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タイトル:公開特許公報(A)_マイクロカプセルの製造方法およびマイクロカプセル
出願番号:2013002829
年次:2014
IPC分類:B01J 13/14,B01F 3/08,C08F 12/08,C08F 20/44,C08F 2/44,C08F 2/22,A61K 9/50,A61K 47/32


特許情報キャッシュ

金 正哲 高嶋 務 JP 2014133212 公開特許公報(A) 20140724 2013002829 20130110 マイクロカプセルの製造方法およびマイクロカプセル JX日鉱日石エネルギー株式会社 000004444 秋元 輝雄 100062225 金 正哲 高嶋 務 B01J 13/14 20060101AFI20140627BHJP B01F 3/08 20060101ALI20140627BHJP C08F 12/08 20060101ALI20140627BHJP C08F 20/44 20060101ALI20140627BHJP C08F 2/44 20060101ALI20140627BHJP C08F 2/22 20060101ALI20140627BHJP A61K 9/50 20060101ALI20140627BHJP A61K 47/32 20060101ALI20140627BHJP JPB01J13/02 BB01F3/08 AC08F12/08C08F20/44C08F2/44 BC08F2/22A61K9/50A61K47/32 9 OL 15 4C076 4G005 4G035 4J011 4J100 4C076AA61 4C076EE02A 4C076EE03A 4C076EE09A 4C076EE11A 4C076FF21 4C076GG23 4G005AA01 4G005AB14 4G005BA03 4G005BB08 4G005BB22 4G005DC02X 4G005DC10W 4G005DC10Y 4G005DC41Y 4G005DD04Z 4G005DD08Z 4G005DD12Z 4G005DD53Z 4G005DD66Z 4G005DE10Y 4G005EA02 4G005EA03 4G005EA05 4G005EA10 4G035AB40 4G035AC26 4G035AE13 4G035AE17 4J011AA08 4J011KA16 4J011KB08 4J011KB29 4J011PA23 4J011PB40 4J011PC06 4J100AB02P 4J100AB16R 4J100AL03Q 4J100AL62R 4J100AL63R 4J100AM02Q 4J100CA04 4J100CA05 4J100CA29 4J100EA09 4J100EA11 4J100FA03 4J100FA20 4J100GC07 4J100JA24 4J100JA53 本発明は、コア材が、医薬、農薬、香料、蓄熱材等の機能性有機化合物でシェル材がビニルモノマーの重合体であるマイクロカプセルの製造方法およびその製造方法により得られるマイクロカプセルに関するものである。 さらに詳しくは、本発明は、コア材である機能性有機化合物の機能保持(漏洩防止等)および機能発現(浸透調整等)の効果を高めるべく、シェル材である重合体の化学特性、物理特性、形状特性(粒径分布等)を任意に制御できるマイクロカプセルの製造方法およびその製造方法により得られるマイクロカプセルに関するものである。 近年、マイクロカプセルの応用分野は拡張し続けている。それに伴い、マイクロカプセルの機能を決定する要素技術として、シェルの化学構造、機械的強度、形状、粒径分布等が注目され、改良提案が行われている。上記各種の要素技術の観点から蓄熱材マイクロカプセルに代表されるマイクロカプセル及びその製造方法に関し、種々の提案がなされている(特許文献1〜6)。 特許文献1には、核材料として、特定の温度範囲内に固/液相転移を有する親油性物質(例えば、分枝状または線状C10〜C40−炭化水素、環状炭化水素)、および殻材として、アクリル酸等の特定炭素数のアルキルエステル(モノマーI);二官能性または多官能性モノマー(モノマーII,DVB、EGDMA、TMPT等ポリビニルモノマー);およびその他のモノマー(モノマーIII,例えばスチレン)を含むモノマー混合物に開始剤を溶解させてラジカル重合により得られるポリマーを有するマイクロカプセルの潜熱蓄熱材料としての使用、ならびにこれらの製造方法等に関して開示する。