タイトル: | 公開特許公報(A)_レミフェンタニル注射液剤 |
出願番号: | 2013050906 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 31/4468,A61P 23/00,A61P 25/04,A61P 43/00,A61K 9/08,A61K 47/04,A61K 47/10,A61K 47/34 |
堀内 愛子 鈴木 茂 JP 2014177413 公開特許公報(A) 20140925 2013050906 20130313 レミフェンタニル注射液剤 テルモ株式会社 000109543 辻 良子 100093377 辻 邦夫 100108235 堀内 愛子 鈴木 茂 A61K 31/4468 20060101AFI20140829BHJP A61P 23/00 20060101ALI20140829BHJP A61P 25/04 20060101ALI20140829BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140829BHJP A61K 9/08 20060101ALI20140829BHJP A61K 47/04 20060101ALI20140829BHJP A61K 47/10 20060101ALI20140829BHJP A61K 47/34 20060101ALI20140829BHJP JPA61K31/4468A61P23/00A61P25/04A61P43/00 111A61K9/08A61K47/04A61K47/10A61K47/34 7 OL 16 4C076 4C086 4C076AA12 4C076BB11 4C076CC01 4C076DD21 4C076DD37 4C076EE23Q 4C076FF63 4C076GG45 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC21 4C086MA02 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA17 4C086MA66 4C086NA03 4C086ZA03 4C086ZA08 4C086ZA21 4C086ZC41 本発明は、レミフェンタニル注射液剤に関する。より詳細には、本発明は、長期間保存してもレミフェンタニルが液中に安定に存在する保存安定性に優れるレミフェンタニル注射液剤に関する。 オピオイド鎮痛薬は、強力な鎮痛作用を有し、手術侵襲による循環動態のストレス反応を安定化させることから、手術の鎮静、鎮痛、筋弛緩という麻酔の要素を満たすだけでなく、手術中のストレスを最小限にとどめて手術侵襲による血圧上昇や頻脈などの循環動態などのストレス反応を最小限に抑えて、患者に痛みのない、安らかな術後を約束するという点で全身麻酔などを行う際の鎮痛剤として適している。 麻酔時に用いるオピオイド鎮痛薬としては、従来、数十年の歴史を持つフェンタニルが用いられ、また欧米などではフェンタニルの次世代品としてスフェンタニルやアルフェンタニルなどが認可されて用いられていた。そのような状況下において、レミフェンタニルが日本では2006年10月に承認され、2007年1月から販売されるに至り、現在では全身麻酔時用のオピオイド鎮痛薬としては主にレミフェンタニルが用いられている。 レミフェンタニルは、選択的なμオピオイド受容体アゴニストである点でフェンタニルと共通しているが、フェンタニルは肝臓で活性代謝物および非活性代謝物に代謝されてその約10%だけが腎臓より排出されるため、持続投与すると体内に蓄積され、投与終了後にもその作用が残存して、遅発性呼吸抑制、覚醒遅延、悪心、嘔吐などの症状がみられるのに対して、レミフェンタニルは、血中および生体組織内の非特異的エステラーゼによって速やかに加水分解されて非活性代謝物となって腎臓より排泄されるため、鎮痛作用の発現と消失が速やかで、しかも体内での蓄積性がないので、侵襲刺激に応じた鎮痛のコントロールが容易であり、腎機能や肝機能に障害のある患者に対しても容量の調節を行うことなく使用でき、かかる点から全身麻酔の導入および維持における鎮痛用の剤として現在、吸入麻酔薬や静脈麻酔薬と併用されている(非特許文献1および2を参照)。 レミフェンタニルは水によく溶けるが、レミフェンタニルの水溶液は不安定で長期間保存できないため、現在、凍結乾燥したレミフェンタニル粉末をバイアル瓶などの容器に収容して流通・販売されている。 麻酔の際には、レミフェンタニルは注射液の形態にして静脈注射によって患者に投与される。レミフェンタニル凍結乾燥製剤を収容したバイアル瓶などの容器に多量の水や水性溶液を添加してそのまま注射液にすると、容器の内圧上昇などによる容器からのレミフェンタニル溶液の漏出の恐れがある。レミフェンタニルは麻薬指定を受けているため、レミフェンタニル溶液から容器から漏出した場合には煩雑な事後処置を行う必要がある。そのため、レミフェンタニル凍結乾燥製剤を注射液にして投与するに当たっては、レミフェンタニル凍結乾燥製剤を収容しているバイアル瓶などの容器に少量の溶解液(水、生理食塩水、5%ブドウ糖注射液など)を注入して溶解した後、それを希釈液(生理食塩水、5%ブドウ糖注射液など)と混合して最終的な注射液とし、これを麻酔時に患者に投与するという方法が採られている(非特許文献1の第1655頁左欄などを参照)。 レミフェンタニルを少量の溶解液で溶解した後に、希釈液で希釈するという2段の工程によるレミフェンタニル注射液の調製は、通常、麻酔科医が投薬のための準備工程として単独で行うことが多いため、作業が煩雑で、しかも最終的な注射液におけるレミフェンタニル濃度の調整不良などの誤薬のリスクがある。 以上の点から、前記した煩雑な2段の調製工程が不要で、医療現場で麻酔科医などがレミフェンタニルを正確な量で含有するレミフェンタニル注射液を簡単な操作や工程で調製することができ、しかも保存安定性に優れるレミフェンタニル注射液剤から求められている。 