水素化ナトリウム(NaH)、硫化ナトリウム(Na2S)、硫化水素ナトリウム(水硫化ナトリウム)(NaHS)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)等が挙げられ、それらの水和物が存在する場合は水和物も用いることができる。また、必要に応じて、それらの2種以上を用いてもよい。 カリウム化合物としては、フッ化カリウム(KF)、塩化カリウム(KCl)、臭化カリウム(KBr)、ヨウ化カリウム(KI)等のハロゲン化カリウム、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、硫酸カリウム(K2SO4)、硫酸水素カリウム(KHSO4)、亜硫酸カリウム(K2SO3)、亜硫酸水素カリウム(KHSO3)、硝酸カリウム(KNO3)、亜硝酸カリウム(KNO2)、チオ硫酸カリウム(K2S2O3)、ケイ酸カリウム(K2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])、リン酸三カリウム(K3PO4)、ホウ酸カリウム(K3BO3)、次亜塩素酸カリウム(KClO)、亜塩素酸カリウム(KClO2)、塩素酸カリウム(KClO3)、過塩素酸カリウム(KClO4)等のオキソ酸塩、酸化カリウム(K2O)、過酸化カリウム(K2O2)、水酸化カリウム(KOH)等の酸化物及び水酸化物、酢酸カリウム(CH3COOK)、クエン酸カリウム等の有機酸塩、水素化カリウム(KH)、硫化カリウム(K2S)、硫化水素カリウム(水硫化カリウム)(KHS)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)等が挙げられ、それらの水和物が存在する場合は水和物も用いることができる。また、必要に応じて、それらの2種以上を用いてもよい。 ルビジウム化合物としては、フッ化ルビジウム(RbF)、塩化ルビジウム(RbCl)、臭化ルビジウム(RbBr)、ヨウ化ルビジウム(RbI)等のハロゲン化ルビジウム、炭酸ルビジウム(Rb2CO3)、炭酸水素ルビジウム(RbHCO3)、硫酸ルビジウム(Rb2SO4)、硫酸水素ルビジウム(RbHSO4)、亜硫酸ルビジウム(Rb2SO3)、亜硫酸水素ルビジウム(RbHSO3)、硝酸ルビジウム(RbNO3)、亜硝酸ルビジウム(RbNO2)、チオ硫酸ルビジウム(Rb2S2O3)、ケイ酸ルビジウム(Rb2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])、リン酸三ルビジウム(Rb3PO4)、ホウ酸ルビジウム(Rb3BO3)、次亜塩素酸ルビジウム(RbClO)、亜塩素酸ルビジウム(RbClO2)、塩素酸ルビジウム(RbClO3)、過塩素酸ルビジウム(RbClO4)等のオキソ酸塩、酸化ルビジウム(Rb2O)、過酸化ルビジウム(Rb2O2)、水酸化ルビジウム(RbOH)等の酸化物及び水酸化物、酢酸ルビジウム(CH3COORb)、クエン酸ルビジウム等の有機酸塩、水素化ルビジウム(RbH)、硫化ルビジウム(Rb2S)、硫化水素ルビジウム(水硫化ルビジウム)(RbHS)、水素化ホウ素ルビジウム(RbBH4)等が挙げられ、それらの水和物が存在する場合は水和物も用いることができる。また、必要に応じて、それらの2種以上を用いてもよい。 セシウム化合物としては、フッ化セシウム(CsF)、塩化セシウム(CsCl)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム(CsI)等のハロゲン化セシウム、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸水素セシウム(CsHCO3)、硫酸セシウム(Cs2SO4)、硫酸水素セシウム(CsHSO4)、亜硫酸セシウム(Cs2SO3)、亜硫酸水素セシウム(CsHSO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、亜硝酸セシウム(CsNO2)、チオ硫酸セシウム(Cs2S2O3)、ケイ酸セシウム(Cs2O・nSiO2、n=1〜4[モル比])、リン酸三セシウム(Cs3PO4)、ホウ酸セシウム(Cs3BO3)、次亜塩素酸セシウム(CsClO)、亜塩素酸セシウム(CsClO2)、塩素酸セシウム(CsClO3)、過塩素酸セシウム(CsClO4)等のオキソ酸塩、酸化セシウム(Cs2O)、過酸化セシウム(Cs2O2)、水酸化セシウム(CsOH)等の酸化物及び水酸化物、酢酸セシウム(CH3COOCs)、クエン酸セシウム等の有機酸塩、水素化セシウム(CsH)、硫化セシウム(Cs2S)、硫化水素セシウム(水硫化セシウム)(CsHS)、水素化ホウ素セシウム(CsBH4)等が挙げられ、それらの水和物が存在する場合は水和物も用いることができる。また、必要に応じて、それらの2種以上を用いてもよい。 第2族金属元素を含む化合物としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物が挙げられ、中でも、バリウム化合物が好ましい。 マグネシウム化合物としては、フッ化マグネシウム(MgF2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、臭化マグネシウム(MgBr2)、ヨウ化マグネシウム(MgI2)等のハロゲン化マグネシウム、炭酸マグネシウム(MgCO3)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、亜硫酸マグネシウム(MgSO3)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、亜硝酸マグネシウム(Mg(NO2)2)、チオ硫酸マグネシウム(MgS2O3)、ケイ酸マグネシウム(MgO・nSiO2、n=1〜4[モル比])、リン酸マグネシウム(MgHPO4)、ホウ酸マグネシウム(MgB2O4)等のオキソ酸塩、酸化マグネシウム(MgO)、過酸化マグネシウム(MgO2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)等の酸化物及び水酸化物、酢酸マグネシウム(Mg(CH3COO)2)、クエン酸マグネシウム等の有機酸塩、水素化マグネシウム(MgH2)、硫化マグネシウム(MgS)等が挙げられ、それらの水和物が存在する場合は水和物も用いることができる。また、必要に応じて、それらの2種以上を用いてもよい。 カルシウム化合物としては、フッ化カルシウム(CaF2)、塩化カルシウム(CaCl2)、臭化カルシウム(CaBr2)、ヨウ化カルシウム(CaI2)などのハロゲン化カルシウム、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、亜硫酸カルシウム(CaSO3)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)、亜硝酸カルシウム(Ca(NO2)2)、チオ硫酸カルシウム(CaS2O3)、ケイ酸カルシウム(CaO・nSiO2、n=1〜4[モル比])、リン酸カルシウム(CaHPO4)、ホウ酸カルシウム(CaB2O4)等のオキソ酸塩、酸化カルシウム(CaO)、過酸化カルシウム(CaO2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)等の酸化物及び水酸化物、酢酸カルシウム(Ca(CH3COO)2)、クエン酸カルシウム等の有機酸塩、水素化カルシウム(CaH2)、硫化カルシウム(CaS)等が挙げられ、それらの水和物が存在する場合は水和物も用いることができる。