得られたマイクロカプセルの粒径は、1〜30μmの記載はあるが、粒径分布に関する記載はなく、ホモジナイザー撹拌機による乳化方法から推測するに、狭い粒径分布のマイクロカプセルは得られていない。 特許文献2は、蓄熱材として用いられ、蓄熱性能に優れたマイクロカプセルを開示し、相変化に伴って潜熱を蓄熱または放熱する相変化物質を芯物質(例えば脂肪族炭化水素等のワックス)とし、該芯物質が重合性モノマー(例えば、MMA)、架橋剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)を重合してなる熱可塑性樹脂のカプセル壁で覆われたマイクロカプセルであり、該マイクロカプセルが、連続した被膜よりなるカプセル壁に芯物質が収納された単孔マイクロカプセルを開示する。しかし、油相の分散方法はホモジナイザーを用いる高速撹拌で、当該マイクロカプセルの粒径は、20〜30μmと大きく、粒径分布の開示はないが分散方法から推して広いものと推定される。 特許文献3は、特許文献2と同様の成分の、ラジカル重合性モノマー(例えば、MMA)、脂肪族炭化水素、重合開始剤、2官能性架橋性ビニルモノマーからなる重合用モノマー溶液、及び分散安定剤を添加した水性分散媒体をホモジナイザーで高速撹拌、分散混合し、得られた懸濁分散液を80℃で所定時間重合して得られた蓄熱マイクロカプセルを開示する。殻材のカプセル壁が破壊し難く、芯物質が外へ漏出し難いので、高い蓄熱性能を有するマイクロカプセルが得られる旨開示する。しかし、マイクロカプセルの粒径は10〜60μmと大きく、ホモジナイザーによる分散であるから、製法から推して粒径分布も広いものと推測される。 特許文献4は、熱輸送媒体として用いられる場合にも破壊され難い程度に強靭な蓄熱カプセル、その製造方法を開示する。シェル及び中空部分からなる中空カプセルの中空部分に蓄熱材料が内包された蓄熱カプセルであって、シェルが架橋性モノマーの重合体若しくは共重合体、又は架橋性モノマーと単官能性モノマーとの共重合体で構成される層を含む蓄熱カプセルを開示する。しかし、分散安定剤の水溶液、および蓄熱材料及びモノマー混合物の分散方法はホモジイザーや膜乳化法など機械的せん断力による分散法など公知の方法を採用できる旨開示し、得られたマイクロカプセルの粒径分布は広いものと推定される。 特許文献5は、本願出願人が承継したもとの企業の出願である。乳化機において、粒径及び粒径分布制御が容易で、メンテナンスが簡易で工業生産に適した十分な生産量が確保できる乳化装置を開示する。乳化剤の存在下に、相互に実質的に不溶性の複数の液体を、一定間隔を保持して配置されてなる複数の網状体を連続して順次通過させることにより乳化させる方法で、当該網状体が組込まれた筒型流路を具備し、該筒型流路内には所定間隔で所定枚数の金網が配置されてなる乳化方法およびそのための乳化装置を開示する。さらに、前記乳化装置により得られた乳化液を用いて製造されるマイクロカプセルも開示する。しかし、本願のような、コア材がビニル基を含まない有機化合物、シェル材がビニルモノマーの重合体からなるコア−シェル構造のマイクロカプセルについての具体的開示はない。 特許文献6は、高温環境下に長時間曝されても蓄熱材の漏洩が生じ難く、耐熱性に優れる蓄熱材用マイクロカプセル粒子を開示し、架橋性樹脂からなるカプセル壁と、それに内包された蓄熱材とから構成される蓄熱材用マイクロカプセル粒子で、前記架橋性樹脂が、多官能重合性単量体を含む重合性単量体から構成され、蓄熱材が、数平均分子量(Mn)が1300〜4,000の多官能性脂肪酸エステルであり、その含有量が前記樹脂100重量部に対して30〜100重量部である蓄熱材用イクロカプセル粒子を開示する。当該粒子の体積平均粒径(Dv)は3〜50μmで、Dvと個数平均粒径(Dn)の比である粒径分布が1〜1.8である旨開示する。しかし、液滴形成のための分散処理は、インライン型乳化分散機、高速乳化・分散機(T.K.ホモミクサー)等強撹拌が可能な装置を用いて行う旨開示し、CV値表示で30%以下の狭い粒径分布のマイクロカプセル粒子が得られる旨の開示はない。 しかし乍、上述の通り、これら公知技術は、各要素技術を個別に提案するにとどまり、すべての要素技術の総合的な解決を提案するものではない。特表 2002−516913号公報特開 2004−203978号公報特開 2004−277646号公報特開 2006−257415号公報特開 2009−090191号公報特開 2010−150329号公報 要素技術の総合的課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ね、その結果、シェルを構成するビニルモノマー種の適正化と適宜行われる架橋構造の設計により、マイクロカプセルの耐熱性、機械的強度、および、コア材の浸透と漏洩を制御しながら、各マイクロカプセルの機能が等しく発現するよう、コア材を構成する有機化合物とシェルを構成するビニルモノマー化合物を含むO/W型分散液に特定の乳化処理を行うことで形状的均一性を付与することに成功し、本発明を完成するに至った。