タイトル: | 公開特許公報(A)_歯のホワイトニング剤およびホワイトニング方法 |
出願番号: | 2013026128 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 8/19,A61Q 11/00 |
塩田 剛太郎 岡本 太郎 芝 ▲あき▼彦 JP 2014152166 公開特許公報(A) 20140825 2013026128 20130213 歯のホワイトニング剤およびホワイトニング方法 株式会社ブイエムシー 592160652 葛和 清司 100102842 塩田 剛太郎 岡本 太郎 芝 ▲あき▼彦 A61K 8/19 20060101AFI20140730BHJP A61Q 11/00 20060101ALI20140730BHJP JPA61K8/19A61Q11/00 13 OL 12 4C083 4C083AB311 4C083AB312 4C083AB411 4C083AB412 4C083AC121 4C083AC122 4C083AD041 4C083AD042 4C083CC41 4C083EE35 本発明は、歯のホワイトニング剤およびこれを用いて歯をホワイトニングする方法に関する。 近年、外観の印象を向上せしめるために、歯を白くすること、すなわち歯のホワイトニングに対する需要が性別、年齢を問わず増大している。とくに安全性、低価格、および時短への期待など、ニーズも高度化、多様化する傾向にある。 歯を白くする方法は、漂白剤を用いた漂白法が中心であり、漂白に用いられる漂白剤としては、主として過酸化水素や過酸化尿素等の過酸化物が用いられている。かかる方法および漂白剤として、例えば、過酸化水素水とオルトリン酸とを混合した漂白剤が報告されている(特許文献1)。これは例えば35%程度の濃度の過酸化水素水と85%程度の濃度のオルトリン酸とを8:2の混合比で混合して歯牙に塗布することで、歯のエッチングと漂白を同時に行うものである。 しかしながら、過酸化水素や過酸化尿素には刺激性があり、とくに、35%程度の高濃度の過酸化水素を用いる場合には、その刺激性を回避し安全性の確保のための対策を講じる必要があり、またそれに使用される漂白用の器具が大型化したり、複雑化するなどの問題がある。 低濃度の過酸化水素を用いる方法として、光触媒作用を有する酸化チタンを、3.5%程度といった低濃度過酸化水素水と併用する方法(特許文献2)が開示されている。しかしながら、このように低濃度の場合でも、安全を確保するために歯肉に漂白剤が接触しないようにすることが必要となる点で本質的には従前の剤と変わらない。 一方、過酸化水素を用いることなく、可視光型酸化チタン、光照射、および炭酸水素塩または炭酸塩を用いる方法(特許文献3)が報告されているが、これは、過酸化水素による弊害を回避できる点で一定の成果があるものの、高価な成分である可視光型酸化チタンを用いることが必要不可欠である。また、通常の酸化チタンを用いた場合には、強い光を照射するために光照射器などの機器を別途必要とし、このためホームユースなどには適さない。特開平8−143436号公報特開2005−343813号公報特開2006−316204号公報特開2009−126819号公報 従来技術における前述の問題点を踏まえ、本発明者は、刺激性を有する過酸化水素や高価な可視光型酸化チタンや光照射などを要さないホワイトニング剤として新たな材料を探索する中で、オゾン溶存グリセリンによるホワイトニング方法(特許文献4)を開発したところ、これはこれまでにないタイプのホワイトニングとして期待されたが、本発明者らのその後の研究により、ホワイトニング能がなお十分とは言えないこと、歯を脱灰するおそれがあることなど、実用上の問題が指摘された。 すなわち本発明者らは、これまでの技術では、安全で使いやすく、低コストでしかも十分なホワイトニング能を有するホワイトニング剤およびホワイトニング方法を提供するには十分とはいえないとの認識を持つに至った。