一方、スフェタニルなどのオピオイドを、ベンジルアルコールや安息香酸ベンジルなどの芳香族系の非水性媒体中に50mg/mL以上の高濃度で溶解させた疼痛を緩和するためのオピオイド高濃度液剤が知られている(特許文献1)。 しかし、特許文献1のオピオイド高濃度液剤は、慢性的な疼痛などに対して、場合によっては数ケ月、更には数年という長期間にわたって持続的に投与するための液剤であって、従来の薬物製剤の容量制限(埋め込みや外付けポンプの使用)および濃度制限(薬物の析出)という課題に対し、高い有効量の薬物が必要な際に、高濃度のまま提供できるものであって、レミフェンタニル注射液における麻酔を伴う手術の際に、手術侵襲による循環動態のストレス反応を安定化させて手術の鎮静、鎮痛、筋弛緩、血圧上昇や頻脈などを抑制するために、吸入麻酔薬や静脈麻酔薬と併用するための液剤ではない。 しかも、特許文献1に記載されているスフェタニルなどのオピオイド液剤で用いられているベンジルアルコールや安息香酸ベンジルなどの芳香族系の非水性媒体は、レミフェンタニルの溶解が不可能であることや、レミフェンタニルの加水分解を促進してしまいレミフェンタニルを安定に保存できないため、麻酔の際に用いるレミフェンタニル注射液では使用することができない。特許第4969009号公報「Anesthesia 21 Century」 Vol.9,No.2−28,p.1652−1665(2007)「鹿児島市医報」第46巻第6号,p.12(2007) 本発明の目的は、バイアル瓶などの容器に収容したレミフェンタニル粉末を少量の溶解液で溶解した後にそれを希釈液と混合して注射液にするという煩雑な2段の調製工程が不要で、レミフェンタニルを正確な量で含有するレミフェンタニル注射液を、医療現場で麻酔科医などが1段の工程で簡単に調製することができ、しかも長期保存安定性に優れるレミフェンタニル注射液剤を提供することである。 本発明者らは上記の目的を達成すべく種々研究を重ねてきた。その結果、レミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩と水またはエタノールを所定の割合で混合すると共に更に安定化剤を混合すると、レミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩が当該所定量の水またはエタノールに良好に溶解し、その状態で安定化剤によって安定化されることによって、室温で長期間保存した後でもレミフェンタニルの変質、分解、析出などが極めて少なくて、レミフェンタニルが高い残存率で液中に溶解している長期保存安定性に優れるレミフェンタニル注射液剤が得られることを見出した。 また、本発明者らは、上記のレミフェンタニル注射液剤では、安定化剤として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどの液状の多価アルコールが有効で、特にポリエチレングリコールが好適であること、当該レミフェンタニル注射液剤における水:安定化剤の含有比率およびエタノール:安定化剤の含有比率を特定の範囲にしておくことが長期安定性により優れるレミフェンタニル注射液剤を得る上で好ましいことを見出した。 さらに、本発明者らは、前記で得られたレミフェンタニル注射液剤において、当該注射液剤中のレミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩の含有量を所定の範囲にしておくことによって、麻酔現場で有効に用い得るレミフェンタニル注射液剤となることを見出した。 さらに、本発明者らは、当該レミフェンタニル注射液剤液を着色剤で着色しておくことによって、レミフェンタニル注射液剤と混合する前のレミフェンタニルを含まない希釈液を誤って注射するという麻酔現場での医療過誤を防止できることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。 すなわち、本発明は、(1) レミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩、水および安定化剤を含有するレミフェンタニル注射液剤であって、レミフェンタニル1mg当たり、水を0.007〜0.025mLの割合で含有することを特徴とするレミフェンタニル注射液剤である。 そして、本発明は、(2) レミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩、エタノールおよび安定化剤を含有するレミフェンタニル注射液剤であって、レミフェンタニル1mg当たり、エタノールを0.10〜0.50mLの割合で含有することを特徴とするレミフェンタニル注射液剤である。 また、本発明は、(3) 安定化剤がポリエチレングリコールである前記(1)または(2)のレミフェンタニル注射液剤;(4) 水:安定化剤の含有比率が、2:23〜2:198の体積比である前記(1)または(3)のレミフェンタニル注射液剤;(5) エタノール:安定化剤の含有比率が、3:2〜3:7の体積比である前記(2)または(3)のレミフェンタニル注射液剤;(6) レミフェンタニル注射液剤におけるレミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩の含有量が、レミフェンタニル注射液剤1mL当たり、レミフェンタニルとして1〜10mgである前記(1)〜(5)のいずれかのレミフェンタニル注射液剤;および、(7) 着色剤を含有する前記(1)〜(6)のいずれかのレミフェンタニル注射液剤;である。 本発明のレミフェンタニル注射液剤は、液剤であるにも拘らず、室温で長期間保存した後でもレミフェンタニルの変質や分解などが極めて少なくて、レミフェンタニルが高い残存率で液中に維持されていて、長期保存安定性に優れている。 