タイトル: | 公開特許公報(A)_ヒトアメロゲニン部分ペプチド |
出願番号: | 2013012019 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07K 14/47,C07K 7/06,C07K 7/08,A61K 38/00,A61P 19/08,A61P 43/00,A61P 1/02 |
谷本 幸太郎 丹根 一夫 國松 亮 吉見 友希 JP 2013177368 公開特許公報(A) 20130909 2013012019 20130125 ヒトアメロゲニン部分ペプチド 国立大学法人広島大学 504136568 青山 葆 100062144 山田 卓二 100101454 松谷 道子 100106518 櫻井 陽子 100138911 橋本 諭志 100146259 谷本 幸太郎 丹根 一夫 國松 亮 吉見 友希 JP 2012016734 20120130 C07K 14/47 20060101AFI20130823BHJP C07K 7/06 20060101ALI20130823BHJP C07K 7/08 20060101ALI20130823BHJP A61K 38/00 20060101ALI20130823BHJP A61P 19/08 20060101ALI20130823BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130823BHJP A61P 1/02 20060101ALI20130823BHJP JPC07K14/47C07K7/06C07K7/08A61K37/02A61P19/08A61P43/00 111A61P1/02 9 1 OL 16 4C084 4H045 4C084AA02 4C084BA08 4C084BA19 4C084BA23 4C084CA18 4C084NA14 4C084ZA671 4C084ZA961 4C084ZC411 4H045AA30 4H045BA14 4H045BA15 4H045BA16 4H045BA17 4H045CA40 4H045EA20 4H045FA20 4H045FA74 本願発明は、歯牙エナメルタンパク質の一種であるアメロゲニンタンパク質の部分ペプチドを提供する。 アメロゲニンは歯のエナメル質に存在するタンパク質である。歯の発生時期において、エナメル質は約30%のタンパク質を持ち、その約90%がアメロゲニンである。他のエナメルタンパクとしてはアメロブラスチン、エナメリン等が存在する。アメロゲニンは、生体の歯の形成期に分泌される重要なエナメルタンパク質であり、エナメル質の主成分であるハイドロキシアパタイトの結晶を誘導する機能を有する。また、アメロゲニンはエナメル芽細胞のみならず、マラッセの上皮遺残細胞(非特許文献1)、象牙芽細胞(非特許文献2)、骨芽細胞、骨細胞、軟骨細胞、骨髄由来細胞、破骨細胞(非特許文献3)においても発現していることが知られている。そして、アメロゲニンノックアウトマウスにおいて、顕著な歯根吸収が認められ、アメロゲニンが歯根吸収の調節因子として作用することが示唆される(非特許文献4)。また、ヒトアメロゲニンはセメント芽細胞(非特許文献5)、歯根膜細胞(非特許文献5)および骨髄由来間葉系幹細胞(非特許文献6)の細胞増殖、およびセメント芽細胞の石灰化(非特許文献7)を促進させる生理活性機能を有することが知られている。 上記のような生理活性に基づき、アメロゲニンを含むエナメル蛋白は、近年再生治療薬として臨床応用されており、歯周組織治療薬、創傷治癒促進剤、歯根充填材、顎骨部再生等に用いることが提案されている(特許文献1乃至5)。また、歯周組織再生材料としてブタのエナメルタンパクであるエムドゲイン(商標)、難治性創傷治癒促進剤としてのXelma(商標)など、すでに医薬品として上市されているものもある(非特許文献8および9)。 医薬用途に用いられるエナメル蛋白やアメロゲニンはいずれも、生物材料、または全長アメロゲニン蛋白である。生物材料はコストが嵩み、品質が安定せず、また未知の病原菌混入などの危険がある。また、全長タンパク質はその大きな分子量のため、製剤上の制約があり体内への吸収も良くない。アメロゲニンの全長タンパク質のアミノ酸配列は知られているが、活性部位についての情報は無い。特表2003−535905号公報特表2002−504520号公報特許4726300号公報特開2004−143165号公報特開2010−189399号公報Fong CD, Hammarstrom L. Expression of amelin and amelogenin in epithelial root sheath remnants of fully formed rat molars. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2000 Aug;90(2):218-23.Papagerakis P, MacDougall M, Hotton D, Bailleul-Forestier I, Oboeuf M, Berdal A. Expression of amelogenin in odontoblasts. Bone. 2003 Mar;32(3):228-40.Haze A, Taylor AL, Blumenfeld A, Rosenfeld E, Leiser Y, Dafni L, Shay B, Gruenbaum-Cohen Y, Fermon E, Haegewald S, Bernimoulin JP, Deutsch D. Amelogenin expression in long bone and cartilage cells and in bone marrow progenitor cells. Anat Rec (Hoboken). 2007 May;290(5):455-60.Hatakeyama J, Sreenath T, Hatakeyama Y, Thyagarajan T, Shum L, Gibson CW, Wright JT, Kulkarni AB. The receptor activator of nuclear factor-kappa B ligand-mediated osteoclastogenic pathway is elevated in amelogenin-null mice. J Biol Chem. 2003 Sep 12;278(37):35743-8. Epub 2003 Jul 8.Huang YC, Tanimoto K, Tanne Y, Kamiya T, Kunimatsu R, Michida M, Yoshioka M, Yoshimi Y, Kato Y, Tanne K. Effects of human full-length amelogenin on the proliferation of human mesenchymal stem cells derived from bone marrow. Cell Tissue Res. 2010 Nov;342(2):205-12. Epub 2010 Oct 22.Kunimatsu R, Tanimoto K, Tanne Y, Kamiya T, Ohkuma S, Huang YC, Yoshimi Y, Miyauchi M, Takata T, Tanne K. Amelogenin enhances the proliferation of cementoblast lineage cells. J Periodontol. 2011 Nov;82(11):1632-8. doi: 10.1902/jop.2011.110031. Epub 2011 Apr 12.7)Tanimoto K, Kunimatsu R, Tanne Y, Huang YC, Michida M, Yoshimi Y, Miyauchi M, Takata T, Tanne K. Differential Effects of Amelogenin on Mineralization of Cementoblasts and Periodontal Ligament Cells. J Periodontol. 2011 Sep 26. [Epub ahead of print]エムドゲイン(登録商標)ゲル 添付文書Clinical Interventions in Aging 2008:3(2) 263-272 本発明は、ヒトアメロゲニンと類似の活性を有する新規ペプチドを提供することを目的とする。 本発明は、完全長ヒトアメロゲニンrh174のC末端より7アミノ酸乃至29アミノ酸のペプチド断片からなる、アメロゲニンペプチドを提供する。完全長ヒトアメロゲニンrh174のcDNA並びにアミノ酸配列はGenBank よりGI6715562にて公開されている。 完全長ヒトアメロゲニンペプチドrh174のC末端から29アミノ酸のペプチド断片の配列は、配列番号11:PMQPLPPMLPDLTLEAWPSTDKTKREEVD(C29)である。