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タイトル:公開特許公報(A)_パラジウム水酸化物担持固体触媒及びその製造方法、並びに縮合環化合物の製造方法
出願番号:2013043401
年次:2013
IPC分類:B01J 23/44,B01J 37/02,B01J 37/08,B01J 23/63,C07D 209/86


特許情報キャッシュ

石田 玉青 角田 亮介 張 振中 濱崎 昭行 徳永 信 JP 2013212499 公開特許公報(A) 20131017 2013043401 20130305 パラジウム水酸化物担持固体触媒及びその製造方法、並びに縮合環化合物の製造方法 国立大学法人九州大学 504145342 加藤 久 100099508 久保山 隆 100093285 石田 玉青 角田 亮介 張 振中 濱崎 昭行 徳永 信 JP 2012050706 20120307 B01J 23/44 20060101AFI20130920BHJP B01J 37/02 20060101ALI20130920BHJP B01J 37/08 20060101ALI20130920BHJP B01J 23/63 20060101ALI20130920BHJP C07D 209/86 20060101ALI20130920BHJP JPB01J23/44 ZB01J37/02 101CB01J37/02 101EB01J37/08B01J23/56 301ZC07D209/86 16 OL 21 (出願人による申告)平成24年度、文部科学省、戦略的創造研究推進事業(先端的低炭素化技術開発(ALCA))、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 4C204 4G169 4C204AB02 4C204BB04 4C204CB25 4C204DB01 4C204EB01 4C204FB01 4C204GB01 4G169AA03 4G169AA08 4G169AA09 4G169BA01B 4G169BA04A 4G169BA04B 4G169BA05A 4G169BA05B 4G169BA08B 4G169BA47C 4G169BB04A 4G169BB04B 4G169BB05A 4G169BB05B 4G169BB08C 4G169BC43B 4G169BC72A 4G169BC72B 4G169BC72C 4G169BD12C 4G169CB35 4G169CB38 4G169CB67 4G169DA08 4G169FA01 4G169FA02 4G169FB06 4G169FB14 4G169FB18 4G169FB20 4G169FB27 4G169FB57 4G169FC02 4G169FC07 4G169FC08 4G169FC10 本発明は、パラジウム水酸化物担持固体触媒及びその製造方法、並びに縮合環化合物の製造方法に関する。より詳しくは、縮合環化合物の製造に適したパラジウム水酸化物担持固体触媒及びその製造方法、並びに該固体触媒を用いた、カルバゾール及びジベンゾフランなどの縮合環化合物の製造方法に関するものである。 カルバゾールやジベンゾフランは、顔料や有機電子材料の中間化合物として工業的に重要な化合物である。 カルバゾールやジベンゾフランはコールタールにわずかに含まれており、従来、これらはコールタールを蒸留して沸点300〜400℃の留分を分離することによって製造されている。しかしながら、カルバゾールやジベンゾフランは、コールタール中に0.1〜1%程度しか含まれておらず、このような低濃度の目的物を蒸留精製により製造する方法は収率が極めて低く、経済的とはいえなかった。そのため、より収率が高く経済的なカルバゾールやジベンゾフラン等の縮合環化合物の製造方法の開発が求められている。 触媒を利用した縮合環化合物の製造方法として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、安価なジフェニルアミンやジフェニルエーテルをパラジウムもしくは白金を担体に固定化させた担持触媒で脱水素環化することによりカルバゾールやジベンゾフランを合成する方法が開示されている。 しかしながら、特許文献1で開示された気相反応の場合では300℃以上の高温を必要とする。また、特許文献2で開示された液相反応の場合でも250℃以上の高温が必要で、選択性も60%程度に留まっている。 また、非特許文献1及び非特許文献2では均一系Pd錯体触媒によるジフェニルアミンやジフェニルエーテルの酸素を用いる酸化的カップリング反応が報告されている。 しかしながら、均一系触媒は穏やかな条件で高選択的にカルバゾールが得られる一方、触媒の回収再利用ができないという欠点がある。 非特許文献3では、更に銅塩を助触媒として用いる必要がある。パラジウムもしくは白金の活性炭担持触媒でジフェニルアミンからカルバゾールの合成が非特許文献4に記載されているが、水熱合成条件を必要とするため250℃以上の高温が必要となる。特開平8−92213号公報特開平10−59939号公報B. Liegault, D. Lee, M. P. Huestis, D. R. Stuart, K. Fagnou, J. Org. Chem. 2008, 73 (13), 5022-5028.T. Watanabe, S. Oishi, N. Fujii, H. Ohno, J. Org. Chem. 2009, 74, 4720-4726.V. Sridharan, M. A. Martin, J. C. Menendez, Eur. J. Org. Chem. 2009, 4614-4621.S. Matsubara, K. Asano, Y. Kajita, M. Yamamoto, Synthesis 2007, 13, 2055-2059. 以上のように、従来のカルバゾールなどの縮合環化合物の製造において、固体金属触媒では従来250℃以上の高温が必要であり、均一系錯体触媒では触媒の回収が困難であった。 かかる状況下、本発明の目的は、カルバゾール、ジベンゾフラン等の縮合環化合物の工業的な製造に適した固体触媒を提供することである。 また、該固体触媒を用いて、安価な原料を脱水素環化することによって、カルバゾールやジベンゾフラン等の縮合環化合物を比較的低温の条件下で高収率・高選択的に製造する方法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、パラジウム水酸化物として、担体に担持し、高温での熱処理を行わずに、乾燥させることにより調製した固体触媒が、本反応に高い触媒活性を示すことを見出し、本発明に至った。 すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。 <1> 式(1)で表される化合物から、式(2)で表される縮合環化合物を製造するためのパラジウム水酸化物担持触媒の製造方法であって、 (A)担体とパラジウム塩とを含む混合液に、アルカリ溶液を添加した後に、溶媒を留去することにより、担体上にパラジウム水酸化物を担持する工程と、 (B)前記パラジウム水酸化物が担持された担体を、150℃以下の温度で乾燥させる工程と、を含むパラジウム水酸化物担持固体触媒の製造方法。(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基からなる群から選ばれる基を表し、2,2’位を除くすべての位置に結合できる。また、これらの置換基は環構造を形成していてもよい。m、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。 Xは、CH2、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR3を表し、R3は、水素原子又はアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基である。)(式(2)中、R1、R2、m及びn、並びにXはそれぞれ式(1)におけるR1、R2、m及びn、並びにXと同義である。) <2> 工程(A)において、前記担体に対する、前記パラジウム塩の重量比が、1重量%以上50重量%以下である前記<1>に記載の固体触媒の製造方法。 <3> 前記パラジウム塩が塩化パラジウム(II)である前記<1>または<2>に記載の固体触媒の製造方法。 <4> 前記担体が、金属酸化物である前記<1>から<3>のいずれかに記載の固体触媒の製造方法。 <5> 前記担体が、ジルコニア(ZrO2)又はチタニア(TiO2)である前記<4>記載の固体触媒の製造方法。 <6> 工程(B)における乾燥温度が、70℃以上120℃以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の固体触媒の製造方法。 <7> 前記式(2)で表される縮合環化合物が、カルバゾール、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン及びジベンゾフランから選ばれる1種、またはこれらの化合物の誘導体である前記<1>から<6>のいずれかに記載の固体触媒の製造方法。 <8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の製造方法で製造してなるパラジウム水酸化物担持固体触媒。 <9> 前記<8>に記載のパラジウム水酸化物担持固体触媒と、式(1)で表される化合物とを、ブレンステッド酸を含む液相中、酸素または空気雰囲気下で、60℃以上150℃以下で接触させ、式(2)で表される縮合環化合物を合成する縮合環化合物の製造方法。(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基からなる群から選ばれる基を表し、2,2’位を除くすべての位置に結合できる。また、これらの置換基は環構造を形成していてもよい。m、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。 Xは、CH2、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR3を表し、R3は、水素原子又はアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基である。)(式(2)中、R1、R2、m及びn、並びにXはそれぞれ式(1)におけるR1、R2、m及びn、並びにXと同義である。) <10> 前記式(2)で表される縮合環化合物が、カルバゾール、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン及びジベンゾフランから選ばれる1種、またはこれらの化合物の誘導体である前記<9>に記載の縮合環化合物の製造方法。 <11> 式(1)で表される化合物がジフェニルアミンであり、式(2)で表される縮合環化合物がカルバゾールであって、 反応温度60℃以上120℃以下、かつ、酸素分圧0.02MPa以上1.0MPa以下の条件で合成を行う前記<9>に記載の縮合環化合物の製造方法。 <12> 前記パラジウム水酸化物担持固体触媒における、担体に対するパラジウム水酸化物の重量比(Pd原子換算)が、1重量%以上30重量%以下である前記<11>記載の縮合環化合物の製造方法。 <13> 前記液相の溶媒が、有機酸、又は有機酸と、1,4−ジオキサン、トルエン、酢酸エチル及びテトラヒドロフランの少なくとも1種とを含む混合溶媒であって、該混合溶媒の有機酸の割合が、5体積%以上100体積%以下である前記<11>または<12>に記載の縮合環化合物の製造方法。 <14> 式(1)で表される化合物がジフェニルエーテルであり、式(2)で表される縮合環化合物が、ジベンゾフランであって、 反応温度80℃以上150℃以下、酸素分圧0.1MPa以上2.0MPa以下の条件で合成を行う前記<9>に記載の縮合環化合物の製造方法。 <15> 前記パラジウム水酸化物担持固体触媒における、担体に対するパラジウム水酸化物の重量比(Pd原子換算)が、15重量%以上50重量%以下である前記<14>記載の縮合環化合物の製造方法。 <16> 前記液相の溶媒が、ピバル酸を含む前記<14>または<15>に記載の縮合環化合物の製造方法。 本発明によれば、カルバゾールやジベンゾフラン等の縮合環化合物の合成に適したパラジウム水酸化物担持固体触媒を製造することができる。 製造されたパラジウム水酸化物担持固体触媒は、優れた触媒活性を有し、式(1)で示される化合物を、比較的低温で脱水素環化し、カルバゾール、ジベンゾフラン等の式(2)で示される縮合環化合物を、選択性高く、高効率に製造することができる。 また、本発明のパラジウム水酸化物担持固体触媒は、固体触媒であるので、従来の均一系触媒と比較して回収が容易であるため、触媒の再利用に適する。「1.パラジウム水酸化物担持固体触媒の製造方法」 本発明は、式(1)で表される化合物から、式(2)で表される縮合環化合物を製造するためのパラジウム水酸化物担持触媒の製造方法であって、 (A)担体と、パラジウム塩とを含む混合液に、アルカリ溶液を添加した後に、溶媒を留去することにより、担体上にパラジウム水酸化物を担持する工程と、 (B)前記パラジウム水酸化物が担持された担体を、150℃以下の温度で乾燥させる工程と、を含むパラジウム水酸化物担持固体触媒の製造方法(以下、「本発明の固体触媒の製造方法」と称す場合がある。)に関する。(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基からなる群から選ばれる基を表し、2,2’位を除くすべての位置に結合できる。