生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_抗シトルリン化タンパクヒトIgG抗体およびその用途
出願番号:2013036503
年次:2014
IPC分類:C07K 16/18,G01N 33/53,C12P 21/08,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

小澤 龍彦 岸 裕幸 村口 篤 JP 2014162772 公開特許公報(A) 20140908 2013036503 20130227 抗シトルリン化タンパクヒトIgG抗体およびその用途 国立大学法人富山大学 305060567 小澤 龍彦 岸 裕幸 村口 篤 C07K 16/18 20060101AFI20140812BHJP G01N 33/53 20060101ALI20140812BHJP C12P 21/08 20060101ALN20140812BHJP C12N 15/09 20060101ALN20140812BHJP JPC07K16/18G01N33/53 DC12P21/08C12N15/00 A 9 9 OL 16 4B024 4B064 4H045 4B024AA11 4B024BA44 4B024BA53 4B024CA02 4B024DA02 4B024EA04 4B064AG27 4B064CA10 4B064CA19 4B064CC24 4B064DA13 4H045AA11 4H045AA30 4H045BA10 4H045DA76 4H045EA50 4H045FA74本発明は、シトルリン化されたタンパク質またはその断片を認識するヒトIgG抗体、該抗体を利用する関節リウマチの検査方法および検査キットに関する。 関節リウマチ(rheumatoidarthritis:RA)は、関節滑膜の増殖により骨軟骨を破壊され、関節機能に障害が生じて「生活の質(Quality of Life:QOL)」を著しく低下させる疾患である。RA患者の関節滑膜には多くのシトルリン化蛋白が発現しており、血清中にはシトルリン化抗原に対する自己抗体が産生されている。この自己抗体はシトルリン化蛋白の一つであるフィラグリンのシトルリン化部位を含むペプチドを環状構造とした抗原(CCP:cyclic citrullinated peptide、以下CCP抗原)を用いて検出され、CCP抗体と称されている。CCP抗体の検出は、関節リウマチの診断に重要なだけでなく、CCP抗体が検出された時点で、関節リウマチの症状が出ていない場合でも、CCP抗体が検出されると、かなりの確率でその後関節リウマチになることが知られており、CCP抗体の産生の機序が関節リウマチの発症機序と密接に関わっているのではないかと考えられている。 一方、関節滑膜にフィラグリンが存在しないとから、CCP抗体は、シトルリンを含むフィラグリン以外のタンパク質またはペプチドに対してRA滑膜上で産生されていると推定されており研究が進められている。例えば、シトルリン化ビメンチン(非特許文献1)、シトルリン化α-エノラーゼ(非特許文献2)などが報告されている。Arthritis.Rheum., 58(7), 1958-1967, 2008.Arthritis. Rheum., 58(8), 2287-2295, 2008.従来は、人工的に作製したCCP抗原に結合する抗体が患者血清中に存在するかを検査するだけで、検出された抗体が患者の体の中で、実際に何を抗原として産生されたのか。その機序に迫ることができなかった。CCP抗体が患者の体のなかで産生される機序が明らかになり、それが、関節リウマチ発症の機序につながれば、関節リウマチの診断・治療に大きく貢献することが期待される。発明者らは、関節リウマチ患者のリンパ球より、細胞チップを用いた単一細胞操作法(immunospot array assay on a chip;ISAAC法)を用いて、第一世代のCCP抗原に反応する抗体のcDNAをクローニングし、患者由来のシトルリン化されたタンパク質に対するモノクローナルヒト抗体の作製し、本発明を完成するに至った。以下、本発明を詳細に説明する。本発明の第1の発明は、シトルリンを含むタンパクまたはその断片を認識する抗体であって、配列番号1のアミノ酸配列のγ鎖と配列番号3のアミノ酸配列のλ鎖を有するIgGヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。以下の特性を有する。(1)シトルリンを含む19アミノ酸からなるアミノ酸配列の中で、後述する配列番号5、6、7、8,9,12および13のアミノ酸配列を認識する。(2)脱イミノ化した配列番号19のヒストンH2Aペプチドおよび配列番号20のヒストンH2Bペプチドを認識する。 本発明の第2の発明は、上記の配列番号1のアミノ酸配列のγ鎖と配列番号3のアミノ酸配列のλ鎖を有するIgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、被検試料中のシトルリンを含むタンパク質またはその断片との抗原抗体反応を利用した検査により、被検試料中のシトルリン化抗原の検出をすることを含む、シトルリン化抗原の検査方法である。 