タイトル: | 公開特許公報(A)_IgA分泌促進剤 |
出願番号: | 2013021411 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 31/718,A61P 37/08,A61P 37/04,A61P 31/04,A61P 43/00,A23L 1/30 |
宮里 祥子 岸本 由香 細野 朗 高橋 恭子 上野川 修一 JP 2014152125 公開特許公報(A) 20140825 2013021411 20130206 IgA分泌促進剤 松谷化学工業株式会社 000188227 学校法人日本大学 899000057 辻居 幸一 100092093 熊倉 禎男 100082005 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 市川 さつき 100123777 宮里 祥子 岸本 由香 細野 朗 高橋 恭子 上野川 修一 A61K 31/718 20060101AFI20140730BHJP A61P 37/08 20060101ALI20140730BHJP A61P 37/04 20060101ALI20140730BHJP A61P 31/04 20060101ALI20140730BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140730BHJP A23L 1/30 20060101ALN20140730BHJP JPA61K31/718A61P37/08A61P37/04A61P31/04A61P43/00 111A23L1/30 B 4 OL 9 特許法第30条第2項適用申請有り 平成24年10月16日 「日本食品免疫学会」発行 「日本食品免疫学会2012年度大会要旨集」第44頁における公開 4B018 4C086 4B018LB08 4B018MD36 4B018ME10 4B018MF02 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA20 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA16 4C086MA35 4C086MA37 4C086MA41 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZB09 4C086ZB13 4C086ZB35 本発明は、難消化性デキストリンを有効成分とするIgA分泌促進剤に関する。 消化管は常に細菌、ウイルスなどの微生物、病原性抗原、食物抗原など多くの物質と接しており、これら外来抗原が生体内に侵入するのを防ぐため、腸管には強力な粘膜免疫機能が発達している。特に腸管の代表的なリンパ組織であるパイエル板から分泌されるIgAは、粘膜面への細菌やウイルスの付着防止、外来抗原を捕捉して体外に排出する異物排除、異種タンパク質によるアレルギー発症の予防などの作用を有しており、粘膜免疫機能において重要な働きを担っている。よって、IgAの分泌を促進することは、粘膜免疫機能を増強させ、感染症やアレルギー疾患を予防するなどの効果が期待できるため、IgA分泌促進作用を有する食品素材の開発が望まれている。 近年、フラクトオリゴ糖(特許文献1)、ガラクトオリゴ糖(非特許文献1)、イソマルトオリゴ糖(非特許文献2)、ラクトスクロース(非特許文献3)、シクロイヌロオリゴ糖(特許文献2)など、難消化性で低分子のオリゴ糖がIgA分泌促進作用を有することが報告されている。オリゴ糖にはいくつかの種類があるものの、小腸での消化吸収を逃れて大腸に到達し、そこで腸内細菌に資化されビフィズス菌を増加させるなど腸内環境を改善するという機能は一致しており、ほぼ統一した見解が示されている。 しかし、食物繊維に関しては、その種類は多種多様であり、起源、物性、構成糖、結合様式、腸内細菌による資化性の有無や程度など、それぞれ異なる特性を持っている。例えば、食物繊維は水溶性と不溶性の違いによって生理機能が異なることはよく知られているが、同じ水溶性食物繊維であっても、それぞれの有する機能や効果の強さは異なっており、一概に論じることは出来ない。実際にIgA分泌促進に関しては、同じ実験で複数の食物繊維を比較した結果が報告されており、水溶性食物繊維という共通した物性であっても、ペクチンにはIgA分泌促進が認められたがコンニャクマンナンでは促進しなかった(非特許文献4)という論文や、グアガム、グルコマンナン、ペクチンではIgA生産量が増加したが、グアガム分解物では増加しなかった(非特許文献5)という論文が発表されている。さらに、比較的低分子であり低粘度の水溶性食物繊維である、ポリデキストロース(非特許文献6)およびニュートリオース(非特許文献7)はIgA分泌量が減少したと報告されている。このように、同じ水溶性食物繊維であっても、IgA分泌促進に関しては統一した結果が得られておらず、物性が類似であってもIgA分泌促進作用の有無を予想することは出来ない。