タイトル: | 公開特許公報(A)_セラミックスペースト及び積層体 |
出願番号: | 2013031970 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C04B 35/00,C04B 35/622,H01L 41/18,H01L 41/37,H01L 41/314,G01N 27/416 |
大森 丈史 岩田 浩一 阿部 真博 JP 2013227192 公開特許公報(A) 20131107 2013031970 20130221 セラミックスペースト及び積層体 日本碍子株式会社 000004064 特許業務法人アイテック国際特許事務所 110000017 大森 丈史 岩田 浩一 阿部 真博 JP 2012073050 20120328 C04B 35/00 20060101AFI20131011BHJP C04B 35/622 20060101ALI20131011BHJP H01L 41/18 20060101ALN20131011BHJP H01L 41/37 20130101ALN20131011BHJP H01L 41/314 20130101ALN20131011BHJP G01N 27/416 20060101ALN20131011BHJP JPC04B35/00 YC04B35/00 GH01L41/18H01L41/37H01L41/314G01N27/46 331 5 1 OL 17 4G030 4G030AA16 4G030AA17 4G030AA32 4G030AA36 4G030AA37 4G030BA07 4G030CA08 4G030GA09 4G030GA14 4G030GA17 4G030GA27 本発明は、セラミックスペースト及び積層体に関する。 従来、NOxセンサーは、貴金属と固体電解質層の原料粉体とを含む検出電極を備え、NOxセンサーの使用中におけるポンプセルのインピーダンス及び測定感度を安定化することができるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特開2008−164411号公報 ところで、このNOxセンサーは、安定化したジルコニアの粉末と、有機バインダーと、可塑剤と、有機溶剤とを混合してペーストとし、このペーストをドクターブレード法などによりグリーンシートとしたあと、このグリーンシートを積層して積層体を得て、その後焼成することにより作製する。このとき、例えば、複数のNOxセンサーを一体化して積層させた積層体を作製し、切断したのちに焼成することにより複数のNOxセンサーを作製することがある。この積層体の切断時に、切断面が粗くなることがあり、例えば、焼成後の切断面にクラックが生じるなど、不具合が生じることがあった。 本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、表面を好適にして不具合の発生をより低減することができるセラミックスペースト及び積層体を提供することを主目的とする。 上述した主目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、積層体を作製するセラミックスペーストに特定の添加剤を加えると、表面を好適にして不具合の発生をより低減することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明のセラミックスペーストは、 セラミック粒子と、 樹脂と、 溶剤と、 エーテル構造、ウレタン構造、水酸基含有構造、エステル構造及びアクリル構造のうち1以上を含む第1構造を有する第1群の添加剤と、前記第1群の添加剤のうちいずれか1以上の構造に加え、イミダゾリン構造、エチレンジアミン構造及びアミン構造のうち1以上を含む第2構造を有する第2群の添加剤と、の中から選択された1以上の添加剤と、 を備えたものである。 本発明の積層体は、上述したセラミックスペーストを用いて作製したものである。例えば、本発明の積層体は、前記セラミックスペーストを用いて必要に応じて各グリーンシートに所定のパターンを形成したり、あるいはキャビティを形成したうえでグリーンシート同士を圧着して積層したものである。 本発明のセラミックスペースト及び積層体は、表面を好適にして不具合の発生をより低減することができる。この理由は定かではないが、セラミックスペーストを用いて作製された積層体を切断する際、上述したいずれかの添加剤に含まれる官能基などが作用し、積層体の断面と切断する刃との粘着性などをより好適な状態とするものと考えられる。このため、切断面の形状が好適になることにより、例えば、切断後の積層体の切断面で生じうるクラックなどをより抑制し、不具合の発生をより低減することができるものと推察される。積層体90及びNOxセンサー100の構成の概略を示す構成図。センサー素子の作製工程の一例を示すフローチャート。添加剤を加えない比較例12の切断面の顕微鏡写真。表面粗さに対するクラック率の関係図。 