本発明の第3の発明は、上記の検査を実施するためのキットであって、配列番号1のアミノ酸配列のγ鎖と配列番号3のアミノ酸配列のλ鎖を有するIgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片をキットの主な構成品とするキットである。 本発明のIgGモノクローナルヒト抗体またはその抗原結合性断片を用いて、健常人と関節リウマチ患者の血清中のタンパク質の中に、本発明の抗体に結合するタンパク質が存在するかをウェスタンブロッティングにより解析したところ、患者血清中に本抗体と結合するタンパク質が確認された。しかし、健常人血清中には同様なタンパク質は検出されなかった。一方、50kDa、25kDa付近のバンドは健常人、患者いずれも検出されている。 従って、本発明のIgGモノクローナルヒト抗体またはその抗原結合断片を用いることで、関節リウマチ患者の血清に存在する関節リウマチ患者滑膜由来のシトルリン化タンパク質またはその断片を解析することができ、関節リウマチの早期診断や病態の進行状況を的確に把握をすることが可能となる。cfc1-cyc特異的スポットを示す図である。抗CCP-m抗体のエピトープを解析した図である。抗CCP-m抗体の親和性測定した図である。HEL293細胞の抽出液を用いて、脱イミノ化処理したウエスタンブロットである。15kDa、17kDa付近のバンドを示す図である。nanoLC-MS/MSによる質量分析により、ヒストンH2AおよびH2B由来ペプチドが検出された図である。抗CCP-m抗体で免疫沈降したサンプルのバンドの検出を示す図である。健常人ボランティア由来血清とRA患者由来血清のウエスタンブロットである。脱イミノ化処理を行った健常人ボランティア由来血清とRA患者由来血清のウエスタンブロットである。免疫沈降と質量分析を行ったバンドを示す図である。 本発明のモノクローナル抗体は、シトルリンを含むタンパクまたはその断片を認識する抗体であって、配列番号1のアミノ酸配列のγ鎖と配列番号3のアミノ酸配列のλ鎖を有するIgGヒトモノクローナル抗体である。以下の特性を有する。(1)シトルリンを含む19アミノ酸からなるアミノ酸配列の中で、配列番号5、6、7、8,9,12および13のアミノ酸配列を認識する。(2)脱イミノ化した配列番号14のヒストンH2Aペプチドおよび配列番号15のヒストンH2Bペプチドを認識する。 シトルリンを含むタンパクとは、関節滑膜のタンパク、細胞抽出液由来タンパクなどタンパク質を構成する一部または全部がシトルリン化(脱イミノ化)されたタンパク質を意味する。本発明のモノクローナル抗体は、ヒト由来の組織・細胞に対する抗体に限定されず、ヒト型に変換されたマウスモノクローナル抗体なども含む。抗原結合性断片とは、免疫グロブリンのFab断片やF(ab')2断片のような、当該抗体の対応抗原に対する結合性(抗原抗体反応性)を維持している抗体断片を意味する。本発明の抗原結合性断片は、Fab断片やF(ab')2断 片に限定されるものではなく、対応抗原との結合性を維持しているいかなる断片であってもよく、遺伝子工学的手法により調製されたものであってもよい。本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、標識して使用することができ、標識には、例えば、ビオチン、蛍光物質、酵素などを用いればよい。 本発明のモノクローナル抗体の作製は、例えば、関節リウマチ患者滑膜由来のシトルリン化タンパク質またはその断片を免疫原として用いて、公知のハイブリドーマ法により作製することができるが、細胞チップを用いた単一細胞操作法(immunospot array assay on a chip;ISAAC法)を用いて、関節リウマチ患者の血液から単離したリンパ球から、CCP抗原に反応する抗体の遺伝子を取得し、そのcDNAを用い公知方法を用いてクローニングして作製することが好ましい。本発明により、関節リウマチに関与するシトルリン化タンパクまたはその断片への特異性が高い抗シトルリン化モノクローナル抗体およびその抗原結合性断片が提供されるため、該モノクローナル抗体またははその抗原結合性断片を用いた免疫測定により、被検試料中のシトルリン化タンパクまたはその断片を測定することが可能になる。すなわち、本発明は、上記した本発明の抗シトルリン化モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、被検試料中のシトルリン化タンパクまたはその断片との抗原抗体反応を利用した免疫測定により、被検試料中のシトルリン化タンパクまたはその断片を測定することを含む、シトルリン化タンパクまたはその断片の測定方法をも提供する。なお、本発明において、「測定」という語には、検出、定量、半定量が包含される。 本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、公知のいずれの免疫測定方法にも利用することができる。