生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_脳神経傷害に対する脳保護薬
出願番号:2013019651
年次:2014
IPC分類:A61K 31/7048,A61P 9/10,A61P 39/06


特許情報キャッシュ

片山 泰朗 稲葉 俊東 上田 雅之 永田 智香子 JP 2014148493 公開特許公報(A) 20140821 2013019651 20130204 脳神経傷害に対する脳保護薬 片山 泰朗 514052438 稲葉 俊東 514052449 上田 雅之 514052450 永田 智香子 514052461 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 片山 泰朗 稲葉 俊東 上田 雅之 永田 智香子 A61K 31/7048 20060101AFI20140725BHJP A61P 9/10 20060101ALI20140725BHJP A61P 39/06 20060101ALI20140725BHJP JPA61K31/7048A61P9/10A61P39/06 2 OL 17 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA13 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA36 4C086ZC37 本発明は、虚血性脳傷害を治療するための、脳神経傷害保護作用を有する脳保護薬に関する。 脳梗塞急性期における虚血性脳傷害を惹き起こす重要な因子の一つにフリーラジカルの産生増大が上げられる。これに対して臨床の場ではフリーラジカルスカベンジャーとしてエダラボン(ラジカット(登録商標)(田辺三菱ウェルファーマ))が唯一の脳保護薬として使用されているが、その効果は十分とは言えない。さらに強力な作用を持つフリーラジカルスカベンジャーや他の作用機序による新規脳保護薬の開発が期待されている。 エリスロマイシンは、主としてグラム陽性菌に強い抗菌力を示す14員環のマクロライド系抗生物質で、1952 年McGuire らによりStreptomyces erythreus の培養液から分離抽出された。 また、クラリスロマイシンは、エリスロマイシンのラクトン環の6 位水酸基をO−メチル化した半合成マクロライド系抗生物質で、その化学構造上、エリスロマイシンに比べて酸に対して安定な物質といわれている。 エリスロマイシンが、血管平滑筋の増殖を抑制し、動脈硬化症等の血管平滑筋の増殖に起因する疾患に効果を奏することが報告されている(特許文献1を参照)。しかしながら、この報告では、エリスロマイシンにより血管平滑筋の増殖を抑制することを目的とし、予防効果のみが報告され、エリスロマイシンと虚血性脳傷害の治療との関連については示されていない。 また、14員環マクロライド系化合物が心筋梗塞等の心疾患に効果を奏することが報告されている(特許文献2を参照)。しかしながら、心筋細胞に対する作用と脳神経細胞に対する作用は異なり、心疾患に効果があったとしても脳疾患に効果があるとは言えない。また、この報告では、14員環マクロライド化合物のうちロキシスロマイシンの効果のみが示されているが、一般に抗生物質等の化合物は側鎖の置換や元素の置換により生物学的活性は大きく変化することが知られている。ロキシスロマイシンはマクロライド14員環の9位のカルボニル基を2-メトキシ-エトキシ-メチルオキシムで置換したものであり、エリスロマイシンとは構造上異なる化合物であり、ロキシスロマイシンの作用からエリスロマイシンの作用を予測することはできない。 さらに、エリスロマイシンの投与が脳虚血に対する耐性を誘導し得ることが報告されていた(非特許文献1等を参照)。しかしながら、この報告においては、エリスロマイシンを脳虚血が生じる前に投与しており、脳虚血の予防を目的としている。予防と治療は異なり、予防に用い得るからといって治療に効果があるとは限らない。 クラリスロマイシンについても、急性非Q波心筋梗塞または不安定狭心症の患者における虚血性心血管症状のリスクを軽減することが報告されている(非特許文献2を参照)。しかしながら、上記でも述べたように、心筋細胞に対する作用と脳神経細胞に対する作用は異なり、心疾患に効果があったとしても脳疾患に効果があるとは言えない。特開2004-323414号公報特開2004-99604号公報Kerner IP. et al., Anesthesiology. 2007 Mar; 106(3): 538-47Juha Sinisalo et al., Circulation. 2002; 105: 1555-1560 本発明は、エリスロマイシン又はエリスロマイシン誘導体であるクラリスロマイシンを有効成分として含む、脳梗塞の急性期に投与することで、脳神経保護効果を発揮する脳保護薬の提供を目的とする。 本発明者らは、エリスロマイシン又はエリスロマイシン誘導体であるクラリスロマイシンの脳神経保護効果について検討を行った。すなわち、一過性脳虚血後再還流モデルラットを用いて、エリスロマイシン及びクラリスロマイシンの脳梗塞体積、脳浮腫及び神経徴候に及ぼす効果、並びに酸化ストレス及び炎症に対する作用について検討を行った。