さらに、本発明に係るマイクロカプセル化により、芯材の漏洩防止や殻材の浸透性を制御できる可能性が予測され、今後の確認試験の結果が待たれる。 本発明の第一は、ビニル基を含まない有機化合物と少なくとも1種のビニルモノマーとを含むO/W型分散液を原料とし、前記ビニルモノマーの重合反応を経て、コアが前記ビニル基を含まない有機化合物でありシェルが前記ビニルモノマーの重合体であるコア―シェル構造を有するマイクロカプセルを製造する方法において、前記O/W型分散液が、前記重合反応前に、流路に沿って設けられた一定間隔を保持して配置されてなる複数の網状体を連続して順次通過させて乳化処理される工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法に関する。 本発明の第二は、前記マイクロカプセルを製造する方法において、前記ビニルモノマーが電子吸引性基を有する少なくとも1種のビニルモノマーと電子供与性基を有する少なくとも1種のビニルモノマーとを含むことを特徴とする、本発明の第一に記載のマイクロカプセルの製造方法に関する。 本発明の第三は、前記O/W型分散液が、2以上のビニル基を有する架橋剤を含むことを特徴とする、本発明の第一ないし第二に記載のマイクロカプセルの製造方法に関する。 本発明の第四は、前記2以上のビニル基を有する架橋剤が、電子吸引性基を有することを特徴とする本発明の第三に記載のマイクロカプセルの製造方法に関する。 本発明の第五は、前記O/W型分散液中のビニルモノマーが、電子吸引性基を有するビニルモノマーとしてアクリロニトリルまたはメタクリロニトリル、電子供与性基を有するビニルモノマーとしてスチレンを含むことを特徴とする、本発明の第一乃至第四の何れかに記載のマイクロカプセルの製造方法に関する。 本発明の第六は、以下の式(1)で定義されるマイクロカプセルのCV値が30以下であること、を特徴とする、本発明の第一乃至第五の何れかに記載のマイクロカプセルの製造方法に関する。 CV値=(液滴径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100 式(1) 本発明の第七は、本発明の第一乃至第六の何れかに記載のマイクロカプセルの製造方法によって得られる、コアが、ビニル基を含まない有機化合物でありシェルがビニルモノマーの重合体であるコア―シェル構造を有するマイクロカプセルにおいて、シェルが、電子吸引性置換基を有する少なくとも1種のビニルモノマーと電子供与性基を有する少なくとも1種のビニルモノマーとを構成単位として含む少なくとも二元共重合体であり、かつ、CV値が30以下のマイクロカプセルに関する。 本発明の第八は、シェルが、電子吸引性基を有する2以上のビニル基を含む架橋剤で架橋されていることを特徴とする、本発明の第七に記載のマイクロカプセルに関する。 本発明の第九は、シェルが、電子吸引性基を有するビニルモノマーとしてアクリロニトリルまたはメタクリロニトリル、電子供与性基を有するビニルモノマーとしてスチレンを含むことを特徴とする、本発明の第七乃至八に記載のマイクロカプセルに関する。 本発明によれば、コア材である機能性有機化合物の機能保持および発現にかなうよう、シェル材の化学特性、機械的特性の制御、および、マイクロカプセルの形状特性、粒径分布の制御が可能であり、製造されたマイクロカプセルは、コア材の機能に従って、殺虫剤、芳香剤、蓄熱材等に使用することができる。 本発明に係る上記方法を行なうための装置の一例を以下に示す。装置の斜視図である。網状体を保持し、間隔を決定するスペーサーcの斜視図である。装置の断面図である。なお、理解を容易にするため、網状体数を10個とした。 本発明に係る、ビニル基を含まない有機化合物とは、マイクロカプセルのコア(または芯)材を構成する化合物であり、重合性ビニル基を有さないため、シェル(または殻)材を形成する重合反応過程では、実質的に、シェル材と反応してシェルに組み込まれることはない。当該有機化合物は特に限定されず、香料(天然香料、合成香料及び植物精油)、農薬、生理活性物質、忌避剤、消臭剤、着色料、蓄熱材などが挙げられる。これらの有機化合物は、疎水性を有することが好ましく、液体に限らず、固体でもよい。また、これらの芯物質または芯材を不揮発性のオイルや高沸点溶剤に溶解したものもコア材として使用できる。