すなわち、反応形式に基づき分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法等があり、標識に基づき分類すると、酵素免疫分析、放射免疫分析、蛍光免疫分析等があるが、これらのいずれもが本発明で言う「免疫測定」に包含され、本発明の測定方法に採用することができる。また、各免疫測定に必要な試薬類も周知であり、用いるモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片に特徴があること以外は、通常の免疫測定用キットを用いて免疫測定を行うことができる。すなわち、本発明は、上記した本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を含む、本発明の測定方法を実施するための測定キットも提供する。サンドイッチ法の第2抗体として本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を用いる場合、それらは標識されていてもよい。標識としては、フルオレセイン、FITC、カルモジュリンのような蛍光標識、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリフォスファダーゼ、ペルオキシダーゼのような酵素標識、フェロセンまたはその誘導体、キノンまたはその誘導体、コバルト化合物等の標識を例示することができる。本発明の測定方法は、例えば、固相化抗体と標識抗体とを用いたサンドイッチ法による免疫測定により行なわれる。固相化抗体および標識抗体の双方に本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を採用してもよく、また、いずれか一方に採用してもよい。以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。<抗シトルリン化ペプチドヒトモノクローナル抗体(抗CCP-m抗体)の作成>慢性関節リウマチ(RA)患者のシトルリン化ペプチドに対するヒトモノクローナル抗体の作成は、ISAAC法[Nature Protocols 6, 668-676 (2011)]を用いて行った。具体的には、1μg/mLの抗ヒトIgG抗体(MPBiomedicals)を4℃で一晩置くことで固相化した細胞チップにRA患者由来リンパ球を播種し、3時間培養させた。その後リン酸食塩生理液(PBS)で洗浄後、10μg/mLのビオチン標識cfc1-cyc(化学合成品:Operon)を反応させ、PBSで洗浄後、1μg/mLのCy3標識のストレプトアビジン(sigma)を反応させ、cfc1-cyc特異的スポットを作成した(図1)。また0.5μg/mLのCellTraceOregon Green (Life Technologies)で細胞を蛍光ラベルした。その後蛍光顕微鏡(BX51WI,Olympus)下でスポットを観察し、該当細胞を1つずつ回収した。抗体遺伝子の取得はJinらの方法[Nature Medicine 15, 1088-1092 (2009)]で行った。得られた抗体遺伝子のγ鎖は、配列番号2の塩基配列、λ鎖は、配列番号4の塩基配列であった。抗体タンパクはCHO-S FreeStyle MAXExpression System (インビトロジェン)を用いて産生させ、Protein G Sepharose 4 Fast Flow (GEヘルスケア)を用いて精製し、抗CCP-m抗体を得た。抗CCP-m抗体は、γ鎖に配列番号1のアミノ酸配列、λ鎖に配列番号3のアミノ酸配列を有している。<抗CCP-m抗体のエピトープマッピング>抗CCP-m抗体のエピトープを詳細に解析するために、以下のペプチドを化学合成(operon)した。cfc1:SHQESTXGRSRGRSGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ser-Thr-Xaa-Gly-Arg-Ser-Arg-Gly-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号5)cfc1_E4A:SHQASTXGRSRGRSGRSGS(Ser-His-Gln-Ala-Ser-Thr-Xaa-Gly-Arg-Ser-Arg-Gly-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号6)cfc1_S5A:SHQEATXGRSRGRSGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ala-Thr-Xaa-Gly-Arg-Ser-Arg-Gly-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号7)cfc1_T6A:SHQESAXGRSRGRSGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ser