したがって本発明の課題は、従来技術における問題点を解消し、高度化、多様化したニーズに的確に対応できる、安全で使いやすく、低コストでしかも十分なホワイトニング能を有するホワイトニング剤およびホワイトニング方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究に取り組む中で、驚くべきことに、従来洗剤などに汎用されている炭酸ナトリウムなどの炭酸塩が、過酸化水素や酸化チタンなどの成分や光照射工程を要することなく、十分に歯のホワイトニング効果を発揮するとの全く新しい知見を得、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、以下の[1]〜[13]に関する。[1] 歯のホワイトニング剤であって、ホワイトニング成分として炭酸塩を含む、前記ホワイトニング剤。[2] 炭酸塩が炭酸ナトリウムである、[1]のホワイトニング剤。[3] 酸化チタンを含まない、[1]または[2]のホワイトニング剤。[4] 炭酸水素塩をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかのホワイトニング剤。[5] 炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウムである、[4]のホワイトニング剤。[6] 炭酸塩と炭酸水素塩との配合比が、10:1〜1:10である、[4]または[5]のホワイトニング剤。[7] ホワイトニング成分がセスキ炭酸ナトリウムである、[1]〜[6]のいずれかのホワイトニング剤。[8] オゾン溶存グリセリン溶液をさらに含む、[1]〜[7]のいずれかのホワイトニング剤。[9] オゾン溶存グリセリン溶液とポリエチレングリコールとの混合物をさらに含む、[1]〜[7]のいずれかのホワイトニング剤。[10] 過酸化水素、過酸化尿素および過炭酸ナトリウムからなる群から選択されるさらなるホワイトニング成分を3%以下の最終濃度でさらに含む、[1]〜[9]のいずれかのホワイトニング剤。[11] [1]〜[10]のいずれかのホワイトニング剤を歯の表面に適用する工程を含む、歯をホワイトニングする方法。[12] 炭酸塩、炭酸水素塩、オゾン溶存グリセリン溶液、および過酸化水素を含む、歯をホワイトニングするためのキット。[13] 歯をホワイトニングする方法であって、歯面にセスキ炭酸塩とオゾン溶存グリセリン溶液、過酸化水素および光照射からなる群から選択される1または2以上とを組み合わせて適用することにより、口腔内のpH値、適用時間およびシェードガイドによる歯の色の測定値からなる群から選択される1または2以上を調整してなる、前記方法。 本発明の歯のホワイトニング剤によれば、従来の多くの漂白剤において必要不可欠であった刺激性の高い過酸化水素や、高価な可視光型酸化チタンや、光照射を全く用いずとも、安全で簡便な低コストのホワイトニングを実現することができる。過酸化水素を含まない利点は、歯科医の監視が必ずしも行き届かないホームユースのホワイトニングにおいて、とくに意味がある。 アルカリ性の炭酸塩を含むホワイトニング剤に、弱アルカリ性の炭酸水素塩をさらに含ませることにより、口腔適用にとって好適なpHへの調整が容易となると同時に、歯により高いホワイトニング効果を発揮することができる。 本発明者らは、オゾン溶存グリセリン溶液は、pHが2程度の酸性の溶液であることを見出したことから、オゾン溶存グリセリン溶液を含むことにより、pHが中性のグリセリンを配合する場合と比べ、アルカリ性の炭酸塩の使用量を相対的に増加させることができ、口腔適用にとって好適なpHへの調整が容易となると同時に、より高い歯のホワイトニング効果を発揮することができる。 また、オゾン溶存グリセリン溶液をアルカリ性の炭酸塩に加えることにより、本発明のホワイトニング剤を口腔適用により好ましいpHに調整することができる。 さらにまた、オゾン溶存グリセリン溶液を含むことにより、さらなるホワイトニング成分、例えば過酸化水素の使用量を相対的に減少させることができ、種々の成分の併用の可能性を広げることができる。