本発明のレミフェンタニル注射液剤は、レミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩[以下これらを総称して「レミフェンタニル(塩)」ということがある]が既に溶解されていて液状になっているので、麻酔を行なう医療現場では、粉末状のレミフェンタニル(塩)を少量の溶解液で溶解した後に希釈液で希釈して麻酔時に用いる最終的なレミフェンタニル注射液にするという煩雑な2段の調製工程が不要で、本発明のレミフェンタニル注射液剤の所定量に希釈液を混合するだけで、麻酔時に用いる最終的なレミフェンタニル注射液を簡単に調製することができる。 本発明のレミフェンタニル注射液剤を用いることによって、前記した1段の工程で麻酔時に用いる最終的なレミフェンタニル注射液を調製することができるので、麻酔時に用いるレミフェンタニル注射液におけるレミフェンタニル濃度の調整間違いなどのトラブルを回避することができ、麻酔時に用いる最終的なレミフェンタニル注射液におけるレミフェンタニルの濃度を正確に調節することができる。 また、本発明のレミフェンタニル注射液剤が着色剤を含有するレミフェンタニル注射液剤である場合には、それを希釈液で希釈して得られるレミフェンタニル注射液は色がついていて無色の注射液と目視によって明確に区別できるので、レミフェンタニル注射液剤と混合する前のレミフェンタニルを含まない希釈液を麻酔時に誤って注射するという医療過誤を防止することができる。 以下に、本発明について詳細に説明する。 本発明は、(I)レミフェンタニル(塩)、水および安定化剤を含有するレミフェンタニル注射液剤[以下これを「レミフェンタニル注射液剤(I)」という];および、(II)レミフェンタニル(塩)、エタノールおよび安定化剤を含有するレミフェンタニル注射液剤[以下これを「レミフェンタニル注射液剤(II)]という];を包含する。 本発明のレミフェンタニル注射液剤(I)およびレミフェンタニル注射液剤(II)[以下、両方のレミフェンタニル注射液剤を総称して「レミフェンタニル注射液剤」ということがある]で用いているレミフェンタニルは、メチル4−(メトキシカルボニル)−4−[(1−オキソプロピル)フェニルアミノ]ピペリジン−1−プロパン酸メチルエステルの別称である。 本発明では、レミフェンタニル(塩)として、塩になっていないレミフェンタニル自体およびその生理学的に許容される塩から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。 レミフェンタニルの生理学的に許容される塩としては、例えば、レミフェンタニルの塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、アスパラギン酸塩、グルタル酸塩、ステアリン酸塩、酪酸塩、マロン酸塩、乳酸塩などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。 そのうちでも、本発明では、レミフェンタニル(塩)として、レミフェンタニル、レミフェンタニル塩酸塩などが好ましく用いられ、特にレミフェンタニル塩酸塩が入手容易性の点からより好ましく用いられる。 本発明のレミフェンタニル注射液剤(I)で用いる「水」としては、医薬上で、薬理学的および生理学的に許容されうるものであればいずれでもよく、例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水などを挙げることができる。これらの水の定義は第十六改正日本薬局方に基づく。 レミフェンタニル注射液剤(I)は、レミフェンタニル1mg当たり、水を0.007〜0.025mLの割合で含有することが必要であり、0.007〜0.02mLの割合で含有することが好ましく、0.008〜0.015mlの割合で含有することがより好ましく、0.009〜0.015mLの割合で含有することが特に好ましい。 ここで、本明細書における「レミフェンタニル1mg当たり」とは、「塩の形態でないレミフェンタニル1mg当たり」をいう。 また、レミフェンタニル注射液剤(I)が2種類以上のレミフェンタニル(塩)を含有する場合は、上記した水の含有割合は、レミフェンタニルの全合計1mg当たりの含有割合をいう。 レミフェンタニル1mg当たりの水の含有量が前記範囲であることによって、レミフェンタニル(塩)が水に良好に溶解し、その状態で安定化剤によって安定化されるため、レミフェンタニル注射液剤(I)を室温で長期間保存した後でもレミフェンタニルの変質、分解、析出などを抑制しながら、レミフェンタニルが高い残存率で液中に溶解・維持されて長期保存安定性に優れたものとなる。 レミフェンタニル1mg当たりの水の含有割合が0.007mLよりも少ないと、レミフェンタニル(塩)が水に十分に溶解しなくなり、溶解した場合でも保存時に析出し易くなる。それに対して、レミフェンタニル1mg当たりの水の含有割合が0.007mL以上、特に0.008mL以上、更には0.009mL以上であれば、レミフェンタニル注射液剤が安定性にとって極めて不利な条件におかれた場合であっても析出をより確実に抑制することができる。 一方、レミフェンタニル1mg当たりの水の含有割合が0.025mLよりも多くなると、レミフェンタニル(塩)の溶解性の点では問題はないが、安定化剤を含有していても、レミフェンタニル注射液剤を後述する60℃1週間の苛酷試験(室温1年間に相当)の結果から理解されるとおり、室温で1年間以上の長期保存したときに、レミフェンタニル(塩)の変質や分解などが生じてレミフェンタニルの残存率が90%未満に低下する。特に、レミフェンタニル1mg当たりの水の含有割合が0.02mL以下であれば、レミフェンタニル注射液剤を後述する60℃3週間の苛酷試験(室温3年間に相当)の結果から理解されるとおり、室温で3年間以上にわたって長期保存したときにもレミフェンタニルの残存率が90%以上の高い水準で維持することができる。 ここで、本明細書におけるレミフェンタニル注射液剤(I)でのレミフェンタニル1mg当たりの水の含有割合(mL)は、20℃における水の含有割合(mL)をいう。 