また、必要に応じて、それらの2種以上を用いてもよい。 ストロンチウム化合物としては、フッ化ストロンチウム(SrF2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、臭化ストロンチウム(SrBr2)、ヨウ化ストロチウム(SrI2)等のハロゲン化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、硫酸ストロンチウム(SrSO4)、亜硫酸ストロンチウム(SrSO3)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)、亜硝酸ストロンチウム(Sr(NO2)2)、チオ硫酸ストロンチウム(SrS2O3)、ケイ酸ストロンチウム(SrO・nSiO2、n=1〜4[モル比])、リン酸ストロンチウム(SrHPO4)、ホウ酸ストロンチウム(SrB2O4)等のオキソ酸塩、酸化ストロンチウム(SrO)、過酸化ストロンチウム(SrO2)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)等の酸化物及び水酸化物、酢酸ストロンチウム(Sr(CH3COO)2)、クエン酸ストロンチウム等の有機酸塩、水素化ストロンチウム(SrH2)、硫化ストロンチウム(SrS)等が挙げられ、それらの水和物が存在する場合は水和物も用いることができる。また、必要に応じて、それらの2種以上を用いてもよい。 バリウム化合物としては、フッ化バリウム(BaF2)、塩化バリウム(BaCl2)、臭化バリウム(BaBr2)、ヨウ化ストロチウム(BaI2)等のハロゲン化バリウム、炭酸バリウム(BaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)、亜硫酸バリウム(BaSO3)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、亜硝酸バリウム(Ba(NO2)2)、チオ硫酸バリウム(BaS2O3)、ケイ酸バリウム(BaO・nSiO2、n=1〜4[モル比])、リン酸バリウム(BaHPO4)、ホウ酸バリウム(BaB2O4)等のオキソ酸塩、酸化バリウム(BaO)、過酸化バリウム(BaO2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)等の酸化物及び水酸化物、酢酸バリウム(Ba(CH3COO)2)、クエン酸バリウム等の有機酸塩、水素化バリウム(BaH2)、硫化バリウム(BaS)等が挙げられ、それらの水和物が存在する場合は水和物も用いることができる。また、必要に応じて、それらの2種以上を用いてもよい。 前記金属成分担持触媒において、第1族金属元素が担持されてなる場合、第1族金属元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、中でも、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが好ましい。前記金属成分担持触媒において、第2族金属元素が担持されてなる場合、第2族金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム化合物が挙げられ、中でも、バリウムが好ましい。 前記金属成分担持触媒において、担体に含まれるシリカのシリカ源としては、特に制限されないが、例えば、シリカ粉末、水や有機溶媒を分散媒としたシリカゾル、アルコキシシラン(オルトケイ酸テトラエチル等)等を用いることができる。 前記金属成分担持触媒においては、シリカを含む担体を使用する。該担体においては、シリカ以外に、チタニア、ジルコニア、酸化ニオブ、酸化スズ等の酸化物が含まれていてもよい。前記担体は、シリカ単独の担体、すなわちシリカからなる担体であってもよいし、シリカとシリカ以外の酸化物との複合酸化物であってもよいし、シリカとシリカ以外の酸化物との混合物であってもよいが、特に、シリカからなる担体が好ましい。 前記金属成分担持触媒において、シリカを含む担体に金属成分を担持させる方法としては、含浸法、共沈法、混練法等が挙げられる。前記金属成分担持触媒は、例えば、金属成分を含浸法、共沈法又は混練法等により担体に担持させ、50℃〜1000℃で熱処理することにより調製することができる。また、担持した金属成分を酸化して担持酸化物として用いることもできる。また、担持した金属成分を還元して担持金属触媒として用いることもできる。酸化は、例えば、担体に金属成分を担持した後、酸化性ガスの雰囲気下で焼成することにより行われる。酸化性ガスとは、酸化性物質を含むガスであり、例えば、酸素含有ガスが挙げられる。その酸素濃度は通常1〜30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。酸化性ガスは、中でも、空気が好ましい。酸化における焼成温度は、通常100〜1000℃、好ましくは200〜800℃である。還元は、例えば、担体に金属成分を担持した後、還元性ガスの雰囲気下で焼成することにより行われる。還元性ガスとは、還元性物質を含むガスであり、例えば、水素含有ガス、一酸化炭素含有ガス、炭化水素含有ガス等が挙げられる。その水素、一酸化炭素又は炭化水素の濃度としては、通常、1〜30容量%程度であり、例えば、不活性ガスや水蒸気で濃度調整される。還元性ガスは、中でも、水素含有ガス、一酸化炭素含有ガスが好ましい。また、還元における焼成温度は、通常、100〜1000℃、好ましくは200〜800℃である。 前記金属成分担持触媒における金属成分の担持量は、触媒総量に対して、金属元素の重量として0.01〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜15重量%である。前記金属成分担持触媒において2種以上の金属元素が含まれる場合、金属元素の合計含有量が、上記範囲となればよい。 前記ケイ酸塩担持触媒において、第1族金属元素のケイ酸塩、第2族金属元素のケイ酸塩としては、上述のものが挙げられる。シリカを含まない担体としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タングステン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、活性炭等が挙げられ、これらの2種以上の混合物や、例示の酸化物からなる群より選ばれる2種以上を成分とする複合酸化物であってもよい。 前記ケイ酸塩担持触媒において、シリカを除く担体に第1族金属元素のケイ酸塩及び第2族金属元素のケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を担持させる方法としては、含浸法、共沈法、混練法等が挙げられる。前記ケイ酸塩担持触媒は、例えば、第1族金属元素のケイ酸塩及び第2族金属元素のケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含浸法、共沈法又は混練法等により担体に担持させ、50℃〜1000℃で熱処理することにより調製することができる。また、担体に第1族金属元素のケイ酸塩及び第2族金属元素のケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を担持した後、酸化性ガスの雰囲気下又は還元性ガスの雰囲気下で焼成してもよい。