タイトル: | 公開特許公報(A)_バニラ香料組成物 |
出願番号: | 2013042066 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C11B 9/00,A23L 1/22,A23L 1/221,A61K 8/35,A61Q 13/00 |
高橋 誠 宮沢 紀雄 稲井 陽子 武田 明積 JP 2014169393 公開特許公報(A) 20140918 2013042066 20130304 バニラ香料組成物 長谷川香料株式会社 000214537 高橋 誠 宮沢 紀雄 稲井 陽子 武田 明積 C11B 9/00 20060101AFI20140822BHJP A23L 1/22 20060101ALI20140822BHJP A23L 1/221 20060101ALI20140822BHJP A61K 8/35 20060101ALI20140822BHJP A61Q 13/00 20060101ALI20140822BHJP JPC11B9/00 PA23L1/22 CA23L1/221 CA61K8/35A61Q13/00 101 4 OL 9 4B047 4C083 4H059 4B047LB09 4B047LF09 4B047LG37 4B047LG40 4C083AC062 4C083AC102 4C083AC211 4C083AC212 4C083AC472 4C083AC842 4C083KK01 4C083KK02 4H059BA23 4H059BB19 4H059BB45 4H059BC10 4H059BC23 4H059CA13 4H059CA51 4H059DA09 4H059EA36 本発明は、バニラ香料組成物の風味改善方法に関し、さらに詳しくはバニラ抽出物、バニラ抽出物を配合したバニラ風味香料組成物、ならびにバニラフレーバーの風味改善方法に関する。 バニラはラン科バニラ属の蔓性植物である。バニラはランの仲間では珍しいつる性の植物であり、その長さは最大で60メートルにも達することがある。また、果実も長さ15〜20センチ程度のインゲン豆のような形状である。 この果実であるグリーンバニラビーンズはそのままでは香気を有さないが、長期間での樹上での熟成工程および、発酵・乾燥を繰り返すキュアリングを行うことにより、独特の甘い香りを有するようになる。このキュアリング工程後のバニラビーンズから抽出される香料は、主成分であるバニリンを初めとする多くの香気成分(アニスアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、バニリルエチルエーテルなど)を含有しており、それらの香りが複雑に絡み合った独特の甘い芳香を有する。そのためバニラビーンズから抽出される香料は、オイゲノールやグアヤコール等を原料とする化学合成や、リグニンの分解等により製造される安価な合成バニリンでは得られない芳香を必要とする高級菓子、香粧品等に広く用いられている。 バニラビーンズの香気成分は、これまでも多くの分析がなされており、200成分以上が同定されている。例えば、非特許文献1の表−1および表−2には、ブルボン、タヒチ、バリ、ジャワ、メキシコ、トンガ、コスタリカ、ジャマイカといった各産地の各種バニラビーンズから同定された成分が記載されている。また、特許文献1には、香辛料フレーバーとして使用することができる香料が記載されている。さらに、香辛料フレーバーとしてバニラフレーバーが例示されている。 また、バニラ香気を構成する上で重要な香料化合物として、非特許文献1の表−3には特許出願されたバニラ系合成香料が例示されている。また、特許文献2には、3−エトキシ−4−イソブチリロキシ−ベンズアルデヒドが本物のバニラ抽出物に近いより天然のバニラの香調を示すと記載されている。さらに、特許文献3には、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ−3−エトキシ安息香酸メチルなどが、バニリン自体の香りとは全く異なる、非常に興味深い強いスパイス様又は果実様バニラ香気を発散すると記載されている。 バニラビーンズは上記のように長期間での樹上での熟成工程および、発酵・乾燥を繰り返すキュアリングを行うため、香気のばらつきが大きくなることが知られている。 しかしながら、上記のバニラ様香気を有する香料化合物ではバニラ香料組成物にバニラビーンズの特徴的な香気を付与するには至らず、また、長期間の熟成およびキュアリングにより生ずる香気のばらつきを改善するには充分ではなかった。よって、簡便な方法でバニラ香料組成物に良質な香気を付与する方法の開発に大きな期待が寄せられている。特開2005−13138号公報特許第3574744号公報特許第3934694号公報特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料p348−366 本発明の目的は、上記の従来技術における問題点を解決し、良質で独特なバニラの香気を有する新規なバニラ香料組成物および、バニラ香料組成物の風味を改善する方法を提供することにある。 