また、in vitroにおいてエリスロマイシンの無酸素・無糖負荷(oxygen・glucose deprivation: ODG)に対する神経細胞保護効果について検討を行った。 具体的には、一過性脳虚血後再開通モデルラットを作成し、エリスロマイシンを虚血後に皮下注にて投与、又はエリスロマイシン誘導体であるクラリスロマイシンを虚血後に経口投与して脳梗塞体積、脳浮腫Index及び神経徴候に及ぼす影響について検討を行った。その結果、エリスロマイシン及びクラリスロマイシンが脳梗塞体積、脳浮腫Indexを対照群と比べ有意に減少させ、神経徴候を有意に改善させること、中大脳動脈境界領域の皮質で評価した酸化ストレスマーカー(4-HNE及び8-OHdG)及び炎症マーカー(Iba-I及びTNF-α)を有意に減少させること、並びにエリスロマイシンは神経細胞の有意の生存率を改善させることを見出した。一方、15員環マクロライド系抗生物質であるアジスロマイシンには上記の作用は認められなかった。 これらの結果より、エリスロマイシン及びクラリスロマイシンは虚血性脳傷害に対して抗酸化及び抗炎症作用を介して脳保護的に働くこと、並びに神経細胞に保護的に作用することを明らかとし、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は以下のとおりである。[1] エリスロマイシン又はエリスロマイシン誘導体であるクラリスロマイシンを有効成分として含む虚血性脳傷害の治療に用いるための脳保護薬。[2] 虚血性脳傷害における脳神経傷害を改善する、[1]の脳保護薬。[3] 虚血性脳傷害が脳梗塞である、[1]又は[2]の脳保護薬。[4] 脳梗塞が急性期の脳梗塞である、[1]〜[3]のいずれかの脳保護薬。[5] 虚血性脳傷害を発症した患者に、発症後72時間以内に投与するための、[1]〜[4]のいずれかの脳保護薬。[6] エリスロマイシンが、エリスロマイシンラクトビオン酸塩である、[1]〜[5]のいずれかの脳保護薬。 本発明の脳保護薬は、抗菌剤として使用されているエリスロマイシン又はエリスロマイシン誘導体であるクラリスロマイシンを有効成分として含み、エリスロマイシン又はクラリスロマイシンを脳梗塞急性期に伴う症状の改善薬として用い得ることを示す。 エダラボンとは異なる作用機序を有するエリスロマイシン又はクラリスロマイシンによって脳保護ができることは、エダラボンだけでは十分と言えなかった脳保護効果を増強することができる。すなわち、脳梗塞体積や、脳浮腫を減少させただけでなく、特にエリスロマイシン又はクラリスロマイシンの抗酸化作用に加えて抗炎症作用によって虚血性脳傷害を軽減することができる。再灌流24時間後のTTC染色したラット脳の冠状切片の図である。Aは溶媒(vehicle)治療群の結果を示し、Bはエリスロマイシン治療群の結果を示す。図中のスケールバーは5mmである。再灌流24時間後の脳梗塞体積を示す図である。図中、vehicleは溶媒(vehicle)治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。再灌流72時間後のTTC染色したラット脳の冠状切片の図である。Aは溶媒(vehicle)治療群の結果を示し、Bはエリスロマイシン治療群の結果を示す。図のスケールは図1と同じである。再灌流72時間後の脳梗塞体積を示す図である。図中、vehicleは溶媒(vehicle)治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。再灌流24時間後の脳浮腫index(Edema index)を示す図である。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。再灌流72時間後の脳浮腫index(Edema index)を示す図である。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。再灌流24時間後の神経学的所見を示す図である。Aは片麻痺(Hemiparesis)を示し、Bは姿勢異常(Abnormal posture)を示す。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。再灌流72時間後の神経学的所見を示す図である。Aは片麻痺(Hemiparesis)を示し、Bは姿勢異常(Abnormal posture)を示す。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。脳虚血後の脳の4-HNE免疫組織化学染色の結果を示す図である。aは染色像を示し、bは1.33mm2当りの陽性細胞数を示す。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。脳虚血後の脳の8-OHdG免疫組織化学染色の結果を示す図である。aは染色像を示し、bは1.33mm2当りの陽性細胞数を示す。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。脳虚血後の脳のIba-1免疫組織化学染色の結果を示す図である。