タイトル: | 公開特許公報(A)_アレルギー試験用溶解性マイクロニードル |
出願番号: | 2013028585 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 49/00,G01N 33/53 |
高田 寛治 JP 2014156433 公開特許公報(A) 20140828 2013028585 20130218 アレルギー試験用溶解性マイクロニードル 株式会社バイオセレンタック 502414389 高田 寛治 A61K 49/00 20060101AFI20140801BHJP G01N 33/53 20060101ALI20140801BHJP JPA61K49/00 DG01N33/53 Q 7 OL 7 (出願人による申告)本発明は独立行政法人科学技術振興機構が(株)バイオセレンタックに委託した平成20年度独創的シーズ展開事業 革新的ベンチャー活用開発一般プログラムに係る「2層マイクロニードル製造装置」の成果によるものであり、産業技術力強化法第19条の適用を受けるものである。 4C085 4C085HH15 4C085JJ12 4C085KA01 4C085KA22 4C085KB67 4C085KB70 4C085KB79本発明は、皮膚の表層部である表皮層および真皮上層部に局在する免疫系細胞へのアレルゲンの直接的なデリバリーを可能とする長期の安定性に優れたスキンアレルギー試験用製剤に関するものである。蛋白質、糖類、粒子状のアレルゲンなどいずれのアレルゲンにも適用可能で水溶性の洩糸性ポリマーを基剤とすることを特徴とし、溶解性のマイクロニードルの皮膚表層部への挿入可能な先端部位にアレルゲンを局在させることにより、微量のアレルゲン量でもって無痛下で投与でき、臨床上要求されるアレルギー診断を行うことができる。アレルギーは、アレルゲンに対する生体の免疫反応の一種であり、食品に含まれる蛋白質、糖類など種々の物質がアレルゲンとなる。免疫が成立するためには、免疫系細胞の存在する体内に免疫応答を惹起するのに十分な量のアレルゲンを送達し、免疫系細胞の働きにより免疫応答が誘導される必要がある。アレルゲンの皮内注射や経口、経鼻などの経粘膜経路からの投与により免疫応答が起こり得ることが知られている。またパッチテストが臨床的にも使われており、パッチテスト用シートや用具に関する発明もなされている(特許文献1,2)。しかし、皮内注射には注射器を用いるために疼痛を伴う。また皮膚や粘膜は外界からの異物を排除するバリヤー機能を備えているため、この経路からのパッチテストによるアレルゲンの投与においては効果が不確実な場合があり、臨床上十分な免疫応答を得るためには大量のアレルゲンが必要となる場合がある。特開2002−257831号特開平6−238008号特許第4913030号WO 2009/066763(PCT/JP2008/71224)特願2010-240609 近年の免疫学の進展により、皮膚の表層部(表皮および真皮上層部)に免疫担当細胞が豊富に分布することが明らかにされ、この部位にアレルゲンを送達することにより、効率的に免疫応答を惹起できる可能性が指摘されている。また、表皮には痛覚に関わる神経終末が分布しないことから、皮膚表層部へのアレルゲンの投与は、無痛または痛みの少ない低侵襲的方法で実施し得る。しかし、注射針および注射筒を用いる従来のシステムでは、簡便かつ確実にアレルゲンを皮膚表層部に投与することは困難であるという課題があった。本発明におけるアレルゲンは、単一のアレルゲンにまで精製されていてもよいが、診断の観点から必要と考えられる程度に精製されていれば充分である。本発明の目的は、高温での長期の保存に耐え、かつ従来の皮内注射と同等かあるいは上回る免疫応答を引き出すことのできる皮膚表層部への簡易な投与を可能とするアレルギー診断用マイクロニードル・アレイ・パッチを提供することにある。 発明者は、先に、皮膚の表層部に挿入されると溶解して有効成分を放出する微小針状または糸状の経皮吸収製剤、経皮吸収製剤保持シート及び経皮吸収製剤保持用具を発明した(特許文献3)。さらに、先端部にのみ有効成分を含有させた多層構造から成る微小針状の経皮吸収製剤を発明した(特許文献4)。さらにワクチン抗原の皮膚表皮デリバリー用の3層溶解性マイクロニードル・アレイ・チップを発明した(特許文献5)。