また、レミフェンタニル注射液剤(II)は、レミフェンタニル1mg当たり、エタノールを0.10〜0.50mLの割合で含有している必要があり、0.10〜0.35mLの割合で含有することが好ましく、0.12〜0.30mLの割合で含有することがより好ましい。ここで、レミフェンタニル注射液剤(II)が2種類以上のレミフェンタニル(塩)を含有する場合は、上記したエタノールの含有割合は、レミフェンタニルの全合計1mg当たりの含有割合をいう。 レミフェンタニル1mg当たりのエタノールの含有量が前記範囲であることによって、レミフェンタニル(塩)がエタノールに良好に溶解すると共に、レミフェンタニル注射液剤(II)中に含まれる安定化剤によって安定化されて、レミフェンタニル注射液剤(1I)を室温で長期間保存した後でもレミフェンタニルの変質や分解などが極めて少なくて、レミフェンタニルが高い残存率で液中に維持され、長期保存安定性に優れたものとなる。 レミフェンタニル1mg当たりのエタノールの含有割合が0.10mLよりも少ないと、レミフェンタニル(塩)が十分に溶解しなくなり、溶解した場合でも保存時に析出し易くなる。それに対して、レミフェンタニル1mg当たりのエタノールの含有割合が0.10mL以上、特に0.12mL以上、更には0.15mL以上であれば、レミフェンタニル注射液剤が安定性にとって極めて不利な条件におかれた場合であっても析出をより確実に抑制することができる。 一方、レミフェンタニル1mg当たりのエタノールの含有割合が0.50mLよりも多くなると、レミフェンタニル(塩)の溶解性の点では問題はないが、安定化剤を含有していても、レミフェンタニル(塩)を後述する60℃1週間の苛酷試験(室温1年間に相当)の結果から理解されるとおり、室温で1年間以上の長期保存したときに、レミフェンタニル(塩)の変質や分解などが生じてレミフェンタニルの残存率が90%未満に低下する。特に、レミフェンタニル1mg当たりのエタノールの含有割合が0.3mL以下であれば、レミフェンタニル注射液剤を後述する60℃3週間の苛酷試験(室温3年間に相当)の結果から理解されるとおり、室温で3年間以上にわたって長期保存したときにもレミフェンタニルの残存率が90%以上の高い水準で維持することができる。 ここで、本明細書におけるレミフェンタニル注射液剤(II)でのレミフェンタニル1mg当たりのエタノールの含有割合(mL)は、20℃におけるエタノールの含有割合(mL)をいう。 本発明のレミフェンタニル注射液剤で用いる安定化剤は、レミフェンタニル(塩)を水中またはエタノール中に安定に溶解させるための剤である。安定化剤としては、生理学的に許容される液状の多価アルコールが好ましく用いられ、具体例として、液状のポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどを挙げることができ、そのうちでも分子量が約200〜600ダルトンの液状のポリエチレングリコールがより好ましく用いられる。 本発明でより好ましく用いられる分子量が200〜600ダルトンの範囲にある液状のポリエチレングリコールとしては、マクロゴール400、マクロゴール200などを挙げることができる。 本発明のレミフェンタニル注射液剤(I)では、水:安定化剤の含有比率は、2:23〜2:198の体積比であることが好ましく、2:23〜2:98の体積比であることがより好ましく、2:48〜2:98の体積比であることが更に好ましい。 また、本発明のレミフェンタニル注射液剤(II)では、エタノール:安定化剤の含有比率は、3:2〜3:7の体積比であることが好ましい。 レミフェンタニル注射液剤(I)における水:安定化剤の体積比、およびレミフェンタニル注射液剤(II)におけるエタノール:安定化剤の体積比が前記した範囲であると、レミフェンタニル注射液剤(I)およびレミフェンタニル注射液剤(II)における安定化剤量が十分となり、レミフェンタニル注射液剤の保存中に水またはエタノールの蒸散が抑制されて、レミフェンタニル注射液剤の長期保存安定性が確保される。 ここで、本明細書におけるレミフェンタニル注射液剤(I)での水:安定化剤の含有比率(体積比)、およびレミフェンタニル注射液剤(II)でのエタノール:安定化剤の含有比率(体積比)は、いずれも、20℃における含有比率(体積比)をいう。 レミフェンタニル注射液剤(I)における水:安定化剤の含有比率が前記した範囲から外れて安定化剤の含有比率が少なすぎると、レミフェンタニル(塩)が水中に安定に溶解したレミフェンタニル注射液剤が得られにくくなり、一方安定化剤の含有比率が多くなりすぎると、浸透圧が高くなり易い。 また、レミフェンタニル注射液剤(II)におけるエタノール:安定化剤の含有比率が前記した範囲から外れて安定化剤の含有比率が少なすぎると、レミフェンタニル(塩)がエタノール中に安定に溶解したレミフェンタニル注射液剤が得られにくくなり、一方安定化剤の含有比率が多くなりすぎると、浸透圧が高くなり易い。 本発明のレミフェンタニル注射液剤[レミフェンタニル注射液剤(I)およびレミフェンタニル注射液剤(II)]は、レミフェンタニル(塩)を、レミフェンタニル注射液剤1mL当たり、レミフェンタニルとして1〜10mgの割合で含有していることが好ましく、2〜5mgの割合で含有していることがより好ましい。 レミフェンタニル注射液剤1mL当たりのレミフェンタニル(塩)の含有量が前記範囲内の所定の量(例えば、1容器当たり、1mg、2mg、5mgなど)であると、バイアル、アンプル、プレフィルドシリンジなどの容器からそのままレミフェンタニル注射液剤の全量を取り出してそれを所定量の希釈液と混合することで、麻酔時にそのまま使用可能な所定のレミフェンタニル濃度のレミフェンタニル注射液を簡単に調製することができる。 