特開2003-201239号公報特許第4382465号日本栄養・食糧学会誌2008, 61, 79-88.機能性糖質素材の開発と食品への応用、シーエムシー出版,131-132,2005.J. Appl. Glycosci., 2007, 54, 169-172.J. Nutr., 1997, 127(5) 663-7.Biosci. Biotechnol . Biocem., 2003, 67(2) 429-33.British J. Nutr., 2007, 98, 123-33.Inflamm. Bowel Dis., 2010, 16(5)783-94 そこで本発明は、粘膜免疫賦活剤として有用な、新規IgA分泌促進剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、経口摂取により安全かつ継続的に容易に摂取することが出来、粘膜免疫機能を賦活することが可能なIgA分泌促進剤を提供するため、当該作用を有する食品素材の評価を行った。 マウスによる飼育実験の結果、水溶性食物繊維の一種である難消化性デキストリンを配合した飼料で飼育したマウスでは、腸管内に分泌されたIgAおよび糞便中のIgA量が難消化性デキストリンの用量に依存して増加し、新規IgA分泌促進剤として有効であることが明らかになった。 よって、難消化性デキストリンが粘膜免疫の賦活作用を有することが明らかになった。 難消化性デキストリンに関しては、血糖低下作用、脂質低下作用、体脂肪低下作用などメタボリックシンドロームに有効な機能を有することや、腸内細菌によって資化される性質を持つことから、腸内菌叢に影響を及ぼすことも報告されている。しかし、IgAの分泌や腸管免疫に及ぼす影響に関してはこれまでに報告された例はない。また、前述のごとく、難消化性デキストリンと同じ水溶性食物繊維で、物性や機能が極めて類似しているニュートリオースやポリデキストロースは、腸内細菌に資化され、腸内菌叢を改善する効果を有するが、IgA分泌を促進しないという報告がある。つまり、腸内菌叢を改善することが必ずしもIgAの分泌を促進するとは限らず、難消化性デキストリンがIgA分泌を促進することは従来の報告から予想することは出来ない。我々は意外にも難消化性デキストリンのIgA分泌促進作用を見出すことに成功し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、難消化性デキストリンを有効成分とするIgA分泌促進剤である。 本発明におけるIgA分泌促進剤は、難消化性デキストリンを有効成分とした新しいIgA分泌促進剤であり、安全で経口摂取が可能でしかも継続的に摂取することができる。難消化性デキストリンは水溶性で粘度が低く、甘みや特有の味を有さないため、あらゆる食品や医薬品に利用が可能である。つまり、本IgA分泌促進剤は飲食品や医薬品など幅広く応用できる汎用性の高いものである。本発明におけるIgA分泌促進剤を経口摂取すると、腸管粘膜においてIgA分泌を促進することによって、病原性微生物の消化管粘膜への付着を阻害して感染を予防することができる。マウスを用いた難消化性デキストリンのIgA分泌促進効果を評価する実験における、消化管内容物中のIgA量の測定結果を示す。マウスを用いた難消化性デキストリンのIgA分泌促進効果を評価する実験における、糞便中のIgA量の測定結果を示す。マウスを用いた難消化性デキストリンのIgA分泌促進効果を評価する実験における、摘出小腸パイエル板の培養細胞液中のIgA量を測定した結果を示す。マウスを用いた難消化性デキストリンのIgA分泌促進効果を評価する実験における、摘出小腸パイエル板の培養細胞液中のIL-12量を測定した結果を示す。 本発明は、難消化性デキストリンを有効成分とするIgA分泌促進剤からなる。すなわち、本発明のIgA分泌促進剤は、焙焼デキストリンをα−アミラーゼ及び又はグルコアミラーゼで消化して得られる、難消化性成分が少なくとも45質量%の難消化性デキストリンを有効成分として含むことを必須要件とする。本発明に使用する難消化性デキストリンには、難消化性デキストリンの水素添加物(還元物)も含まれる。 本発明におけるIgA分泌促進とは、IgAの分泌を賦活化・活性化し、分泌物や排出物におけるIgAの総量を相対的に増加させる機能をいう。例えば、IgA分泌促進剤を摂取した後に、本明細書の実施例の評価試験に記載の方法で分泌物や排泄物中のIgA量を測定した場合に、対照と比較してIgA量が増加していることを意味する。 IgA分泌量の測定方法として、IgA ELISA Quantitation Kit(コスモ・バイオ(株))やSalivary EIA Kit (フナコシ(株))等のキットが市販されており、これらのキットを用いてIgA分泌量を測定することができるが、後述するように、独自に設計したELISAを用いて測定することもできる。 難消化性デキストリン類を製造するために用いられる焙焼デキストリンとは、澱粉を、塩酸等の無機酸又はシュウ酸等の有機酸の存在下に、120〜200℃に加熱して得られる乾式澱粉分解物であり、少量の非消化性成分を含むデキストリンである。 