aは染色像を示し、bは1.33mm2当りの陽性細胞数を示す。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。脳虚血後の脳のTNF-α免疫組織化学染色の結果を示す図である。aは染色像を示し、bは1.33mm2当りの陽性細胞数を示す。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。無酸素・無糖負荷(OGD)後の細胞生存率に対するエリスロマイシンの効果を示す図である。図中、conはコントロール群の結果を示し、EMはエリスロマイシン治療群の結果を示す。無酸素・無糖負荷(OGD)後のエリスロマイシンの細胞生存率に対する効果を示す図である。左パネルがカルセイン AMで染色した結果を示し、右パネルがEthD-1で染色した結果を示す。右パネル、左パネル共に上はコントロールであり、中央がOGD後(エリスロマイシン投与なし)、下がエリスロマシン(100μM)治療群(OGD30分前にエリスロマイシン投与)を示す。脳虚血後72時間におけるTTC染色したラット脳の冠状切片の図である。Aは溶媒(vehicle)治療群の結果を示し、Bはクラリスロマイシン治療群の結果を示す。脳虚血後72時間における脳梗塞体積を示す図である。図中、vehicleは溶媒(vehicle)治療群の結果を示し、CAMはクラリスロマイシン治療群の結果を示す。脳虚血後72時間における脳浮腫Indexを示す図である。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、CAMはクラリスロマイシン治療群の結果を示す。脳虚血後72時間における神経徴候を示す図である。Aは姿勢異常(Abnormal posture)を示し、Bは片麻痺(Hemiparesis)を示す。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、CAMはクラリスロマイシン治療群の結果を示す。脳虚血後24時間におけるTTC染色したラット脳の冠状切片の図である。Aは溶媒(vehicle)治療群の結果を示し、Bはアジスロマイシン(腹腔内投与)治療群の結果を示し、Cはアジスロマイシン(皮下注投与)治療群の結果を示す。脳虚血後24時間における脳梗塞体積を示す図である。図中、vehicleは溶媒(vehicle)治療群の結果を示し、AZM-IPはアジスロマイシン(腹腔内投与)治療群の結果を示し、AZM-ISはアジスロマイシン(皮下注投与)治療群の結果を示す。脳虚血後24時間における脳浮腫Indexを示す図である。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、AZM-IPはアジスロマイシン(腹腔内投与)治療群の結果を示し、AZM-ISはアジスロマイシン(皮下注投与)治療群の結果を示す。脳虚血後24時間における神経徴候を示す図である。Aは姿勢異常(Abnormal posture)を示し、Bは片麻痺(Hemiparesis)を示す。図中、vehicleは溶媒治療群の結果を示し、AZM-IPはアジスロマイシン(腹腔内投与)治療群の結果を示し、AZM-ISはアジスロマイシン(皮下注投与)治療群の結果を示す。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の脳保護薬の有効成分は、14員環マクロライド化合物であるエリスロマイシンである。エリスロマイシンは、塩若しくはエステル、又はそれらの溶媒和物を含む。塩は、薬学的に許容できる塩であれば限定されないが、たとえば、酸付加塩、塩基付加塩、酸性若しくは塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。酸付加塩としては、ラクトビオン酸、チオシアン酸、酢酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、乳酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)塩、酒石酸又はクエン酸等の有機酸との塩、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸又はリン酸等の無機酸との塩が挙げられる。また、酸性アミノ酸との塩として、グルタミン酸、アスパラギン酸等との塩が挙げられる。また塩基付加塩としては、ナトリウム若しくはカリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム若しくはマグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム若しくはトリエチルアミン等のアミン類との塩、アルミニウムとの塩等が挙げられる。有機塩基との塩としては、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、メグルミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミンとの塩が挙げられ、塩基性アミノ酸との塩として、アルギニン、リジン、オルニチンとの塩等が挙げられる。