蓄熱材としては、C8〜C40のノルマルパラフィンが用いられる。 本発明に係る、重合反応に供される、O/W型分散液中のビニルモノマーには、特に制限はないが、好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数は通常1〜32)、特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチルおよび相当するメタクリル酸エステル、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、4−ビニルピリジン等が挙げられる。中でも、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル/メタクリロニトリル、スチレンがさらに好ましい。 本発明に係る、重合反応に供される、O/W型分散液中のビニルモノマーは、好ましくは、電子吸引性基を有する少なくとも1つのビニルモノマーと電子供与性基を有する少なくとも1つのビニルモノマーを含む。 電子吸引性基を有するビニルモノマーとは、ビニル化合物中の重合反応に関与する二重結合の電子密度を表すe値(これらの値は、大津隆行著「高分子合成の化学」(化学モノグラフ15)1968年(株)化学同人発行等に記載されている。)が正のものであり、通常、非極性(疎水性)の置換基を有する。電子供与性基を有するビニルモノマーとは、e値が負のものであり、通常、極性(親水性)の置換基を有する。 上記のビニルモノマー化合物の組み合わせは、電子吸引性基と電子供与性基が互いに引き付け合い電荷移動錯体を形成し、交互共重合を行うことが可能であるので、本発明に係るシェルを構成する重合体では、非極性基と極性基とが、局在する確率が小さい。その結果、シェル化学構造の疎水性と親水性の均質化が行われ、マイクロカプセルの形状面では、球状、擬球状または扁平状形状を得ることができ、コア材の浸透あるいは漏洩面では、局所的な浸透あるいは漏洩を抑制できる。 両者の配合比は、両ビニルモノマー重合体の中間的性質を求めるのであれば、等モルを基準に配合する。コア材のマイクロカプセル外への浸透促進を優先する場合は、両者のうち、コア材との親和性が大きいビニルモノマーを相対的に増量し、漏洩防止を優先する場合は、コア材との親和性が大きいビニルモノマーを相対的に減量する調整を行う。通常は、モル比20:80〜80:20の範囲で調整する。これを逸脱する範囲では、非極性基と極性基の両者が存在する効果が得られないことがある。 ビニルモノマーの組み合わせを例示するが、これらは、交互共重合体を生成することが知られている組み合わせであり、e値の差(Δe)が1.0以上、好ましくは、1.30以上、さらに好ましくは、1.50以上のビニルモノマーの組み合わせである。すなわち、電子吸引性基を有するビニルモノマー化合物としては、塩化ビニル(e値=0.16)、メタクリル酸メチル(e値=0.40)、アクリル酸メチル(e値=0.60)、メチルビニルケトン(e値=0.68)、アクリロニトリル(e値=1.20)、メタクリロニトリル(e値=1.00)、アクリルアミド(e値=1.30)、無水マレイン酸(e値=2.25)、ビニリデンシアニド(e値=2.58)等から選択し、電子供与性置換基を有するビニルモノマー化合物としては、α―メチルスチレン(e値=−1.27)、スチレン(e値=−0.80)、イソプレン(e値=−0.55)、酢酸ビニル(e値=−0.88)、イソブチレン(e値=−1.20)から選択する(出典:大津隆行著「高分子合成の化学」および高分子学会編「基礎高分子科学」、並びにそれら文献に基づく推定値を含む)。 上記の組み合わせの中で、特に好ましい組み合わせは、e値の差の大きさに加えてビニルモノマーとしての反応性と交互共重合反応性まで考慮して、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルとスチレンを用いる組み合わせである。 本発明においては、前記ビニル基を含まない有機化合物とビニルモノマーとを含むO/W型乳化液(または分散液)を原料として重合反応を行う。O/W型乳化液とは、油相(ビニル基を含まない有機化合物とビニルモノマー)が分散相で分散剤を含む水相が連続相である乳化液である。本発明は、このO/W型乳化液を原料として重合反応を行う。重合反応に必要な開始剤等は、O/W型乳化液が形成されるときに共存していてもよく、O/W型乳化液が形成された後、重合反応開始前に添加してもよい。 本発明においては、マイクロカプセルに、さらなる機械的強度、耐熱性、そしてコア材の漏洩防止を目的として、2以上のビニル基を含む化合物(複数ビニル基含有架橋剤)を含ませて、重合反応を行う。