具体的には、従来の過酸化水素含有ホワイトニング剤に用いられる過酸化水素の濃度で最も低いものは3.5%程度であるところ、本発明によると、かかる濃度の約1/3程度の濃度の過酸化水素を用いても、ホワイトニングの効果が十分発揮される。 オゾン溶存グリセリン溶液またはオゾン溶存グリセリン溶液にポリエチレングリコールを混ぜ合わせたものを含むことにより、グリセリンによる知覚過敏効果を無くし、無痛のホワイトニングを提供することができる。 さらなるホワイトニング成分である過酸化水素を含ませることにより、より短時間で効果的にホワイトニングを行うことができる。 歯の表面に適用されたホワイトニング剤に光を照射することにより、より短時間で効果的にホワイトニングを行うことができる。 使用成分の混合比を変化させることによって、使用者のニーズや使用環境、目的に応じた処方を適宜作製することができる。 本明細書において「歯のホワイトニング」または「歯をホワイトニングする」とは、歯の白さを増大せしめることまたは白色以外の色(茶色、黄色、黒色等)による着色度合いを低減せしめること意味する。かかる「歯のホワイトニング」の程度は、シェードガイドによる特定のスケールを用いて測定することができる。なお、「歯のホワイトニング」または「歯をホワイトニングする」を、単に「ホワイトニング」または「ホワイトニングする」と表記することもある。 本明細書において「歯」とは、天然歯および人工歯等の義歯も意味する。 本発明のホワイトニング剤は、歯に用いられるホワイトニング剤であって、ホワイトニング成分として炭酸塩を含むものであれば、その処方、剤型等は限定されない。したがって、本発明のホワイトニング剤は、オゾン溶存グリセリン溶液そのもの(ジェル)でもよいし、クリーム、軟膏および歯磨き剤等の他の剤型としてもよい。 本発明のホワイトニング剤の剤型はとくに限定されないが、その使いやすさの観点から、ジェルまたはクリームが好ましい。また、知覚過敏を防止するという観点から、クリームにすることが好ましい。 剤型がクリームであるものは、例えば、1種または2種以上のポリエチレングリコール(PEG)の単体または混合物に、オゾン溶存グリセリンを投入し、ホモジナイザーによってゆっくりと攪拌することによって製造することができる。好適な態様としては、オゾン溶存グリセリンとPEG400とPEG4000とを、2:0.5:0.5の割合で混合する。 剤型が軟膏であるものは、例えば、日本薬局方で定められたマクロゴール軟膏を混合することによって製造することができる。 本発明で用いられる炭酸塩は、とくに限定されないが、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられるが、好ましくは炭酸ナトリウムである。本発明の炭酸塩には、炭酸水素塩は含まれない。本発明のホワイトニング剤における炭酸塩の含有量はとくに限定されないが、一般的には0.001〜5重量%であり、好ましくは0.01〜3重量%であり、より好ましくは0.01〜1重量%である。 ある態様において、本発明のホワイトニング剤は、炭酸水素塩をさらに含んでもよい。pHが8程度の炭酸水素塩は、pH11.5程度の炭酸塩を含有するホワイトニング剤を中和すると同時に、ホワイトニング効果を高めるという役割を果たす。本発明で用いられる炭酸水素塩は、とくに限定されないが、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられるが、好ましくは炭酸水素ナトリウムである。炭酸水素塩の含有量はとくに限定されないが、一般的には0.001〜5重量%であり、好ましくは0.01〜3重量%であり、より好ましくは0.01〜1重量%である。 炭酸水素塩が含まれる場合、炭酸塩と炭酸水素塩の配合比はとくに限定されないが、一般的には、その配合比は10:1〜1:10、好適なホワイトニングを達成する観点および口腔適用に好適なpHを維持するという観点において、好ましくは、1:0.5〜1:1.5であり、より好ましくは1:0.8〜1:1.2である。 本発明で用いられるホワイトニング成分は、pHの観点およびホワイトニング効果の観点において、最も好ましくはセスキ炭酸塩である。