上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、水溶性の洩糸性高分子物質を基剤として用い、皮膚表層部に挿入される先端部にアレルゲンを含有する溶解性マイクロニードル・アレイを基盤上に配列したパッチ製剤を作製し、皮膚に押し当てるだけで皮膚表層部にアレルゲンを送達できるアレルギー診断薬製剤に関する発明を完成した。 本発明の溶解性マイクロニードル・アレイのパッチ製剤は、皮膚の表層部に挿入される先端部分にアレルゲンを保持し、水溶性の洩糸性高分子物質を基剤とするマイクロニードル・アレイ・パッチ製剤である。前記アレルゲンは、一般的にアレルギー診断に用いられる各種蛋白質、糖類、粒子などである。前記アレルゲンは、室内塵、ダニ、樹木花粉、イネ科植物花粉、雑草花粉、真菌および細菌、動物、昆虫、寄生虫、食品などである。前記水溶性の洩糸性高分子物質は、多糖類、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、及びポリアクリル酸ナトリウムからなる群より選ばれた少なくとも1つの物質である。なお、これらの高分子物質については、1つだけを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。前記洩糸性の多糖類は、デキストラン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、アガロース、及びプルランおよびそれらの誘導体より選ばれた少なくとも1つの物質である。ある一形態においては、請求項1記載のマイクロニードルは、全長30〜500マイクロメートル、底部の直径は20〜300マイクロメートル、アレルゲンを保持する先端部の長さは10〜200マイクロメートル、1平方センチメートル当たり100〜300本の密度で基盤チップ上に存在する。ある一形態においては、請求項1記載のマイクロニードルの先端部分にはアレルゲンの0.01マイクログラム〜1.0ミリグラムが含有される。 本発明によれば、皮膚の表層部(表皮および真皮上層部)に簡便かつ確実にアレルゲンを送達して、免疫反応の一種であるアレルギー反応を効率的に惹起し、アレルギー診断を無痛下で簡易に行うことが出来る。免疫系細胞が豊富に分布する皮膚表層部に直接、アレルゲンを送達することから、従来の皮内注射法に比べて、低用量のアレルゲンで十分な免疫反応が得られる。投与部位が皮膚の表層部に限られることから、無痛または痛みの少ない低侵襲性の診断が可能である。また、パッチ製剤を皮膚に押し当てるのみの簡易な操作で投与できることから、自己投与が可能になる。さらに、パッチ製剤は固形剤であるので、アレルゲンの安定性を確保でき、長期間の保存にも耐え得る。 本発明に用いるマイクロニードル・アレイ・チップは水溶性の洩糸性ポリマーを基剤とし、投与する際に皮膚の表層部に挿入される部分に相当する先端部にアレルゲンを局在させた構造を有し、診断薬製剤として基盤であるチップ上にマイクロニードル・アレイを構築したものである。 また、本発明で用いる基剤としては、水溶性の洩糸性高分子物質、すなわち多糖類、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、及びポリアクリル酸ナトリウムからなる群より選ばれた少なくとも1つの物質である。なお、これらの高分子物質については、1つだけを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。 好ましくは、前記洩糸性の多糖類は、デキストラン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、アガロース、プルラン、及びグリコーゲンおよびそれらの誘導体より選ばれた少なくとも1つの物質である。ここで用いるアレルゲンとしては、免疫原性を有するものであれば特に制限はない。たとえば、一般的に予防接種に用いられる各種病原微生物由来のタンパク(破傷風毒素及びそのトキソイド、ジフテリア毒素及びそのトキソイド、百日せき毒素及びその無毒化物、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン、B型肝炎ウイルスのH B sアレルゲンなど)、多糖類(肺炎球菌の莢膜多糖類、ヘモフィルスインフルエンザb型菌の莢膜多糖類など)、粒子(不活化A型肝炎ウイルス粒子、ヒトパピローマウイルスのウイルス様粒子など)、各種の生活関連アレルゲン(スギ花粉などの花粉、ハチ毒、ダニアレルゲン、ハウスダストなど)、がんアレルゲンなどが挙げられる。