次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、積層体90及びNOxセンサー100の構成の概略を示す構成図であり、図2は、センサー素子の作製工程の一例を示すフローチャートである。図1に示す積層体90は、本発明のセラミックスペーストを用いて作製することができる。この本発明のセラミックスペーストは、セラミック粒子と、樹脂と、溶剤と、所定の添加剤と、を含んで構成されている。 セラミック粒子は、例えば、金属酸化物や金属炭化物、金属窒化物、金属複合化合物としてもよいし、これらの混合物としてもよい。具体的には、金属酸化物としては、例えば、Al2O3やSiO2、TiO2、ZnO、ZrO2などの粒子が挙げられ、このうちZrO2、特にYを添加した安定化ZrO2などが好ましい。金属炭化物としては、例えば、SiCやB4C、CaC2などが挙げられる。金属窒化物としては、例えば、BNやSi3N4、GaNなどが挙げられる。金属複合化合物は、例えば、Pb(Zr,Ti)O3や、NaNbO3、LiNbO3、LiTaO3などの金属複合酸化物としてもよい。このセラミック粒子の粒度は、目的とする積層体に応じて適宜選択することができる。例えば、Al2O3の場合、平均粒径が0.10μm以上0.40μm以下の範囲が好ましく、0.15μm以上0.35μm以下がより好ましい。また、ZrO2の場合、平均粒径が0.40μm以上0.80μm以下の範囲が好ましく、0.5μm以上0.7μm以下がより好ましい。ここで、「平均粒径」は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定により測定したメディアン径(D50)とする。このセラミック粒子の配合量は、例えば、Al2O3の場合、セラミックスペースト全体に対して25質量%以上60質量%以下の範囲が好ましく、35質量%以上55質量%以下の範囲がより好ましい。また、ZrO2の場合、セラミックスペースト全体に対して40質量%以上70質量%以下の範囲が好ましく、55質量%以上65質量%以下の範囲がより好ましい。 樹脂は、セラミック粒子を固化するバインダーとして機能する。この樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂などが挙げられ、このうちブチラール樹脂が好ましい。このブチラール樹脂は、ブチラール樹脂構造を有するものとすればよいが、例えば、式(1)に示すように、ブチラール基と、アセチル基と、水酸基とを所定の割合で含むものとしてもよい。ブチラール樹脂は、例えば、ブチラール化度が60mol%以上75mol%以下のものとしてもよいし、アセチル基が3mol%以上10mol%以下のものとしてもよいし、水酸基が20mol%以上40mol%以下のものとしてもよい。このブチラール樹脂は、例えば、分子量が4×104未満の低重合度のものとしてもよいし、4×104以上1×105以下の中重合度のものとしてもよいし、1×105を超える高重合度のものとしてもよい。このうち、低重合度のものを用いることが好ましい。低重合度のブチラール樹脂では、例えば、転移点温度Tgが58℃以上68℃以下、粘度が8mPa・s以上50mPa・s以下の範囲としてもよい。中重合度のブチラール樹脂では、例えば、転移点温度Tgが60℃以上68℃以下、粘度が60mPa・s以上180mPa・s以下の範囲としてもよい。高重合度のブチラール樹脂では、例えば、転移点温度Tgが65℃以上90℃以下、粘度が80mPa・s以上200mPa・s以下の範囲としてもよい。このブチラール樹脂の配合量は、セラミックスペースト全体に対して4質量%以上15質量%以下の範囲が好ましく、6質量%以上11質量%以下の範囲がより好ましい。 溶剤は、セラミック粒子や樹脂を含んでペースト化するものであれば特に限定されず、一般的な有機溶剤とすることができる。この溶剤は、例えば、炭素数6〜12の一価アルコールや、セロソルブ系の溶剤、エステル結合を有する化合物、ターピネオール構造を有する化合物などとしてもよく、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。この溶剤は、例えば、2−エチルヘキサン酸、2−エチルヘキサノール、酢酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。また、ターピネオール化合物としては、例えば、α−ターピネオール、β−ターピネオール、γ−ターピネオールや、ジヒドロターピネオールなどが挙げられ、このうち式(2)に示すジヒドロターピネオール(メンタノールとも称する)が好ましい。この溶剤の配合量は、セラミックスペースト全体に対して22質量%以上30質量%以下の範囲が好ましく、24質量%以上28質量%以下の範囲がより好ましい。 添加剤は、例えば、セラミックスペーストをセラミックスグリーンシートの接着層に用い、このシートを積層した積層体を切断する際の潤滑剤として作用するものとしてもよい。