酸化性ガスとは、酸化性物質を含むガスであり、例えば、酸素含有ガスが挙げられる。その酸素濃度は通常1〜30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。酸化性ガスは、中でも、空気が好ましい。酸化性ガスの雰囲気下における焼成温度は、通常100〜1000℃、好ましくは200〜800℃である。還元性ガスとは、還元性物質を含むガスであり、例えば、水素含有ガス、一酸化炭素含有ガス、炭化水素含有ガス等が挙げられる。その水素、一酸化炭素又は炭化水素の濃度としては、通常、1〜30容量%程度であり、例えば、不活性ガスや水蒸気で濃度調整される。還元性ガスは、中でも、水素含有ガス、一酸化炭素含有ガスが好ましい。また、還元性ガスの雰囲気下における焼成温度は、通常、100〜1000℃、好ましくは200〜800℃である。 前記ケイ酸塩担持触媒における第1族金属元素のケイ酸塩及び第2族金属元素のケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の担持量は、触媒総量に対して、第1族金属元素のケイ酸塩及び第2族金属元素のケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の重量として0.01〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜15重量%である。前記ケイ酸塩担持触媒において、第1族金属元素のケイ酸塩及び第2族金属元素のケイ酸塩が含まれる場合、その合計含有量が上記範囲となればよい。 前記金属成分担持触媒又はケイ酸塩担持触媒のBET比表面積は、好ましくは1〜800m2/g、より好ましくは1〜400m2/gである。BET比表面積が800m2/gより大きいと、触媒の熱安定性が低下するおそれがある。また、前記金属成分担持触媒又はケイ酸塩担持触媒においては、BET比表面積が1m2/gより小さいと、担持した金属成分の分散度が低下するおそれがある。ここで、BET比表面積は、窒素吸着法を原理とする比表面積測定装置を用いて測定して得られる値である。 前記金属成分担持触媒又はケイ酸塩担持触媒の細孔容積としては、好ましくは0.05〜2.5ml/g、より好ましくは0.1〜1.5ml/gである。細孔容積が0.05ml/gより小さいと、細孔径が小さくなりすぎて活性が低くなるおそれがある。また、細孔容積が2.5ml/gより大きいと、触媒の機械的強度が低下して触媒が劣化し易くなるおそれがある。尚、細孔容積は、水銀圧入法で測定して得られる値である。 前記脱水反応触媒は、好ましくは成形体として使用される。その形状としては、例えば、球形粒状、円柱状、ペレット状、押出形状、リング形状、ハニカム状あるいは成形後に粉砕分級した適度の大きさの顆粒状等が挙げられる。成形体は、使用される反応方式に合わせて形状が選択され、例えば、固定床反応の触媒として使用する場合は、上述の各種形状の成形体が使用される。この際、成形体の直径としては5mm以下であることが好ましい。成形体の直径が大きすぎると、脱水反応の転化率が低くなることがある。成形体の直径の下限は特に制限はないが、過度に小さくなると、触媒層での圧力損失が大きくなるため、通常は0.5mm以上のものが用いられる。また、流動床反応や移動床反応の触媒として使用する場合は、平均粒径1〜1000μm程度の球形粒状の成形体が好ましく使用され、特に流動床反応においては平均粒径10〜500μmの球形粒状の成形体が好ましく使用される。なお、ここでいう成形体の直径とは、球形粒状では球の直径、円柱状では円形断面の直径、その他の形状では断面の最大直径を意味する。 前記脱水反応においては、反応系内に、原料であるアセトンとともに、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、プロパジエン、ブタン、ブテン、ブチン、イソブチレン、ブタジエン、窒素等が存在してもよい。 前記脱水反応において、反応温度は、通常200〜1200℃、好ましくは250〜1000℃、より好ましくは400〜800℃である。反応温度が200℃よりも低いと反応速度及び化学平衡の面から脱水反応が進行し難くなるおそれがあり、一方、反応温度が1200℃よりも高いと触媒の活性劣化を引き起こすおそれがある。 前記脱水反応において、反応圧力は、通常0.001〜5MPa、好ましくは0.005〜0.3MPaである。反応圧力が0.001MPaより低いと生産性が低くなるおそれがあり、5MPaより高いと反応における化学平衡の制約からアセトンの転化率が低くなるおそれがある。 前記脱水反応における反応方式としては、固定床方式、流動床方式、移動床方式等の各種の方式で実施することができるが、固定床又は流動床方式が好ましい。脱水反応触媒は単独で使用してもよいし、脱水反応に実質的に不活性な物質と希釈、混合して使用してもよい。 なお、前記脱水反応を固定床方式で行う場合、アセトンを含む原料ガスの供給速度は、触媒1Lあたりの原料ガス供給速度(L/h;0℃、0.1MPa換算)、すなわちGHSV(Gas Hourly Space Velocity)で表して、1〜20000h−1、好ましくは10〜10000h−1である。アセトンを含む原料ガス中のアセトンの濃度は、生産性及び触媒活性を考慮して適宜設定される。原料ガス中のアセトン濃度の調整は、窒素、メタン、エタン、プロパン、二酸化炭素、水蒸気等の前記脱水反応に不活性なガスを用いることにより行ってもよい。 本発明のプロピン・プロパジエン分離工程は、前記脱水反応工程で得られた反応混合物から、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を分離する工程である。 前記脱水反応工程で得られた反応混合物には、反応生成物であるプロピン、プロパジエン及び水が含まれ、これら以外に未反応のアセトンや副生物等が含まれ得る。前記脱水反応工程で得られた反応混合物に未反応のアセトンが含まれる場合には、該反応混合物からプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を分離することにより得られる残りの混合物に、未反応のアセトンが含まれるように分離して、未反応のアセトンを含む混合物を得ることが好ましい。該反応混合物に含まれる水は、前記分離の前に該反応混合物に脱水処理を施すことにより除去されてもよいし、前記プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物に含まれてもよいし、前記分離により得られる残りの混合物に含まれてもよいが、前記分離により得られる残りの混合物に含まれるように分離を行い、水を含む混合物として回収されることが好ましい。ここで、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物における主成分とは、該混合物中のプロピン及びプロパジエンの合計含有量が、該混合物中のプロピン、プロパジエン、水及びアセトンの合計含有量に対して、50重量%以上であることを意味する。 前記プロピン・プロパジエン分離工程における分離の方法としては、処理効率や運転コストの点で蒸留が好ましく、必要に応じて吸収、膜分離、吸着分離、抽出分離等の公知の方法と組み合わせてもよい。蒸留装置としては特に限定されないが、例えば、棚段塔や充填塔、薄膜蒸発装置、フラッシュ蒸発装置、遠心式蒸留装置等が使用でき、中でも、棚段塔、充填塔が好ましい。