-Ala-Xaa-Gly-Arg-Ser-Arg-Gly-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号8)cfc0_R7A:SHQESTAGRSRGRSGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ser-Thr-Ala-Gly-Arg-Ser-Arg-Gly-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号9)cfc1_G8A:SHQESTXARSRGRSGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ser-Thr-Xaa-Ala-Arg-Ser-Arg-Gly-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号10)cfc1_R9A:SHQESTXGASRGRSGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ser-Thr-Xaa-Gly-Ala-Ser-Arg-Gly-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号11)cfc1_S10A:SHQESTXGRARGRSGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ser-Thr-Xaa-Gly-Arg-Ala-Arg-Gly-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号12)cfc1_R11A:SHQESTXGRSAGRSGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ser-Thr-Xaa-Gly-Arg-Ser-Ala-Gly-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号13)cfc1_G12A:SHQESTXGRSRARSGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ser-Thr-Xaa-Gly-Arg-Ser-Arg-Ala-Arg-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号14)cfc1_R13A:SHQESTXGRSRGASGRSGS(Ser-His-Gln-Glu-Ser-Thr-Xaa-Gly-Arg-Ser-Arg-Gly-Ala-Ser-Gly-Arg-Ser-Gly-Ser:配列番号15)cfc1_TXGR:AAAAATXGAARAAAAAAAA(Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Thr-Xaa-Gly-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala:配列番号16)上記のX(Xaa)は、シトルリン化されたアルギニン残基を示している。上記の合成ペプチド、それぞれ10μg/mLをMaxisorp 96 well plate(Nunc)に4℃で一晩置くことで固相化した。3%牛血清アルブミン(BSA)と0.1%ツイーン(Tween)-20を含むPBSで1時間ブロッキングした後、0.1%Tween-20を含むPBSで洗浄し、1μg/mLの抗CCP-m抗体で1時間インキュベートした。0.1%Tween-20を含むPBSで洗浄し、1mg/mLのアルカリフォスファターゼ標識されたanti-humanIgG-Fc(sigma)で1時間インキュベートした。0.1%Tween-20を含むPBSで洗浄し、1μg/mLのp-Nitrophenyl Phosphate(sigma)を用いて発色させた。プレートリーダー[FLUOstar OPTIMAfluorescence microplate reader (BMG LABTECH)]を用いて吸光度405nmの測定を行った(図2)。その結果、cfc0_R7Aおよびcfc1_G8Aはシグナルが検出されなかった。cfc1_T6Aおよびcfc1_R11Aシグナルが顕著に減少していた。cfc1_R13Aはシグナルがやや減少していた。この結果から、cfc1ペプチドのT6(6番目チロシン)、X7(7番目シトルリン)、G8(8番目グリシン)、R11(11番目アルギニン)が結合に必須と考え、該当箇所以外を全てアラニンに置換したペプチドcfc1_TXGRで同様の検討を行ったが、抗CCP-m抗体は、cfc1_TXGRには結合しなかった。<抗CCP-m抗体の親和性測定>10μg/mLのcfc1-cycをMaxisorp96 well plate (Nunc)に4℃で一晩置くことで固相化した。