この添加剤は、エーテル構造、ウレタン構造、水酸基含有構造、エステル構造及びアクリル構造のうち1以上を含む第1構造を有する第1群の添加剤と、第1群の添加剤のうちいずれか1以上の構造に加え、イミダゾリン構造、エチレンジアミン構造及びアミン構造のうち1以上を含む第2構造を有する第2群の添加剤と、の中から選択された1以上である。この添加剤の配合量は、セラミックスペーストの全体に対して0.1質量%以上10.0質量%以下の範囲が好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下の範囲がより好ましい。この配合量が0.1質量%以上では、セラミックスグリーンシートの切断面を好適にするという添加剤の効果をより発揮することができる。また、10.0質量%以下では、例えばセラミックスペーストの使用時に、気泡の発生などの不具合が起きるのをより抑制することができる。 第1群の添加剤は、エーテル構造、ウレタン構造、水酸基含有構造、エステル構造及びアクリル構造のうち1以上を含む第1構造を有するものであるが、セラミック粒子に親和性を有する官能基を含む低分子有機化合物、セラミック粒子に親和性を有する官能基を含む高分子共重合体、セラミック粒子に親和性を有する官能基を含むブロックコポリマー、セラミック粒子に親和性を有する官能基を含むオリゴマー、及びセラミック粒子に親和性を有する官能基を含むフェノールエトキシレートのうち少なくとも1種を含有するものとしてもよい。具体例を以下説明する。セラミック粒子に親和性を有する官能基を含む低分子有機化合物を含有するものとしては、例えば、BYK社のDISPERBYK(登録商標、以下同じ)−108などが挙げられる。セラミック粒子に親和性を有する官能基を含む高分子共重合体を含有するものとしては、例えば、BYK社のDISPERBYK−162、DISPERBYK−164、DISPERBYK−182、DISPERBYK−2050などが挙げられる。また、セラミック粒子に親和性を有する官能基を含むブロックコポリマーを含有するものとしては、例えば、DISPERBYK−2155、DISPERBYK−2164などが挙げられる。また、フェノールエトキシレートを含有するものとしては、例えば、ADEKA社のアデカトール(登録商標、以下同じ)PC−6、アデカトールPC−8、アデカトールPC−10、アデカトールSP−12などが挙げられる。またその他、ポリオキシアルキレンエーテルを含むものとして、アデカノール(登録商標、以下同じ)B−4001などが挙げられる。 また、第1群の添加剤としては、サンノプコ社のSNスパース(登録商標、以下同じ)70(非イオン系活性剤)、SNウエット366(非イオン系活性剤)、SNディスパーサント9228(エステル型非イオン系活性剤)などが挙げられる。また、第1群の添加剤としては、EVONIC社のTEGO(登録商標、以下同じ) Dispers610(高分子脂肪酸誘導体の溶液)、TEGO Dispers652(脂肪酸誘導体)、TEGO Dispers670(変性ポリエステル)、TEGO Dispers685(変性ポリエステル)、TEGO Dispers700(脂肪酸誘導体溶液)などが挙げられる。 第2群の添加剤は、第1群の添加剤のうちいずれか1以上の構造に加え、イミダゾリン構造、エチレンジアミン構造及びアミン構造のうち1以上を含む第2構造を有するものである。即ち、第2群の添加剤は、第1構造のうち1又は2以上の構造を備え、且つ第2構造のうち1又は2以上の構造を有するものとする。この第2群の添加剤は、アルケニルイミダゾリン構造を有する化合物及びエチンジアミンのポリオキシアルキレン縮合物のうち少なくとも1種を含有するものとしてもよい。具体例を以下説明する。アルケニルイミダゾリン構造を有する化合物としては、例えば、BYK社のDISPERBYK−109などが挙げられる。また、エチンジアミンのポリオキシアルキレン縮合物を含有するものとしては、例えば、ADEKA社のアデカノールTR−702、アデカノールTR−704、アデカプルロニック(登録商標、以下同じ)TR−913Rなどが挙げられる。 また、第2群の添加剤としては、サンノプコ社のノプコ(登録商標、以下同じ)38−C(アニオン系活性剤)、ノプコウエット50(アニオン系活性剤)などが挙げられる。また、第2群の添加剤としては、EVONIC社のTEGO Dispers630(アミン誘導体含有高分子ポリカルボン酸溶液)、TEGO Dispers662C(特殊カチオン系界面活性剤)などが挙げられる。 また、本発明の添加剤として用いることが好ましくない第3群の添加剤としては、例えば、第1構造及び第2構造のうちいずれか1以上の構造を備え、且つリン酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、アルキルアンモニウム塩、酸基を含む化合物のうち1以上を含有するものなどが挙げられる。具体的には、BYK社の長鎖ポリアミノアマイド極性酸エステル塩を含有するDISPERBYK−101、酸基を持ったポリマー塩を含有するDISPERBYK−106、酸性ポリマーのアンモニウム塩を含有するDISPERBYK−140、リン酸エステル塩を含有するDISPERBYK−145、酸基を含む共重合物のアルキロールアミン塩を含有するDISPERBYK−180などが挙げられる。 