より詳細には、焙焼デキストリンは、澱粉に鉱酸(例えば、塩酸、硝酸、硫酸)、好ましくは塩酸を、澱粉100質量部に対して、例えば、1質量%の塩酸水溶液として3〜10質量部添加し、加熱処理して得られる。加熱処理の前に、澱粉と鉱酸の水溶液を均一に混合するために、適当なミキサー中で撹拌、熟成(数時間)させてから、好ましくは100〜120℃程度で予備乾燥して、混合物中の水分を5質量%程度まで減少させることが好ましい。加熱処理は、120〜200℃、好ましくは150〜200℃で10〜120分、好ましくは30分〜120分が適当である。加熱処理の温度は高くする方が目的生成物中の難消化性成分の含量を増加させるが、180℃から着色物質を生成する傾向があるので、より好ましくは150〜180℃である。焙焼デキストリンの酸による分解において用いられる酸は、有機酸(例えばシュウ酸、クエン酸)でも無機酸(例えば塩酸、硝酸、硫酸)でもよいが、塩酸、シュウ酸等が好ましく、更に塩酸が好ましい。 難消化性デキストリンのより詳細な製造方法は次のとおりである。焙焼デキストリンを20〜45質量%程度の水溶液とし、焙焼デキストリン水溶液のpHを5.5〜6.5に調整し、α−アミラーゼを、例えばターマミル60L(商品名、ノボ・ノルディスク・バイオインダストリー社製造)の場合は、焙焼デキストリンに対し、0.05〜0.2質量%添加する。他のα−アミラーゼを使用する場合はその酵素の力価に応じて同等の量を添加すればよい。α−アミラーゼの添加後に溶液を加熱し、α−アミラーゼの作用温度である85〜100℃(α−アミラーゼの種類によって異なる)で30分〜2時間加水分解する。次いで温度を120℃程度(α−アミラーセの失活温度)に上昇してα−アミラーゼ作用を停止する。この際、塩酸やシュウ酸やなどの酸を加えてpHをα−アミラーゼが失活する程度、即ちpH4程度まで低下させてもよい。 このようにして得られる焙焼デキストリンの加水分解物は、低分子画分の除去、脱塩、脱色等の後処理を行えば難消化性デキストリンとして本発明のIgA分泌促進剤として使用できるが、好ましくはさらにグルコアミラーゼによる加水分解を行って難消化性成分の含量を高める。すなわち、液温を60℃まで下げ、pHを4〜5、好ましくは4.5に調整し、固形分質量に対し0.05〜0.4質量%のグルコアミラーゼを添加して55〜60℃で4〜48時間加水分解を行い、難消化性成分以外の成分をぶどう糖に分解した後、温度を80℃まで上げグルコアミラーゼの酵素作用を終了させる。このグルコアミラーゼとしては市販品がいずれも使用できるが、例えばグルクザイムNL4.2(商品名:アマノエンザイム社製)などがある。以後は通常の活性炭脱色、ろ過、イオン交換樹脂による脱塩、脱色を行い、50重量%程度の濃度まで濃縮する。 この液を強酸性陽イオン交換樹脂塔に通液してクロマト分離の方式で難消化性デキストリンとぶどう糖部分に分離して、難消化性成分を固形分当たり少なくとも45質量%、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは85〜95質量%含有する難消化性デキストリンを得ることができる。 上記難消化性デキストリンは、ラネーニッケル等の金属触媒の存在下、80〜120kg/cm2、120〜140℃の条件で水素ガスを接触させて接触還元して用いてもよい。市販の難消化性デキストリン製剤としては、パインファイバー、ファイバーソル2、ファイバーソル2H(以上、松谷化学工業株式会社製)を挙げることができる。 本発明のIgA分泌促進剤は、難消化性デキストリン又は還元難消化性デキストリンそのものであっても良いが、IgA分泌促進機能を有する他の化合物と更に組み合わせて使用することができる。他のIgA分泌促進機能を有する他の化合物としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ペクチン、ガラクトオリゴ糖及びイソマルトオリゴ糖を挙げることができる。 また、本発明のIgA分泌促進剤には、他の成分、例えば各種澱粉、加工澱粉、澱粉分解物、糖類、糖アルコール類、ダイズ多糖類等を配合してもよく、また、甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、ガムベース、香辛料、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、グルテン、栄養強化目的の強化剤等を配合することができる。配合比率は、IgA分泌促進剤を摂取、あるいはIgA分泌促進剤を配合して製造調理された食品を喫食する際の処方量、添加量、加えて摂取対象を考慮して設計されるべきであり、有効成分である難消化性デキストリンは、標準的な成人であれば一日当たり、少なくとも3g、好ましくは少なくとも5g、より好ましくは少なくとも10g摂取するように設計されるのが好ましい。 上記の方法で得られた本発明のIgA分泌促進剤は、種々の剤形とすることができる。