前記の生活関連アレルゲンとしては、室内塵(ハウスダスト)、ダニ、樹木花粉(スギ、ヒノキ、ビャクシン、ハンノキ、カバ、コナラ、ブナ、マツ、ニレ、ヤナギ、カエデ、クルミ、クワ、アカシア、オリーブおよびその属)、イネ科植物花粉(カモガヤ、オオアワガエリ、ハルガヤ、ギョウギシバ、オオスズメノテッポウ、セイバンモロコシ、ホソムギ、ナガハグサ、ヒロハウシノケグサ、アシ、コムギ、スズメノヒエ、コヌカグサおよびその属)、雑草花粉(ブタクサ、オオブタクサ、ブタクサモドキ、アキノキリンソウ、ヨモギ、ニガヨモギ、フランスギク、タンポポ、カナムグラ、ヘラオオバコ、シロザ、イラクサ、ヒメスイバおよびその属)、真菌および細菌(アルテルナリア、カンジダ、アスペルギルス、クラドスポリウム、ペニシリウム、ムコール、ヘルミントスポリウム、マラセチア(属)、ピティロスポリウム(マラセチア)、トリコフィトン、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB)、動物(ネコ、イヌ、モロモット、ハムスター、マウス、ラット、家兎、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、セキセイインコ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、鳩の糞)、昆虫(ゴキブリ、ユスリカ、アシナガバチ、ミツバチ、スズメバチ、ヤブカ、ガ)、寄生虫(アニキサス、回虫、包虫)、職業性アレルゲン(絹、綿、ラテックス、オオバコ種子、イソシアネートMDI、イソシアネートHDI、無水フタル酸、エチレンオキサイド、ホルマリン)、食品(牛乳、卵白、卵黄、オボムコイド(耐熱性卵蛋白)、米、ソバ、コムギ、ω-5 グリアジン、オオムギ、オートムギ、ライムギ、アワ、ヒエ、キビ、トウモロコシ、大豆、インゲン、エンドウ、ピーナッツ、アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ココナッツ、ブラジルナッツ、ハシバミ、イチゴ、リンゴ、モモ、バナナ、メロン、オレンジ、グレープフルーツ、キウイ、マンゴ、アボガド、洋ナシ、トマト、セロリ、パセリ、玉ネギ、スイカ、ニンジン、ヤマイモ、ジャガイモ、サツマイモ、カボチャ、ホウレンソウ、タケノコ、ニンニク、ゴマ、マスタード、麦芽、ビール酵母、カカオ、チーズ、モールドチーズ、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、カゼイン、グルテン、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、エビ、ロブスター、カニ、ムラサキイガイ、アサリ、カキ(牡蠣)、ホタテ、イカ、タコ、サバ、アジ、イワシ、タラ、カレイ、サケ、マグロ、イクラなどが挙げられる。マイクロニードル・アレイの先端部でアレルゲンを局在させる部分としては、マイクロニードルの先端から200マイクロメートル以下が好ましい。より好ましくは先端から100マイクロメートル以下である。基剤に目的物質を保持させる方法としては特に限定はなく、種々の方法が適用可能である。例えば、目的物質を基剤中に超分子化して含有させることにより、目的物質を基剤に保持させた状態でメス型に挿入し、その後、乾燥・硬化することによってマイクロニードル・アレイを作ることができる。その他の例としては、粒子状アレルゲンを溶解した基剤の中に加えて懸濁状態とした状態でメス型に注入し、その後に、乾燥・硬化することによってマイクロニードル・アレイを取り出すことができる。 マイクロニードル・アレイを構成するマイクロニードルの全長については特に限定はないが、好ましくは20〜700マイクロメートル程度、より好ましくは30〜500マイクロメートル程度が好適である。底部の直径は20〜300マイクロメートル、アレルゲンを保持する先端部の長さは10〜200マイクロメートル程度が好適である。 