また、第3群の添加剤としては、サンノプコ社のSNスパース(ポリカルボン酸アミン塩)、SNディスパーサント5027(ポリカルボン酸アンモニウム塩+アニオン20%)、SNディスパーサント5468(ポリカルボン酸アンモニウム塩+アニオン40%)、ノプコサントRFA(ポリカルボン酸アンモニウム塩+アニオン40%)、SNディスパーサント5020(ポリカルボン酸アンモニウム塩+アニオン40%)などが挙げられる。また、第3群の添加剤としては、EVONIC社のTEGO Dispers710(ブチルアセテート/メトキシプロピルアセテート:ウレタンポリマー)などが挙げられる。 本発明のセラミックスペーストは、その他の成分として、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、一般的なものを用いることができ、例えば、エステル部の炭素数が4〜12のフタル酸ジアセテートなどを用いることができる。 本発明のセラミックスペーストは、例えば、セラミック粒子を含むグリーンシート上に形成されるものとしてもよい。グリーンシート上に形成されるセラミックスペーストの厚さは、例えば、1μm以上としてもよく、10μm以上や、80μm以上としてもよい。形成厚さがより大きくなればなるほど、本発明のセラミックスペーストの効果をより発揮しやすい。セラミックスペーストの形成方法は、スクリーン印刷や、グラビア印刷、ドクターブレードなどの方法を採用することができる。グリーンシートは、例えば、セラミック粒子と、ブチラール樹脂とを含むものとしてもよい。なお、セラミック粒子は、上述したいずれかのものを利用することができる。このとき、グリーンシートに含まれるブチラール樹脂は、セラミックスペーストに含まれるものと異なるものとしてもよい。こうすれば、例えば、セラミックスペーストの混合溶剤が、セラミックスペーストのブチラール樹脂を溶解するが、グリーンシートに含まれるブチラール樹脂を溶解しにくいものとすることができる。例えば、セラミックスペーストには低重合度のブチラール樹脂を含むものとし、グリーンシートには中重合度のブチラール樹脂を含むものとしてもよい。 本発明の積層体は、上述したセラミックスペーストを用いて作製したものである。例えば、本発明の積層体は、上記セラミックスペーストを用いて必要に応じて各グリーンシートに所定の回路パターンを印刷後に乾燥させて溶剤を蒸発させ、セラミックス層を形成したうえでグリーンシート同士を圧着して積層したものとしてもよい。また、この積層体は、必要に応じてパンチ打ち抜き等による空間形成が行われてもよい。このとき、グリーンシートに含まれるブチラール樹脂は、セラミックス層とは異なるものとするのが好ましい。例えば、セラミックスペーストには低重合度のブチラール樹脂を含むものとし、グリーンシートには中重合度のブチラール樹脂を含むものとしてもよい。こうすれば、セラミックスペーストに含まれる溶剤によって生じるグリーンシートに対するシートアタックをより抑制しやすい。 次に、上述したセラミックスペーストを用いた積層体及びセンサー素子について説明する。ここでは、ガスセンサーであるNOxセンサー100について説明する。NOxセンサー100は、図1下段に示すように、被測定ガス中のNOxの濃度を検出するセンサー素子110と、このセンサー素子110に隣接するヒーター部70とを備えている。このセンサー素子110は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図1で下側からこの順に積層された構造を有する。また、これら6つの層を形成する固体電界質は緻密なものである。ヒーター部70は、第2基板層2と第3基板層3との間に挟まれるようにして形成されており、抵抗発熱体72の発熱によりセンサー素子110の全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整可能となっている。このようなNOxセンサー100の構造や作動原理は公知である(例えば特開2008−164411号公報参照)。 センサー素子110は、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6とを積層して形成されている。このセンサー素子110のうち、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に先端(図1にて左端)から奥へ連通するように形成されている。第1固体電解質層4と第2固体電界質層6との間には、スペーサ層5をくり抜いて設けられた空間として、ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40とが形成されている。また、第3基板層3とスペーサ層5との間には、第1固体電解質層4をくり抜いて設けられた空間として、基準ガス導入空間43が形成されている。