本発明のセスキ炭酸塩とは、炭酸1に対して、塩1〜1.5を適度に混合したものであり、通常炭酸塩と炭酸水素塩とがほぼ1:1で混合されている。セスキ炭酸塩は、とくに限定されないが、好ましくは、セスキ炭酸ナトリウムである。セスキ炭酸塩の含有量はとくに限定されないが、一般的には0.001〜10重量%であり、好ましくは0.01〜6重量%であり、より好ましくは0.01〜2重量%である。 ある態様において、本発明のホワイトニング剤は、オゾン溶存グリセリン溶液、すなわち、グリセリンにオゾンを溶存せしめた溶液をさらに含んでもよい。オゾン溶存グリセリン溶液は、グリセリンにオゾンの微小気泡を通気せしめることによって得られるところ、75%以上の高濃度のグリセリンを用いると400ppm以上の高濃度のオゾンを溶存せしめることができ、典型的には特開2005−232094に記載されている方法に従うことによって簡便に調製することができる。 オゾン溶存グリセリン溶液を含むホワイトニング剤におけるオゾンの濃度とは、最終的なホワイトニング剤中に溶存しているオゾンの濃度を意味するが、気泡として溶液中に残存するオゾンやグリセリンと結合して残存するオゾンが存在する場合は、ホワイトニング剤全体に対する、これらを含めたオゾンの割合を意味する。 オゾン溶存グリセリン溶液を含むホワイトニング剤におけるオゾンの濃度は、使用者のニーズや使用環境等、目的に応じて調整すべきであるが、好ましくは400ppm〜4000ppmである。 オゾン溶存グリセリン溶液を加えることにより、アルカリ性の炭酸塩を主成分とする本発明のホワイトニング剤を口腔適用により好ましいpH(pH5.5〜10程度)に調整でき、知覚過敏を有する歯に対して無痛のホワイトニングを行うことができ、さらに、歯面適用時のホワイトニング剤の流亡を防止することができることから、オゾン溶存グリセリン溶液は目的に応じて適量添加して用いるが、典型的には、0.1〜50重量%添加する。 目的に応じた物性を適宜調整するため、必要に応じオゾン溶存グリセリン溶液に適当な希釈剤を混合して希釈して使用してもよい。希釈剤としては、オゾンにより酸敗しにくいものがよく、水、ポリエチレングリコール等が好適である。 水を希釈剤とする場合は、純水または超純水を使用することが好ましい。純水または超純水を用いることによって、オゾンに酸化されて発生する不純物による皮膚または歯面、粘膜に対する刺激や効果発現の低下の原因となり得る酸化物(過酸化物)の生成を抑制することができる。 水の配合量は限定されないが、グリセリンに起因する本発明のホワイトニング剤の粘度を緩和や保湿を目的として、ホワイトニング剤全体の0〜99%の範囲で適宜改変することができる。 希釈剤としてポリエチレングリコールを用いる場合、ポリエチレングリコールは、分子量により液体、固体のものがあるところ、本発明においては、いずれも用いることができる。2種類以上のポリエチレングリコールを、使用時のテクスチャーに合わせて、それらの混合比率を変えることによって、より使いやすいテクスチャーとすることができる。したがって、ポリエチレングリコールの種類はとくに限定されない。 ある態様において、本発明のホワイトニング剤は、グリセリン、オゾン溶存グリセリン、過酸化水素、過酸化尿素などの過酸化物、過炭酸ナトリウムなどのホワイトニング効果を有する1以上のさらなるホワイトニング成分を適宜組み合わせて含んでもよい。これらを組み合わせることにより、過酸化水素などの刺激性成分の使用量を調整することもできる。 本発明で用いる過酸化水素の濃度は、とくに限定されないが、刺激を低減する観点において、ホワイトニング剤の3.5%未満であることが好ましく、好ましくは0.1〜2%である。従来の過酸化水素含有ホワイトニング剤に用いられる過酸化水素の濃度で最も低いものは3.5%程度であるところ、本発明によると、かかる濃度の約半分以下の濃度の過酸化水素を用いても、ホワイトニングの効果が十分発揮される。 