本発明のペプチドは、このC29ペプチドまたはその部分ペプチドであって配列番号1 :TKREEVD (C7)を含むものである。 本発明のペプチドとして、好適には下記のいずれかの配列を有するものが挙げられる:配列番号1 :TKREEVD (C7)配列番号2 :KTKREEVD (C8)配列番号3 :DKTKREEVD (C9)配列番号4 :TDKTKREEVD (C10)配列番号5 :STDKTKREEVD (C11)配列番号6 :PSTDKTKREEVD (C12)配列番号7 :WPSTDKTKREEVD (C13)配列番号8 :AWPSTDKTKREEVD (C14)配列番号9 :EAWPSTDKTKREEVD (C15)配列番号10:LEAWPSTDKTKREEVD (C16) 以下本明細書並びに図面において各ペプチドについて個別に言及する場合は括弧内の用語を用い、「C7ペプチド」あるいは単に「C7」等という。上記の他、例えばアミノ酸数19までのペプチドが例示される。 本発明のアメロゲニンペプチドは、アメロゲニンと類似の活性を示す一方、低分子であり、また親水性の高いアミノ酸で構成されている。よって、本発明のアメロゲニンペプチドは、アメロゲニンと同じ臨床用途に用い得、アメロゲニン製剤や生物材料由来のエナメルタンパク製剤と比して、安全性が高く、組織への浸透性が高いという優れた効果を有している。 本発明はまた、上記アメロゲニンペプチドを含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、例えば骨、軟骨の形成促進剤、骨、軟骨の再生促進剤、歯周組織の形成促進、歯周組織の再生促進、創傷治癒促進剤、移植片取り込み促進剤等として用いることができる。ヒト由来セメント芽細胞の増殖に対する本願のペプチドの作用を示す図である。C7乃至C11はそれぞれ配列番号1乃至5のペプチドに対応し、C16は配列番号10のペプチドに対応する。縦軸は吸光度、横軸はペプチド添加量(μg/ml)を示す。*p<0.05、**p<0.01 (対コントロール)ヒト由来セメント芽細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)の遺伝子発現に対する本願のペプチドの作用を示す。ヒト由来セメント芽細胞を本願のペプチドの存在下(0.1μg/ml)で培養した際の遺伝子の発現量を発現量を測定し、無添加コントロールの結果と比較した。*p<0.05、**p<0.01 (対コントロール)ヒト由来セメント芽細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)蛋白発現に対する本願のペプチドの作用を示す。ヒト由来セメント芽細胞を本願のペプチドの存在下(0.1μg/ml)で培養した際の細胞内ALP量を測定した。*p<0.05、**p<0.01 (対コントロール)ヒト由来セメント芽細胞のオステオプロテジェリン(OPG)発現に対する本願ペプチドの作用を示す。ヒト由来セメント芽細胞を本願のペプチドの存在下(0.1μg/ml)で培養した際のOPG遺伝子の発現量を発現量を測定し、無添加コントロールの結果と比較した。*p<0.05、**p<0.01 (対コントロール)ヒト由来セメント芽細胞内NF-カッパB活性化受容体(RANKL)遺伝子発現に対する、本願ペプチドの作用を示す図である。ヒト由来セメント芽細胞を本願のペプチドの存在下(0.1μg/ml)で培養した際のRANKL遺伝子の発現量を測定し、無添加コントロールの結果と比較した。*p<0.05、**p<0.01 (対コントロール)ヒト由来セメント芽細胞の石灰化に対する、本願ペプチドの作用を示す。Ariza Redによる濃赤(図5では濃い灰色にて表示)は、細胞の石灰化が誘導されたことを示す。ヒト由来セメント芽細胞を本願のペプチドの存在下(0.1μg/ml)で培養した結果、本願のペプチドは石灰化を亢進することが示された。ヒト由来セメント芽細胞の骨形成関連タンパク質発現に対する本願ペプチドの作用を示す図である。本願の各ペプチドの存在下(0.1μg/ml)でヒト由来セメント芽細胞を培養し、細胞の石灰化の初期に検出されるタンパク質であるタイプIコラーゲン(col1)、オステオカルシン(OCN)、骨シアロタンパク(BSP)の発現量をウエスタンブロットにより測定し、無添加コントロールの結果と比較した。ヒト由来歯根膜細胞における細胞増殖能に対する、本願ペプチドの作用を示す。本願の各ペプチドの存在下(0.1μg/ml)でヒト歯根膜細胞を培養した際のDNA合成量を測定した。