3%BSAと0.1%Tween-20を含むPBSで1時間ブロッキングした後、0.1%Tween-20を含むPBSで洗浄し、予め450nM, 257nM, 147nM, 84nM, 48nM, 27nM,16nM, 9nM, 5nMのcfc1-cycを加えインキュベートさせた1nMの抗CCP-m抗体をウエルに加え、1時間インキュベートした。0.1%Tween-20を含むPBSで洗浄し、1μg/mLのアルカリフォスファターゼ標識されたanti-human IgG-Fc (Sigma)で1時間インキュベートした。0.1%Tween-20を含むPBSで洗浄し、1μg/mLのp-NitrophenylPhosphate(sigma)を用いて発色させた。プレートリーダー[FLUOstar OPTIMAfluorescence microplate reader (BMG LABTECH)]を用いて吸光度405nmの測定を行った。得られた吸光度よりScatchardプロットを作成し、その傾きの逆数を算出することで抗体の親和性を算出した(図3)。同様の実験を4回行い、その平均値をこの抗体の親和性とした。その結果抗CCP-m抗体の親和性は1.5×10-7 (M)であった。<抗CCP-m抗体のペルオキダーゼ(POD)標識>200μgの抗CCP-m抗体をペルオキシダーゼ標識用キット-NH2 (同仁化学)を用いてPOD標識した。<抗CCP-m抗体のビオチン標識>200μgの抗CCP-m抗体をBiotin-AC5-OSu(同仁化学)を用いてビオチン標識した。<PAD4(Peptidyl Arginine Deiminase 4)の作成>PAD4のcDNAはプロメガ社より購入した。PAD4のオープンリーディングフレーム(ORF)を増幅させるため、以下のプライマーを使用した。・PAD4_U 5’-CACCTATCTACATCACCAAGATATGGCCCAGGGGACATTGATCC-3’(配列番号17)・PAD4_L 5’-TCGACCACTGTGCTGCGGCCGCTTAAACGGGCACCATGTTCCAC-3’ (配列番号18)このプライマーを用い、primeSTAR DNApolymerase (TaKaRa)を用いてPCRにより遺伝子産物を増幅させた。この遺伝子産物をpEUE01 ベクター(セルフリーサイエンス)に導入し、PAD4発現プラスミドを作成した。WEPRO7240Expression Kit(セルフリーサイエンス)を用いて、PAD4タンパクを合成した。<脱イミノ化処理〜ウエスタンブロット1>HEL293細胞の細胞抽出液、細胞質画分、核画分はNuclear ExtractKit (Active Motif)用いて抽出し、ヒストン画分はHistonePurification Mini Kit (Active Motif)を用いて抽出した。得られたそれぞれの抽出物を作成した20μLにPAD4タンパク1μLおよび最終濃度10mMの塩化カルシウム(CaCl2)、5mMのジチオトレイトール(DTT)を加え、37℃で1時間インキュベートさせ、脱イミノ化させた。脱イミノ化させたタンパクを等量のLaemmli Sample Buffe(バイオラッド)を加え、95℃で5分加熱し、すぐさま氷上で5分冷却した。サンプルを5-20% SDS-PAGEゲル(バイオクラフト)にアプライし電気泳動を行った。続いてImmoblion-P(Millipore)にブロットし、メンブレンを作成した。作成したメンブレンに対し、ブロッキング試薬としてbl0K NoiseCancelling Reagents (Millipore)、検出用抗体としてPOD標識した抗CCP-m抗体を用い、SNAP i.d.システム (Millipore)を用いて抗体のインキュベーションを行った。化学発光基質としてECL prime (GEヘルスケア)を用い、FUJI MEDICALX-RAY FILM (富士フイルム)に感光させた(図4)。脱イミノ化反応を行った各細胞抽出液は、抗CCP-m抗体を用いる事で、様々な分子量の位置にバンドが検出された。一方脱イミノ化反応を行わなかった各細胞抽出液では、何も検出されなかった。細胞質画分よりも核画分もしくはヒストン画分でよりバンドが検出された。<免疫沈降〜質量分析〜ウエスタンブロット2>脱イミノ化反応を行ったHEL293細胞の細胞抽出液を、抗CCP-m抗体を用いて免疫沈降を行った。すなわち、Protein GSepharose 4 Fast Flow (GEヘルスケア)をPBSで平衡化した。平衡化したProtein GSepharose 4 Fast Flowを、脱イミノ化反応を行ったHEL293細胞の細胞抽出液に加え、4℃で1時間振とうした。振とう後8,000rpmで遠心を行い、上澄みを回収した。回収した上澄みに10μgの抗CCP-m抗体を加え4℃で1時間振とうした。振とう後予めPBSで平衡化したProtein GSepharose 4 Fast Flowを加え、4℃で1時間振とうした。振とう後8,000rpmで遠心を行い、沈殿物を回収した。沈殿物にPBSを加え懸濁し、振とう後8,000rpmで遠心を行い、沈殿物を回収し、沈殿物の洗浄を行った。この洗浄操作を合計5回行った。