蒸留は、連続式で行ってもよいし、回分式で行ってもよく、半回分式で行ってもよいが、連続式で行うことが好ましい。蒸留の操作圧力は、50〜1000kPa(絶対圧)が好ましく、操作温度(蒸留塔の塔底の温度)は、操作圧力等に依存するが、40〜180℃が好ましい。蒸留としては、蒸留装置にコンデンサーを設け、蒸留塔の塔頂からのガスを冷却し、得られる凝縮液の少なくとも一部を塔頂に戻すことにより還流を行う精留の形式で行われることが好ましい。また、蒸留装置には塔底付近の液の一部を気化させるためのリボイラーが設置されてもよい。蒸留装置として棚段塔、充填塔を用いる場合、その理論段数は、好ましくは2〜50段、より好ましくは5〜30段である。蒸留装置として棚段塔を用いる場合、棚段としては、特に限定されるものではなく公知のものが使用でき、例えば、シーブトレー、リップルトレー、バブルキャップトレー等を使用することができる。蒸留装置として充填塔を用いる場合、充填物としては、特に限定されるものではなく公知のものが使用でき、例えば、ラシヒリング(Raschig ring)、レッシングリング(Lessing ring)、ディクソンパッキン(Dixonpacking)、ポールリング(Pall ring)、サドル、スルザーパッキン(Sulzer packing)、メラパック等を使用することができる。蒸留による分離を行う場合、蒸留装置の塔頂からプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を流出させることにより、前記脱水反応工程で得られた反応混合物からプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を分離し、蒸留装置の塔底から未反応のアセトン及び水を含む混合物が回収できるように条件を設定するのが好ましい。 前記プロピン・プロパジエン分離工程における分離を蒸留により行う場合、前記脱水反応工程で得られた反応混合物は蒸留前に温度調節されることが好ましい。温度調節装置としては特に限定されないが、例えば、多管式熱交換器等を用いることができる。前記脱水反応工程で得られた反応混合物は、−50〜180℃に温度調節された後、蒸留に付されることが好ましい。温度調節時における圧力は、50〜1200kPa(絶対圧)が好ましい。温度調節後の混合物は、ガス、液、あるいはこれらが混合した状態で蒸留に付される。温度調節後の混合物がガス及び液の混合物であり、該液が水を主成分とし、プロピン及びプロパジエンの濃度が低い場合は、該混合物を気液分離して得られるガスのみを蒸留に供してもよい。 本発明において、前記プロピン・プロパジエン分離工程における分離により未反応のアセトンを含む混合物が得られる場合には、原料リサイクルによる経済性改善の観点から、前記プロピン・プロパジエン分離工程で得られた未反応のアセトンを含む混合物に含まれるアセトンの少なくとも一部を前記脱水反応工程に供給するアセトン循環工程を有することが好ましい。該供給は、前記プロピン・プロパジエン分離工程で得られた未反応のアセトンを含む混合物に、例えば蒸留、放散等の処理を施して、アセトンを主成分とする混合物を分離した後に、該混合物の少なくとも一部を供給することにより行ってもよい。また、未反応のアセトンを含む混合物にさらに水が含まれる場合には、水を分離した後に、得られる混合物に含まれるアセトンの少なくとも一部を前記脱水反応工程に供給するのが好ましい。アセトンと水の分離は、例えば蒸留により行うことができる。 本発明のプロピン精製工程は、前記プロピン・プロパジエン分離工程で分離されたプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を、プロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物と、プロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物とに分離する工程である。 前記プロピン・プロパジエン分離工程で得られたプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を、プロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物と、プロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物とに分離する方法としては、例えば、吸収、蒸留、抽出蒸留、吸着等が挙げられる。該吸収の方法としては、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を、溶媒と接触させる方法等が挙げられる。該接触には、例えば吸収塔が用いられる。吸収塔の種類としては、充填塔、濡れ壁塔、噴霧塔、サイクロンスクラバー、気泡塔、気泡攪拌槽、段塔(泡鐘塔、多孔板塔)、泡沫分離塔などが使用可能である。吸収における圧力は、特に限定されないが、50〜900kPa(絶対圧)が好ましく、温度は、特に限定されないが、−50〜100℃が好ましい。プロピン・プロパジエン分離工程で得られる混合物が脱水反応工程から持ち込まれる非凝縮性あるいは揮発性の副生成分、不活性成分を含む場合は、これを溶媒に流通させ、プロピン、プロパジエンを溶媒中に吸収させて分離、回収することができる。溶媒はプロピン、プロパジエンを溶解させるものであればよく、例えばN,N−ジメチルホルムアミドを用いることができる。 前記抽出蒸留は、例えば、欧州公開特許392601号公報、欧州公開特許533291号公報や欧州公開特許533628号公報に記載の方法に準じて行うことができる。抽出蒸留に用いられる溶媒としては、プロピンとプロパジエンとの溶解度に差があるものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミドが、プロピン分離能、経済性、化学安定性及び工業的入手の容易性の観点から好ましい。抽出蒸留の前段で吸収を行う場合は、吸収に用いる溶媒をそのまま抽出蒸留の溶媒として用いることもできる。N,N−ジメチルホルムアミド等のプロパジエンよりもプロピンの方が溶解度の高い溶媒を使用した場合、抽出蒸留塔においては、塔頂からプロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物が、塔底からプロピン及び溶媒を主成分とする溶液が回収される。プロピン及び溶媒を主成分とする溶液にプロパジエンが含まれる場合には、該溶液を放散塔に供し、加熱することによりプロパジエンを主成分とするガスを放散し、塔底からプロピンを主成分とする溶液を得るプロパジエン放散工程を別途設けてもよい。前記抽出蒸留により得られるプロピン及び溶媒を主成分とする溶液は、さらに蒸留に付してもよく、かかる蒸留により、プロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物と溶媒とに分離され、高濃度のプロピンを取得することができる。該蒸留により回収される溶媒は、適宜精製した後、前記吸収又は抽出蒸留にリサイクルすることができる。