レミフェンタニル(塩)は麻薬なので、金庫保管が義務つけられており、レミフェンタニル注射液剤中のレミフェンタニル(塩)の含有量が前記した範囲よりも少ない、濃度のより低いレミフェンタニル注射液希釈液では、所定の量のレミフェンタニル注射液剤を保管するためにより広い保管スペース(大きな金庫や複数の金庫)が必要になり、医療機関などにとって不経済であり、かかる点からも、レミフェンタニル注射液剤中のレミフェンタニル(塩)の含有量を前記した範囲にしておくことが望ましい。 本発明のレミフェンタニル注射液剤は、着色剤を含有してもまたは含有しなくてもいずれでもよい。着色剤を含有すると、本発明のレミフェンタニル注射液剤に希釈液を混合して得られる麻酔時用のレミフェンタニル注射液(最終的な注射液)も着色した状態となるため、当該最終的なレミフェンタニル注射液中にレミフェンタニル(塩)が含まれていることを目視によって確認できると共に無色の希釈液と区別することができ、レミフェンタニル注射液剤を含まない希釈液を誤って患者に注射してしまうという医療過誤を防止することができる。 本発明のレミフェンタニル注射液剤を着色剤で着色する際の着色剤としては、シアノコバラミン、インドシアニングリーンまたはインジゴカルミンなどを挙げることができる。 これらの着色剤は、いずれも、レミフェンタニル注射液剤に含有させても、レミフェンタニル(塩)の分解、劣化などの品質低下を招かず、またレミフェンタニル注射液剤の麻酔・鎮痛薬としての機能の低下や保存安定性の低下を生じない。 そのうちでも、シアノコバラミンがより好ましく用いられる。その理由としては、インドシアニングリーンおよびインジゴカルミンは、液状のレミフェンタニル注射液剤中に含有させたときに、保存中に退色したり変色して当初の色調を維持できないことがあるが、シアノコバラミンは液状のレミフェンタニル注射液剤中に含有させても、長期保存後でも退色や変色が生じず、当初の色調を維持できること、シアノコバラミンを含有するレミフェンタニル注射液剤を希釈液で希釈して調製した麻酔用のレミフェンタニル注射液は、パルスオキシメーターの測定波長である660nmに吸収がないため、麻酔用のレミフェンタニル注射液がシアノコバラミンを含有していても、麻酔時にパルスオキシメータが正常に作動することなどが挙げられる。 レミフェンタニル注射液剤に着色剤を含有させる場合は、着色剤の含有量は、着色剤の種類に応じて異なり得るが、一般的にはレミフェンタニル1mg当たり、0.02〜1.5mg程度であることが好ましい。 本発明のレミフェンタニル注射液剤は、レミフェンタニル(塩)、水および安定化剤のみを含有していてもよいし、レミフェンタニル(塩)、水、安定化剤および着色剤のみを含有していてもよいし、レミフェンタニル(塩)、エタノールおよび安定化剤のみを含有していてもよいし、レミフェンタニル(塩)、エタノール、安定化剤および着色剤のみ含有していてもよいし、或いはレミフェンタニル注射液剤の溶解安定性や保存安定性などを低下させない範囲で、場合により更に他の成分(例えば、グリシンなど)を含有していてもよい。 本発明のレミフェンタニル注射液剤は、バイアル、アンプル、シリンジなどの容器に収容して、保存、流通、販売することができる。その際の容器の材質は特に制限されず、例えば、ガラス、プラスチックやゴム(エラストマー)などの有機重合体、これらの複合材などのいずれから形成されていてもよい。有機重合体製容器を用いる場合は、ポリプロピレン、環状オレフィン系重合体、ゴム(エラストマー)などからなる容器を用いることができる。 レミフェンタニル注射液剤を収容する容器の大きさは特に制限されず、適宜の大きさにすることができ、例えば、0.2〜20mL容とすることができる。 また、容器へのレミフェンタニル注射液剤の収容量も特に制限されず、適宜の収容量とすることができ、例えば、1容器当たりのレミフェンタニル(塩)の量が、レミフェンタニルとして1〜10mg、特に2mg、5mgとなるようにして各容器にレミフェンタニル注射液剤を収容すればよい。 また、本発明のレミフェンタニル注射液剤を収容した容器と希釈液を収容した容器を組み合わせてキット製剤としてもよい。かかるキット製剤において、希釈液としては、生理食塩水、5%ブドウ糖液などを用いることができる。 このキット製剤を用いることによって、麻酔医などの医療従事者は、レミフェンタニル注射液剤の他に希釈液を別途準備または調達するという手間が不要になり、キット製剤におけるレミフェンタニル注射液剤をキット製剤における希釈液で希釈するだけで、麻酔用のレミフェンタニル注射液を簡単に調製することができる。 本発明のレミフェンタニル注射液剤の製造方法は特に制限されず、レミフェンタニル(塩)と水と安定化剤が均一に混合して溶解したレミフェンタニル注射液剤(I)、レミフェンタニル(塩)とエタノールと安定化剤が均一に混合して溶解したレミフェンタニル注射液剤(II)、また場合により前記した成分と共に更に着色剤などが均一に混合して溶解したレミフェンタニル注射液剤を製造できるいずれの方法を用いてもよい。 限定されるものではないが、例えば、10〜80℃、特に20〜50℃の温度で、レミフェンタニル(塩)と水と安定化剤と場合により着色剤やその他の成分を混合するか、レミフェンタニル(塩)とエタノールと安定化剤と、場合により着色剤やその他の成分を混合して、レミフェンタニル(塩)が均一に溶解した液をつくり、これを無菌濾過した後、容器に所定の量で充填し、高圧蒸気滅菌することによってレミフェンタニル注射液剤を得ることができる。その際の無菌濾過および高圧蒸気滅菌は注射液剤の製造に当たって従来から採用されているのと同様の方法で行なうことができる。 本発明のレミフェンタニル注射液剤を用いて麻酔時用の最終的なレミフェンタニル注射液を調製するに当たっては、容器に収容されているレミフェンタニル注射液剤の全量または所定の量を適当な手段(例えば、注射器、スポイト、注射器と接続可能な容器など)を使用して容器から取り出し、それを所定量の希釈液(例えば、生理食塩水、5%ブドウ糖注射液など)と混合して希釈することによって、レミフェンタニル(塩)を所定の正確な濃度で含有する麻酔時用のレミフェンタニル注射液を容易に得ることができる。 