この中でも、ラクトビオン酸との塩、チオシアン酸との塩、ステアリン酸との塩が好ましい。さらに、エステル体の例として、2'-アセチルエステル体、油脂等が挙げられる。溶媒和物は水和物を含み、例えば、ラクトビオン酸エリスロマイシンの11水和物、6水和物、5水和物、3.5水和物、3水和物等を含む。 本発明において、エリスロマイシンはエリスロマイシンの誘導体も含む、誘導体は当業者に公知の誘導体、すなわち各種のエリスロマイシン誘導体を含む。エリスロマイシンの誘導体として、エリスロマイシンのラクトン環の6位水酸基をO-メチル化したクラリスロマイシンとして知られる6-O-メトキシエリスロマイシンが挙げられる。ただし、エリスロマイシン誘導体には、エリスロマイシン及びクラリスロマイシン以外のロキシスロマイシン等の14員環マクロライド化合物、アジスロマイシン等の15員環マクロライド化合物並びに16員環マクロライド化合物は含まれない。例えば、エリスロマイシンやクラリスロマイシンと類似した骨格を有するアジスロマイシンは脳保護効果を有しない。 本発明の脳保護薬は、脳保護効果を有している。ここで、脳保護とは虚血性脳傷害に対して脳を保護する効果をいい、虚血性脳傷害等の致死的虚血状態に陥った脳を機能障害又は死から保護することを意味する。虚血性脳傷害とは、脳血流の局所的な低下等により脳神経細胞に十分な酸素、ブドウ糖が供給されなくなり、その結果、脳神経細胞が代謝障害を起こし、脳神経細胞の機能が低下し、又は脳神経細胞が死に至る傷害をいう。虚血性脳傷害を虚血性脳血管障害ともいう。虚血性脳傷害としては、脳梗塞、一過性脳虚血発作等が挙げられる。これらの虚血性脳傷害を脳卒中とも呼ぶ。また、心停止、低血圧、貧血、脱血、低酸素、ガス中毒又は窒息等による脳傷害も本発明の虚血性脳傷害に含まれる。この中でも本発明の脳保護薬は、脳梗塞の治療に有用であり、急性期または亜急性期の治療にも用い得るが、脳梗塞急性期の脳梗塞の治療に適している。脳梗塞急性期とは、発症から5日以内、48時間以内、6時間以内、又は3時間以内の時期をいう。脳梗塞急性期には、壊死に陥った脳組織に浮腫や腫脹(炎症)が認められ、傷害を受けた脳組織から活性酸素等のフリーラジカルが産生・放出され、酸化ストレスが増加し、周囲の組織傷害も引き起こす。本発明の脳保護薬は、脳梗塞体積を減少させ、脳浮腫を減少させ得る。さらに、虚血性脳傷害に伴う、片麻痺、姿勢異常、意識障害等の神経徴候を改善し得る。本発明の脳保護薬は、虚血性脳傷害に対して、抗酸化作用及び抗炎症作用を介して脳保護的に作用する。本発明の脳保護薬を投与した場合、脳において4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-HNE)、8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)等の酸化ストレスマーカー陽性神経細胞が減少し、イオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba-1)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)等の炎症マーカー陽性神経細胞が減少し得る。 本発明の脳保護薬は、虚血性脳傷害の治療に用い得るので、虚血性脳傷害治療薬、又は脳梗塞治療薬若しくは急性期の脳梗塞治療薬ということもできる。 本発明の脳保護薬は、現実に発症した虚血性脳傷害の治療を目的とし、虚血性脳傷害を発症することが予測される患者に事前に投与する、虚血性脳傷害の予防のためのエリスロマイシンの使用は除かれる。 本発明の脳保護薬は、上記の虚血性脳傷害において、脳神経細胞傷害を抑制する。この点で、本発明の脳保護剤は脳の神経保護効果も有する、脳神経傷害に対する脳神経保護薬でもある。 本発明の治療剤の投与経路は限定されず、経口投与、皮下投与、皮内投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経鼻投与、口腔内投与、経粘膜投与等により投与することができる。また、剤形も限定されず、例えば、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができ、非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤等の注射剤;経皮投与又は貼付剤、軟膏又はローション;口腔内投与のための舌下剤、口腔貼付剤;並びに経鼻投与のためのエアゾール剤とすることができる。 本発明の脳保護薬は、エリスロマイシン又はクラリスロマイシンを有効成分として含み、さらに薬理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、安定剤、コーティング剤等を含んでいてもよい。担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム等が挙げられ、結合剤としてはポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、アラビアゴム、シエラック、白糖等が挙げられる。