ここで、プロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物における主成分とは、該液体、ガス又は気液混合物に含まれるプロピン量が、該液体、ガス又は気液混合物に含まれるプロピン及びプロパジエンの合計量に対して50重量%を超えることを意味し、プロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物における主成分とは、該液体、ガス又は気液混合物に含まれるプロパジエン量が、該液体、ガス又は気液混合物に含まれるプロピン及びプロパジエンの合計量に対して50重量%を超えることを意味する。カルボニル化反応工程に付されるプロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物中のプロパジエン含有量は、プロピン及びプロパジエンの合計含有量に対して50重量ppm以下であることが好ましい。 前記プロピン精製工程で得られたプロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物、あるいは前記プロパジエン放散工程で得られるプロパジエンを主成分とするガスは、異性化触媒の存在下に異性化反応させ、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を得る異性化反応工程へ供してもよい。 前記異性化反応工程に付される原料に含まれるプロピンとプロパジエンの比は特に限定されないが、通常、プロピン/プロパジエンの重量比は1以下である。反応器から出てくる異性化反応物の、プロピン/プロパジエンの重量比は、反応温度、反応器への滞留時間に依存するが、通常、3以上、好ましくは、5以上である。異性化反応工程で得られたプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物は、前記プロピン精製工程に供給することが、経済性の観点から好ましい。異性化触媒としては、例えば、固体酸触媒、固体塩基触媒が挙げられるが、異性化能の観点から、固体塩基触媒が好ましい。固体酸触媒としては、例えば、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ゼオライト、ヘテロポリ酸、硫酸根ジルコニア等が挙げられ、固体塩基触媒としては、アルカリ金属及びアルカリ金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が担体に担持されてなる触媒等が挙げられ、中でも、アルカリ金属化合物が担体に担持されてなる触媒が好ましい。アルカリ金属及びアルカリ金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が担体に担持されてなる触媒において、アルカリ金属としては、例えば、カリウム、セシウム等が挙げられ、アルカリ金属化合物としては、例えば、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の硝酸塩、アルカリ金属の水素化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属の酢酸塩等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上が担体に担持されていてもよい。例示したアルカリ金属化合物の中でも、異性化能の観点から、カリウム化合物が好ましい。アルカリ金属及びアルカリ金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が担体に担持されてなる触媒において、担体としては、シリカ、マグネシア等が挙げられ、異性化能の観点から、中でもアルミナが好ましく、アルミナの中でもγ−アルミナが好ましい。 前記異性化反応工程において、異性化触媒としてアルカリ金属及びアルカリ金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が担体に担持されてなる触媒が使用される場合、担体としては、平均細孔半径が4.5nm以上が好ましい。平均細孔半径の上限値としては、15nm以下であるのが好ましく、10nm以下であるのがより好ましい。平均細孔半径は、水銀圧入法で測定して得られる値である。該担体の細孔容積としては、0.40mL/g以上であるのが好ましく、0.50mL/g以上であるのがより好ましい。該細孔容積の上限値としては、2.5mL/g以下であるのが好ましく、1.5mL/g以下であるのがより好ましい。細孔容積は、水銀圧入法で測定して得られる値である。該担体の比表面積は、アルカリ金属及びアルカリ金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の担持量の観点から、100m2/g以上であるのが好ましい。比表面積は、窒素吸着法(BET法)で測定して得られる値であり、通常、BET1点法で測定して得られる値である。アルカリ金属及びアルカリ金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が担体に担持されてなる触媒としては、担体にアルカリ金属及びアルカリ金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を担持した後に焼成して得られる触媒を用いるのが好ましい。 前記異性化反応工程における異性化反応は、回分式で行ってもよいし、半回分式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。連続式の反応は、液相条件下で行ってもよいし、気相条件下で行ってもよく、例えば、固定床流通方式で実施することができる。異性化における温度としては、液相反応の場合、通常、−30〜150℃であり、0〜100℃であることが好ましく、気相反応の場合、通常、0〜600℃であり、100〜400℃であることが好ましい。異性化における反応圧力としては、液相反応の場合、通常、0.1〜10MPaであり、気相反応の場合、通常、0.001〜1MPaである。 前記異性化反応における触媒の使用量としては、触媒中のアルカリ金属元素に換算して、プロパジエン1モルに対して、0.0001〜0.1モルであるのが好ましく、0.001〜0.05モルであるのがより好ましい。 前記異性化反応においては、希釈剤及び/又は溶媒を使用してもよい。希釈剤及び/又は溶媒としては、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等の無機ガス;メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、必要に応じてこれらの2種以上を用いることもできる。 前記異性化反応は、水及び二酸化炭素が実質的に存在しない条件で行うのが好ましい。これにより、触媒の活性が低下するのを抑制することができる。 本発明のカルボニル化反応工程は、前記プロピン精製工程で得られたプロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物を、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む触媒の存在下、一酸化炭素及び炭素数1〜3のアルコールと接触させてメタクリル酸エステルを得る工程である。 前記カルボニル化反応工程において用いられる第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む触媒としては、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素そのものを含む触媒、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素を化合物の形で含む触媒、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素そのものと、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素の化合物とを含む触媒が挙げられる。