また、これらの置換基は環構造を形成していてもよい。m、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。 Xは、CH2、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR3を表し、R3は、水素原子又はアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基である。)(式(2)中、R1、R2、m及びn、並びにXはそれぞれ式(1)におけるR1、R2、m及びn、並びにXと同義である。) 式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基からなる群から選ばれる基を表し、2,2’位を除くすべての位置に結合できる。また、m、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。また、これらの置換基は環構造を形成していてもよい。Xは、CH2、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR3を表し、R3は、水素原子又はアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基である。 また、式(2)中、R1、R2及びm、nはそれぞれ式(1)におけるR1、R2及びm、nと同義であり、Xは式(1)におけるXと同義である。 なお、式(1)で表される化合物から、式(2)で表される縮合環化合物の詳細は、後述する「2.式(2)で表される縮合環化合物の製造方法」にて説明する。 本発明の固体触媒の製造方法で得られるパラジウム水酸化物担持固体触媒は、上記式(1)で示される化合物の2,2’位を酸化的にカップリングさせ、脱水素環化することによって式(2)で表される目的化合物を生成する反応の触媒として作用する。 なお、本明細書において、パラジウム水酸化物を、以下、「Pd(OH)2」と記載する場合があるが、結晶及び非晶質のものを含み、必ずしも、Pd(OH)2の化学量論組成を満たさなくてもよい。 本発明の固体触媒の製造方法の主な特徴の一つは、工程(A)により、担体に固定化したPd(OH)2を、工程(B)にて乾燥させる際の温度を150℃以下(好ましくは110℃以下)にしたことにあり、このような低温で処理すると、上記反応に対する優れた触媒活性を有することを見出したことにある。 一方で、Pd(OH)2を担持した触媒を150℃を超える温度で熱処理すると触媒活性が急激に低下する。一方で、150℃以下では触媒活性を有し、110℃以下ではより高い触媒活性を示す。 なお、還元されたPd金属(0価)や、PdO(2価)を担持した触媒では、触媒活性が低く、上記反応が進行しない、あるいは工業的レベルでの反応速度は得られない。 また、本発明の固体触媒の製造方法は、高温での焼成や、還元処理を必要としないというメリットがある。 以下、本発明の固体触媒の製造方法をより詳細に説明する。 なお、上記式(1)で表される化合物及び式(2)で表される縮合環化合物については、後述する「式(2)で表される縮合環化合物の製造方法」において説明する。 パラジウム塩は、溶媒に容易に溶解し、アルカリ溶液との混合により、Pd水酸化物を形成できるものであればよい。具体的には、塩化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸およびその塩、臭化パラジウム、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、及びテトラアンミンパラジウム硝酸塩(II)等を挙げることができる。 この中でも、水に溶解し、比較的安価な塩化パラジウム(II)は、好適な一例である。パラジウム塩は1種でもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。 担体としては、特に制限はなく、例えば、炭素材料、金属酸化物等が挙げられる。 炭素材料としては、活性炭、ケッチェンブラック、グラファイト、カーボンブラック、ナノポーラスカーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。 金属酸化物としては、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO)、セリア(CeO2)、カルシア(CaO)、チタニア(TiO2)、酸化コバルト(Co3O4)などが挙げられる。また、これらの複合酸化物でもよく、物性を損なわない限り、他の元素がドープされていてもよい。 この中でも金属酸化物が好ましく、特にジルコニアとチタニアは、触媒活性・生成物選択性が高い固体触媒が得られるため好ましい。 一般的に担体の比表面積は、大きいほどPd水酸化物が担体表面により多く均一に担持されるため、有用成分が多く担持された触媒の製造が可能となるが、パラジウム水酸化物を担持できる程度の比表面積を有していれば、特に限定されない。 一方で、担体とPd水酸化物との相互作用により、担持されるPd水酸化物の触媒活性は変化する場合があり、この相互作用は、担体の種類や製造条件に依存する。例えば、表面積が大きい炭素担体より、表面積が小さい酸化物担体、例えば、ジルコニア担体の方が触媒活性が高い場合もある。 好適な担体であるジルコニア(ZrO2)を例にすると、触媒単位重量当たりの触媒活性を十分に有することができるためには、比表面積は10m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましい。 担体の形状は、特に限定はなく、いかなる形状でもよいが、通常、粉体である。担体の形態も稠密体、多孔体など任意の形態であってよい。 粒子状の場合の平均粒径は、特に限定はないが、5nm〜1mmであることが好ましい。より好ましくは、5nm〜100μmである。 担体の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、所定数の粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、粒径の平均値として算出する方法などが挙げられる。 なお、微粒子の形状が、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。 また、粒径、および/または比表面積が異なる2種類以上の担体を混用することもできる。 工程(A)では、まず、担体と、パラジウム塩を溶解した溶液とを混合し、担体が分散したパラジウム塩溶液を調製する。 パラジウム塩溶液における溶媒としては、使用するパラジウム塩を溶解するものであればよく、通常、水である。 