基盤の面積については特に限定はないが、好ましくは約10平方センチメートル、より好ましくは約5.0平方センチメートル、さらに好ましくは約2.0〜1.0平方センチメートル程度が好ましい。また、基盤の厚さも特に限定はないが、好ましくは5ミリメートル、より好ましくは3〜1ミリメートル程度がよい。密度としては、例えば1平方センチメートルのチップ上に100〜300本程度の密度で構築される。 本発明の限定を意図しない以下の実施例によりさらに詳しく説明される。(実施例1) 底面が縦1cm、横1cmの正方形である樹脂製基板の表面に、深さ約500マイクロメートル、開口部直径約300マイクロメートルの逆円錐状の細孔を225個設けた。この基板をマイクロニードル製造用の鋳型とした。モデルアレルゲンとしてポリL-アルギニン塩酸塩(シグマ社)を用いた。ポリL―アルギニンの1.0mgに精製水20マイクロリットルを加えてよく混和した後、高分子デキストラン(ナカライテスク)の9.0mgを基剤として加え、良く混和して粘性のある濃厚液(溶液A)を調製した。また、30mgのコンドロイチン硫酸Cナトリウムに精製水30μLを加えてよく溶解及び混和し、濃厚液(溶液B)を調製した。溶液Aを鋳型の各細孔に塗布しながら詰め、ラッピングフィルム(サランラップ(登録商標);旭化成社)で表面を覆った。卓上遠心分離器(クボタ4000)に鋳型をセットし、3000rpmで5分間遠心した。ラッピングフィルムを取り除き、鋳型表面の残留物を除去した。単発打錠器(市橋精機、HANDTAB100)の臼に酢酸セルロースとヒドロキシプロピルセルロース100:10の混和物の約0.5gを入れ、約10kNの打錠圧で直径1.5cm、厚さ約2.0mmの基盤用チップ(支持体)を作成した。溶液Bを鋳型の各細孔に塗布しながら詰め、基盤用チップを鋳型の表面全体に被せた。乾燥後、基盤用チップをゆっくり剥がし、マイクロニードルアレイを保持したパッチ剤が得られた。(実施例2)実施例1と同様に、樹脂製基板の表面に、深さ約500マイクロメートル、開口部直径約300マイクロメートルの逆円錐状の細孔を225個設けた。ポリL―アルギニンの2.5mgに精製水20マイクロリットルを加えてよく混和した後、高分子デキストランの7.5mgを基剤として加え、良く混和して粘性のある濃厚液(溶液A)を調製した。また、30mgのコンドロイチン硫酸Cナトリウムに精製水30μLを加えてよく溶解及び混和し、濃厚液(溶液B)を調製した。溶液Aを鋳型の各細孔に塗布しながら詰め、ラッピングフィルムで表面を覆った。卓上遠心分離器に鋳型をセットし、3000rpmで5分間遠心した。ラッピングフィルムを取り除き、溶液Bを鋳型の各細孔に塗布しながら詰め、実施例1と同様の基盤用チップ(支持体)を鋳型の表面全体に被せた。乾燥後、基盤用チップをゆっくり剥がし、マイクロニードルアレイを保持したパッチ剤が得られた。(実施例3)実施例1と同様に、樹脂製基板の表面に、深さ約500マイクロメートル、開口部直径約300マイクロメートルの逆円錐状の細孔を225個設けた。ポリL―アルギニンの5.0mgに精製水20マイクロリットルを加えてよく混和した後、高分子デキストランの5.0mgを基剤として加え、良く混和して粘性のある濃厚液(溶液A)を調製した。また、30mgのコンドロイチン硫酸Cナトリウムに精製水30μLを加えてよく溶解及び混和し、濃厚液(溶液B)を調製した。溶液Aを鋳型の各細孔に塗布しながら詰め、ラッピングフィルムで表面を覆った。卓上遠心分離器に鋳型をセットし、3000rpmで5分間遠心した。ラッピングフィルムを取り除き、溶液Bを鋳型の各細孔に塗布しながら詰め、実施例1と同様の基盤用チップ(支持体)を鋳型の表面全体に被せた。乾燥後、基盤用チップをゆっくり剥がし、マイクロニードルアレイを保持したパッチ剤が得られた。(実施例4) 実施例1〜3で作成したマイクロニードル・アレイ・チップ製剤から等張リン酸緩衝液を用いてポリL―アルギニンを抽出し、その濃度をBradford法にて測定した。(実施例5)実施例1〜3で作成したマイクロニードル・アレイ・チップ中におけるポリL―アルギニンの含量は9.3±2.0μg 、31.1±2.9μg、61.9±9.3(SD)μgであった。(実施例6)体重約300gのWistar系雄性ラットをペントバルビタール麻酔下、手術台に固定した。