第8族金属元素としては、Fe、Ru、Osが挙げられ、第9族金属元素としては、Co、Rh、Irが挙げられ、第10族金属元素としては、Ni、Pd、Ptが挙げられる。該触媒としては、第10族金属元素を含む触媒が好ましく、第10族金属元素の化合物を含む触媒がより好ましい。第10族金属元素の化合物としては、ニッケル化合物、パラジウム化合物、白金化合物が挙げられ、好ましくはパラジウム化合物を挙げることができる。かかるパラジウム化合物としては、パラジウムアセチルアセトナート、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムアセテート、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化パラジウム及びこれらの混合物を挙げることができる。パラジウム化合物として、より好ましくは、パラジウムアセチルアセトナート、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムアセテート、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム、硫酸パラジウム及びこれらの混合物であり、さらに好ましくは酢酸パラジウムである。第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用量はプロピン1モルに対して、1/200000モル以下であるが、好ましくは1/1000000〜1/200000モルの範囲である。すなわち、プロピンの使用量が、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の1モルに対して200000モル以上であり、好ましくは200000〜1000000モルの範囲である。前記触媒に二種以上の金属元素が含まれる場合、その合計使用量が前記範囲となればよい。 前記カルボニル化反応工程において用いられる触媒には、さらにプロトン酸及びホスフィン化合物が含まれることが好ましい。該プロトン酸及びホスフィン化合物の具体例としては、特開2010−120921号公報に例示されているものが挙げられ、該公報に記載の方法に準じて使用することができる。また、触媒として必須ではないが、アミン化合物をさらに使用してもよい。該アミン化合物の具体例としては、特開2010−120921号公報に例示されているものが挙げられ、該公報に記載の方法に準じて使用することができる。 前記カルボニル化反応工程において用いられる炭素数1〜3のアルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールを挙げることができる。好ましい実施形態として、メタノールを反応させることによりメタクリル酸メチルを製造する形態が挙げられる。該アルコールの使用量は、該アルコールに含まれる水分量に応じて、反応系に存在する水が、反応系に存在する前記触媒に含まれる第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の1モルに対して、好ましくは40000モル以下、より好ましくは4000モル以下、さらに好ましくは1000モル以下、特に好ましくは500モル以下となるように適宜調整されるのがよい。また、下限については特に制限されないが、通常10モル以上である。前記触媒に二種以上の金属元素が含まれる場合、その合計量に対して反応系に存在する水が前記範囲となればよい。反応系に存在する水の量の調整は、炭素数1〜3のアルコールに含まれる水分量の調整により行うのがよい。炭素数1〜3のアルコールに含まれる水分量の調整は、例えば、該アルコールを、モレキュラーシーブ、アルミナ、シリカゲル、Na2SO4、MgSO4、CuSO4、P2O5、CaH2、BaO、CaO等の乾燥剤で処理し、炭素数1〜3のアルコールに含まれる水分量を低減させることにより行うことができる。該アルコールに含まれる水分量は、1000重量ppm以下が好ましく、750重量ppm以下がより好ましく、500重量ppm以下がさらに好ましく、100重量ppm以下が特に好ましい。プロピン1モルに対する該アルコールの使用量は、1モル以上が好ましく、1〜5モルが好ましい。 前記カルボニル化反応工程においては、溶媒の使用は必須ではないが、プロピン・プロパジエンの分圧を低くすることが好ましく、好適には前記の炭素数1〜3のアルコールを溶媒の代わりに過剰に用いる。しかし、別途、別の溶媒を使用することも可能である。使用できる溶媒の具体例としては、特開2010−120921号公報に例示されているものが挙げられ、該公報に記載の方法に準じて使用することができる。リサイクルの容易性の観点から、炭素数1〜3のアルコールを溶媒の代わりに過剰に用いるのが好ましい。 前記カルボニル化反応工程における前記接触の温度に特に制限はないが、好ましくは、20〜100℃の範囲において実施される。また、接触時間は、触媒使用量や温度並びに圧力等の条件にもよるが、通常は0.5〜48時間である。前記接触における圧力は特に限定されないが、好ましくは0.5〜10MPaG(ゲージ圧)であり、より好ましくは1.0〜7MPaG(ゲージ圧)の範囲である。このときの一酸化炭素分圧は特に限定されないが、好ましくは0.5〜10MPaG(ゲージ圧)であり、より好ましくは1.0〜7MPaG(ゲージ圧)の範囲である。プロピンを主成分とする液体又はガスには、反応を著しく阻害するもので無い限りは、プロパジエンや他の不純物を含んでいてもよい。かかる不純物として具体的には、ブタジエン、プロピレン、ブテン、プロパン、一酸化炭素、および二酸化炭素などがあげられる。本発明に用いられる一酸化炭素は、純粋な一酸化炭素のほか、窒素、ヘリウム、二酸化炭素、アルゴン等の触媒やプロピンに不活性なガスを含んでいてもよい。本発明の反応の実施態様は特に限定されず、例えば、バッチ方式でも連続方式でもよい。 前記カルボニル化反応工程において、前記プロピン精製工程で得られたプロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物に同伴される不純物、未反応の一酸化炭素、一酸化炭素に同伴される不活性なガス等は、その一部或いは全量を適宜系外へ排出することが、系内での蓄積を避ける点で好ましい。 前記カルボニル化反応工程において得られるメタクリル酸エステルとして、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステルを挙げることができる。 本発明の製造方法は、下記のメタクリル酸エステル精製工程を含むことが、メタクリル酸エステル品質及び原料リサイクルによる経済性改善の観点から、好ましい。 メタクリル酸エステル精製工程は、前記カルボニル化反応工程で得られたメタクリル酸エステル、未反応のプロピン及び未反応の炭素数1〜3のアルコールを含む反応混合物から、未反応のプロピン及び未反応の炭素数1〜3のアルコールを回収すると共に、メタクリル酸エステルを精製する工程である。 