注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが使用され、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、プロピレングリコールなどのポリアルコール、非イオン性界面活性剤などと併用してもよい。油性液としては、ゴマ油、大豆油などが使用され、溶解補助剤としては安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。担体等を含む脳保護薬中の有効成分であるエリスロマイシン又はクラリスロマイシンの含有量は、剤形によるが、通常、1〜50重量%程度である。 本発明の脳保護薬の有効成分の投与量は、限定されないが、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、投与する患者の体重、年齢、病状等の特性、あるいは医師の判断等に応じて適宜選択される。例えば患者の体重1kgあたり約1mg〜約2000mg、好ましくは約1mg〜約1000mg、さらに好ましくは10〜500mg程度の範囲である。投与量は1日1〜数回、例えば4〜6回に分けて投与することができ、数日又は数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。 本発明の脳保護薬は、現実に虚血性脳傷害を発症した患者に投与する。すなわち、本発明の脳保護薬は、脳梗塞急性期患者に投与することが好ましく、特に脳梗塞の発症後、5日以内、好ましくは3日以内、さらに好ましくは48時間以内、さらに好ましくは24時間以内、さらに好ましくは6時間以内、特に好ましくは3時間以内に投与する。 本発明の脳保護薬は、いかなる動物の脳保護にも使用できる。特に本発明の脳保護薬は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ等哺乳類の脳保護に好適に使用することができる。 本発明は、エリスロマイシン又はクラリスロマイシンを虚血性脳傷害を有する患者に投与することを含む、虚血性脳傷害を治療する方法、虚血性脳傷害を治療するためのエリスロマイシン又はクラリスロマイシン、虚血性脳傷害の治療薬又は脳保護薬を製造するためのエリスロマイシン又はクラリスロマイシンの使用を包含する。 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。[実施例1] エリスロマイシンの一過性脳虚血モデルにおける脳梗塞体積の検討(1)脳梗塞モデルの作成 雄性SDラット(250〜350g)を用いて1〜5%ハローセン(70%N2O・30%O2の混合気体)にて麻酔後、左中大脳動脈をシリコンコーティングした4-0ナイロン糸により90分間閉塞した後に再開通させ一過性脳虚血による脳梗塞モデルを作成した。(2)EM治療群、Vehicle治療群の作成 脳梗塞モデル作成直後に、エリスロマイシンラクトビオン酸塩(Erythromycin Lactobionate: EM (The United States Pharmacopeial Convention Inc. USA))150mgを生理食塩水5mlに溶解し(30mg/ml)、50mg/kgの投与量で皮下注 (I.S.)した(EM治療群)。対照群として、この脳梗塞モデル作成直後に同量の生理食塩水を同様に皮下注 (I.S.) したVehicle治療群を作成した。(3)脳梗塞体積の測定 再開通後24時間及び72時間後に各群の脳梗塞モデルの神経徴候を評価して、その後直ちに解剖し、脳梗塞体積を測定した。 脳梗塞体積は脳を2mmの厚さで冠状にスライスし、TTC染色を行いイメージアナリシスシステム(National Institutes of Health image software)を用いて脳梗塞面積を測定し、積分することで算出した。結果: 24時間後の脳梗塞体積はVehicle治療群では171.6±44.8mm3(mean±S.D., n=6)であり、EM治療群では83.0±28.0mm3(n=6)で、EM治療群はVehicle治療群に比べ有意の減少を認めた(P<0.01)(図1及び2)。 72時間後の脳梗塞体積は対照群では224.8±35.5mm3(mean±S.D., n=5)であり、EM治療群では、135.5±42.6mm3(n=5)であった。EM治療群はVehicle治療群に比べ有意の減少を示した(p<0.01) (図3及び4)。 以上から、EMは一過性脳虚血モデルにおいて24時間及び72時間後において脳梗塞体積を減少させることが明らかになった。[実施例2] エリスロマイシンの一過性脳虚血モデルにおける脳浮腫Indexの検討 実施例1と同じEM治療群、Vehicle治療群を用いて、脳浮腫Indexを測定した。脳浮腫Indexは損傷側の半球体積−健側の半球体積/健側の半球体積(%)で求めた。ここでいう、損傷側というのは、左中大脳動脈を90分間閉塞した後に再開通させたため一過性脳虚血モデル状態にある左脳をいい(図1A脳写真:脳左側の白い部分が虚血部分)、健側は同じラットの右脳をいう(図1A脳写真:脳右側)。結果: 24時間後の脳浮腫IndexはVehicle治療群で19.3±7.0%(mean±S.D.)であり、EM治療群では10.9±3.3%で、有意の減少を認めた(P<0.05)(図5)。 