*p<0.05、**p<0.01 (対コントロール)ヒトセメント芽細胞およびヒト歯根膜細胞のカルシウム濃度に対する本願ペプチドの作用を示す図である。本願の各ペプチドの存在下(0.1μg/ml)でヒトセメント芽細胞並びにヒト歯根膜細胞をそれぞれ培養し、細胞内カルシウム濃度を測定した。*p<0.05、**p<0.01 (対コントロール)ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞のDNA合成量に対する本願ペプチドの作用を示す図である。本願の各ペプチドの存在下(0.1μg/ml)でSaOS2細胞株を培養し、DNA合成量を測定した。**p<0.01 (対コントロール) 本願のペプチドは、完全長ヒトアメロゲニン(rh174)のC末端の7アミノ酸を含む、同C末端の29アミノ酸までの部分ペプチドである。ヒトアメロゲニン完全長蛋白(rh174)の配列は公知である(GeneBank GI6715562)。 本発明のペプチドは、通常のペプチド合成により製造することができる。そのような方法として、例えば、Peptide Synthesis, Interscience, New York,1966; The Proteins, Vol2, Academic Press Inc.,New York, 1976;ペプチド合成、丸善(株)、1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)、1985;医薬品の開発続 第十四巻・ペプチド合成、広川書店、1991)などに記載されている方法が挙げられる。 また本発明ペプチドのアミノ酸配列に対応するポリヌクレオチド(DNAあるいはRNA)を製造し、当該ポリヌクレオチドを用いた遺伝子工学的手法によっても本発明のペプチドを製造することができる。 なお、本発明ペプチドには塩の形態のものも包含される。塩としては酸付加により形成される塩が例示され、例えば無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸など)または有機カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸など)、グルクロン酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、アスコルビン酸等の酸性糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩類、ヘパラン硫酸、ヘパリン、6位脱硫酸化ヘパリン、2位脱硫酸化ヘパリン、N−脱硫酸化ヘパリン、アルギン酸等の酸性多糖、または有機スルホン酸(メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸など)等の塩が例示される。これらの塩のうち、医学的に許容される塩が好ましい。 また本発明ペプチドの塩としては、塩基性物質と形成された塩も含み得、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、又はジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩等の有機塩基との塩のうち、医学的に許容される塩が例示される。 また、本発明ペプチドを修飾したペプチドも本発明ペプチドに包含される。このようなペプチドとしては、例えばα-アミノ基やα-カルボキシル基を修飾したペプチドや、側鎖官能基を修飾したペプチド等が挙げられる。修飾としては、ペプチド化学の分野で一般的に用いられる修飾基や保護基による修飾、また光学異性体であるD−アミノ酸等による置換が挙げられる。 本発明のペプチドは、アメロゲニンと類似した細胞増殖促進作用並びに細胞分化促進作用を有しており、アメロゲニンに期待される種々の臨床用途に用いることができる。 ここで「アメロゲニンに期待される臨床用途」としては、歯周疾患、骨折、骨欠損、骨粗鬆症、関節疾患、整形外科的疾患(離断性骨軟骨炎、変形性関節症など)の治療、う歯や欠損歯の治療、歯周治療、整形外科治療(培養細胞移植術、骨穿孔術、骨軟骨柱移植術など)、腫瘍摘出術による骨移植、骨補填の生体適合性の改善などが例示される。本発明のアメロゲニンペプチドはしたがって、かかる臨床用途に用いられる医薬品の有効成分として用いうる。本発明のアメロゲニンペプチドは、硬組織形成能を有する細胞の石灰化作用を有している。本発明において、「硬組織形成能を有する細胞」とは、セメント芽細胞、骨芽細胞、象牙芽細胞等が例示される。