この基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。第1固体電解質層4と第3基板層3との間には、大気導入層48が設けられ、この大気導入層48には、基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入される。第3基板層3の上面と第1固体電解質層4の下面との間には基準電極42が形成されており、この基準電極42の周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。この基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。 第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整する空間である。第1内部空所20内に形成された内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6のうち内側ポンプ電極22と反対側の面に設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極22,23に挟まれた第2固体電解質層6とによって主ポンプセル21が構成されている。なお、内側ポンプ電極22は、第2固体電解質層6の下面に形成された天井電極部22aと、第1固体電解質層4の上面に形成された底部電極部22bとにより構成されている。この主ポンプセル21を作動させることによって酸素分圧を調整可能である。また、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサーセル、すなわち、主ポンプ制御用の酸素分圧検出センサーセル80が構成されている。この主ポンプ制御用酸素分圧検出センサーセル80により、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出可能である。 第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中のNOx濃度の測定に係る処理を行うための空間であり、補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。補助ポンプセル50は、第2内部空所40内にてトンネル状に形成された補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6とによって構成されている。また、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサーセル81が、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって構成されており、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御可能となっている。そして、測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって測定ポンプセル41が構成されており、この測定ポンプセル41により被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定電極44は、多孔体の第4拡散律速部45によって被覆されており、第2内部空所40内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサーセル82が構成されており、このセルにより測定電極44の周囲の酸素分圧を検出可能である。 このような構成を有するNOxセンサー100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例してNOxの還元によって発生する酸素が測定ポンプセル41より汲み出され、それによって流れるポンプ電流に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。 こうしたセンサー素子110を作製する製造方法の一例を以下に説明する。図2に示すように、まず、グリーンシート上に塗布するセラミックスペーストを調整する(ペースト調製工程S100)。セラミックスペーストは、セラミック粒子と、樹脂と、溶剤と、エーテル構造、ウレタン構造、水酸基含有構造、エステル構造及びアクリル構造のうち1以上を含む第1構造を有する第1群の添加剤と、第1群の添加剤のうちいずれか1以上の構造に加え、イミダゾリン構造、エチレンジアミン構造及びアミン構造のうち1以上を含む第2構造を有する第2群の添加剤と、の中から選択された1以上の添加剤と、を混合する。セラミック粒子としては、安定化剤のY2O3を4mol%添加したZrO2粒子を用いることができる。また、多孔体の部分には、Al2O3を用いることができる。添加剤としては、セラミック粒子に親和性を有する官能基を含む高分子共重合体、前記セラミック粒子に親和性を有する官能基を含むブロックコポリマー、及びフェノールエトキシレートのうち少なくとも1種を含有する第1群の添加剤を用いるものとしてもよい。