また、溶媒として、水以外にもメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、アセトン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素類などを、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。 また、パラジウム塩溶液は、パラジウム前駆体を溶液中に溶解させるために、無機酸を含有していてもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などが挙げられる。 パラジウム塩溶液におけるPd濃度は、Pd原子換算で、0.01〜10mmol/L、好ましくは、0.1〜5mmol/Lである。 0.01mmol/L未満であると、パラジウム水酸化物を担体上に析出、沈殿させるのが難しくなり、5mmol/Lを超えると溶液中でパラジウム水酸化物が沈殿しパラジウム水酸化物が不均一に沈殿してしまうという問題がある。 工程(A)において使用する溶媒の量は、担体に対して質量比で10〜5000が好ましい。 担体とパラジウム塩溶液の混合は、従来公知の方法で行えばよく、均一になるまで十分に混合される。 担体とパラジウム塩溶液を混合することにより得られた前記溶液にアルカリを添加し、pHを7〜10とすることにより、パラジウム水酸化物が担体上に析出、沈殿する。 アルカリ溶液におけるアルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。 アルカリ溶液のアルカリ濃度は、0.05〜2mol/L、好ましくは、0.1〜1mol/Lである。0.05mol/L未満であると、添加するアルカリ溶液量が多くなり、パラジウム濃度が低下する。2mol/Lを超えるとpHを制御しにくいという問題がある。 アルカリの溶媒としては、上記パラジウム塩溶液と同じ溶媒であることが好ましい。 すなわち、通常、水であるが、水以外にもメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、アセトン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素類などを、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。 担体とパラジウム塩溶液とを含む混合溶液に、アルカリ溶液を添加する方法として、特に制限はないが、パラジウム水酸化物の生成が不均一になると、製造される固体触媒の触媒活性も低下したり、不均一になったりするため、担体とパラジウム塩溶液とを含む混合溶液に、アルカリ溶液を滴下する方法が好ましい。 撹拌温度は20〜90℃、好ましくは20〜80℃である。20℃よりも低いとパラジウム水酸化物の析出が遅くなる。90℃よりも高いと担体上だけでなく溶液中でもパラジウム水酸化物の沈殿が生成し、パラジウム水酸化物が不均一に沈殿してしまう。撹拌時間は20〜40℃では3〜30時間が好ましく、より好ましくは5〜24時間である。40〜90℃では30分〜5時間が好ましく、より好ましくは1時間〜4時間である。撹拌時間が短すぎるとパラジウム水酸化物の沈殿が不十分となる場合があり、撹拌時間が長すぎるとパラジウム水酸化物の凝集が懸念される。 次いで、懸濁液から、溶媒を除去することにより、担体上にパラジウム水酸化物が担持された固形物(まだここでは溶媒を少し含んだ状態)を得ることができる。 溶媒を除去する方法としては、特に限定されないが、吸引濾過が簡便である。 次いで、工程(B)について説明する。 工程(B)は、上述した前記パラジウム水酸化物が担持された担体を、150℃以下の温度で乾燥させる工程である。 乾燥温度は、パラジウム水酸化物が酸化パラジウムへの変化を抑制するために150℃以下を必須とする。乾燥の下限温度は20℃以上が好ましい。 より生成物の収率の高い触媒が製造できる点で、乾燥温度は、70℃以上120℃以下が好ましく、70℃以上110℃以下がより好ましい。 乾燥の方式に関しては特に限定されず、例えば、箱型炉を用いた加熱乾燥処理、減圧乾燥器を用いた減圧乾燥処理、液体窒素を用いた凍結真空乾燥などが挙げられる。 乾燥時間は、溶媒が十分に除去する時間を必須とし、乾燥温度によっても異なるが、通常、2〜24時間である。2時間以下では水分の除去が十分ではなく、24時間以上乾燥させてもそれ以降の水分除去はほとんど効果がない。必要に応じて減圧下で乾燥させても良い。 上述の製造方法によって、本発明のパラジウム水酸化物担持固体触媒(以下、「本発明の固体触媒」が得られる。 なお、本発明の固体触媒のパラジウム水酸化物の担持量は、上記工程(A)における担体とパラジウム塩の仕込み量に依存するが、すべてのパラジウム成分が担体に担持されるわけではないので、仕込み量と実際の担持量に若干のずれが生じる場合がある。 実際のパラジウム水酸化物の担持量は、例えば、蛍光X線分析(XRF)で評価することができる。 本発明の固体触媒は、以下の縮合環化合物の製造方法に好適に用いることができる。「2.式(2)で表される縮合環化合物の製造方法」 本発明の縮合環化合物の製造方法は、上述した製造方法で得られる本発明の固体触媒と、式(1)で表される化合物とを、ブレンステッド酸を含む液相中、酸素雰囲気下、150℃以下で接触させ、式(2)で表される縮合環化合物を製造することを特徴とする。 すなわち、式(1)で表される隣接する2つのアリール基を有する化合物における、2,2’位を酸化的にカップリングさせ、脱水素環化することによって式(2)で表される目的化合物を生成する。(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基からなる群から選ばれる基を表し、2,2’位を除くすべての位置に結合できる。また、これらの置換基は環構造を形成していてもよい。m、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。 Xは、CH2、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR3を表し、R3は、水素原子又はアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基である。)(式(2)中、R1、R2、m及びn、並びにXはそれぞれ式(1)におけるR1、R2、m及びn、並びにXと同義である。) 上述のように原料化合物である式(1)の化合物において、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基からなる群から選ばれる基であり、2,2’位を除くすべての位置に結合できる。また、m、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。またこれらの置換基は環構造を形成していてもよい。 