前記カルボニル化反応工程から出てくる反応混合物は、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、未反応の炭素数1〜3のアルコール、未反応のプロピン、触媒を主成分として含む。前記カルボニル化反応工程をプロピンに対して過剰量の一酸化炭素を供給して行った場合には、反応後に未反応の一酸化炭素も回収され、回収された一酸化炭素の少なくとも一部を前記カルボニル化反応工程にリサイクルしてもよいが、例えば、1パスで反応してメタクリル酸エステルに変換される量のみの一酸化炭素を系内に供給して接触時間を長くする等の方法により、前記カルボニル化反応工程を未反応の一酸化炭素が出ないように実施し、一酸化炭素のリサイクルを省略することがリサイクルプロセスを簡略化する上で好ましい。反応混合物に含まれるクロトン酸エステルは副生成物であり、生成分は系外に除去する必要がある。炭素数1〜3のアルコール、プロピン、及び触媒は、それぞれ少なくとも一部がリサイクルされることが好ましく、特に、本発明の製造方法においては、メタクリル酸エステル精製工程で得られた炭素数1〜3のアルコールの少なくとも一部を前記カルボニル化反応工程に供給するアルコール循環工程を有することが好ましい。 前記メタクリル酸エステル精製工程において、反応混合物からのプロピン及び炭素数1〜3のアルコールの分離方法は特に限定されないが、例えば、ガス放散操作、蒸留操作、抽出操作又はそれらの組合せが挙げられ、中でも、沸点差を利用した蒸留、あるいは、抽出溶剤への溶解度差を利用した抽出蒸留による分離が有利である。例えば、先ず、メタクリル酸エステルより蒸気圧の高い成分が蒸留により分離される。メタクリル酸エステルより蒸気圧の高い成分とは、例えば、プロピン、炭素数1〜3のアルコールである。その後、メタクリル酸エステルが蒸留され、塔底にクロトン酸エステルと触媒を主成分とする混合液が残る。クロトン酸エステルと触媒を主成分とする混合液は廃棄してもかまわないが、通常、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種は高価であることよりリサイクルすることが好ましい。リサイクル方法は、特に限定されないが、通常、クロトン酸エステルと触媒を主成分とする混合物からカルボニル化反応工程で発生するクロトン酸エステル分に相当する量のみを系外に除去し、残りをカルボニル化反応工程にリサイクルする方法である。メタクリル酸エステル精製工程の温度は、メタクリル酸エステルの重合抑制の観点より100℃以下が好ましい。重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン等が挙げられる。 前記アルコール循環工程において、前記メタクリル酸エステル精製工程で得られた炭素数1〜3のアルコールが、混合物として回収される場合には、蒸留等の精製操作により、高濃度の炭素数1〜3のアルコールとしてから該アルコールの少なくとも一部を前記カルボニル化反応工程に供給してもよい。 以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。 実施例1 アセトン、メタノール及び一酸化炭素を原料としてメタクリル酸メチルを製造する場合、例えば、図1のフローと表1の物質収支により最適に実施することができる。 アセトン(流体番号1)647kg/hをアセトン循環工程(D)からのリサイクル留分(流体番号9)926kg/hとともに脱水反応工程(A)に供給し、水酸化カリウム担持シリカ触媒の存在下でアセトンを脱水反応させることにより、プロピンとプロパジエンを合計27.0重量%含み、他に未反応のアセトン、生成水、副生物及び原料中の不純物を含む脱水反応混合物(流体番号2)1573kg/hが得られる。得られた脱水反応混合物はプロピン・プロパジエン分離工程(B)に供給され、冷却して一部を凝縮させることにより、プロピン及びプロパジエンを主成分とするガス混合物(流体番号3)461kg/hと、水及びアセトンを主成分とする液体混合物(流体番号4)1112kg/hとに分離される。プロピン・プロパジエン分離工程で得られたガス混合物(流体番号3)はプロピン精製工程(C)に供給され、冷却、蒸留により、軽沸成分を主成分とするガス混合物(流体番号5)23kg/hと、プロパジエンを主成分とする留分(流体番号6)151kg/hと、精プロピン(流体番号7)406kg/hと、高沸成分を主成分とする留分(流体番号8)32kg/hとに分離される。プロピン・プロパジエン分離工程(B)で得られた液体混合物(流体番号4)はアセトン循環工程(D)に供給され、蒸留により、アセトンを主成分とするリサイクル留分(流体番号9)926kg/hと、水(流体番号10)186kg/hとに分離される。プロピン精製工程(C)で得られたプロパジエンを主成分とする留分(流体番号6)は、異性化反応工程(E)に供給され、炭酸カリウム担持アルミナ触媒の存在下でプロパジエンを異性化反応させることにより、プロピンを主成分とする異性化反応混合物(流体番号11)151kg/hが得られる。 また、プロピン精製工程(C)で得られた精プロピン(流体番号7)は、メタノール(流体番号12)322kg/hと、一酸化炭素(流体番号13)285kg/hと、アルコール循環工程(H)で得られるリサイクル留分(流体番号19)666kg/hと共にカルボニル化反応工程(F)に供給され、パラジウム系触媒の存在下で反応させることにより、メタクリル酸メチルを63.1重量%含み、他に未反応のメタノール、プロピン、副生物及び原料中の不純物を含むカルボニル化反応混合物(流体番号14)1673kg/hが得られると同時に、原料中に含まれる軽沸成分を主成分とするガス混合物(流体番号15)5kg/hが排出される。得られたカルボニル化反応混合物(流体番号14)は、メタクリル酸エステル精製工程(G)に供給され、蒸留により、メタノールを主成分とする留分(流体番号16)671kg/hと、精メタクリル酸メチル(流体番号17)1000kg/hと、高沸成分を主成分とする留分(流体番号18)2kg/hに分離される。メタクリル酸エステル精製工程(G)で得られた主にメタノールを含有する留分はアルコール循環工程(H)に供給され、蒸留により、メタノールを主成分とし、さらにプロピン及びメタクリル酸メチルを含むリサイクル留分(流体番号19)666kg/hと、カルボニル化反応原料から持ち込まれた不純物を主成分とする留分(流体番号20)5kg/hとに分離される。 参考例1<触媒の製造> 担体にシリカ粉末〔SiO2、東ソー・シリカ(株)製、NIPSIL ER−R〕を用いた。担体20.0gに、ケイ酸カリウム溶液〔和光純薬工業(株)製、K2O・3.9SiO2(SiO2/K2O=3.9[モル比])の水溶液、K2O・3.9SiO2含有量:28.1重量%〕4.6gを純水35.0gと混合して調製した水溶液を含浸させ、20〜30℃で15時間以上風乾した。得られた固体を、プレス成形し、空気流通下、室温から200℃まで0.5時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成した。次いで、得られた焼成物を、0.85〜1.4mmの顆粒状に破砕し、ケイ酸カリウムがシリカに担持されてなる触媒(ケイ酸カリウム含有量:6.1重量%)を得た。<触媒充填> 外径4mmの温度計鞘管が設けられた内径14mmの石英製の反応管の下部に石英ウールを仕切り剤として充填し、SiCを7.1mL充填後、さらに石英ウールを仕切り剤として充填し、ついで得られた触媒2.4g(体積6.3mL)を充填後、さらに石英ウールを仕切り剤として充填し、ついでSiCを12.7mL充填した。