あるいは、アルケニルイミダゾリン構造を有する化合物及びエチンジアミンのポリオキシアルキレン縮合物のうち少なくとも1種を含有する第2群の添加剤を用いるものとしてもよい。第1群の添加剤及び第2群の添加剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。このセラミックスペーストを用いて、第1基板層1、第2基板層2、第3基板層3、第1固体電解質層4、スペーサ層5及び第2固体電界質層6を積層することができる。混合は、例えば、各原料をポットミルやボールミル、ビーズミル、トロンメル、遊星ミル、アトライターなどを用いて行うことができる。 次に、セラミック粒子をテープ状に成形してグリーンシートを作製する(グリーンシート成形工程S110)。グリーンシートは、例えば、セラミック粒子と、有機バインダーと有機溶剤とを混合し、テープ成形により成形することができる。セラミック粒子としては、上記安定化ZrO2粒子を用いることができる。ここでは、6層分のグリーンシートを作製するものとした。 次に、センサー素子110の第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6のそれぞれに対応して、電極や絶縁層、抵抗発熱体等のパターンを形成し、セラミックスペーストを塗布したのち乾燥する(印刷・乾燥工程S120)。各パターンは、例えば、スクリーン印刷やドクターブレードなどの方法により形成することができる。また、グリーンシート上に塗布する際のセラミックスペーストの形成方法は、スクリーン印刷や、グラビア印刷、ドクターブレードなどの方法を採用することができる。続いて、印刷・乾燥後のセンサー素子110の第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6とを積層し一体化して積層体90(図1上段参照)とする(積層工程S130)。 こうして得られた積層体90は、複数個のセンサー素子110を包含したものである。この積層体90を切断してNOxセンサーの大きさに切り分ける(切断工程S140)。グリーンシート積層体から多数を個片に分割する場合には、ナイフ刃で切断するものとしてもよい。積層体の切断には直刃による切断、斜め刃による切断、回転刃による切断等が挙げられ、これらのいずれかにより切断工程を行うことができる。ここで、ナイフ刃により積層体90を切断する際に、切断面のナイフカットによる荒れを如何に抑えるかという課題がある。一般的に、切断時に切断面が荒れていると、焼成後のクラックの起点となり、製品製造上の大きな問題となる。この点を詳しく検討したところ、切断時に荒れやすい部分がグリーンシート積層体のグリーンシートと接着層との界面およびその近傍であることをつきとめた(後述図3参照)。従来、積層体の切断面の荒れを抑えるには、ナイフ温度やナイフ送り速度、ナイフカット時のナイフ深度、また片刃、両刃など刃の形状等を工夫することが考えられる。これに対し、本発明では、積層体の接着部に使用する接着剤としてのセラミックスペーストに対して添加剤を付与することにより、この切断工程における切断面の荒れをより抑制するものとした。 そして、切り分けた積層体90を焼成し(焼成工程S150)、所定の検査を行い(検査工程S160)、この工程を終了する。焼成工程では、大気雰囲気下、1400℃で焼成するものとしてもよい。このようにして、NOxセンサー100を作製することができる。 以上詳述した本実施形態のセラミックスペーストでは、表面を好適にして不具合の発生をより低減することができる。この理由は定かではないが、セラミックスペーストを用いて作製された積層体を切断する際、上述したいずれかの添加剤に含まれる官能基などが作用し、積層体の断面と切断する刃との粘着性などをより好適な状態とするものと考えられる。このため、切断面の形状が好適になることにより、例えば、切断後の積層体の切断面で生じうるクラックなどをより抑制し、不具合の発生をより低減することができるものと推察される。 なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。 例えば、上述した実施形態では、セラミックスペーストを用いてNOxセンサー100を製造するものとしたが、セラミックスペーストを用いて製造されるものであれば、特にこれに限定されない。例えば、NOxセンサー100としたが、アンモニアや炭化水素などを検出するガスセンサーとしてもよいし、センサー以外のセラミックスに用いるものとしてもよい。 以下には、セラミックスペースト及び積層体を具体的に製造した例を実施例として説明する。[実施例1〜12] セラミック粒子と、ブチラール樹脂と、溶剤と、添加剤と、可塑剤とを混合してセラミックスペーストを作製した。セラミック粒子としては、4mol%のYを含む平均粒径が0.50μmの安定化ZrO2粒子とSiO2粒子とAl2O3粒子とを用いた。ブチラール樹脂は、低重合度のものを用いた。