本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行ってきた結果、β−ダマセノンをバニラ香料組成物に添加することにより、従来のバニラ香料組成物に不足している良質で独特なバニラの香気、特に独特なドライフルーツ様香気を付与する方法を見いだし、本発明を完成するに至った。 かくして本発明は、β−ダマセノンを0.1ppb〜100ppb含有することを特徴とする、バニラ香料組成物を提供するものである。 また、本発明は、β−ダマセノンを0.1ppb〜100ppb含有することを特徴とする、ドライフルーツ様香気が付与されたバニラ香料組成物を提供するものである。 さらに、本発明は、バニラ香料組成物に、β−ダマセノンを0.1ppb〜100ppb添加することを特徴とする、バニラ様香気の風味改善方法を提供するものである。 さらにまた、本発明は、バニラ香料組成物に、β−ダマセノンを0.1ppb〜100ppb添加することを特徴とする、バニラ香料組成物にドライフルーツ様香気を付与する方法提供するものである。 本発明のβ−ダマセノンをバニラ香料組成物に添加することにより、良質で独特なバニラの香気である、ドライフルーツ様香気を付与することができる。 以下、本発明について更に詳細に説明する。 本発明で使用されるβ−ダマセノンは、ブルガリアローズの花精油から発見され、そのほか、紅茶、たばこ、ラズベリー、グレープなどの成分として見いだされている既知化合物である。β−ダマセノンそのものは、ローズ様の特徴あるフローラルな香気を有することが知られている。しかしながら、バニラ香料組成物に使用された例はなく、ましてや、バニラ香料組成物にβ−ダマセノンを添加することにより、ドライフルーツ様香気を付与することは記載も示唆もされていない。 β−ダマセノンは、植物中のカロチノイドの発酵と酸化によって生成されるが。香料素材としては、一般的には化学合成されたもの、例えば、β−シクロシトラールを出発原料として、β−ダマスコンを合成し、これを脱水素する方法(特公昭46−43799号公報)、あるいは、サフラナールを出発原料としてデヒドロ−β−ダマセノールを合成し、これをパラジウム接触処理する方法(特許第4304811号公報)などにより、β−ダマセノンを得ることができる。 本発明で使用されるバニラ香料組成物は、バニラ抽出物、バニラフレーバー(バニラ様食品調合香料)およびこれらの混合物を挙げることができる。 バニラ抽出物としては、バニラビーンズを水および/または水溶性有機溶媒を抽出溶媒として用い、バニラ抽出物を得る方法が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類;アセトンのようなケトン類;及びエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどの多価アルコール類の中から選ばれる一種もしくは複数種の混合物を例示することができる。または、超臨界炭酸ガスなどの超臨界ガスを抽出溶媒として用い、バニラ抽出物を得る方法が挙げられる。 さらに、バニラ抽出物の抽出原料となるバニラビーンズは、市場で一般的に入手できるものであれば、特に品種などは問わず、いずれのものを用いてもよい。このようなバニラビーンズとしては、例えば、マダガスカル(ブルボン)バニラビーンズ、メキシカンバニラビーンズ、インドネシアバニラビーンズ、タヒチバニラビーンズ及びその他のハイブリッド種などを挙げることができる。 バニラフレーバーに使用する合成香料は、非特許文献1に記載されている合成香料を使用するのが望ましい。例えば、2−ブチルテトラヒドロフラン、アニスアルコール、アニスアルデヒド、酢酸アニシル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、アニソール、p−クレゾール、ベンズアルデヒド、グアヤコール、4−メチルグアヤコール、4−エチルクアヤコール、4−ビニルグアヤコール、オイゲノール、アセトフェノン、1,3−ブタンジオール、ジアセチル、アセトイン、フェノール、マルトール、2−アセチルフラン、3−メチル−2−シクロヘキセノン、バニリン、エチルバニリン、バニリン酸、バニリルアルコール、イソバニリン、2−フェニルエチルアルコール、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、桂皮酸、桂皮アルデヒド、バニリルメチルエーテル、バニリルエチルエーテル、4−ヒドロキシベンジルメチルエーテル、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−メチルペンタナール、ジヒドロクマリン、2,3−