即ち本発明のペプチドは骨、エナメル質、象牙質、およびセメント質等の硬組織への分化促進作用に優れており、骨若しくは軟骨の形成促進剤又は再生促進剤、歯牙の形成促進剤又は再生促進剤として特に好適に用いられる。かかる用途に用いられる医薬組成物も、本願発明に含まれる。 本願発明の医薬組成物は、本願発明のペプチド1種または2種以上と共に、医薬上許容される担体を含有してなる。医薬組成物中の本願発明のペプチド濃度は限定的ではなく、適用部位、並びに期待される効果に応じて適宜定めればよい。また、その投与量は、投与の目的、疾患の種類、患者の症状、性別、年令、体重、投与部位、投与方法等によって個別に設定されるべきものであり特に限定されない。 本発明の医薬組成物は、その目的に応じて、注射(皮下、皮内、静脈内、腹腔内等)、点眼、点入、埋入、経皮、経口、吸入等、適宜投与方法を選択することができる。また投与方法に応じて注射剤(溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解用固形剤等)、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、リポ化剤、軟膏剤、ゲル剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤、点眼剤、眼軟膏剤、座剤、ペッサリー等の剤形を適宜選択し、製剤化することができる。特に歯科用製剤、たとえば歯根充填剤、歯周組織治療剤、歯槽骨欠損補填材等として好適に製剤化される。 また本発明薬剤には、本発明ペプチドに悪影響を与えず、かつ、本発明の効果に悪影響を与えない限りにおいて、他の医薬活性成分、例えば、ヒアルロン酸や、安定化剤、乳化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤、着色剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等、通常医薬に用いられる成分を使用することができる。 また、本発明のペプチドを適当な不溶性担体の表面に固着させたり、適当な素材と混合したりすることによって、細胞増殖の促進や細胞の分化促進、骨組織・軟骨組織や歯周組織の形成促進又は再生促進、生体適合性の改善等を目的とする薬剤としてもよい。このような不溶性担体又は素材としては、ビーズ、フィルム、プレート、モノフィラメント、不織布、スポンジ、織物、編物、短繊維、チューブ、中空糸等をはじめとする種々の形状のものを使用できる。また医用複合材料としてインプラント、骨セメント、骨補填剤、根管充填剤、骨折プレート、人工関節等に用いることができる。 このような素材の表面に本発明ペプチドを固着させる場合、その固着方法は特に限定されず、物理的吸着法、イオン結合法、共有結合法、包括法など固定化酵素の調製法として一般的な方法(固定化酵素、1975年、講談社発行、第9〜75頁参照)を利用することができる。 本発明を下記の実施例にて更に詳細に説明する。[材料](1)ヒト完全長アメロゲニンrh174:GI6715562に記載のcDNAを大腸菌に発現させて産生させたタンパク質を精製したものを用いる。なお、以下の実施例並びに図面においてヒト完全長アメロゲニンrh174を「rh174」と記載する場合がある。(2)配列番号1〜5および10のペプチド(C7〜C11、およびC16):常套法により合成した。(3)ヒト由来セメント芽細胞:広島大学大学院口腔顎顔面病理病態学にて樹立した細胞株を用いた。(4)ヒト歯根膜細胞:広島大学大学院口腔顎顔面病理病態学にて樹立した細胞株を用いた。(5)ヒト骨髄腫由来骨芽細胞様細胞株SaOS-2:DSファーマバイオメディカルより購入した。ヒト由来セメント芽細胞の増殖に対する作用細胞増殖能(DNA合成量)の測定 ヒトセメント芽細胞の DNA合成量に対する本願のペプチド(C7-C16ペプチド)、およびヒト完全長アメロゲニン(rh174)の作用を比較検討した。ヒトセメント芽細胞を 96-well プレート (FALCON) に1×103 cells/well の密度にて播種し、10 % FBS 含有 α-MEMを用い、37℃、5%CO2条件下で培養した。培養開始 4 日後に本願の各ペプチドまたは完全長アメロゲニンrh174を0.001-10 μg/ml の濃度で培地に添加した。 添加 24 時間後、Cell Proliferation ELISA BrdU Kit (Roche Diagnost-ics, Basel, Switzerland) を用いて細胞増殖活性を定量した。