溶剤は、ジヒドロターピネオールと酢酸2−エチルヘキシルを7:3で混合したものを用いた。可塑剤は、エステル部の炭素数が8のフタル酸ジアセテートを用いた。安定化ZrO2粒子を100質量部としたときに、SiO2粒子を2.5質量部、Al2O3粒子を1.5質量部、ブチラール樹脂を13.5質量部、溶剤を62.9質量部、添加剤を2.1質量部、可塑剤を2.4質量部、混合してセラミックスペーストを作製した。また、添加剤は、BYK社のDISPERBYK−108、DISPERBYK−162、DISPERBYK−164、DISPERBYK−182、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2155、DISPERBYK−2164、ADEKA社のアデカトールPC−6、アデカトールPC−8、アデカトールPC−10、アデカトールSP−12、アデカノールB−4001のうちそれぞれ1つを混合した。これら、第1群の添加剤のいずれかを添加したセラミックスペーストをグリーンシート上に厚さ7μm、20μm及び80μmで塗布して図1に記載の積層体を作製し、この積層体をナイフでカットしたのち1400℃で焼成したものを、それぞれ第1群の添加剤を用いた実施例1〜12とした(後述表1参照)。[実施例13〜20] 更に、第1群の添加剤を用いたセラミックスペーストを作製した。添加剤として、サンノプコ社のSNスパース70、SNウエット366、SNディスパーサント9228、EVONIC社のTEGO Dispers610、TEGO Dispers652、TEGO Dispers670、TEGO Dispers685、TEGO Dispers700をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の工程を経て得られたものを、それぞれ実施例13〜20とした(後述表1参照)。[実施例21〜24] 第2群の添加剤を用いたセラミックスペーストを作製した。添加剤として、BYK社のDISPERBYK−109、ADEKA社のアデカノールTR−702、アデカノールTR−704、アデカプルロニックTR−913Rをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の工程を経て得られたものを、それぞれ実施例21〜24とした(後述表1参照)。[実施例25〜28] 更に、第2群の添加剤を用いたセラミックスペーストを作製した。添加剤として、サンノプコ社のノプコ38−C、ノプコウエット50、EVONIC社のTEGO Dispers630、TEGO Dispers662Cをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の工程を経て得られたものを、それぞれ実施例25〜28とした(後述表1参照)。[比較例1〜5] 第3群の添加剤を用いたセラミックスペーストを作製した。添加剤としてBYK社のDISPERBYK−101、DISPERBYK−106、DISPERBYK−140、DISPERBYK−145、DISPERBYK−180をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の工程を経て得られたものを、それぞれ比較例1〜5とした(後述表1参照)。[比較例6〜11] 更に、第3群の添加剤を用いたセラミックスペーストを作製した。添加剤として、サンノプコ社のSNスパース、SNディスパーサント5027、SNディスパーサント5468、ノプコサントRFA、SNディスパーサント5020、EVONIC社のTEGO Dispers710をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の工程を経て得られたものを、それぞれ比較例6〜11とした(後述表1参照)。[比較例12] 添加剤を加えない以外は、実施例1と同様の工程を経て得られたものを比較例12とした。(表面粗さ) 作製した実施例1〜28及び比較例1〜12に対して、切断面をレーザー顕微鏡(Keyence社製VK−9710)を用いて表面粗さを測定した。ここでは、最大高さRmax(μm)を表面粗さとした。(クラック率) 作製した実施例1〜28及び比較例1〜12に対して、切断面を顕微鏡で観察し、クラックの有無を調べた。実施例1〜28及び比較例1〜12をそれぞれ1000個作製し、その1000個のうちクラックが発生した割合をクラック率(%)とした。(実験結果と考察) 測定結果を表1にまとめた。表1には、セラミックスペーストをグリーンシート上に厚さ80μmで塗布した結果を示した。なお、厚さ7μm及び20μmで塗布したサンプルの測定結果は、表1と同様の傾向を示したことから、その記載は省略する。図3は、添加剤を加えない比較例12の切断面の顕微鏡写真である。図4は、表面粗さに対するクラック率の関係図である。