例えば、医薬品として経口投与する場合には、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁剤、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができるが、これらに限定されない。また、製剤には薬剤的に許容できる種々の担体を加えることができる。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、コーティング剤を含むことができるが、これらに限定されない。本発明のIgA分泌促進剤を持続性、徐放性のものとしてもよい。 本発明のIgA分泌促進剤の摂取方法は特に限定されないが、例えば水溶液、錠剤、顆粒等の形状で経口摂取することが好ましい。 また、本発明のIgA分泌促進剤は、加工澱粉の適用が知られている飲食品に配合して摂取することができる。たとえば、ベーカリー食品、麺類、お好み焼きやたこ焼き、ホットケーキ等のスナック食品、和菓子、練り物、揚げ物のバッター、フリッター、ヨーグルト、プリン、ゼリー、マヨネーズやソース等を含めたドレッシング類、あんかけ類、アイスクリーム等の氷菓、畜肉製品、米飯類、人造米、粉末飲料、清涼飲料、炭酸飲料、ソフトヨーグルト、ゼリー飲料などの各種ドリンク等への配合が例示され、好ましくはベーカリー製品、麺類、ゼリー飲料への配合である。 一方、飼料として使用する際には、本発明のIgA分泌促進剤を既知の家畜、ペット用飼料に配合して投与しても良いし、そのままの形で投与してもよい。また、プレミックスとして供給することも可能である。 本発明のIgA分泌促進剤は、粘膜免疫機能賦活剤、感染症予防剤、抗アレルギー剤としても使用することが可能である。 以下、実施例により、本発明のIgA分泌促進剤に関する効果を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 6週齢の雌性BALB/cマウスを1週間固形飼料で予備飼育した後、3群に分け、コントロール飼料、コントロール飼料に難消化性デキストリン(商品名:ファイバーソル2)を5質量%配合した飼料、コントロール飼料に難消化性デキストリンを7.5質量%配合した飼料でそれぞれ飼育した。飼育期間中、飼料および水は自由に摂取させた。試験開始から1週目、2週目および4週目の3回にわたり、朝8時から翌朝8時までの24時間分の糞便を回収し、その後解剖して消化管内容物を採取した。得られた糞便中および消化管内容物中のIgAを下記のサンドイッチELISA法により測定した。ELISAによる総IgAの定量 0.1Mリン酸二水素ナトリウム(pH9.0)で10μg/mlに希釈したヤギ抗マウスIgG F(ab')2抗体(SIGMA)を96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)に50μl/well添加し、4℃で一晩インキュベートして抗体をプレートに吸着させた。0.05% Tween-20含有Phosphate buffered saline (PBST)でウェルを3回洗浄後、1%BSA-PBSを100μl添加して室温で2時間インキュベートしブロッキングを行った。PBSTで3回洗浄後、4℃、300G、10分間の遠心分離により得られた培養7日目のパイエル板(PP)細胞の培養上清を1%BSA-PBSTで1/50に希釈し、50μl添加した。腸内容物抽出液は同様に1/2000に希釈して50μl添加した。標準液は精製マウス骨髄腫IgA抗体(Kappa)(Bethyl Laboratories, Montgomery, TX)を1%BSA-PBSTで200ng/mlに希釈し、1/2ずつ段階希釈した。これを50μlウェルに添加し、検量線作成のための標準液として用いた。PBSTで4回洗浄後、1%BSA-PBSTで1/2000に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗マウスIgA(α chain specific)抗体(Southern Biotech, Birmingham, AL)を50μl添加し、室温で2時間インキュベートした。PBSTで8回洗浄後、4-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム(東京化成工業, 東京)をジエタノールアミン緩衝液に1mg/mlの濃度で溶解し50μl添加した。遮光したプレートを37℃で20〜30分インキュベート後、Microplate Reader Model 550(Bio-Rad Laboratories, Alfred Nobel Drive Hercules, CA)で405nmの吸光値を測定し、解析はMicro Plate Manager III(Bio-Rad Laboratories)を用いて行った。 また、試験開始から2週目においては、解剖時に各群のマウスより小腸パイエル板を摘出し、酵素を用いて細胞を分散させ、細胞懸濁液を調製した。