本発明のホワイトニング剤に、粉末状の炭酸塩、オゾン溶存グリセリン溶液および過酸化水素が含まれる場合、粉末がダマになるのを防止するために、炭酸塩をオゾン溶存グリセリン溶液に投入し、その後過酸化水素水を加えるのが好ましい。混和後は、濃度が低減するため、1時間以内の適用が好ましい。 また、本発明のホワイトニング剤は、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤など種々の成分の1または2以上を適宜添加して用いてもよい。増粘剤は、ホワイトニング剤を歯面に適用した際に流亡しないようにするために用いられる。増粘剤としてはとくに限定されないが、典型的には漂白効果を妨げることのないオゾン溶存グリセリン溶液や、そのほかの既知の増粘剤が挙げられる。これらの増粘剤のホワイトニング剤全体に対する含量は、ホワイトニング剤に適度な粘度を付与し得る限りとくに限定されないが、ホワイトニング剤全体の0.001〜1%が好ましい。 一般的に、歯科臨床においてpHが5.5以下の場合に歯が脱灰すると考えられ、一定時間歯に直接接触するホワイトニング行為において低いpHの使用は懸念されている。そこで、ある態様において、本発明のホワイトニング剤のpHを調整するために、pH調整剤が用いられる。pH調整剤としては、ホワイトニング剤の全体的なpHを口腔適用により好ましいpH(歯のタンパク質を変性しない範囲であるpH10以下、好ましくはpH5.5〜10程度)に調整できるものであればとくに限定されないが、前述したオゾン溶存グリセリン溶液や既知のpH調整剤が挙げられる。 界面活性剤は、各種成分の剤中における相互に混じり合わない物質を溶け込んだ状態にするために用いられ、その作用を有するものであればとくに限定されないが、典型的にはラウロイル硫酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等の非イオン界面活性剤、アルキルサルフェート塩、ノルマルドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤が挙げられ、ラウロイル硫酸ナトリウムが最も好ましい。これらの界面活性剤のホワイトニング剤全体に対する含量は、各成分に十分な溶解性を付与し得る限りとくに限定されない。 さらにまた、本発明のホワイトニング剤には、例えばEDTA等の安定剤、パラオキシ安息香酸エステル等の補助成分を含むことができるが、その量は本発明のホワイトニング剤の効果を損なわない量であれば限定されない。 また、本発明のホワイトニング剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の保湿剤、防腐剤、歯色改変物質、研磨剤、顔料、香味剤、甘味剤、冷却剤および唾液分泌剤等の補助成分を配合してもよい。これらの補助成分を用いることによって、本発明のホワイトニング剤のホワイトニング効果を高めたり、使用感をより良好にすることができる。 なお、ホワイトニングにおいて汎用されている酸化チタンについては、これを本発明のホワイトニング剤、とくにセスキ炭酸ナトリウムを含むホワイトニング剤に含めると、意外にもホワイトニング効果が阻害されることが見出されている。したがって、本発明のある態様におけるホワイトニング剤は、好ましくは酸化チタンを含まない。 本発明は、歯をホワイトニングする方法にも係り、該方法は以下の通りの態様で実施できるがこれに限定されない。 まず、歯の表面に本発明のホワイトニング剤を適用する。適用の仕方はとくに限定されないが、典型的には、歯面への塗布、歯ブラシによる通常の歯磨き操作による適用、または該ホワイトニング剤を適用したマウスピースの装着による適用等が挙げられる。なお、該マウスピースは、本発明の歯のホワイトニング剤を歯に確実にかつ一定時間接した状態で維持するために、例えばデンタルドラッグデリバリーシステムなどで用いられるものである。 適用量はとくに限定されないが、例えば1本の歯あたり0.1ml〜1ml程度であればよく、適用回数は、1本の歯あたり1回でも、2回以上でもよい。とくに、粘度が低く流亡し易い剤型の場合には、2回以上適用することが好ましい。 