ここで、ナイフカット時に、積層体のグリーンシート部と、セラミックスペーストにより形成された接着層部との組成構造的なナイフ刃との密着性の差により、接着部がナイフ刃に引きずられ、引きずられた接着部が負圧になることで、ナイフ出側のグリーンシートを引っ張り、ナイフ出側のグリーンシートとナイフ入り側の接着層とが機械的に剥ぎ取られるという現象が確認できた(図3参照)。表1に示すように、第3群の添加剤のいずれかを加えた比較例1〜11及び、添加剤を加えない比較例12では、切断面の表面粗さが28μm〜36μmと粗いのに対し、第2群の添加剤のいずれかを加えると表面粗さが15μm〜25μm程度に良化し、第1群の添加剤のいずれかを加えると表面粗さが5μm〜15μm程度と更に良化した。この理由は、例えば、第1群ないし第2群の添加剤の添加により、接着層に配合されている樹脂の極性部分がキャップされ、接着層部におけるナイフ刃との化学的または物理的接着性(密着性)が低下することが考えられた。これにより、切断時のナイフ刃による接着層の引きずり現象の発生を低減させ、接着層の引きずられに関する積層体へのダメージを低減させることが可能になったと考えられる。また、図4に示すように、表面粗さが低減すると、それに応じてクラック率も低減する傾向を示した。このように、第1群ないし第2群の添加剤をセラミックスペーストに添加することにより、これを用いて積層した積層体の切断面の表面を好適にして不具合の発生をより低減することができ、ひいては、素子歩留まりの向上が達成できることを確認した。 本発明は、セラミックスペーストを用いて積層体を作製する分野に利用可能である。1 第1基板層、2 第2基板層、3 第3基板層、4 第1固体電解質層、5 スペーサ層、6 第2固体電界質層、10 ガス導入口、11 第1拡散律速部、12 緩衝空間、13 第2拡散律速部、20 第1内部空所、21 主ポンプセル、22 内側ポンプ電極、22a 天井電極部、22b 底部電極部、23 外側ポンプ電極、30 第3拡散律速部、40 第2内部空所、41 測定ポンプセル、42 基準電極、43 基準ガス導入空間、44 測定電極、45 第4拡散律速部、48 大気導入層、50 補助ポンプセル、51 補助ポンプ電極、70 ヒーター部、72 抵抗発熱体、80 主ポンプ制御用酸素分圧検出センサーセル、81 補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサーセル、82 測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサーセル、90 積層体、100 NOxセンサー、110 センサー素子。 セラミック粒子と、 樹脂と、 溶剤と、 エーテル構造、ウレタン構造、水酸基含有構造、エステル構造及びアクリル構造のうち1以上を含む第1構造を有する第1群の添加剤と、前記第1群の添加剤のうちいずれか1以上の構造に加え、イミダゾリン構造、エチレンジアミン構造及びアミン構造のうち1以上を含む第2構造を有する第2群の添加剤と、の中から選択された1以上の添加剤と、 を備えたセラミックスペースト。 前記第1群の添加剤は、前記セラミック粒子に親和性を有する官能基を含む低分子有機化合物、前記セラミック粒子に親和性を有する官能基を含む高分子共重合体、前記セラミック粒子に親和性を有する官能基を含むブロックコポリマー、前記セラミック粒子に親和性を有する官能基を含むオリゴマー、及び前記セラミック粒子に親和性を有する官能基を含むフェノールエトキシレートのうち少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のセラミックスペースト。 前記第2群の添加剤は、アルケニルイミダゾリン構造を有する化合物及びエチンジアミンのポリオキシアルキレン縮合物のうち少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載のセラミックスペースト。 前記セラミック粒子は、アルミナ粒子、シリカ粒子、チタニア粒子、酸化亜鉛粒子及びジルコニア粒子のうち1以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックスペースト。 請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックスペーストを用いて作製した積層体。 【課題】表面を好適にして不具合の発生をより低減する。【解決手段】NOxセンサー100は、セラミック粒子と、樹脂と、溶剤と、エーテル構造、ウレタン構造、水酸基含有構造、エステル構造及びアクリル構造のうち1以上を含む第1構造を有する第1群の添加剤と、前記第1群の添加剤のうちいずれか1以上の構造に加え、イミダゾリン構造、エチレンジアミン構造及びアミン構造のうち1以上を含む第2構造を有する第2群の添加剤と、の中から選択された1以上の添加剤と、を備えたセラミックスペーストを用いて積層されて作製されている。このセラミックスペーストは、第1群及び第2群のいずれかの添加剤を含有することにより、NOxセンサー100を焼成する前の積層体の切断時に、カットする刃との親和性が好適な状態となる。【選択図】図1