ジヒドロ−2,5−ジメチルフラン、3−メチルシクロペンタノン、4−エチル安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸、3,5−ジヒドロキシ−6−メチル−2,3−ジヒドロ−4H−ピラン−4−オン、2,4−ヘキサンジオン、3−メチルノナン−2,4−ジオン、2,4−デカジエナール、2,3−ジヒドロキシベンゾフラン、アセトバニロン、2−メチル−3−ペンタノン、酢酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸、ペンタデカン酸、5−メチル−2(3H)−フラノン、5−メチル−2−フルフラール、フルフラール、フルフリルアルコール、バレルアルデヒド、酪酸エチル、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトンなどを挙げることができる。 本発明のドライフルーツ様香気とは、熟した果実様の香気、フルーティーなエステル様の香気、蜂蜜の甘さ的な香気といった要素を含んでいて、具体的に、レーズン様、ドライフィグ様、プルーン様、ドライアプリコット様の香気と表現することもある。 本発明で使用されるバニラ香料組成物に、β−ダマセノンを0.1ppb〜100ppb、好ましくは0.1ppb〜10ppb、さらに好ましくは、0.5ppb〜10ppbを添加することにより、バニラ香料組成物にドライフルーツ様香気を付与し、香気を改善することができる。 バニラ香料組成物に対するβ−ダマセノンの添加量が0.1ppb未満であると、バニラ香料組成物の香気を良質に改善するに至らない。また、バニラ香料組成物に対するβ−ダマセノンの添加量が100ppbを越えると、β−ダマセノンそのものが有するローズ様の香気が付与されてしまい、本来バニラ香料組成物が有する香気とは異質なものとなってしまう。 本発明で得られたバニラ香料組成物は、そのままで飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品類に添加して利用することができるが、所望により、これに乳化剤、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステルおよび蔗糖脂肪酸エステルなどを添加し、ホモジナイズすることにより乳化状態にすることや、さらに、アラビアガム、澱粉、デキストリン、キサンタンガム、サイクロデキストリンなどの粉末化助剤と混合して噴霧乾燥および真空乾燥などの乾燥手段を用いて乾燥することにより、乳化形態あるいは粉末形態として使用することができる。 本発明で得られたバニラ香料組成物は、飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品類などに良質な、特徴あるバニラの香気を付与することができる。 例えば、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料類などの飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディーなどの冷菓類;和洋菓子類、ジャム類、チューインガム類、パン類、コーヒー、ココア、紅茶、お茶、タバコなどの嗜好品類;和風スープ類、洋風スープ類などのスープ類;風味調味料、各種インスタント飲料・食品類、各種スナック食品類などに、本発明のバニラ香料組成物の適当量を添加することにより、良質な香気が付与された飲食品類を提供することができる。 また、例えば、シャンプー類、ヘアリンス類、ヘアコンディショナー類、ヘアパック類、ヘアスプレー類、スタイリング剤類、ヘアクリーム類、ポマード類、その他の毛髪用化粧料基剤;オシロイ、口紅、その他の化粧料基剤や化粧料洗剤基剤などに本発明のバニラ香料組成物の適当量を添加することにより、良質な香気が付与された香粧品類を提供することができる。 さらにまた、洗濯用洗剤類、消毒用洗剤類、室内芳香剤その他各種保健・衛生材料類;医薬品の服用を容易にするための矯味、賦香剤などの保健・衛生・医薬品類を提供することができる。 以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。 参考例1:バニラ抽出物の製造方法 2Lの4つ口フラスコに、約1cmにカットしたマダガスカルバニラビーンズ200g、95%エタノール580g、5%水酸化ナトリウム水溶液40g及び水380gを仕込み、フラスコ内の温度60〜65℃で4時間撹拌しながら抽出する。抽出終了後、25℃に冷却し、一夜放置する。サラシ布でデカント分離することにより、バニラ抽出物756gを得た(参考品1)。 