R1及びR2は、上述した2,2’位の脱水素環化を著しく抑制しないものが好ましく選択される。好適な基の一例は、メチル基などのアルキル基、メトキシ基などのアルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、フッ素、アセチル基等である。 また、Xは、CH2、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR3を表し、R3は、水素原子又はアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基である。 生成化合物である式(2)の縮合環化合物において、R1、R2、m及びn、並びにX及びR3はそれぞれ式(1)におけるR1、R2、m及びn、並びにX及びR3と同義である。 本発明の縮合環化合物の製造方法の好適な適用例は、式(2)で表される縮合環化合物が、カルバゾール、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン及びジベンゾフランから選ばれる1種、またはこれらの化合物の誘導体である場合である。 ここで、誘導体として、好適な基は、メチル基などのアルキル基、メトキシ基などのアルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、フッ素、アセチル基等である。 また、本発明の縮合環化合物の製造方法のより好適な適用例は、原料化合物が式(1)におけるXがNHであるジフェニルアミン(式(1a))であり、生成化合物がカルバゾール(式(2a))の場合である。 また、他のより好適な適用例は、原料化合物が、式(1)におけるXがO(酸素原子)であるジフェニルエーテル(式(1b))であり、生成化合物がジベンゾフラン(式(2b))の場合である。 なお、本発明において、原料の上記式(1)で表される化合物は、単独で用いても数種類の混合物として用いても良いが、生成物の分離が困難となり、複雑なプロセスとなってしまうため、単独で用いることが好ましい。 上述のように、本発明の縮合環化合物の製造方法では、酸化的カップリングにより、脱水素環化を行うため、酸素もしくは空気雰囲気であることを必須とする。 反応系の酸素圧力は、原料化合物、生成化合物の種類にもよるが、通常、酸素分圧0.02〜3.0MPaの範囲である。 反応系の酸素圧力が低すぎると、反応速度が遅くなり、高すぎると、副反応により生成物選択性の低下が懸念されるという問題がある。 特に、原料化合物がジフェニルアミン、生成化合物がカルバゾールの場合では、反応系の酸素分圧は、0.02〜1.0MPaが好ましく、より好ましくは、0.1〜0.5MPaの範囲である。 また、原料化合物がジベンゾフランであり、生成化合物がジベンゾフランの場合では、、反応系の酸素分圧は、0.1〜2.0MPaが好ましく、より好ましくは、0.8〜1.5MPaの範囲である。 反応温度としては、原料化合物、生成化合物の種類にもよるが、150℃以下で合成することが可能である。150℃を超えると、生成物選択性の低下が懸念されるという問題がある。 また、反応温度の下限温度は、上記反応が進行する温度であればよく、通常、60℃以上、好ましくは80℃以上である。60℃未満であると、合成速度の点からは工業的生産性の点から好ましくない。 特に、原料化合物がジフェニルアミン、生成化合物がカルバゾールの場合では、反応温度は、80〜120℃が好ましく、より好ましくは、80〜100℃の範囲である。 また、原料化合物がジフェニルエーテルであり、生成化合物がジベンゾフランの場合では、、反応温度は、100〜150℃が好ましく、より好ましくは、120〜150℃の範囲である。 反応に用いる溶媒は、有機酸あるいはリン酸などのブレンステッド酸を含むことを必須とする。有機酸としては、ギ酸、酢酸、ブタン酸、ピバル酸など挙げられる。これらは1種でも2種類以上を併用してもよい。 また、有機酸やリン酸などのブレンステッド酸以外にも、他の溶媒を含む混合溶媒も利用できる。 他の溶媒としては、例えば、1,4−ジオキサン、トルエン、メタノール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトニトリルなどが挙げられる。また、上記有機溶媒以外にも、水も利用できる。 なお、本発明の縮合環化合物の製造方法において、好適な溶媒は、原料化合物、生成化合物の種類に依存する。 例えば、原料化合物がジフェニルアミン、生成化合物がカルバゾールの場合では、ギ酸、酢酸、ピバル酸等の有機酸のみを溶媒として用いても良いが、例えば有機溶媒を含む混合溶媒も使用することができる。特に酢酸と、1,4−ジオキサン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフランの混合溶媒とした場合には酢酸単独よりも収率が高い。溶媒に有機溶媒を使用できることで反応後の溶媒の中和工程が簡略化できるメリットがある。 なお、有機酸を使用した場合の有機酸と他の有機溶媒との混合溶媒比率は、有機酸が存在しないと反応が進行しないため、有機酸の割合が5〜100体積%、好ましくは20〜80体積%である。 また、原料化合物がジフェニルエーテルであり、生成化合物がジベンゾフランの場合では、有機酸としてピバル酸を含む溶媒を用いると酢酸よりも収率がよい。また、他の有機溶媒と混合するよりもピバル酸単独を溶媒とする方が高い収率が得られる。 なお、ピバル酸と他の有機溶媒との混合溶媒比率は、ピバル酸の割合が50〜100体積%であることが好ましい。 本発明の縮合環化合物の製造方法において、本発明の固体触媒は液相酸化を行う反応液に懸濁させた状態で使用することが好ましいが、固定床で使用してもよい。 好適な触媒の使用量は、原料化合物、生成化合物の種類や製造量に依存するが、反応器内に存在する溶液を100質量部としたときに、反応器内に存在する固体触媒は、通常、1〜200質量部であり、好ましくは10〜70質量部である。 また、本発明の固体触媒の触媒活性は、パラジウム水酸化物の担持量によっても変化し、原料化合物、生成化合物の種類によって好適な担持量が存在する。 例えば、原料化合物がジフェニルアミン、生成化合物がカルバゾールの場合では、担体に対するパラジウム水酸化物の重量比(Pd原子換算)が、1〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。 また、原料化合物がジフェニルエーテルであり、生成化合物がジベンゾフランの場合では、担体に対するパラジウム水酸化物の重量比(Pd原子換算)が、10〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜40重量%である。 反応時間は、原料化合物、生成化合物の種類や溶媒の種類、反応温度などの諸条件によって適宜選択される。 