すなわち、細胞層をPBSで2回洗浄した後、5-bromo-2’-deoxyuridine (BrdU) (Roche Diagnotics) を PBS 中に添加し、37 ℃で 2 時間インキュベートした。余剰の BrdU を除去した後、抗 BrdU抗体を加え、得られた発色産物の吸光度をマイクロプレートリーダー (BIO-RAD) を用い、波長 450 nm における吸光度を測定した。 結果を図1に示す。図1より明らかなように、本発明のペプチドは全長ヒトアメロゲニンと同等のセメント芽細胞増殖能を有する。ヒト由来セメント芽細胞の細胞分化に対する作用骨分化マーカーの定量 PCR 解析 ヒトセメント芽細胞を6-well プレート (FALCON) に1×106 cells/well の密度にて播種し、10 % FBS 含有 α-MEMを用い、37℃、5%CO2条件下で培養した。コンフルエントに達した後、0.1μg/ml の濃度のC7-C16 ペプチドおよび rh174 を培養液に添加した。 24時間後にTrizol(登録商標)Reagent (Invitrogen) を用いて細胞層より total RNA を抽出した。RNA の定量は、分光光度計 (Gene Spec, 日立, 東京) を用いて、波長 260 nmの吸光度を測定することより行った。次いで、ReverTraAce(登録商標) (東洋紡, 大阪) および oligo(dt)20 プライマー (東洋紡) を用いて、1 μgの total RNA から cDNA を合成し、骨形成関連因子であるアルカリフォスファターゼ (ALP)およびオステオプロテジェリン(OPG)のプライマーを用い、Light Cycler システム (Roche Diagnostics) により各遺伝子の発現量を定量解析した。結果はコントロール(無添加)における遺伝子の発現量に対する比として表示した。結果を図2Aおよび図3に示す。ALP 量の測定 ヒトセメント芽細胞を6-well プレート (FALCON) に1×106 cells/well の密度にて播種し、10 % FBS 含有 α-MEMを用い、37℃、5%CO2条件下で培養した。コンフルエントに達した後、0.1μg/ml の濃度のC7-C16 ペプチドおよび rh174 を添加した。 添加 24 時間後に細胞層を PBSにて 2 回洗浄した後、0.2 % Triton-X-100 を加え、室温で 5 分間静置した。その後、Sonic Vibra Cell (Sonic&Materials Inc) で細胞を粉砕した。得られた抽出物におけるALP 量をpNPP Phoshatase Assay Kits (Bioassay Systems, Hayward, CA, USA) を用いて定量した。抽出物を50 μlにReconstituted Reagent を50 μl 添加し37 ℃にて 30 分インキュベートした。マイクロプレートリーダー (BIO-RAD) を用い、波長 405 nm における得られた発色産物の吸光度を測定した。結果を図2Bに示す。 セメント芽細胞におけるアルカリフォスファターゼ発現、オステオプロテジェリン発現の亢進は、骨への分化が促進されていることを意味する。本願の C7−C16ペプチドはヒト完全長アメロゲニンに類似した作用を有し、細胞の骨分化を促進する。ヒト由来セメント芽細胞内NF-カッパB活性化受容体(RANKL)発現に対する作用 ヒトセメント芽細胞を6-well プレート (FALCON) に1×106 cells/well の密度にて播種し、10 % FBS 含有 α-MEMを用い、37℃、5%CO2条件下で培養した。コンフルエントに達した後、10 % FBS含有 α-MEM に変更し、0.1μg/ml の濃度のC7-C16 ペプチドおよび rh174 を添加した。24時間後にTrizol(登録商標)Reagent (Invitrogen) を用いて細胞層より total RNA を抽出した。定量PCR解析(上記)により、RANKL遺伝子発現量を測定した。結果はコントロール(無添加)における遺伝子の発現量に対する比として表示した。 結果を図4に示す。RANKL発現の亢進は、骨の吸収促進を意味する。本願のペプチドは、ヒトアメロゲニンと同様にRANKLの発現を抑制し、骨の吸収を抑えることがわかる。ヒト由来セメント芽細胞の石灰化物沈着に対する作用Alizarin red 染色 HCEM を6-well プレート(FALCON) に 1×106 cells/well の密度にて播種し、培養開始 2 日目より C7−C16ペプチドまたはrh174を添加し、2 日ごとに培地交換を行った。