72時間後の脳浮腫IndexはVehicle治療群、EM治療群それぞれ21.3±5.4%(mean±S.D.)、13.4±4.1%で、EM治療群はVehicle治療群に比べ有意の減少を示した(p<0.05) (図6)。 以上から、EMは一過性脳虚血モデルにおいて24時間及び72時間後において脳浮腫を減少させることが明らかになった。[実施例3] エリスロマイシンの一過性脳虚血モデルにおける神経徴候の検討 実施例1及び実施例2と同じEM治療群、Vehicle治療群を解剖する前に、各群の脳梗塞モデルの神経徴候を評価した。 神経徴候は片麻痺(Hemiparesis)及び姿勢異常(Abnormal posture)を0〜3段階(0:正常、1:軽度障害、2:中等度障害、3:重度障害)に評価した。脳梗塞モデルは各群5〜6匹を用いた。結果: 24時間後の神経徴候の評価において片麻痺は、Vehicle治療群では2.17±0.41(mean±S.D.)であったのに対し、EM治療群では1.17±0.41で有意の改善をみた(p<0.01)。また姿勢異常の検討で、Vehicle治療群では1.83±0.41であったのに対し、EM治療群では1.00±0.63で有意の改善をみた(p<0.05)(図7)。 72時間後の神経徴候は片麻痺ではVehicle治療群で2.80±0.45(mean±S.D.)、EM治療群で1.80±0.45であり、EM治療群はVehicle治療群に比べ有意に改善した(p<0.01)。姿勢異常ではVehicle治療群、EM治療群においてそれぞれ2.40±0.55、1.20±0.45であり、EM治療群はVehicle治療群に比べて有意の改善が認められた(p<0.01) (図8)。 以上から、EMは一過性脳虚血モデルにおいて24時間及び72時間後において神経徴候を改善した。[実施例4] エリスロマイシンの一過性脳虚血モデルにおける免疫組織学的検討 実施例1及び2と同じEM治療群、Vehicle治療群の脳を24時間後に生食及び4%パラホルムアルデヒドで灌流固定した後20μm厚に凍結切片を作成して、免疫染色法により酸化ストレスマーカーとして4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-hydroxy-2-nonenal:4-HNE; 50:1; Japan Institute For the Control of Aging, Shizuoka Japan)及び8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-hydroxy-deoxyguanosine: 8-OHdG; 50:1; Japan Institute For the Control of Aging)を染色した。また、炎症性マーカーとしてイオン化カルシウム結合アダプター分子1(ionized calcium-binding adapter molecule 1: Iba-1; 500:1; Wako pure chemical industries, Osaka, Japan)及びTNF-α(10:1; Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を染色した。4-HNE、8-OHdG、Iba-1及びTNF-αにそれぞれ染色された細胞を中大脳動脈の境界領域の皮質において評価した。これらの陽性細胞数をランダムの4ヶ所(1.33mm2)において算出した。脳梗塞モデルはVehicle治療群及びEM治療群ともそれぞれ5匹を用いた。 脳虚血後の酸化傷害として脂質過酸化物、4-HNE及びDNA酸化傷害として8-OHdGを測定した。酸化ストレスマーカーの結果: 4-HNEの評価では、Vehicle治療群の虚血側では4-HNE陽性細胞が多く認められたが、EM治療群では4-HNE陽性細胞は明らかに少なかった(Vehicle治療群VS EM治療群:198.3±31.8 VS 52.9±18.7/1.33mm2, p<0.01)(図9A)。一方、健側ではどちらの群も増加を認めなかった。 8-OHdGの評価では、虚血側ではVehicle治療群において陽性細胞は明らかに多く認められたが、EM治療群では減少した(Vehicle治療群VS EM治療群:231.1±34.8 VS 104.1±19.0/1.33mm2、p<0.01)(図9B)。健側ではどちらの群も増加を認めなかった。炎症マーカーの結果: Iba-1は、ミクログリア(microglia)の活性化を示す。虚血側ではVehicle治療群においてIba-1陽性細胞が多く認められたが、EM治療群では明らかに少なかった(Vehicle治療群 VS EM治療群:313.1±18.4 VS 140.4±40.0/1.33mm2, p<0.01)(図10A)。一方、健側ではどちらの群も増加を認めなかった。 TNF-αは、炎症促進性のサイトカインであるが、虚血側ではVehicle治療群においてTNF-α陽性細胞が多く認められたが、EM治療群では明らかに少なかった(Vehicle治療群VS EM治療群:249.7±54.2 VS 50.1±21.0/1.33mm2, p<0.01)(図10B)。