反応後の反応生成物は、従来公知の方法で分離され回収される。 具体的には、濾液を中和後、ジクロロメタンなどの有機溶媒で抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させる方法が挙げられる。 反応後のパラジウム水酸化物担持固体触媒は、ろ過、遠心分離等の方法を用いて、容易に分離・回収することができる。分離されたパラジウム水酸化物担持固体触媒は、適宜乾燥され、必要に応じて再活性化を行った後、再利用することができる。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。 使用した主な薬品類、分析装置は次の通りである。(パラジウム塩)・塩化パラジウム(II)(田中貴金属工業社製)(担体)(A)ジルコニア(ZrO2) 第一稀元素化学工業株式会社、品番:RC−100 比表面積:80〜120m2/g 平均粒径:1.5〜4μm(B)カーボン(ケッチェンブラック) ライオン株式会社、品番:EC300J 比表面積:800m2/g 平均粒径:40nm(C)アルミナ(Al2O3) 触媒学会参照触媒、品番:JRC−ALO−8 比表面積:160m2/g(D)チタニア(TiO2)(a)TiO2(Rutile + Anatase) 日本エアロジル株式会社、品番:P−25 比表面積:50m2/g 平均粒径: 20nm(b)TiO2(Anatase) チタン工業株式会社、品番:ST−111 比表面積:310m2/g(E)セリア(CeO2) 信越化学工業株式会社 比表面積:161m2/g「分析装置」・エネルギー分散型蛍光X線分析装置(XRF) 株式会社島津製作所製、型番:EDX−720・ガスクロマトグラフ Agilent社製、 6850Series GC System, キャピラリーカラム J&W Scientific, HP-1 (i.d. 0.32 mm, film thickness 0.25 μm, 30 m)1.Pd水酸化物担持固体触媒の調製「固体触媒A1」 塩化パラジウム(II)(PdCl2)(189mg、1mmol)を、蒸留水(1050mL)に添加し、少量の塩酸を加えてPdCl2を溶解させて、Pd濃度が1mmol/Lとなるように水溶液を調製した。 次いで、この水溶液にNaOH水溶液を滴下してpH8に調整した後、担体としてZrO2粉末1gを添加し、pH8に保ちながら70℃で1時間撹拌させた。 次いで、溶液のpHが安定するまで蒸留水で洗浄後、吸引濾過し、70℃で一晩乾燥させることで、10wt%(Pd換算、仕込み量)の固体触媒A1を得た。 なお、蛍光X線分析によって評価した固体触媒A1のPd担持量は、8.6wt%(Pd換算)であった。「固体触媒A3」 Pd濃度を1mmol/Lに固定した塩化パラジウム(II)水溶液、1wt%(Pd換算、仕込み量)になるような量のZrO2粉末を添加した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒A3を得た。「固体触媒A4」 Pd濃度を1mmol/Lに固定した塩化パラジウム(II)水溶液、30wt%(Pd換算、仕込み量)になるような量のZrO2粉末を添加し、乾燥温度を100℃とした以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒A4を得た。「固体触媒A5」 水溶液のpHを10に調整し、20℃で24時間撹拌し、乾燥温度を70℃から100℃に変更した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒A5を得た。「固体触媒A6」 Pd濃度を1mmol/Lに固定した塩化パラジウム(II)水溶液、20wt%(Pd換算、仕込み量)になるような量のZrO2粉末を添加した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒A6を得た。「固体触媒A7」 Pd濃度を1mmol/Lに固定した塩化パラジウム(II)水溶液、30wt%(Pd換算、仕込み量)になるような量のZrO2粉末を添加した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒A7を得た。「固体触媒B1」 担体としてZrO2に代えて、Carbon粉末を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒B1を得た。「固体触媒B2」 Pd換算仕込み量を5wt%とした以外は、固体触媒B1の調製と同様の操作により、固体触媒B2を得た。「固体触媒B3」 乾燥温度を、200℃にした以外は、固体触媒B1の調製と同様の操作により、固体触媒B3を得た。「固体触媒C1」 担体としてZrO2に代えて、Al2O3粉末を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒C1を得た。なお、蛍光X線分析によって評価した固体触媒C1のPd担持量は、8.0wt%(Pd換算)であった。「固体触媒D1」 担体としてZrO2に代えて、TiO2粉末(P−25)を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒D1を得た。「固体触媒D2」 Pd濃度を1mmol/Lに固定した塩化パラジウム(II)水溶液、40wt%(Pd換算、仕込み量)になるような量のTiO2粉末(ST−111)を添加し、乾燥温度を100℃とした以外は、固体触媒D1の調製と同様の操作により、固体触媒D2を得た。「固体触媒E1」 担体としてZrO2に代えて、CeO2粉末を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒E1を得た。2.カルバゾールの合成2−1.担体の対比 異なる担体を使用したPd水酸化物担持固体触媒を使用して、同一条件でカルバゾールの合成を行い、カルバゾール収率を比較した。(カルバゾール合成例1) オートクレーブにジフェニルアミン(1mmol)、固体触媒A1(50mg、Pd5mol%)、溶媒としての1,4-ジオキサン(1.5mL)及び酢酸(1.5mL)並びに磁気撹拌子を入れた後、酸素をゲージ圧が0.25MPaとなるまで加えた。 次いで、100℃で12時間加熱撹拌した後、触媒をセライト(登録商標)で濾過した。 濾液を中和後、ジクロロメタンで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液をトリデカンを内部標準物質として用いてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジフェニルアミンの転化率が92%、カルバゾールの収率が80%であった。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表1にまとめて示す。