以下に実施例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例によって何ら限定されない。《実施例1》(1) レミフェンタニル塩酸塩(ヤンセンファーマ株式会社製「アルチバ」)2.20mg(レミフェンタニルとして2.00mg)、マクロゴール400(ポリエチレングリコール400)(安定化剤)1.10g(0.98mL;比重1.12g/mL)および水0.02mLを20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgのレミフェンタニル溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製した。(2) 上記(1)で得られたレミフェンタニル溶液を無菌ろ過した後、1mL容量の容器(ガスケットがブチルゴム製、シリンジ本体が環状ポリオレフィン製のシリンジ)に1mLずつ充填し、高圧蒸気滅菌して、レミフェンタニル注射液を充填したプレフィルドシリンジ製剤(レミフェンタニル注射液剤)を製造した。《実施例2》(1) 実施例1で使用したのと同じ、レミフェンタニル塩酸塩2.20mg(レミフェンタニルとして2.00mg)、マクロゴール400(安定化剤)1.08g(0.96mL)および水0.04mLを20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgのレミフェンタニル溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製した。(2) 上記(1)で得られたレミフェンタニル溶液を無菌ろ過した後、実施例1で用いたのと同じ1mL容量の容器に1mLずつ充填し、高圧蒸気滅菌して、レミフェンタニル注射液を充填したプレフィルドシリンジ製剤(レミフェンタニル注射液剤)を製造した。《実施例3》(1) 実施例1で使用したのと同じ、レミフェンタニル塩酸塩2.20mg(レミフェンタニルとして2.00mg)、マクロゴール400(安定化剤)1.06g(0.95mL)および水0.05mLを20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgのレミフェンタニル溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製した。(2) 上記(1)で得られたレミフェンタニル溶液を無菌ろ過した後、実施例1で用いたのと同じ1mL容量の容器に1mLずつ充填し、高圧蒸気滅菌して、レミフェンタニル注射液を充填したプレフィルドシリンジ製剤(レミフェンタニル注射液剤)を製造した。《比較例1》(1) 実施例1で使用したのと同じ、レミフェンタニル塩酸塩2.20mg(レミフェンタニルとして2.00mg)、マクロゴール400(安定化剤)1.01g(0.90mL)および水0.10mLを20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgのレミフェンタニル溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製した。(2) 上記(1)で得られたレミフェンタニル溶液を無菌ろ過した後、実施例1で用いたのと同じ1mL容量の容器に1mLずつ充填し、高圧蒸気滅菌して、レミフェンタニル注射液を充填したプレフィルドシリンジ製剤(レミフェンタニル注射液剤)を製造した。《比較例2》 実施例1で使用したのと同じ、レミフェンタニル塩酸塩2.20mg(レミフェンタニルとして2.0mg)、マクロゴール400(安定化剤)1.11g(0.99mL)および水0.01mLを20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgのレミフェンタニル溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製しようとしたが、レミフェンタニル塩が完全に溶解せずに一部が固体状で液中に残留し、レミフェンタニル注射液剤を調製することができなかった。《安定性試験1》 上記の実施例1〜3および比較例1で得られたそれぞれのレミフェンタニル注射液剤を60℃で1週間および3週間保存し、以下の方法にしたがって試験開始時、1週間経過後および3週間経過後の各時点で液中のレミフェンタニルの定量を行い、試験開始時を100%として、1週間経過後および3週間経過後の残存率(%)を求めた。なお、各実施例および比較例につき、それぞれ3つの試料を用いて同じ試験を行って(n=3)、3つ平均値を採って残存率(%)とした。 その結果を、以下の表1に示す。[定量法](1) 実施例1〜3および比較例1で得られた各レミフェンタニル注射液剤の1mLを正確に量り、水を加えて正確に10mLとした後、この液の4mLを正確に量り採り、それに内標準溶液[パラオキシ安息香酸メチルの移動相液(1→40000)]8mLを正確に加え、さらに移動相[リン酸系緩衝液(pH2.5):アセトニトリル=78:22(容積比)の混合液]を加えて20mLとし、試料溶液とした。(2) 別にレミフェンタニル塩酸塩約20mgを精密に秤量した後、移動相[リン酸系緩衝液(pH2.5):アセトニトリル=78:22(容積比)の混合液]を加えて正確に100mLとし、この液の4mLを正確に量り採り、内標準溶液8mLを正確に加え、さらに移動相[リン酸系緩衝液(pH2.5):アセトニトリル=78:22(容積比)の混合液]を加えて20mLとし、標準溶液とした。(3) 上記(1)で調製した試料溶液10μLおよび上記(2)で調製した標準溶液10μLを用いて、以下の条件で液体クロマトグラフ法により測定を行った。 それぞれの液の各々のピーク面積を自動積分法により測定し、内標準物質[パラオキシ安息香酸メチルの移動相液(1→40000)]のピーク面積に対するレミフェンタニルのピーク面積の比からレミフェンタニルの量を求めた。