洗浄後の沈殿物にLaemmli Sample Buffe(バイオラッド)を加え95℃で5分加熱し、すぐさま氷上で5分冷却した。サンプルを15% SDS-PAGEゲル及び7.5-15%SDS-PAGE用ゲル(いずれもバイオクラフト)にアプライし電気泳動を行った。泳動後、Bio-Safe クマシーステイン(バイオラッド)を用いてゲルの染色を行った。おおよそ15kDa、17kDa付近のバンドを切り出し(図5)、nanoLC-MS/MSによる質量分析を行った。nanoLC-MS/MSによる質量分析により、ヒストンH2AおよびH2B由来ペプチドが検出された(図6)。再度脱イミノ化反応を行ったHEL293細胞の細胞抽出液を、抗CCP-m抗体を用いて免疫沈降を行った。すなわち、Laemmli SampleBuffe(バイオラッド)を加えたサンプルを95℃で5分加熱し、すぐさま氷上で5分冷却した。サンプルを5-20% SDS-PAGEゲル(バイオクラフト)にアプライし電気泳動を行った。続いてImmoblion-P(Millipore)にブロットし、メンブレンを作成した。作成したメンブレンに対し、ブロッキング試薬としてbl0k Noise CancellingReagents (Millipore)、検出用抗体として抗ヒストンH2AもしくはH2B抗体およびPOD標識抗ウサギ抗体(Abcam)を用い、SNAP i.d.システム (Millipore)を用いて抗体のインキュベーションを行った。化学発光基質としてECL prime (GEヘルスケア)を用い、FUJI MEDICALX-RAY FILM(富士フイルム)に感光させた。抗CCP-m抗体で免疫沈降したサンプルではおおよそ15kDaもしくは17kDa付近にバンドが検出されたが、コントロール抗体で免疫沈降したサンプルではバンドは検出されなかった(図7)。この結果から、抗CCP-m抗体は脱イミノ化したヒストンH2AおよびH2Bペプチドを認識できることが示唆された。<ウエスタンブロット3>健常人ボラティアおよびRA患者由来血清2.5μLを等量のLaemmli SampleBuffe(バイオラッド)を加え、95℃で5分加熱し、すぐさま氷上で5分冷却した。サンプルを5-20% SDS-PAGEゲル(バイオクラフト)にアプライし電気泳動を行った。続いてImmoblion-P(Millipore)にブロットし、メンブレンを作成した。作成したメンブレンに対し、ブロッキング試薬としてbl0k NoiseCancelling Reagents (Millipore)、検出用抗体としてビオチン標識した抗CCP-m抗体およびPOD標識ストレプトアビジン(Abcam)を用い、SNAP i.d.システム (Millipore)を用いて抗体のインキュベーションを行った。化学発光基質としてECL prime (GEヘルスケア)を用い、FUJI MEDICALX-RAY FILM(富士フイルム)に感光させた。その結果を図8に示す。健常人ボランティア由来血清では、50kDa付近および25kDa付近にバンドが検出された。一方、RA患者由来血清では50kDa付近および25kDa付近以外にも様々な分子量の位置にバンドが検出された。<脱イミノ化処理〜ウエスタンブロット4>健常人ボラティア及びRA患者由来血清にPAD4タンパク1μLおよび最終濃度10mMのCaCl2、5mMのDTTを加え、37℃で1時間インキュベートさせ、脱イミノ化させた。脱イミノ化させたタンパクを等量のLaemmli SampleBuffe(バイオラッド)を加え、95℃で5分加熱し、すぐさま氷上で5分冷却した。サンプルを5-20% SDS-PAGEゲル(バイオクラフト)にアプライし電気泳動を行った。続いてImmoblion-P(Millipore)にブロットし、メンブレンを作成した。作成したメンブレンに対し、ブロッキング試薬としてbl0k NoiseCancelling Reagents (Millipore)、検出用抗体としてビオチン標識した抗CCP-m抗体およびPOD標識ストレプトアビジンを用い、SNAP i.d.システム (Millipore)を用いて抗体のインキュベーションを行った。化学発光基質としてECL prime (GEヘルスケア)を用い、FUJI MEDICALX-RAY FILM(富士フイルム)に感光させた。その結果を図9に示す。脱イミノ化反応を行ったRA患者由来血清では、脱イミノ化する前と比べて、バンドがはっきり検出されるようになった。また脱イミノ化反応を行った健常人ボランティア由来血清は、RA患者由来血清と同じ分子量の位置にバンドが検出された。<免疫沈降〜質量分析>脱イミノ化反応を行ったRA患者由来血清を、抗CCP-m抗体を用いて免疫沈降を行った。すなわち、Protein GSepharose 4 Fast Flow (GEヘルスケア)をPBSで平衡化した。平衡化したProtein GSepharose 4 Fast Flowを、脱イミノ化反応を行ったRA患者由来血清に加え、4℃で1時間振とうした。振とう後8,000rpmで遠心を行い、上澄みを回収した。