コントロールには何も添加せず同様に培養を行った。培養開始 15 日目に、0.9 % NaCl を含む10 mM Tris-HCl (pH 7.5) にて細胞層を洗浄した後、95 %エタノールにて固定し、1 % Alizarin red 染色液にて処置を行った。染色された細胞層をデジタルカメラで撮影した。 結果を図5に示す。濃い赤で示される(図中では濃灰色)で示される部分は細胞内に石灰化物が沈着していることを意味する。本発明のペプチドは、セメント芽細胞の石灰化を誘導した。特にC9以上のペプチドにて、その傾向は顕著であった。 ヒト由来セメント芽細胞の骨形成関連タンパク質発現に対する作用 石灰化初期に検出されるタンパク質である、タイプIコラーゲン(col1)、オステオカルシン(OCN)、骨シアロタンパク(BSP)の発現に対するペプチドの作用を調べた。 ヒトセメント芽細胞を6wellプレートに1×106cells/wellの密度にて播種し、10%FBS含有αMEM中で培養した。コンフルエント後、FBS濃度を0%とし、C7−C16ペプチドまたはrh174を0.1μg/mlの濃度で添加して培養を続けた。ペプチド添加24時間後、細胞を0.1%protease inhibitor含有Triton bufferに溶解させタンパク質溶液を回収した。 得られたタンパク質溶液10 μgにSDS電気泳動用試料溶液を加え、100℃で3分間加熱して可溶化し、免疫化学的検出のための試料とした。12.5 % SDS-ポリアクリルアミドゲルe-PAGEL(登録商標)上で電気泳動により分離後、iBlot gel transfer system (Invitrogen) を用いてPVDFメンブレン上に転写した。メンブレンをブロックエース (雪印乳業,札幌 ) に浸漬し、30分間室温で処理した後、一次抗体としてcol1(sc-8784, Santa Cruz Biotechnology INC., Santa Cruz, CA,USA), OCN(sc-18319, Santa cCuz Biotechnology Inc.), BSP(LSL-LB-4335, Cosmo bio co. LTD, 東京)を用い、抗体の最終希釈濃度が1:1000となるようにCanGet Signal(登録商標) Solution 1 (東洋紡, 大阪 ) で調整し、4 ℃で一晩インキュベートした。メンブレンをwash buffer{0.5 % Tween-20含有リン酸緩衝溶液(PBS)}にて洗浄し、二次抗体としてcol1およびOCNにはDonkey anti-Goat IRDye(登録商標) 800CW ( LI-COR Bioscience, Lincoln, NE, USA ) 、BSPにはGoat anti-Rabbit IRDye(登録商標) 680 ( LI-COR Bioscience ) を用いて、各IgG抗体に対する1次抗体の最終希釈が1:5000となるようにCanGet Signal(登録商標) solution2 (東洋紡) で調整し、1時間室温にて振盪した。その後、メンブレンをwash bufferにて十分に洗浄を行い、近赤外線蛍光検出装置ODYSSEY ( LI-COR Bioscience ) にて観察を行った。総タンパク量はβactin量より算出した。各タンパク質のバンドを図6に示す。 図6に示すように、βアクチンの発現量は各ペプチド添加群、無添加コントロール群の間に差は認められなかった。タイプIコラーゲン(col1)および骨シアロタンパク(BSP)の発現量は、C9、C10、C11、C16、rh174添加群において、無添加コントロールと比較して増加が認められた。オステオカルシン(OCN)の発現量は、全てのペプチド添加群において無添加コントロールと比較して増加が認められた。歯根膜細胞増に対する作用 細胞増殖能(DNA合成量)の測定 ヒト歯根膜細胞の DNA合成に対する本願ペプチド並びにヒトアメロゲニン(rh174)添加の影響を比較検討した。 ヒト歯根膜細胞を 96-well プレート (FALCON) に1×103 cells/well の密度にて播種し、10 % FBS 含有 DMEMを用い、37℃、5%CO2条件下で培養した。培養開始 4 日後にC7〜C16ペプチド並びにrh174をそれぞれ0.1 μg/ml の濃度で添加した。コントロールには何も添加せず同様に培養を行った。 添加 24 時間後、Cell Proliferation ELISA BrdU Kit (Roche Diagnost-ics, Basel, Switzerland) を用いて細胞増殖活性を定量した。