(カルバゾール合成例1’) 固体触媒A1に代えて、固体触媒A5を使用した以外は、カルバゾール合成例1と同様にして合成を行い、濾液を分析したところ、カルバゾールの収率は85%であった。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表1にまとめて示す。(カルバゾール合成例2) 固体触媒A1に代えて、固体触媒B1を使用した以外は、カルバゾール合成例1と同様にして合成を行い、濾液を分析したところ、カルバゾールの収率は63%であった。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表1にまとめて示す。(カルバゾール合成例3) 固体触媒A1に代えて、固体触媒C1を使用した以外は、カルバゾール合成例1と同様にして合成を行い、濾液を分析したところ、カルバゾールの収率は78%であった。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表1にまとめて示す。(カルバゾール合成例4) 固体触媒A1に代えて、固体触媒D1を使用した以外は、カルバゾール合成例1と同様にして合成を行い、濾液を分析したところ、カルバゾールの収率は59%であった。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表1にまとめて示す。(カルバゾール合成例5) 固体触媒A1に代えて、固体触媒E1を使用した以外は、カルバゾール合成例1と同様にして合成を行い、濾液を分析したところ、カルバゾールの収率は41%であった。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表1にまとめて示す。(カルバゾール合成例6) 固体触媒A1に代えて、均一触媒であるPd(OAc)2(50mg、Pd2.3mol%)を使用した以外は、カルバゾール合成例1と同様にして合成を行い、反応後の溶液を分析したところ、カルバゾールの収率は7%であった。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表1にまとめて示す。(カルバゾール合成例7) 固体触媒A1に代えて、PdO触媒を使用した以外は、カルバゾール合成例1と同様にして合成を行い、濾液を分析したところ、カルバゾールの収率は2%であった。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表1にまとめて示す。 なお、PdO触媒はパラジウム水酸化物担持触媒(A1)を空気中、300℃で4時間熱処理することにより調製した。2−2.乾燥温度での触媒活性比較 異なる温度で乾燥した、Pd水酸化物担持固体触媒(固体触媒B1〜B3)を用い、カルバゾール合成例1と同様にしてカルバゾール合成を行い、濾液の分析を行った。 カルバゾール合成例2(固体触媒B1、乾燥温度:80℃)、カルバゾール合成例8(固体触媒B2、乾燥温度:100℃)、カルバゾール合成例9(固体触媒B3(乾燥温度:200℃))のカルバゾールの収率は、それぞれ63%、46%、8%であった。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表2にまとめて示す。 このことから、乾燥温度が上がるにつれてパラジウム水酸化物の一部が本反応に不活性なPdOへと変化したと考えられる。2−3.Pd水酸化物担持量の違い 固体触媒A1及びA3(担体:ZrO2)を用い、Pd水酸化物担持量(Pd換算)とカルバゾール収率の関係を比較した。使用した触媒、カルバゾール合成条件、カルバゾール収率を表3にまとめて示す。3.ジベンゾフランの合成(ジベンゾフラン合成例1) オートクレーブにジフェニルエーテル(1mmol)と、固体触媒A4(50mg)、ピバル酸(2.0g)、磁気撹拌子を入れた後、酸素をゲージ圧が0.5MPaとなるまで加えた。120℃で60時間加熱撹拌した後、触媒をセライトで濾過した。濾液をトリデカンを内部標準物質として用いてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジフェニルエーテルの転化率が62%、ジベンゾフランの収率が41%であった。使用した触媒、ジベンゾフラン合成条件、ジベンゾフラン収率を表4にまとめて示す。(ジベンゾフラン合成例2) オートクレーブにジフェニルエーテル(1mmol)と、固体触媒A4(100mg)、ピバル酸(1.2g)、1,4-ジオキサン(1.0mL)、磁気撹拌子を入れた後、酸素をゲージ圧が0.5MPaとなるまで加えた。120℃で48時間加熱撹拌した後、触媒をセライトで濾過した。上記と同様に分析したところ、ジフェニルエーテルの転化率が55%、ジベンゾフランの収率が33%であった。使用した触媒、ジベンゾフラン合成条件、ジベンゾフラン収率を表4にまとめて示す。(ジベンゾフラン合成例3) オートクレーブにジフェニルエーテル(1mmol)と、固体触媒A5(30mg)、ピバル酸(0.7g)、磁気撹拌子を入れた後、酸素をゲージ圧が0.5MPaとなるまで加えた。130℃で48時間加熱撹拌した後、触媒をセライトで濾過した。上記と同様に分析したところ、ジフェニルエーテルの転化率が80%、ジベンゾフランの収率が69%であった。使用した触媒、ジベンゾフラン合成条件、ジベンゾフラン収率を表4にまとめて示す。(ジベンゾフラン合成例4) オートクレーブにジフェニルエーテル(1mmol)と、固体触媒A6(30mg)、ピバル酸(0.7g)、磁気撹拌子を入れた後、酸素をゲージ圧が0.5MPaとなるまで加えた。130℃で48時間加熱撹拌した後、触媒をセライトで濾過した。上記と同様に分析したところ、ジフェニルエーテルの転化率が88%、ジベンゾフランの収率が80%であった。使用した触媒、ジベンゾフラン合成条件、ジベンゾフラン収率を表4にまとめて示す。(ジベンゾフラン合成例5) オートクレーブにジフェニルエーテル(1mmol)と、固体触媒A6(30mg)、ピバル酸(2g)、磁気撹拌子を入れた後、酸素をゲージ圧が0.5MPaとなるまで加えた。130℃で48時間加熱撹拌した後、触媒をセライトで濾過した。上記と同様に分析したところ、ジフェニルエーテルの転化率が64%、ジベンゾフランの収率が58%であった。使用した触媒、ジベンゾフラン合成条件、ジベンゾフラン収率を表4にまとめて示す。(ジベンゾフラン合成例6) オートクレーブにジフェニルエーテル(1mmol)と、固体触媒A7(50mg)、ピバル酸(2g)、磁気撹拌子を入れた後、酸素をゲージ圧が0.5MPaとなるまで加えた。130℃で60時間加熱撹拌した後、触媒をセライトで濾過した。上記と同様に分析したところ、ジフェニルエーテルの転化率が65%、ジベンゾフランの収率が62%であった。使用した触媒、ジベンゾフラン合成条件、ジベンゾフラン収率を表4にまとめて示す。