トリパンブルー染色により顕微鏡下で生存細胞数を計数し、生存細胞濃度を8×106個/mLに調整した細胞懸濁液を培養プレートに1ウエルあたり500μL分注し、CO2インキュベーター内で培養した。難消化性デキストリンの継続摂取によるパイエル板のIgA分泌に対する潜在能力の有無を評価するために、各群の培地に刺激剤としてリポポリサッカライド(LPS)あるいはコンカナバリンA(conA)を等量添加した条件下でも同様に培養を行い、培養液中のIgA及びIgA分泌能力の指標としてのインターロイキン-12(IL-12)を測定した。IL-12は下記のサンドイッチELISA法により測定した。ELISAによるIL-12の測定 0.1Mリン酸二水素ナトリウム(pH9.0)で2μg/mlに希釈したラット抗マウスIL-12(p40/p70)抗体(BD pharmigen, San Diego, CA, USA)を96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)に50μl/well添加し、4℃で一晩インキュベートして抗体をプレートに吸着させた。PBSTでウェルを3回洗浄後、1%BSA-PBSを100μl添加して室温で2時間インキュベートしブロッキングを行った。PBSTで3回洗浄後、4℃、300G、10分間の遠心分離により得られた培養24時間後のPP細胞の培養上清を50μl添加した。標準品はリコンビナントマウスIL-12p40 (BD pharmigen, San Diego, CA, USA)を 1%BSA-PBSTで4000pg/mlに希釈し、1/2ずつ段階希釈した。これを50μl添加し、検量線作成のための標準液として用いた。PBSTで4回洗浄後、1%BSA-PBSTで2μg/mlに希釈したビオチン標識ラット抗マウスIL-12(p40/p70)抗体(BD pharmigen, San Diego, CA, USA)を50μl添加し、室温で2時間インキュベートした。PBSTで6回洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識ストレプトアビジン(Zymed, San Francisco, CA)を1%BSA-PBSTで0.6μg/mlに希釈して50μl添加し、室温で2時間インキュベートした。PBSTで6回洗浄後、4-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム(東京化成工業, 東京)をジエタノールアミン緩衝液に1mg/mlの濃度で溶解し50μl添加した。遮光したプレートを37℃で約120分インキュベート後、Microplate Reader Model 550(Bio-Rad Laboratories, Alfred Nobel Drive Hercules, CA)で405nmの吸光値を測定し、解析はMicro Plate Manager III(Bio-Rad Laboratories)を用いて行った。 その結果、消化管内容物中のIgA量は飼料に配合した難消化性デキストリンの用量に依存して増加した(図1)。また、糞便中IgA量も同様に、難消化性デキストリンの用量に依存して増加した(図2)。 細胞培養液中のIgAは、LPS及びconAを添加した際に難消化性デキストリン摂取群では増加しており、難消化性デキストリンはパイエル板のIgA産生能を亢進させることが明らかとなった(図3)。 IL-12に関しても、分泌活性剤を添加した場合は、難消化性デキストリン摂取群でIL-12量が増加した(図4)。IL-12はNK細胞に対する著明な活性化作用を特徴とするサイトカインである。IL-12はB細胞および単球系細胞より産生され、T細胞やNK細胞に対して細胞増殖の促進、細胞傷害活性誘導、IFN-γ産生誘導、LAK細胞誘導などの作用を示す。こうした細胞性免疫機能への役割から、IL-12には感染防御や免疫不全症の改善における臨床応用が期待されている。例えば、HIV感染患者の末梢血リンパ球におけるIL-12産生、IFN-γ産生あるいはNK細胞活性はいずれも有意に低下しているが、IL-12の投与によってこれらを健常者と同程度までに増強することが知られている。よって、難消化性デキストリンの摂取によりIgA分泌能及びIL-12産生能が高まることは、難消化性デキストリンが粘膜免疫を賦活することを示している。 以上の結果より、難消化性デキストリンはIgA分泌促進剤として有用であり、なおかつ粘膜免疫を賦活する作用を有することが明らかとなった。 難消化性デキストリンを有効成分とするIgA分泌促進剤。 難消化性デキストリンの難消化性成分が45質量%以上である請求項1記載のIgA分泌促進剤。 IgA分泌促進剤が経口投与形態の剤形に調製されている請求項1又は2に記載のIgA分泌促進剤。 請求項1〜3のいずれか一項に記載のIgA分泌促進剤を含む粘膜免疫賦活剤、抗感染症剤又は抗アレルギー剤。 【課題】粘膜免疫賦活剤として有用な、新規IgA分泌促進剤を提供することを目的とする。【解決手段】難消化性デキストリンを経口投与することにより有意なIgA分泌促進作用が認められた。【選択図】なし