すなわち、細胞層をPBSで2回洗浄した後、5-bromo-2’-deoxyuridine (BrdU) (Roche Diagnotics) を PBS 中に添加し、37 ℃で 2 時間インキュベートした。余剰の BrdU を除去した後、抗 BrdU抗体を加え、得られた発色産物の吸光度をマイクロプレートリーダー (BIO-RAD) を用い、波長 450 nm における吸光度を測定した。結果を図7に示す。本発明のペプチドは、ヒト歯根膜細胞の増殖を促進した。ヒトセメント芽細胞およびヒト歯根膜細胞のカルシウム濃度に対する作用 ヒトセメント芽細胞およびヒト歯根膜細胞を6-well プレート(FALCON) に 1×106 cells/well の密度にて播種し、培養開始 2 日目よりC11、C16ペプチドおよびrh174 を添加し、2 日ごとに培地交換を行った。コントロールには何も添加せず同様に培養を行った。開始14 日目に、細胞層を10 mM Tris-HCl緩衝液 (pH 7.0) にて洗浄し、10 %ギ酸を加え室温にて 30 分抽出し、カルシウム測定用試料とした。 カルシウム濃度測定は、OCPC 法による比色定量法であるカルシウムC -テストワコー (和光純薬工業) を用いて、マイクロプレートリーダー (BIO-RAD) を用い、波長 570 nm における発色産物の吸光度を測定した。キットの標準溶液を希釈して作成した標準曲線を用いて カルシウム濃度を算出した。結果を図8に示す。 ヒトセメント芽細胞では、C11、C16ペプチドおよびrh174の添加により、有意にカルシウム濃度が亢進した。一方、歯根膜細胞では、いずれの添加によっても有意な変化は認められなかった。したがって、C11、C16ペプチドおよびrh174は、歯根膜細胞における石灰化に影響を与えることなくセメント芽細胞の石灰化を増加させることが示された。ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞の増殖に対する作用 ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞のDNA合成量に対するペプチド添加の影響を検討した。SaOS2細胞株を96-wellプレート (FALCON)に1×103 cells/wellの密度にて播種し、コンフルエント到達後、血清濃度を0 %とし、0.1 μg/mlの濃度のC9、C11、C16ペプチドおよびrh174を添加した。添加24時間後、Cell proliferation ELISA BrdU Kit ( Roche Diagnostics, Basel, Switzerland ) を用いてDNA合成量を評価した。α-MEM中に5-bromo-2-deoxyuridine (BrdU, Roche Diagnotics)を添加し、37℃で2時間インキュベートしHCEMの合成中のDNAに取り込ませた。余剰のBrdUを除去した後、抗BrdU抗体を加え、得られた発色産物の吸光度をマイクロプレートリーダーVERSAmax ( Molecular Devices ) を用い、波長450 nmにおける吸光度を測定した。結果を図9に示す ペプチドC9、C11、C16並びにrh174添加群において、無添加コントロールと比較して有意な増殖能の亢進が認められた。*<0.01 (対コントロール)配列番号11の全部または部分ペプチドであり、配列番号1の配列を含むヒトアメロゲニンペプチド。アミノ酸数が19までである、請求項1記載のアメロゲニンペプチド。配列番号1〜10いずれかに記載のペプチドである、請求項1記載のアメロゲニンペプチド。請求項1〜3いずれかに記載のペプチドを有効成分として含有する医薬組成物。細胞分化促進剤である、請求項4記載の医薬組成物。細胞増殖促進剤である、請求項4記載の医薬組成物。硬組織形成能を有する細胞の石灰化を促進する請求項5記載の医薬組成物。骨若しくは軟骨の形成促進剤又は再生促進剤である、請求項4記載の医薬組成物。歯周組織の形成促進剤又は再生促進剤である、請求項4記載の医薬組成物。 【課題】ヒトアメロゲニンと類似の活性を有する新規ペプチドを提供する。【解決手段】完全長ヒトアメロゲニン(rh174)のC末端の7アミノ酸を含む、同C末端の29アミノ酸までの部分ペプチドであり、アメロゲニンと類似した細胞増殖促進作用並びに細胞分化促進作用を有しており、アメロゲニンに期待される種々の臨床用途に用いることができる。【選択図】図1配列表