一方、健側ではどちらの群も増加を認めなかった。 以上より、EMは一過性脳虚血モデルにおいて酸化ストレスマーカー4-HNE及び8-OHdGを減少させ、また炎症性マーカーIba-1及びTNF-αを減少させ、抗酸化、抗炎症作用をもち、これらの作用により虚血性脳傷害を軽減させたと考えられた。[実施例5] エリスロマイシンの無酸素・無糖負荷(Oxygen-glucose deprivation(OGD))による神経細胞保護効果 ラット培養神経細胞を用いて無酸素・無糖条件(Oxygen-Glucose Deprivation: OGD)を負荷し、神経細胞傷害に対するEMの神経保護効果についてin vitroで検討した。(1) 初代細胞培養 妊娠17日目のSDラットより胎仔を摘出し、大脳皮質を切り出した。切り出された皮質に2.5%トリプシン-EDTA1.5mlを加え細かく刻んだ後、37℃で30分間静置した。低速遠心(80×g、5分間)をかけ、上清除去後に10% ウシ胎児血清を含む1.5ml Neurobasal mediumを加えてピペッティングにより沈殿を分散し、低速遠心(80×g、5分間)をかけた後上清除去することを2回繰り返した。上清除去後、Neurobasal medium (Gibco, Invitrogen)+ B27TMsupplement (Gibco, Invitrogen)を加えて細胞懸濁液を作り、細胞の分散を行った。分離された細胞は、ポリリジン(poly-L-lysine) + ラミニンでコートした24ウェルプレート (BIOCOAT(登録商標)CELLWARE, BD biosciences) に2×105 細胞/ウェルの濃度で播き、培養液を2mMグルタミン、100 U/ml ペニシリン、100mg/ml ストレプトマイシンを含んだNeurobasal(登録商標) mediumへ交換して培養した。培養13日目に培養液をNeurobasal medium supplemented with B27 minus antioxidantへ変更し、14日目で培養細胞を実験に用いた。(2) 無酸素・無糖状態(OGD) 培養液を各ウェルから取り除き、それらを一旦保存した。細胞をPBS(phosphate-buffered saline)で2回洗浄した後、OGD用無糖培養液(Dulbecco’s modified Eagle medium without glucoseを95% N2/5% CO2で15分間バブリング)に置換した。細胞を低酸素チャンバーへ移し、チャンバー内を95% N2/5% CO2(O2<0.1%)に置換し、3時間、37℃でインキュベートした。OGDは細胞を低酸素チャンバーより取り出し、一時保存しておいた元の培養液へ戻すことによって終了し、95% air/5%CO2、37℃の環境下でさらに24時間インキュベート(再酸素化)した。(3) EMの添加 EMをPBSで溶解して1mM(stock solution)とし、さらに希釈して最終濃度を10μMと100μMとして用いた。OGD30分前にEMを培養液に添加し、OGD用無糖培養液にも同濃度のEMを各ウェルに添加した。(4) 神経細胞死の評価 3時間OGD-再酸素化24時間後に、独立した4つのウェルにおける細胞死の評価を、培養液への乳酸脱水素酵素(LDH)の放出に基づいた分子生物学的アッセイ法を用いて行った。結果: 3時間OGD-再酸素化24時間後において、約66%の細胞死が得られた。(5) 神経細胞生存の評価 3時間OGD-再酸素化24時間後に細胞生存の評価を行った。LIVE/DEAD生存率/細胞毒性キット(Molecular Probes, Invitrogen)を用い、メーカーの使用説明書に従って施行した。細胞を2μmol/L カルセイン(calcein) AMと4μmol/L エチジウムホモダイマー (ethidium homodimer(EthD-1))で蛍光染色した。カルセインAMは生細胞の細胞内エラスターゼによって切断され、細胞質は緑色の蛍光を発する。また、膜が損傷した死細胞はEthD-1により蛍光染色される。結果: 3時間OGD-再酸素化24時間後において、10μM EM治療群では、対照群(OGD(+)、EM(-))に比べLDH放出率の有意な減少を認めず、神経細胞死の軽減は認めなかったが、100μM EM治療群では、対照群に比べてLDH放出率の有意な減少を認めた(P<0.05、図11)。また対照群ではカルセイン AMではほとんど染色されなかったが、100μM EM治療群における神経細胞は、カルセイン AM染色にて著明に染色され、EthD-1染色細胞は対照群に比べ減少していた(図12)。 培養神経細胞にOGD負荷した検討においてEMは神経細胞の死亡率を有意に減少させ、OGD負荷に対して神経保護効果があることが示された。 実施例1から5により、EMは脳虚血急性期の脳保護薬として有用な治療薬となり得ることが分かった。[実施例6] クラリスロマイシンの虚血性脳傷害に対する脳保護効果 実施例1と同じ方法で作成した脳梗塞モデル作成直後に、クラリスロマイシン(Clarithromycin:CAM, LKT Laboratories, Inc, USA)を経口投与して脳梗塞体積、脳浮腫Indexおよび神経徴候に及ぼす影響について検討した。