なお、歯面へのホワイトニング剤の適用に際しては、対象歯の歯面を予め歯ブラシ等により清掃することが好ましい。 本発明の歯をホワイトニングする方法は、好適な一態様としてホワイトニング剤に光を照射する工程を含む。当該光の波長はとくに限定されず、紫外線および可視光線のいずれもが好ましく用いられる。また、光源の種類もとくに限定されず、ハロゲンランプ(例えば波長480〜520nmのもの)、メタルハライドランプ(例えば波長310nmのもの)、発光ダイオード(例えば波長420〜500nmのもの)およびキセノンランプ(例えば波長460nmのもの)等が例示される。 本発明の歯をホワイトニングする方法においては、上記光のうち、人体に対する安全性の面から可視光線が好ましく用いられる。可視光線を用いても紫外線を用いた場合と同等のホワイトニングの効果が得られる。 光の照射時間は用いる光源および光の強度等に応じて改変可能であるが、典型的には30秒〜15分程度であり、約1分〜約10分が好ましい。 本発明の歯をホワイトニングする方法において、光を照射することは必須の工程ではなく、光を照射しなくてもホワイトニング効果は得られる。したがって、本発明の歯をホワイトニングする方法のうち、光の照射を行わない方法は、一般家庭において好適であり(ホームユース)、特定の光照射器具が常備されている歯科医院等においては、光照射を行う方法が好適である(オフィスユース)。 本発明の歯をホワイトニングする方法においては、ホワイトニング剤の適用後、口をすすぐこと等により、歯面を軽く水洗してもよい。適用から水洗までの時間は、20秒〜30分の範囲で調整することができる。光を照射する場合には、前記水洗は光の照射後に行う。本発明の歯をホワイトニングする方法においては、適用〜水洗までの処置を、1回行うか、または時間間隔を開けて2回以上行ってよい。時間間隔に制限はなく、例えば、1日〜10日の範囲で調整することができる。 また、本発明本発明は、歯をホワイトニングするキットにも係り、かかるキットは、炭酸塩を含み、好ましくは炭酸水素塩、増粘剤、オゾン溶存グリセリン溶液、過酸化水素水、光照射器具および/またはマウスピースをさらに含む。 光照射器具としては、前記したハロゲンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオードおよびキセノンランプ等のほか光重合用レジン硬化用照射器が例示される。これらの光照射器具は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、光照射器具から照射される光の波長もとくに限定されないが、人体に対する安全性の面から可視光線の波長のものが好ましく用いられる。該可視光線の波長は、典型的には短波長側が約360nm〜約400nm、長波長側が約760nm〜約830nm(JIS Z8120の定義による)である。 以下に本発明を実施例を示してさらに詳細に説明するが、当該実施例は単なる例示にすぎないものであり、如何なる意味においても本発明を限定することを意図するものではない。処方例1:炭酸ナトリウムの漂白試験用溶液の調製 炭酸ナトリウム 0.1g pH調整剤 0.01g 水 50ml 水に炭酸ナトリウムおよびpH調整剤を加え混合した。処方例2:セスキ炭酸ナトリウムの漂白試験用溶液の調製 セスキ炭酸ナトリウム 5g 水 50ml 水にセスキ炭酸ナトリウムを加え混合した。処方例3:オフィスユース(炭酸ナトリウム)(A液の組成) オゾン溶存グリセリン(濃度約4000ppm) 2ml(B粉末の組成) 炭酸ナトリウム 0.1g pH調整剤 0.01g 増粘剤 0.05g(C液の組成) オキシドール(濃度約3%) 1ml A液にB粉末を投入後撹拌し、その後C液を加えて再撹拌することによって、ホワイトニング剤を製造した。処方例4:オフィスユース(セスキ炭酸ナトリウム)(A液の組成) オゾン溶存グリセリン(濃度約4000ppm) 2ml(B粉末の組成) セスキ炭酸ナトリウム 0.01g 増粘剤 0.05g(C液の組成) オキシドール(濃度約3%) 1ml A液にB粉末を投入後撹拌し、その後C液を加えて再撹拌することによって、ホワイトニング剤を製造した。