2以上のビニル基を含む化合物には、制限はなく、例えば、ゴム加工分野で、有機過酸化物架橋剤として公知のものを使用することができる。 本発明における2以上のビニル基を含む化合物としては、電子吸引性基を有する2以上のビニル基を含む化合物を用いることが好ましい。この理由は明らかではないが、発明者らは、これら化合物中の架橋反応に関与する二重結合のe値が、通常、シェルを構成する電子吸引性基を有するビニルモノマー同様に負であり、シェルを構成する電子供与性基を有するビニルモノマー中に、均一に配置されるためと想定している。これら、化合物の具体例を挙げれば、ジビニルベンゼン(DVB)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)である。 本発明に係る、重合反応に供される重合開始剤は、特に制限はないが、ラジカル的に進行する重合のためのラジカル重合開始剤として、通常のペルオキシ化合物およびアゾ化合物が使用できる。 好ましいラジカル重合開始剤としては、t−ブチルペルオキシネオデカノアート、t−アミルペルオキシピバラート、ジラウロイルペルオキシド、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノアート、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンおよびクメンヒドロペルオキシドが挙げられる。 さらに好ましいラジカル開始剤は、ジ−(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)−ペルオキシド、4,4’−アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルペルピバラート、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチラートおよび1,1,3,3,−テトラメチル ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートである。これらは、半減期10時間を温度範囲30〜100℃において有する。 本発明に係る、重合反応に供される連鎖移動剤は、特に制限はないが、好ましくは(イ)メルカプタン(例えばオクチルメルカプタン、n−もしくはtert−ドデシルメルカプタン)、チオサリシル酸、メルカプト酢酸、およびメルカプトエタノール等のメルカプタン類、(ロ)ハロゲン化化合物、および(ハ)α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。中でも、メルカプタン類がさらに好ましい。 本発明に係る、重合反応に供される、O/W型分散液中の分散安定剤には、特に制限はないが、好ましくは、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。中でも、部分ケン化ポリ酢酸ビニルがさらに好ましい。 本発明においては、O/W型分散液を、重合反応開始前に、流路に沿って設けられた一定間隔を保持して配置されてなる複数の網状体を連続して順次通過させる工程で処理する。 所定の配合で構成されるO/W型分散液は、線速度0.1〜50cm/secの範囲で流路内を通過する。流路内には、複数箇所に、所定間隔をもって網状体が配置され、供給された乳化原料は該複数の網状体を順次通過し、その間にO/W型分散液の分散相の微細化が進行、安定、均一化し、分散相液滴のCV値は50%以下となり、この値に近似した値が、重合反応後のマイクロカプセルのCV値として保持される。発明者らは、マイクロカプセルの機能発現性の均一の目安としてCV値は30%以下と考えているが、この値は、通常のバッチ式乳化で得ることは困難である。 この方法による乳化の機構、網状体の作用効果等はいまだ明らかではないが、一旦網状体に達した流体が、網状体の多数の網目により分割されて小滴となり、次の網状体に達するまでの間に当該生成した小滴は安定化し、その結果として分散相液滴の粒子径が均一化されるものと考えられる。また、分散相液滴は、コア−シェル構造となり、コアにビニル基を含まない有機化合物、シェルにビニルモノマーを配置する。 これらの過程で、ビニルモノマーは、いわゆる、親水性基が球の表面にミセルを形成して配列し界面活性剤様の機能を果たすものと考えられるが、この機能の発現には、特に、本発明に係るビニルモノマー化合物の組み合わせ(疎水性と親水性の組み合わせ)が貢献していると考えられる。 網状体の間隔は、流路内の流体流速、流体粘度等にも関係するが、具体的には、通常は5mm〜200mmが好ましい。