薬剤の調整は、0.5%メチルセルロース溶液(Wako Pure Chemical Industries, Ltd, Japan)5mlにCAMを300mg溶解し(60mg/ml)、CAM治療群として100mg/kgの投与量で経口投与した。対照群は同量の0.5%メチルセルロース溶液を同様に投与してVehicle群とした。 CAMは脳梗塞モデル作成直後、24時間及び48時間後にそれぞれ100mg/kgの投与量で経口投与し、虚血後72時間において脳梗塞体積、脳浮腫Indexを測定し、また神経徴候を評価した。(1)脳梗塞体積の測定 脳梗塞体積は、Vehicle治療群では218.2±39.2mm3(n=6)であったのに対して、CAM治療群では135.3±33.8mm3(n=6)で、CAM治療群は有意の減少を示した(P<0.01)(図13及び14)。(2)脳浮腫Indexの測定 脳浮腫Indexは、Vehicle治療群では22.9±4.1%(n=6)であったのに対して、CAM治療群では14.9±5.2%(n=6)で、CAM治療群は有意の減少を示した(P<0.05)(図15)。(3)神経徴候の評価 神経徴候は、姿勢異常ではVehicle治療群では2.5±0.5(n=6)であり、CAM治療群では1.8±0.4(n=6)であり、CAM治療群では低下傾向を示したが有意ではなかった。片麻痺ではVehicle治療群では2.5±0.5(n=6)であり、CAM治療群では1.5±0.5(n=6)であり、CAM治療群は有意の低値をとり改善を認めた。(P<0.05)(図16)。結果: CAMは虚血性脳傷害に対して脳保護効果があることが示され、脳梗塞急性期において脳保護薬として使用できる可能性が示された。[比較例1] アジスロマイシンの虚血性脳傷害に対する脳保護効果 ラットを用いて一過性脳虚血後再開通モデルを作成し、アジスロマイシン水和物(Azithromycin hydrate:Pfizer)を虚血後に投与して脳梗塞体積、脳浮腫Indexおよび神経徴候に及ぼす影響について検討した。アジスロマイシン(AZM)の調整は、薬剤の添付文書に従って注射用水(日本薬局方)4.8mlにAzithromycin hydrate 524.1mg(AZMとして500mg)を溶解した溶液(100mg/ml)に同量の生理食塩水を加え50mg/ml溶液を作成した。AZMは100mg/kgの投与量で腹腔内(AZM-IP)または皮下注投与(AZM-IS)し、治療群とした。対照群は注射用水に同量の生理食塩水を加えた溶液を治療群と同様の方法で同量投与してVehicle群とした。 脳梗塞モデルは、実施例1と同じ方法で作成した。 AZMの投与は腹腔内投与(AZM-IP)または皮下注投与(AZM-IS)で検討した。 AZMは脳梗塞モデル作成直後に腹腔内または皮下注でそれぞれ100mg/kgの投与量で投与し、虚血後24時間において脳梗塞体積、脳浮腫Indexを測定し、また神経徴候を検討した。(1)脳梗塞体積の測定 脳梗塞体積は、Vehicle治療群では173.9±41.4mm3(n=7)であったのに対して、AZM-IP治療群では201.2±60.1mm3(n=5)で、AZM-IS治療群では168.34±58.5mm3(n=4)で、AZM-IPおよびAZM-IS治療群ともVehicle治療群に比べて有意の差異を認めなかった(図17及び18)。(2)脳浮腫Indexの測定 脳浮腫Indexは、Vehicle治療群では19.4±6.4%(n=7)であったのに対して、AZM-IP治療群では22.1±3.1%(n=5)、AZM-IS治療群では19.3±4.6%(n=4)であり、AZM治療群はVehicle治療群に比べて有意の差異を示さなかった(図19)。(3)神経徴候の評価 神経徴候は、姿勢異常ではVehicle治療群では1.9±0.4(n=7)であり、AZM-IP治療群では2.6±0.5(n=5)であり、AZM-IS治療群では2.0±0.8(n=4)でAZM治療群ではともに改善を認めなかった。片麻痺ではVehicle治療群では2.1±0.4(n=7)であり、AZM-IP治療群では2.0±0.0(n=5)であり、AZM-IS治療群では2.5±0.6(n=4)でAZM治療群ではともに改善を認めなかった。(図20)。結果: AZMは、虚血性脳傷害に対して脳保護効果が認められなかった。 エリスロマイシン又はクラリスロマイシンを有効成分として含む本発明の脳保護薬は、急性期脳梗塞等の虚血性脳傷害の治療、虚血性脳傷害における神経保護に用いることができる。 エリスロマイシン又はクラリスロマイシンを有効成分として含む虚血性脳傷害の治療に用いるための脳保護薬。 虚血性脳傷害における脳神経傷害を改善する、請求項1記載の脳保護薬。 【課題】本発明は、マクロライド系抗生物質であるエリスロマイシン又はエリスロマイシン誘導体であるクラリスロマイシンの脳保護薬としての使用を目的とする。【解決手段】本発明は、エリスロマイシン又はクラリスロマイシンを有効成分として含む虚血性脳傷害における脳保護薬を提供する。【選択図】なし


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