<脱水反応> 触媒充填済みの反応管の入口から窒素ガスを2.7ml/分の速度で反応管内に供給しながら、ダイヤフラムポンプを用いて反応管内を0.01MPa以下に減圧した後、反応管を電気炉で加熱し、昇温した。 そして、液状のアセトン(和光純薬工業(株)製)をポンプにて反応管の入口から供給してガス化させ〔アセトンガス供給速度:34.2ml/分(0.092mol/h)、供給ガス中のアセトン濃度:92.7体積%〕、反応圧力0.008MPaにて反応を開始した。触媒体積に対する全ガス流量の比(GHSV)は351h−1であった。なお、ガスの供給速度を表す(ml/分)は、特別に断らない限り、0℃、1atm(101.325kPa)の換算値である。 反応開始後、触媒層の温度を650℃±8℃に維持し、反応開始から60分経過した時点で、反応器出口ガスをガスタイトシリンジにて採取し、FID検出器を有するガスクロマトグラフィーにて分析し、さらに、反応器出口ガスをサンプリングループに充填後、TCD検出器を有するガスクロマトグラフィーにてオンライン分析することにより、各生成物を定量した。次いで、反応管出口に接続したSUS製のトラップをエタノール/ドライアイス浴で冷却し、アセトン及び高沸点成分を凝縮させて回収した後、得られた凝縮液をFID検出器を有するガスクロマトグラフィーにて分析し、アセトン及び高沸点成分を定量した。結果を表2に示した。 ここで、アセトンの転化率(%)は、以下の式(i)を用いて算出した。 アセトンの転化率(%)=[b/(a+b)]×100 (i) a:反応器出口ガスにおけるアセトン流量(mol/h) b:反応管出口ガスにおける全生成物の合計生成速度(mol/h) また、各生成物の選択率(%)は、以下の式(ii)を用いて算出した。 各生成物の選択率(%)=〔反応器出口ガスにおける各生成物の生成速度(mol/h)÷反応器出口ガスにおける全生成物の合計生成速度(mol/h)〕×100 (ii) ここで、生成物とは、プロピン、プロパジエン、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、プロパン、イソブチレン、2−メチル−1−ペンテン−3−イン、2−ヘキセン−4−イン、4−メチル−3−ペンテン−2−オン、4−メチル−4−ペンテン−2−オン、2−メチルフラン、メチルシクロペンタジエン、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、フェノール、メチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、一酸化炭素及び二酸化炭素をいう。A:脱水反応工程B:プロピン・プロパジエン分離工程C:プロピン精製工程D:アセトン循環工程E:異性化反応工程F:カルボニル化反応工程G:メタクリル酸エステル精製工程H:アルコール循環工程 下記の工程を含むメタクリル酸エステルの製造方法。 脱水反応工程:脱水反応触媒の存在下にアセトンを脱水反応させてプロピン、プロパジエン及び水を含む反応混合物を得る工程 プロピン・プロパジエン分離工程:前記脱水反応工程で得られた反応混合物から、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を分離する工程 プロピン精製工程:前記プロピン・プロパジエン分離工程で分離されたプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を、プロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物と、プロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物とに分離する工程 カルボニル化反応工程:前記プロピン精製工程で得られたプロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物を、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む触媒の存在下、一酸化炭素及び炭素数1〜3のアルコールと接触させてメタクリル酸エステルを得る工程 前記脱水反応触媒が、ケイ素と、第1族金属元素及び第2族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含有する触媒である請求項1に記載の製造方法。 前記脱水反応工程における反応混合物がさらに未反応のアセトンを含み、前記プロピン・プロパジエン分離工程において、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を分離することにより、未反応のアセトンを含む混合物を得る請求項1又は2に記載の製造方法。 下記の工程をさらに含む請求項3に記載の製造方法。 アセトン循環工程:前記プロピン・プロパジエン分離工程で得られた未反応のアセトンを含む混合物に含まれるアセトンの少なくとも一部を前記脱水反応工程に供給する工程 下記の工程をさらに含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。 異性化反応工程:前記プロピン精製工程で得られたプロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物を、異性化触媒の存在下に異性化させ、プロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を得る工程 下記の工程をさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。 メタクリル酸エステル精製工程:前記カルボニル化反応工程で得られたメタクリル酸エステル、未反応のプロピン及び未反応の炭素数1〜3のアルコールを含む反応混合物から、プロピン及び炭素数1〜3のアルコールを回収すると共に、メタクリル酸エステルを精製する工程 下記の工程をさらに含む請求項6に記載の製造方法。 アルコール循環工程:前記メタクリル酸エステル精製工程で得られた炭素数1〜3のアルコールの少なくとも一部を前記カルボニル化反応工程に供給する工程 【課題】立地的な制約を受け難く、経済的、工業的に有利なメタクリル酸エステルの製造方法を提供する。【解決手段】本発明のメタクリル酸エステルの製造方法は、脱水反応触媒の存在下にアセトンを脱水反応させて反応混合物を得る脱水反応工程、得られた反応混合物からプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を分離するプロピン・プロパジエン分離工程、分離されたプロピン及びプロパジエンを主成分とする混合物を、プロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物と、プロパジエンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物とに分離するプロピン精製工程、及び得られたプロピンを主成分とする液体、ガス又は気液混合物を、第8族金属元素、第9族金属元素及び第10族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む触媒の存在下、一酸化炭素及び炭素数1〜3のアルコールと接触させてメタクリル酸エステルを得るカルボニル化反応工程を含む。【選択図】図1