(ジベンゾフラン合成例7)オートクレーブにジフェニルエーテル(1mmol)と固体触媒D2(50mg)、ピバル酸(1.8g)、磁気撹拌子を入れた後、酸素をゲージ圧が0.5MPaとなるまで加えた。120℃で60時間加熱撹拌した後、触媒をセライトで濾過した。上記と同様に分析したところ、ジフェニルエーテルの転化率が46%、ジベンゾフランの収率が38%であった。使用した触媒、ジベンゾフラン合成条件、ジベンゾフラン収率を表4にまとめて示す。 本発明によれば、カルバゾールやジベンゾフラン等の縮合環化合物の合成に適したパラジウム水酸化物担持固体触媒を製造することができる。製造されたパラジウム水酸化物担持固体触媒は、優れた触媒活性を有し、安価な原料化合物からカルバゾール、ジベンゾフラン等の工業的に高付加価値の縮合環化合物を、生成物選択性高く、高効率に製造することができる。 式(1)で表される化合物から、式(2)で表される縮合環化合物を製造するためのパラジウム水酸化物担持触媒の製造方法であって、 (A)担体とパラジウム塩とを含む混合液に、アルカリ溶液を添加した後に、溶媒を留去することにより、担体上にパラジウム水酸化物を担持する工程と、 (B)前記パラジウム水酸化物が担持された担体を、150℃以下の温度で乾燥させる工程と、を含むことを特徴とするパラジウム水酸化物担持固体触媒の製造方法。(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基からなる群から選ばれる基を表し、2,2’位を除くすべての位置に結合できる。また、これらの置換基は環構造を形成していてもよい。m、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。 Xは、CH2、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR3を表し、R3は、水素原子又はアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基である。)(式(2)中、R1、R2、m及びn、並びにXはそれぞれ式(1)におけるR1、R2、m及びn、並びにXと同義である。) 工程(A)において、前記担体に対する、前記パラジウム塩の重量比が、1重量%以上50重量%以下である請求項1に記載の固体触媒の製造方法。 前記パラジウム塩が塩化パラジウム(II)である請求項1または2に記載の固体触媒の製造方法。 前記担体が、金属酸化物である請求項1から3のいずれかに記載の固体触媒の製造方法。 前記担体が、ジルコニア(ZrO2)又はチタニア(TiO2)である請求項4記載の固体触媒の製造方法。 工程(B)における乾燥温度が、70℃以上120℃以下である請求項1から5のいずれかに記載の固体触媒の製造方法。 前記式(2)で表される縮合環化合物が、カルバゾール、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン及びジベンゾフランから選ばれる1種、またはこれらの化合物の誘導体である請求項1から6のいずれかに記載の固体触媒の製造方法。 請求項1から7のいずれかに記載の製造方法で製造してなることを特徴とするパラジウム水酸化物担持固体触媒。 請求項8に記載のパラジウム水酸化物担持固体触媒と、式(1)で表される化合物とを、ブレンステッド酸を含む液相中、酸素または空気雰囲気下で、60℃以上150℃以下で接触させ、式(2)で表される縮合環化合物を合成することを特徴とする縮合環化合物の製造方法。(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基からなる群から選ばれる基を表し、2,2’位を除くすべての位置に結合できる。また、これらの置換基は環構造を形成していてもよい。m、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。 Xは、CH2、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR3を表し、R3は、水素原子又はアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基である。)(式(2)中、R1、R2、m及びn、並びにXはそれぞれ式(1)におけるR1、R2、m及びn、並びにXと同義である。) 前記式(2)で表される縮合環化合物が、カルバゾール、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン及びジベンゾフランから選ばれる1種、またはこれらの化合物の誘導体である請求項9に記載の縮合環化合物の製造方法。 式(1)で表される化合物がジフェニルアミンであり、式(2)で表される縮合環化合物がカルバゾールであって、 反応温度60℃以上120℃以下、かつ、酸素分圧0.02MPa以上1.0MPa以下の条件で合成を行う請求項9に記載の縮合環化合物の製造方法。 前記パラジウム水酸化物担持固体触媒における、担体に対するパラジウム水酸化物の重量比(Pd原子換算)が、1重量%以上30重量%以下である請求項11記載の縮合環化合物の製造方法。 前記液相の溶媒が、有機酸、又は有機酸と、1,4−ジオキサン、トルエン、酢酸エチル及びテトラヒドロフランの少なくとも1種とを含む混合溶媒であって、該混合溶媒の有機酸の割合が、5体積%以上100体積%以下である請求項11または12に記載の縮合環化合物の製造方法。 式(1)で表される化合物がジフェニルエーテルであり、式(2)で表される縮合環化合物が、ジベンゾフランであって、 反応温度80℃以上150℃以下、酸素分圧0.1MPa以上2.0MPa以下の条件で合成を行う請求項9に記載の縮合環化合物の製造方法。 前記パラジウム水酸化物担持固体触媒における、担体に対するパラジウム水酸化物の重量比(Pd原子換算)が、10重量%以上50重量%以下である請求項14記載の縮合環化合物の製造方法。 前記液相の溶媒が、ピバル酸を含む請求項14または15に記載の縮合環化合物の製造方法。 【課題】カルバゾール、ジベンゾフラン等の縮合環化合物の製造に適した固体触媒を製造する方法を提供する。【解決手段】式(1)で表される化合物から、式(2)で表される縮合環化合物を製造するためのパラジウム水酸化物担持触媒の製造方法であって、(A)担体とパラジウム塩とを含む混合液に、アルカリ溶液を添加した後に、溶媒を留去することにより、担体上にパラジウム水酸化物を担持する工程と、(B)150℃以下の温度で乾燥させる工程と、を含む製造方法。式(1)式(2)(Xは、CH2、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNR3である。)【選択図】なし


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