回収した上澄みに10μgの抗CCP-m抗体を加え4℃で1時間振とうした。振とう後予めPBSで平衡化したProtein GSepharose 4 Fast Flowを加え、4℃で1時間振とうした。振とう後8,000rpmで遠心を行い、沈殿物を回収した。沈殿物にPBSを加え懸濁し、振とう後8,000rpmで遠心を行い、沈殿物を回収し、沈殿物の洗浄を行った。この洗浄操作を合計5回行った。洗浄後の沈殿物にLaemmli SampleBuffe(バイオラッド)を加え95℃で5分加熱し、すぐさま氷上で5分冷却した。サンプルを7.5-15% SDS-PAGE用ゲル(バイオクラフト)にアプライし電気泳動を行った。泳動後、銀染色MSキット(和光)を用いてゲルの染色を行った(図10)。おおよそ250, 170, 160,120, 100, 90, 70, 55, 50, 45, 40, 38kDa付近のバンド計12本を切り出し、nanoLC-MS/MSによる質量分析を行った。nanoLC-MS/MSによる質量分析により、以下のタンパク由来ペプチドが検出された。・Alpha-1-antitrypsin・Alpha-2-macroglobulin・Carboxypeptidase Ncatalytic chain・Complement C3・Complement factor B・Fibrinogen alpha chain・Fibrinogen beta chain・Fibrinogen gamma chain・Haptoglobin・Hornerin ・Ig gamma-1 chain C region・Ig gamma-4 chain C region・Inter-alpha-trypsininhibitor heavy chain H1・Plasminogen・Serotransferrin・Serum albminなお、450, 350kDa付近のバンドも解析を行ったが、有意なペプチドは検出できなかった。 本発明のIgGモノクローナルヒト抗体を用いることで、関節リウマチ患者の血清に存在する関節リウマチ患者滑膜由来のシトルリン化タンパク質またはその断片を解析することができ、関節リウマチの病態解析、早期診断、病気の進行状況を的確に把握するためのツールとして有用である。シトルリンを含むタンパクまたはその断片を認識する抗体であって、配列番号1のアミノ酸配列のγ鎖と配列番号3のアミノ酸配列のλ鎖を有するIgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。シトルリンを含むタンパク断片を認識する抗体である請求項1に記載のIgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。シトルリンを含むタンパク断片が19アミノ酸からなるペプチドを含む請求項2に記載のIgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。19アミノ酸からなるペプチドが、配列番号5のペプチドおよび配列番号6、7、8,9,12,13のいずれか1つ以上ペプチドである請求項2または3に記載のIgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。脱イミノ化した配列番号19のヒストンH2Aペプチドおよび配列番号20のヒストンH2Bを認識する請求項1〜4に記載のIgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。請求項1〜5のいずれかの項記載のIgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、被検試料中のシトルリンを含むタンパクまたはその断片との抗原抗体反応を利用した検査により、被検試料中のシトルリン化抗原の検出をすることを含む、シトルリン化抗原の検査方法。被検試料が、関節リウマチ患者の血清である請求項6に記載の検査方法。請求項6または7記載の検査方法を実施するためのキットであって、請求項1〜5のいずれかの項記載のIgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を含むキット。IgGモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が標識されたものである請求項8に記載のキット。 【課題】関節リウマチの病態解析、早期診断、病気の進行状況の把握などに使用するヒトモノクローナル抗体の提供。【解決手段】関節リウマチ患者のリンパ球からシトルリン化タンパクまたはその断片を認識するヒトIgG抗体の遺伝子を取得し、ヒトモノクローナルIgG抗体を作製した。この抗体は、関節リウマチ患者の血清に存在する関節リウマチ患者滑膜由来のシトルリン化タンパク質またはその断片を解析することができ、関節リウマチの病態解析や早期診断、病気の進行状況把握などに有用である。【選択図】図9配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る