実施例1:バニラ抽出物へのβ−ダマセノン添加効果 参考品1を20gずつ小分けし、これにβ−ダマセノンをエタノールで希釈した0.1質量%溶液を1μg(β−ダマセノンの添加濃度0.05ppb:比較品1)、2μg(β−ダマセノンの添加濃度0.1ppb:本発明品1)、10μg(β−ダマセノンの添加濃度0.5ppb:本発明品2)、20μg(β−ダマセノンの添加濃度1ppb:本発明品3)、200μg(β−ダマセノンの添加濃度10ppb:本発明品4)、1mg(β−ダマセノンの添加濃度50ppb:本発明品5)、2mg(β−ダマセノンの添加濃度100ppb:本発明品6)、6mg(β−ダマセノンの添加濃度300ppb:比較品2)を混合することにより、比較品1および2、本発明品1〜6の新規なバニラ香料組成物を調製した。 それぞれのバニラ香料組成物をよく訓練されたパネラー10名により香気評価を行った。香気評価は、30mlサンプル瓶に前記のバニラ香料組成物を用意し、参考品1を対象として瓶口の香気およびその溶液をにおい紙につけて評価を行った。香気評点は参考品1と比較して、−1:香気が劣化している、0:大差なし、1:わずかながら良好なバニラ様香気、2:良好なバニラ様香気、3:著しく良好なバニラ様香気、として採点した。そのパネラー10名の平均点および平均的な香気評価結果を表1に示す。 表1の結果から明らかなように、比較品1についてはβ−ダマセノンの添加効果はみられず、本発明品1〜6はβ−ダマセノンの添加により、特にドライフルーツ様の香気が強調され、良質なバニラ香気が得られた。一方、比較品2では良質なバニラ香気が損なわれ、ローズ様のにおいが感じられた。 実施例2:バニラフレーバーへのβ−ダマセノン添加効果 バニラフレーバーとして、表2に示す成分からなるバニラ基本調合香料組成物を調製し、これを参考品2とした。 参考品2を1000g使用して、これにβ−ダマセノンをエタノールで希釈した0.1質量%溶液を50μg(β−ダマセノンの添加濃度0.05ppb:比較品3)、100μg(β−ダマセノンの添加濃度0.1ppb:本発明品7)、500μg(β−ダマセノンの添加濃度0.5ppb:本発明品8)、1mg(β−ダマセノンの添加濃度1ppb:本発明品9)、10mg(β−ダマセノンの添加濃度10ppb:本発明品10)、50mg(β−ダマセノンの添加濃度50ppb:本発明品11)、100mg(β−ダマセノンの添加濃度100ppb:本発明品12)、300mg(β−ダマセノンの添加濃度300ppb:比較品4)を混合することにより、比較品3および4、本発明品7〜12の新規なバニラ香料組成物を調製した。 それぞれのバニラ香料組成物をよく訓練されたパネラー10名により香気評価を行った。香気評価は、30mlサンプル瓶に前記のバニラ香料組成物を用意し、参考品2を対象として瓶口の香気およびその溶液をにおい紙につけて評価を行った。香気評点は参考品2と比較して、−1:香気が劣化している、0:大差なし、1:わずかながら良好なバニラ様香気、2:良好なバニラ様香気、3:著しく良好なバニラ様香気、として採点した。そのパネラー10名の平均点および平均的な香気評価結果を表3に示す。 表3の結果から明らかなように、比較品3についてはβ−ダマセノンの添加効果はみられず、本発明品7〜12はβ−ダマセノンの添加により、特にドライフルーツ様の香気が強調され、良質なバニラ香気が得られた。一方、比較品4では良質なバニラ香気が損なわれ、ローズ様のにおいが感じられた。 実施例3:加糖牛乳へのバニラ香料組成物の添加効果 以下の表4に示す処方によりバニラ風味加糖牛乳を調製した。 上記加糖牛乳に、バニラ香料組成物として前記参考品1、比較品1および本発明品4を配合し、参考品1を添加した加糖牛乳を対象品として、比較品1および本発明品4を配合した加糖牛乳についてよく訓練されたパネラー10名にて香気評価を行った。その結果、パネラー10名全員が、バニラ香料組成物として比較品1を配合した加糖牛乳は、参考品1を配合した加糖牛乳と大差なかったが、本発明品4を配合した加糖牛乳は参考品1を配合した加糖牛乳に比べて、バニラ香気が著しく改善され、特にドライフルーツ様の香気が付与され好ましいとの評価であった。 β−ダマセノンを0.1ppb〜100ppb含有することを特徴とする、バニラ香料組成物。 β−ダマセノンを0.1ppb〜100ppb含有することを特徴とする、ドライフルーツ様香気が付与されたバニラ香料組成物。 バニラ香料組成物に、β−ダマセノンを0.1ppb〜100ppb添加することを特徴とする、バニラ様香気の風味改善方法。 バニラ香料組成物に、β−ダマセノンを0.1ppb〜100ppb添加することを特徴とする、バニラ香料組成物にドライフルーツ様香気を付与する方法。 【課題】従来にはない、良質で独特なバニラの香気を有する新規なバニラ香料組成物および、バニラ香料組成物の風味を改善する方法を提供する。【解決手段】β−ダマセノンをバニラ抽出物、バニラフレーバーなどのバニラ香料組成物に添加することにより、従来のバニラ香料組成物に不足している良質で独特なバニラの香気、特に独特なドライフルーツ様香気を付与することができる。【選択図】なし