<測定条件> ・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210nm) ・カラム:内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したもの ・カラム温度:40℃付近の一定温度 ・移動相:リン酸二水素アンモニウム2.9gを水1000mLに溶かし、リン酸を加えてpHを約2.5に調整し、この液780mLにアセトニトリル220mLを加えたもの ・内標準溶液:パラオキシ安息香酸メチルの移動相溶液(1→40000) ・流量:レミフェンタニルのピークの保持時間が約10分になるように調整 上記の表1にみるように、実施例1〜3のレミフェンタニル注射液剤は、レミフェンタニル1mg当たり水を0.007〜0.025mLの範囲で含有すると共に安定化剤を含有していることによって、レミフェンタニル(塩)の析出がなくてレミフェンタニル(塩)が液中に良好に溶解して液状をなし、しかも室温1年間に相当する60℃で1週間保存後もレミフェンタニルの残存率が95%以上と高く、長期保存安定性に優れている。特に、実施例1および2のレミフェンタニル注射液剤は、レミフェンタニル1mg当たり、水を0.01〜0.02mLの範囲で含有するとともに安定化剤を含有していることによって、室温3年間に相当する60℃3週間保存後も、レミフェンタニルの残存率が90%以上と高く、長期保存安定性に極めて優れたものとなっている。 それに対して、比較例1のレミフェンタニル注射液剤は、レミフェンタニル1mg当たり水の含有量が本発明における上限値の0.025mLを超えていることにより、60℃で1週間保存後のレミフェンタニルの残存率が85%未満と低くて、長期保存安定性に劣っている。 また、比較例2では、レミフェンタニル1mg当たり水の含有量が本発明における下限値の0.07mLよりも少ないために、レミフェンタニル(塩)が液中に完全に溶解せずに一部が析出してしまい、レミフェンタニル注射液剤を製造することができなかった。《実施例4》(1) 実施例1で使用したのと同じ、レミフェンタニル塩酸塩2.20mg(レミフェンタニルとして2.00mg)、マクロゴール400(安定化剤)0.78g(0.70mL)および無水エタノール0.24g(0.30mL;比重0.79)を20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgのレミフェンタニル溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製した。(2) 上記(1)で得られたレミフェンタニル溶液を無菌ろ過した後、実施例1で用いたのと同じ1mL容量の容器に1mLずつ充填し、高圧蒸気滅菌して、レミフェンタニル注射液を充填したプレフィルドシリンジ製剤(レミフェンタニル注射液剤)を製造した。《実施例5》(1) 実施例1で使用したのと同じ、レミフェンタニル塩酸塩2.20mg(レミフェンタニルとして2.00mg)、マクロゴール400(安定化剤)0.45g(0.40mL)および無水エタノール0.47g(0.60mL;比重0.79)を20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgのレミフェンタニル溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製した。(2) 上記(1)で得られたレミフェンタニル溶液を無菌ろ過した後、実施例1で用いたのと同じ1mL容量の容器に1mLずつ充填し、高圧蒸気滅菌して、レミフェンタニル注射液を充填したプレフィルドシリンジ製剤(レミフェンタニル注射液剤)を製造した。《比較例3》(1) 実施例1で使用したのと同じ、レミフェンタニル塩酸塩2.20mg(レミフェンタニルとして2.00mg)および無水エタノール0.79g(1.00mL;比重0.79)を20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgレミフェンタニルの溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製した。(2) 上記(1)で得られたレミフェンタニル溶液を無菌ろ過した後、実施例1で用いたのと同じ1mL容量の容器に1mLずつ充填し、高圧蒸気滅菌して、レミフェンタニル注射液を充填したプレフィルドシリンジ製剤(レミフェンタニル注射液剤)を製造した。《比較例4》 実施例1で使用したのと同じ、レミフェンタニル塩酸塩2.20mg(レミフェンタニルとして2.00mg)、マクロゴール400(安定化剤)0.94g(0.84mL)および無水エタノール0.13g(0.16mL;比重0.79)を20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgの溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製しようとしたが、レミフェンタニル塩が完全に溶解せずに一部が固体状で液中に残留し、レミフェンタニルの注射液剤を調製することができなかった。《安定性試験2》 上記の実施例4〜5および比較例3で得られた各レミフェンタニル注射液製剤を60℃で1週間および3週間保存し、実施例1で採用したのと同じ方法で試験開始時、1週間経過後および3週間経過後の各時点で液中のレミフェンタニルの定量を行い、試験開始時を100%として、1週間経過後および3週間経過後の残存率(%)を求めた。なお、各実施例および比較例につき、それぞれ3つの試料を用いて同じ試験を行い(n=3)、3つ平均値を採って残存率(%)として。 その結果を、以下の表2に示す。 