ラットの背部を除毛し、皮膚を露出させた。翌日、ラット5匹を1群として実験に用いた。ラットの背部除毛皮膚に実施例1〜3で作成したポリL―アルギニン含有マイクロニードル・アレイ・チップを押しあててマイクロニードルを皮膚に穿刺した状態を3分間保った。この操作により、皮膚に挿入されたマイクロニードルの先端部分は溶解し、含有しているポリL―アルギニンは皮膚表層部に送達された。ポジティブコントロールとしてポリL―アルギニンの水溶液を作成し、1群5匹から成るラットへ皮下注射にて投与した。投与量は9.3マイクログラム、31.1マイクログラム及び61.9マイクログラムとした。モデルアレルゲンであるポリL―アルギニンを投与した後、30分間にわたりラットの行動を観察し、その間に投与部位を足で引っ掻いた回数を記録した。なお、全くポリL―アルギニンを含有しないマイクロニードル・アレイ・チップを作成してネガティブコントロールとして同様の実験に用いたが、その場合には引っ掻き回数はゼロであった。実施例1の製剤の平均引っ掻き回数は9.8±7.6(標準偏差)回、ポリL―アルギニン9.3マイクログラム皮下注射時の平均引っ掻き回数は0.4±0.9回、実施例2の製剤の平均引っ掻き回数は60.4±18.6回、ポリL―アルギニン31.1マイクログラム皮下注射時の平均引っ掻き回数は5.0±3.1回、実施例3の製剤の平均引っ掻き回数は95.7±26.0回、ポリL―アルギニン61.9マイクログラム皮下注射時の平均引っ掻き回数は20.5±9.1回であった。 有効性、高温での長期安定性などの点から、皮膚への挿入部に相当する先端部にアレルゲンを保持する溶解性マイクロニードル・アレイ・パッチは従来の皮内注射によるアレルギーテストに取って代わって広く用いられる可能性がある。また、自己投与が可能であることから、医療インフラが十分に整っていない発展途上国などでの利用も期待される。 本発明により痛みを伴わなく、高温条件下においても長期にわたり安定でかつ自己投与など使用に便利なアレルギーテスト用マイクロニードル・アレイ・パッチ製剤を提供することが可能となる。皮膚の表層部に挿入される先端部分にアレルゲンを保持させた水溶性の洩糸性高分子物質を基剤とするスキンアレルギー試験用のマイクロニードル・アレイ・パッチ製剤。前記アレルゲンは、一般的にアレルギー試験に用いられる各種蛋白質、糖類、粒子などである請求項1に記載されたスキンアレルギー試験用のマイクロニードル・アレイ・パッチ製剤。前記アレルゲンは、室内塵、ダニ、樹木花粉、イネ科植物花粉、雑草花粉、真菌および細菌、動物、昆虫、寄生虫、食品などである請求項2に記載されたアレルギー試験用のマイクロニードル・アレイ・パッチ製剤。前記水溶性の洩糸性高分子物質は、多糖類、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、及びポリアクリル酸ナトリウムからなる群より選ばれた少なくとも1つの物質である。なお、これらの高分子物質については、1つだけを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。前記洩糸性の多糖類は、デキストラン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、アガロース、及びプルランおよびそれらの誘導体より選ばれた少なくとも1つの物質である。ある一形態においては、請求項1記載のマイクロニードルは、全長30〜500マイクロメートル、底部の直径は20〜300マイクロメートル、アレルゲンを保持する先端部の長さは10〜200マイクロメートル、1平方センチメートル当たり100〜300本の密度で基盤チップ上に存在する。ある一形態においては、請求項1記載のマイクロニードルの先端部分にはアレルゲンの0.01マイクログラム〜1.0ミリグラムが含有される。 【課題】アレルゲンを含有する液剤を皮内注射により投与する場合、免疫細胞が広く分布する皮膚表層部位へのデリバリーには高い熟練を要し、かつ疼痛をともなうので、より被験者への負担の少ない高精度の診断用製剤が求められている。【解決手段】水溶性の洩糸性高分子物質を基剤に用い、アレルゲンとなる高分子物質あるいは微粒子を先端部に保持する溶解性マイクロニードル・アレイ・チップ製剤とすることにより、上記課題を解決した。【選択図】なし