さらに好ましくは10mmから100mmである。ここで、より高速の流速ではより長い間隔を採用し、また流体粘度がより高粘度では、反対に、より短い間隔を採用するようにするのが好ましい。さらに、網状体の配設箇所は、流路に沿って複数箇所とすることが肝要であるが、好ましくは30〜200までの箇所である。網状体の開口度はASTM規格によるメッシュ数として、好ましくは35から4000、より好ましくは150メッシュ〜3000メッシュである。以下に実施例、比較例を以って本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。<O/W型乳化液の重合反応前の調合と処理> 内径20mm、長さ約500mmの円筒型ケーシング内に1400メッシュの主金網からなる金網と長さ10mm、内径15mmのスペーサーから成るユニットを30組挿入して乳化装置とした。 O/W型分散液には、ビニル基を含まない有機化合物としてJX日鉱日石エネルギー社製TS−8(化学名:n−オクタデカン、機能:蓄熱性)、ビニルモノマーとしてスチレン、架橋剤としてEGDMA(組成を表1に示す)、開始剤として日油社製パーオクタO(POO)、1.4重量部、および連鎖移動剤として花王社製チオカルコール20(化学名:n−ドデシルメルカプタン)3.0重量部の油相混合物に分散剤水溶液(クラレ製PVA217EE、0.5重量部)を加えて使用し、それぞれ個別のプランジャーポンプにより上記油相混合物および分散剤水溶液をそれぞれ15g/分、30g/分の流量にて乳化装置に導入することにより乳化を実施し、O/W型乳化液を得て、重合原料に供した。 <重合反応> 撹拌機、圧力計、および温度計を備えた容器(重合槽)に、上記操作で得られたO/W型乳化液60gと分散剤水溶液40g(クラレ製PVA217EE、1.5重量部)を投入し、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行い、窒素により圧力を常圧に戻し、窒素で0.3MPaまで加圧した。撹拌機を回転させた状態で、重合槽内温を110℃まで昇温し、重合を開始した。2時間で重合を終了し、重合槽内温を室温まで冷却した。重合乳化液を濾紙を用いて濾過し、蓄熱材マイクロカプセルを単離し、これを80℃、大気圧下にて乾燥し、蓄熱材マイクロカプセルの粉末が得られた。 <マイクロカプセルの特性測定> (1)粒径、CV値を以下の方法で測定した。 コールターカウンター(ベックマンコールター社製、マルチサイザー4)にて上記にて得られたスラリーの体積平均径(以下「体積平均粒径」という。)および液滴径分布を測定した。なお測定粒子数は10万個である。その結果、液滴の体積平均粒径24μm、CV値は27%であった。液滴径分布の指標に使用したCV値は以下の式(1)にて算出した。 CV値=液滴径分布の標準偏差/体積平均粒径×100 ・・・式(1) 以下の実施例、比較例においても同様の方法にて体積平均粒径およびCV値を測定した。 (2)VOC値を以下の方法で測定した。 試料をシャーレに0.1g量り取り、マイクロチャンバーに入れ、100℃×2hr放置後、25℃×22hrに放置する条件で放散試験を行ない、発生するガスをTenaxTA捕集管にて捕集した。放散ガス捕集管(TenaxTA管)及びマイクロチャンバーをヘキサンにより溶媒抽出し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)にて発生したガスの定量を行なった。 上記特性値の測定結果を表1に示した。 <O/W型乳化液の重合反応前の調合と処理> 内径20mm、長さ約500mmの円筒型ケーシング内に3000メッシュの主金網からなる金網と長さ10mm、内径15mmのスペーサーから成るユニットを30組挿入して乳化装置とした。 O/W型分散液には、ビニル基を含まない有機化合物としてJX日鉱日石エネルギー社製パラフィンTS−8(化学名:n−オクタデカン、機能:蓄熱性)とビニルモノマー化合物としてスチレン、架橋剤としてEGDMA(組成を表1に示す)、開始剤として日油社製パーオクタO(POO)1.4重量部、および連鎖移動剤として花王社製チオカルコール20(化学名:n−ドデシルメルカプタン、“DM”とも表記)。3.0重量部の油相混合物に、分散剤水溶液(クラレ製PVA217EE、2重量部)を混合して得た分散体を使用した。それぞれ個別のプランジャーポンプにより油相混合物を30g/分、分散時水溶液を60g/分の流量にて乳化装置に導入することにより乳化を実施し、O/W型乳化液を得た。蒸留水で希釈し、油相の濃度が20重量%であるO/W型乳化液とし、重合原料に供した。 <重合反応> 撹拌機、圧力計、および温度計を備えた容器(重合槽)に、上記O/W型乳化液60gと蒸留水40gを投入し、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行い、窒素により重合層内圧を常圧に戻して、窒素で0.3MPaまで加圧した。撹拌機を回転させた状態で、重合槽内温を110℃まで昇温し、重合を開始した。2時間で重合を終了し、重合槽内温を室温まで冷却した。マイクロカプセル濃度約20重量%の蓄熱マイクロカプセルを含むスラリーを得た。重合液を濾紙を用いて濾過し、蓄熱マイクロカプセルを単離し、これを80℃、大気圧下にて乾燥し、マイクロカプセルの粉末が得られた。 得られたマイクロカプセル試料の各特性値を測定し、結果を表1に示した。 <O/W型乳化液の重合反応前の調合と処理> 主金網が3000メッシュの金網を2400メッシュの金網に代えて使用した以外は実施例2と同様の操作により、O/W乳化液を調製した。 <重合反応> 実施例2と同様に、O/W乳化液を重合してマイクロカプセルの粉末を調製した。 得られたマイクロカプセル試料の各特性値を測定し、結果を表1に示した。[比較例1] <O/W型乳化液の重合反応前の調合と処理> 室温で分散剤水溶液160g(クラレ製PVA217EE、2重量部)を導入し、重合性成分としてスチレン、架橋剤としてEGDMA及び非重合性成分として“TS−8”を含む油相物(各組成を表1に示す)80gを混合し、ホモジナイザーを用いて3000rpmで分散させ、5分間の分散により、O/W型乳化液を得た。<重合反応> 重合条件は実施例2と同様の操作により、蓄熱マイクロカプセルの粉末が得られた。 得られたマイクロカプセル試料の各特性値を測定し、結果を表1に示した。 ビニルモノマーとしてスチレンおよびMMAを用い、架橋剤をDVBに代え、表1の組成で添加した以外は実施例2と同様の操作を行ない、O/W乳化液を得た。 また、上記O/W乳化液を原料として実施例2と同様に重合反応を行ない、マイクロカプセルの粉末を得た。 得られたマイクロカプセルのVOC、CV値を実施例1に記載した要領で測定し、さらに、下記の測定方法にて測定した加熱減量を表2に示した。<加熱減量の測定>乾燥したマイクロカプセルを、アルミカップに1〜2g秤量し、これを80℃にて5時間真空下に保持し、加熱減量を測定した。 実施例2と同様の操作で、O/W乳化液を得、それを同じく実施例2と同様の方法で重合してマイクロカプセルの粉末を得た。 得られたマイクロカプセルの特性値を測定し、表2に示した。 架橋剤をTMPTに代えた以外は、実施例2と同様にO/W乳化液を得、それを同じく実施例2と同様の方法で重合してマイクロカプセルの粉末を得た。 得られたマイクロカプセルの特性値を測定し、表2に示した。 ビニルモノマーとしてスチレンとアクリロニトリルを表1の組成で添加し、架橋剤を表1の組成(重量部数)で添加した以外は実施例2と同様に操作しO/W乳化液を調製し、それを重合してマイクロカプセルの粉末を得た。 得られたマイクロカプセルの特性値を測定し、表2に示した。 ビニルモノマーとしてスチレンとアクリロニトリルを表1の組成で添加し、架橋剤としてEGDMAを表1の組成(重量部数)で添加した以外は実施例2と同様に操作しO/W乳化液を調製し、それを重合してマイクロカプセルの粉末を得た。 得られたマイクロカプセルの特性値を測定し、表2に示した。 ビニルモノマーとしてスチレンとメタクリロニトリルを表1の組成で添加し、架橋剤としてEGDMAを表1の組成(重量部数)で添加した以外は実施例2と同様に操作しO/W乳化液を調製し、それを重合してマイクロカプセルの粉末を得た。 得られたマイクロカプセルの特性値を測定し、表2に示した。<考察> 表1の結果より、実施例1〜3のシェル材のビニルモノマーとしてスチレンのみ、コア材の有機化合物としてn−オクタデカンを用いたO/W乳化液を重合して得たマイクロカプセルは、CV値が何れも30%未満と小さく、ホモジナイザーを用いて乳化した比較例1に比べて均一な粒径分布であることが分かった。 表2の結果より、実施例7〜9の場合のようにシェル材としてビニルモノマーとしてアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルを15重量部とスチレン15〜30重量部を用い(Δe値が2.0前後)、コア材としてn−オクタデカンを用い、所定量の架橋剤を添加し、本願発明に係る乳化方法によって得たO/W乳化液を重合して得られたマイクロカプセルは、加熱減量が低く、耐熱性が高く、加工安定性に優れるものと推定され、またVOCも比較例1のホモジナイザー分散による場合に比べて低いことから、コア材の漏洩または揮発防止に寄与し、よって物質の安全性に寄与しているものと推定される。 