上記の表2にみるように、実施例4および5のレミフェンタニル注射液剤は、レミフェンタニル1mg当たりエタノールを0.10〜0.50mLの範囲で含有すると共に安定化剤を含有していることによって、レミフェンタニル(塩)の析出がなくてレミフェンタニル(塩)が液中に良好に溶解して液状をなし、しかも室温1年間に相当する60℃で1週間保存後もレミフェンタニルの残存率が96%以上と高く、長期保存安定性に優れている。しかも、実施例4および5のレミフェンタニル注射液剤は、レミフェンタニル1mg当たりエタノールを0.10〜0.50mLの範囲で含有するとともに安定化剤を含有していることによって、室温3年間に相当する60℃で3週間保存後も、レミフェンタニルの残存率が90%と高く、長期保存安定性に極めて優れたものとなっている。 一方、比較例3のレミフェンタニル注射液剤は、レミフェンタニル1mg当たりエタノールを0.10〜0.50mLの範囲で含有するが、安定化剤を含有していないために、室温1年間に相当する60℃で1週間保存後にレミフェンタニルの残存率が90%よりも低くなっており、しかも室温3年間に相当する60℃で3週間保存後にレミフェンタニルの残存率が85%台まで低下している。 また、比較例4では、レミフェンタニル1mg当たりエタノールの含有量が本発明における下限値の0.10mLよりも少ないために、レミフェンタニル(塩)が液中に完全に溶解せずに一部が析出してしまい、レミフェンタニル注射液剤を製造することができなかった。《実施例6》(1) 実施例1で使用したのと同じ、レミフェンタニル塩酸塩2.20mg(レミフェンタニルとして2.00mg)、プロプレングリコール(安定化剤)1.02g(0.98mL;比重1.04g/mL)および水0.02mLを20℃で混合して、溶液1mL当たりのレミフェンタニルの含有量が2mgのレミフェンタニル溶液(レミフェンタニル濃度=2mg/mL)を調製した。(2) 上記(1)で得られたレミフェンタニル溶液を無菌ろ過した後、実施例1で用いたのと同じ1mL容量の容器に1mLずつ充填し、高圧蒸気滅菌して、レミフェンタニル注射液を充填したプレフィルドシリンジ製剤(レミフェンタニル注射液剤)を製造した。(3) 上記(2)で得られたレミフェンタニル注射液製剤を60℃で1週間保存し、実施例1で採用したのと同じ方法で試験開始時および1週間経過後の各時点で液中のレミフェンタニルの定量を行い、試験開始時を100%として、1週間経過後のレミフェンタニルの残存率(%)を求めたところ、室温1年間に相当する60℃で1週間経過後のレミフェンタニルの残存率は93.5%であった。《実施例7》 実施例1の(1)において、レミフェンタニルの溶液を調製する際に、着色剤としてシアノコバラミン0.2mgを更に配合した以外は実施例1の(1)および(2)におけるのと同じ操作を行って、赤色に着色したレミフェンタニル注射液剤を製造した。 これにより得られたレミフェンタニル注射液剤を60℃で3週間保存して注射液剤中のレミフェンタニルの残存率を上記した方法で測定したところ、95%以上の高い残存率を有しており、また60℃で3週間保存後も退色および変色がなく、当初の良好な色調を維持していた。 本発明のレミフェンタニル注射液剤は、液剤であるにも拘らず、室温で長期間保存した後でもレミフェンタニルの変質や分解などが極めて少なくて、レミフェンタニルが高い残存率で液中に維持されていて、長期保存安定性に優れており、本発明のレミフェンタニル注射液剤を用いることによって、麻酔を行なう医療現場では、粉末状のレミフェンタニル(塩)を少量の溶解液で溶解した後に希釈液で希釈して麻酔時に用いる最終的なレミフェンタニル注射液にするという煩雑な2段の調製工程が不要で、本発明のレミフェンタニル注射液剤の所定量に希釈液を混合するだけで、麻酔時に用いる最終的なレミフェンタニル注射液を簡単に調製することができるので、麻酔時の鎮痛剤として極めて有用である。 レミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩、水および安定化剤を含有するレミフェンタニル注射液剤であって、レミフェンタニル1mg当たり、水を0.007〜0.025mLの割合で含有することを特徴とするレミフェンタニル注射液剤。 レミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩、エタノールおよび安定化剤を含有するレミフェンタニル注射液剤であって、レミフェンタニル1mg当たり、エタノールを0.10〜0.50mLの割合で含有することを特徴とするレミフェンタニル注射液剤。 安定化剤がポリエチレングリコールである請求項1または2に記載のレミフェンタニル注射液剤。 水:安定化剤の含有比率が、2:23〜2:198の体積比である請求項1または3に記載のレミフェンタニル注射液剤。 エタノール:安定化剤の含有比率が、3:2〜3:7の体積比である請求項2または3に記載のレミフェンタニル注射液剤。 レミフェンタニル注射液剤におけるレミフェンタニルおよび/またはその生理学的に許容される塩の含有量が、レミフェンタニル注射液剤1mL当たり、レミフェンタニルとして1〜10mgである請求項1〜5のいずれか1項に記載のレミフェンタニル注射液剤。 着色剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のレミフェンタニル注射液剤。 【課題】 長期間保存してもレミフェンタニルが液中に安定に存在する保存安定性に優れる、医療現場で簡便に用いることのできるレミフェンタニル注射液剤の提供。【解決手段】 レミフェンタニル(塩)、水及び安定化剤を含有するレミフェンタニル注射液剤であって、レミフェンタニル1mg当たり、水を0.007〜0.025mLの割合で含有するレミフェンタニル注射液剤、並びにレミフェンタニル(塩)、エタノール及び安定化剤を含有するレミフェンタニル注射液剤であって、レミフェンタニル1mg当たり、エタノールを0.10〜0.50mLの割合で含有するレミフェンタニル注射液剤によって上記の課題が解決される。【選択図】 なし