処方例5:ホームユース(炭酸ナトリウム)(A液の組成) オゾン溶存グリセリン(濃度約4000ppm) 2ml(B粉末の組成) 炭酸ナトリウム 0.1g pH調整剤 0.01g 増粘剤 0.05g 水 1ml A液にB粉末を投入し撹拌することによって、ホワイトニング剤を製造した。処方例6:ホームユース(セスキ炭酸ナトリウム)(A液の組成) オゾン溶存グリセリン(濃度約4000ppm) 2ml(B粉末の組成) セスキ炭酸ナトリウム 0.01g 増粘剤 0.05g 水 1ml A液にB粉末を投入し撹拌することによって、ホワイトニング剤を製造した。試験例1〜2:炭酸ナトリウムおよびセスキ炭酸ナトリウムの抜去歯への漂白力 ヒト抜去歯を5本ずつ用いて炭酸ナトリウムおよびセスキ炭酸ナトリウムのそれぞれの漂白効果を調べた。1)ヒト抜去歯のシェード(着色度合い)の測定を、シェードガイドに基づいて行った。2)歯面を清掃後、炭酸ナトリウム液およびセスキ炭酸ナトリウム液を予め調整(処方例1および2)し、それぞれの液の中にヒト抜去歯を浸漬し、2時間放置した。3)その後、液中から抜去歯を取り出し歯面を軽く水洗した。4)ヒト抜去歯のシェード(着色度合い)の測定を、シェードガイドに基づいて行った。試験例3:オフィスユース 本発明のホワイトニング剤を用い、下記のように5例の試験を行った。(方法)1)各被験者の試験対象歯のシェード(着色度合い)の測定を、シェードガイドに基づいて行った。2)歯面を清掃後、小筆などで、本発明のホワイトニング剤を予め調整(処方例3:炭酸ナトリウム)し歯面にたっぷりと塗布した。(厚さ1mm程度。)3)直ちに光重合用レジン硬化用照射器を用いて1分間照射した。4)歯面を軽く水洗し、試験対象歯のシェード(着色度合い)の測定を、シェードガイドに基づいて行った。 処方例4(セスキ炭酸ナトリウム)についても、試験例3と同様に5例の試験を行った(試験例4)。試験例5:ホームユース(炭酸ナトリウム) 本発明のホワイトニング剤を用い、下記のように5例の試験を行った。(方法)1)各被験者の試験対象歯のシェード(着色度合い)の測定を、シェードガイドに基づいて行った。2)歯面を清掃後、予め作成したマウスピースに本発明のホワイトニング剤を予め調整(処方例5:炭酸ナトリウム)し、小筆などで歯面にたっぷりと塗布した。(厚さ1mm程度。)3)1時間放置した。4)歯面を軽く水洗した。5)1)から4)の操作を1週間毎日行い、試験対象歯のシェード(着色度合い)の測定を、シェードガイドに基づいて行った。 処方例6(セスキ炭酸ナトリウム)についても、試験例5と同様に5例の試験を行った(試験例6)。(結果・考察)試験例1 炭酸ナトリウムの抜去歯への漂白力 下記のとおり、炭酸ナトリウムは抜去歯を漂白した。抜去歯1 A4→A3抜去歯2 A3→A2抜去歯3 A3.5→A3抜去歯4 A3→A2抜去歯5 A4→A2試験例2 セスキ炭酸ナトリウムの抜去歯への漂白力 下記のとおり、セスキ炭酸ナトリウムは抜去歯を漂白した。抜去歯6 A4→A3抜去歯7 A4→A3.5抜去歯8 A3.5→A3抜去歯9 A3→A2抜去歯10 A4→A3 炭酸水素ナトリウムは、炭酸ナトリウムやセスキ炭酸ナトリウムに比べてホワイトニング効果が弱く(データ非開示)、炭酸ナトリウムとセスキ炭酸ナトリウムはホワイトニング効果は同等といえる。試験例3 オフィスユース(炭酸ナトリウム)21歳男性 A4→A234歳男性 A3→A141歳女性 A4→A145歳男性 A3.5→A252歳男性 A4→A2 歯肉をブロックアウトすることなしで、全く痛みを生じずに歯を漂白することができた。試験例4 オフィスユース(セスキ炭酸ナトリウム)22歳女性 A3→A125歳女性 A3.5→A133歳女性 A3→A138歳男性 A3→A242歳男性 A3→A1 歯肉をブロックアウトすることなしで、全く痛みを生じずに歯を漂白することができた。