本発明の方法によって得られたマイクロカプセル粒子は、コア材が機能性有機化合物でシェル材が架橋または非架橋高分子化合物であり、従来品よりも狭く、均一な粒径分布を有しているので、コア材の機能の発現の安定化と効率化を達成するものである。 本発明のマイクロカプセルは、香料、医薬、農薬、殺虫剤、生理活性物質、忌避剤、消臭剤、着色剤、芳香剤、蓄熱材等種々の用途に用いられ得る。 ビニル基を含まない有機化合物と少なくとも1種のビニルモノマーとを含むO/W型分散液を原料とし、前記ビニルモノマー化合物の重合反応を経て、コアが前記ビニル基を含まない有機化合物でありシェルが前記ビニルモノマー化合物の重合体であるコア―シェル構造を有するマイクロカプセルを製造する方法において、 前記O/W型分散液が、 前記重合反応前に、流路に沿って設けられた一定間隔を保持して配置されてなる複数の網状体を連続して順次通過させて乳化処理される工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。 前記マイクロカプセルを製造する方法において、 前記ビニルモノマー化合物が 電子吸引性基を有する少なくとも1種のビニルモノマーと電子供与性基を有する少なくとも1種のビニルモノマーとを含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。 前記O/W型分散液が2以上のビニル基を含む架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1ないし2に記載のマイクロカプセルの製造方法。 前記2以上のビニル基を含む架橋剤が電子吸引性基を有することを特徴とする、請求項3に記載のマイクロカプセルの製造方法。 前記O/W型分散液中のビニルモノマーが、電子吸引性基を有するビニルモノマーとしてアクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル、電子供与性基を有するビニルモノマーとしてスチレンを含むことを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のマイクロカプセルの製造方法。 以下の式(1)で定義されるマイクロカプセルのCV値が30以下であることを特徴とする、請求項1ないし5の何れかに記載のマイクロカプセルの製造方法。 CV値=(液滴径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100 式(1) 請求項1ないし6の何れかに記載のマイクロカプセルの製造方法によって得られる、コアがビニル基を含まない有機化合物であり、シェルがビニルモノマーの重合体であるコア―シェル構造を有するマイクロカプセルにおいて、 シェルが、電子吸引性置換基を有する少なくとも1種のビニルモノマー化合物と電子供与性基を有する少なくとも1種のビニルモノマー化合物とを構成単位として含む少なくとも二元共重合体であり、かつCV値が30以下のマイクロカプセル。 シェルが、電子吸引性基を有する2以上のビニル基を含む架橋剤で架橋されていることを特徴とする、請求項7に記載のマイクロカプセル。 シェルが、電子吸引性基を有するビニルモノマーとしてアクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル、電子供与性基を有するビニルモノマーとしてスチレンを含むことを特徴とする、請求項7ないし8に記載のマイクロカプセル。 【課題】 コア材が機能性有機化合物でシェル材が架橋または非架橋高分子化合物であるマイクロカプセルにおいて、コア材の機能の発現の安定化と効率化を達成する。【解決手段】ビニル基を含まない有機化合物と少なくとも1種のビニルモノマーとを含むO/W型分散液を原料とし、前記ビニルモノマー化合物の重合反応を経て、コアが前記ビニル基を含まない有機化合物でありシェルが前記ビニルモノマー化合物の重合体であるコア―シェル構造を有するマイクロカプセルを製造する方法において、前記O/W型分散液が、前記重合反応前に、流路に沿って設けられた一定間隔を保持して配置されてなる複数の網状体を連続して順次通過させて乳化処理される工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法を用いて実現する。【選択図】 なし


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