試験例5 ホームユース(炭酸ナトリウム)22歳男性 A3.5→A223歳女性 A3.5→A135歳男性 A4→A136歳男性 A3→A138歳女性 A4→A2 歯肉をブロックアウトすることなしで、さらに光を用いなくても一定時間作用することで全く痛みを生じずに歯を漂白することができた。試験例6 ホームユース(セスキ炭酸ナトリウム)24歳男性 A4→A227歳女性 A3→A137歳男性 A3→A145歳男性 A4→A147歳女性 A3.5→A1 歯肉をブロックアウトすることなしで、さらに光を用いなくても一定時間作用することで全く痛みを生じずに歯を漂白することができた。 オフィスユース並びにホームユースのいずれにおいても、5例の試験の全例において、歯のシェードは有意に減少した。したがって、本願発明の歯のホワイトニング剤およびホワイトニングの方法が、十分なホワイトニング効果を有することが明らかになった。 なお、特許文献4に記載の試験例3(過酸化水素の併用)においては、最後に歯に3.5%過酸化水素水を塗布しているが、このような場合には、高濃度の過酸化水素が歯に当たり、歯肉をブロックアウトする必要があり、また予め塗布している漂白剤と過酸化水素が均一に混じらないため、白さがまだらになる欠点があったところ、本発明においては、予め過酸化水素水を混ぜることで、過酸化水素濃度が低下し安全になり、かつ均一に白くすることが可能となった。 また、知覚過敏のある歯にオゾンジェルを含有する本発明のホワイトニング剤を塗布すると浸みたが、オゾンジェルとPEGの混合物(オゾンクリーム)を含有するホワイトニング剤を塗布すると全く浸みなかったことから、オゾンクリームには、知覚過敏抑制効果があることが示唆された。 歯のホワイトニング剤であって、ホワイトニング成分として炭酸塩を含む、前記ホワイトニング剤。 炭酸塩が炭酸ナトリウムである、請求項1に記載のホワイトニング剤。 酸化チタンを含まない、請求項1または2に記載のホワイトニング剤。 炭酸水素塩をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のホワイトニング剤。 炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウムである、請求項4に記載のホワイトニング剤。 炭酸塩と炭酸水素塩との配合比が、10:1〜1:10である、請求項4または5に記載のホワイトニング剤。 ホワイトニング成分がセスキ炭酸ナトリウムである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のホワイトニング剤。 オゾン溶存グリセリン溶液をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のホワイトニング剤。 オゾン溶存グリセリン溶液とポリエチレングリコールとの混合物をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のホワイトニング剤。 過酸化水素、過酸化尿素および過炭酸ナトリウムからなる群から選択されるさらなるホワイトニング成分を3%以下の最終濃度でさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のホワイトニング剤。 請求項1〜10のいずれか一項に記載のホワイトニング剤を歯の表面に適用する工程を含む、歯をホワイトニングする方法。 炭酸塩、炭酸水素塩、オゾン溶存グリセリン溶液、および過酸化水素を含む、歯をホワイトニングするためのキット。 歯をホワイトニングする方法であって、歯面にセスキ炭酸塩とオゾン溶存グリセリン溶液、過酸化水素および光照射からなる群から選択される1または2以上とを組み合わせて適用することにより、口腔内のpH値、適用時間およびシェードガイドによる歯の色の測定値からなる群から選択される1または2以上を調整してなる、前記方法。 【課題】 十分な安全性、使用容易性、および低廉性を具備する、歯のホワイトニング剤を提供すること。 【解決手段】 歯のホワイトニング剤であって、ホワイトニング成分として炭酸塩を含む、前記ホワイトニング剤。【選択図】 なし